TDレポート Vol.15(1999.10)

YH1-P9_タイトル∼フォトグラフ3.3 99.11.16 5:28 PM ページ H4
TDレポート
Technology Development Report
1999.10(第15号)
名古屋市中区栄1丁目20番31号
TEL(052)221-1111
印刷 サンメッセ株式会社
YH1-P9_タイトル∼フォトグラフ3.3 99.11.16 5:28 PM ページ H2
C
■はじめに────────────────────────────────────
エジソンについて……………………………………………………………………………… 2
O
■フォトグラフ──────────────────────────────────
フィールド試験場の解説……………………………………………………………………… 8
スーパーアームによるJP切断作業 ………………………………………………………… 8
研究開発成果を各種イベントへ出品………………………………………………………… 8
全社技術研究発表会…………………………………………………………………………… 9
N
T
E
N
T
S
■特別寄稿────────────────────────────────────
私の夢見る研究………………………………………………………………………………… 3
■技術報告────────────────────────────────────
充電式ケーブルハグラーの開発………………………………………………………………10
水蓄熱槽最適容量計算ソフトの開発 ………………………………………………………14
スーパーアーム II の導入について……………………………………………………………18
接地に関する技術動向と技術開発室の取り組み……………………………………………21
超高層ビルのエレベータより発生するノイズの調査とその対策………………………… 26
老人福祉施設における給湯設備省エネ改善 ………………………………………………30
■施工事例────────────────────────────────────
洞道の電気・換気・排水設備の設計事例……………………………………………………34
金山南ビル建設工事電気設備概要……………………………………………………………38
交直変換装置におけるROXシステム高周波雑音対策 ……………………………………42
名城(変)マルチ音源に対するパッシブサイレンサーの施工……………………………46
ケーブルスネーク取りシステムの開発………………………………………………………50
■ミニ解説────────────────────────────────────
建築分野のライフサイクル評価………………………………………………………………54
インターネット技術〈PIAFS〉………………………………………………………………56
3次元CADを利用した照明シミュレーション………………………………………………58
ギガビットイーサーネットによる構内系ネットワークの統合……………………………60
■技術開発室だより────────────────────────────────
フィールド試験場の開設………………………………………………………………………62
米国におけるESCO事業の事情調査…………………………………………………………62
大学の非常勤講師として研究員を派遣………………………………………………………63
小型電力測定器の開発…………………………………………………………………………63
Open PLANETを用いた電力遠隔監視システムの開発 …………………………………63
電設工業展への出展……………………………………………………………………………63
■学会等での研究発表・投稿一覧表……………………………………………………………64
■編集後記…………………………………………………………………………………………66
1999.10(第15号)
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C
■はじめに────────────────────────────────────
エジソンについて……………………………………………………………………………… 2
O
■フォトグラフ──────────────────────────────────
フィールド試験場の解説……………………………………………………………………… 8
スーパーアームによるJP切断作業 ………………………………………………………… 8
研究開発成果を各種イベントへ出品………………………………………………………… 8
全社技術研究発表会…………………………………………………………………………… 9
N
T
E
N
T
S
■特別寄稿────────────────────────────────────
私の夢見る研究………………………………………………………………………………… 3
■技術報告────────────────────────────────────
充電式ケーブルハグラーの開発………………………………………………………………10
水蓄熱槽最適容量計算ソフトの開発 ………………………………………………………14
スーパーアーム II の導入について……………………………………………………………18
接地に関する技術動向と技術開発室の取り組み……………………………………………21
超高層ビルのエレベータより発生するノイズの調査とその対策………………………… 26
老人福祉施設における給湯設備省エネ改善 ………………………………………………30
■施工事例────────────────────────────────────
洞道の電気・換気・排水設備の設計事例……………………………………………………34
金山南ビル建設工事電気設備概要……………………………………………………………38
交直変換装置におけるROXシステム高周波雑音対策 ……………………………………42
名城(変)マルチ音源に対するパッシブサイレンサーの施工……………………………46
ケーブルスネーク取りシステムの開発………………………………………………………50
■ミニ解説────────────────────────────────────
建築分野のライフサイクル評価………………………………………………………………54
インターネット技術〈PIAFS〉………………………………………………………………56
3次元CADを利用した照明シミュレーション………………………………………………58
ギガビットイーサーネットによる構内系ネットワークの統合……………………………60
■技術開発室だより────────────────────────────────
フィールド試験場の開設………………………………………………………………………62
米国におけるESCO事業の事情調査…………………………………………………………62
大学の非常勤講師として研究員を派遣………………………………………………………63
小型電力測定器の開発…………………………………………………………………………63
Open PLANETを用いた電力遠隔監視システムの開発 …………………………………63
電設工業展への出展……………………………………………………………………………63
■学会等での研究発表・投稿一覧表……………………………………………………………64
■編集後記…………………………………………………………………………………………66
1999.10(第15号)
YH1-P9_タイトル∼フォトグラフ3.3 99.11.16 5:28 PM ページ 2
●特別寄稿●
エジソンについて
私の夢見る研究
名古屋大学名誉教授
前大同工業大学長
堀井 憲爾
常務取締役技術開発室長 小林 敬
TDレポートの15号の発刊に当たり、大変有名な
エジソンについて書いてみたいと思います。それは、
先行きが不透明な現在、物事の原点に立ち返ってみ
るのも一つの良い方法かと思い、電気関係の基を開
いた偉大なエンジニアであるエジソンに注目してみ
たいと思います。
エジソンの略歴は、1847年(明治維新は1868
年)2月11日にオハイオ州に生まれ、小学校には3
ケ月行って退学し、母からのマンツーマン教育で育
つ。10才の時には、自宅に実験室を作り化学実験に
熱中している。14才の時、南北戦争が起きる。15
才頃から電気に関する装置を、数百種発明し、
1931年84才で亡くなっている。
彼の発明分野は多岐にわたっているが、その中で
第一には、電灯関係である白熱電灯から始まって、
電力発送配電一式にわたって種々の装置を初めて作
り、現在の世界各国の電力会社の源をつくったと言
える。
次に、蓄音機・電話器・活動写真等、現在で言う
家電製品(通信機を含む)の源をつくりあげている。
また、エンジニアリング分野では、それまで個人が
一人でこつこつ発明していたものを多数の技術者を
一つの研究所へ集めて、一つのプロジェクトを組織
的に研究することに初めて成功している。この方式
は後の原子爆弾のマンハッタン計画や初めて人類を
月に送ったアポロ計画にも繋がっていると思われる。
とにかく、エジソンは、エンジニアとして世界一
の名声を得ており、科学者ニュートンと分野は異な
るが世界の双壁である。
次に、彼が発明に取り組んだ考え方の原点は、実
2
用主義であったと思います。即ち、物は一般の人々
に使われて初めて価値があるのだと考えていたと思
います。理論よりも使いやすさ、使って面白いもの
を作っています。
彼以後の米国の産業界のバックボーン的な考え方
として、この実用主義が現在も受け継がれてきてい
ると思います。
教育の問題に目を向けると、エジソンは小学校を3
ケ月しか行っていない事が有名です。彼自身も一生
既存の教育制度に対し評価しておりませんし、価値
を認めていないわけです。天才にとっては、既存の
学校教育などは無用のものにしか見えなかったよう
です。現在でも、天才にとっては学校で学ぶものは
殆どないのでしょう。しかし、天才でない一般の人
にはこの考えは当てはまらないが、レベルの高い教
育は個別で独自のメニューになると思います。
さて、彼の終生の信条とも言える有名な言葉は、
「天才とは99%が汗(バースピレーション)であり、
残り1%が霊感(インスピレーション)である」とい
うものです。ここで言う天才とはどんな分野であれ、
その道に成功した者のことと思います。エンジニア
でも事業家や芸術家でも当てはまると思います。た
だここで言う汗と霊感の比率99:1は何を言ってい
るかである。両者の価値の差を言っているのか、私
には汗も霊感も価値は同じであるが、それに費やさ
れた時間が違うのだと言っているように思います。
霊感などは数秒で足りるのに、汗の方は数十時間
から数百時間も必要になる。この不公平に腹を立て
ているのかも知れない。
人生にはこんなことが多い。
1.まえがき
今年3月、大同工業大学・学長を最後に教育の現場
から引退したが、研究は生涯現役を自認して、相変
わらず新しい研究を夢見ている。
新しい発想から研究をはじめる時が、最も胸躍る
ときであり、調査・研究が進むにつれて実用化の難
しさが分かってくる。経済性まで考えだすと足踏み
がはじまる。なかでも世の中の動向、特に需要の有
無が実用化の決め手になる。だからといって世の中
の動向に合わせて研究をはじめるようなことでは、
大したことはできない。まず自分の独創による研究
の種をじっくりと育てて行き、世の中の動向に合う
ものをタイミングよく打ち出すことである。要は研
究に夢を持ち続けることである。
さて、私の研究のスタートは昭和27年にはじまり、
高電圧機器の絶縁診断技術に関するものであった。
昭和20・30年代は、戦時中に老朽化した電力機器
の診断・取り替え時期に当たり、絶縁抵抗(メガ)
試験をはじめ、誘電正接試験やインパルス試験等に
加えて新しく部分放電試験が台頭していた。私の学
位論文(昭和37年)は、「絶縁物間の空隙中のコロ
ナ放電の特性とその検出測定および絶縁物に及ぼす
損傷作用等に関する研究」という舌をかみそうな長
い題名であった。当時私が開発・実用化した同調式
部分放電測定器は、わが国のベストセラーの部分放
電測定器であり、今でもこの改良研究をメーカに指
導している。
当時私が所属した工業技術院・電気試験所(現、
電子技術総合研究所)の中の電力部・災障害研究室
では、雷害対策技術の研究が活発に行われ、夏にな
ると日光や赤城の山里で雷観測が行なわれていた。
これが縁で名古屋大学に移った後も、ロケット誘雷
実験をはじめ最近の降雨実験や地震予知など自然災
害を相手とする研究にのめりこんでいくことになっ
たと言える。
2.ロケットによる雷放電の制御
金沢郊外の河北潟にて昭和52年12月22日午前2
時1分という不思議な数字の並んだ時刻に、わが国最
初のロケット誘雷実験成功以来、昨年12月までに
189個の雷を捕らえた。インドネシアでの実験を加
えれば204個となる。なかでも昭和61年に始めた
誘雷方式は、地上100メートル程をナイロン糸で絶
縁し、その上空に直径が0.2ミリ程のスチールワイヤ
をロケットで打ち上げるもので、ワイヤの下端から
近くの送電線に落雷を誘うという世界でも最初の実
験であった。
さて、これからのロケット誘雷実験の夢といえば、
極小型のロケットで50メートルほどワイヤを打ち上
げるが、50メートルほどで上昇中のロケットをひも
で引き留める方式の開発である。ロケットが周囲に
落下する危険をなくし、しかもこれまでの避雷針よ
り誘電効果(落雷の確率)の高い新しい避雷針の開
発である。避雷針の先端からは落雷前にコロナ放電
が発生し、これが作る空間電荷に針先が静電的に遮
図1 送電線鉄塔へ誘雷の瞬間
3
YH1-P9_タイトル∼フォトグラフ3.3 99.11.16 5:28 PM ページ 2
●特別寄稿●
エジソンについて
私の夢見る研究
名古屋大学名誉教授
前大同工業大学長
堀井 憲爾
常務取締役技術開発室長 小林 敬
TDレポートの15号の発刊に当たり、大変有名な
エジソンについて書いてみたいと思います。それは、
先行きが不透明な現在、物事の原点に立ち返ってみ
るのも一つの良い方法かと思い、電気関係の基を開
いた偉大なエンジニアであるエジソンに注目してみ
たいと思います。
エジソンの略歴は、1847年(明治維新は1868
年)2月11日にオハイオ州に生まれ、小学校には3
ケ月行って退学し、母からのマンツーマン教育で育
つ。10才の時には、自宅に実験室を作り化学実験に
熱中している。14才の時、南北戦争が起きる。15
才頃から電気に関する装置を、数百種発明し、
1931年84才で亡くなっている。
彼の発明分野は多岐にわたっているが、その中で
第一には、電灯関係である白熱電灯から始まって、
電力発送配電一式にわたって種々の装置を初めて作
り、現在の世界各国の電力会社の源をつくったと言
える。
次に、蓄音機・電話器・活動写真等、現在で言う
家電製品(通信機を含む)の源をつくりあげている。
また、エンジニアリング分野では、それまで個人が
一人でこつこつ発明していたものを多数の技術者を
一つの研究所へ集めて、一つのプロジェクトを組織
的に研究することに初めて成功している。この方式
は後の原子爆弾のマンハッタン計画や初めて人類を
月に送ったアポロ計画にも繋がっていると思われる。
とにかく、エジソンは、エンジニアとして世界一
の名声を得ており、科学者ニュートンと分野は異な
るが世界の双壁である。
次に、彼が発明に取り組んだ考え方の原点は、実
2
用主義であったと思います。即ち、物は一般の人々
に使われて初めて価値があるのだと考えていたと思
います。理論よりも使いやすさ、使って面白いもの
を作っています。
彼以後の米国の産業界のバックボーン的な考え方
として、この実用主義が現在も受け継がれてきてい
ると思います。
教育の問題に目を向けると、エジソンは小学校を3
ケ月しか行っていない事が有名です。彼自身も一生
既存の教育制度に対し評価しておりませんし、価値
を認めていないわけです。天才にとっては、既存の
学校教育などは無用のものにしか見えなかったよう
です。現在でも、天才にとっては学校で学ぶものは
殆どないのでしょう。しかし、天才でない一般の人
にはこの考えは当てはまらないが、レベルの高い教
育は個別で独自のメニューになると思います。
さて、彼の終生の信条とも言える有名な言葉は、
「天才とは99%が汗(バースピレーション)であり、
残り1%が霊感(インスピレーション)である」とい
うものです。ここで言う天才とはどんな分野であれ、
その道に成功した者のことと思います。エンジニア
でも事業家や芸術家でも当てはまると思います。た
だここで言う汗と霊感の比率99:1は何を言ってい
るかである。両者の価値の差を言っているのか、私
には汗も霊感も価値は同じであるが、それに費やさ
れた時間が違うのだと言っているように思います。
霊感などは数秒で足りるのに、汗の方は数十時間
から数百時間も必要になる。この不公平に腹を立て
ているのかも知れない。
人生にはこんなことが多い。
1.まえがき
今年3月、大同工業大学・学長を最後に教育の現場
から引退したが、研究は生涯現役を自認して、相変
わらず新しい研究を夢見ている。
新しい発想から研究をはじめる時が、最も胸躍る
ときであり、調査・研究が進むにつれて実用化の難
しさが分かってくる。経済性まで考えだすと足踏み
がはじまる。なかでも世の中の動向、特に需要の有
無が実用化の決め手になる。だからといって世の中
の動向に合わせて研究をはじめるようなことでは、
大したことはできない。まず自分の独創による研究
の種をじっくりと育てて行き、世の中の動向に合う
ものをタイミングよく打ち出すことである。要は研
究に夢を持ち続けることである。
さて、私の研究のスタートは昭和27年にはじまり、
高電圧機器の絶縁診断技術に関するものであった。
昭和20・30年代は、戦時中に老朽化した電力機器
の診断・取り替え時期に当たり、絶縁抵抗(メガ)
試験をはじめ、誘電正接試験やインパルス試験等に
加えて新しく部分放電試験が台頭していた。私の学
位論文(昭和37年)は、「絶縁物間の空隙中のコロ
ナ放電の特性とその検出測定および絶縁物に及ぼす
損傷作用等に関する研究」という舌をかみそうな長
い題名であった。当時私が開発・実用化した同調式
部分放電測定器は、わが国のベストセラーの部分放
電測定器であり、今でもこの改良研究をメーカに指
導している。
当時私が所属した工業技術院・電気試験所(現、
電子技術総合研究所)の中の電力部・災障害研究室
では、雷害対策技術の研究が活発に行われ、夏にな
ると日光や赤城の山里で雷観測が行なわれていた。
これが縁で名古屋大学に移った後も、ロケット誘雷
実験をはじめ最近の降雨実験や地震予知など自然災
害を相手とする研究にのめりこんでいくことになっ
たと言える。
2.ロケットによる雷放電の制御
金沢郊外の河北潟にて昭和52年12月22日午前2
時1分という不思議な数字の並んだ時刻に、わが国最
初のロケット誘雷実験成功以来、昨年12月までに
189個の雷を捕らえた。インドネシアでの実験を加
えれば204個となる。なかでも昭和61年に始めた
誘雷方式は、地上100メートル程をナイロン糸で絶
縁し、その上空に直径が0.2ミリ程のスチールワイヤ
をロケットで打ち上げるもので、ワイヤの下端から
近くの送電線に落雷を誘うという世界でも最初の実
験であった。
さて、これからのロケット誘雷実験の夢といえば、
極小型のロケットで50メートルほどワイヤを打ち上
げるが、50メートルほどで上昇中のロケットをひも
で引き留める方式の開発である。ロケットが周囲に
落下する危険をなくし、しかもこれまでの避雷針よ
り誘電効果(落雷の確率)の高い新しい避雷針の開
発である。避雷針の先端からは落雷前にコロナ放電
が発生し、これが作る空間電荷に針先が静電的に遮
図1 送電線鉄塔へ誘雷の瞬間
3
YH1-P9_タイトル∼フォトグラフ3.3 99.11.16 5:28 PM ページ 4
但馬出石時計台
筆者スケッチ
蔽されて、落雷のきっかけとなる上向きのリーダ放
電の発進が抑制される。これに対しロケットでワイ
ヤを引き上げる場合は、コロナによる空間電荷の形
成前にロケットが上昇するのでリーダ放電が出やす
く、したがって落雷が起きやすいというこれまでの
実験結果を利用する。これによって、発変電所など
特に耐雷対策の必要な施設への落雷を防止できるで
あろう。
このほか、以前に一度成功したことがある親子ロ
ケットを利用して、雲の中に打ち上げた親ロケット
からワイヤを引っ張る小ロケットを発進させ、雲中
放電を誘発して雷雲の電荷を消すことにより、大地
への落雷放電を未然に防止することも夢実験の一つ
である。一方、ロケットなど火薬の使用はわが国で
は規制が厳しく取扱が面倒なため、火薬を使わない
方法として、角紳一・中部大学助教授の圧縮空気方
式や中村光一・名古屋工業大学教授の圧力水を利用
する方式のロケットの開発ももう一つの夢である。
3.ロケットによる雨降り実験
昭和52年に誘雷実験をはじめた当時のロケットは
フランスから輸入していた。このロケットは今でも
フランスほかのヨーロッパ各地で農家が打ち上げて
いるひょう害防止ロケットであった。ヨーロッパ大
陸では夏に雷と共にひょうが降ることが多く、この
予防のためにロケットで雷雲の中にヨー化銀を散布
すると、ひょうになる前に雨が降ってしまうという
ものである。
わが国でも長野県などでは、ひょう害の恐れがあ
るが、最近は天候異変のため各地で 渇水となるこ
とが多く、この対策として雨降りロケットが必要と
なっている。数年前フランスからこのロケットを再
び輸入しようとしたが、火薬類の輸入の規制が厳し
くなっているわが国へは持ち込めないことがわかっ
4
た。代わって国産品のロケットの開発が進められ、
数年を経て次第に性能も向上している。今夏も、中
部電力の奥矢作水力発電所の上池ダム(黒田ダム)
の岸に発射台とレーダーを設置して実験を行ってい
る。ロケットは2∼4㎞の高度に上昇したのち頭部か
らヨー化銀の煙を周囲に散布し、風に乗って拡散す
るとこれが核となって降雨を誘う。レーダーは漁船
用を利用して、雲の垂直断面を見られるように、風
下にかけてアンテナを垂直回転させる。雲の中で雨
核ができ、これが風と共に移動しながら地上へと雨
の柱(いわゆる雨足)となって降下する様子が観測
されている。
一個のロケットで10グラムほどのヨー化銀を煙に
して散布すれば、10-15グラムの微粒子が一個の雨粒
(約1ミリグラム)となる可能性があるから、10/
10-15・1ミリグラム=1013グラム、すなわち1千万
トンの雨が降ることになる。こんなにうまくいくこ
とはないが、一個のロケットで1万トン以上を降らせ
ることはできそうだ。1万トンといっても数キロメー
トルの範囲に数ミリの雨が降れば足りる。ただし、
雲の中にそれだけの水分があればの話であり、晴天
時の大気中の水分ではとても降雨までにはいかない。
要は、雨が降りそうで降らない状況のときに降雨を
誘うのがこつである。ヨー化銀の雨核形成効果、す
なわちヨー化銀の微粒子結晶(これが氷の微粒子結
晶に似た構造をしているらしい)が水分を凝縮する
力は時間と共に減衰するので、打ち上げ後10分間ほ
どで成否が決まるとみている。どの様な雲の中でど
の高度(温度)に散布すれば効果的かを知るには更
に実験を重ねる必要があり、現在はうまくいったり、
いかなかったりといった段階である。
人工的に雨を降らせても総降雨量は変わらないが、
最も必要な地域、例えばダム池や河川流域などに集
中して降らせれば、その経済的効果は大きい。いま
室生寺五重塔
筆者スケッチ
発電・水道用水として1トンあたり100円とすれば、
一個のロケットで100万円以上の価値が生み出され
ることになる。このほかに山火事の消火(火災によ
る上昇気流で雨雲が発生する)、スキー場への誘雪
(雪も雨と同じメカニズムで降る)、逆に屋外競技場
などへの降雨の防止(雨雲が来る前に降らせる──
モスクワオリンピックでロシアがこれをやったとい
う話)、更に南からくる湿った気流が上陸して集中豪
雨がくる前に海上で降らせる方法、あるいは他国の
原子力事故による放射能塵が風に乗って飛来する前
に雨を降らせて塵を落としてしまう方法など、ロケ
ット誘雨技術の応用には夢が無限に広がっていく。
4.電磁現象による地震予知
地震前には地殻が移動・隆起すると同時に、井戸
水が涸れる、空が光るとか、ねずみ・へびなどが異
常に行動するといわれている。地震の前に電磁現象
が出る理由はまだよく分からないが、地電流・地磁
気の異常や電磁波の放射などが注目されている。
地震前に震源域から出る電磁波は、ちょうど雷放
電の際に放射される電磁波と混同されることがあり、
両者の識別が必要となる。落雷電流は立ち上がりが
数マイクロ秒の急峻なパルス波であるから、これを
他のノイズから識別可能であり、現に電力会社など
が持っている直交コイルによる方向探知方式の落雷
位置標定システムでは、コンピュータが波形を自動
選別している。このとき捨てられたノイズ波の中に
地震予兆の電磁波が入っている可能性がある。これ
らの既設のシステムを利用した地震予知システムの
構築が今後の課題である。
地電流の測定はギリシャで地震予知に成功して有
名になったが、過密に工場・鉄道・住宅などが広が
るわが国ではノイズが多く、この対策が課題である。
地電流と共に大地の導電性すなわち接地抵抗を監視
していれば、予知ができそうである。井戸水が涸れ
るという現象が見られるように、地下水が地震前に
移動することがあり、これが接地抵抗に反映すると
考えられる。また、地中の圧力が大地の導電性を変
化させる可能性もある。現在、大同工業大学のキャ
ンパスで愛知久史講師が接地抵抗の監視を昨年より
始めており、年末から今年にかけて伊勢湾北部の三
重・岐阜県で頻発したマグニチュード4クラスの地震
の予兆らしきものを検出した。今後は更にトーエネ
ックの瀬戸研究所敷地内などに観測点を増やしてい
きたいと考えている。
いま私が強い関心を持っているのが、送電線の光
ファイバーを利用して、架空地線を流れる地電流を
検出するシステムの開発である。電力中央研究所の
黒野正裕氏は、架空地線の内部の光ファイバーを通
る光シグナルが、架空地線を流れる電流で作られる
磁界のファラディー効果のための偏波変動を起こす
ことを発見した。これを利用して、その変動量から
架空地線を流れる雷放電電流を検出し、その伝搬時
間から落雷位置を標定することも研究されている。
この技術は、送電鉄塔の接地間を流れる地震予兆
電流の検出に新しい道を開きそうである。関西電力
技術研究所の樋口武光氏は、送電線の中性点間を還
流する地電流から地震の予知を研究しており、これ
を更に発展させることができるかもしれない。全国
ネットの光通信システムを利用して、通信には影響
を与えないで、地電流の大きさ、場所を監視できる
システムが構築されればすばらしいと思う。
5.ジェット気流発電
次はがらりとかわって自然エネルギーの利用であ
る。日本の上空1万メートルには、テレビでおなじみ
のジェット気流が西から東へ吹いている。地球の自
転と南北の対流とが作るこのジェット気流は、秋か
5
YH1-P9_タイトル∼フォトグラフ3.3 99.11.16 5:28 PM ページ 4
但馬出石時計台
筆者スケッチ
蔽されて、落雷のきっかけとなる上向きのリーダ放
電の発進が抑制される。これに対しロケットでワイ
ヤを引き上げる場合は、コロナによる空間電荷の形
成前にロケットが上昇するのでリーダ放電が出やす
く、したがって落雷が起きやすいというこれまでの
実験結果を利用する。これによって、発変電所など
特に耐雷対策の必要な施設への落雷を防止できるで
あろう。
このほか、以前に一度成功したことがある親子ロ
ケットを利用して、雲の中に打ち上げた親ロケット
からワイヤを引っ張る小ロケットを発進させ、雲中
放電を誘発して雷雲の電荷を消すことにより、大地
への落雷放電を未然に防止することも夢実験の一つ
である。一方、ロケットなど火薬の使用はわが国で
は規制が厳しく取扱が面倒なため、火薬を使わない
方法として、角紳一・中部大学助教授の圧縮空気方
式や中村光一・名古屋工業大学教授の圧力水を利用
する方式のロケットの開発ももう一つの夢である。
3.ロケットによる雨降り実験
昭和52年に誘雷実験をはじめた当時のロケットは
フランスから輸入していた。このロケットは今でも
フランスほかのヨーロッパ各地で農家が打ち上げて
いるひょう害防止ロケットであった。ヨーロッパ大
陸では夏に雷と共にひょうが降ることが多く、この
予防のためにロケットで雷雲の中にヨー化銀を散布
すると、ひょうになる前に雨が降ってしまうという
ものである。
わが国でも長野県などでは、ひょう害の恐れがあ
るが、最近は天候異変のため各地で 渇水となるこ
とが多く、この対策として雨降りロケットが必要と
なっている。数年前フランスからこのロケットを再
び輸入しようとしたが、火薬類の輸入の規制が厳し
くなっているわが国へは持ち込めないことがわかっ
4
た。代わって国産品のロケットの開発が進められ、
数年を経て次第に性能も向上している。今夏も、中
部電力の奥矢作水力発電所の上池ダム(黒田ダム)
の岸に発射台とレーダーを設置して実験を行ってい
る。ロケットは2∼4㎞の高度に上昇したのち頭部か
らヨー化銀の煙を周囲に散布し、風に乗って拡散す
るとこれが核となって降雨を誘う。レーダーは漁船
用を利用して、雲の垂直断面を見られるように、風
下にかけてアンテナを垂直回転させる。雲の中で雨
核ができ、これが風と共に移動しながら地上へと雨
の柱(いわゆる雨足)となって降下する様子が観測
されている。
一個のロケットで10グラムほどのヨー化銀を煙に
して散布すれば、10-15グラムの微粒子が一個の雨粒
(約1ミリグラム)となる可能性があるから、10/
10-15・1ミリグラム=1013グラム、すなわち1千万
トンの雨が降ることになる。こんなにうまくいくこ
とはないが、一個のロケットで1万トン以上を降らせ
ることはできそうだ。1万トンといっても数キロメー
トルの範囲に数ミリの雨が降れば足りる。ただし、
雲の中にそれだけの水分があればの話であり、晴天
時の大気中の水分ではとても降雨までにはいかない。
要は、雨が降りそうで降らない状況のときに降雨を
誘うのがこつである。ヨー化銀の雨核形成効果、す
なわちヨー化銀の微粒子結晶(これが氷の微粒子結
晶に似た構造をしているらしい)が水分を凝縮する
力は時間と共に減衰するので、打ち上げ後10分間ほ
どで成否が決まるとみている。どの様な雲の中でど
の高度(温度)に散布すれば効果的かを知るには更
に実験を重ねる必要があり、現在はうまくいったり、
いかなかったりといった段階である。
人工的に雨を降らせても総降雨量は変わらないが、
最も必要な地域、例えばダム池や河川流域などに集
中して降らせれば、その経済的効果は大きい。いま
室生寺五重塔
筆者スケッチ
発電・水道用水として1トンあたり100円とすれば、
一個のロケットで100万円以上の価値が生み出され
ることになる。このほかに山火事の消火(火災によ
る上昇気流で雨雲が発生する)、スキー場への誘雪
(雪も雨と同じメカニズムで降る)、逆に屋外競技場
などへの降雨の防止(雨雲が来る前に降らせる──
モスクワオリンピックでロシアがこれをやったとい
う話)、更に南からくる湿った気流が上陸して集中豪
雨がくる前に海上で降らせる方法、あるいは他国の
原子力事故による放射能塵が風に乗って飛来する前
に雨を降らせて塵を落としてしまう方法など、ロケ
ット誘雨技術の応用には夢が無限に広がっていく。
4.電磁現象による地震予知
地震前には地殻が移動・隆起すると同時に、井戸
水が涸れる、空が光るとか、ねずみ・へびなどが異
常に行動するといわれている。地震の前に電磁現象
が出る理由はまだよく分からないが、地電流・地磁
気の異常や電磁波の放射などが注目されている。
地震前に震源域から出る電磁波は、ちょうど雷放
電の際に放射される電磁波と混同されることがあり、
両者の識別が必要となる。落雷電流は立ち上がりが
数マイクロ秒の急峻なパルス波であるから、これを
他のノイズから識別可能であり、現に電力会社など
が持っている直交コイルによる方向探知方式の落雷
位置標定システムでは、コンピュータが波形を自動
選別している。このとき捨てられたノイズ波の中に
地震予兆の電磁波が入っている可能性がある。これ
らの既設のシステムを利用した地震予知システムの
構築が今後の課題である。
地電流の測定はギリシャで地震予知に成功して有
名になったが、過密に工場・鉄道・住宅などが広が
るわが国ではノイズが多く、この対策が課題である。
地電流と共に大地の導電性すなわち接地抵抗を監視
していれば、予知ができそうである。井戸水が涸れ
るという現象が見られるように、地下水が地震前に
移動することがあり、これが接地抵抗に反映すると
考えられる。また、地中の圧力が大地の導電性を変
化させる可能性もある。現在、大同工業大学のキャ
ンパスで愛知久史講師が接地抵抗の監視を昨年より
始めており、年末から今年にかけて伊勢湾北部の三
重・岐阜県で頻発したマグニチュード4クラスの地震
の予兆らしきものを検出した。今後は更にトーエネ
ックの瀬戸研究所敷地内などに観測点を増やしてい
きたいと考えている。
いま私が強い関心を持っているのが、送電線の光
ファイバーを利用して、架空地線を流れる地電流を
検出するシステムの開発である。電力中央研究所の
黒野正裕氏は、架空地線の内部の光ファイバーを通
る光シグナルが、架空地線を流れる電流で作られる
磁界のファラディー効果のための偏波変動を起こす
ことを発見した。これを利用して、その変動量から
架空地線を流れる雷放電電流を検出し、その伝搬時
間から落雷位置を標定することも研究されている。
この技術は、送電鉄塔の接地間を流れる地震予兆
電流の検出に新しい道を開きそうである。関西電力
技術研究所の樋口武光氏は、送電線の中性点間を還
流する地電流から地震の予知を研究しており、これ
を更に発展させることができるかもしれない。全国
ネットの光通信システムを利用して、通信には影響
を与えないで、地電流の大きさ、場所を監視できる
システムが構築されればすばらしいと思う。
5.ジェット気流発電
次はがらりとかわって自然エネルギーの利用であ
る。日本の上空1万メートルには、テレビでおなじみ
のジェット気流が西から東へ吹いている。地球の自
転と南北の対流とが作るこのジェット気流は、秋か
5
YH1-P9_タイトル∼フォトグラフ3.3 99.11.16 5:28 PM ページ 6
大同町駅風景
筆者スケッチ
京都・三十三間堂
筆者スケッチ
ら春にかけて秒速100メートルを越えることも多い。
単位面積当たりの風力エネルギーは、運動エネルギ
ーが風速の2乗に比例し、質量が風速に比例するので、
結局、風速の3乗に比例する。1万メートル上空の空
気密度が地上の1/3に減ることを入れても、地上で
秒速10メートルの風の300倍のエネルギーをもっ
ている。風向きが一定で、安定して長時間吹き続け
ることもありがたい。
この風力を利用する方法は、1万メートルにタコを
揚げてプロペラで発電し、タコ糸を電線にして送電
する。タコと言っても強風に耐えるグライダーで、
両翼内に上昇用の水平回転プロペラがついている。
両翼の直径3メートルほどのプロペラで1000kWを
発電する。係留ワイヤーにはアルミの電線ケーブル
と共にケブラー繊維のロープを使えば軽くて強い。
まずは離島でのテストの後に、全国設置により数百
万キロワットの電力を賄うのも夢ではない。
この方式は多目的利用も考えられる。一つは巨大
避雷針の役割である。電線ケーブルの外側の接地シ
ースを雷電流に耐えるようにすれば、雷雲を突き抜
けた最も効果的な避雷針となる。もう一つは、無線
中継局として、あるいはレーダー基地としての利用
であり、衛星に代わる広域の電波源となり得る。こ
のためには運用途中の点検整備の時以外は、夏季の
風力低下時にも地上からの電力により水平回転プロ
ペラで高度を保つ必要がある。
この発想は昭和50年頃からのものであり、風況調
査はすでに終わり、現在は航空工学の専門である杉
山善幸名大名誉教授と机上検討を続けているところ
である。
6.海中圧縮空気エネルギー貯蔵兼、
炭酸ガス海洋吸収装置
この発想は、10数年も前のエネルギー貯蔵の研究
6
に始まる。地下の空洞への圧縮空気エネルギー貯蔵
装置は、欧米ではすでに実施され、わが国でも北海
道の炭鉱跡でテストプラントが動いている。私の提
案は地下空洞の代わりに、海底のタンクに貯蔵しよ
うとするもので、300メートルの海底に水圧とバラ
ンスして30気圧の空気を送り込む。簡単にはゴム風
船でもよいが、浮力を引き留めなければならない。
かっての電力中央研究所などの支援による研究会で
の結論は、古いタンカーを沈めてこの油槽を利用す
るのが一番となった。ただし、300メートルの海中
での作業に未開発の技術課題が多く、その実用化は
タンクに貯蔵する前に海水中で発泡させ、炭酸ガス
を300メートルの海水中に吸収させ除去しようとす
るものである。炭酸ガスは高圧力下でよく水に溶け
る。炭酸ガスが溶けると水の比重が増えて海底に留
まり、更に深海へと流れていき、いずれは高圧力下
で水和物のクラスターとなって永久保存される。
さて、炭酸ガスを除去した残りのガスは窒素過剰
であるから、夜間電力で新しい空気を追加圧縮し、
昼間の再燃焼に利用することになろう。なお、地上
の炭酸ガスは常時海水と表層において吸収・放出を
繰り返しているが、排ガスから分離した炭酸ガスを
海水中に吸収除去しようとする研究は、つくばの資
源環境技術総合研究所でも行われている。
7.むすび
私がここ20年取り組んできた研究の幾つかを紹介
した。まえがきでも述べたように、発想から実用化
までの道のりは長く、多くは途中で挫折する。
しかし、常に夢を持って新しい研究に取り組むこ
とが大切である。夢を実現するには、それぞれの専
門家の協力が必要である。そのためには、周りに理
解を得られるよう努力することも大切である。ここ
に述べた研究にも更に多くの理解者・協力者が得ら
れれば私の幸せこれに過ぎるものはない。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
●
×
● 重心
G
G
× 係留・送電線
取付位置
D
F
F
H
B
●
B
A
A
E
C
A 発電用風車
B ダクト付プロペラ
C ピトー管
D 発電装置
E 制御・通信器機
F・G フラップ
H 駆動軸系
図2 ジェット気流発電飛行体
保留となっている。なお、空気圧縮は火力の発電機
を夜間電力で駆動してガスタービンに併設の圧縮機
で空気を送り出し、昼間は逆に圧縮空気で燃焼させ
てガスタービンを動かして発電する。揚水式に代わ
り将来の電力貯蔵方式として期待されている。
さて、炭酸ガス海洋吸収装置は上の発想の延長線
上にある。火力タービンの排ガスを圧縮して、海底
<掘井 憲爾先生の経歴> 掘井 憲爾(ほりい けんじ)
昭和5年1月7日生
1952. 3 名古屋大学工学部電気学科卒業
1952. 4 通産省工業技術院電気試験所入所
電力部・災障害研究室
1962. 3 工学博士(名古屋大学)
1970. 10 通産省工業技術院電子技術総合研究所に所名変更
極限技術部・高エネルギー研究室長
1971. 4 名古屋大学工学部電気学科教授
1990. 10 国立豊田工業高等専門学校校長
1991. 4 名古屋大学名誉教授
1995. 3 国立豊田工業高等専門学校校長退官
1995. 4 国立豊田工業高等専門学校名誉教授
1996. 4 大同工業大学学長
1999. 3 大同工業大学学長退任
1999. 4 大同工業大学名誉教授
現在 電気学会ハンドブック出版委員会委員長
電気学会地震電磁現象調査専門委員会委員長、他
7
YH1-P9_タイトル∼フォトグラフ3.3 99.11.16 5:28 PM ページ 6
大同町駅風景
筆者スケッチ
京都・三十三間堂
筆者スケッチ
ら春にかけて秒速100メートルを越えることも多い。
単位面積当たりの風力エネルギーは、運動エネルギ
ーが風速の2乗に比例し、質量が風速に比例するので、
結局、風速の3乗に比例する。1万メートル上空の空
気密度が地上の1/3に減ることを入れても、地上で
秒速10メートルの風の300倍のエネルギーをもっ
ている。風向きが一定で、安定して長時間吹き続け
ることもありがたい。
この風力を利用する方法は、1万メートルにタコを
揚げてプロペラで発電し、タコ糸を電線にして送電
する。タコと言っても強風に耐えるグライダーで、
両翼内に上昇用の水平回転プロペラがついている。
両翼の直径3メートルほどのプロペラで1000kWを
発電する。係留ワイヤーにはアルミの電線ケーブル
と共にケブラー繊維のロープを使えば軽くて強い。
まずは離島でのテストの後に、全国設置により数百
万キロワットの電力を賄うのも夢ではない。
この方式は多目的利用も考えられる。一つは巨大
避雷針の役割である。電線ケーブルの外側の接地シ
ースを雷電流に耐えるようにすれば、雷雲を突き抜
けた最も効果的な避雷針となる。もう一つは、無線
中継局として、あるいはレーダー基地としての利用
であり、衛星に代わる広域の電波源となり得る。こ
のためには運用途中の点検整備の時以外は、夏季の
風力低下時にも地上からの電力により水平回転プロ
ペラで高度を保つ必要がある。
この発想は昭和50年頃からのものであり、風況調
査はすでに終わり、現在は航空工学の専門である杉
山善幸名大名誉教授と机上検討を続けているところ
である。
6.海中圧縮空気エネルギー貯蔵兼、
炭酸ガス海洋吸収装置
この発想は、10数年も前のエネルギー貯蔵の研究
6
に始まる。地下の空洞への圧縮空気エネルギー貯蔵
装置は、欧米ではすでに実施され、わが国でも北海
道の炭鉱跡でテストプラントが動いている。私の提
案は地下空洞の代わりに、海底のタンクに貯蔵しよ
うとするもので、300メートルの海底に水圧とバラ
ンスして30気圧の空気を送り込む。簡単にはゴム風
船でもよいが、浮力を引き留めなければならない。
かっての電力中央研究所などの支援による研究会で
の結論は、古いタンカーを沈めてこの油槽を利用す
るのが一番となった。ただし、300メートルの海中
での作業に未開発の技術課題が多く、その実用化は
タンクに貯蔵する前に海水中で発泡させ、炭酸ガス
を300メートルの海水中に吸収させ除去しようとす
るものである。炭酸ガスは高圧力下でよく水に溶け
る。炭酸ガスが溶けると水の比重が増えて海底に留
まり、更に深海へと流れていき、いずれは高圧力下
で水和物のクラスターとなって永久保存される。
さて、炭酸ガスを除去した残りのガスは窒素過剰
であるから、夜間電力で新しい空気を追加圧縮し、
昼間の再燃焼に利用することになろう。なお、地上
の炭酸ガスは常時海水と表層において吸収・放出を
繰り返しているが、排ガスから分離した炭酸ガスを
海水中に吸収除去しようとする研究は、つくばの資
源環境技術総合研究所でも行われている。
7.むすび
私がここ20年取り組んできた研究の幾つかを紹介
した。まえがきでも述べたように、発想から実用化
までの道のりは長く、多くは途中で挫折する。
しかし、常に夢を持って新しい研究に取り組むこ
とが大切である。夢を実現するには、それぞれの専
門家の協力が必要である。そのためには、周りに理
解を得られるよう努力することも大切である。ここ
に述べた研究にも更に多くの理解者・協力者が得ら
れれば私の幸せこれに過ぎるものはない。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
●
×
● 重心
G
G
× 係留・送電線
取付位置
D
F
F
H
B
●
B
A
A
E
C
A 発電用風車
B ダクト付プロペラ
C ピトー管
D 発電装置
E 制御・通信器機
F・G フラップ
H 駆動軸系
図2 ジェット気流発電飛行体
保留となっている。なお、空気圧縮は火力の発電機
を夜間電力で駆動してガスタービンに併設の圧縮機
で空気を送り出し、昼間は逆に圧縮空気で燃焼させ
てガスタービンを動かして発電する。揚水式に代わ
り将来の電力貯蔵方式として期待されている。
さて、炭酸ガス海洋吸収装置は上の発想の延長線
上にある。火力タービンの排ガスを圧縮して、海底
<掘井 憲爾先生の経歴> 掘井 憲爾(ほりい けんじ)
昭和5年1月7日生
1952. 3 名古屋大学工学部電気学科卒業
1952. 4 通産省工業技術院電気試験所入所
電力部・災障害研究室
1962. 3 工学博士(名古屋大学)
1970. 10 通産省工業技術院電子技術総合研究所に所名変更
極限技術部・高エネルギー研究室長
1971. 4 名古屋大学工学部電気学科教授
1990. 10 国立豊田工業高等専門学校校長
1991. 4 名古屋大学名誉教授
1995. 3 国立豊田工業高等専門学校校長退官
1995. 4 国立豊田工業高等専門学校名誉教授
1996. 4 大同工業大学学長
1999. 3 大同工業大学学長退任
1999. 4 大同工業大学名誉教授
現在 電気学会ハンドブック出版委員会委員長
電気学会地震電磁現象調査専門委員会委員長、他
7
YH1-P9_タイトル∼フォトグラフ3.3 99.11.16 5:28 PM ページ 8
フィールド試験場の開設
フ
ォ
ト
グ
ラ
フ
全社技術研究発表会
瀬戸営業所の新築・移転により遊休となった旧営業所の施設は、技術開発室のフィールド試験場として整備を
進め、設備の導入と併行し一部の試験を開始した。
第8回全社技術研究発表会は、平成10年12月4日(金)教育・研究棟6F講堂において、岡田会長をはじめ全
社から約160名の聴講者の参加を得て、研究開発の成果や最新の施工事例等13件の発表が行われた。
今回は、研究所の現況を紹介するコーナーを設け、研究開発の成果をパネルや開発品の展示を行い、聴講者の
注目を集めた。
試験を開始した太陽光発電
省エネ照明機器試験
スーパーアームによるJP切断作業
発表風景
配電線部門では、配電線工事の作業効率の向上や
作業環境の改善等を目的に、工法・工具の開発と導
入・定着化を推進している。写真は、スーパーアー
ム(本文18ページ参照)によるJP線切断作業の一
例である。
研究所紹介コーナー
番号 発 表 テ ー マ 発 表 者
1
ケーブルスネーク取りシステムの改善 電力本部地中線部/青山 孝
2
制御ケーブル布設支援システムの開発 電力本部発変電部/尾崎 克
近藤 博
JP線切断作業風景
研究開発成果を各種イベントへ出展
当社では、電設工業展や電力蓄熱空調フェア等の
各種イベントに、高調波関連の計測・解析システム
や小型電力測定器・ケーブルハグラー等の開発品を
出展し、来場者の関心を集めた。
3
大経ボルト締めつけ装置の改良 電力本部送電部/須田 満 4
ドラムボーイII号の開発 電力本部地中線部/木下 実
5
TOENEC CFDの応用事例 技術開発室/伊藤 幸広
6
変圧器搭載型高所作業車について 配電本部配電統括部/三輪 泰司
7
小俣町図書館太陽光発電システム 三重支店伊勢営業所/川添 裕氏
8
コージェネレーションシステム経済性試算のソフト開発 9
愛知大学豊橋校舎電気設備工事 岡崎支店豊橋営業所/岡本 正二
10
名港トリトンライトアップ 営業本部名南営業所/浜砂 秀夫
11
マルチメディア導入による情報・運営管理について 東京本部工事部/渡辺 充徳
12
防食研究会活動報告 営業本部工事部/松田 得滋
13
低圧電路における異バンク波及事故 技術開発室/伊藤 公一
営業本部エンジニアリング部/三浦 従明
電力蓄熱空調フェア
’
99電設工業展
8
浜松技術フェア
9
YH1-P9_タイトル∼フォトグラフ3.3 99.11.16 5:28 PM ページ 8
フィールド試験場の開設
フ
ォ
ト
グ
ラ
フ
全社技術研究発表会
瀬戸営業所の新築・移転により遊休となった旧営業所の施設は、技術開発室のフィールド試験場として整備を
進め、設備の導入と併行し一部の試験を開始した。
第8回全社技術研究発表会は、平成10年12月4日(金)教育・研究棟6F講堂において、岡田会長をはじめ全
社から約160名の聴講者の参加を得て、研究開発の成果や最新の施工事例等13件の発表が行われた。
今回は、研究所の現況を紹介するコーナーを設け、研究開発の成果をパネルや開発品の展示を行い、聴講者の
注目を集めた。
試験を開始した太陽光発電
省エネ照明機器試験
スーパーアームによるJP切断作業
発表風景
配電線部門では、配電線工事の作業効率の向上や
作業環境の改善等を目的に、工法・工具の開発と導
入・定着化を推進している。写真は、スーパーアー
ム(本文18ページ参照)によるJP線切断作業の一
例である。
研究所紹介コーナー
番号 発 表 テ ー マ 発 表 者
1
ケーブルスネーク取りシステムの改善 電力本部地中線部/青山 孝
2
制御ケーブル布設支援システムの開発 電力本部発変電部/尾崎 克
近藤 博
JP線切断作業風景
研究開発成果を各種イベントへ出展
当社では、電設工業展や電力蓄熱空調フェア等の
各種イベントに、高調波関連の計測・解析システム
や小型電力測定器・ケーブルハグラー等の開発品を
出展し、来場者の関心を集めた。
3
大経ボルト締めつけ装置の改良 電力本部送電部/須田 満 4
ドラムボーイII号の開発 電力本部地中線部/木下 実
5
TOENEC CFDの応用事例 技術開発室/伊藤 幸広
6
変圧器搭載型高所作業車について 配電本部配電統括部/三輪 泰司
7
小俣町図書館太陽光発電システム 三重支店伊勢営業所/川添 裕氏
8
コージェネレーションシステム経済性試算のソフト開発 9
愛知大学豊橋校舎電気設備工事 岡崎支店豊橋営業所/岡本 正二
10
名港トリトンライトアップ 営業本部名南営業所/浜砂 秀夫
11
マルチメディア導入による情報・運営管理について 東京本部工事部/渡辺 充徳
12
防食研究会活動報告 営業本部工事部/松田 得滋
13
低圧電路における異バンク波及事故 技術開発室/伊藤 公一
営業本部エンジニアリング部/三浦 従明
電力蓄熱空調フェア
’
99電設工業展
8
浜松技術フェア
9
YP10-33_技術報告3.3 99.11.16 5:30 PM ページ 10
技
術
報
告
﹁
充
電
式
ケ
ー
ブ
ル
ハ
グ
ラ
ー
﹂
の
開
発
「充電式ケーブルハグラー」の開発
電力本部地中線部/中根 昌文
1
はじめに
近年、全国レベルにおいて「街並み都市景観向
上」・「都市災害の防止」および「通行空間の拡大」
等を目的に、電線類を地中化する整備事業が電線共
同溝(C・C・Box)方式で進められている。こ
のC・C・Boxに電力・通信ケーブルを布設する
ことで、電力・通信供給設備を構築し、当社もその
電力供給設備の施工に携わっている。
電力ケーブルは、主に「6600V架橋ポリエチレ
ン絶縁ビニルシースケーブル(CVケーブル)」が使
用されている。その接続や端末処理作業の現状は、
電工ナイフによる手作業が主体で、作業者の長い経
験や熟練した職人的技術に頼っている。
しかしながら、今後は同レベルの職人的技術の後
継者育成が困難になりつつあり、電工ナイフ工法に
替わる「新しい工具・工法」の開発に対する要望が
高いという背景がある。
このような状況を踏まえ、平成8年から電力ケーブ
ルのシースおよび絶縁体の剥ぎ取り作業を機械化す
る研究に着手し、この度、安全でかつ高品質な施工
が可能となるケーブル剥ぎ取り工具を開発し、製品
名「充電式ケーブルハグラー」(以下、ハグラーとい
う)として完成したので、その概要を報告する。
主 な 作 業 形 態
シ
ー
ス
剥
ぎ
取
り
絶
縁
体
剥
ぎ
取
り
写真2
10
技
術
報
告
② 施工品質は、作業者の技術レベルや電工ナイフ
の切れ味等によって、必ずしも均一とならない。
③ 冬の気温が低い場合は、特にケーブル被覆が固
くなり、電工ナイフによる作業効率が一段と悪く
なる。
(2)電工ナイフよる主な作業形態は写真2のとおり
である。
3
写真1
2
充電式ケーブルハグラー外観
現状の問題点
(1)現状のケーブル接続・端末処理作業の問題点は
次のとおりである。
① 電工ナイフ取扱い時の「電力ケーブルへの損傷」
あるいは「作業者のケガ」等の未然防止策は、「ナ
イフの取扱いに細心の注意を図る」といった対策
しかない。
作業手順
問題点
①剥ぎ取り寸法の確認。
②剥ぎ取り位置のマーキ
ング。
③縦方向の刃入れ。
④円周方向の刃入れ。
⑤シースの剥ぎ取り。
※電工ナイフ使用時、し
ゃへい銅テープや絶縁
体を損傷する恐れがあ
る。
①剥ぎ取り寸法の確認。
②剥ぎ取り位置のマーキ
ング。
③円周方向の刃入れ。
④縦方向の刃入れ。
⑤絶縁体の剥ぎ取り。
※電工ナイフ使用時、導
体を損傷する恐れがあ
る。
※絶縁体剥ぎ取り時、導
体の「より」が崩れる
恐れがある。
電工ナイフによる剥ぎ取り作業
アタッチメント類
開発に当たっての考え方
写真3 本体およびアタッチメント
開発を進めるに当たっては、次の項目に重点を置
き検討を行った。
(1)ケーブルのシースおよび絶縁体剥ぎ取り作業の
機械化。
(2)施工品質の均一化。
(3)工具の安全性の確保。
4
本体工具類
ハグラーの特徴
(1)誰でも、簡単かつ安全に「シース剥ぎ取り」と
「絶縁体剥ぎ取り」が可能。
(2)中部電力を含めた4電力統一規格品の「6600
VCVケーブル」の400、250、150、38mm 2
に適用。
(3)取扱者の誤操作によるケガの未然防止のため、
スイッチのインターロック機構を内蔵。
5
仕様、構造の概要
(1)ハグラーは、各ケーブルサイズに対応した、シ
ース用・絶縁体用のアタッチメントを充電式ドリル
の先端にワンタッチで装着できる構造としている。
このアタッチメントが回転することにより、ケーブ
ルのシースおよび絶縁体が規定寸法どおり、スパイ
ラル状に剥ぎ取れる構造となっている。
なお、ハグラー本体およびアタッチメント類の部
品構成は、写真3および図1のとおりである。
① シース用アタッチメントの外観・仕様は、写真4
のとおりであり、ケーブルのシースだけを剥ぎ取
り、その下にある押えテープや遮蔽銅テープには
傷を付けない構造となっている。
② 絶縁体用アタッチメントの外観・仕様は、写真5
﹁
充
電
式
ケ
ー
ブ
ル
ハ
グ
ラ
ー
﹂
の
開
発
図1 ケーブルハグラー仕様・構造図
11
YP10-33_技術報告3.3 99.11.16 5:30 PM ページ 10
技
術
報
告
﹁
充
電
式
ケ
ー
ブ
ル
ハ
グ
ラ
ー
﹂
の
開
発
「充電式ケーブルハグラー」の開発
電力本部地中線部/中根 昌文
1
はじめに
近年、全国レベルにおいて「街並み都市景観向
上」・「都市災害の防止」および「通行空間の拡大」
等を目的に、電線類を地中化する整備事業が電線共
同溝(C・C・Box)方式で進められている。こ
のC・C・Boxに電力・通信ケーブルを布設する
ことで、電力・通信供給設備を構築し、当社もその
電力供給設備の施工に携わっている。
電力ケーブルは、主に「6600V架橋ポリエチレ
ン絶縁ビニルシースケーブル(CVケーブル)」が使
用されている。その接続や端末処理作業の現状は、
電工ナイフによる手作業が主体で、作業者の長い経
験や熟練した職人的技術に頼っている。
しかしながら、今後は同レベルの職人的技術の後
継者育成が困難になりつつあり、電工ナイフ工法に
替わる「新しい工具・工法」の開発に対する要望が
高いという背景がある。
このような状況を踏まえ、平成8年から電力ケーブ
ルのシースおよび絶縁体の剥ぎ取り作業を機械化す
る研究に着手し、この度、安全でかつ高品質な施工
が可能となるケーブル剥ぎ取り工具を開発し、製品
名「充電式ケーブルハグラー」(以下、ハグラーとい
う)として完成したので、その概要を報告する。
主 な 作 業 形 態
シ
ー
ス
剥
ぎ
取
り
絶
縁
体
剥
ぎ
取
り
写真2
10
技
術
報
告
② 施工品質は、作業者の技術レベルや電工ナイフ
の切れ味等によって、必ずしも均一とならない。
③ 冬の気温が低い場合は、特にケーブル被覆が固
くなり、電工ナイフによる作業効率が一段と悪く
なる。
(2)電工ナイフよる主な作業形態は写真2のとおり
である。
3
写真1
2
充電式ケーブルハグラー外観
現状の問題点
(1)現状のケーブル接続・端末処理作業の問題点は
次のとおりである。
① 電工ナイフ取扱い時の「電力ケーブルへの損傷」
あるいは「作業者のケガ」等の未然防止策は、「ナ
イフの取扱いに細心の注意を図る」といった対策
しかない。
作業手順
問題点
①剥ぎ取り寸法の確認。
②剥ぎ取り位置のマーキ
ング。
③縦方向の刃入れ。
④円周方向の刃入れ。
⑤シースの剥ぎ取り。
※電工ナイフ使用時、し
ゃへい銅テープや絶縁
体を損傷する恐れがあ
る。
①剥ぎ取り寸法の確認。
②剥ぎ取り位置のマーキ
ング。
③円周方向の刃入れ。
④縦方向の刃入れ。
⑤絶縁体の剥ぎ取り。
※電工ナイフ使用時、導
体を損傷する恐れがあ
る。
※絶縁体剥ぎ取り時、導
体の「より」が崩れる
恐れがある。
電工ナイフによる剥ぎ取り作業
アタッチメント類
開発に当たっての考え方
写真3 本体およびアタッチメント
開発を進めるに当たっては、次の項目に重点を置
き検討を行った。
(1)ケーブルのシースおよび絶縁体剥ぎ取り作業の
機械化。
(2)施工品質の均一化。
(3)工具の安全性の確保。
4
本体工具類
ハグラーの特徴
(1)誰でも、簡単かつ安全に「シース剥ぎ取り」と
「絶縁体剥ぎ取り」が可能。
(2)中部電力を含めた4電力統一規格品の「6600
VCVケーブル」の400、250、150、38mm 2
に適用。
(3)取扱者の誤操作によるケガの未然防止のため、
スイッチのインターロック機構を内蔵。
5
仕様、構造の概要
(1)ハグラーは、各ケーブルサイズに対応した、シ
ース用・絶縁体用のアタッチメントを充電式ドリル
の先端にワンタッチで装着できる構造としている。
このアタッチメントが回転することにより、ケーブ
ルのシースおよび絶縁体が規定寸法どおり、スパイ
ラル状に剥ぎ取れる構造となっている。
なお、ハグラー本体およびアタッチメント類の部
品構成は、写真3および図1のとおりである。
① シース用アタッチメントの外観・仕様は、写真4
のとおりであり、ケーブルのシースだけを剥ぎ取
り、その下にある押えテープや遮蔽銅テープには
傷を付けない構造となっている。
② 絶縁体用アタッチメントの外観・仕様は、写真5
﹁
充
電
式
ケ
ー
ブ
ル
ハ
グ
ラ
ー
﹂
の
開
発
図1 ケーブルハグラー仕様・構造図
11
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技
術
報
告
技
術
報
告
﹁
充
電
式
ケ
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ハ
グ
ラ
ー
﹂
の
開
発
﹁
充
電
式
ケ
ー
ブ
ル
ハ
グ
ラ
ー
﹂
の
開
発
のとおりでありケーブルの絶縁体だけを剥ぎ取り、
導体部分や必要な絶縁体部分に傷を付けない構造
となっている。
③ 絶縁体用アタッチメントの後部には、図2の構造
のとおり絶縁体用ストッパーが取付けてあり、調節
棒を調整することで剥ぎ取り寸法の設定ができる。
(2)シース剥ぎ取り方法
① 該当ケーブルにシース用ストッパーをセットす
る。
② 該当ケーブルに応じたアタッチメントをハグラ
ーにセットしてケーブルに挿入する。
③ ハグラーのスイッチをONする。
④ アタッチメントが回転して、スパイラル状にシ
ースを剥ぎ取る。
⑤ 設定寸法位置までくると自動的に輪切りをして
完了となる。
(3)絶縁剥ぎ取り方法
① 当該ケーブルに応じたアタッチメントを選び、
後部の絶縁体用ストッパーを絶縁剥ぎ取り寸法に
合わせて設定する。
② 剥ぎ取り寸法を設定したアタッチメントをハグ
ラーにセットしてケーブルに挿入する。
③ ハグラーのスイッチをONする。
④ アタッチメントが回転して、スパイラル状に絶
縁体を剥ぎ取る。
⑤ 設定寸法位置までくると自動的に輪切りをして
完了となる。
写真4 シース用アタッチメント仕様・概要
写真6 シースを剥ぎ取りおよび完了後
12
絶縁体用ストッパー仕様
6
写真7
絶縁体用ストッパーの設定および絶縁体剥ぎ取り
導入後の効果
(1)電工ナイフによる作業を大幅に無くしたことか
ら、「安全作業の確保」が図れた。
(2)ハグラーを使用することにより、「施工品質の均
一化」と「施工技術の改善」が図れた。
(3)難しい電工ナイフによる施工技術は必要でなく
なり、作業が簡単な工具取扱い方法の習得により行
えるので、
「技術者育成の短期・簡素化」が図れた。
7
写真5 絶縁体用アタッチメント仕様・概要
図2
(4)ハグラーの安全装置
① 本体スイッチは誤操作を起こさないように、イ
ンターロック機能を内蔵している。
② ハンドル部は樹脂ブロックをセットし、不用意
に手が回転部に触れない形状としている。
③ 絶縁体用アタッチメントの寸法調節棒は、回転中
に不用意に触れても瞬時に止まる機構としている。
おわりに
電力ケーブルのシースおよび絶縁体の剥ぎ取り作
業は、均一な施工品質や安全面から熟練した職人的
技術を必要としたが、ハグラーを開発したことによ
って、簡単な教育で、誰でも均一な施工品質で、安
全に施工することが可能となり、大幅な施工技術の
改善を図ることができた。
今回、本製品を「99電設工業展」へ出展したが、
見学者をはじめ関連業界から注目を集め好評を得る
とともに、工業展終了後も数多くの問合わせがあり、
「技術のトーエネック」として十分にPRすることが
できたと考えている。今後は、当社のホームページ
での紹介も含めより一層のPRを行い、トーエネッ
クの電工マンのみならず全ての電工マンに対しての
普及拡大に取組みたいと考えている。
今回の開発に対する反響から、熟練者による手作
業を機械化すること、安全性・施工性の高い工法や
工具の開発への要望が多いことを再認識させられた。
今後、さらなる作業改善意識を持って現場作業を
分析し、施工技術・作業環境の改善に努め、電力安
定供給の一翼を担っていきたいと考えている。
最後に、開発に当たってはケーブル公差等への対
応に苦慮したが、中部電力㈱殿を始め開発メーカー
である㈱敬相(けいあい)殿、ならびに各電線メーカー殿
から、多大な尽力とアドバイスを賜ったことにより
課題を克服することができた。ここに改めてお礼を
申し上げます。
13
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技
術
報
告
技
術
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ラ
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の
開
発
のとおりでありケーブルの絶縁体だけを剥ぎ取り、
導体部分や必要な絶縁体部分に傷を付けない構造
となっている。
③ 絶縁体用アタッチメントの後部には、図2の構造
のとおり絶縁体用ストッパーが取付けてあり、調節
棒を調整することで剥ぎ取り寸法の設定ができる。
(2)シース剥ぎ取り方法
① 該当ケーブルにシース用ストッパーをセットす
る。
② 該当ケーブルに応じたアタッチメントをハグラ
ーにセットしてケーブルに挿入する。
③ ハグラーのスイッチをONする。
④ アタッチメントが回転して、スパイラル状にシ
ースを剥ぎ取る。
⑤ 設定寸法位置までくると自動的に輪切りをして
完了となる。
(3)絶縁剥ぎ取り方法
① 当該ケーブルに応じたアタッチメントを選び、
後部の絶縁体用ストッパーを絶縁剥ぎ取り寸法に
合わせて設定する。
② 剥ぎ取り寸法を設定したアタッチメントをハグ
ラーにセットしてケーブルに挿入する。
③ ハグラーのスイッチをONする。
④ アタッチメントが回転して、スパイラル状に絶
縁体を剥ぎ取る。
⑤ 設定寸法位置までくると自動的に輪切りをして
完了となる。
写真4 シース用アタッチメント仕様・概要
写真6 シースを剥ぎ取りおよび完了後
12
絶縁体用ストッパー仕様
6
写真7
絶縁体用ストッパーの設定および絶縁体剥ぎ取り
導入後の効果
(1)電工ナイフによる作業を大幅に無くしたことか
ら、「安全作業の確保」が図れた。
(2)ハグラーを使用することにより、「施工品質の均
一化」と「施工技術の改善」が図れた。
(3)難しい電工ナイフによる施工技術は必要でなく
なり、作業が簡単な工具取扱い方法の習得により行
えるので、
「技術者育成の短期・簡素化」が図れた。
7
写真5 絶縁体用アタッチメント仕様・概要
図2
(4)ハグラーの安全装置
① 本体スイッチは誤操作を起こさないように、イ
ンターロック機能を内蔵している。
② ハンドル部は樹脂ブロックをセットし、不用意
に手が回転部に触れない形状としている。
③ 絶縁体用アタッチメントの寸法調節棒は、回転中
に不用意に触れても瞬時に止まる機構としている。
おわりに
電力ケーブルのシースおよび絶縁体の剥ぎ取り作
業は、均一な施工品質や安全面から熟練した職人的
技術を必要としたが、ハグラーを開発したことによ
って、簡単な教育で、誰でも均一な施工品質で、安
全に施工することが可能となり、大幅な施工技術の
改善を図ることができた。
今回、本製品を「99電設工業展」へ出展したが、
見学者をはじめ関連業界から注目を集め好評を得る
とともに、工業展終了後も数多くの問合わせがあり、
「技術のトーエネック」として十分にPRすることが
できたと考えている。今後は、当社のホームページ
での紹介も含めより一層のPRを行い、トーエネッ
クの電工マンのみならず全ての電工マンに対しての
普及拡大に取組みたいと考えている。
今回の開発に対する反響から、熟練者による手作
業を機械化すること、安全性・施工性の高い工法や
工具の開発への要望が多いことを再認識させられた。
今後、さらなる作業改善意識を持って現場作業を
分析し、施工技術・作業環境の改善に努め、電力安
定供給の一翼を担っていきたいと考えている。
最後に、開発に当たってはケーブル公差等への対
応に苦慮したが、中部電力㈱殿を始め開発メーカー
である㈱敬相(けいあい)殿、ならびに各電線メーカー殿
から、多大な尽力とアドバイスを賜ったことにより
課題を克服することができた。ここに改めてお礼を
申し上げます。
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技
術
報
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水
蓄
熱
槽
最
適
容
量
計
算
ソ
フ
ト
の
開
発
技
術
報
告
水蓄熱槽最適容量計算ソフトの開発
技術開発室/河路 友也
1
の変化などが確認できるため、教育用としても有効
なツールになると考えられる。
はじめに
蓄熱式空調システムは、電力負荷平準化などの地
球環境的な貢献と同時に、熱源容量の減少、契約電
力の低減などによりコストダウンが実現され、企業
や個人に対しても利益を与え得るものである。しか
しながら、これらのメリットは、適切な設計と運転
管理が行われて始めて実現されるものであり、そう
でなければ、蓄熱槽建築に関わるコストの増大や、
二次側空調負荷の処理に有効に使われない無駄な蓄
熱を行ってしまい、非蓄熱式空調システムに比べ設
備費、運転費ともに増大する結果にもなりかねない。
最近の関連学会における調査研究発表において明ら
かにされつつあるが、過去に蓄熱式空調システムが
採用された建物において、蓄熱式空調システムが有
効に働いていない事例が少なくない。この様な問題
を排除するためには蓄熱式空調システムの正しい設
計と、運用後の運転管理が重要となってくる。
本ソフトの開発においては、蓄熱式空調システム
の正しい設計を行うためのツールを技術者に提供す
ることにより、設計段階における間違いを排除する
ことを目的としている。開発を行うツールは設計段
階で使用する事を前提としているが、既設の蓄熱式
空調システムの状況を入力し、現状の問題点の把握
や改善策の検討にも使用できるので、運転管理やリ
ニューアルについても利用できるものと考えている。
また、入力条件による蓄熱槽内の温度プロフィール
2
開発ソフトの役割
図1に蓄熱槽容量の設計の大まかな流れを示し、
本ソフトがどのような位置付けにあるのか説明する。
対象建物が決定すれば、その建物に必要な空調負荷
計算を行う。次に、全空調負荷のうちどの程度の負
荷を蓄熱槽に蓄えるのかを検討する。夜間移行率が
高いほど深夜電力が有効に使え、ランニングコスト
は安くなる。しかしながら、あまり夜間移行率を高
く設定すると、蓄熱槽に蓄える熱量が多くなり、熱
源や蓄熱槽容量が大きくなりすぎる場合もある。蓄
熱槽に蓄えるべき熱量が決定すると、それに必要な
槽容量を求めなければいけないが、そこで問題とな
るのが蓄熱槽効率である。槽容量は下式により求め
られるので、蓄熱槽効率の大小によって、槽容量が
変化してしまう。蓄熱槽効率の設定を誤ると、槽容
/
V= Q Δθ×η
Q:蓄熱槽に蓄える熱量
V:槽容量(m3)
Δθ:利用温度差(℃)
η:蓄熱槽効率
量が過剰になったり、不足してしまう場合がある。
このように蓄熱槽効率は蓄熱槽の設計においては、
非常に重要なファクターでありながら、今まではそ
の数値を確定する有効な手段が無く、定義もあいま
いであり、経験的な数値を用いるしかなかった。そ
こで、本ソフトが必要となるのである。本ソフトで
あれば、熱源や二次側の条件に応じた蓄熱運転シミ
ュレーションを実施することによって、槽内温度プ
ロフィールを求め、蓄熱槽効率が算出されるので、
最も蓄熱槽効率が高くなる槽容量を算出する事が出
来るのである。このソフトは様々な条件下でのシミ
ュレーションが可能であるため、図1に示す夜間移
行率の検討や二次側の温度設定、流量制御など蓄熱
式空調システムの設計全般について利用可能である。
3
14
水蓄熱槽最適容量設計ソフトの目的と効果
ソフト開発の経緯と意義
本ソフトは名古屋大学中原信生名誉教授の理論に
基づくものであり、その研究成果をより多くの人に
利用してもらうために、財団法人ヒートポンプ・蓄
熱センターがWindows化の事業を立ち上げ、それを
当社が請け負ったものである。ソフト会社でない当
社がこのような作業を行うには理由があり、前号の
TDレポートにおいて中原先生が特別寄稿で記され
ているように、技術の継承という役割があるからで
ある。よって、この作業はソフトの内容もわからず
に、ただWindows上で動作するものを作成するので
はなく、内容を完全に理解した上で、当社独自技術
としてソフトを完成していく必要がある。そうすれ
ば、今後のバージョンアップ等も可能となり、技術
の継承が実現していくものと考える。
4
図1
のダイヤグラムを図3と図4に示す。図3は蓄熱槽へ
の入出力の配管が、一次側、二次側それぞれ独立し
ている場合であり、図4はそれらの配管が一本に纏ま
って共有されている場合である。表1には入力可能
な条件を示す。熱源は現状では三方弁による入口温
度制御のみであり、流量は定流量である。しかしな
水
蓄
熱
槽
最
適
容
量
計
算
ソ
フ
ト
の
開
発
ソフトの概要
プログラムの概要について説明する。図2にフロー
チャートを示す。データ入力後、24時間の運転シミ
ュレーションを実施し、槽内温度プロフィールを求
める。槽内温度の計算は定常状態に達するまで最大
5日間の繰返し計算を行う。定常状態になった段階
で、二次側送水温度が送水限界温度の範囲外になっ
た場合には、槽容量を増減させて再計算を行う。つ
まり、このソフトでは二次側の空調負荷を完全に処
理することの出来る最小の蓄熱槽容量を求めるので
ある。蓄熱槽容量の変更は手入力により任意の数値
を入力することも可能であるが、ニュートンラプソ
ン法により、自動的に収束計算を行う機能も有して
いる。よって、自動計算を選択すれば、コンピュー
タから離れていても数分後には、最適な槽容量が算
出されているのである。
このプログラムで計算可能な蓄熱式空調システム
図2 フローチャート
15
YP10-33_技術報告3.3 99.11.16 5:30 PM ページ 14
技
術
報
告
水
蓄
熱
槽
最
適
容
量
計
算
ソ
フ
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の
開
発
技
術
報
告
水蓄熱槽最適容量計算ソフトの開発
技術開発室/河路 友也
1
の変化などが確認できるため、教育用としても有効
なツールになると考えられる。
はじめに
蓄熱式空調システムは、電力負荷平準化などの地
球環境的な貢献と同時に、熱源容量の減少、契約電
力の低減などによりコストダウンが実現され、企業
や個人に対しても利益を与え得るものである。しか
しながら、これらのメリットは、適切な設計と運転
管理が行われて始めて実現されるものであり、そう
でなければ、蓄熱槽建築に関わるコストの増大や、
二次側空調負荷の処理に有効に使われない無駄な蓄
熱を行ってしまい、非蓄熱式空調システムに比べ設
備費、運転費ともに増大する結果にもなりかねない。
最近の関連学会における調査研究発表において明ら
かにされつつあるが、過去に蓄熱式空調システムが
採用された建物において、蓄熱式空調システムが有
効に働いていない事例が少なくない。この様な問題
を排除するためには蓄熱式空調システムの正しい設
計と、運用後の運転管理が重要となってくる。
本ソフトの開発においては、蓄熱式空調システム
の正しい設計を行うためのツールを技術者に提供す
ることにより、設計段階における間違いを排除する
ことを目的としている。開発を行うツールは設計段
階で使用する事を前提としているが、既設の蓄熱式
空調システムの状況を入力し、現状の問題点の把握
や改善策の検討にも使用できるので、運転管理やリ
ニューアルについても利用できるものと考えている。
また、入力条件による蓄熱槽内の温度プロフィール
2
開発ソフトの役割
図1に蓄熱槽容量の設計の大まかな流れを示し、
本ソフトがどのような位置付けにあるのか説明する。
対象建物が決定すれば、その建物に必要な空調負荷
計算を行う。次に、全空調負荷のうちどの程度の負
荷を蓄熱槽に蓄えるのかを検討する。夜間移行率が
高いほど深夜電力が有効に使え、ランニングコスト
は安くなる。しかしながら、あまり夜間移行率を高
く設定すると、蓄熱槽に蓄える熱量が多くなり、熱
源や蓄熱槽容量が大きくなりすぎる場合もある。蓄
熱槽に蓄えるべき熱量が決定すると、それに必要な
槽容量を求めなければいけないが、そこで問題とな
るのが蓄熱槽効率である。槽容量は下式により求め
られるので、蓄熱槽効率の大小によって、槽容量が
変化してしまう。蓄熱槽効率の設定を誤ると、槽容
/
V= Q Δθ×η
Q:蓄熱槽に蓄える熱量
V:槽容量(m3)
Δθ:利用温度差(℃)
η:蓄熱槽効率
量が過剰になったり、不足してしまう場合がある。
このように蓄熱槽効率は蓄熱槽の設計においては、
非常に重要なファクターでありながら、今まではそ
の数値を確定する有効な手段が無く、定義もあいま
いであり、経験的な数値を用いるしかなかった。そ
こで、本ソフトが必要となるのである。本ソフトで
あれば、熱源や二次側の条件に応じた蓄熱運転シミ
ュレーションを実施することによって、槽内温度プ
ロフィールを求め、蓄熱槽効率が算出されるので、
最も蓄熱槽効率が高くなる槽容量を算出する事が出
来るのである。このソフトは様々な条件下でのシミ
ュレーションが可能であるため、図1に示す夜間移
行率の検討や二次側の温度設定、流量制御など蓄熱
式空調システムの設計全般について利用可能である。
3
14
水蓄熱槽最適容量設計ソフトの目的と効果
ソフト開発の経緯と意義
本ソフトは名古屋大学中原信生名誉教授の理論に
基づくものであり、その研究成果をより多くの人に
利用してもらうために、財団法人ヒートポンプ・蓄
熱センターがWindows化の事業を立ち上げ、それを
当社が請け負ったものである。ソフト会社でない当
社がこのような作業を行うには理由があり、前号の
TDレポートにおいて中原先生が特別寄稿で記され
ているように、技術の継承という役割があるからで
ある。よって、この作業はソフトの内容もわからず
に、ただWindows上で動作するものを作成するので
はなく、内容を完全に理解した上で、当社独自技術
としてソフトを完成していく必要がある。そうすれ
ば、今後のバージョンアップ等も可能となり、技術
の継承が実現していくものと考える。
4
図1
のダイヤグラムを図3と図4に示す。図3は蓄熱槽へ
の入出力の配管が、一次側、二次側それぞれ独立し
ている場合であり、図4はそれらの配管が一本に纏ま
って共有されている場合である。表1には入力可能
な条件を示す。熱源は現状では三方弁による入口温
度制御のみであり、流量は定流量である。しかしな
水
蓄
熱
槽
最
適
容
量
計
算
ソ
フ
ト
の
開
発
ソフトの概要
プログラムの概要について説明する。図2にフロー
チャートを示す。データ入力後、24時間の運転シミ
ュレーションを実施し、槽内温度プロフィールを求
める。槽内温度の計算は定常状態に達するまで最大
5日間の繰返し計算を行う。定常状態になった段階
で、二次側送水温度が送水限界温度の範囲外になっ
た場合には、槽容量を増減させて再計算を行う。つ
まり、このソフトでは二次側の空調負荷を完全に処
理することの出来る最小の蓄熱槽容量を求めるので
ある。蓄熱槽容量の変更は手入力により任意の数値
を入力することも可能であるが、ニュートンラプソ
ン法により、自動的に収束計算を行う機能も有して
いる。よって、自動計算を選択すれば、コンピュー
タから離れていても数分後には、最適な槽容量が算
出されているのである。
このプログラムで計算可能な蓄熱式空調システム
図2 フローチャート
15
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技
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水
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最
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量
計
算
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開
発
技
術
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図3 個別入力蓄熱システム略ダイヤグラム
図4 統括入力蓄熱システム略ダイヤグラム
表1
入力可能システム概要
項目
設定可能な内容
熱源
三方弁による入口温度制御が原則。入口限界温度を設定できる。全能力運転制御の
みで容量制御は行わない。
蓄熱槽
二次側
各槽の容量は全て同じとする。槽数は1槽から100槽まで可能である。
流量制御
二方弁、三方弁の設定により変流量、定流量の設定が可能である。二方弁は比例二
方弁とオンオフ二方弁のいずれかが選択できる。また、制御を一切行わない無制御
の状態も選択できる。
風量設定
定風量と変風量の設定が可能。
定温制御
定温送水制御の設定可能。送水温度入力。
系統数
最大10系統まで可能。
一次側、二次側と蓄熱槽との配管方式
蓄熱槽への入出力配管がそれぞれ独立した個別方式と、一本に纏めて共有する統括
方式が選択できる。
表2 出力項目一覧
名 称
分 類
熱 源
蓄熱槽
内 容
熱源容量
運転負荷率によって補正された値
熱源容量減少割合
最大空調負荷に対する熱源容量(補正前)の割合
熱源運転時間
1日の中で熱源が稼働した合計時間
熱源総出力
熱源から出力された総熱量
時間毎の熱源運転状態
計算時間間隔毎の熱源の稼働・停止の状態
時間毎の三方弁開度
計算時間間隔毎の熱源入口側に設置された三方弁の開度
蓄熱槽数
蓄熱槽の槽数
単槽の容量
蓄熱槽の単槽の容量
がら、今後変流量制御の採用が増える事が予想され
るため、変流量制御に対応出来るように改良中であ
る。二次側の流量制御方法は、比例二方弁、オンオ
フ二方弁、三方弁、無制御から選択することができ
る。二次側の負荷の計算は別ソフトで計算した値を
系統別に入力する。系統は最大10系統まで入力可能
である。温度設定や流量制御が等しい場合には、1
つの系統にまとめる事も可能である。
表2には出力項目を示す。算出された値は全て出
力するようになっている。これらのデータは画面へ
の表示、プリンターへの出力、ファイルへの出力が
可能である。表計算ソフトでデータを読込めば、槽
内温度プロフィールの経時的な変化を表現する事な
ども可能である。本ソフトにも計算結果データを読
み込み、温度プロフィールの変化を表示させる機能
なども有している。
5
二次側
16
蓄熱槽数×単槽の容量
必要蓄熱量
蓄熱槽に貯めなければならない熱量
今後の展開
現段階では、連結完全混合槽型蓄熱槽のみに対応
しているが、平成12年には温度成層型についても完
成予定である。今後は、熱負荷計算ソフト(TDレポ
ート第13号掲載)との連携も検討し、より使いやす
いものにしていきたいと考えている。熱負荷計算ソ
フトの時と同様に現場から数多くの意見が得られる
ことを期待している。
ソフト操作方法の概要
ソフトは図5に示すように、メニュー画面から各種
操作が選択出来るようになっている。各操作はほと
んどマウスによって行う事が出来る。
図6から図8に代表的な画面を示す。図6は二次側
の設定画面である。各系統毎の出入口温度設定や流
量制御方法を選択する。空調熱負荷は本ソフトにも
入力機能が用意されているが、ファイルから読込む
事も可能である。負荷の変更なども自由に行う事が
出来る。図7は熱源関係の運転時間や温度設定を行う
画面である。冷却塔の出入口水温や成績係数は現段
階では計算に反映されていないが、今後変更する予
定である。図8は計算結果を表示中の画面である。槽
内温度プロフィールは2時間毎に示されるので、経時
的な変化を捉える事が出来る。全槽の計算時間毎の
水温も数値ですべて表示されるので、詳細なデータ
解析も可能である。
図6 二次側設定入力画面
図7 熱源関係設定入力画面
ツールバー
終了
蓄熱槽槽容量
6
水
蓄
熱
槽
最
適
容
量
計
算
ソ
フ
ト
の
開
発
プログラムを終了させる
使用方法
プログラムの使用方法が表示される
新規入力
新規にデータ入力し計算を行う
既存データから計算 既存データを読込み計算を行う
蓄熱率
必要蓄熱量/1日の積算空調負荷
蓄熱槽効率
最終状態における蓄熱槽効率
グラフ表示
蓄熱槽内水温
計算時間間隔毎の全槽の水温
数値表示
計算結果ファイルを用いて数値表示
最大空調負荷
1日の中で最も大きい空調負荷
用語解説
用語の解説が表示される
1日の積算空調負荷
1日の全系統の積算空調負荷
各系統・各時間毎の水量
各系統・各時間毎の水量変化
各系統・各時間毎の空調負荷
各系統・各時間毎の空調負荷の変化
メニュー画面
バージョン情報
計算結果ファイルを用いてグラフ表示
切換え可能
プログラムバージョン情報が表示される
図5 メニュー画面からの操作内容
図8
計算結果表示画面
17
YP10-33_技術報告3.3 99.11.16 5:30 PM ページ 16
技
術
報
告
水
蓄
熱
槽
最
適
容
量
計
算
ソ
フ
ト
の
開
発
技
術
報
告
図3 個別入力蓄熱システム略ダイヤグラム
図4 統括入力蓄熱システム略ダイヤグラム
表1
入力可能システム概要
項目
設定可能な内容
熱源
三方弁による入口温度制御が原則。入口限界温度を設定できる。全能力運転制御の
みで容量制御は行わない。
蓄熱槽
二次側
各槽の容量は全て同じとする。槽数は1槽から100槽まで可能である。
流量制御
二方弁、三方弁の設定により変流量、定流量の設定が可能である。二方弁は比例二
方弁とオンオフ二方弁のいずれかが選択できる。また、制御を一切行わない無制御
の状態も選択できる。
風量設定
定風量と変風量の設定が可能。
定温制御
定温送水制御の設定可能。送水温度入力。
系統数
最大10系統まで可能。
一次側、二次側と蓄熱槽との配管方式
蓄熱槽への入出力配管がそれぞれ独立した個別方式と、一本に纏めて共有する統括
方式が選択できる。
表2 出力項目一覧
名 称
分 類
熱 源
蓄熱槽
内 容
熱源容量
運転負荷率によって補正された値
熱源容量減少割合
最大空調負荷に対する熱源容量(補正前)の割合
熱源運転時間
1日の中で熱源が稼働した合計時間
熱源総出力
熱源から出力された総熱量
時間毎の熱源運転状態
計算時間間隔毎の熱源の稼働・停止の状態
時間毎の三方弁開度
計算時間間隔毎の熱源入口側に設置された三方弁の開度
蓄熱槽数
蓄熱槽の槽数
単槽の容量
蓄熱槽の単槽の容量
がら、今後変流量制御の採用が増える事が予想され
るため、変流量制御に対応出来るように改良中であ
る。二次側の流量制御方法は、比例二方弁、オンオ
フ二方弁、三方弁、無制御から選択することができ
る。二次側の負荷の計算は別ソフトで計算した値を
系統別に入力する。系統は最大10系統まで入力可能
である。温度設定や流量制御が等しい場合には、1
つの系統にまとめる事も可能である。
表2には出力項目を示す。算出された値は全て出
力するようになっている。これらのデータは画面へ
の表示、プリンターへの出力、ファイルへの出力が
可能である。表計算ソフトでデータを読込めば、槽
内温度プロフィールの経時的な変化を表現する事な
ども可能である。本ソフトにも計算結果データを読
み込み、温度プロフィールの変化を表示させる機能
なども有している。
5
二次側
16
蓄熱槽数×単槽の容量
必要蓄熱量
蓄熱槽に貯めなければならない熱量
今後の展開
現段階では、連結完全混合槽型蓄熱槽のみに対応
しているが、平成12年には温度成層型についても完
成予定である。今後は、熱負荷計算ソフト(TDレポ
ート第13号掲載)との連携も検討し、より使いやす
いものにしていきたいと考えている。熱負荷計算ソ
フトの時と同様に現場から数多くの意見が得られる
ことを期待している。
ソフト操作方法の概要
ソフトは図5に示すように、メニュー画面から各種
操作が選択出来るようになっている。各操作はほと
んどマウスによって行う事が出来る。
図6から図8に代表的な画面を示す。図6は二次側
の設定画面である。各系統毎の出入口温度設定や流
量制御方法を選択する。空調熱負荷は本ソフトにも
入力機能が用意されているが、ファイルから読込む
事も可能である。負荷の変更なども自由に行う事が
出来る。図7は熱源関係の運転時間や温度設定を行う
画面である。冷却塔の出入口水温や成績係数は現段
階では計算に反映されていないが、今後変更する予
定である。図8は計算結果を表示中の画面である。槽
内温度プロフィールは2時間毎に示されるので、経時
的な変化を捉える事が出来る。全槽の計算時間毎の
水温も数値ですべて表示されるので、詳細なデータ
解析も可能である。
図6 二次側設定入力画面
図7 熱源関係設定入力画面
ツールバー
終了
蓄熱槽槽容量
6
水
蓄
熱
槽
最
適
容
量
計
算
ソ
フ
ト
の
開
発
プログラムを終了させる
使用方法
プログラムの使用方法が表示される
新規入力
新規にデータ入力し計算を行う
既存データから計算 既存データを読込み計算を行う
蓄熱率
必要蓄熱量/1日の積算空調負荷
蓄熱槽効率
最終状態における蓄熱槽効率
グラフ表示
蓄熱槽内水温
計算時間間隔毎の全槽の水温
数値表示
計算結果ファイルを用いて数値表示
最大空調負荷
1日の中で最も大きい空調負荷
用語解説
用語の解説が表示される
1日の積算空調負荷
1日の全系統の積算空調負荷
各系統・各時間毎の水量
各系統・各時間毎の水量変化
各系統・各時間毎の空調負荷
各系統・各時間毎の空調負荷の変化
メニュー画面
バージョン情報
計算結果ファイルを用いてグラフ表示
切換え可能
プログラムバージョン情報が表示される
図5 メニュー画面からの操作内容
図8
計算結果表示画面
17
YP10-33_技術報告3.3 99.11.16 5:30 PM ページ 18
技
術
報
告
ス
ー
パ
ー
ア
ー
ム
II
の
導
入
に
つ
い
て
スーパーアームIIの導入について
配電統括部技術課/三輪 泰司・保浦 賢士
1
2
はじめに
配電線工事における活線作業は、高圧ゴム手袋等
の保護具を着用した直接活線作業が主体であったが、
近年は、作業環境改善の面から間接活線工法(以下
間接活線という)が導入されている。
間接活線は、作業者が高圧ゴム手袋を着用する代
わりにホットスティック(絶縁棒)を使用して作業
をする工法で、作業者は充電部に直接触れずに活線
作業ができるため、感電災害防止に大きく寄与して
いる。
しかし、作業者がホットスティックを手に持って
作業するため、圧縮器等の重い工具をホットスティ
ック先端に取付けて作業する場合は、作業者の肉体
的負担が直接活線と比べ多くなることがある。
したがって、振分箇所(JP線)の切断・接続お
よび通り線の振分化等、高度な間接活線への適用を
拡大するには間接活線の機動化が求められていた。
また、作業者の高齢化も徐々に進んでおり、体力
の衰え、筋力の低下に対して「配電作業の機動化」
による労力軽減への期待は高まっている。
こうした背景から、間接活線と一般作業に対して
機動化による労力の軽減と高齢化対応を目的に、標
準高所作業車への装着ができる「スーパーアームⅡ」
を開発したので、その概要を報告する。
開発コンセプト
(1)標準高所作業車への装着が可能で、かつ、装着
による高所作業車の機能を低下させない。
(2)10㎏までの先端工具が使用でき、かつ、作業者
にかかる肉体的負担(重量)を軽減すること。
(3)現在、使用しているホットスティックと同感覚
で操作できること。
3
スーパーアームの概要
(1)高所作業車のバケット内に装着でき、水平バラ
ンスアーム(以下 バランスアームという)の上下
バランス機能と八つの関節部(旋回、屈曲、起伏動
作する)を有する手動操作型の装置である。
装置各部の構成を写真1に、装置の基本仕様を表1
に示す。
表1 基本仕様
仕 様
70kg
10kgf
本
体
重
量
最 大 可 搬 重 量
作 業 範 囲
最
大
揚
程
最 大 作 業 半 径
耐
電
圧
性
能
工具駆動部
最 高 回 転 数
最 大 ト ル ク
先端工具
3.00±0.1m
1.92±0.1m
110±30rpm
250±50kgf
水平
バランスアーム
各部の構成
4
5
曲り継手
傾転アーム
写真1
先端工具
操作スイッチ
図1 作業範囲図
曲り継手
水平バランスアーム
調整ハンドル
傾転アーム
写真2 一般作業時の状態
中間皮剥ぎ器 中間線磨き器 分岐金具操作器
インパクトレンチ
バインド着脱器 把持器
一括圧縮器
カッター 先端皮剥ぎ磨き器
ス
ー
パ
ー
ア
ー
ム
II
の
導
入
に
つ
い
て
写真3 先端工具
表2
工具の用途
用 途
適用工法
現時点での適用作業は次のとおりである。
(1)間接活線作業
① 仮送電関連(電源ケーブル・アース着脱)
② 変圧器関連(電源ケーブル着脱)
③ JP切断・接続作業
(2)一般作業(活線作業を除く)
① 電線の切断・接続作業
② 電線皮剥ぎ・線磨き作業
絶縁棒
操作スイッチ
(2)先端工具を作業位置へアプローチするとき、作
業者の肉体的負担を軽減するためバランスアーム上
部に傾転アームを取付けた。
この傾転アームは、駆動源に油圧モーターを使用
し、垂直から下方に135度起伏するためホットステ
ィック同感覚で作業位置にアプローチでき、細かな
位置合わせができる。
(3)活線作業以外の一般作業でも使用できるようバ
ランスアーム先端の曲がり継手部に、各種先端工具
が装着できる構造とした。(一般作業時の状態は写真
2による)
(4)先端工具の取替えならびにスーパーアームの収
納が容易に行えるよう、バケット内に昇降装置を取
付けた。
(5)特徴
① バランス機能は、先端工具や絶縁棒の重量変化
に対応できる機能で、内部にはガススプリングを
使用した。
② ガススプリングの採用により、バランス機能に
外部からの動力源が不用となり、バランスアーム
の軽量・小型化が図れた。
③ 調整ハンドルにより、操作者が感ずる先端工具
の重量を、重くしたり軽くすることができるの
で、バランスアームの上下操作が容易にできる。
20,000/10分
曲り継手
18
技
術
報
告
一括圧縮器
電線の接続(スリーブの圧縮)
分岐金具操作器
電源ケーブルの着脱
中間皮剥ぎ器
電線中間部の皮剥ぎ
中間線磨き器
電線中間部の線磨き
先端皮剥ぎ磨き器
電線先端部の皮剥ぎ線磨き
電線カッター
電線の切断
把持器
電線等の把持
バインド着脱器
バインド線の取付け取外し
インパクトレンチ
ボルト・ナットの締付け
先端工具
現時点で、スーパーアームで使用する先端工具は
写真3、工具の用途は表2に示す。なお、主な工具
の特徴は次による。
(1)一般電線皮剥ぎ線磨き器(複合型)
従来、「皮剥ぎ」と「線磨き」は別々の専用工具で
行っていたが、この工具の開発により、「皮剥ぎ・線
磨き作業」が同時にでき、工具交換の手間が省け作
業の効率化が図れた。
19
YP10-33_技術報告3.3 99.11.16 5:30 PM ページ 18
技
術
報
告
ス
ー
パ
ー
ア
ー
ム
II
の
導
入
に
つ
い
て
スーパーアームIIの導入について
配電統括部技術課/三輪 泰司・保浦 賢士
1
2
はじめに
配電線工事における活線作業は、高圧ゴム手袋等
の保護具を着用した直接活線作業が主体であったが、
近年は、作業環境改善の面から間接活線工法(以下
間接活線という)が導入されている。
間接活線は、作業者が高圧ゴム手袋を着用する代
わりにホットスティック(絶縁棒)を使用して作業
をする工法で、作業者は充電部に直接触れずに活線
作業ができるため、感電災害防止に大きく寄与して
いる。
しかし、作業者がホットスティックを手に持って
作業するため、圧縮器等の重い工具をホットスティ
ック先端に取付けて作業する場合は、作業者の肉体
的負担が直接活線と比べ多くなることがある。
したがって、振分箇所(JP線)の切断・接続お
よび通り線の振分化等、高度な間接活線への適用を
拡大するには間接活線の機動化が求められていた。
また、作業者の高齢化も徐々に進んでおり、体力
の衰え、筋力の低下に対して「配電作業の機動化」
による労力軽減への期待は高まっている。
こうした背景から、間接活線と一般作業に対して
機動化による労力の軽減と高齢化対応を目的に、標
準高所作業車への装着ができる「スーパーアームⅡ」
を開発したので、その概要を報告する。
開発コンセプト
(1)標準高所作業車への装着が可能で、かつ、装着
による高所作業車の機能を低下させない。
(2)10㎏までの先端工具が使用でき、かつ、作業者
にかかる肉体的負担(重量)を軽減すること。
(3)現在、使用しているホットスティックと同感覚
で操作できること。
3
スーパーアームの概要
(1)高所作業車のバケット内に装着でき、水平バラ
ンスアーム(以下 バランスアームという)の上下
バランス機能と八つの関節部(旋回、屈曲、起伏動
作する)を有する手動操作型の装置である。
装置各部の構成を写真1に、装置の基本仕様を表1
に示す。
表1 基本仕様
仕 様
70kg
10kgf
本
体
重
量
最 大 可 搬 重 量
作 業 範 囲
最
大
揚
程
最 大 作 業 半 径
耐
電
圧
性
能
工具駆動部
最 高 回 転 数
最 大 ト ル ク
先端工具
3.00±0.1m
1.92±0.1m
110±30rpm
250±50kgf
水平
バランスアーム
各部の構成
4
5
曲り継手
傾転アーム
写真1
先端工具
操作スイッチ
図1 作業範囲図
曲り継手
水平バランスアーム
調整ハンドル
傾転アーム
写真2 一般作業時の状態
中間皮剥ぎ器 中間線磨き器 分岐金具操作器
インパクトレンチ
バインド着脱器 把持器
一括圧縮器
カッター 先端皮剥ぎ磨き器
ス
ー
パ
ー
ア
ー
ム
II
の
導
入
に
つ
い
て
写真3 先端工具
表2
工具の用途
用 途
適用工法
現時点での適用作業は次のとおりである。
(1)間接活線作業
① 仮送電関連(電源ケーブル・アース着脱)
② 変圧器関連(電源ケーブル着脱)
③ JP切断・接続作業
(2)一般作業(活線作業を除く)
① 電線の切断・接続作業
② 電線皮剥ぎ・線磨き作業
絶縁棒
操作スイッチ
(2)先端工具を作業位置へアプローチするとき、作
業者の肉体的負担を軽減するためバランスアーム上
部に傾転アームを取付けた。
この傾転アームは、駆動源に油圧モーターを使用
し、垂直から下方に135度起伏するためホットステ
ィック同感覚で作業位置にアプローチでき、細かな
位置合わせができる。
(3)活線作業以外の一般作業でも使用できるようバ
ランスアーム先端の曲がり継手部に、各種先端工具
が装着できる構造とした。(一般作業時の状態は写真
2による)
(4)先端工具の取替えならびにスーパーアームの収
納が容易に行えるよう、バケット内に昇降装置を取
付けた。
(5)特徴
① バランス機能は、先端工具や絶縁棒の重量変化
に対応できる機能で、内部にはガススプリングを
使用した。
② ガススプリングの採用により、バランス機能に
外部からの動力源が不用となり、バランスアーム
の軽量・小型化が図れた。
③ 調整ハンドルにより、操作者が感ずる先端工具
の重量を、重くしたり軽くすることができるの
で、バランスアームの上下操作が容易にできる。
20,000/10分
曲り継手
18
技
術
報
告
一括圧縮器
電線の接続(スリーブの圧縮)
分岐金具操作器
電源ケーブルの着脱
中間皮剥ぎ器
電線中間部の皮剥ぎ
中間線磨き器
電線中間部の線磨き
先端皮剥ぎ磨き器
電線先端部の皮剥ぎ線磨き
電線カッター
電線の切断
把持器
電線等の把持
バインド着脱器
バインド線の取付け取外し
インパクトレンチ
ボルト・ナットの締付け
先端工具
現時点で、スーパーアームで使用する先端工具は
写真3、工具の用途は表2に示す。なお、主な工具
の特徴は次による。
(1)一般電線皮剥ぎ線磨き器(複合型)
従来、「皮剥ぎ」と「線磨き」は別々の専用工具で
行っていたが、この工具の開発により、「皮剥ぎ・線
磨き作業」が同時にでき、工具交換の手間が省け作
業の効率化が図れた。
19
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技
術
報
告
ス
ー
パ
ー
ア
ー
ム
II
の
導
入
に
つ
い
て
接地に関する技術動向と技術開発室の取り組み
技術開発室/箕輪 昌幸
(2)一括圧縮器(写真4)
従来、間接活線による圧縮作業は、ホットスティ
ック先端に圧縮器を取付けて作業するため、作業者
の目から約1m離れたJPスリーブの圧縮位置を、規
定の回数圧縮しなければならないので、作業者の負
担になっていた。これを解消すべく、JPスリーブ
の片側の圧縮が一度にできる一括圧縮器を開発した。
この工具の開発により、間接活線での接続作業が
容易にできるようになるとともに、この圧縮器には
施工確認機構を付加しており、圧縮が正しくできな
いと圧縮器のシリンダが戻らない機構により、圧縮
不良を未然に防止できる機構になっている。
現状ではJPスリーブにしか適用できないので、
直線スリーブおよび分岐スリーブへの適用と、圧縮
器の小型・軽量化を検討している。
6
まえがき
接地は昔からの問題であるが、わかりにくいとい
う印象があるためか、どちらかというと深く関与す
ることが避けられ、まだ多くの課題が残っている。
さらに,電子情報通信機器が普及した今日の高度情
報社会においては、接地に関係する新たな問題も顕
在化してきている。例えば写真1のように落雷によっ
て信号変換ユニットが破壊され、このユニットに接
続している機器の機能が停止し、二次的影響(被害)
が広範囲に波及することなどである。このことは社
会機能に大きな影響をおよぼす危険性がある。した
がって、接地は今まで以上に真剣に取り組まなけれ
ばならない重要な問題となっている。そして、現在
多くの機関等で、調査、実験、検討等がなされている。
本報告では、接地に関する最近の国内外の動向の
概略および技術開発室の取り組みを紹介する。
3
図2 トルクチューブのイメージ図
おわりに
スーパーアームの導入により、従来2名必要であ
った高度な間接活線が1名で作業ができるようにな
った。
今後は、将来の高齢化と配電作業の近代化に対応
するため、現場ニーズを踏まえ機能の充実と開発コ
ストの提言に努め現場への定着を図りたい。
20
写真4 一括圧縮器
今後の課題
現在、スーパーアームは間接活線作業を中心に使
用しているが、より一層の有効活用を図るには、現
場ニーズを踏まえ、一般作業への適用も含め適用範
囲(作業)を拡大することが課題である。
スーパーアームの有効活用と定着を図るために検討
している主な内容は次のとおりである。
(1)スーパーアームの改良(小型化、着脱式等)
(2)適用作業の拡大(一般作業への拡大を含む)
① 適用工法の拡大(JP線切断接続、通り線の振
分化工法他)
② 先端工具の適用拡大(絶縁棒の短尺化、トルク
チューブの開発等)
③ 先端工具の多機能化(中間皮剥ぎ・線磨きの複
合型、アタッチメント化等)
④ 各種先端工具の開発(引下線着脱器、電線くせ
とり器等)
7
1
接地抵抗値を得るための技術が検討されてきた。つ
まり避雷針設備の接地抵抗を小さくし、落雷電流等
の異常電流をすみやかに大地に逃がし、建物および
人の安全を守ることが目的とされた。その後,産業
技術の発展とともに接地の目的は多様化し、電気設
備を安全に、かつ安定に動作させ得る重要なシステ
ムとしてとらえられるようになってきた。
高層化した建造物において、接地は大地を対象と
した接地電極システムと建物内の各種設備機器
を対象とした接地システム(基準電位保持や等電位
化を主目的としたシステム)とに分けられる [1]。さ
らに接地電極システムは単独接地と共用接地、接地
システムはアイソレーテッド接地(一点接地)とイ
ンテグレーテッド接地(多点接地) [2]のように細か
く分類できる。1999年4月に示された電気学会生
産システム接地技術調査専門委員会の報告では、さ
まざまな接地の分類事例を概観して表1に示す接地区
分による分類を提示している。
写真1
2
雷過電圧による信号ユニットの損傷
基本的な接地の考え方および目的と種類
接地は電気設備と大地とを電気的に確実に接続し
ようとする技術で、その歴史は避雷針から始まった
といわれている。
従来からの接地は人の保安を目的として、所定の
技術動向
(1) 海外における技術動向
IEC(国際電気標準化会議;International
Electrotechnical Commission)およびITU(国
際電気通信連合;International Telecommunication
Union )において電気電子の技術分野における国際
規格の検討、標準化等が進められている。その中で
接地に関するものは電磁両立性(EMC)問題を含
めた情報通信機器の機能保持等に関する検討が目立
つ。
(2) 国内における技術動向
接地に関する国内の主な規格・規制を表2に示す。
相互に協調、整合がとれているところまではいたっ
ていない。また、欧米に比べて日本の接地システム
や等電位ボンディング技術は遅れているといわれて
いる。それゆえ、日本では国際化に対応するために
IEC規格を取り入れる作業が進んでいる。その具
体例が平成9年の電気設備技術基準(電技)の改正、
翻訳JISの発行などである。
電技では、接地工事の種類が第一種∼第三種接地
工事及び特別第三種接地工事がA種∼D種接地工事
に変更された。しかし接地抵抗値は旧電技のままで
ある。これらの接地抵抗値に関して、B種接地工事
の接地抵抗値の決め方には技術的根拠があるが、そ
の他は根拠があいまいで、今後、技術の進歩、社会
情勢の変化によっては規格変更もありうると考える。
技
術
報
告
接
地
に
関
す
る
技
術
動
向
と
技
術
開
発
室
の
取
り
組
み
21
YP10-33_技術報告3.3 99.11.16 5:30 PM ページ 20
技
術
報
告
ス
ー
パ
ー
ア
ー
ム
II
の
導
入
に
つ
い
て
接地に関する技術動向と技術開発室の取り組み
技術開発室/箕輪 昌幸
(2)一括圧縮器(写真4)
従来、間接活線による圧縮作業は、ホットスティ
ック先端に圧縮器を取付けて作業するため、作業者
の目から約1m離れたJPスリーブの圧縮位置を、規
定の回数圧縮しなければならないので、作業者の負
担になっていた。これを解消すべく、JPスリーブ
の片側の圧縮が一度にできる一括圧縮器を開発した。
この工具の開発により、間接活線での接続作業が
容易にできるようになるとともに、この圧縮器には
施工確認機構を付加しており、圧縮が正しくできな
いと圧縮器のシリンダが戻らない機構により、圧縮
不良を未然に防止できる機構になっている。
現状ではJPスリーブにしか適用できないので、
直線スリーブおよび分岐スリーブへの適用と、圧縮
器の小型・軽量化を検討している。
6
まえがき
接地は昔からの問題であるが、わかりにくいとい
う印象があるためか、どちらかというと深く関与す
ることが避けられ、まだ多くの課題が残っている。
さらに,電子情報通信機器が普及した今日の高度情
報社会においては、接地に関係する新たな問題も顕
在化してきている。例えば写真1のように落雷によっ
て信号変換ユニットが破壊され、このユニットに接
続している機器の機能が停止し、二次的影響(被害)
が広範囲に波及することなどである。このことは社
会機能に大きな影響をおよぼす危険性がある。した
がって、接地は今まで以上に真剣に取り組まなけれ
ばならない重要な問題となっている。そして、現在
多くの機関等で、調査、実験、検討等がなされている。
本報告では、接地に関する最近の国内外の動向の
概略および技術開発室の取り組みを紹介する。
3
図2 トルクチューブのイメージ図
おわりに
スーパーアームの導入により、従来2名必要であ
った高度な間接活線が1名で作業ができるようにな
った。
今後は、将来の高齢化と配電作業の近代化に対応
するため、現場ニーズを踏まえ機能の充実と開発コ
ストの提言に努め現場への定着を図りたい。
20
写真4 一括圧縮器
今後の課題
現在、スーパーアームは間接活線作業を中心に使
用しているが、より一層の有効活用を図るには、現
場ニーズを踏まえ、一般作業への適用も含め適用範
囲(作業)を拡大することが課題である。
スーパーアームの有効活用と定着を図るために検討
している主な内容は次のとおりである。
(1)スーパーアームの改良(小型化、着脱式等)
(2)適用作業の拡大(一般作業への拡大を含む)
① 適用工法の拡大(JP線切断接続、通り線の振
分化工法他)
② 先端工具の適用拡大(絶縁棒の短尺化、トルク
チューブの開発等)
③ 先端工具の多機能化(中間皮剥ぎ・線磨きの複
合型、アタッチメント化等)
④ 各種先端工具の開発(引下線着脱器、電線くせ
とり器等)
7
1
接地抵抗値を得るための技術が検討されてきた。つ
まり避雷針設備の接地抵抗を小さくし、落雷電流等
の異常電流をすみやかに大地に逃がし、建物および
人の安全を守ることが目的とされた。その後,産業
技術の発展とともに接地の目的は多様化し、電気設
備を安全に、かつ安定に動作させ得る重要なシステ
ムとしてとらえられるようになってきた。
高層化した建造物において、接地は大地を対象と
した接地電極システムと建物内の各種設備機器
を対象とした接地システム(基準電位保持や等電位
化を主目的としたシステム)とに分けられる [1]。さ
らに接地電極システムは単独接地と共用接地、接地
システムはアイソレーテッド接地(一点接地)とイ
ンテグレーテッド接地(多点接地) [2]のように細か
く分類できる。1999年4月に示された電気学会生
産システム接地技術調査専門委員会の報告では、さ
まざまな接地の分類事例を概観して表1に示す接地区
分による分類を提示している。
写真1
2
雷過電圧による信号ユニットの損傷
基本的な接地の考え方および目的と種類
接地は電気設備と大地とを電気的に確実に接続し
ようとする技術で、その歴史は避雷針から始まった
といわれている。
従来からの接地は人の保安を目的として、所定の
技術動向
(1) 海外における技術動向
IEC(国際電気標準化会議;International
Electrotechnical Commission)およびITU(国
際電気通信連合;International Telecommunication
Union )において電気電子の技術分野における国際
規格の検討、標準化等が進められている。その中で
接地に関するものは電磁両立性(EMC)問題を含
めた情報通信機器の機能保持等に関する検討が目立
つ。
(2) 国内における技術動向
接地に関する国内の主な規格・規制を表2に示す。
相互に協調、整合がとれているところまではいたっ
ていない。また、欧米に比べて日本の接地システム
や等電位ボンディング技術は遅れているといわれて
いる。それゆえ、日本では国際化に対応するために
IEC規格を取り入れる作業が進んでいる。その具
体例が平成9年の電気設備技術基準(電技)の改正、
翻訳JISの発行などである。
電技では、接地工事の種類が第一種∼第三種接地
工事及び特別第三種接地工事がA種∼D種接地工事
に変更された。しかし接地抵抗値は旧電技のままで
ある。これらの接地抵抗値に関して、B種接地工事
の接地抵抗値の決め方には技術的根拠があるが、そ
の他は根拠があいまいで、今後、技術の進歩、社会
情勢の変化によっては規格変更もありうると考える。
技
術
報
告
接
地
に
関
す
る
技
術
動
向
と
技
術
開
発
室
の
取
り
組
み
21
YP10-33_技術報告3.3 99.11.16 5:30 PM ページ 22
技
術
報
告
接
地
に
関
す
る
技
術
動
向
と
技
術
開
発
室
の
取
り
組
み
技
術
報
告
4
技術開発室の取り組み
接地技術はあらゆる電気電子設備に関係して対象
は広い。技術開発室では、EMC対策、雷防護、電
表1 接地区分による分類
[3]
(A)電気設備用接地
区分
A-1 強電用接地
[保安用接地]
(B)避雷設備用接地
[外部雷保護用接地]
A-2 通信弱電用接地
[機能用接地]
項目
種類
目的
準拠規定
性能規定
機器用(ケースアース)、
系統用、 機能用、雑音防止用、静電気障
地絡検出用、避雷器用
害防止用
感電防止、電位上昇防止、漏電
防止、絶縁協調と機器避雷
電子通信機器の機能維持と安
定動作
外部雷保護用
建築物と人体保護
電技・同解釈、内線規定、高圧受 有線電気通信設備令
電設備指針、ほか
(MDFのみ)
建築基準法、JIS A4201
建築物等の避雷設備
IEC
ITU
IEC
電技解釈ではA∼D種の種別と
電気抵抗値を示す
接地抵抗10Ω以下
JIS A4201では接地抵抗値、10
Ω以下、5Ω以下 の建築構造体
利用を可能としている
表2
国内の接地に関する主な規格・規制例
分 類
[3]
名 称
備 考
電気設備に関する技術基準を定める省令
内線規定
高圧受電設備指針
工場電気設備防爆指針
JIS T 1022 病気電気設備の安全基準
JIS C 0364-4-41 建築電気設備 安全保護, 感電保護
JIS C 0364-5-54 接地設備及び保護導体
JIS C 0365 感電保護
労働安全衛生規則
通産省
日本電気協会
日本電気協会
日本電設工業界
日本工業規格
日本工業規格
日本工業規格
日本工業規格
労働省
建築物等の避雷設備
建築基準法
JIS A 4201 建築物等の避雷設備
建設省
日本工業規格
消防設備, 危険物
消防法施行規則
危険物規制に関する政令
火災予防条令
自治省
政令
自治体
電気計算機システム安全対策基準
情報処理サービス電子計算機システム安全対策事業所認定制度
通産省
通産省
有線電気通信設備令施工規則
郵政省
電気設備一般
電子計算機システム関連
通信設備, 電話設備
22
気安全を目的とした接地電極システムや低圧配電方
式等の調査、実験、検討をおこなっている。ここで
はそれらの中から雷防護に有効と考えられている環
状地線に関した実験結果を示す。
5
I 1
環状地線の有効性に関する検証実験
(1)実験の概要
接地電極システムに関してはいくつかの手法が提
案されている [4]。環状地線もその一つである。大地
抵抗率の高い地域では接地抵抗の低減と電位傾度の
減少に有効とJISでは示されている [5] 。しかし、
実際の雷による効果の検証報告例はほとんどない。
今回はロケット誘雷実験(TDレポートNo.13ミニ
解説参照)による実雷を利用して、環状地線の有効
性に関する実験を実施した。
(2)実験方法
ロケット誘雷実験場には実験小屋が建てられてい
る(図1参照)。小屋は縦1.5m、横2.5m、高さ
1.5m程度の大きさである。近くには試験鉄塔があり、
実験小屋に近い試験鉄塔脚(以下、B脚と呼ぶ)を
図中に示す。また、試験鉄塔には試験線が架線され
ている。
ロケット誘雷実験開始時(1986年)、実験小屋の
縁に沿う環状地線(平編導線)を地表付近に配置す
ると共に、この環状地線に沿って接地棒(長さ1.5m、
直径1cm)が10本程打ち込まれ、環状地線と接続
された(以下、内環状地線と呼ぶ)。また、同時に実
験小屋から約20m離れたB脚を接地極として利用す
るためにB脚と内環状地線電力ケーブルで接続され
た。今回の実験では図1に示すように内環状地線の
外側に新たに実験小屋を囲むように地表付近に平編
導線を環状に配置し、この環状地線に沿って2∼3m
間隔で接地棒(長さ1m,直径1cm)を21本打込み、
環状地線と接続した(以下、外環状地線と呼ぶ)。実
験小屋と外環状地線の離隔距離は5∼10m程である。
図1(a)のA−A′の断面が同図(b)である。そして、
4台のサージメモリ0∼3を図1に示すように配置し、
実験小屋誘雷針および鉄塔への落雷時に雷電流の分
流を観測した。電流の極性は図中に示す矢印の方向
を正とした。表3には観測に用いたサージメモリの仕
様を示す。
(3)接地抵抗
表4に汎用の接地抵抗計を用いて測定した、B脚、
外環状地線、内環状地線の個別の接地抵抗値を示す。
同表に示すように、外環状地線と内環状地線のそれ
ぞれの接地抵抗値はほぼ同じで、約25Ωであった。
試験鉄塔B脚の接地抵抗値は約7Ωで、外、内環状地
線の1/4程度である。
サージメモリ0
サージメモリ1
内環状地線
約5m
約5m
実験小屋
I 2
試験鉄塔(30号)B脚
約7m
A
A'
I 3
外環状地線
約7m
サージメモリ2
サージメモリ3
(a) 平面図
試験鉄塔(30号)
サージメモリ1
B脚
誘雷針
I 1
実験小屋
接続ケーブル
サージメモリ0
I 0
サージメモリ2
端子台
I 2
I 3
サージメモリ3
地面
内環状地線
外環状地線
接地電極棒
接地電極棒
外環状地線
接地電極棒
(b) 断面図(A-A')
図1 環状地線の分流測定
接
地
に
関
す
る
技
術
動
向
と
技
術
開
発
室
の
取
り
組
み
表3 サージメモリの仕様
センサ
ロゴスキーコイル
測定レンジ
±20kA(*-1,2,3)、
±50kA(*0)
波高値分解能
8bit
サンプリン
グタイム
前半 0.25μs(*-1,2,3)、2μs(*-1)
後半 1.5μs(*-2,3)、5μs(*-0)、40μs(*-1)
記録時間
25ms(*-0)、31ms(*-2,3)、200μs(*-1)
トリガレベル
測定レンジの5%
トリガ方式
自己トリガ
記録容量
10波+40データ(時刻、極性、波高値)
備考(*-□の□は設定された図1に示すサージメモリの番号)
表4
抵抗値
接地抵抗値
B脚
外環状地線
内環状地線
7.2Ω
25.1Ω
25.3Ω
23
YP10-33_技術報告3.3 99.11.16 5:30 PM ページ 22
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術
報
告
接
地
に
関
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動
向
と
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術
開
発
室
の
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組
み
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術
報
告
4
技術開発室の取り組み
接地技術はあらゆる電気電子設備に関係して対象
は広い。技術開発室では、EMC対策、雷防護、電
表1 接地区分による分類
[3]
(A)電気設備用接地
区分
A-1 強電用接地
[保安用接地]
(B)避雷設備用接地
[外部雷保護用接地]
A-2 通信弱電用接地
[機能用接地]
項目
種類
目的
準拠規定
性能規定
機器用(ケースアース)、
系統用、 機能用、雑音防止用、静電気障
地絡検出用、避雷器用
害防止用
感電防止、電位上昇防止、漏電
防止、絶縁協調と機器避雷
電子通信機器の機能維持と安
定動作
外部雷保護用
建築物と人体保護
電技・同解釈、内線規定、高圧受 有線電気通信設備令
電設備指針、ほか
(MDFのみ)
建築基準法、JIS A4201
建築物等の避雷設備
IEC
ITU
IEC
電技解釈ではA∼D種の種別と
電気抵抗値を示す
接地抵抗10Ω以下
JIS A4201では接地抵抗値、10
Ω以下、5Ω以下 の建築構造体
利用を可能としている
表2
国内の接地に関する主な規格・規制例
分 類
[3]
名 称
備 考
電気設備に関する技術基準を定める省令
内線規定
高圧受電設備指針
工場電気設備防爆指針
JIS T 1022 病気電気設備の安全基準
JIS C 0364-4-41 建築電気設備 安全保護, 感電保護
JIS C 0364-5-54 接地設備及び保護導体
JIS C 0365 感電保護
労働安全衛生規則
通産省
日本電気協会
日本電気協会
日本電設工業界
日本工業規格
日本工業規格
日本工業規格
日本工業規格
労働省
建築物等の避雷設備
建築基準法
JIS A 4201 建築物等の避雷設備
建設省
日本工業規格
消防設備, 危険物
消防法施行規則
危険物規制に関する政令
火災予防条令
自治省
政令
自治体
電気計算機システム安全対策基準
情報処理サービス電子計算機システム安全対策事業所認定制度
通産省
通産省
有線電気通信設備令施工規則
郵政省
電気設備一般
電子計算機システム関連
通信設備, 電話設備
22
気安全を目的とした接地電極システムや低圧配電方
式等の調査、実験、検討をおこなっている。ここで
はそれらの中から雷防護に有効と考えられている環
状地線に関した実験結果を示す。
5
I 1
環状地線の有効性に関する検証実験
(1)実験の概要
接地電極システムに関してはいくつかの手法が提
案されている [4]。環状地線もその一つである。大地
抵抗率の高い地域では接地抵抗の低減と電位傾度の
減少に有効とJISでは示されている [5] 。しかし、
実際の雷による効果の検証報告例はほとんどない。
今回はロケット誘雷実験(TDレポートNo.13ミニ
解説参照)による実雷を利用して、環状地線の有効
性に関する実験を実施した。
(2)実験方法
ロケット誘雷実験場には実験小屋が建てられてい
る(図1参照)。小屋は縦1.5m、横2.5m、高さ
1.5m程度の大きさである。近くには試験鉄塔があり、
実験小屋に近い試験鉄塔脚(以下、B脚と呼ぶ)を
図中に示す。また、試験鉄塔には試験線が架線され
ている。
ロケット誘雷実験開始時(1986年)、実験小屋の
縁に沿う環状地線(平編導線)を地表付近に配置す
ると共に、この環状地線に沿って接地棒(長さ1.5m、
直径1cm)が10本程打ち込まれ、環状地線と接続
された(以下、内環状地線と呼ぶ)。また、同時に実
験小屋から約20m離れたB脚を接地極として利用す
るためにB脚と内環状地線電力ケーブルで接続され
た。今回の実験では図1に示すように内環状地線の
外側に新たに実験小屋を囲むように地表付近に平編
導線を環状に配置し、この環状地線に沿って2∼3m
間隔で接地棒(長さ1m,直径1cm)を21本打込み、
環状地線と接続した(以下、外環状地線と呼ぶ)。実
験小屋と外環状地線の離隔距離は5∼10m程である。
図1(a)のA−A′の断面が同図(b)である。そして、
4台のサージメモリ0∼3を図1に示すように配置し、
実験小屋誘雷針および鉄塔への落雷時に雷電流の分
流を観測した。電流の極性は図中に示す矢印の方向
を正とした。表3には観測に用いたサージメモリの仕
様を示す。
(3)接地抵抗
表4に汎用の接地抵抗計を用いて測定した、B脚、
外環状地線、内環状地線の個別の接地抵抗値を示す。
同表に示すように、外環状地線と内環状地線のそれ
ぞれの接地抵抗値はほぼ同じで、約25Ωであった。
試験鉄塔B脚の接地抵抗値は約7Ωで、外、内環状地
線の1/4程度である。
サージメモリ0
サージメモリ1
内環状地線
約5m
約5m
実験小屋
I 2
試験鉄塔(30号)B脚
約7m
A
A'
I 3
外環状地線
約7m
サージメモリ2
サージメモリ3
(a) 平面図
試験鉄塔(30号)
サージメモリ1
B脚
誘雷針
I 1
実験小屋
接続ケーブル
サージメモリ0
I 0
サージメモリ2
端子台
I 2
I 3
サージメモリ3
地面
内環状地線
外環状地線
接地電極棒
接地電極棒
外環状地線
接地電極棒
(b) 断面図(A-A')
図1 環状地線の分流測定
接
地
に
関
す
る
技
術
動
向
と
技
術
開
発
室
の
取
り
組
み
表3 サージメモリの仕様
センサ
ロゴスキーコイル
測定レンジ
±20kA(*-1,2,3)、
±50kA(*0)
波高値分解能
8bit
サンプリン
グタイム
前半 0.25μs(*-1,2,3)、2μs(*-1)
後半 1.5μs(*-2,3)、5μs(*-0)、40μs(*-1)
記録時間
25ms(*-0)、31ms(*-2,3)、200μs(*-1)
トリガレベル
測定レンジの5%
トリガ方式
自己トリガ
記録容量
10波+40データ(時刻、極性、波高値)
備考(*-□の□は設定された図1に示すサージメモリの番号)
表4
抵抗値
接地抵抗値
B脚
外環状地線
内環状地線
7.2Ω
25.1Ω
25.3Ω
23
YP10-33_技術報告3.3 99.11.16 5:30 PM ページ 24
技
術
報
告
接
地
に
関
す
る
技
術
動
向
と
技
術
開
発
室
の
取
り
組
み
技
術
報
告
(4)分流状況 誘雷実験期間中の実験小屋、試験鉄塔及びそれに
架線した試験線(以下、試験線と呼ぶ)への誘雷成
功は合計12例であった。表5にサージメモリによる
波高値の測定結果を示す。データの空白欄は電流が
トリガレベル以下であったと判断する。
同表に示すように、実験小屋への誘雷成功は7例
である。そのうちの実験番号9812では、雷電流(I0)
は+52.5kA、外環状地線への分流(I2)は+12.6kA、
内環状地線への分流(I3)は+1.8kAであった。この場
合、外(I2)と内(I3)を合わせた環状地線への分流分は
+14.4kAと推定でき、雷電流(I0)の約25%が環状地
線へ分流したと推断できる。この測定結果も含め、
表5から実験小屋へ誘雷した雷電流(I0)の5∼25%程
度が外(I2)と内(I3)を合わせた環状地線に分流したと
判断する。そして、同表の外(I2)と内(I3)の分流値を
比較して環状地線への分流の約8割が外環状地線から
大地に放流(I2)されていたと考える。
また、試験鉄塔および試験線に誘雷した場合も、
B脚から実験小屋に流れ込んだ電流(I1)の約8割が外
環状地線に分流(I2)し、大地に放流されていたと判断
できる。図2に実験番号9812で測定した電流波形
を示す。この図からも環状地線へ分流した電流は、
ほとんど外環状地線へ流れ込んでいることが明らか
である。
(5)検討 実験小屋への雷撃時に雷電流の7割以上が試験鉄塔
B脚へ流れ、環状地線への分流が3割以下であるのは、
表4に示すようにB脚の接地抵抗が外、内環状地線の
抵抗の1/4程度と小さいことが理由の一つと考え
る。
外と内の環状地線の接地抵抗はほぼ同じであるが、
環状地線への雷電流はほとんど外環状地線へ分流し、
6
+ 50
雷撃電流波形
(I0)
(kA)
0
- 50
B脚への分流
波形(I1)
0 TIME(ma)
30
0 TIME(ma)
30
+ 50
(kA)
0
- 50
+ 20
外環状地線へ (kA)
の分流波形
0
(I2)
- 20
+ 10
0 TIME(ma)
30
内環状地線へ (kA)
の分流波形
0
(I3)
- 10
図2
0 TIME(ma)
30
観測電流波形(1998/11/19-23:24:14)
内環状地線にはわずかしか流れていない。このこと
より、今回の実験では、環状地線を地表付近で二重
に設置した場合、内側の環状地線からの雷電流の放
流はかなり少ないことが明らかになった。したがっ
て外環状地線内は電位差の小さい領域になっている
と推定する。
以上の結果から、環状地線はその地線内に複数埋
設された独立接地電極等の電位の均等化に効果があ
ると推断する。よって環状地線は落雷時に独立接地
電極間に発生する電位差が原因となって起きる雷被
害の防止に有効と考える。
環状地線を用いた施工事例
5節では、環状地線は雷害防止に有効であることを
実験で示した。ここでは環状地線を多雷地域で応用
した施工例を紹介する。この物件は環状地線の機能
を十分引き出すための設計が加えられている(6節の
(2)参照)。以下概要を示す。
詳細は電気設備学会中部支部講習会資料「雷サー
ジ保護対策の設計・施工」(平成9年6月12日)を参
照されたい。
(1)建物概要
・ 所在地 :岐阜県東南部
・ 建築用途:印刷工場(高度電子情報機器使用)
・ 延床面積:約8,000m2
・ 構 造:鉄骨鉄筋コンクリート造
・ 階 数:地下1階,地上4階,塔屋1階
・ 軒 高:約20m ・ 受電電圧:6.6kV
(2)接地電極システムの概要
接地電極の埋設状況を図3に示す。特徴を以下に示
す。
(a)建物周囲に環状地線を埋設
(b)環状地線から放射状の線状地線を配置して埋設
(c)避雷針用引き下げ導体は環状地線に接続
(d)環状線の内側の建物基礎下にメッシュ接地を埋
設
(e)電力保安用(A、
B、
D種)弱電用などの接地はメ
ッシュ接地に接続し共用とした
7
あとがき
高度情報社会において、接地技術はより重要な技
術となっている。国際的にも技術の標準化、整合化
を含めて活発に接地技術に関する活動が進められお
り、その一部を紹介した。そして、技術開発室の取
り組みの一例として実施した環状地線に関する実験
から、環状地線の有効性を示すとともに環状地線を
用いた施工例を紹介した。今後、さらなる定量的な
検討を行っていきたい。
最後に実験にご協力戴きました北陸電力(株)地域
総合研究所、中部電力(株)電力技術研究所およびロ
ケット誘雷実験関係各位に深く感謝いたします。さ
らに、ここで紹介した工場の設計・施工に関係しま
した皆様に謝意を表します。
参考文献
[1]高橋:「接地技術に関する最近の動向」,電設工業
Vol43 , No.11,pp.1-10(1997)
[2]杉浦,木島:「通信設備の接地対策とその事例」,電気評論
Vol80 , No.10,pp.46-50(1995)
[3]生産システム接地技術調査専門委員会:「生産系建築物におけ
る接地システム技術調査研究」
,電気学会技術報告,第724号
(1999)
[4]例えば,高橋:「雷サージ防護技術としての接地の役割」,電気
設備学会誌,Vol9, No.9,pp.671-676(1989)
[5]JIS A4201建築物等の避雷設備(1992)
接
地
に
関
す
る
技
術
動
向
と
技
術
開
発
室
の
取
り
組
み
メッシュ接地
表5 分流測定結果
実験番号
雷撃点
日時
I0
(kA)
I1
(kA)
9802
実験小屋
98/11/18 02:55:10
+15.5
-14.2
9803
実験小屋
98/11/18 03:01:10
+12.0
-10.0
+1.6
9808
試験線
98/11/18 05:35:27
-1.6
-1.6
*
I2
(kA)
I3
(kA)
建物外形
環状地線
9809
実験小屋
98/11/19 06:12:42
(-2.2)
( 1)
9810
実験小屋
98/11/19 07:49:28
(-1.4)
( 1)
9812
実験小屋
98/11/19 23:24:14
+52.5
-26以上
+12.6
9813
実験小屋
98/11/19 23:49:29
+38.5
-26以上
+2.4
9814
実験小屋
98/11/20 01:43:57
+63.5以上
-26以上
+18.2
+2.8
9817
試験線
98/11/20 02:15:21
+9.2
+8.0
+2.0
9818
鉄塔
98/11/20 14:13:19
+5.0
+3.8
9821
試験線
98/11/24 18:52:27
+12.6
+9.8
9822
鉄塔
98/11/24 18:56:52
+6.0
+4.6
環状地線
+1.8
敷地境界
*
+1.8
: 避雷針用引き下げ導体
図3 接地電極の埋設状況
+2.2
備考 : (*1)カッコ内の数値は別の測定器で記録、表中の「以上」、「以下」はその電流値の大きさがその数値以上以下であったことを示す
24
25
YP10-33_技術報告3.3 99.11.16 5:30 PM ページ 24
技
術
報
告
接
地
に
関
す
る
技
術
動
向
と
技
術
開
発
室
の
取
り
組
み
技
術
報
告
(4)分流状況 誘雷実験期間中の実験小屋、試験鉄塔及びそれに
架線した試験線(以下、試験線と呼ぶ)への誘雷成
功は合計12例であった。表5にサージメモリによる
波高値の測定結果を示す。データの空白欄は電流が
トリガレベル以下であったと判断する。
同表に示すように、実験小屋への誘雷成功は7例
である。そのうちの実験番号9812では、雷電流(I0)
は+52.5kA、外環状地線への分流(I2)は+12.6kA、
内環状地線への分流(I3)は+1.8kAであった。この場
合、外(I2)と内(I3)を合わせた環状地線への分流分は
+14.4kAと推定でき、雷電流(I0)の約25%が環状地
線へ分流したと推断できる。この測定結果も含め、
表5から実験小屋へ誘雷した雷電流(I0)の5∼25%程
度が外(I2)と内(I3)を合わせた環状地線に分流したと
判断する。そして、同表の外(I2)と内(I3)の分流値を
比較して環状地線への分流の約8割が外環状地線から
大地に放流(I2)されていたと考える。
また、試験鉄塔および試験線に誘雷した場合も、
B脚から実験小屋に流れ込んだ電流(I1)の約8割が外
環状地線に分流(I2)し、大地に放流されていたと判断
できる。図2に実験番号9812で測定した電流波形
を示す。この図からも環状地線へ分流した電流は、
ほとんど外環状地線へ流れ込んでいることが明らか
である。
(5)検討 実験小屋への雷撃時に雷電流の7割以上が試験鉄塔
B脚へ流れ、環状地線への分流が3割以下であるのは、
表4に示すようにB脚の接地抵抗が外、内環状地線の
抵抗の1/4程度と小さいことが理由の一つと考え
る。
外と内の環状地線の接地抵抗はほぼ同じであるが、
環状地線への雷電流はほとんど外環状地線へ分流し、
6
+ 50
雷撃電流波形
(I0)
(kA)
0
- 50
B脚への分流
波形(I1)
0 TIME(ma)
30
0 TIME(ma)
30
+ 50
(kA)
0
- 50
+ 20
外環状地線へ (kA)
の分流波形
0
(I2)
- 20
+ 10
0 TIME(ma)
30
内環状地線へ (kA)
の分流波形
0
(I3)
- 10
図2
0 TIME(ma)
30
観測電流波形(1998/11/19-23:24:14)
内環状地線にはわずかしか流れていない。このこと
より、今回の実験では、環状地線を地表付近で二重
に設置した場合、内側の環状地線からの雷電流の放
流はかなり少ないことが明らかになった。したがっ
て外環状地線内は電位差の小さい領域になっている
と推定する。
以上の結果から、環状地線はその地線内に複数埋
設された独立接地電極等の電位の均等化に効果があ
ると推断する。よって環状地線は落雷時に独立接地
電極間に発生する電位差が原因となって起きる雷被
害の防止に有効と考える。
環状地線を用いた施工事例
5節では、環状地線は雷害防止に有効であることを
実験で示した。ここでは環状地線を多雷地域で応用
した施工例を紹介する。この物件は環状地線の機能
を十分引き出すための設計が加えられている(6節の
(2)参照)。以下概要を示す。
詳細は電気設備学会中部支部講習会資料「雷サー
ジ保護対策の設計・施工」(平成9年6月12日)を参
照されたい。
(1)建物概要
・ 所在地 :岐阜県東南部
・ 建築用途:印刷工場(高度電子情報機器使用)
・ 延床面積:約8,000m2
・ 構 造:鉄骨鉄筋コンクリート造
・ 階 数:地下1階,地上4階,塔屋1階
・ 軒 高:約20m ・ 受電電圧:6.6kV
(2)接地電極システムの概要
接地電極の埋設状況を図3に示す。特徴を以下に示
す。
(a)建物周囲に環状地線を埋設
(b)環状地線から放射状の線状地線を配置して埋設
(c)避雷針用引き下げ導体は環状地線に接続
(d)環状線の内側の建物基礎下にメッシュ接地を埋
設
(e)電力保安用(A、
B、
D種)弱電用などの接地はメ
ッシュ接地に接続し共用とした
7
あとがき
高度情報社会において、接地技術はより重要な技
術となっている。国際的にも技術の標準化、整合化
を含めて活発に接地技術に関する活動が進められお
り、その一部を紹介した。そして、技術開発室の取
り組みの一例として実施した環状地線に関する実験
から、環状地線の有効性を示すとともに環状地線を
用いた施工例を紹介した。今後、さらなる定量的な
検討を行っていきたい。
最後に実験にご協力戴きました北陸電力(株)地域
総合研究所、中部電力(株)電力技術研究所およびロ
ケット誘雷実験関係各位に深く感謝いたします。さ
らに、ここで紹介した工場の設計・施工に関係しま
した皆様に謝意を表します。
参考文献
[1]高橋:「接地技術に関する最近の動向」,電設工業
Vol43 , No.11,pp.1-10(1997)
[2]杉浦,木島:「通信設備の接地対策とその事例」,電気評論
Vol80 , No.10,pp.46-50(1995)
[3]生産システム接地技術調査専門委員会:「生産系建築物におけ
る接地システム技術調査研究」
,電気学会技術報告,第724号
(1999)
[4]例えば,高橋:「雷サージ防護技術としての接地の役割」,電気
設備学会誌,Vol9, No.9,pp.671-676(1989)
[5]JIS A4201建築物等の避雷設備(1992)
接
地
に
関
す
る
技
術
動
向
と
技
術
開
発
室
の
取
り
組
み
メッシュ接地
表5 分流測定結果
実験番号
雷撃点
日時
I0
(kA)
I1
(kA)
9802
実験小屋
98/11/18 02:55:10
+15.5
-14.2
9803
実験小屋
98/11/18 03:01:10
+12.0
-10.0
+1.6
9808
試験線
98/11/18 05:35:27
-1.6
-1.6
*
I2
(kA)
I3
(kA)
建物外形
環状地線
9809
実験小屋
98/11/19 06:12:42
(-2.2)
( 1)
9810
実験小屋
98/11/19 07:49:28
(-1.4)
( 1)
9812
実験小屋
98/11/19 23:24:14
+52.5
-26以上
+12.6
9813
実験小屋
98/11/19 23:49:29
+38.5
-26以上
+2.4
9814
実験小屋
98/11/20 01:43:57
+63.5以上
-26以上
+18.2
+2.8
9817
試験線
98/11/20 02:15:21
+9.2
+8.0
+2.0
9818
鉄塔
98/11/20 14:13:19
+5.0
+3.8
9821
試験線
98/11/24 18:52:27
+12.6
+9.8
9822
鉄塔
98/11/24 18:56:52
+6.0
+4.6
環状地線
+1.8
敷地境界
*
+1.8
: 避雷針用引き下げ導体
図3 接地電極の埋設状況
+2.2
備考 : (*1)カッコ内の数値は別の測定器で記録、表中の「以上」、「以下」はその電流値の大きさがその数値以上以下であったことを示す
24
25
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調
査
と
そ
の
対
策
技
術
報
告
超高層ビルのエレベータより発生するノイズの調査とその対策
営業本部技術部エンジニアリンググループ/横川 喜与志・山田 啓太
1
はじめに
近年、ビルの高層化で、エレベータには制御性・
保守性・効率性の面から交流モータをインバータ制
御が主流となっている。しかし、インバータにて制
御する場合、3∼20kHz程度のキャリア周波数と言
われる高周波を発生させ、モータを駆動しているた
め、その高周波がノイズ源となり様々な機器に影響
を及ぼしている。
本報告書では、その一例となる測定結果を得たの
で、ここに報告する。
2
測定環境と測定結果
(1)測定環境
当現場は、海外事業部が上海にて最近竣工した超
高層ビルで、常用予備2回線特高受電である。地下電
気室には特高変圧器が7台あり、うち2台が特高/高
圧の変圧器で、残る5台は特高/低圧の変圧器である
(図1参照)。今回問題となったのは、【特高→高圧→
低圧】と変圧している回路系で、低圧に接続されて
いたOA機器の電源部分に障害が発生した。このため、
図1の各所においてエレベータへ供給している
400V系の電圧及び電流の波形測定を行った。
なお、当現場では、既に他社により受電電圧変動
等の調査が行われており、その結果を考慮した上で、
エレベータの運転状態に着目した測定を行った。
(2)測定装置の仕様
高周波電圧及び電流の測定に用いた装置を表1に示
す。
表1 測定装置
製造元
種 類
型 名
日置電機
メモリハイコーダ
8832T
横河電機
オシロスコープ
OR141-1
ケンウッド
オシロスコープ
CS-5270
西澤電気計器
リーククランプテスタ
MODEL-5010
図6
図1
26
単線結線図の概念図(関連部分)
図2 No.6∼10ELV停止時
図3 No.6∼10ELV稼働時
図4 No.6∼10ELV停止時
図5 No.6∼10ELV稼働時
No.6∼10ELV停止時(ライトアップ後)
図8 T社製ELV稼働時
図7
超
高
層
ビ
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タ
よ
り
発
生
す
る
ノ
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ズ
の
調
査
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の
対
策
No.6∼10ELV稼働時(ライトアップ後)
図9 H社製ELV稼働時
27
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超
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調
査
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対
策
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超高層ビルのエレベータより発生するノイズの調査とその対策
営業本部技術部エンジニアリンググループ/横川 喜与志・山田 啓太
1
はじめに
近年、ビルの高層化で、エレベータには制御性・
保守性・効率性の面から交流モータをインバータ制
御が主流となっている。しかし、インバータにて制
御する場合、3∼20kHz程度のキャリア周波数と言
われる高周波を発生させ、モータを駆動しているた
め、その高周波がノイズ源となり様々な機器に影響
を及ぼしている。
本報告書では、その一例となる測定結果を得たの
で、ここに報告する。
2
測定環境と測定結果
(1)測定環境
当現場は、海外事業部が上海にて最近竣工した超
高層ビルで、常用予備2回線特高受電である。地下電
気室には特高変圧器が7台あり、うち2台が特高/高
圧の変圧器で、残る5台は特高/低圧の変圧器である
(図1参照)。今回問題となったのは、【特高→高圧→
低圧】と変圧している回路系で、低圧に接続されて
いたOA機器の電源部分に障害が発生した。このため、
図1の各所においてエレベータへ供給している
400V系の電圧及び電流の波形測定を行った。
なお、当現場では、既に他社により受電電圧変動
等の調査が行われており、その結果を考慮した上で、
エレベータの運転状態に着目した測定を行った。
(2)測定装置の仕様
高周波電圧及び電流の測定に用いた装置を表1に示
す。
表1 測定装置
製造元
種 類
型 名
日置電機
メモリハイコーダ
8832T
横河電機
オシロスコープ
OR141-1
ケンウッド
オシロスコープ
CS-5270
西澤電気計器
リーククランプテスタ
MODEL-5010
図6
図1
26
単線結線図の概念図(関連部分)
図2 No.6∼10ELV停止時
図3 No.6∼10ELV稼働時
図4 No.6∼10ELV停止時
図5 No.6∼10ELV稼働時
No.6∼10ELV停止時(ライトアップ後)
図8 T社製ELV稼働時
図7
超
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の
対
策
No.6∼10ELV稼働時(ライトアップ後)
図9 H社製ELV稼働時
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対
策
28
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告
でELVに接続されているインバータ部のキャリア周
波数を確認したところ6kHzで、重畳している周波数
と一致した。
高調波として、H社製ELVの電流波形には特に第7
調波電流の重畳が見られるが、T社製ELVとM社製
ELVに高調波成分はそれほど見られない。この差は
コンバータ部(交流を直流に変換する部分)の構造
の違いによるものと思われる。
3
考察
(1)高周波の重畳
6kHzの高周波は、ELVの稼動時のみに電圧・電流
に重畳している。このことから、インバータのキャ
リア周波数が重畳しているものと考えられる。また、
当現場は海外の物件(写真1参照)であり、日本規格
で言うB種接地(旧第2種接地)とD種接地(旧第3
種接地)が電気的に接続されているため、インバー
タから流出した高周波電流はD種接地を流れ、B種接
地を通って変圧器へ流入しインバータへ帰る閉ルー
プが形成されている(図10参照)。この閉ループの
内、トランスからインバータへの配線を三相一括で
電流測定(零相電流の測定)を行った結果が図4,5で
あり、ELV稼動時のみにキャリア周波数と同じ周波
数が零相電流に重畳していることが判る。
写真1
建物の外観
(3)測定結果
今回の測定対象は、各社のエレベータに供給され
ている400Vの電圧・電流とし、エレベータの稼動
時と停止時の波形の違いを測定した。
図2∼7は、図1のTB1変圧器が接続されているフ
ィーダでの測定結果で、高圧の電圧電流,低圧の電
圧,M社製エレベータ(以下ELVと表記)への線電
流と零相電流の測定結果である。図2,4,6は、
SSB1-3盤とSSB2-3盤に接続されているELVはす
べて停止している状態での結果で、図3,5,7は、稼
動時の測定結果である。また、図8,9は、T社及びH
社製エレベータの電圧・電流測定結果である。
図2と3を比較すると、ELV稼動時に低圧の電圧と
高圧の電流波形に商用周波数以外の高周波が重畳し
ている。同様に図4と5や図6と7にも稼動時に同様
の高周波が重畳しており、これらの測定結果から、
この高周波の周波数は約6kHzであった。一方、現地
(2)零相電流に重畳する高周波の対策案
測定時、ELVには電源ケーブル各相にACL1とフェ
ライトコア が既に設置されていたが、フェライトコ
ア2を各相に取付けた場合、各相に含まれる高周波ノ
イズを抑制することはできるが、3相全てに同位相で
含まれる零相分の抑制はできない。これを抑制する
ために、インバータの電源側にノイズカットトラン
スや絶縁トランス等を設置する対策案がある。
フェライトコア2やノイズカットトランスを対策と
して使用する場合、それらには周波数特性があるた
め、対象としている周波数帯域・減衰量等を把握し
た上で、設置する必要がある。
(3)ライトアップ負荷の有無による波形の違い
図1のSBB1-3盤にはNo.6∼8ELV(各115kW,
合計345kW)およびビルのライトアップ用HID(約
16kVA)が負荷としてある。
一日のうち、夜間のライトアップが行われる数時
間は、線間電圧に重畳している高周波の振幅がその
他の時間帯と比べて小さくなっている(図3,5,7参
照)。これは、ELVを電流源とする各相の高周波のほ
とんどが電源側のTB1変圧器を通らず、並列に接続
されたライトアップ負荷に流入したため、TB1変圧
器を通過する高周波電流の絶対値は減少しているこ
とがその理由と考えられる。
一方、ライトアップ以外の時間帯では電源側へ、
すなわち変圧器側へと流れていると思われる。
この状況から、高周波電流の発生源に対して負荷
が並列に接続されることで、発生源から見た総合イ
ンピーダンスは減少するため、重畳している高周波
電圧の振幅が減少するものと考えられる。
1.インバータから流出する高調波を抑制するために、インバータの電
源側へ取り付けるリアクトル
2.高周波数に対し高インピーダンスとなるコアで、伝導性高周波ノイ
ズの対策品
4
おわりに
今回の測定結果から以下のことが判る。
① M社製ELVのインバータが電圧や電流に重畳し
た6kHzの高周波発生源であった。
② 対策として使用されていたフェライトコアは、
ラジオ周波数のような高周波用の対策品であ
り、6kHzという、高周波の中でも低い周波数の
対策には不向きである。
③ エレベータ以外の負荷として、ライトアップ用
の負荷を点灯すると重畳している高周波の振幅が
減少する。
当現場での障害は、低圧の電圧と電流に重畳した
高周波がOA機器の電源部分に含まれているフィルタ
に流入し、OA機器の動作に支障をきたしたものと考
えられる。
今回、M社はこの高周波対策として、インバータ
の電源側に絶縁トランスを設置し、図10の高周波電
流の流れを形成する閉ループをなくした。このよう
に、スペースの問題や、調査にかかる費用と時間、
客先への信頼等の問題が発生するため、ELVだけで
なく、高周波発生源となりうるインバータの対策は
事前に協議し、できる限りの処置を施すべきと考え
る。
また、今回のように超高層ビルに設置されるELV
への対策として、ELVとその他の負荷(特に弱電機
器)は別の変圧器からの電源供給とし、零相電流
(高周波の漏洩電流)の閉ループを作らないことが障
害対策として必要だと考える。
超
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発
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す
る
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そ
の
対
策
御
図10
高周波の流れ
29
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と
そ
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対
策
28
技
術
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告
でELVに接続されているインバータ部のキャリア周
波数を確認したところ6kHzで、重畳している周波数
と一致した。
高調波として、H社製ELVの電流波形には特に第7
調波電流の重畳が見られるが、T社製ELVとM社製
ELVに高調波成分はそれほど見られない。この差は
コンバータ部(交流を直流に変換する部分)の構造
の違いによるものと思われる。
3
考察
(1)高周波の重畳
6kHzの高周波は、ELVの稼動時のみに電圧・電流
に重畳している。このことから、インバータのキャ
リア周波数が重畳しているものと考えられる。また、
当現場は海外の物件(写真1参照)であり、日本規格
で言うB種接地(旧第2種接地)とD種接地(旧第3
種接地)が電気的に接続されているため、インバー
タから流出した高周波電流はD種接地を流れ、B種接
地を通って変圧器へ流入しインバータへ帰る閉ルー
プが形成されている(図10参照)。この閉ループの
内、トランスからインバータへの配線を三相一括で
電流測定(零相電流の測定)を行った結果が図4,5で
あり、ELV稼動時のみにキャリア周波数と同じ周波
数が零相電流に重畳していることが判る。
写真1
建物の外観
(3)測定結果
今回の測定対象は、各社のエレベータに供給され
ている400Vの電圧・電流とし、エレベータの稼動
時と停止時の波形の違いを測定した。
図2∼7は、図1のTB1変圧器が接続されているフ
ィーダでの測定結果で、高圧の電圧電流,低圧の電
圧,M社製エレベータ(以下ELVと表記)への線電
流と零相電流の測定結果である。図2,4,6は、
SSB1-3盤とSSB2-3盤に接続されているELVはす
べて停止している状態での結果で、図3,5,7は、稼
動時の測定結果である。また、図8,9は、T社及びH
社製エレベータの電圧・電流測定結果である。
図2と3を比較すると、ELV稼動時に低圧の電圧と
高圧の電流波形に商用周波数以外の高周波が重畳し
ている。同様に図4と5や図6と7にも稼動時に同様
の高周波が重畳しており、これらの測定結果から、
この高周波の周波数は約6kHzであった。一方、現地
(2)零相電流に重畳する高周波の対策案
測定時、ELVには電源ケーブル各相にACL1とフェ
ライトコア が既に設置されていたが、フェライトコ
ア2を各相に取付けた場合、各相に含まれる高周波ノ
イズを抑制することはできるが、3相全てに同位相で
含まれる零相分の抑制はできない。これを抑制する
ために、インバータの電源側にノイズカットトラン
スや絶縁トランス等を設置する対策案がある。
フェライトコア2やノイズカットトランスを対策と
して使用する場合、それらには周波数特性があるた
め、対象としている周波数帯域・減衰量等を把握し
た上で、設置する必要がある。
(3)ライトアップ負荷の有無による波形の違い
図1のSBB1-3盤にはNo.6∼8ELV(各115kW,
合計345kW)およびビルのライトアップ用HID(約
16kVA)が負荷としてある。
一日のうち、夜間のライトアップが行われる数時
間は、線間電圧に重畳している高周波の振幅がその
他の時間帯と比べて小さくなっている(図3,5,7参
照)。これは、ELVを電流源とする各相の高周波のほ
とんどが電源側のTB1変圧器を通らず、並列に接続
されたライトアップ負荷に流入したため、TB1変圧
器を通過する高周波電流の絶対値は減少しているこ
とがその理由と考えられる。
一方、ライトアップ以外の時間帯では電源側へ、
すなわち変圧器側へと流れていると思われる。
この状況から、高周波電流の発生源に対して負荷
が並列に接続されることで、発生源から見た総合イ
ンピーダンスは減少するため、重畳している高周波
電圧の振幅が減少するものと考えられる。
1.インバータから流出する高調波を抑制するために、インバータの電
源側へ取り付けるリアクトル
2.高周波数に対し高インピーダンスとなるコアで、伝導性高周波ノイ
ズの対策品
4
おわりに
今回の測定結果から以下のことが判る。
① M社製ELVのインバータが電圧や電流に重畳し
た6kHzの高周波発生源であった。
② 対策として使用されていたフェライトコアは、
ラジオ周波数のような高周波用の対策品であ
り、6kHzという、高周波の中でも低い周波数の
対策には不向きである。
③ エレベータ以外の負荷として、ライトアップ用
の負荷を点灯すると重畳している高周波の振幅が
減少する。
当現場での障害は、低圧の電圧と電流に重畳した
高周波がOA機器の電源部分に含まれているフィルタ
に流入し、OA機器の動作に支障をきたしたものと考
えられる。
今回、M社はこの高周波対策として、インバータ
の電源側に絶縁トランスを設置し、図10の高周波電
流の流れを形成する閉ループをなくした。このよう
に、スペースの問題や、調査にかかる費用と時間、
客先への信頼等の問題が発生するため、ELVだけで
なく、高周波発生源となりうるインバータの対策は
事前に協議し、できる限りの処置を施すべきと考え
る。
また、今回のように超高層ビルに設置されるELV
への対策として、ELVとその他の負荷(特に弱電機
器)は別の変圧器からの電源供給とし、零相電流
(高周波の漏洩電流)の閉ループを作らないことが障
害対策として必要だと考える。
超
高
層
ビ
ル
の
エ
レ
ベ
ー
タ
よ
り
発
生
す
る
ノ
イ
ズ
の
調
査
と
そ
の
対
策
御
図10
高周波の流れ
29
YP10-33_技術報告3.3 99.11.16 5:31 PM ページ 30
技
術
報
告
老
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祉
施
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に
お
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る
給
湯
設
備
省
エ
ネ
改
善
老人福祉施設における給湯設備省エネ改善
名古屋本部 環境工事部 環境技術グループ/西脇 修
1
湯設備から計算)は21m 3/日で、計測値と近似す
る値であることが確認できた。
はじめに
大平病院老人福祉施設「ラ・ファミリア」の給湯
設備省エネ改修工事は、平成10年7月に竣工した。
本改修工事は、夜間蓄熱温水器を導入し、既設のソ
ーラーパネルおよびガスボイラーとを併用するシス
テムである。
本稿では、システムの変更内容・運用状態、およ
び改修前・後のエネルギーコストを比較検証すると
共に、今回採用した真空式ソーラーパネル・夜間蓄
熱温水器の施工面における注意点を報告する。
2
現場調査
既設設備の改修に当たっては、設計時や施工前の
現場における事前調査が重要で、施工の効果・成否
を左右することになる。当現場では、給湯量の事前
把握がキーポイントで、給湯揚水ポンプの運転状態
(クランプメーターにより電流値を計測)から給湯量
を計測した。
計測の結果、1日当たりの給湯量は60℃送水で
20∼22m3/日となる。設計計算値(在室者数、給
3
システム改修内容
(1)既設システム
改修前の既設システム系統図は、図1に示すとおり
である。
① ソーラーとボイラーを併用し給湯している。
② 市水とソーラーかボイラーの温水(ST槽)と
を混合し、高置給水槽(HT)へ給湯している。
③ 高置給水槽(HT)は低温で、ソーラー槽へ落
水させ循環することによって昇温している。
④ ボイラーはタイマー制御によって運転許可して
いる。
⑤ ボイラーはソーラー槽の温度に関係なく、13時
起動・翌日8時停止をタイマー許可時間で運転して
いる。
⑥ 給湯温度不良時は手動にてボイラーの運転をし
ている。
その結果、ボイラーは、ST槽14m 3とHT槽3m 3
の17m3を毎日昇温するシステムとなっている。
図1 改修前の給湯系統図
30
技
術
報
告
(2)システム改修内容
改修後のシステム系統図は、
図2に示すとおりである。
① 夜間蓄熱温水器5t×2台を追加設置し、温水供
給のエネルギーコストを削減する。
② 温水器の給湯温度85℃とソーラー槽の12∼
75℃の温水を混合し、57℃の温水をHT槽へ給
湯する。
③ 市水はソーラー槽へ給水し、ソーラー集熱器の
入口・出口の差温を付けることで、集熱の高効率
利用を図る
④ 温水器の残湯量25%レベルで、ボイラーが運転
しボイラー槽の昇温を開始する。
⑤ 温水器の給湯が終了するとボイラー槽から直送
で給湯する。
⑥ ボイラー槽へはソーラー槽から給水し、ソーラ
ーの集熱を極力負荷へ回す。
⑦ 温水器への給水は、槽内の残湯の滞留防止と、
翌日のソーラー集熱の効率化をめざし、ソーラ
ー槽・ボイラー槽の残湯を使用する。
⑧ ボイラーの運転は、21時30分に終了する。
⑨ 温水器給水は、21時30分に給水を開始する。
(ヒーターは22時に運転許可)
⑩ HT−1給湯槽には、放熱防止用に昇温ヒーター
5kWを設置する。
老
人
福
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施
設
に
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給
湯
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エ
ネ
改
善
図2 改修後の給湯系統図
31
YP10-33_技術報告3.3 99.11.16 5:31 PM ページ 30
技
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善
老人福祉施設における給湯設備省エネ改善
名古屋本部 環境工事部 環境技術グループ/西脇 修
1
湯設備から計算)は21m 3/日で、計測値と近似す
る値であることが確認できた。
はじめに
大平病院老人福祉施設「ラ・ファミリア」の給湯
設備省エネ改修工事は、平成10年7月に竣工した。
本改修工事は、夜間蓄熱温水器を導入し、既設のソ
ーラーパネルおよびガスボイラーとを併用するシス
テムである。
本稿では、システムの変更内容・運用状態、およ
び改修前・後のエネルギーコストを比較検証すると
共に、今回採用した真空式ソーラーパネル・夜間蓄
熱温水器の施工面における注意点を報告する。
2
現場調査
既設設備の改修に当たっては、設計時や施工前の
現場における事前調査が重要で、施工の効果・成否
を左右することになる。当現場では、給湯量の事前
把握がキーポイントで、給湯揚水ポンプの運転状態
(クランプメーターにより電流値を計測)から給湯量
を計測した。
計測の結果、1日当たりの給湯量は60℃送水で
20∼22m3/日となる。設計計算値(在室者数、給
3
システム改修内容
(1)既設システム
改修前の既設システム系統図は、図1に示すとおり
である。
① ソーラーとボイラーを併用し給湯している。
② 市水とソーラーかボイラーの温水(ST槽)と
を混合し、高置給水槽(HT)へ給湯している。
③ 高置給水槽(HT)は低温で、ソーラー槽へ落
水させ循環することによって昇温している。
④ ボイラーはタイマー制御によって運転許可して
いる。
⑤ ボイラーはソーラー槽の温度に関係なく、13時
起動・翌日8時停止をタイマー許可時間で運転して
いる。
⑥ 給湯温度不良時は手動にてボイラーの運転をし
ている。
その結果、ボイラーは、ST槽14m 3とHT槽3m 3
の17m3を毎日昇温するシステムとなっている。
図1 改修前の給湯系統図
30
技
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(2)システム改修内容
改修後のシステム系統図は、
図2に示すとおりである。
① 夜間蓄熱温水器5t×2台を追加設置し、温水供
給のエネルギーコストを削減する。
② 温水器の給湯温度85℃とソーラー槽の12∼
75℃の温水を混合し、57℃の温水をHT槽へ給
湯する。
③ 市水はソーラー槽へ給水し、ソーラー集熱器の
入口・出口の差温を付けることで、集熱の高効率
利用を図る
④ 温水器の残湯量25%レベルで、ボイラーが運転
しボイラー槽の昇温を開始する。
⑤ 温水器の給湯が終了するとボイラー槽から直送
で給湯する。
⑥ ボイラー槽へはソーラー槽から給水し、ソーラ
ーの集熱を極力負荷へ回す。
⑦ 温水器への給水は、槽内の残湯の滞留防止と、
翌日のソーラー集熱の効率化をめざし、ソーラ
ー槽・ボイラー槽の残湯を使用する。
⑧ ボイラーの運転は、21時30分に終了する。
⑨ 温水器給水は、21時30分に給水を開始する。
(ヒーターは22時に運転許可)
⑩ HT−1給湯槽には、放熱防止用に昇温ヒーター
5kWを設置する。
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図2 改修後の給湯系統図
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4
運転制御状況
以下に3パターンの運転状況を示す
図3 平均的な運転状況
図4 ソーラー集熱ができない状態
(1)平均的な運転
平均的な運転状況を図3に示す。前日の21時40
分の温水器給水開始時は、ソーラー槽の水温は45℃、
ボイラー槽は59℃である。給水が完了する約4時間
後の2時には、ソーラー槽が30℃、ボイラー槽は
47℃となっている。
ソーラー槽とボイラー槽から均等に給水されてい
るとすれば、温水器には45.2℃の温水が給水され、
85℃(満蓄熱)までに昇熱する熱量は
1×(85−45.2)×10×1000=398,000kcal
となる。また、運転時間は、ヒーターの電気容量を
120kW、温水器の効率を0.95とすれば、
398,000÷(860×120×0.95)=4.06時間
で、計測値からも同等の運転時間が確認されている。
16時30分に温水器レベルが25%以下となっ
て、ボイラー運転をはじめている。送水温度は、設
定値57℃から約5℃内の範囲で、安定して送水さ
れている。
(2)ソーラー集熱が不可の運転
天候が悪くソーラーが集熱できない場合の運転状
況を図4に示す。ソーラーパネルが日射を受ける7時
以降も温度上昇が認められない。ソーラー槽の17℃
の温水と温水器の85℃・7.5tの温水が10時30分
までに給湯された状態となっている。ボイラーが運
転されると、ボイラー槽からソーラー槽への熱の伝
導がみられる。その後、ボイラー槽の昇温制御動作
隙間3℃に対し、約5℃の上昇と下降を繰り返してい
る。
ON/OFFの2位置制御で、オーバーシュートと
ソーラー槽からの給水が外乱として働くこと、ボイ
ラーの運転間隔を考えるとこれ以上は望めないと考
える。
(3)ボイラー不用の運転
天候に恵まれ、冬期にもかかわらずボイラーの運
転を必要としなかった運転状況を図5に示す。
温水器は、蓄熱開始時刻まで25%以上の残湯が認
められる。7時から18時までのソーラー槽温度の平
均値は37.3℃で、最高49℃まで上昇している。
(夏
期晴天日は、昼までにソーラー槽温度が75℃に到達
し、沸騰防止のため熱回収の停止と、温水器は25%
内の給湯使用を確認している。)
5
図5 ボイラーが運転されなかったケース
32
287,899,000kcalと試算される。
各給湯熱源毎の熱量分担は、ボイラーのガス量お
よび温水器の夜間割引電力量から、それぞれの機器
効率を勘案して熱量算出したものを表1に、また、
施工前と施工後の給湯負荷が同じであると仮定し、
施工前・後の給湯熱源の割合変化を図6に示す。
表1 施工前後の熱量計算(単位kcal)
ボイラー
給湯熱量
ソーラー
給湯熱量
温水器
給湯熱量
施工前 239,061,900 48,837,100
施工後
0 287,899,000
47,786,200 126,705,030 113,407,770 287,899,000
図6 給湯熱源
ソーラーの熱回収能力は2.51倍のアップとなり、
ボイラーの給湯熱量は1/5に減となり、温水器は4
0.7%の給湯負荷を賄っている。
給湯負荷の省エネルギーは、当改修工事の対象外
である。今回の工事では、太陽エネルギーのソーラ
ー給湯能力の改善が、広義の意味での省エネルギー
と言える。
施工前・後1年間の給湯設備のランニングコスト
は、図7に示すとおりである。
施工前の4,352,110円/年に対し、施工後は
1,441,360円/年となる。コストダウンは、前年
に比較して66.9%が軽減された。当給湯設備改修工
事への客先の投資額は、約3000万円であったこと
から単純投資回収年数は10.3年となる。
省エネルギー効果の検証
施工前後の各1年間の給湯エネルギーは、給湯メ
ーターの読み値6534m 3 /年と、月給湯量および
市水の月別温度から、年間の総給湯熱量は、
給湯
総熱量
6
改修工事で得た課題
(1)夜間デマンド
当現場の電気容量は、電化厨房80kW、空調ヒー
トポンプチラー180kW、照明・コンセント負荷
100∼140kWに、今回新設した電気温水器120
kWである。契約デマンドは364kWで、温水器蓄
熱時間帯にデマンドが厳しくなる状況となり、各機
器のスケジュルを調整して運転している。既設設備
を改修し温水器導入の場合は、夜間の電気使用状況
を良く把握することが必要で注意を要する。
(2)真空式ソーラー
昇温循環タンクの容量は、シーズンによって変更
(冬季は容量を1/3程度に)すれば、さらに有効利
用が可能となる。ソーラー使用給湯設備の新設・改
修工事に当たっては、シーズンによる集熱槽の容量
変更を検討する必要がある。
(3)送水温度制御上の問題点
給湯送水温度は、改修前後のシステム構成図のと
おり、給湯揚水ポンプの2次側に設置されている三方
弁の制御によっている。給湯揚水ポンプの運転時間
は、1回当たり3分間と短く、PT測温帯と電子式調
節器が出力を出すまでの時定数(約20秒)と三方弁
がインターロック位置から制御位置までの時間が15
∼30秒を要している。そのため、制御が安定してか
らの時間は30秒ほどしかなく、PID制御のうちI
(積分)とD(微分)はハンチング運転となるのでP
(比例)制御のみとした。
間欠運転をする給湯送水制御を行う場合には、ポ
ンプの運転時間をできるだけ長くとり、制御性を上
げることが必要である。
7
老
人
福
祉
施
設
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け
る
給
湯
設
備
省
エ
ネ
改
善
おわりに
今回のソーラー・電気温水器・ガスボイラー併設
の給湯設備の改修工事に当たって、既設設備の調査
から、設計、施工、調整、計測検証まで一貫して携
わり、貴重な経験をさせて頂くと共に、施工に当た
って多大のご指導・ご支援を頂きました関係各位に
対しお礼を申し上げます。氷蓄熱や温水器導入等の
工事に当たっては、工事前・後の計測等による機器
や施工の効果検証を行うことが重要と考えます。そ
れらの業務を通じて得られた課題の発見や、その解
決策等の情報を社内組織を越えて共有し、技術の向
上に努めるて参りたいと考えています。
図7 給湯熱源
33
YP10-33_技術報告3.3 99.11.16 5:31 PM ページ 32
技
術
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4
運転制御状況
以下に3パターンの運転状況を示す
図3 平均的な運転状況
図4 ソーラー集熱ができない状態
(1)平均的な運転
平均的な運転状況を図3に示す。前日の21時40
分の温水器給水開始時は、ソーラー槽の水温は45℃、
ボイラー槽は59℃である。給水が完了する約4時間
後の2時には、ソーラー槽が30℃、ボイラー槽は
47℃となっている。
ソーラー槽とボイラー槽から均等に給水されてい
るとすれば、温水器には45.2℃の温水が給水され、
85℃(満蓄熱)までに昇熱する熱量は
1×(85−45.2)×10×1000=398,000kcal
となる。また、運転時間は、ヒーターの電気容量を
120kW、温水器の効率を0.95とすれば、
398,000÷(860×120×0.95)=4.06時間
で、計測値からも同等の運転時間が確認されている。
16時30分に温水器レベルが25%以下となっ
て、ボイラー運転をはじめている。送水温度は、設
定値57℃から約5℃内の範囲で、安定して送水さ
れている。
(2)ソーラー集熱が不可の運転
天候が悪くソーラーが集熱できない場合の運転状
況を図4に示す。ソーラーパネルが日射を受ける7時
以降も温度上昇が認められない。ソーラー槽の17℃
の温水と温水器の85℃・7.5tの温水が10時30分
までに給湯された状態となっている。ボイラーが運
転されると、ボイラー槽からソーラー槽への熱の伝
導がみられる。その後、ボイラー槽の昇温制御動作
隙間3℃に対し、約5℃の上昇と下降を繰り返してい
る。
ON/OFFの2位置制御で、オーバーシュートと
ソーラー槽からの給水が外乱として働くこと、ボイ
ラーの運転間隔を考えるとこれ以上は望めないと考
える。
(3)ボイラー不用の運転
天候に恵まれ、冬期にもかかわらずボイラーの運
転を必要としなかった運転状況を図5に示す。
温水器は、蓄熱開始時刻まで25%以上の残湯が認
められる。7時から18時までのソーラー槽温度の平
均値は37.3℃で、最高49℃まで上昇している。
(夏
期晴天日は、昼までにソーラー槽温度が75℃に到達
し、沸騰防止のため熱回収の停止と、温水器は25%
内の給湯使用を確認している。)
5
図5 ボイラーが運転されなかったケース
32
287,899,000kcalと試算される。
各給湯熱源毎の熱量分担は、ボイラーのガス量お
よび温水器の夜間割引電力量から、それぞれの機器
効率を勘案して熱量算出したものを表1に、また、
施工前と施工後の給湯負荷が同じであると仮定し、
施工前・後の給湯熱源の割合変化を図6に示す。
表1 施工前後の熱量計算(単位kcal)
ボイラー
給湯熱量
ソーラー
給湯熱量
温水器
給湯熱量
施工前 239,061,900 48,837,100
施工後
0 287,899,000
47,786,200 126,705,030 113,407,770 287,899,000
図6 給湯熱源
ソーラーの熱回収能力は2.51倍のアップとなり、
ボイラーの給湯熱量は1/5に減となり、温水器は4
0.7%の給湯負荷を賄っている。
給湯負荷の省エネルギーは、当改修工事の対象外
である。今回の工事では、太陽エネルギーのソーラ
ー給湯能力の改善が、広義の意味での省エネルギー
と言える。
施工前・後1年間の給湯設備のランニングコスト
は、図7に示すとおりである。
施工前の4,352,110円/年に対し、施工後は
1,441,360円/年となる。コストダウンは、前年
に比較して66.9%が軽減された。当給湯設備改修工
事への客先の投資額は、約3000万円であったこと
から単純投資回収年数は10.3年となる。
省エネルギー効果の検証
施工前後の各1年間の給湯エネルギーは、給湯メ
ーターの読み値6534m 3 /年と、月給湯量および
市水の月別温度から、年間の総給湯熱量は、
給湯
総熱量
6
改修工事で得た課題
(1)夜間デマンド
当現場の電気容量は、電化厨房80kW、空調ヒー
トポンプチラー180kW、照明・コンセント負荷
100∼140kWに、今回新設した電気温水器120
kWである。契約デマンドは364kWで、温水器蓄
熱時間帯にデマンドが厳しくなる状況となり、各機
器のスケジュルを調整して運転している。既設設備
を改修し温水器導入の場合は、夜間の電気使用状況
を良く把握することが必要で注意を要する。
(2)真空式ソーラー
昇温循環タンクの容量は、シーズンによって変更
(冬季は容量を1/3程度に)すれば、さらに有効利
用が可能となる。ソーラー使用給湯設備の新設・改
修工事に当たっては、シーズンによる集熱槽の容量
変更を検討する必要がある。
(3)送水温度制御上の問題点
給湯送水温度は、改修前後のシステム構成図のと
おり、給湯揚水ポンプの2次側に設置されている三方
弁の制御によっている。給湯揚水ポンプの運転時間
は、1回当たり3分間と短く、PT測温帯と電子式調
節器が出力を出すまでの時定数(約20秒)と三方弁
がインターロック位置から制御位置までの時間が15
∼30秒を要している。そのため、制御が安定してか
らの時間は30秒ほどしかなく、PID制御のうちI
(積分)とD(微分)はハンチング運転となるのでP
(比例)制御のみとした。
間欠運転をする給湯送水制御を行う場合には、ポ
ンプの運転時間をできるだけ長くとり、制御性を上
げることが必要である。
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おわりに
今回のソーラー・電気温水器・ガスボイラー併設
の給湯設備の改修工事に当たって、既設設備の調査
から、設計、施工、調整、計測検証まで一貫して携
わり、貴重な経験をさせて頂くと共に、施工に当た
って多大のご指導・ご支援を頂きました関係各位に
対しお礼を申し上げます。氷蓄熱や温水器導入等の
工事に当たっては、工事前・後の計測等による機器
や施工の効果検証を行うことが重要と考えます。そ
れらの業務を通じて得られた課題の発見や、その解
決策等の情報を社内組織を越えて共有し、技術の向
上に努めるて参りたいと考えています。
図7 給湯熱源
33
XP34-53_施工事例3.3 99.11.16 5:35 PM ページ 34
施
工
事
例
洞
道
の
電
気
・
換
気
・
排
水
設
備
の
設
計
事
例
施
工
事
例
洞道の電気・換気・排水設備の設計事例
名古屋本部営業部設計グループ/馬場 基次・林 哲也・柴田 豊
1
はじめに
都心部における電力需要は、OA機器等の普及に
より益々増える傾向にあり、送電効率を上げるため
消費地近くに一次変電所を設置する必要がある。都
心部における変電設備の設置には、土地の確保等の
問題があり、送電線路の確保もままならず地中化を
余儀なくされている。
今回紹介する洞道(送電線を敷設した専用トンネ
ル)関連設備は、名古屋城駐車場地下に設置された
地下変電所に継がる洞道の特殊なダクト設備に関す
る事例と、桑名地区洞道に設置する照明器具設備及
び関連した廃棄プラスチックを使用したケーブル受
け棚(中部電力㈱地中線土木課試作)の実施設計例
を紹介する。
2
設備概要
洞道の概要は次のとおりで、主に立坑部・洞道
部・発変電所構内から成る。(図1参照)
(2)桑名地区洞道
① 洞道の概要 ・構造
シールド洞道
・洞道亘長
9.478 km
・洞道の所在地 (図2参照)
川越火力発電所 ∼ 川越共同立坑
(川越共同溝)
安永共同立坑 ∼ 西別所換気孔 ∼
希望ヶ丘立坑 ∼ 蓮花寺立坑 ∼
星川換気孔 ∼ 西名古屋変電所
② 電気設備概要
・受電設備 3φ3W Tr50kVA(川越火力発電所内)
410V/3φ3W 210V
1φ3W210V・105V
発電所外の場所は 中部電力配電線より低圧
引込 若しくは 構内3φ3W210V・105V
により供給
・照明設備 FHF32W×1 反射笠付 925灯
・動力設備 換気ファン・排水ポンプ
・仮設電源設備 排水ポンプ用電源を流用できる
様設計
③ 換気・排水設備概要
換気ファン 9台
排水ポンプ 20台
3
電気設備
(1)電気設備概要
電気設備は、洞道部要所にある立坑及び換気口に
電灯動力盤を設置し、配電柱及び発・変電所所内電
源より、洞道及び立坑・換気口内の照明設備及び排
水ポンプ・換気ファン等動力設備へ電源供給を行っ
ている。
桑名地区洞道では、洞道点検用照明器具の設計及
び電源供給用の配線設計を行った。
(2)照明器具の設計
照明器具はメンテナンス・緊急非常時のために設
けている。丸の内洞道設計は以前の洞道に習い、
FL40W 1灯用反射笠付蛍光灯を使ったが、桑名洞
道の照明設計については、中部電力(株)から諸設
備に対して丸の内洞道より一層のコストダウンを求
められ、以下の検討を行い高効率の照明器具を選定
した。
・Hf型蛍光灯は、寒冷地等低温場所や高温場所で
使用すると光束が著しく下がる。洞道内は、温度が
15℃∼30℃程度であり実用上問題ないと考えた。
・Hf型蛍光灯を使用した場合、照明器具の取付ピ
ッチは12mに1灯程度になる。従来型器具と比較す
ると、おおむね10m以内に1灯設置していたので、
結果として必要な照明器具の灯数が減る。桑名洞道
では、従来型の照明器具に比べ、約200灯程の灯数
を抑える事が出来た。また、1回線当たりの配線長を
伸ばす事が出来、照明器具の台数が減った分だけ回
路数が減ったため、電灯・動力盤のコストダウンに
もつながった。
図1 洞道概略図
(1)名城変電所(丸の内洞道)
① 洞道の概要 ・構造
シールド洞道
・洞道亘長
169.5m
・ 洞道の所在地
名城変電所 ∼ 丸の内立坑(共同溝)
② 電気設備概要
受電設備 Tr 200KVA(既設)
3φ3W 410V/3φ3W 210V
1φ3W210V・105V
照明設備 FL40W×1 反射笠付 18灯
動力設備 換気ファン・遮水弁
③ 換気・排水設備概要
換気ファン 3台
遮水弁 5台
34
図2
桑名地区洞道概略図
図3 ケーブル受け棚試作品
表1 照明器具設計仕様比較表
工事名
設計仕様
照明器具
取付ピッチ
丸の内洞道
FL40W×1
反射笠
9m
桑名地区洞道
FHF32W×1
反射笠
12m
(3)配線設計
洞道では電線亘長が長く、配線設計は負荷の容量
及び 電線亘長による電圧降下を基にして電線サイズ
を決定した。桑名洞道内の負荷については、電線亘
長がいずれも200mを超えるために、受電点からの
電圧降下率を5%(構内変圧器がある場合6%)とし
て電線サイズを選定した。洞道部では、ラダー状の
ケーブル受棚により配線を行うのが通例であり、洞
道という湿気の多い場所なので、受棚は鋼材を加工
した後に溶融亜鉛鍍金を施し製作したものを使用す
る。桑名地区洞道では、中部電力㈱より廃棄物の再
利用「廃棄プラスチックを使用したケーブル受け棚」
(図3参照)の要請を受け、以下のように検討を行っ
た。
・ 製作費の削減
① 形状を従来のラダー状の物を2mに1箇所支持す
るように形状の検討を行った。
② ケーブル受け棚を照明器具支持金物と組み合わ
せて活用した。(図4参照)
・ 施工方法の検討
ケーブル受け棚を廃棄プラスチックにするには、
鋼材に比べて強度が低いので、配線するケーブルの
サイズが、最大325 SQの CVT ケーブルであるか
らケーブルの強度を計算し、布設方法を検討した。
その結果、吊車にて一旦ケーブルを布設した後に、
ケーブルを移し替える方法を採用した。
図4
洞
道
の
電
気
・
換
気
・
排
水
設
備
の
設
計
事
例
ケーブル受け棚試作品(照明取付例)
35
XP34-53_施工事例3.3 99.11.16 5:35 PM ページ 34
施
工
事
例
洞
道
の
電
気
・
換
気
・
排
水
設
備
の
設
計
事
例
施
工
事
例
洞道の電気・換気・排水設備の設計事例
名古屋本部営業部設計グループ/馬場 基次・林 哲也・柴田 豊
1
はじめに
都心部における電力需要は、OA機器等の普及に
より益々増える傾向にあり、送電効率を上げるため
消費地近くに一次変電所を設置する必要がある。都
心部における変電設備の設置には、土地の確保等の
問題があり、送電線路の確保もままならず地中化を
余儀なくされている。
今回紹介する洞道(送電線を敷設した専用トンネ
ル)関連設備は、名古屋城駐車場地下に設置された
地下変電所に継がる洞道の特殊なダクト設備に関す
る事例と、桑名地区洞道に設置する照明器具設備及
び関連した廃棄プラスチックを使用したケーブル受
け棚(中部電力㈱地中線土木課試作)の実施設計例
を紹介する。
2
設備概要
洞道の概要は次のとおりで、主に立坑部・洞道
部・発変電所構内から成る。(図1参照)
(2)桑名地区洞道
① 洞道の概要 ・構造
シールド洞道
・洞道亘長
9.478 km
・洞道の所在地 (図2参照)
川越火力発電所 ∼ 川越共同立坑
(川越共同溝)
安永共同立坑 ∼ 西別所換気孔 ∼
希望ヶ丘立坑 ∼ 蓮花寺立坑 ∼
星川換気孔 ∼ 西名古屋変電所
② 電気設備概要
・受電設備 3φ3W Tr50kVA(川越火力発電所内)
410V/3φ3W 210V
1φ3W210V・105V
発電所外の場所は 中部電力配電線より低圧
引込 若しくは 構内3φ3W210V・105V
により供給
・照明設備 FHF32W×1 反射笠付 925灯
・動力設備 換気ファン・排水ポンプ
・仮設電源設備 排水ポンプ用電源を流用できる
様設計
③ 換気・排水設備概要
換気ファン 9台
排水ポンプ 20台
3
電気設備
(1)電気設備概要
電気設備は、洞道部要所にある立坑及び換気口に
電灯動力盤を設置し、配電柱及び発・変電所所内電
源より、洞道及び立坑・換気口内の照明設備及び排
水ポンプ・換気ファン等動力設備へ電源供給を行っ
ている。
桑名地区洞道では、洞道点検用照明器具の設計及
び電源供給用の配線設計を行った。
(2)照明器具の設計
照明器具はメンテナンス・緊急非常時のために設
けている。丸の内洞道設計は以前の洞道に習い、
FL40W 1灯用反射笠付蛍光灯を使ったが、桑名洞
道の照明設計については、中部電力(株)から諸設
備に対して丸の内洞道より一層のコストダウンを求
められ、以下の検討を行い高効率の照明器具を選定
した。
・Hf型蛍光灯は、寒冷地等低温場所や高温場所で
使用すると光束が著しく下がる。洞道内は、温度が
15℃∼30℃程度であり実用上問題ないと考えた。
・Hf型蛍光灯を使用した場合、照明器具の取付ピ
ッチは12mに1灯程度になる。従来型器具と比較す
ると、おおむね10m以内に1灯設置していたので、
結果として必要な照明器具の灯数が減る。桑名洞道
では、従来型の照明器具に比べ、約200灯程の灯数
を抑える事が出来た。また、1回線当たりの配線長を
伸ばす事が出来、照明器具の台数が減った分だけ回
路数が減ったため、電灯・動力盤のコストダウンに
もつながった。
図1 洞道概略図
(1)名城変電所(丸の内洞道)
① 洞道の概要 ・構造
シールド洞道
・洞道亘長
169.5m
・ 洞道の所在地
名城変電所 ∼ 丸の内立坑(共同溝)
② 電気設備概要
受電設備 Tr 200KVA(既設)
3φ3W 410V/3φ3W 210V
1φ3W210V・105V
照明設備 FL40W×1 反射笠付 18灯
動力設備 換気ファン・遮水弁
③ 換気・排水設備概要
換気ファン 3台
遮水弁 5台
34
図2
桑名地区洞道概略図
図3 ケーブル受け棚試作品
表1 照明器具設計仕様比較表
工事名
設計仕様
照明器具
取付ピッチ
丸の内洞道
FL40W×1
反射笠
9m
桑名地区洞道
FHF32W×1
反射笠
12m
(3)配線設計
洞道では電線亘長が長く、配線設計は負荷の容量
及び 電線亘長による電圧降下を基にして電線サイズ
を決定した。桑名洞道内の負荷については、電線亘
長がいずれも200mを超えるために、受電点からの
電圧降下率を5%(構内変圧器がある場合6%)とし
て電線サイズを選定した。洞道部では、ラダー状の
ケーブル受棚により配線を行うのが通例であり、洞
道という湿気の多い場所なので、受棚は鋼材を加工
した後に溶融亜鉛鍍金を施し製作したものを使用す
る。桑名地区洞道では、中部電力㈱より廃棄物の再
利用「廃棄プラスチックを使用したケーブル受け棚」
(図3参照)の要請を受け、以下のように検討を行っ
た。
・ 製作費の削減
① 形状を従来のラダー状の物を2mに1箇所支持す
るように形状の検討を行った。
② ケーブル受け棚を照明器具支持金物と組み合わ
せて活用した。(図4参照)
・ 施工方法の検討
ケーブル受け棚を廃棄プラスチックにするには、
鋼材に比べて強度が低いので、配線するケーブルの
サイズが、最大325 SQの CVT ケーブルであるか
らケーブルの強度を計算し、布設方法を検討した。
その結果、吊車にて一旦ケーブルを布設した後に、
ケーブルを移し替える方法を採用した。
図4
洞
道
の
電
気
・
換
気
・
排
水
設
備
の
設
計
事
例
ケーブル受け棚試作品(照明取付例)
35
XP34-53_施工事例3.3 99.11.16 5:35 PM ページ 36
施
工
事
例
洞
道
の
電
気
・
換
気
・
排
水
設
備
の
設
計
事
例
施
工
事
例
4
換気排水設備
(1)換気排水設備概要
排気設備は、立坑及び換気口に送風機を設置し、
各洞道内の換気を行っている。
排水設備は、洞道の勾配を考慮し、各洞道ごとの
立坑内に排水ポンプを設置し排水を行っている。
(2)換気設備の設計
換気設備は、労働安全衛生法による酸素欠乏症防
止規則、別表第6・3項「ケーブル等地下に敷設され
るものを収容する暗渠等」により、酸素欠乏危険箇
所に指定されている。洞道が該当するかは、監督官
庁においても明確となっていないが、酸素欠乏症防
止規則に基づき、以下の条件にて換気量を計算した。
・洞道内の有効開口率 70 %
・有効開口における面風速 0.8 m/sec
換気設備の主な検討事項
・洞道遮水壁のダクト貫通部における遮水
丸の内洞道は、名古屋城周辺の堀川を横切ってお
り、洞道事故(地震による洞道の破損等)により名
城変電所立坑に河川水の流入防止のため遮水壁を設
けている。遮水方式は遮水壁貫通ダクトの遮水処理
を検討し、大型バタフライ弁(図5参照)を採用した。
は、地元住民とのトラブルの原因となる。
騒音規制法はもとより周辺への配慮をした騒音計
画が必要である。
(3)排水設備の検討
排水設備は、洞道内のケーブルレベルへの浸水防
止及び歩廊の確保を目的として、排水ポンプの設計
を行った。
① 排水ポンプの検討
洞道はシールド工法により築造されており洞道内
のスペースに余裕がなく排水ポンプピットにおいて
も例外でない。
排水ポンプピットは、排水ポンプの運転に支障を
きたさない深さを確保する事が出来ないため以下の
検討を行った。
通常排水水中ポンプは、モーター部が水中に没す
るため連続運転が可能であるが、排水ポンプピット
が浅く洞道の勾配も緩いため水位が0.4m(代表値)
と浅いにもかかわらず、水量が6.5m3と非常に多い。
そのためポンプの起動から停止までの運転時間が20
分前後(代表値)と長く、メーカ保証範囲(運転可
能最低水位での運転時間10分)を超えてしまい、通
常の排水ポンプが使用できない。そのため桑名洞道
においては、排水の水が水中ポンプを通りモーター
部を冷却する機種を選定した。(式1により排水時間
の検討をする)
② 排水配管の検討
洞道は排水距離が非常に長く、また、曲りも緩や
かである。そのため、今までの設計では排水配管と
して耐衝撃性硬質塩化ビニル管(HIVP)を選定
していた。しかし、排水配管の設置位置が洞道の歩
廊に近く、衝撃により割れてしまう可能性があるた
め、今回設計では排水配管にポリエチレン管を採用
した。
表1 配管比較表
ポリエチレン管(PE) 耐衝撃性硬質塩化ビニール管(HIVP)
定
尺 ドラム巻き可能 標準5.0(m)
4.0(m)
配管重量
3.433(kg/m)
3.338(kg/m)
耐衝撃性
割れない
割れる可能性がある
施 工 性
特に良い
良い
5
おわりに
桑名地区洞道は、ケーブル敷設に余裕があり将来
対応型と位置付けられている。今後電力需要の拡大
に伴い、洞道内の温度上昇による抵抗損失が増加し、
その結果、電力損失が大きくなるため洞道内の冷却
が不可欠なものになる。また、洞道の延長化による
作業環境の整備も必要になってきている。
「廃棄物再利用品の開発」並びに「地球温暖化対
策としての洞道廃熱の利用」は、今後トーエネック
独自技術項目の一つと確信する。
最後に設計指導に際し、関係各位より多大なご指
導、ご協力を頂きましたことに対し感謝を申し上げ
ます。
安 全 性 燃焼時有毒ガスは発生しない 燃焼時有毒ガスが発生する
融着接合
配管接続
ソケット接続
③ その他
洞道内の排水ポンプは、2台交互運転として設置を
行っているが、ポンプの故障時を考慮し排水配管の
途中(洞道の高低差1.5mおき)に仮設ポンプの接続
口を設け、非常時の洞道内への立ち入りを確保して
いる。
立坑
洞
道
の
電
気
・
換
気
・
排
水
設
備
の
設
計
事
例
立坑
勾配a1%
勾配a2%
式1 洞道内水量計算
L1
L2
計算1
計算2
図7 洞道縦断図
1.2m
1.2m
L地点
L地点
・C.W.L.・ 連続運転最低水位
・L.W.L.・ 運転可能最低水位
36
C
水面レベル
C
C
C
2.1m
図6 排水ポンプ
水面レベル
2.1-0
・その他
洞道立坑は、市街地に築造されることが多く、周
辺との調和が必要である。特に住宅地における騒音
水面レベル
D
大型バタフライ弁(電動)
2.1-0
図5
2.1-0
β
2.1m
θ
m
水面レベル
2.1
C
2.1m
1m
m
A
2.
2.1-0
θ
2.1
1m
2.
L地点
2.1m
L地点
1.2m
1.2m
図8 洞道断面図
37
XP34-53_施工事例3.3 99.11.16 5:35 PM ページ 36
施
工
事
例
洞
道
の
電
気
・
換
気
・
排
水
設
備
の
設
計
事
例
施
工
事
例
4
換気排水設備
(1)換気排水設備概要
排気設備は、立坑及び換気口に送風機を設置し、
各洞道内の換気を行っている。
排水設備は、洞道の勾配を考慮し、各洞道ごとの
立坑内に排水ポンプを設置し排水を行っている。
(2)換気設備の設計
換気設備は、労働安全衛生法による酸素欠乏症防
止規則、別表第6・3項「ケーブル等地下に敷設され
るものを収容する暗渠等」により、酸素欠乏危険箇
所に指定されている。洞道が該当するかは、監督官
庁においても明確となっていないが、酸素欠乏症防
止規則に基づき、以下の条件にて換気量を計算した。
・洞道内の有効開口率 70 %
・有効開口における面風速 0.8 m/sec
換気設備の主な検討事項
・洞道遮水壁のダクト貫通部における遮水
丸の内洞道は、名古屋城周辺の堀川を横切ってお
り、洞道事故(地震による洞道の破損等)により名
城変電所立坑に河川水の流入防止のため遮水壁を設
けている。遮水方式は遮水壁貫通ダクトの遮水処理
を検討し、大型バタフライ弁(図5参照)を採用した。
は、地元住民とのトラブルの原因となる。
騒音規制法はもとより周辺への配慮をした騒音計
画が必要である。
(3)排水設備の検討
排水設備は、洞道内のケーブルレベルへの浸水防
止及び歩廊の確保を目的として、排水ポンプの設計
を行った。
① 排水ポンプの検討
洞道はシールド工法により築造されており洞道内
のスペースに余裕がなく排水ポンプピットにおいて
も例外でない。
排水ポンプピットは、排水ポンプの運転に支障を
きたさない深さを確保する事が出来ないため以下の
検討を行った。
通常排水水中ポンプは、モーター部が水中に没す
るため連続運転が可能であるが、排水ポンプピット
が浅く洞道の勾配も緩いため水位が0.4m(代表値)
と浅いにもかかわらず、水量が6.5m3と非常に多い。
そのためポンプの起動から停止までの運転時間が20
分前後(代表値)と長く、メーカ保証範囲(運転可
能最低水位での運転時間10分)を超えてしまい、通
常の排水ポンプが使用できない。そのため桑名洞道
においては、排水の水が水中ポンプを通りモーター
部を冷却する機種を選定した。(式1により排水時間
の検討をする)
② 排水配管の検討
洞道は排水距離が非常に長く、また、曲りも緩や
かである。そのため、今までの設計では排水配管と
して耐衝撃性硬質塩化ビニル管(HIVP)を選定
していた。しかし、排水配管の設置位置が洞道の歩
廊に近く、衝撃により割れてしまう可能性があるた
め、今回設計では排水配管にポリエチレン管を採用
した。
表1 配管比較表
ポリエチレン管(PE) 耐衝撃性硬質塩化ビニール管(HIVP)
定
尺 ドラム巻き可能 標準5.0(m)
4.0(m)
配管重量
3.433(kg/m)
3.338(kg/m)
耐衝撃性
割れない
割れる可能性がある
施 工 性
特に良い
良い
5
おわりに
桑名地区洞道は、ケーブル敷設に余裕があり将来
対応型と位置付けられている。今後電力需要の拡大
に伴い、洞道内の温度上昇による抵抗損失が増加し、
その結果、電力損失が大きくなるため洞道内の冷却
が不可欠なものになる。また、洞道の延長化による
作業環境の整備も必要になってきている。
「廃棄物再利用品の開発」並びに「地球温暖化対
策としての洞道廃熱の利用」は、今後トーエネック
独自技術項目の一つと確信する。
最後に設計指導に際し、関係各位より多大なご指
導、ご協力を頂きましたことに対し感謝を申し上げ
ます。
安 全 性 燃焼時有毒ガスは発生しない 燃焼時有毒ガスが発生する
融着接合
配管接続
ソケット接続
③ その他
洞道内の排水ポンプは、2台交互運転として設置を
行っているが、ポンプの故障時を考慮し排水配管の
途中(洞道の高低差1.5mおき)に仮設ポンプの接続
口を設け、非常時の洞道内への立ち入りを確保して
いる。
立坑
洞
道
の
電
気
・
換
気
・
排
水
設
備
の
設
計
事
例
立坑
勾配a1%
勾配a2%
式1 洞道内水量計算
L1
L2
計算1
計算2
図7 洞道縦断図
1.2m
1.2m
L地点
L地点
・C.W.L.・ 連続運転最低水位
・L.W.L.・ 運転可能最低水位
36
C
水面レベル
C
C
C
2.1m
図6 排水ポンプ
水面レベル
2.1-0
・その他
洞道立坑は、市街地に築造されることが多く、周
辺との調和が必要である。特に住宅地における騒音
水面レベル
D
大型バタフライ弁(電動)
2.1-0
図5
2.1-0
β
2.1m
θ
m
水面レベル
2.1
C
2.1m
1m
m
A
2.
2.1-0
θ
2.1
1m
2.
L地点
2.1m
L地点
1.2m
1.2m
図8 洞道断面図
37
XP34-53_施工事例3.3 99.11.16 5:35 PM ページ 38
施
工
事
例
金
山
南
ビ
ル
建
設
工
事
電
気
設
備
概
要
金山南ビル建設工事電気設備概要
名古屋本部内線工事部内線工事グループ/山崎 義光・小泉 隆宏
1
はじめに
金山南ビルは、まちづくりに関する総合センター
である名古屋市都市センター、文化の拠点となる名
古屋ボストン美術館、新しい出会いや賜わいの場と
なる全日空ホテルズ・グランドコート名古屋、隣接
する道路地下を利用してビルと一体となった公共駐
車場の4つの施設から構成される複合ビルである。
本稿では、名古屋市基本計画で「金山・熱田副次
拠点域」と位置づけられている金山地区において、
文化・商業・業務機能を高め、広域交流拠点と地域
の賜わい拠点の形成を目的として期待される建物の
電気設備の概要について紹介する。
2
② 受電方法 3φ3W 3回線
スポットネットワーク方式
③ 受電電圧 33,000V 60Hz
④ 変圧器 3φ3W 1,750kVA×3
(SF6ガス絶縁変圧器)
一次電圧33,000V
二次電圧6,600V
600kVA
⑤ アクティブフィルター
500kar×1台 200kar×3台
⑥ 進相用コンデンサー
高圧変電設備は、図2に示すSS-1・2・3・4の4
箇所に設置している。
建築概要
(1)建物名称 金山南ビル
(2)所在地 名古屋市中区金山一丁目101番
(3)工 期 H8.1.26∼10.11.30
(4)主要用途 美術館 東側1F∼6F
都市センター 11F∼14F
ホテル B1F∼9F 15F∼30F
駐車所 B4F∼B2F
(5)面 積 敷地面積 4,604.59m2
建築面積 3,409.05m2
延べ面積 61,098.79m2
(6)高 さ 階数 地上31階 地下4階
最高部高 134.50m
3
電気設備概要
(1)特高受変電設備
① 設備場所 地下4F
図1 構内変電所系統図
38
施
工
事
例
写真1 外観
図2 構内配電系統図
(2)自家発電設備
① 全体防災用
設置場所 31F
設備要領 立体水冷4サイクルディーゼルエンジン機関
1,900PS 6,600V 1,500kVA×1
使用燃料 A重油
貯油槽 地下タンク 1,950L
② 美術館 空調用
設置場所 美術館屋上
設備概要 低騒音屋外キュービクル
立体水冷4サイクルディーゼルエンジン機関
200V 300kVA×2台
貯油槽 地下タンク 1,650L
(3)蓄電池設備
非常照明および変電設備操作用として、屋内キュ
ービクル型/MSE型蓄電池を、地下1F、2Fおよび
地上10Fに設置している。
(4)中央監視設備
設置場所 10F 中央監視室
用途 電力・空調・衛生・防災・保全等の
各設備をトータル管理し、ビルの環 境維持、省力、省エネルギー、安全等 を図る。
設備内容 中央処理装置
SRT、プリンター、管理用パソコン
等各種入出力装置、リモートステー
ション、操作卓、UPS(20kVA)、
電力監視装置
(5)幹線設備
幹線設備は、CRT、FPTケーブルを主体に、ケー
ブルラックおよび配管により各所に配線している。
一般動力 AC
3φ3W210V
非常用動力 AC-GC
3φ3W415V
電灯コンセント AC
1φ3W210/105V
保安電灯 AC-GC
1φ3W210/105V
非常用照明 AC-GC-DC 1φ3W105V
(6)その他の特徴的設備
① 電話情報配管設備
NTT回線は、建物東端から地上より建物内に引き
込んでいる。光ケーブルをMDF室への引き込みルー
トは、ケーブルラックにより確保している。
引き込み配管 3本(配管サイズ104mm)
② 保守電話交換設備
構内設備管理業務の構内連絡用として、内線電話
を設置している。この内線電話設備の交換機を介し
て、各テナントで設置する電話交換機を内線延長接
続し、館内の内線電話連絡を可能にしている。連絡
等の電話は、各階の主なメンテナンスを要する機械
室・電気室EPS等に取り付けて構内連絡をする。
③ テレビ共同聴視設備
VHF,UHF,BSの一般放送は、受信用アンテナを屋
上に設置して、各施設にテレビ放送受信用の配線を
している。
将来のCATV(双方向)に対応するため、ヘッド
エンド架(CATV機器用スペース)を地下2Fに設置
している。
④ ITV設備
防災監視用ITVは、インターコモン(公開空地)を
3つの部分に区分し、それぞれの部分を4隅から映し
出すように、12台のカメラを設置し、防災センター
の1台のモニターで監視を可能としている。
インターコモン内の火災発生時には、自動火災報
知器設備からの信号により、当該区画の表示に自動
的に切り替わる。
⑤ セキュリティ設備
美術館・ホテル・都市センター・駐車場を区画し
たセキュリティ設備は、次のとおりである。
ア.美術館のセキュリティ
警備室に防犯監視卓を設置し、モニターテレビ群
を警備室および事務室に置き監視する。
●各階出入口・収蔵庫等には、マグネットセンサー の取付
●部屋には、熱線式空間センサーの取付
●ホール等は、監視カメラの取付
●外部出入口は、電気錠の取付等により監視する。
ただし、本工事は配管のみとする。
イ.ホテル・都市センター・駐車場のセキュリティ
防災センターに防犯監視卓・モニターテレビ群を
置き監視する。
●各階および室の各出入口には、マグネットセンサ ーの取付
●外部出入口には、電気錠の取付
●ホテル客室廊下には、監視カメラの取付
ただし、共用部分および駐車場は機器取り付けま
で、都市センター専用部は配管までとし、ホテル専
用部は別途工事としている。
(7)駐車場管制設備
駐車場は、ナンバー認識による車両管理方式で、
従来の駐車券管理方式と大きく異なっている。この
様な方式は名古屋市で初めての導入で、テナントサ
ービスを含めたシステムとしては、日本初の駐車場
管理システムである。
① 駐車場管制システムの概要
駐車場は、地下2F∼地下4Fの3フロアで、地下
金
山
南
ビ
ル
建
設
工
事
電
気
設
備
概
要
39
XP34-53_施工事例3.3 99.11.16 5:35 PM ページ 38
施
工
事
例
金
山
南
ビ
ル
建
設
工
事
電
気
設
備
概
要
金山南ビル建設工事電気設備概要
名古屋本部内線工事部内線工事グループ/山崎 義光・小泉 隆宏
1
はじめに
金山南ビルは、まちづくりに関する総合センター
である名古屋市都市センター、文化の拠点となる名
古屋ボストン美術館、新しい出会いや賜わいの場と
なる全日空ホテルズ・グランドコート名古屋、隣接
する道路地下を利用してビルと一体となった公共駐
車場の4つの施設から構成される複合ビルである。
本稿では、名古屋市基本計画で「金山・熱田副次
拠点域」と位置づけられている金山地区において、
文化・商業・業務機能を高め、広域交流拠点と地域
の賜わい拠点の形成を目的として期待される建物の
電気設備の概要について紹介する。
2
② 受電方法 3φ3W 3回線
スポットネットワーク方式
③ 受電電圧 33,000V 60Hz
④ 変圧器 3φ3W 1,750kVA×3
(SF6ガス絶縁変圧器)
一次電圧33,000V
二次電圧6,600V
600kVA
⑤ アクティブフィルター
500kar×1台 200kar×3台
⑥ 進相用コンデンサー
高圧変電設備は、図2に示すSS-1・2・3・4の4
箇所に設置している。
建築概要
(1)建物名称 金山南ビル
(2)所在地 名古屋市中区金山一丁目101番
(3)工 期 H8.1.26∼10.11.30
(4)主要用途 美術館 東側1F∼6F
都市センター 11F∼14F
ホテル B1F∼9F 15F∼30F
駐車所 B4F∼B2F
(5)面 積 敷地面積 4,604.59m2
建築面積 3,409.05m2
延べ面積 61,098.79m2
(6)高 さ 階数 地上31階 地下4階
最高部高 134.50m
3
電気設備概要
(1)特高受変電設備
① 設備場所 地下4F
図1 構内変電所系統図
38
施
工
事
例
写真1 外観
図2 構内配電系統図
(2)自家発電設備
① 全体防災用
設置場所 31F
設備要領 立体水冷4サイクルディーゼルエンジン機関
1,900PS 6,600V 1,500kVA×1
使用燃料 A重油
貯油槽 地下タンク 1,950L
② 美術館 空調用
設置場所 美術館屋上
設備概要 低騒音屋外キュービクル
立体水冷4サイクルディーゼルエンジン機関
200V 300kVA×2台
貯油槽 地下タンク 1,650L
(3)蓄電池設備
非常照明および変電設備操作用として、屋内キュ
ービクル型/MSE型蓄電池を、地下1F、2Fおよび
地上10Fに設置している。
(4)中央監視設備
設置場所 10F 中央監視室
用途 電力・空調・衛生・防災・保全等の
各設備をトータル管理し、ビルの環 境維持、省力、省エネルギー、安全等 を図る。
設備内容 中央処理装置
SRT、プリンター、管理用パソコン
等各種入出力装置、リモートステー
ション、操作卓、UPS(20kVA)、
電力監視装置
(5)幹線設備
幹線設備は、CRT、FPTケーブルを主体に、ケー
ブルラックおよび配管により各所に配線している。
一般動力 AC
3φ3W210V
非常用動力 AC-GC
3φ3W415V
電灯コンセント AC
1φ3W210/105V
保安電灯 AC-GC
1φ3W210/105V
非常用照明 AC-GC-DC 1φ3W105V
(6)その他の特徴的設備
① 電話情報配管設備
NTT回線は、建物東端から地上より建物内に引き
込んでいる。光ケーブルをMDF室への引き込みルー
トは、ケーブルラックにより確保している。
引き込み配管 3本(配管サイズ104mm)
② 保守電話交換設備
構内設備管理業務の構内連絡用として、内線電話
を設置している。この内線電話設備の交換機を介し
て、各テナントで設置する電話交換機を内線延長接
続し、館内の内線電話連絡を可能にしている。連絡
等の電話は、各階の主なメンテナンスを要する機械
室・電気室EPS等に取り付けて構内連絡をする。
③ テレビ共同聴視設備
VHF,UHF,BSの一般放送は、受信用アンテナを屋
上に設置して、各施設にテレビ放送受信用の配線を
している。
将来のCATV(双方向)に対応するため、ヘッド
エンド架(CATV機器用スペース)を地下2Fに設置
している。
④ ITV設備
防災監視用ITVは、インターコモン(公開空地)を
3つの部分に区分し、それぞれの部分を4隅から映し
出すように、12台のカメラを設置し、防災センター
の1台のモニターで監視を可能としている。
インターコモン内の火災発生時には、自動火災報
知器設備からの信号により、当該区画の表示に自動
的に切り替わる。
⑤ セキュリティ設備
美術館・ホテル・都市センター・駐車場を区画し
たセキュリティ設備は、次のとおりである。
ア.美術館のセキュリティ
警備室に防犯監視卓を設置し、モニターテレビ群
を警備室および事務室に置き監視する。
●各階出入口・収蔵庫等には、マグネットセンサー の取付
●部屋には、熱線式空間センサーの取付
●ホール等は、監視カメラの取付
●外部出入口は、電気錠の取付等により監視する。
ただし、本工事は配管のみとする。
イ.ホテル・都市センター・駐車場のセキュリティ
防災センターに防犯監視卓・モニターテレビ群を
置き監視する。
●各階および室の各出入口には、マグネットセンサ ーの取付
●外部出入口には、電気錠の取付
●ホテル客室廊下には、監視カメラの取付
ただし、共用部分および駐車場は機器取り付けま
で、都市センター専用部は配管までとし、ホテル専
用部は別途工事としている。
(7)駐車場管制設備
駐車場は、ナンバー認識による車両管理方式で、
従来の駐車券管理方式と大きく異なっている。この
様な方式は名古屋市で初めての導入で、テナントサ
ービスを含めたシステムとしては、日本初の駐車場
管理システムである。
① 駐車場管制システムの概要
駐車場は、地下2F∼地下4Fの3フロアで、地下
金
山
南
ビ
ル
建
設
工
事
電
気
設
備
概
要
39
XP34-53_施工事例3.3 99.11.16 5:35 PM ページ 40
施
工
事
例
金
山
南
ビ
ル
建
設
工
事
電
気
設
備
概
要
施
工
事
例
2Fに入庫ゲートがある。総収容台数は347台である。
ア.駐車場利用者のメリット
●登録車両(全日定期契約、限定定期契約等)は、
駐車場券パスカードが一切不要で、入出庫時に一旦
停止のみでスムーズな入出庫となる。
●一般車でも事前精算を行えば、出庫時は一旦停止
のみでスムーズな出庫となる。
●駐車券やパスカードの紛失といった心配は、不用
である。
イ.運用者のメリット
●入庫する全てのナンバーを読み取ることにより、
長期停車車両のチェックや盗難車両の発見等への対
応が容易である。
●磁気カードやパスカードの発券が不要で、運用コ
表1
規格・条件
認識対象
機器台数
(1レーン当たり)
備考
ナンバープレート上の全文字
陸支コード(漢字)、車種コード(2or3桁数字)
用途コード(ひらがな)、一連番号(4桁数字)
認識用カメラ : 2台
ナンバー認識装置 : 2台
(カメラ1台に認識装置1台接続)
以下は認識対象外
・
「愛」、
「三」など旧陸支コード
1台の画像処理装置にカメラ2台接続可能
撮像範囲
横幅2.5mが認識幅
撮像角度
水平方向角度条件 : 0∼±10度
垂直方向角度条件 : 5∼15度
撮像距離
カメラからプレートまで5∼25m
環境条件
入出庫口は地下または屋内であること
推奨条件 : 外光が入らない環境
照明条件
赤外ストロボ照明
直射日光がプレート面に照射しないこと
図3
40
写真2 駐車場管理室
ナンバー認識仕様
ストの削減になる。
●利用車両の入出庫時間や支払金額等の集中管理に
加え、各車室の管理人室において、場内の誘導・監
視が集中管理ができ、駐車場全体の効率的な管理が
可能である。
② システム構成
駐車場管制システムは、次の4つのシステムからな
っている。
ア.ナンバー認識システム
入出庫時に高解像度CCDカメラによる画像を認識
装置に送り、画像処理技術によりナンバーを全文字
認識し、ゲートの開閉や駐車料金を精算するシステ
ムである。駐車場の利用方法は簡単で、ナンバーを
登録済みしてる契約車は、入出庫ゲートでナンバー
を読み取りゲートを自動開閉し、ドライバーは何の
動作も必要なく、また、一般車の場合についても入
庫口で認識したナンバーを使って事前精算をしてお
けば、出庫口では一旦停止するだけで出庫が可能で
非常に便利である。
イ.料金精算システム
ナンバー認識システムのデータを基に料金精算を
するシステムである。写真2の駐車管理室に設置して
いるサーバーと事前精算機・出口精算機・発券機・
ゲート等がネットワークで結ばれ、ゲートの開閉や
料金の精算を行う。
ウ.場内案内監視システム
各車室に超音波センサーを配置し、駐車管理室で
各車室の在車状況をコンピュータ画面に表示し、各
階の駐車状況により、地下3Fまたは4Fへの誘導を表
示灯に自動表示するシステムである。
エ.テナントサービスシステム
テナント端末と駐車管理室のサーバーとをネット
ワークで結び、駐車料金をサービスする車両ナンバ
ーとサービスする時間とをテナント端末から入力す
れば、そのデータが駐車管理室のサーバーに書き込
まれる。出庫口では、テナントサービスを受けた車
両ナンバーを判断し、自動的にゲートを開放する。
③ 駐車管制システムのまとめ
今回導入した駐車管制システムは、従来のシステ
ムに比較し利用者と運用者の双方に取って大変メリ
ットが多いが、イニシャルコストが高く導入が難し
い状況にある。ただし、セキュリティ性に優れ、磁
気カード式駐車券やパスカード等が不要となり、運
用コストが軽減され、トータルコストを考えれば今
後導入の機会が増える可能性がある。
(8)防災設備
① 自動火災報知設備
受信機 GR型(防災センター)
副受信機 ホテルフロント、美術館警備室、
都市センター事務室
感知器 ●一般型感知器は防火防煙用と煙感知
器を兼用
●2・3種混合型はアナログ式
●アドレス式はホテル客室内
●炎感知器はアトリューム部分
非常電話 主に非常ELVホールに設置
② 防排煙制御設備
③ ガス漏れ警報設備
④ 非常放送設備
⑤ 非常コンセント設備
⑥ 無線通信補助設備
⑦ 避雷設備
⑧ 航空障害設備
10F、22F:低光度障害灯OM-3B型 各6箇所
屋上階:中光度障害灯OM-3型 6箇所
⑨ ヘリポート設備
緊急ヘリポート灯台制御盤 1面
ヘリポート灯台 1箇所 200W×4灯
区域照明灯 4箇所 500W×1灯
境界灯 8箇所 65W×1灯
風向灯 1箇所 200W×4灯
4
金
山
南
ビ
ル
建
設
工
事
電
気
設
備
概
要
おわりに
金山南ビルは、名古屋の副次拠点として期待され
ている建物だったため、大変注目され気を使う工事
であった。また本件は、甲・乙・丙工事に区分され、
全体の7割を締める甲工事が名古屋都市整備公社発
注で、検査は厳しく提出書類も多かった。更に、J
Vとして受注したが当社の請負が8割だったため、
かなり仕事的にボリュームのある工事であった。し
かし、逆に、当社でそれだけの仕事を請け負ったた
め、各担当外の設備にも接する機会が多く、とても
勉強になった現場であった。
最後に、金山南ビル建設工事の施工に当たり、関
係者各位に多大なご指導・御協力をいただき深く感
謝申しあげます。
入出庫の駐車場利用方法
41
XP34-53_施工事例3.3 99.11.16 5:35 PM ページ 40
施
工
事
例
金
山
南
ビ
ル
建
設
工
事
電
気
設
備
概
要
施
工
事
例
2Fに入庫ゲートがある。総収容台数は347台である。
ア.駐車場利用者のメリット
●登録車両(全日定期契約、限定定期契約等)は、
駐車場券パスカードが一切不要で、入出庫時に一旦
停止のみでスムーズな入出庫となる。
●一般車でも事前精算を行えば、出庫時は一旦停止
のみでスムーズな出庫となる。
●駐車券やパスカードの紛失といった心配は、不用
である。
イ.運用者のメリット
●入庫する全てのナンバーを読み取ることにより、
長期停車車両のチェックや盗難車両の発見等への対
応が容易である。
●磁気カードやパスカードの発券が不要で、運用コ
表1
規格・条件
認識対象
機器台数
(1レーン当たり)
備考
ナンバープレート上の全文字
陸支コード(漢字)、車種コード(2or3桁数字)
用途コード(ひらがな)、一連番号(4桁数字)
認識用カメラ : 2台
ナンバー認識装置 : 2台
(カメラ1台に認識装置1台接続)
以下は認識対象外
・
「愛」、
「三」など旧陸支コード
1台の画像処理装置にカメラ2台接続可能
撮像範囲
横幅2.5mが認識幅
撮像角度
水平方向角度条件 : 0∼±10度
垂直方向角度条件 : 5∼15度
撮像距離
カメラからプレートまで5∼25m
環境条件
入出庫口は地下または屋内であること
推奨条件 : 外光が入らない環境
照明条件
赤外ストロボ照明
直射日光がプレート面に照射しないこと
図3
40
写真2 駐車場管理室
ナンバー認識仕様
ストの削減になる。
●利用車両の入出庫時間や支払金額等の集中管理に
加え、各車室の管理人室において、場内の誘導・監
視が集中管理ができ、駐車場全体の効率的な管理が
可能である。
② システム構成
駐車場管制システムは、次の4つのシステムからな
っている。
ア.ナンバー認識システム
入出庫時に高解像度CCDカメラによる画像を認識
装置に送り、画像処理技術によりナンバーを全文字
認識し、ゲートの開閉や駐車料金を精算するシステ
ムである。駐車場の利用方法は簡単で、ナンバーを
登録済みしてる契約車は、入出庫ゲートでナンバー
を読み取りゲートを自動開閉し、ドライバーは何の
動作も必要なく、また、一般車の場合についても入
庫口で認識したナンバーを使って事前精算をしてお
けば、出庫口では一旦停止するだけで出庫が可能で
非常に便利である。
イ.料金精算システム
ナンバー認識システムのデータを基に料金精算を
するシステムである。写真2の駐車管理室に設置して
いるサーバーと事前精算機・出口精算機・発券機・
ゲート等がネットワークで結ばれ、ゲートの開閉や
料金の精算を行う。
ウ.場内案内監視システム
各車室に超音波センサーを配置し、駐車管理室で
各車室の在車状況をコンピュータ画面に表示し、各
階の駐車状況により、地下3Fまたは4Fへの誘導を表
示灯に自動表示するシステムである。
エ.テナントサービスシステム
テナント端末と駐車管理室のサーバーとをネット
ワークで結び、駐車料金をサービスする車両ナンバ
ーとサービスする時間とをテナント端末から入力す
れば、そのデータが駐車管理室のサーバーに書き込
まれる。出庫口では、テナントサービスを受けた車
両ナンバーを判断し、自動的にゲートを開放する。
③ 駐車管制システムのまとめ
今回導入した駐車管制システムは、従来のシステ
ムに比較し利用者と運用者の双方に取って大変メリ
ットが多いが、イニシャルコストが高く導入が難し
い状況にある。ただし、セキュリティ性に優れ、磁
気カード式駐車券やパスカード等が不要となり、運
用コストが軽減され、トータルコストを考えれば今
後導入の機会が増える可能性がある。
(8)防災設備
① 自動火災報知設備
受信機 GR型(防災センター)
副受信機 ホテルフロント、美術館警備室、
都市センター事務室
感知器 ●一般型感知器は防火防煙用と煙感知
器を兼用
●2・3種混合型はアナログ式
●アドレス式はホテル客室内
●炎感知器はアトリューム部分
非常電話 主に非常ELVホールに設置
② 防排煙制御設備
③ ガス漏れ警報設備
④ 非常放送設備
⑤ 非常コンセント設備
⑥ 無線通信補助設備
⑦ 避雷設備
⑧ 航空障害設備
10F、22F:低光度障害灯OM-3B型 各6箇所
屋上階:中光度障害灯OM-3型 6箇所
⑨ ヘリポート設備
緊急ヘリポート灯台制御盤 1面
ヘリポート灯台 1箇所 200W×4灯
区域照明灯 4箇所 500W×1灯
境界灯 8箇所 65W×1灯
風向灯 1箇所 200W×4灯
4
金
山
南
ビ
ル
建
設
工
事
電
気
設
備
概
要
おわりに
金山南ビルは、名古屋の副次拠点として期待され
ている建物だったため、大変注目され気を使う工事
であった。また本件は、甲・乙・丙工事に区分され、
全体の7割を締める甲工事が名古屋都市整備公社発
注で、検査は厳しく提出書類も多かった。更に、J
Vとして受注したが当社の請負が8割だったため、
かなり仕事的にボリュームのある工事であった。し
かし、逆に、当社でそれだけの仕事を請け負ったた
め、各担当外の設備にも接する機会が多く、とても
勉強になった現場であった。
最後に、金山南ビル建設工事の施工に当たり、関
係者各位に多大なご指導・御協力をいただき深く感
謝申しあげます。
入出庫の駐車場利用方法
41
XP34-53_施工事例3.3 99.11.16 5:35 PM ページ 42
施
工
事
例
シ
ス
テ
ム
高
周
波
雑
音
対
策
交直変換装置におけるROXシステム高周波雑音対策
電力本部 工務部 発変電グループ/廣田 武・新村 秀樹
1
はじめに
電力の広域運営、相互応援能力の拡大による供給
信頼度の向上と電力供給の安定を目的に、中部電力
㈱と北陸電力㈱とが共同し「南福光連系所」を新設
した。
両電力の電力系統が交流連系した場合、関西電力
㈱を含めた3社にまたがる交流ループ系統が構成さ
れ、常時の潮流調整が困難になる等の問題点が生ず
る。そのため、図ー1の単線結線図に示すように、南
福光連系所に潮流調整能力のある交流⇔直流⇔交流
連系設備を設置することによって、両電力の系統が
直接連系された。
当社は、連系所設備工事の内、中部電力㈱側の電
気工事を受注し施工を実施した。この主要設備であ
る交直変換装置(BTB:Back To Back )は、
変換用変圧器およびサイリスタバルブ等から構成さ
れ、直流変換装置運転時にサイリスタバルブより裁
断波が発生する。この裁断波が高周波雑音(ラジオ
ノイズ)となり電波障害の要因となる。その対策と
して、サイリスタバルブは専用ホール内に設置し、
シールドによって高周波雑音の漏洩を防ぐと共に、
シールド貫通部には中部電力㈱として初めて、ロッ
クステック社(スウェーデン)製のROXシステム
を採用している。
本稿では、ROXシステム高周波雑音対策工事の
概要を紹介する。
交直変換装置(BTB)とは、直流を介して結合
(交流ー直流ー交流)する方法のうち、直流送電線
を介さずに、変換器の直流側出力相互を直接接続す
るもので、連系する系統が同一周波数のものを言う。
周波数が異なるものをFCと称して分類している。
写真1 南福光連系所全景
2
(1)名 称
南福光連系所 (2)所在地
富山県西砺波郡福光町大字才川七 (3)電気設備概要
① 交直変換設備 ア.直流連系装置 300MW 125kv-2400A 1式
イ.変換用変圧器 187MVA 77/55kV
2台
187MVA 66/55kV
2台
ウ.交流フィルタ
77kV 5次、11次、13次、高次(HP) 各1
66kV 5次、11次、13次、高次(HP) 各1
② 連系用変圧器 370MVA 500/77kV 1台
③ 500kVGIS 送電線ユニット 2回線
母線連絡ユニット 1組
中部北陸連絡線ユニット 1回線
連系用変圧器ユニット 1組
PTユニット 1組
④ 77kVGIS
連系用変圧器 1組
接地変圧器ユニット 1組
交直変換装置ユニット 1組
調相一括ユニット 1組
PTユニット 1組
⑤ 66kVGIS
交直変換装置ユニット 1組
⑥ 調相設備 77kV分路リアクトル 60MVA
5台
⑦ 接地変圧器77/6.9kV
1台
(4)建物概要
① 本館 鉄筋コンクリート造
2階建 1.564m2(27m×27m)
② バルブホール 鉄骨造
地上2階地下1階建 3.296m2(56m×30m)
③ 所内電源室 鉄筋コンクリート造
1階建 154m2(12m×12m)
④ 消化ポンプ室 鉄筋コンクリート造
1階建 39m2(7m×5.5m)
3
図1
42
単線結線図
工事概要
① ダイポールアンテナ放射雑音電界による高周波
雑音ノイズの大きさは、概ね距離に反比例し方向依
存性がある。バルブの並びと同一方向で小さく、バ
ルブの並びと直角方向で最も大きくなる特徴がある。
② ループ電流誘導雑音電界による高周波雑音ノイ
ズの大きさは、概ね距離の2乗に反比例し方向依存
性がある。ループ回路の断面と同一方向で小さく、
断面と直角方向で最も大きくなる特徴がある。また、
変換用変圧器は、このループ電流(高周波)を大き
く減衰させる特性があるため、ここからループ電流
誘導雑音が外部に放射されることは考慮しなくてよ
い。
(2)シールド対策
高周波雑音の大きさは、計算によるとサイリスタ
バルブから100m地点で、75dB(将来のバルブ
増設を考慮)と推定される。また、高周波雑音の許
容値は、通商産業省公共事業局長通達三七公局第八
五二号「電磁誘導電圧計算書および電波障害計算書
の取扱いについて」により、放送電波強度と雑音電
波強度の比(S/N比・単位dB)として、20dB
以上必要である。
交
直
変
換
装
置
に
お
け
る
ROX
ROX
交
直
変
換
装
置
に
お
け
る
施
工
事
例
シ
ス
テ
ム
高
周
波
雑
音
対
策
高周波雑音について
(1)サイリスタバルブから発生する高周波雑音
高周波雑音は、バルブのターンオン時およびター
ンオフ時の急激な電荷の移動によって発生する。発
生する高周波雑音には、バルブから直接放射される
放射電界(これを「ダイポールアンテナ放射雑音電
界」という。)によるものと、回路にループ電流が流
れた時に発生する誘導電界(これを「ループ電流誘
導雑音電界」という。)によるものがある。
写真2 サイリスタバルブ
43
XP34-53_施工事例3.3 99.11.16 5:35 PM ページ 42
施
工
事
例
シ
ス
テ
ム
高
周
波
雑
音
対
策
交直変換装置におけるROXシステム高周波雑音対策
電力本部 工務部 発変電グループ/廣田 武・新村 秀樹
1
はじめに
電力の広域運営、相互応援能力の拡大による供給
信頼度の向上と電力供給の安定を目的に、中部電力
㈱と北陸電力㈱とが共同し「南福光連系所」を新設
した。
両電力の電力系統が交流連系した場合、関西電力
㈱を含めた3社にまたがる交流ループ系統が構成さ
れ、常時の潮流調整が困難になる等の問題点が生ず
る。そのため、図ー1の単線結線図に示すように、南
福光連系所に潮流調整能力のある交流⇔直流⇔交流
連系設備を設置することによって、両電力の系統が
直接連系された。
当社は、連系所設備工事の内、中部電力㈱側の電
気工事を受注し施工を実施した。この主要設備であ
る交直変換装置(BTB:Back To Back )は、
変換用変圧器およびサイリスタバルブ等から構成さ
れ、直流変換装置運転時にサイリスタバルブより裁
断波が発生する。この裁断波が高周波雑音(ラジオ
ノイズ)となり電波障害の要因となる。その対策と
して、サイリスタバルブは専用ホール内に設置し、
シールドによって高周波雑音の漏洩を防ぐと共に、
シールド貫通部には中部電力㈱として初めて、ロッ
クステック社(スウェーデン)製のROXシステム
を採用している。
本稿では、ROXシステム高周波雑音対策工事の
概要を紹介する。
交直変換装置(BTB)とは、直流を介して結合
(交流ー直流ー交流)する方法のうち、直流送電線
を介さずに、変換器の直流側出力相互を直接接続す
るもので、連系する系統が同一周波数のものを言う。
周波数が異なるものをFCと称して分類している。
写真1 南福光連系所全景
2
(1)名 称
南福光連系所 (2)所在地
富山県西砺波郡福光町大字才川七 (3)電気設備概要
① 交直変換設備 ア.直流連系装置 300MW 125kv-2400A 1式
イ.変換用変圧器 187MVA 77/55kV
2台
187MVA 66/55kV
2台
ウ.交流フィルタ
77kV 5次、11次、13次、高次(HP) 各1
66kV 5次、11次、13次、高次(HP) 各1
② 連系用変圧器 370MVA 500/77kV 1台
③ 500kVGIS 送電線ユニット 2回線
母線連絡ユニット 1組
中部北陸連絡線ユニット 1回線
連系用変圧器ユニット 1組
PTユニット 1組
④ 77kVGIS
連系用変圧器 1組
接地変圧器ユニット 1組
交直変換装置ユニット 1組
調相一括ユニット 1組
PTユニット 1組
⑤ 66kVGIS
交直変換装置ユニット 1組
⑥ 調相設備 77kV分路リアクトル 60MVA
5台
⑦ 接地変圧器77/6.9kV
1台
(4)建物概要
① 本館 鉄筋コンクリート造
2階建 1.564m2(27m×27m)
② バルブホール 鉄骨造
地上2階地下1階建 3.296m2(56m×30m)
③ 所内電源室 鉄筋コンクリート造
1階建 154m2(12m×12m)
④ 消化ポンプ室 鉄筋コンクリート造
1階建 39m2(7m×5.5m)
3
図1
42
単線結線図
工事概要
① ダイポールアンテナ放射雑音電界による高周波
雑音ノイズの大きさは、概ね距離に反比例し方向依
存性がある。バルブの並びと同一方向で小さく、バ
ルブの並びと直角方向で最も大きくなる特徴がある。
② ループ電流誘導雑音電界による高周波雑音ノイ
ズの大きさは、概ね距離の2乗に反比例し方向依存
性がある。ループ回路の断面と同一方向で小さく、
断面と直角方向で最も大きくなる特徴がある。また、
変換用変圧器は、このループ電流(高周波)を大き
く減衰させる特性があるため、ここからループ電流
誘導雑音が外部に放射されることは考慮しなくてよ
い。
(2)シールド対策
高周波雑音の大きさは、計算によるとサイリスタ
バルブから100m地点で、75dB(将来のバルブ
増設を考慮)と推定される。また、高周波雑音の許
容値は、通商産業省公共事業局長通達三七公局第八
五二号「電磁誘導電圧計算書および電波障害計算書
の取扱いについて」により、放送電波強度と雑音電
波強度の比(S/N比・単位dB)として、20dB
以上必要である。
交
直
変
換
装
置
に
お
け
る
ROX
ROX
交
直
変
換
装
置
に
お
け
る
施
工
事
例
シ
ス
テ
ム
高
周
波
雑
音
対
策
高周波雑音について
(1)サイリスタバルブから発生する高周波雑音
高周波雑音は、バルブのターンオン時およびター
ンオフ時の急激な電荷の移動によって発生する。発
生する高周波雑音には、バルブから直接放射される
放射電界(これを「ダイポールアンテナ放射雑音電
界」という。)によるものと、回路にループ電流が流
れた時に発生する誘導電界(これを「ループ電流誘
導雑音電界」という。)によるものがある。
写真2 サイリスタバルブ
43
XP34-53_施工事例3.3 99.11.16 5:36 PM ページ 44
施
工
事
例
現地での放送電界強度を測定した結果、電波の一
番弱い放送局の電界強度値(dB)で、S/N比が
20dB以上なければならない。そのため、S/N比
は余裕をみて、30dBを確保する目標として、シー
ルドによる減衰量が十分得られる方策としている。
期待するシールド性能を確保するために、バルブホ
ールの内側はシールド効果の高い金属で全面内張り
している。しかし、制御ケーブル等が貫通する部分
の従来工法は、制御ケーブルの金属シース部に銅線
をハンダ付けしているため、ケーブル貫通部の銅線
を通じて高周波雑音が漏洩する他、開口部からの漏
洩が生ずる。(図ー2参照)そのため、所定のシール
ド性能を確保するために遮蔽効果の優れたROXシ
ステムを採用している。
シ
ス
テ
ム
高
周
波
雑
音
対
策
交
直
変
換
装
置
に
お
け
る
(3)ROXシステムの特徴と施工性
ROXシステムは、2分割されたセグメントで制御
ケーブルを挟み込む構造となっている。セグメント
の中心部は、図ー3に示すように導電性の薄いシート
が積層状に重ね合わせてあり、このシートを一枚ず
つ剥いで制御ケーブルの金属シースの外径に密着さ
せる構造となっている。
ROXシステムの特徴は、
① 部品数が少なく経済的である。
② シールド効果が優れている。
③ 制御ケーブル等の外径が4㎜∼98㎜まで適用で
きる。
④ 施工は簡単で、従来に比較し1/2の時間で行え
る。
等があげられる。
なお、施工については、特殊な工具や特別な技能が
必要なく、施工手順が簡単で誰でも均等に仕上げる
ことができる。
施工手順は図ー4に示すとおりである。
ROX
ROX
交
直
変
換
装
置
に
お
け
る
施
工
事
例
シ
ス
テ
ム
高
周
波
雑
音
対
策
図3 モジュール構造
写真3 バルグホール
写真4
図4 ロックシステム施工手順
4
図2
44
従来の施工方法
写真5
おわりに
ROXシステムの施工は、今回初めて経験するこ
とができたが、従来工法のように金属シースへのハ
ンダ付けの技能を必要とせず、しかも熱によってケ
ーブルを損傷する心配もなく、非常に優れた製品と
感じた。
今回のROXシステムの施工経験を機に、新たな
工法や資機材に関する情報の収集・分析に努め、今
後の設備構築に取り入れていきたいと考えている。
最後に、本工事の施工に当たり、ご指導・ご協力
を頂いた関係各位に対し感謝を申し上げます。
45
XP34-53_施工事例3.3 99.11.16 5:36 PM ページ 44
施
工
事
例
現地での放送電界強度を測定した結果、電波の一
番弱い放送局の電界強度値(dB)で、S/N比が
20dB以上なければならない。そのため、S/N比
は余裕をみて、30dBを確保する目標として、シー
ルドによる減衰量が十分得られる方策としている。
期待するシールド性能を確保するために、バルブホ
ールの内側はシールド効果の高い金属で全面内張り
している。しかし、制御ケーブル等が貫通する部分
の従来工法は、制御ケーブルの金属シース部に銅線
をハンダ付けしているため、ケーブル貫通部の銅線
を通じて高周波雑音が漏洩する他、開口部からの漏
洩が生ずる。(図ー2参照)そのため、所定のシール
ド性能を確保するために遮蔽効果の優れたROXシ
ステムを採用している。
シ
ス
テ
ム
高
周
波
雑
音
対
策
交
直
変
換
装
置
に
お
け
る
(3)ROXシステムの特徴と施工性
ROXシステムは、2分割されたセグメントで制御
ケーブルを挟み込む構造となっている。セグメント
の中心部は、図ー3に示すように導電性の薄いシート
が積層状に重ね合わせてあり、このシートを一枚ず
つ剥いで制御ケーブルの金属シースの外径に密着さ
せる構造となっている。
ROXシステムの特徴は、
① 部品数が少なく経済的である。
② シールド効果が優れている。
③ 制御ケーブル等の外径が4㎜∼98㎜まで適用で
きる。
④ 施工は簡単で、従来に比較し1/2の時間で行え
る。
等があげられる。
なお、施工については、特殊な工具や特別な技能が
必要なく、施工手順が簡単で誰でも均等に仕上げる
ことができる。
施工手順は図ー4に示すとおりである。
ROX
ROX
交
直
変
換
装
置
に
お
け
る
施
工
事
例
シ
ス
テ
ム
高
周
波
雑
音
対
策
図3 モジュール構造
写真3 バルグホール
写真4
図4 ロックシステム施工手順
4
図2
44
従来の施工方法
写真5
おわりに
ROXシステムの施工は、今回初めて経験するこ
とができたが、従来工法のように金属シースへのハ
ンダ付けの技能を必要とせず、しかも熱によってケ
ーブルを損傷する心配もなく、非常に優れた製品と
感じた。
今回のROXシステムの施工経験を機に、新たな
工法や資機材に関する情報の収集・分析に努め、今
後の設備構築に取り入れていきたいと考えている。
最後に、本工事の施工に当たり、ご指導・ご協力
を頂いた関係各位に対し感謝を申し上げます。
45
XP34-53_施工事例3.3 99.11.16 5:36 PM ページ 46
施
工
事
例
名
城
︵
変
︶
マ
ル
チ
音
源
に
対
す
る
パ
ッ
シ
ブ
サ
イ
レ
ン
サ
ー
の
施
工
46
施
工
事
例
名城(変)マルチ音源に対するパッシブサイレンサーの施工
名古屋本部環境工事部/山田 敏一
1
はじめに
名城変電所は、名古屋城正門前に位置し、中部電
力㈱管内の最大級の地下変電所である。変電所は、
所内の換気や機器から発生する熱を排出するため、
大量の空気を給排気しなければならない。
この地域は、都市公園で居住地域でもあり、愛知
県の公害防止条令により、敷地境界(GL+1.5m)
の騒音値を40dB以下とするよう規制されている。
今回、パッシブ型のスプリッター型サイレンサー
を採用し、騒音対策を実施したが、運転音は施設が
稼働していない暗騒音を下回り、規制値の40dB以
下とすることができたので、その概要を紹介する。
① 音源を極力小さくするため、送風機の大きさは1
ランク上の機種を選定する。
② 冷却塔は、超低騒音型を採用する。
③ 排風機は、比較的コンパクトで騒音値の小さい
遠心軸流形を採用する。
④ 給排気塔のスプリッター型サイレンサーの上部
には、外気にさらされても経年劣化がないセラミ
ック消音パネルを張り付ける。
等の対策を施した。
(4)送排風機の騒音検討
送排風機の騒音対策は、系統図(図1)に基づき、
各系統図毎に騒音の計算を行い、地上境界部騒音値
が40dB以下になるように検討する。
表1 騒音公害防止条令
時 間 の 区 分
都市計画法に基
づく地域の区分
住居地域 dB
2
ファン/各ファン毎の騒音データ
昼間
朝―夕
夜間
8∼19時 6∼8,19∼22時 22∼6時
50
45
40
騒音に対する対策
(1)消音対策の種類
消音の対策は、大きく分けてアクティブ型(能動
型)とパッシブ型(受動型)とに分けることができ
る。アクティブ型は、騒音の音源を周波数毎に分析
し、打ち消し合う音をスピーカーより発して消音す
るタイプである。パッシブ型は、音のエネルギーを
下げるために材料等に吸収させるタイプである。
更に、パッシブ型の消音対策には、消音箱型、消
音エルボ、セル型、マクラー型、スプリッター型、
波型等に区分される。
(2)消音対策の選択
名城変電所の消音対策として、アクティブサイレ
ンサーを採用する方向で検討したが、常時音を発す
る施設であるため、スピーカー等の経年劣化等の問
題があり見送られ、下記の理由からパッシブ型のス
プリッター型サイレンサーを採用した。
① 圧力損失が少ない。
② 高音から低音まで優れた減音性能を有する。
③ メンテナンスがいらない。
④ 経年による劣化が極めて少ない。
⑤ 他のパッシブ型よりコンパクトである。
(3)その他の対策
消音対策として、パッシブ型のスプリッター型サ
イレンサーに加え、
ファン用ダクトサイレンサー/第一次消音
ダクトシャフト/ダクトシャフト消音
ダクトシャフト用ダクトサイレンサー/第二次消音
図2
変電所給気系統
表2 変電所給気塔の騒音計算表
地上部/地上部騒音値
図1 騒音対策系統図
写真1
ファン用1次ダクトサイレンサー
変電所の給気系統および給気塔の騒音計算表は、
図2・表2のとおりで、その各々の機器での騒音レベ
ルを、給気系統図内に同色で表示し対比している。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
項 目
FS-303 PWL
NC-302
減衰後PWL
セルフノイズ
サイレンサー出口PWL
FS-305 PWL
NC-308
減衰後PWL
セルフノイズ
サイレンサー出口PWL
FS-403 PWL
NC-402
減衰後PWL
セルフノイズ
サイレンサー出口PWL
FS-405 PWL
NC-408
減衰後PWL
セルフノイズ
サイレンサー出口PWL
FS-503 PWL
NC-502
減衰後PWL
セルフノイズ
サイレンサー出口PWL
FS-505 PWL
NC-511
減衰後PWL
セルフノイズ
サイレンサー出口PWL
合成5+10+15+20+25+30
フィルター減衰
シャフト減衰
小計
NC-003
減衰後PWL
セルフノイズ
サイレンサー出口PWL
グレーチングセルフノイズ合成
40
41
防鳥金網セルフノイズ
給気シャフト出口PWL
63
86.2
-16.0
70.2
55.0
70.3
74.2
-6.0
68.2
40.0
68.2
87.7
-16.0
71.7
50.0
71.7
74.2
-6.0
68.2
40.0
68.2
87.5
-16.0
71.5
56.0
71.6
74.2
-6.0
68.2
40.0
68.2
77.8
-1.0
-1.0
75.8
-6.0
69.8
46.0
69.8
55.0
69.9
50.0
69.9
125
87.5
-20.0
67.5
50.0
67.6
74.6
-8.0
66.6
29.0
66.6
89.5
-20.0
69.5
45.0
69.5
74.6
-8.0
66.6
31.0
66.6
89.6
-20.0
69.6
51.0
69.7
74.6
-8.0
66.6
29.0
66.6
75.8
-1.0
-5.0
69.8
-11.0
58.8
45.0
59.0
43.0
59.1
47.0
59.4
250
86.6
-36.0
50.6
53.0
55.0
78.6
-16.0
62.6
32.0
62.6
89.1
-36.0
53.1
48.0
54.3
78.6
-16.0
62.6
34.0
62.6
89.3
-36.0
53.3
54.0
56.7
78.6
-16.0
62.6
32.0
62.6
68.2
-1.0
-7.0
60.2
-18.0
42.2
47.0
48.2
39.0
48.7
48.0
51.4
500
80.9
-45.0
35.9
55.0
55.1
71.6
-19.0
52.6
34.0
52.7
83.7
-45.0
38.7
50.0
50.3
71.6
-19.0
52.6
36.0
52.7
84.2
-45.0
39.2
56.0
56.1
71.6
-19.0
52.6
34.0
52.7
61.4
-1.0
-5.0
55.4
-26.0
29.4
48.0
48.1
35.0
48.3
47.0
50.7
1K
75.4
-43.0
32.4
57.0
57.0
66.8
-17.0
49.8
36.0
50.0
78.6
-43.0
35.6
52.0
52.1
66.8
-17.0
49.8
38.0
50.1
79.2
-43.0
36.2
58.0
58.0
66.8
-17.0
49.8
36.0
50.0
62.0
-1.0
-3.0
58.0
-26.0
32.0
50.0
50.1
34.0
50.2
47.0
51.9
2K
72.8
-23.0
49.8
56.0
56.9
64.5
-13.0
51.5
35.0
51.6
76.1
-23.0
53.1
51.0
55.2
64.5
-13.0
51.5
37.0
51.7
76.8
-23.0
53.8
57.0
58.7
64.5
-13.0
51.5
35.0
51.6
62.9
-3.0
-3.0
56.9
-14.0
42.9
50.0
50.8
31.0
50.8
43.0
51.5
4K
67.5
-18.0
49.5
47.0
51.4
59.5
-11.0
48.5
26.0
48.5
71.0
-18.0
53.0
42.0
53.3
59.5
-11.0
48.5
28.0
48.5
71.7
-18.0
53.7
48.0
54.7
59.5
-11.0
48.5
26.0
48.5
59.4
-8.0
-3.0
48.4
-12.0
36.4
43.0
43.9
34.0
44.3
28.0
44.4
8K
61.1
-15.0
46.1
37.0
46.6
53.1
-11.0
42.1
16.0
42.1
64.6
-15.0
49.6
32.0
49.7
53.1
-11.0
42.1
18.0
42.1
65.4
-15.0
50.4
38.0
50.6
53.1
-11.0
42.1
16.0
42.1
54.7
-9.0
-3.0
42.7
-12.0
30.7
36.0
37.1
38.0
40.6
23.0
40.7
dB(A)
83.0
56.5
61.0
62.3
74.3
59.2
40.0
59.2
85.9
59.4
56.0
61.0
74.3
59.2
42.0
59.3
86.3
59.9
62.0
64.1
74.3
59.2
40.0
59.2
69.0
備 考
64,000CMH
逆流4.9m/s,5.4mmAq
8LFM-1,800w*2,000h
2,000CMH
逆流3.1m/s,1.8mmAq
3LFM-600w*300h
名
城
︵
変
︶
マ
ル
チ
音
源
に
対
す
る
パ
ッ
シ
ブ
サ
イ
レ
ン
サ
ー
の
施
工
43,500CMH
逆流3.7m/s,3.1mmAq
8LFM-1,800w*1,800h
2,000CMH
逆流3.7m/s,2.6mmAq
3LFM-300w*500h
77,700CMH
逆流4.9m/s,5.3mmAq
8LFM-2,100w*2,100h
2,000CMH
逆流3.1m/s,1.8mmAq
3LFM-600w*300h
63.0
逆流3.9m/s,1.2mmAq
48.9
54.7
55.7
5LFM-4,600w*2,950h
XIN
55.9
エキスパンドメタル
57.0
47
XP34-53_施工事例3.3 99.11.16 5:36 PM ページ 46
施
工
事
例
名
城
︵
変
︶
マ
ル
チ
音
源
に
対
す
る
パ
ッ
シ
ブ
サ
イ
レ
ン
サ
ー
の
施
工
46
施
工
事
例
名城(変)マルチ音源に対するパッシブサイレンサーの施工
名古屋本部環境工事部/山田 敏一
1
はじめに
名城変電所は、名古屋城正門前に位置し、中部電
力㈱管内の最大級の地下変電所である。変電所は、
所内の換気や機器から発生する熱を排出するため、
大量の空気を給排気しなければならない。
この地域は、都市公園で居住地域でもあり、愛知
県の公害防止条令により、敷地境界(GL+1.5m)
の騒音値を40dB以下とするよう規制されている。
今回、パッシブ型のスプリッター型サイレンサー
を採用し、騒音対策を実施したが、運転音は施設が
稼働していない暗騒音を下回り、規制値の40dB以
下とすることができたので、その概要を紹介する。
① 音源を極力小さくするため、送風機の大きさは1
ランク上の機種を選定する。
② 冷却塔は、超低騒音型を採用する。
③ 排風機は、比較的コンパクトで騒音値の小さい
遠心軸流形を採用する。
④ 給排気塔のスプリッター型サイレンサーの上部
には、外気にさらされても経年劣化がないセラミ
ック消音パネルを張り付ける。
等の対策を施した。
(4)送排風機の騒音検討
送排風機の騒音対策は、系統図(図1)に基づき、
各系統図毎に騒音の計算を行い、地上境界部騒音値
が40dB以下になるように検討する。
表1 騒音公害防止条令
時 間 の 区 分
都市計画法に基
づく地域の区分
住居地域 dB
2
ファン/各ファン毎の騒音データ
昼間
朝―夕
夜間
8∼19時 6∼8,19∼22時 22∼6時
50
45
40
騒音に対する対策
(1)消音対策の種類
消音の対策は、大きく分けてアクティブ型(能動
型)とパッシブ型(受動型)とに分けることができ
る。アクティブ型は、騒音の音源を周波数毎に分析
し、打ち消し合う音をスピーカーより発して消音す
るタイプである。パッシブ型は、音のエネルギーを
下げるために材料等に吸収させるタイプである。
更に、パッシブ型の消音対策には、消音箱型、消
音エルボ、セル型、マクラー型、スプリッター型、
波型等に区分される。
(2)消音対策の選択
名城変電所の消音対策として、アクティブサイレ
ンサーを採用する方向で検討したが、常時音を発す
る施設であるため、スピーカー等の経年劣化等の問
題があり見送られ、下記の理由からパッシブ型のス
プリッター型サイレンサーを採用した。
① 圧力損失が少ない。
② 高音から低音まで優れた減音性能を有する。
③ メンテナンスがいらない。
④ 経年による劣化が極めて少ない。
⑤ 他のパッシブ型よりコンパクトである。
(3)その他の対策
消音対策として、パッシブ型のスプリッター型サ
イレンサーに加え、
ファン用ダクトサイレンサー/第一次消音
ダクトシャフト/ダクトシャフト消音
ダクトシャフト用ダクトサイレンサー/第二次消音
図2
変電所給気系統
表2 変電所給気塔の騒音計算表
地上部/地上部騒音値
図1 騒音対策系統図
写真1
ファン用1次ダクトサイレンサー
変電所の給気系統および給気塔の騒音計算表は、
図2・表2のとおりで、その各々の機器での騒音レベ
ルを、給気系統図内に同色で表示し対比している。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
項 目
FS-303 PWL
NC-302
減衰後PWL
セルフノイズ
サイレンサー出口PWL
FS-305 PWL
NC-308
減衰後PWL
セルフノイズ
サイレンサー出口PWL
FS-403 PWL
NC-402
減衰後PWL
セルフノイズ
サイレンサー出口PWL
FS-405 PWL
NC-408
減衰後PWL
セルフノイズ
サイレンサー出口PWL
FS-503 PWL
NC-502
減衰後PWL
セルフノイズ
サイレンサー出口PWL
FS-505 PWL
NC-511
減衰後PWL
セルフノイズ
サイレンサー出口PWL
合成5+10+15+20+25+30
フィルター減衰
シャフト減衰
小計
NC-003
減衰後PWL
セルフノイズ
サイレンサー出口PWL
グレーチングセルフノイズ合成
40
41
防鳥金網セルフノイズ
給気シャフト出口PWL
63
86.2
-16.0
70.2
55.0
70.3
74.2
-6.0
68.2
40.0
68.2
87.7
-16.0
71.7
50.0
71.7
74.2
-6.0
68.2
40.0
68.2
87.5
-16.0
71.5
56.0
71.6
74.2
-6.0
68.2
40.0
68.2
77.8
-1.0
-1.0
75.8
-6.0
69.8
46.0
69.8
55.0
69.9
50.0
69.9
125
87.5
-20.0
67.5
50.0
67.6
74.6
-8.0
66.6
29.0
66.6
89.5
-20.0
69.5
45.0
69.5
74.6
-8.0
66.6
31.0
66.6
89.6
-20.0
69.6
51.0
69.7
74.6
-8.0
66.6
29.0
66.6
75.8
-1.0
-5.0
69.8
-11.0
58.8
45.0
59.0
43.0
59.1
47.0
59.4
250
86.6
-36.0
50.6
53.0
55.0
78.6
-16.0
62.6
32.0
62.6
89.1
-36.0
53.1
48.0
54.3
78.6
-16.0
62.6
34.0
62.6
89.3
-36.0
53.3
54.0
56.7
78.6
-16.0
62.6
32.0
62.6
68.2
-1.0
-7.0
60.2
-18.0
42.2
47.0
48.2
39.0
48.7
48.0
51.4
500
80.9
-45.0
35.9
55.0
55.1
71.6
-19.0
52.6
34.0
52.7
83.7
-45.0
38.7
50.0
50.3
71.6
-19.0
52.6
36.0
52.7
84.2
-45.0
39.2
56.0
56.1
71.6
-19.0
52.6
34.0
52.7
61.4
-1.0
-5.0
55.4
-26.0
29.4
48.0
48.1
35.0
48.3
47.0
50.7
1K
75.4
-43.0
32.4
57.0
57.0
66.8
-17.0
49.8
36.0
50.0
78.6
-43.0
35.6
52.0
52.1
66.8
-17.0
49.8
38.0
50.1
79.2
-43.0
36.2
58.0
58.0
66.8
-17.0
49.8
36.0
50.0
62.0
-1.0
-3.0
58.0
-26.0
32.0
50.0
50.1
34.0
50.2
47.0
51.9
2K
72.8
-23.0
49.8
56.0
56.9
64.5
-13.0
51.5
35.0
51.6
76.1
-23.0
53.1
51.0
55.2
64.5
-13.0
51.5
37.0
51.7
76.8
-23.0
53.8
57.0
58.7
64.5
-13.0
51.5
35.0
51.6
62.9
-3.0
-3.0
56.9
-14.0
42.9
50.0
50.8
31.0
50.8
43.0
51.5
4K
67.5
-18.0
49.5
47.0
51.4
59.5
-11.0
48.5
26.0
48.5
71.0
-18.0
53.0
42.0
53.3
59.5
-11.0
48.5
28.0
48.5
71.7
-18.0
53.7
48.0
54.7
59.5
-11.0
48.5
26.0
48.5
59.4
-8.0
-3.0
48.4
-12.0
36.4
43.0
43.9
34.0
44.3
28.0
44.4
8K
61.1
-15.0
46.1
37.0
46.6
53.1
-11.0
42.1
16.0
42.1
64.6
-15.0
49.6
32.0
49.7
53.1
-11.0
42.1
18.0
42.1
65.4
-15.0
50.4
38.0
50.6
53.1
-11.0
42.1
16.0
42.1
54.7
-9.0
-3.0
42.7
-12.0
30.7
36.0
37.1
38.0
40.6
23.0
40.7
dB(A)
83.0
56.5
61.0
62.3
74.3
59.2
40.0
59.2
85.9
59.4
56.0
61.0
74.3
59.2
42.0
59.3
86.3
59.9
62.0
64.1
74.3
59.2
40.0
59.2
69.0
備 考
64,000CMH
逆流4.9m/s,5.4mmAq
8LFM-1,800w*2,000h
2,000CMH
逆流3.1m/s,1.8mmAq
3LFM-600w*300h
名
城
︵
変
︶
マ
ル
チ
音
源
に
対
す
る
パ
ッ
シ
ブ
サ
イ
レ
ン
サ
ー
の
施
工
43,500CMH
逆流3.7m/s,3.1mmAq
8LFM-1,800w*1,800h
2,000CMH
逆流3.7m/s,2.6mmAq
3LFM-300w*500h
77,700CMH
逆流4.9m/s,5.3mmAq
8LFM-2,100w*2,100h
2,000CMH
逆流3.1m/s,1.8mmAq
3LFM-600w*300h
63.0
逆流3.9m/s,1.2mmAq
48.9
54.7
55.7
5LFM-4,600w*2,950h
XIN
55.9
エキスパンドメタル
57.0
47
XP34-53_施工事例3.3 99.11.16 5:36 PM ページ 48
施
工
事
例
名
城
︵
変
︶
マ
ル
チ
音
源
に
対
す
る
パ
ッ
シ
ブ
サ
イ
レ
ン
サ
ー
の
施
工
施
工
事
例
(5)変電所地上部の全体騒音の検討
各所給排気塔からの騒音値は、屋外放射PWLによ
りGL+1.5mでの騒音コンタマップ(等音圧線図)
を描くと図3に示すとおりで、境界線で40dB(A)
の規制値を満足していることが確認できる。
写真2
給排気塔内二次ダクトサイレンサー
3
表3
騒音測定結果
(1)測定条件
測定は、変電所換気用送風機・冷却塔・洞道換気
用送風機等、常時運転する機器を全て稼働した条件
で測定する。
(2)測定方法
騒音測定位置は、図3のコンタマップ上に示す境界
上のA∼Fまでの6点で、機器運転時と停止時の暗騒
音を25分間(測定間隔1分)レコード出力でプリン
ターに出力し、車両騒音の影響の少ない時間を選ん
で比較する。
(3)測定結果および考察
測定結果は、表3に示すとおりである。運転音と暗
騒音の測定値を比較すると、運転音が暗騒音より低
い値となっている。このことは、暗騒音が運転音を
上回り、測定値が暗騒音に支配されていることを示
している。
暗騒音は、測定時間により大きく相違し、深夜帯
で低い値となっているので、運転音の測定は暗騒音
の影響の少ない深夜帯に実施した。
測定結果
測定結果[dB(A)]
測定条件
A
B
C
D
E
F
運転音(機器運転)
37.0
37.4
38.0
39.5
39.9
42.4
暗騒音(機器停止)
38.7
39.4
39.5
43.6
42.5
42.2
測定位置A∼Eは、運転音が40dB(A)を満足し
ている。測定位置Fは、車両騒音が大きいことや、横
断歩道の歩行者誘導音のために、運転音・暗騒音と
もに40dB(A)を満足していないが、測定位置A∼
Eで40dB(A)を満足していることや音源からの距
離を考えると、運転音は40dB(A)を十分満足して
いると判断される。
写真3 給気ダクトおよび一次サイレンサー(地下3F廊下)
4
あとがき
名城変電所は、平成6年11月に着工し平成11年8
月までの、4年9ヶ月の長い工事期間を要し完工した。
この工事では、愛知県の公害防条令の規制値40dB
をクリアするための騒音対策が大きな課題であった。
そのために、種々の騒音防止策を検討し対策を施
すと共に、検証のための騒音測定を時間を変え4回に
わたって実施した。
騒音測定は、深夜の午前1時以降に静かになるので、
暗騒音の影響を考慮し1時半から実施したが、運転音
よりも暗騒音の値が高い方が多く、対策が適切であ
ったと考えている。騒音にかかわる環境問題は、規
制がよりシビアになることが予測されるので、今回
の経験を生かすとともに、騒音対策技術の研鑽に努
め、設備構築を進めて参りたいと考えている。
最後になりましたが、本工事の施工に当たり中部
電力㈱殿をはじめ、関係者各位より多大なご指導・
ご協力を頂きました。ここに謝意を表します。
名
城
︵
変
︶
マ
ル
チ
音
源
に
対
す
る
パ
ッ
シ
ブ
サ
イ
レ
ン
サ
ー
の
施
工
図3 コンタマップ
48
49
XP34-53_施工事例3.3 99.11.16 5:36 PM ページ 48
施
工
事
例
名
城
︵
変
︶
マ
ル
チ
音
源
に
対
す
る
パ
ッ
シ
ブ
サ
イ
レ
ン
サ
ー
の
施
工
施
工
事
例
(5)変電所地上部の全体騒音の検討
各所給排気塔からの騒音値は、屋外放射PWLによ
りGL+1.5mでの騒音コンタマップ(等音圧線図)
を描くと図3に示すとおりで、境界線で40dB(A)
の規制値を満足していることが確認できる。
写真2
給排気塔内二次ダクトサイレンサー
3
表3
騒音測定結果
(1)測定条件
測定は、変電所換気用送風機・冷却塔・洞道換気
用送風機等、常時運転する機器を全て稼働した条件
で測定する。
(2)測定方法
騒音測定位置は、図3のコンタマップ上に示す境界
上のA∼Fまでの6点で、機器運転時と停止時の暗騒
音を25分間(測定間隔1分)レコード出力でプリン
ターに出力し、車両騒音の影響の少ない時間を選ん
で比較する。
(3)測定結果および考察
測定結果は、表3に示すとおりである。運転音と暗
騒音の測定値を比較すると、運転音が暗騒音より低
い値となっている。このことは、暗騒音が運転音を
上回り、測定値が暗騒音に支配されていることを示
している。
暗騒音は、測定時間により大きく相違し、深夜帯
で低い値となっているので、運転音の測定は暗騒音
の影響の少ない深夜帯に実施した。
測定結果
測定結果[dB(A)]
測定条件
A
B
C
D
E
F
運転音(機器運転)
37.0
37.4
38.0
39.5
39.9
42.4
暗騒音(機器停止)
38.7
39.4
39.5
43.6
42.5
42.2
測定位置A∼Eは、運転音が40dB(A)を満足し
ている。測定位置Fは、車両騒音が大きいことや、横
断歩道の歩行者誘導音のために、運転音・暗騒音と
もに40dB(A)を満足していないが、測定位置A∼
Eで40dB(A)を満足していることや音源からの距
離を考えると、運転音は40dB(A)を十分満足して
いると判断される。
写真3 給気ダクトおよび一次サイレンサー(地下3F廊下)
4
あとがき
名城変電所は、平成6年11月に着工し平成11年8
月までの、4年9ヶ月の長い工事期間を要し完工した。
この工事では、愛知県の公害防条令の規制値40dB
をクリアするための騒音対策が大きな課題であった。
そのために、種々の騒音防止策を検討し対策を施
すと共に、検証のための騒音測定を時間を変え4回に
わたって実施した。
騒音測定は、深夜の午前1時以降に静かになるので、
暗騒音の影響を考慮し1時半から実施したが、運転音
よりも暗騒音の値が高い方が多く、対策が適切であ
ったと考えている。騒音にかかわる環境問題は、規
制がよりシビアになることが予測されるので、今回
の経験を生かすとともに、騒音対策技術の研鑽に努
め、設備構築を進めて参りたいと考えている。
最後になりましたが、本工事の施工に当たり中部
電力㈱殿をはじめ、関係者各位より多大なご指導・
ご協力を頂きました。ここに謝意を表します。
名
城
︵
変
︶
マ
ル
チ
音
源
に
対
す
る
パ
ッ
シ
ブ
サ
イ
レ
ン
サ
ー
の
施
工
図3 コンタマップ
48
49
XP34-53_施工事例3.3 99.11.16 5:36 PM ページ 50
施
工
事
例
ケ
ー
ブ
ル
ス
ネ
ー
ク
取
り
シ
ス
テ
ム
の
開
発
施
工
事
例
ケーブルスネーク取りシステムの開発
電力本部新規事業開発グループ/青山 孝
1
2
まえがき
先頃完工した中部電力㈱「名城(変)関連154kV
送電線新設の内ケーブル工事」は、154kV単心の大
サイズ・長尺ケーブルを、管路および共同溝に布設
する工事である。1500mm2cvケーブルを新設の名
城変電所から勝川橋西にある名北変電所までと、
600mm 2を水主町交差点から下広井洞道までの間
に、1条の平均長700m(重量15t)のもの81条で
総延長約56kmを、布設する施工内容である。
本工事の施工に当たって、長尺ケーブルの布設お
よびスネーク取りシステムを開発し、大きな成果を
達成したのでその概要を紹介する。
スネーク布設
単心ケーブルは、その負荷電流による発熱により
伸縮を生じることからこの伸縮を吸収するためのス
ネーク布設が必要となります。
スネーク布設とは、ケーブルを蛇のように蛇行さ
せて布設する布設方法で、水平スネーク方式と縦ス
ネーク方式の2種類があります。
縦スネーク方式は、ケーブル支持材料が大幅に少
なくて済み、大きなコストダウンが出来ることから
近年の施工は縦スネーク方式が主流となっており、
本工事でもこの縦スネーク方式を採用していますが、
施工には困難なことが多く、厳しい施工精度を求め
られます。
スネーク布設を行うには、布設よりスネーク取り
作業のウェイトが多く、本工事でも全体の40%がス
ネーク布設を必要とする洞道布設であり、ネーク取
りの合理化が達成されれば極めて大きなコストダウ
ンと工期短縮を実現されることとなります。
3
従来のスネーク取り
従来工法では、洞道の床上でケーブルを布設し、こ
のケーブルを持ち上げて線受けに乗せ、線受け間の
ケーブルを上から押え込んでたるみを作るというま
さしく人海戦術そのもので、実際にはケーブルの上
に人が乗って押し下げる事が多く、作業としての印
象の悪さも問題であった事に加え、強制的に変形さ
せる為、スネーク幅( たるみ )が戻らないように、床
にバンド等で2∼3日固定しておく工程も必要でし
た。
4
今回のスネーク取りシステム
従来工法の問題点として、むりやりケーブルを押
し下げる事にあると考え、私たちはケーブルを押し
下げるのではなく、たるみ分を送り込むことで自重
によって自然にスネークを形成する、次に示すシス
テムを開発しました。
課題はスネーク幅の測定方法とその基準線をどう
するかでした。
測定方法としては、定規式、超音波式、光式、
等々出されましたが、あまり難しい方法を選んでも
行き詰まってしまう恐れもあり、確実な方法として
光方式を採用しました。
基準線は水糸です。最も基本的で故障が無い原始
的な方法を採用した。
(1)ボールローラー
もう一つの課題ですが、たるみを取ると言っても
一つのスネークに必要な送り量は計算上37mm( 約
ケ
ー
ブ
ル
ス
ネ
ー
ク
取
り
シ
ス
テ
ム
の
開
発
図1 縦スネーク方式と横スネーク方式
図2 従来のスネーク取り
50
図3
今回のスネーク取りシステム
51
XP34-53_施工事例3.3 99.11.16 5:36 PM ページ 50
施
工
事
例
ケ
ー
ブ
ル
ス
ネ
ー
ク
取
り
シ
ス
テ
ム
の
開
発
施
工
事
例
ケーブルスネーク取りシステムの開発
電力本部新規事業開発グループ/青山 孝
1
2
まえがき
先頃完工した中部電力㈱「名城(変)関連154kV
送電線新設の内ケーブル工事」は、154kV単心の大
サイズ・長尺ケーブルを、管路および共同溝に布設
する工事である。1500mm2cvケーブルを新設の名
城変電所から勝川橋西にある名北変電所までと、
600mm 2を水主町交差点から下広井洞道までの間
に、1条の平均長700m(重量15t)のもの81条で
総延長約56kmを、布設する施工内容である。
本工事の施工に当たって、長尺ケーブルの布設お
よびスネーク取りシステムを開発し、大きな成果を
達成したのでその概要を紹介する。
スネーク布設
単心ケーブルは、その負荷電流による発熱により
伸縮を生じることからこの伸縮を吸収するためのス
ネーク布設が必要となります。
スネーク布設とは、ケーブルを蛇のように蛇行さ
せて布設する布設方法で、水平スネーク方式と縦ス
ネーク方式の2種類があります。
縦スネーク方式は、ケーブル支持材料が大幅に少
なくて済み、大きなコストダウンが出来ることから
近年の施工は縦スネーク方式が主流となっており、
本工事でもこの縦スネーク方式を採用していますが、
施工には困難なことが多く、厳しい施工精度を求め
られます。
スネーク布設を行うには、布設よりスネーク取り
作業のウェイトが多く、本工事でも全体の40%がス
ネーク布設を必要とする洞道布設であり、ネーク取
りの合理化が達成されれば極めて大きなコストダウ
ンと工期短縮を実現されることとなります。
3
従来のスネーク取り
従来工法では、洞道の床上でケーブルを布設し、こ
のケーブルを持ち上げて線受けに乗せ、線受け間の
ケーブルを上から押え込んでたるみを作るというま
さしく人海戦術そのもので、実際にはケーブルの上
に人が乗って押し下げる事が多く、作業としての印
象の悪さも問題であった事に加え、強制的に変形さ
せる為、スネーク幅( たるみ )が戻らないように、床
にバンド等で2∼3日固定しておく工程も必要でし
た。
4
今回のスネーク取りシステム
従来工法の問題点として、むりやりケーブルを押
し下げる事にあると考え、私たちはケーブルを押し
下げるのではなく、たるみ分を送り込むことで自重
によって自然にスネークを形成する、次に示すシス
テムを開発しました。
課題はスネーク幅の測定方法とその基準線をどう
するかでした。
測定方法としては、定規式、超音波式、光式、
等々出されましたが、あまり難しい方法を選んでも
行き詰まってしまう恐れもあり、確実な方法として
光方式を採用しました。
基準線は水糸です。最も基本的で故障が無い原始
的な方法を採用した。
(1)ボールローラー
もう一つの課題ですが、たるみを取ると言っても
一つのスネークに必要な送り量は計算上37mm( 約
ケ
ー
ブ
ル
ス
ネ
ー
ク
取
り
シ
ス
テ
ム
の
開
発
図1 縦スネーク方式と横スネーク方式
図2 従来のスネーク取り
50
図3
今回のスネーク取りシステム
51
XP34-53_施工事例3.3 99.11.16 5:36 PM ページ 52
施
工
事
例
ケ
ー
ブ
ル
ス
ネ
ー
ク
取
り
シ
ス
テ
ム
の
開
発
施
工
事
例
6
40mm )と小さく、これを10秒で送り込むとすれば
6×40=240mm=24cm/分で超低速となり、
布設装置であるボールローラーは通常6m/分で運転
する事で設計してありますから、この超低速運転は
一般的な誘導モーターでは変速装置を変更しなけれ
ばなりません。
幸いなことにボールローラーを開発する時点で超
高圧ケーブルのスネーク布設を意識し、この事を考
慮してサーボモーターを採用していたことが功を奏
し、700mもの重いケーブル全体を、カタツムリが
動くような超低速で運転することができました。(こ
れも地味ですが大きな技術だと思います。)
また、余談になりますが、サーボモーターを採用
したことで、ケーブルを任意の一定張力で牽引する
トルク制御運転が可能となる等、ウインチとの同期
運転に最適の制御方法であり、実際マンホール、管
路でのケーブル布設はこの方法で行い、良い結果を
得ております。
(2)コントローラー
ボールローラーは、スネークを取る場所で微速度運
転が必要である。そのため、写真1に示すボールロー
ラー制御盤のコントローラーを試作した。
7
成果
従来工法では、ケーブルを押し込んでスネーク幅を
測定し、再び押し込んで ・の繰り返しであるため、
既に形成したスネークにも影響を与えることが避け
られない。規定のスネーク幅に設定するためには、
経験を必要としたが、本工法では周辺器材をセット
した後、リモコンのスイッチを押すだけでケーブル
がゆっくり降りてきて、規定のスネーク幅で自動的
に止まる仕組みになっている。
この間およそ5秒前後、既に形成したスネークに
与える影響は無視できる程度で施工精度が向上し、
施工後のスネーク幅変動も認められず、経験も必要
なく省力化でき、作業員の疲労は極端に軽減できた。
あとがき
本システムの開発は、長尺ケーブルの布設とスネ
ーク取りを一連で合理的に行うことを可能とした。
特に、超高圧ケーブルの布設に適用した場合、極め
て大きなコストダウンと工期短縮が実現できるもの
と確信している。
今後、具体的に予定されている154kV、77k
V大サイズケーブル布設工事に積極的に適用し更な
る改善を図り、トーエネックブランドとしての技術
にしたいと考えている。
ケ
ー
ブ
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ク
取
り
シ
ス
テ
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の
開
発
写真2 スネーク幅監視装置
5
周辺器材
本システムの周辺器材は、写真―3に示すとおり、
①ケーブルを送り込む時、線受け上でケーブルを滑
らせる手段
②取ったスネークを仮に固定する道具
③送り込んだ時に線受けが動かない様にする道具等、
写真―3に示す数多くの道具を考案しました。
写真4 スネーク取り作業
写真1 ボールローラー制御盤のコントローラー
(3)スネーク幅監視装置
スネーク幅監視装置は、あらかじめ設定したスネ
ーク幅で自動的にケーブルの送り込みを停止する装
置である。
本装置は、ケーブルに固定された光センサーがケ
ーブルの上部に張られた水糸を横切った時、感知し
てボールローラーの運転を止める仕組みになってい
る。
52
写真3
周辺器材
53
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施
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6
40mm )と小さく、これを10秒で送り込むとすれば
6×40=240mm=24cm/分で超低速となり、
布設装置であるボールローラーは通常6m/分で運転
する事で設計してありますから、この超低速運転は
一般的な誘導モーターでは変速装置を変更しなけれ
ばなりません。
幸いなことにボールローラーを開発する時点で超
高圧ケーブルのスネーク布設を意識し、この事を考
慮してサーボモーターを採用していたことが功を奏
し、700mもの重いケーブル全体を、カタツムリが
動くような超低速で運転することができました。(こ
れも地味ですが大きな技術だと思います。)
また、余談になりますが、サーボモーターを採用
したことで、ケーブルを任意の一定張力で牽引する
トルク制御運転が可能となる等、ウインチとの同期
運転に最適の制御方法であり、実際マンホール、管
路でのケーブル布設はこの方法で行い、良い結果を
得ております。
(2)コントローラー
ボールローラーは、スネークを取る場所で微速度運
転が必要である。そのため、写真1に示すボールロー
ラー制御盤のコントローラーを試作した。
7
成果
従来工法では、ケーブルを押し込んでスネーク幅を
測定し、再び押し込んで ・の繰り返しであるため、
既に形成したスネークにも影響を与えることが避け
られない。規定のスネーク幅に設定するためには、
経験を必要としたが、本工法では周辺器材をセット
した後、リモコンのスイッチを押すだけでケーブル
がゆっくり降りてきて、規定のスネーク幅で自動的
に止まる仕組みになっている。
この間およそ5秒前後、既に形成したスネークに
与える影響は無視できる程度で施工精度が向上し、
施工後のスネーク幅変動も認められず、経験も必要
なく省力化でき、作業員の疲労は極端に軽減できた。
あとがき
本システムの開発は、長尺ケーブルの布設とスネ
ーク取りを一連で合理的に行うことを可能とした。
特に、超高圧ケーブルの布設に適用した場合、極め
て大きなコストダウンと工期短縮が実現できるもの
と確信している。
今後、具体的に予定されている154kV、77k
V大サイズケーブル布設工事に積極的に適用し更な
る改善を図り、トーエネックブランドとしての技術
にしたいと考えている。
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写真2 スネーク幅監視装置
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周辺器材
本システムの周辺器材は、写真―3に示すとおり、
①ケーブルを送り込む時、線受け上でケーブルを滑
らせる手段
②取ったスネークを仮に固定する道具
③送り込んだ時に線受けが動かない様にする道具等、
写真―3に示す数多くの道具を考案しました。
写真4 スネーク取り作業
写真1 ボールローラー制御盤のコントローラー
(3)スネーク幅監視装置
スネーク幅監視装置は、あらかじめ設定したスネ
ーク幅で自動的にケーブルの送り込みを停止する装
置である。
本装置は、ケーブルに固定された光センサーがケ
ーブルの上部に張られた水糸を横切った時、感知し
てボールローラーの運転を止める仕組みになってい
る。
52
写真3
周辺器材
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解
説
建
築
分
野
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ラ
イ
フ
サ
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ク
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評
価
建築分野のライフサイクル評価
技術開発室/殷 耀晨
1
ライフサイクル評価の必要性
人類存続にかかる地球温暖化、化石エネルギーの
涸渇及び環境汚染等の諸問題は密接な相関関係にあ
る。この問題の解決には全ての産業からの努力が必
要である。とりわけ、地球温暖化の元凶とも言える
CO2問題において、日本の住宅と業務用ビルの建設
及び運用に伴う建設関連のCO2排出量は日本全体の
CO 2 排出量の3分の1を占めると推定されている。
この分野におけるCO2排出量の削減には大きな期待
が寄せられている。
しかし、諸対策を論じる前に建築物の生涯CO2排
出量の算出や環境負荷に対する評価を確立しなけれ
ばならない。この評価手法の開発に世界的な取り組
みが盛んに進められており、日本においても政府、
学会レベルの指針作成などに加え、建設会社や設計
事務所では独自のLCA(ライフサイクルアセスメ
ント)手法の開発に積極的に取り組んでいる。
2
ライフサイクル評価とは
ライフサイクル評価(LCA−ライフサイクルア
セスメント)は、元々産業界の製品開発から考案さ
れた技法である。LCAは厳密に製品やサービスに
関する環境マネジメント支援技法であり、1997年
6月に国際規格となったISO14040(環境マネジ
メント−ライフサイクルアセスメント−原則及び枠
組み)の和訳から名付けられた。この技法は1997
年12月に、日本工業規格JISQ14040に採用さ
れた。LCAは、製品の原材料の採取から製造、使
用及び処分に至る生涯を通しての環境面及び潜在的
影響を調査するものである。考慮すべき環境影響の
領域としては、資源利用、人の健康及び生態系への
影響が含まれる。
建築物は多数の工業製品が複合された耐久消費財
であるため、LCAを行うには建築物の建設から、
使用、改修及び解体まで考慮して定量化する必要が
ある。また、LCAだけで結論を下すのではなく、
経済性、快適性、利便性、安全性、信頼性などの諸
性能も同時に評価する必要がある。現在の価格体系
では、LCAと経済性評価は、相反する選択をせざ
るを得ないことも多い。
3
国際的な取り組み
(1)BREEAM
54
ミ
ニ
解
説
英 国 建 築 研 究 所 ( Building Research
Establishment)で開発された建築の環境負荷評価
手法である。新築の事務所、大規模店舗、住宅、工
場に適用される。
評価項目は次の3つの部門に分かれる。
① 地球環境問題と資源利用(Global Issues and
Use of Resources)
② 地域環境問題(Local Issues)
③ 室内環境問題(Indoor Issues)
それぞれの部門に小項目が挙げられ、目標が達成
すると、42点が与えられ、最終評価は各部門の最低
点 数 と 合 計 点 数 に よ っ て 、 普 通 ( F a i r )、 良 い
( G o o d )、 非 常 に よ い ( V e r y G o o d )、 優 秀
(Excellent)の4段階にランク付けされる。
英国では設計事務所や施主の間で関心が高まって
おり、新築ビルの約25%が評価を受けている。カナ
ダ、香港、オーストラリア、ニュージーランドなど
でBREEAMが参考にされている。
(2)BEPAC
BEPAC(Building Environment Performance
Assessment Criteria)は、カナダのBritish
Columbia大学建築学校環境グループのRaymond J
Cole教授らによって開発された建築の環境性能評価
手法である。約30の基準が5つの主要な環境トピッ
ク(オゾン層保護、エネルギー利用による環境影響、
室内環境の質、省資源、立地と交通)に体系化され、
各評価項目が重み付けされ、合計点数で評価される
のが特徴である。
(3)LEED
アメリカの非営利団体である合衆国グリーンビル
協議会が提唱している評価手法で、BREEAMと
BEPACなどの検討の上にできた。グリーンビル
として評価されるには各評価項目で16点以上を取る
と同時に必須条件を満たしていることが求められる。
(4)GBC’98
GBC’98(Green Building Challenge'98)
は、BEPACを開発したRaymond J Cole教授と
C-2000を開発したカナダ天然資源省CANMETエネ
ルギー研究所技術センターのNils Larsson氏が推進
役となってスタートした建築性能評価の枠組みを定
める国際的な取り組みである。参加国はカナダ(事
務局)、アメリカ、イギリス、デンマーク、フィンラ
ンド、フランス、日本、ノルウェー、オランダ、ポ
ーランド、スウェーデン、スイスで、IEA/ECBCSAnnex31(エネルギーに関する建築物の環境負荷評
価手法の研究)と重複している。
評価項目は次の6つから分類される。
●資源消費 ●環境負荷 ●室内環境 ●長期耐用
性 ●プロセスの妥当性 ●近隣特性への適合性
全部で120の性能基準毎に、相対評価を(-2点∼
+5点)の8段階で採点し、重み係数で加重平均しな
がら、6項目の点数が算出される。普通のビルは0点
であり、満点の5点を取るのは非常に難しいとされて
いる。
4
日本の取り組み
4.1 日本の官、学協会の取り組み
学協会レベルでは、各委員会は基本的に独自に研
究活動を行っているが、構成メンバーは少しずつ重
複しており、相互に連係を図りながら研究が進めら
れている。現在のところ、データベースは、CO2排
出量、主要資源消費量、建設廃棄物量など定量化し
やすいものに限定している。また、いずれの研究も
産業連関表を利用した原単位と積み上げ式の原単位
が併存しており、建築分野として統一したデータベ
ースが整備されている状態ではない。
(1)日本建築学会
(社)日本建築学会では、1990年度から建築と
地球環境の調査研究をスタートし、現在「地球環境
委員会」LCA指針策定小委員会で、建築の環境負
荷評価手法に関する部分を検討している。1998年
11月に、「建物のLCA指針(案)−地球温暖化防
止のためのLCCO2を中心として」という報告書が
まとめられた。
(2)空気調和・衛生工学会
(社)空気調和・衛生工学会が1993年から「地
球環境に関する委員会」を設置し、建築設備の環境
負荷削減対策とライフサイクルCO2の設備部分に関
する詳細検討を行っている。1997年7月に「持続
可能な社会を支える建築設備のために」、1999年3
月に「建築設備と地球環境に関する研究」が公表さ
れた。
(3)住宅・建築省エネルギー機構
国際エネルギー機関IEA/ECBCS-Annex31(エ
ネルギーに関する建築物の環境負荷評価手法の研究)
委員会に対応して、国内委員会が設置されている。
(4)建設省建築研究所
1991年より土木研究所と共同で、総合技術開発
プロジェクト「省資源・省エネルギー型国土建設技
術の開発」を進め、土木構築物・建築物の建設、使
用、解体に係わるエネルギー消費、CO2排出量の実
態を把握し、削減工法の効果を評価する手法が
1997年11月にLCAソフトとして公開されてい
る。
(5)建築業協会
(社)建築業協会では、1990年10月に地球環境
問題専門委員会を設置した。現在まで、建築分野の
環境負荷量の推計結果を報告している。
4.2国内各社のライフサイクル評価手法
学協会の委員会活動に関連して、既に各社で独自
のLCA手法の開発が進められている。主な会社は
大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務
店、積水ハウス、日建設計などがある。各社はいず
れも企画提案段階で全般的対策を検討することを目
的としている。全てのLCA手法はCO2排出量を評
価項目としているが、コスト、エネルギー、資源消
費を評価項目としている手法もある。ただし、ソフ
トは非公開である。
5
建
築
分
野
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ク
ル
評
価
当社との関わり
LCA手法に関わる評価項目が様々であり、また
必要なデータが膨大である。建築物全体の総合的L
CA手法の開発は学協会及び産業界全体で取り組ま
なければならない問題である。
当社としては、物件営業の検討プランに経済性評
価やセールスポイントが求められつつある。環境意
識が高まる中、今後低環境負荷の提案が必要になる
に違いない。新規物件の営業や設計初期段階で役立
つことが勿論のこと、リニューアル工事やESCO
事業にも利用できるよう、当社の目的に合うLCA
手法を開発しなければならない。
当社独自のLCA手法は建築設備を中心とし、評
価項目をLCC(ライフサイクルコスト)に絞り、
必要に応じてLCE(ライフサイクルエネルギー消
費)を含むようにしたい。
LCA手法の開発にあたり、国際的な取り組み、
国内学協会における取り組みの進展を見つめながら、
その成果を参考していく必要がある。また、社内の
営業・設計・積算の現状、利用するデータベース、
ツールを調査した上、当社の目的に合う評価手法を
考案していきたい。
<参考文献> 建物のLCA指針(案)∼地球温暖化防止のた
めのLCCO2を中心として∼1998年11月、社団法人日本
建築学会地球環境委員会LCA指針策定小委員会
55
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価
建築分野のライフサイクル評価
技術開発室/殷 耀晨
1
ライフサイクル評価の必要性
人類存続にかかる地球温暖化、化石エネルギーの
涸渇及び環境汚染等の諸問題は密接な相関関係にあ
る。この問題の解決には全ての産業からの努力が必
要である。とりわけ、地球温暖化の元凶とも言える
CO2問題において、日本の住宅と業務用ビルの建設
及び運用に伴う建設関連のCO2排出量は日本全体の
CO 2 排出量の3分の1を占めると推定されている。
この分野におけるCO2排出量の削減には大きな期待
が寄せられている。
しかし、諸対策を論じる前に建築物の生涯CO2排
出量の算出や環境負荷に対する評価を確立しなけれ
ばならない。この評価手法の開発に世界的な取り組
みが盛んに進められており、日本においても政府、
学会レベルの指針作成などに加え、建設会社や設計
事務所では独自のLCA(ライフサイクルアセスメ
ント)手法の開発に積極的に取り組んでいる。
2
ライフサイクル評価とは
ライフサイクル評価(LCA−ライフサイクルア
セスメント)は、元々産業界の製品開発から考案さ
れた技法である。LCAは厳密に製品やサービスに
関する環境マネジメント支援技法であり、1997年
6月に国際規格となったISO14040(環境マネジ
メント−ライフサイクルアセスメント−原則及び枠
組み)の和訳から名付けられた。この技法は1997
年12月に、日本工業規格JISQ14040に採用さ
れた。LCAは、製品の原材料の採取から製造、使
用及び処分に至る生涯を通しての環境面及び潜在的
影響を調査するものである。考慮すべき環境影響の
領域としては、資源利用、人の健康及び生態系への
影響が含まれる。
建築物は多数の工業製品が複合された耐久消費財
であるため、LCAを行うには建築物の建設から、
使用、改修及び解体まで考慮して定量化する必要が
ある。また、LCAだけで結論を下すのではなく、
経済性、快適性、利便性、安全性、信頼性などの諸
性能も同時に評価する必要がある。現在の価格体系
では、LCAと経済性評価は、相反する選択をせざ
るを得ないことも多い。
3
国際的な取り組み
(1)BREEAM
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説
英 国 建 築 研 究 所 ( Building Research
Establishment)で開発された建築の環境負荷評価
手法である。新築の事務所、大規模店舗、住宅、工
場に適用される。
評価項目は次の3つの部門に分かれる。
① 地球環境問題と資源利用(Global Issues and
Use of Resources)
② 地域環境問題(Local Issues)
③ 室内環境問題(Indoor Issues)
それぞれの部門に小項目が挙げられ、目標が達成
すると、42点が与えられ、最終評価は各部門の最低
点 数 と 合 計 点 数 に よ っ て 、 普 通 ( F a i r )、 良 い
( G o o d )、 非 常 に よ い ( V e r y G o o d )、 優 秀
(Excellent)の4段階にランク付けされる。
英国では設計事務所や施主の間で関心が高まって
おり、新築ビルの約25%が評価を受けている。カナ
ダ、香港、オーストラリア、ニュージーランドなど
でBREEAMが参考にされている。
(2)BEPAC
BEPAC(Building Environment Performance
Assessment Criteria)は、カナダのBritish
Columbia大学建築学校環境グループのRaymond J
Cole教授らによって開発された建築の環境性能評価
手法である。約30の基準が5つの主要な環境トピッ
ク(オゾン層保護、エネルギー利用による環境影響、
室内環境の質、省資源、立地と交通)に体系化され、
各評価項目が重み付けされ、合計点数で評価される
のが特徴である。
(3)LEED
アメリカの非営利団体である合衆国グリーンビル
協議会が提唱している評価手法で、BREEAMと
BEPACなどの検討の上にできた。グリーンビル
として評価されるには各評価項目で16点以上を取る
と同時に必須条件を満たしていることが求められる。
(4)GBC’98
GBC’98(Green Building Challenge'98)
は、BEPACを開発したRaymond J Cole教授と
C-2000を開発したカナダ天然資源省CANMETエネ
ルギー研究所技術センターのNils Larsson氏が推進
役となってスタートした建築性能評価の枠組みを定
める国際的な取り組みである。参加国はカナダ(事
務局)、アメリカ、イギリス、デンマーク、フィンラ
ンド、フランス、日本、ノルウェー、オランダ、ポ
ーランド、スウェーデン、スイスで、IEA/ECBCSAnnex31(エネルギーに関する建築物の環境負荷評
価手法の研究)と重複している。
評価項目は次の6つから分類される。
●資源消費 ●環境負荷 ●室内環境 ●長期耐用
性 ●プロセスの妥当性 ●近隣特性への適合性
全部で120の性能基準毎に、相対評価を(-2点∼
+5点)の8段階で採点し、重み係数で加重平均しな
がら、6項目の点数が算出される。普通のビルは0点
であり、満点の5点を取るのは非常に難しいとされて
いる。
4
日本の取り組み
4.1 日本の官、学協会の取り組み
学協会レベルでは、各委員会は基本的に独自に研
究活動を行っているが、構成メンバーは少しずつ重
複しており、相互に連係を図りながら研究が進めら
れている。現在のところ、データベースは、CO2排
出量、主要資源消費量、建設廃棄物量など定量化し
やすいものに限定している。また、いずれの研究も
産業連関表を利用した原単位と積み上げ式の原単位
が併存しており、建築分野として統一したデータベ
ースが整備されている状態ではない。
(1)日本建築学会
(社)日本建築学会では、1990年度から建築と
地球環境の調査研究をスタートし、現在「地球環境
委員会」LCA指針策定小委員会で、建築の環境負
荷評価手法に関する部分を検討している。1998年
11月に、「建物のLCA指針(案)−地球温暖化防
止のためのLCCO2を中心として」という報告書が
まとめられた。
(2)空気調和・衛生工学会
(社)空気調和・衛生工学会が1993年から「地
球環境に関する委員会」を設置し、建築設備の環境
負荷削減対策とライフサイクルCO2の設備部分に関
する詳細検討を行っている。1997年7月に「持続
可能な社会を支える建築設備のために」、1999年3
月に「建築設備と地球環境に関する研究」が公表さ
れた。
(3)住宅・建築省エネルギー機構
国際エネルギー機関IEA/ECBCS-Annex31(エ
ネルギーに関する建築物の環境負荷評価手法の研究)
委員会に対応して、国内委員会が設置されている。
(4)建設省建築研究所
1991年より土木研究所と共同で、総合技術開発
プロジェクト「省資源・省エネルギー型国土建設技
術の開発」を進め、土木構築物・建築物の建設、使
用、解体に係わるエネルギー消費、CO2排出量の実
態を把握し、削減工法の効果を評価する手法が
1997年11月にLCAソフトとして公開されてい
る。
(5)建築業協会
(社)建築業協会では、1990年10月に地球環境
問題専門委員会を設置した。現在まで、建築分野の
環境負荷量の推計結果を報告している。
4.2国内各社のライフサイクル評価手法
学協会の委員会活動に関連して、既に各社で独自
のLCA手法の開発が進められている。主な会社は
大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務
店、積水ハウス、日建設計などがある。各社はいず
れも企画提案段階で全般的対策を検討することを目
的としている。全てのLCA手法はCO2排出量を評
価項目としているが、コスト、エネルギー、資源消
費を評価項目としている手法もある。ただし、ソフ
トは非公開である。
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評
価
当社との関わり
LCA手法に関わる評価項目が様々であり、また
必要なデータが膨大である。建築物全体の総合的L
CA手法の開発は学協会及び産業界全体で取り組ま
なければならない問題である。
当社としては、物件営業の検討プランに経済性評
価やセールスポイントが求められつつある。環境意
識が高まる中、今後低環境負荷の提案が必要になる
に違いない。新規物件の営業や設計初期段階で役立
つことが勿論のこと、リニューアル工事やESCO
事業にも利用できるよう、当社の目的に合うLCA
手法を開発しなければならない。
当社独自のLCA手法は建築設備を中心とし、評
価項目をLCC(ライフサイクルコスト)に絞り、
必要に応じてLCE(ライフサイクルエネルギー消
費)を含むようにしたい。
LCA手法の開発にあたり、国際的な取り組み、
国内学協会における取り組みの進展を見つめながら、
その成果を参考していく必要がある。また、社内の
営業・設計・積算の現状、利用するデータベース、
ツールを調査した上、当社の目的に合う評価手法を
考案していきたい。
<参考文献> 建物のLCA指針(案)∼地球温暖化防止のた
めのLCCO2を中心として∼1998年11月、社団法人日本
建築学会地球環境委員会LCA指針策定小委員会
55
P54-61_ミニ解説3.3 99.11.16 5:38 PM ページ 56
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解
説
インターネット技術〈PIAFS〉
電力本部 情報通信部 マルチメディアグループ/西脇 元泰
﹀
PIAFSとは、PHSインターネットアクセス
フ ォ ー ラ ム ・ ス タ ン ダ ー ド ( PHS Internet
Access Forum Standard)の略称で“ピアフ”と
発音する。これは通信機器メーカや通信事業者が中
心となって運営している「PHSインターネットア
クセスフォーラム」が、PHSを利用したマルチメ
ディア通信の普及を目的として定めた、32kbpsの
デジタル信号を用いたデータ伝送手順の標準方式で、
実際の公衆サービスは97年4月から始まっている。
1
2
3
はじめに
PIAFSとは
機能概要
データ通信は、音声通話と違って正確さが要求さ
れる。音声通話では、雑音や瞬断が生じても通話を
続けることが出来るが、データ通信では1ビットの誤
りが致命的になることもある。このため誤りを検出
し、それを回避する方法(誤り制御)が必要となる。
この誤り制御方式には、自動再送要求(ARQ:
Auto Repeat reQuest)方式と、送信先での誤り
訂正(FEC:Forward Error Correction)方式が
あるが、移動体通信では一般的に散発的なビット誤
りより連続的なビット誤りの方が多いため、ARQ
方式が採用されている。
FEC方式によって誤り訂正をする場合は、その
ための情報を余分に付加する必要があり、その分、
送信効率が落ちることになる。そこでエラーの無い
時も、多い時も通信効率をできるだけ下げないよう
にするため、ARQ方式が採用されている。
PHS自身は、32kbpsの通信速度をもってい
るが、PIAFSではその中の一部を誤り制御の情
報に用いるので、データの最大通信速度は29.2kb
psということになる。また、PIAFSは、端末
間で整合がとれれば圧縮が使える。圧縮の方式は、
一般のモデムでよく用いられているV.42bisが標
準となっている。V.42bisは、最大4分の1まで
の圧縮ができると言われているが、画像に用いるJ
PEGファイルなどは圧縮効果が殆どない。しかし、
メールなどのテキストデータの送受信には、2分の1
程度の圧縮ができているようである。
(1).ARQデータ転送手順
a.再送方式
送信番号帰還型SR(Selective Repeat)が
基本。
b.フレーム構造
ARQ制御情報とユーザデータを常に組み込む
ピギーパッキング方式。
c.誤り検出方法
フレームの誤り検出にCRC-32を使用。
d.フレーム同期方式
通信開始時フレーム同期を取る初期同期方式を
適用。
図1 フレーム構造
(2).特徴
a.ARQ伝送制御手順により、伝送条件が大きく
変動する無線回線で高いスループットが出せる。
b.上位プロトコルに融通が効く(TCP/IP,
PPP.
.
.無手順もOK)
c.基地局をまたがる移動通信(ハンドオーバー)
が可能。
d.通信相手が通常のモデムの場合は、途中にプロ
トコル変換装置(PTE)が必要。
e.アナログモデムに比べて接続待ち時間が短い。
f.オプション機能で、V.42bisによるデー
タ圧縮を用いることができる。テキストなどの
場合は、実行速度を1.5∼2倍以上にできる。
4
利用方法
例として、PHSからPIAFSにてインターネ
ット中部に接続する様子を図2に示す。
必要なものは、パソコン、データカード、PHS
である。設定も特にモデムでの接続と変わった設定
はなく、PIAFS対応データカードをパソコンに
差し込み、データカードのドライバを認識させて、
専用ケーブルでPHSとデータカードを接続した後、
ダイヤルアップIP接続用ソフトの設定を行えばイ
ンターネットに接続できる。
具体的な活用方法としては次のようになります。
a.外出先からの電子メール
…電子メールは、徐々にビジネスや家庭の必須
アイテムになろうとしている。
b.画像送信
…現場での作業状況などもリアルタイムに画像
により送信できる。
c.FAX送信
…パソコンで作成した書類を印刷することなく
そのままFAXできる。
d.リモートアクセス
…外出先から社内LANにアクセスして営業情
報などを入手できる。
e.屋内での利用
…電波の届きにくい屋内でも、パワーアンテナ
を使用すれば安定した通信が可能である。
5
イ
ン
タ
ー
ネ
ッ
ト
技
術
︿
PIAFS
PHSは、安価でかつデータ通信に適しているた
め、当社にも多数配備されている。現在の利用目的
は、通話が主体であるが、インターネットを始めと
するデータ通信の利用が少しづつ増加する。
今回は、PHSのデータ通信の標準方式の一つで
あるPIAFSについて解説する。
PIAFS
イ
ン
タ
ー
ネ
ッ
ト
技
術
︿
56
ミ
ニ
解
説
﹀
おわりに
PHSは、高度情報化の進展によりモバイル端末
にも情報の高密度化が進み、データ通信に優れた特
性をもっているため、新たな活用方法が期待されて
いる。
図2 ダイアルアップ接続
57
P54-61_ミニ解説3.3 99.11.16 5:38 PM ページ 56
ミ
ニ
解
説
インターネット技術〈PIAFS〉
電力本部 情報通信部 マルチメディアグループ/西脇 元泰
﹀
PIAFSとは、PHSインターネットアクセス
フ ォ ー ラ ム ・ ス タ ン ダ ー ド ( PHS Internet
Access Forum Standard)の略称で“ピアフ”と
発音する。これは通信機器メーカや通信事業者が中
心となって運営している「PHSインターネットア
クセスフォーラム」が、PHSを利用したマルチメ
ディア通信の普及を目的として定めた、32kbpsの
デジタル信号を用いたデータ伝送手順の標準方式で、
実際の公衆サービスは97年4月から始まっている。
1
2
3
はじめに
PIAFSとは
機能概要
データ通信は、音声通話と違って正確さが要求さ
れる。音声通話では、雑音や瞬断が生じても通話を
続けることが出来るが、データ通信では1ビットの誤
りが致命的になることもある。このため誤りを検出
し、それを回避する方法(誤り制御)が必要となる。
この誤り制御方式には、自動再送要求(ARQ:
Auto Repeat reQuest)方式と、送信先での誤り
訂正(FEC:Forward Error Correction)方式が
あるが、移動体通信では一般的に散発的なビット誤
りより連続的なビット誤りの方が多いため、ARQ
方式が採用されている。
FEC方式によって誤り訂正をする場合は、その
ための情報を余分に付加する必要があり、その分、
送信効率が落ちることになる。そこでエラーの無い
時も、多い時も通信効率をできるだけ下げないよう
にするため、ARQ方式が採用されている。
PHS自身は、32kbpsの通信速度をもってい
るが、PIAFSではその中の一部を誤り制御の情
報に用いるので、データの最大通信速度は29.2kb
psということになる。また、PIAFSは、端末
間で整合がとれれば圧縮が使える。圧縮の方式は、
一般のモデムでよく用いられているV.42bisが標
準となっている。V.42bisは、最大4分の1まで
の圧縮ができると言われているが、画像に用いるJ
PEGファイルなどは圧縮効果が殆どない。しかし、
メールなどのテキストデータの送受信には、2分の1
程度の圧縮ができているようである。
(1).ARQデータ転送手順
a.再送方式
送信番号帰還型SR(Selective Repeat)が
基本。
b.フレーム構造
ARQ制御情報とユーザデータを常に組み込む
ピギーパッキング方式。
c.誤り検出方法
フレームの誤り検出にCRC-32を使用。
d.フレーム同期方式
通信開始時フレーム同期を取る初期同期方式を
適用。
図1 フレーム構造
(2).特徴
a.ARQ伝送制御手順により、伝送条件が大きく
変動する無線回線で高いスループットが出せる。
b.上位プロトコルに融通が効く(TCP/IP,
PPP.
.
.無手順もOK)
c.基地局をまたがる移動通信(ハンドオーバー)
が可能。
d.通信相手が通常のモデムの場合は、途中にプロ
トコル変換装置(PTE)が必要。
e.アナログモデムに比べて接続待ち時間が短い。
f.オプション機能で、V.42bisによるデー
タ圧縮を用いることができる。テキストなどの
場合は、実行速度を1.5∼2倍以上にできる。
4
利用方法
例として、PHSからPIAFSにてインターネ
ット中部に接続する様子を図2に示す。
必要なものは、パソコン、データカード、PHS
である。設定も特にモデムでの接続と変わった設定
はなく、PIAFS対応データカードをパソコンに
差し込み、データカードのドライバを認識させて、
専用ケーブルでPHSとデータカードを接続した後、
ダイヤルアップIP接続用ソフトの設定を行えばイ
ンターネットに接続できる。
具体的な活用方法としては次のようになります。
a.外出先からの電子メール
…電子メールは、徐々にビジネスや家庭の必須
アイテムになろうとしている。
b.画像送信
…現場での作業状況などもリアルタイムに画像
により送信できる。
c.FAX送信
…パソコンで作成した書類を印刷することなく
そのままFAXできる。
d.リモートアクセス
…外出先から社内LANにアクセスして営業情
報などを入手できる。
e.屋内での利用
…電波の届きにくい屋内でも、パワーアンテナ
を使用すれば安定した通信が可能である。
5
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ン
タ
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技
術
︿
PIAFS
PHSは、安価でかつデータ通信に適しているた
め、当社にも多数配備されている。現在の利用目的
は、通話が主体であるが、インターネットを始めと
するデータ通信の利用が少しづつ増加する。
今回は、PHSのデータ通信の標準方式の一つで
あるPIAFSについて解説する。
PIAFS
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技
術
︿
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解
説
﹀
おわりに
PHSは、高度情報化の進展によりモバイル端末
にも情報の高密度化が進み、データ通信に優れた特
性をもっているため、新たな活用方法が期待されて
いる。
図2 ダイアルアップ接続
57
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ミ
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解
説
を
利
用
し
た
照
明
シ
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シ
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ン
3次元CADを利用した照明シミュレーション
技術開発室/真玉橋 剛志
1
はじめに
建設業界では、特に橋梁、競技場などの大規模物
件において、古くから縮尺モデルの作成や模擬実験
などにより、建設後の状況を予測していた。しかし、
これらの方法は、膨大な時間と費用を要する。
近年、これに代わる方法として、コンピューター
を利用したシミュレーションが注目され、盛んに行
われるようになってきた。最近では、コンピュータ
ーの性能が著しく向上し、短時間に高精度のシミュ
レーションが可能になっている。特に3次元によるシ
ミュレーションは、建設後のイメージが掴み易く、
顧客への有効な技術提案の手段になる。
ここでは、3次元CADを利用した照明シミュレー
ション(以下、「照明シミュレーション」)の概要と
事例について紹介する。
2
照明シミュレーションの目的
事務所ビルや工場における照明設計の目的は、作
業を行う上で適正な照度を得ることである。このた
め、照度計算を主体とした照明設計が行われ、照明
シミュレーションが行われることは少ない。一方、
ホテルや店舗、スポーツ施設、空港などの他の施設
においては、適正な照度に加え、演色性や色合いな
どの空間の雰囲気を考慮した照明設計が必要である。
照明シミュレーションは、このような照明空間の
雰囲気が重要視される施設の照明設計に有効な手段
である。すなわち、施設の設計・計画時において、
顧客に対し完成後の照明空間を立体的に提示できる
ため、顧客も設計者もイメージが掴み易く、顧客の
意図を的確に反映した照明設計が可能となる。
3
シミュレーション手法の紹介
照明シミュレーションの手法には、現在主流とな
っている双方向レイトレーシング法を採用している。
この手法は、光の透過、屈折、拡散、相互反射を考
慮に入れたシミュレーションが可能である。したが
って、影の明暗、面積光源の創るあいまいな影、照
明器具のガラスの映り込み、カーペットの色が照明
による2次反射によって壁や天井に映り込む様子な
ど、光の直射成分のみの計算では表現しきれないリ
アルな照明空間を表現できる。
58
4
照明シミュレーションに必要なデータ
(1)形状データ
照明シミュレーションを行うには、まず、建物の形
状の3次元データ(以下、
「形状データ」)を作成する。
形状データの作成は、一般に建築CADデータを利用
する。しかし、一般に、建築CADデータは、パース
図 ※を作成する必要がない限り2次元データである。
したがって、形状データを作成するには、2次元の建
築CADデータに高さ方向のデータを追加する必要が
ある。
正確なシミュレーションを行うには、形状データ
を細かくする必要がある。特に、曲線などの複雑な
形状の建物ほど形状データを細かくする。しかし、
形状データが細かくなり、データ量が多くなると形
状データのコンピューターへの入力時間(一般に全
行程の7割)、およびシミュレーション時の計算時間
が増加し、効率的とは言えない。シミュレーション
の正確性を保ちながら、形状データをどれだけ削減
できるかが、効率的にシミュレーションを行うポイ
ントとなる。
でき、照明器具のグレア※やガラスへの映り込みのチ
ェックに有効である。
さらに、アトリウムの昼間の状況をシミュレーシ
ョンした結果を図3に示す。このアトリウムは、昼光
を取り入れているので、昼光を平行光源としてシミ
ュレーションを行った。昼光の利用は省エネを目的
とした照明設計において重要な手法の一つである。
このシミュレーション方法によって、昼光の利用に
ついても、検討することが可能である。
6
まとめ
照明シミュレーションの概要と、当社教育・研究棟
のアトリウムにおけるシミュレーション事例を紹介
した。照明シミュレーションの課題は、本文で述べ
た通り、シミュレーションの正確性の追求と形状デ
ータの削減による効率化である。今後、これらにつ
いてさらに検討を重ね、当社の有効な技術提案ツー
ルとして、活用していきたい。
※グレア:眩しさの度合い、輝度値がめやすとなる。
※パース図:ある視点からの3次元立体図、主に景観評価に利用される
(2)配光データ
利用する照明器具の配光データや取り付ける方向
のデータは、メーカーのカタログデータおよび設計
図を参照する。
(3)材質データ
材質データは、光が天井、壁などに使用される建
築部材(ガラス、金属、プラスチック、大理石、布)
に照射されたときの反射率、拡散率、透過率、吸収
率、屈折率、色データなどである。 これらのデータ
は理科年表や建築部材のカタログなどを参照する。
5
シミュレーション事例
ひとつの例として当社教育技術棟の2、3階部分の
アトリウムのシミュレーション事例を示す。この空
間は、リフレッシュ空間として利用されている。
アトリウムの夜間の状況をシミュレーションした
結果を図1に示す。反射率の高いガラスやステンレ
スなどの建築部材に照明器具などが映り込みリアル
な画像になっている。さらに3次元CAD内の視点を
変えることで、さまざまな角度からこの空間を完成
前に評価・検討できる。
次に、この空間の輝度分布を色別に表した結果を
図2に示す。この方法は空間の輝度分布が一目で把握
図1
3
次
元
CAD
CAD
3
次
元
ミ
ニ
解
説
を
利
用
し
た
照
明
シ
ミ
ュ
レ
ー
シ
ョ
ン
教育・研究棟アトリウム(夜間)のシミュレーション例
図2 輝度分布図の出力例
図3 教育・研究棟アトリウム(昼間)のシミュレーション例
59
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解
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を
利
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明
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レ
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シ
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ン
3次元CADを利用した照明シミュレーション
技術開発室/真玉橋 剛志
1
はじめに
建設業界では、特に橋梁、競技場などの大規模物
件において、古くから縮尺モデルの作成や模擬実験
などにより、建設後の状況を予測していた。しかし、
これらの方法は、膨大な時間と費用を要する。
近年、これに代わる方法として、コンピューター
を利用したシミュレーションが注目され、盛んに行
われるようになってきた。最近では、コンピュータ
ーの性能が著しく向上し、短時間に高精度のシミュ
レーションが可能になっている。特に3次元によるシ
ミュレーションは、建設後のイメージが掴み易く、
顧客への有効な技術提案の手段になる。
ここでは、3次元CADを利用した照明シミュレー
ション(以下、「照明シミュレーション」)の概要と
事例について紹介する。
2
照明シミュレーションの目的
事務所ビルや工場における照明設計の目的は、作
業を行う上で適正な照度を得ることである。このた
め、照度計算を主体とした照明設計が行われ、照明
シミュレーションが行われることは少ない。一方、
ホテルや店舗、スポーツ施設、空港などの他の施設
においては、適正な照度に加え、演色性や色合いな
どの空間の雰囲気を考慮した照明設計が必要である。
照明シミュレーションは、このような照明空間の
雰囲気が重要視される施設の照明設計に有効な手段
である。すなわち、施設の設計・計画時において、
顧客に対し完成後の照明空間を立体的に提示できる
ため、顧客も設計者もイメージが掴み易く、顧客の
意図を的確に反映した照明設計が可能となる。
3
シミュレーション手法の紹介
照明シミュレーションの手法には、現在主流とな
っている双方向レイトレーシング法を採用している。
この手法は、光の透過、屈折、拡散、相互反射を考
慮に入れたシミュレーションが可能である。したが
って、影の明暗、面積光源の創るあいまいな影、照
明器具のガラスの映り込み、カーペットの色が照明
による2次反射によって壁や天井に映り込む様子な
ど、光の直射成分のみの計算では表現しきれないリ
アルな照明空間を表現できる。
58
4
照明シミュレーションに必要なデータ
(1)形状データ
照明シミュレーションを行うには、まず、建物の形
状の3次元データ(以下、
「形状データ」)を作成する。
形状データの作成は、一般に建築CADデータを利用
する。しかし、一般に、建築CADデータは、パース
図 ※を作成する必要がない限り2次元データである。
したがって、形状データを作成するには、2次元の建
築CADデータに高さ方向のデータを追加する必要が
ある。
正確なシミュレーションを行うには、形状データ
を細かくする必要がある。特に、曲線などの複雑な
形状の建物ほど形状データを細かくする。しかし、
形状データが細かくなり、データ量が多くなると形
状データのコンピューターへの入力時間(一般に全
行程の7割)、およびシミュレーション時の計算時間
が増加し、効率的とは言えない。シミュレーション
の正確性を保ちながら、形状データをどれだけ削減
できるかが、効率的にシミュレーションを行うポイ
ントとなる。
でき、照明器具のグレア※やガラスへの映り込みのチ
ェックに有効である。
さらに、アトリウムの昼間の状況をシミュレーシ
ョンした結果を図3に示す。このアトリウムは、昼光
を取り入れているので、昼光を平行光源としてシミ
ュレーションを行った。昼光の利用は省エネを目的
とした照明設計において重要な手法の一つである。
このシミュレーション方法によって、昼光の利用に
ついても、検討することが可能である。
6
まとめ
照明シミュレーションの概要と、当社教育・研究棟
のアトリウムにおけるシミュレーション事例を紹介
した。照明シミュレーションの課題は、本文で述べ
た通り、シミュレーションの正確性の追求と形状デ
ータの削減による効率化である。今後、これらにつ
いてさらに検討を重ね、当社の有効な技術提案ツー
ルとして、活用していきたい。
※グレア:眩しさの度合い、輝度値がめやすとなる。
※パース図:ある視点からの3次元立体図、主に景観評価に利用される
(2)配光データ
利用する照明器具の配光データや取り付ける方向
のデータは、メーカーのカタログデータおよび設計
図を参照する。
(3)材質データ
材質データは、光が天井、壁などに使用される建
築部材(ガラス、金属、プラスチック、大理石、布)
に照射されたときの反射率、拡散率、透過率、吸収
率、屈折率、色データなどである。 これらのデータ
は理科年表や建築部材のカタログなどを参照する。
5
シミュレーション事例
ひとつの例として当社教育技術棟の2、3階部分の
アトリウムのシミュレーション事例を示す。この空
間は、リフレッシュ空間として利用されている。
アトリウムの夜間の状況をシミュレーションした
結果を図1に示す。反射率の高いガラスやステンレ
スなどの建築部材に照明器具などが映り込みリアル
な画像になっている。さらに3次元CAD内の視点を
変えることで、さまざまな角度からこの空間を完成
前に評価・検討できる。
次に、この空間の輝度分布を色別に表した結果を
図2に示す。この方法は空間の輝度分布が一目で把握
図1
3
次
元
CAD
CAD
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教育・研究棟アトリウム(夜間)のシミュレーション例
図2 輝度分布図の出力例
図3 教育・研究棟アトリウム(昼間)のシミュレーション例
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説
ギ
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ビ
ッ
ト
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ー
サ
ネ
ッ
ト
に
よ
る
構
内
系
ネ
ッ
ト
ワ
ー
ク
の
統
合
ギガビットイーサネットによる構内系ネットワークの統合
技術開発室/中野 得一
構内TV
1
はじめに
情報化促進による日本経済回復政策によって、情
報通信基盤整備や企業の情報化投資が進んでいる。
主なニュースをあげると、99年度のパソコン出荷台
数は史上初の800万台突破が見込まれ、前回のTDレ
ポートで解説した「新しいディジタル加入者線」や
安価な「光ファイバ・無線混用加入者線」が今年の
秋から来年の夏にいくつかが開始され、またインタ
ーネットによる取引などの安全性を高める「公的電
子認証制度」が2001年4月に創設と報道されてお
り、常時接続によるインターネットの本格的使用時
代が到来する。更に「地上波ディジタルテレビ放送」
も2003年開始予定である。
このように大きく変化する情報通信環境を業務の
高度化・効率化に活かす中・大規模オフィスビル内
の情報通信ネットワークとして「ギガビットイーサ
ネットによる構内系ネットワークの統合」を紹介す
る。
2
情報通信環境の変化
オフィスをとりまく情報通信環境は次のように変
化すると予想される。
(1)データ系トラヒックの急増
先に述べたインターネット常時接続の普及や公的
電子認証制度の創設などによりインターネット・イ
ントラネットの利用が本格化し、企業内・外ともに
データ系トラヒックが急増する。一方、電話系トラ
ヒック(ファクシミリを含む)は、顕著な増加要因
は見あたらない。したがって将来はデータ系トラヒ
ックが主体となる。図1は米国における予想例である
が、日本に於いても数年遅れで同様な傾向をたどる
と予想される。
(2)1人1台のパソコン
前項およびパソコンの低価格化によって、オフィ
15
0
1998
スでは1人1台のパソコン環境が一般的になり、利便
性が向上し情報化が加速する。
(3)ネットワーク機器の高速・低価格化
通信プロトコルがインターネット通信プロトコル
であるTCP/IPへ一本化されることなどによって、
ネットワーク機器の内部主要処理が従来のソフトウ
ェア処理から専用LSIによるハードウェア処理にな
り、著しい高速化と低価格化が進む。
3
電 話
F
D
D
I
100Mbps
イーサネット
他事業所
TV受像機
図1
2001
2002
トラヒック増加予測
2003 年
NTT 他事業所
加入電話
アナログ
電 話 機
パソコン
ネットワーク統合方法
今後のオフィスビル内通信は、2(1)で述べたよ
うにデータ系トラヒックが圧倒的に大きくなるので、
データ系ネットワークであるLANへPBXおよび構内
テレビを統合する。図2下段にその概要を示し、以下
に重点を解説する。
(1)ネットワーク
LANには各種の方法があるが、価格・性能・汎用
性に優れたギガネットイーサネットを使用する。
10/100Mbps
イーサネット
1,000Mbps
Internet
(他事業所)
マルチメディア
パ ソ コ ン
Voice
over IP
Gateway
IP 電話機(補完的)
IP TV受像機 (補完的)
ISDN
(NTT加入電話)
図2 構内系ネットワーク
ネットワーク層プロトコルは、IP(インターネッ
トプロトコル)とし、ネットワーク機器は専用LSI使
用で高速・低価格になったスイッチング形で、かつ
マルチキャストやQoS(サービス品質)制御が可能
な方式とする。
(2)構内TVの統合
ディジタルTV放送ヘッドエンド出力は、図3に示
すマルチキャストによって、パソコン受像機へ効率
よく配信される。
ビデオサーバは双方向通信の特性を活かした新し
い応用に対応する。なお若干のテレビ受像専用機も
使用されるであろう。
(3)PBXの統合
構内電話をIPネットワークにより統合すれば、高
価な構内電話交換機が不要となり、他事業場との中
継線もLAN間接続へ一本化される。電話機やその配
線も不要となり、1人1台のマルチメディアパソコン
イーサネットスイッチ
図3 マルチキャスト
イーサネット
ス イ ッ チ
HeadEnd
Video
Server
信号の複製
2000
10Mbps
構 内
交換機
信号の流れ
1999
LAN
現状とその問題点
現在の典型的な構内系ネットワークは、右ページ
図2上段のように、その時々のニーズよって構築され
た完全に独立した3つのネットワーク、すなわち、構
内テレビ、PBX(構内交換電話)、LAN(構内デー
タ通信網)からなる。
前述の情報通信環境の変化に対応するためには、
少なくともLANの高速化および構内テレビのディジ
タル化が必要である。
しかし個々のネットワークの更改では、次に紹介
する統合化されたネットワークと比較して、マルチ
メディア対応が困難なうえに設備費および運用費が
高額になるなどの問題がある。
4
PBX
HeadEnd
HeadEnd
Video
Server
データ
ト
ラ
ヒ 10
ッ
ク
︵
相
対 5
値
︶
60
ミ
ニ
解
説
図4 IP電話機
が取って代わる。高速LANでは高能率符号化不要お
よびQoSによって、従来の電話とかわらない音質が
提供できる。
公衆網とIP網はパソコンベースのゲートウェイで
接続する。なおパソコンがない場合では図4のような
IP電話機が部分的に使用される。
5
ネットワーク統合の利点
紹介した手法による構内系ネットワーク統合の利
点は、真のマルチメディア環境となることによる、
新たな利用方法の創造・利便性の向上・コスト低減
などである。際限がないので例示は省略する。
6
ギ
ガ
ビ
ッ
ト
イ
ー
サ
ネ
ッ
ト
に
よ
る
構
内
系
ネ
ッ
ト
ワ
ー
ク
の
統
合
おわりに
ギガビットイーサネットによる構内系ネットワー
クの統合は、企業内のマルチメディア情報通信基盤
を経済的に構築できるので、魅力的な選択肢である。
しかし実績のないシステムは信頼性が問題となる。
ハードウェアは類似の製品から推測し必要により冗
長構成で対処可能であるが、ソフトウェアの信頼性
は、ある程度ふるいにかけたあとは、試験運用によ
る確認が必要である。
このため当社技術開発室では、ギガビットイーサ
ネットを設置した試験運用による、アプリケーショ
ンの提案・信頼性評価などを計画している。
61
P54-61_ミニ解説3.3 99.11.16 5:38 PM ページ 60
ミ
ニ
解
説
ギ
ガ
ビ
ッ
ト
イ
ー
サ
ネ
ッ
ト
に
よ
る
構
内
系
ネ
ッ
ト
ワ
ー
ク
の
統
合
ギガビットイーサネットによる構内系ネットワークの統合
技術開発室/中野 得一
構内TV
1
はじめに
情報化促進による日本経済回復政策によって、情
報通信基盤整備や企業の情報化投資が進んでいる。
主なニュースをあげると、99年度のパソコン出荷台
数は史上初の800万台突破が見込まれ、前回のTDレ
ポートで解説した「新しいディジタル加入者線」や
安価な「光ファイバ・無線混用加入者線」が今年の
秋から来年の夏にいくつかが開始され、またインタ
ーネットによる取引などの安全性を高める「公的電
子認証制度」が2001年4月に創設と報道されてお
り、常時接続によるインターネットの本格的使用時
代が到来する。更に「地上波ディジタルテレビ放送」
も2003年開始予定である。
このように大きく変化する情報通信環境を業務の
高度化・効率化に活かす中・大規模オフィスビル内
の情報通信ネットワークとして「ギガビットイーサ
ネットによる構内系ネットワークの統合」を紹介す
る。
2
情報通信環境の変化
オフィスをとりまく情報通信環境は次のように変
化すると予想される。
(1)データ系トラヒックの急増
先に述べたインターネット常時接続の普及や公的
電子認証制度の創設などによりインターネット・イ
ントラネットの利用が本格化し、企業内・外ともに
データ系トラヒックが急増する。一方、電話系トラ
ヒック(ファクシミリを含む)は、顕著な増加要因
は見あたらない。したがって将来はデータ系トラヒ
ックが主体となる。図1は米国における予想例である
が、日本に於いても数年遅れで同様な傾向をたどる
と予想される。
(2)1人1台のパソコン
前項およびパソコンの低価格化によって、オフィ
15
0
1998
スでは1人1台のパソコン環境が一般的になり、利便
性が向上し情報化が加速する。
(3)ネットワーク機器の高速・低価格化
通信プロトコルがインターネット通信プロトコル
であるTCP/IPへ一本化されることなどによって、
ネットワーク機器の内部主要処理が従来のソフトウ
ェア処理から専用LSIによるハードウェア処理にな
り、著しい高速化と低価格化が進む。
3
電 話
F
D
D
I
100Mbps
イーサネット
他事業所
TV受像機
図1
2001
2002
トラヒック増加予測
2003 年
NTT 他事業所
加入電話
アナログ
電 話 機
パソコン
ネットワーク統合方法
今後のオフィスビル内通信は、2(1)で述べたよ
うにデータ系トラヒックが圧倒的に大きくなるので、
データ系ネットワークであるLANへPBXおよび構内
テレビを統合する。図2下段にその概要を示し、以下
に重点を解説する。
(1)ネットワーク
LANには各種の方法があるが、価格・性能・汎用
性に優れたギガネットイーサネットを使用する。
10/100Mbps
イーサネット
1,000Mbps
Internet
(他事業所)
マルチメディア
パ ソ コ ン
Voice
over IP
Gateway
IP 電話機(補完的)
IP TV受像機 (補完的)
ISDN
(NTT加入電話)
図2 構内系ネットワーク
ネットワーク層プロトコルは、IP(インターネッ
トプロトコル)とし、ネットワーク機器は専用LSI使
用で高速・低価格になったスイッチング形で、かつ
マルチキャストやQoS(サービス品質)制御が可能
な方式とする。
(2)構内TVの統合
ディジタルTV放送ヘッドエンド出力は、図3に示
すマルチキャストによって、パソコン受像機へ効率
よく配信される。
ビデオサーバは双方向通信の特性を活かした新し
い応用に対応する。なお若干のテレビ受像専用機も
使用されるであろう。
(3)PBXの統合
構内電話をIPネットワークにより統合すれば、高
価な構内電話交換機が不要となり、他事業場との中
継線もLAN間接続へ一本化される。電話機やその配
線も不要となり、1人1台のマルチメディアパソコン
イーサネットスイッチ
図3 マルチキャスト
イーサネット
ス イ ッ チ
HeadEnd
Video
Server
信号の複製
2000
10Mbps
構 内
交換機
信号の流れ
1999
LAN
現状とその問題点
現在の典型的な構内系ネットワークは、右ページ
図2上段のように、その時々のニーズよって構築され
た完全に独立した3つのネットワーク、すなわち、構
内テレビ、PBX(構内交換電話)、LAN(構内デー
タ通信網)からなる。
前述の情報通信環境の変化に対応するためには、
少なくともLANの高速化および構内テレビのディジ
タル化が必要である。
しかし個々のネットワークの更改では、次に紹介
する統合化されたネットワークと比較して、マルチ
メディア対応が困難なうえに設備費および運用費が
高額になるなどの問題がある。
4
PBX
HeadEnd
HeadEnd
Video
Server
データ
ト
ラ
ヒ 10
ッ
ク
︵
相
対 5
値
︶
60
ミ
ニ
解
説
図4 IP電話機
が取って代わる。高速LANでは高能率符号化不要お
よびQoSによって、従来の電話とかわらない音質が
提供できる。
公衆網とIP網はパソコンベースのゲートウェイで
接続する。なおパソコンがない場合では図4のような
IP電話機が部分的に使用される。
5
ネットワーク統合の利点
紹介した手法による構内系ネットワーク統合の利
点は、真のマルチメディア環境となることによる、
新たな利用方法の創造・利便性の向上・コスト低減
などである。際限がないので例示は省略する。
6
ギ
ガ
ビ
ッ
ト
イ
ー
サ
ネ
ッ
ト
に
よ
る
構
内
系
ネ
ッ
ト
ワ
ー
ク
の
統
合
おわりに
ギガビットイーサネットによる構内系ネットワー
クの統合は、企業内のマルチメディア情報通信基盤
を経済的に構築できるので、魅力的な選択肢である。
しかし実績のないシステムは信頼性が問題となる。
ハードウェアは類似の製品から推測し必要により冗
長構成で対処可能であるが、ソフトウェアの信頼性
は、ある程度ふるいにかけたあとは、試験運用によ
る確認が必要である。
このため当社技術開発室では、ギガビットイーサ
ネットを設置した試験運用による、アプリケーショ
ンの提案・信頼性評価などを計画している。
61
YP62-66H3_だより後記3.3 99.11.16 5:39 PM ページ 62
技術開発室だより
技
術
開
発
室
だ
よ
り
7月1日付の組織改定により、FS研究所から技術
開発室に改め、これまでの内線・環境・情報通信に
関連する技術分野の研究開発に加え、技術開発の総
括部署として位置付け新たにスタートした。
技術企画グループ
技術開発室
実用化推進グループ
研究開発グループ
技術開発室は、FS研究所の研究開発を引き継ぐ
「研究開発グループ」に加え、技術開発の動向調査・
分析および総括管理を行う「技術企画グループ」、研
究開発した技術の実用化を推進すると共に、事業領
域の拡大に向けた調査・研究を行う「実用化推進グ
ループ」で構成され、室長はじめ29名(FS研究所
は25名)の要員となり充実・強化が図られた。
顧客のニーズの多様化により、部門固有の技術に
加えて、異分野の技術を併せ求められるようになっ
ている。そのため、技術開発室における当面の研究
領域は、以前から内線・環境・情報通信に関連する
技術分野を踏襲し実施するが、将来的には配電・電
力関連の技術を含めた体制づくりを進めたいと考え
ている。また、研究課題の設定に当たっては、将来
を展望しての長期的な課題と、現場で抱えている短
期的な技術課題とに区分し、戦略的な取り組みを行
うこととしている。
技術開発室は、技術開発の総括部署としての役割
を担い、各事業所の皆さんとより強く結び付いた環
境で、業務を推進することになります。一昨年より、
研究開発の成果や技術的課題への対応事例等の技術
移転と、現場で抱えている技術的課題の発掘を目的
に、第一線事業所を計画的に訪問し、「技術懇談会」
を通じ技術的な交流を進めてきたが、今後も継続し
て実施し、連携の強化を図りたいと考えています。
懇談会の場に限らず、随時ご意見・ご提言をお待ち
しています。
フィールド試験場の開設
技術開発室は、コンピュータを利用した診断シス
テム技術の開発や、シミュレーション技術、顧客設
備をフィールドとしての計測・評価等を中心に研究
開発を進めているが、技術的な諸問題の検証・解明
を行うための、スペースや設備が望まれていた。
今回、瀬戸営業所の新築・移転に伴い、旧営業所
の社屋と付属設備を「フィールド試験場」として、
太陽光発電に関する研究および省エネ型照明機器の
試験に着手した他、試験設備の導入等の環境整備を
進めている。
試験設備の導入と並行し、次に示す課題について
研究を推進する計画である。
* 低圧電路における波及障害防止の研究
* 高調波伝播の検証およびノイズ対策
* 接地・シールド技術の確立
* 省エネ機器に関する研究
なお、フィールド試験場は、現場で提起された技
術的な課題の解明に、有効に活用できるよう実務担
当部署へも開放する予定である。
米国におけるESCO事業の事情調査
ESCO事業は、我が国の産業、民生部門の省エ
ネルギーの推進に重要な役割を果たし得るニュービ
ジネスとして重要視され、研究会の開催や検証プロ
ジェクトを始めようとする等、事業の可能性を探る
具体的な活動が行われている。
当技術開発室では、将来の事業展開を視野に入れ、
研究会に参加すると共に、顧客のエネルギーの実態
を分析・評価等の調査研究を実施している。今回、
(財)省エネルギーセンター主催の「米国ESCO事
62
情視察団」に参加し、ESCO事業の仕組みや実践
の内容について関係機関からヒアリング調査を実施
することができたので、今後の研究活動や事業化の
検討に資することとしている。
(注)ESCO(Energy Service Company)とは、省エネの計
画立案から改修・管理までを手掛ける事業で、事務所ビル・公共建
物・工場等に省エネのための改修工事を実施し、エネルギー削減分か
らコストおよび投資分を回収する事業である。
大学の非常勤講師として研究員を派遣
FS研究所として発足当時から研究活動の一環とし
て、大学との共同研究や研究員を大学へ派遣する等、
大学との積極的な交流を図っている。一方、大学側
においても産学交流の一環として、大学教育に実業
界から人材を求める傾向にある。
研究活動を通じての人的な交流の積み重ねと、大
学のニーズ等の背景もあって、大学より当室への非
常勤講師の要請があり、下記のとおり4大学に3名の
室員を派遣している。
上原副室長は名古屋工業大学。今枝G長は愛知工業
大学および中部大学。箕輪研究副主査は大同工業大
学で講師として要望に応えた。
技
術
開
発
室
だ
よ
り
小型電力測定器の開発
電気・空調の設備診断とリニューアル提案を行う
ための「設備診断ツール」として、当社の設備診断
技術や計測技術等、現場サイドのノウハウを具現化
した電力測定器を、日置電機㈱と共同開発し、
「3168クランプオンパワーハイテスタ」の商品名で
社外販売を開始した。
本製品は
*分電盤内に収まるサイズ
*長時間連続での計測(200日以上)が可能
*電源が不要
*簡単な設定と容易なデータ取り込み(PCカー
ド)
*選べるクランプセンサー
(2種類のセンサーで5A∼500Aの電流レンジ)
*セット価格12万円の低価格
等の特徴を持っている。
Open PLANETを用いた電力遠隔監視システムの開発
ESCO事業では、お客さまの設備が最適に運転
されている状態を監視・制御する必要がある。その
ツールとして、当社で開発した小型電力測定器(T
E−2001)と、四国電力㈱および㈱四国総合研究
所 が ネ ッ ト ワ ー ク 技 術 と し て 開 発 し た Open
PLANETを用い、「電力遠隔監視システム」を開発
した。
今回開発したシステムを本店ビルに設置し、同ビ
ルの電力使用状態をFS研究所(現技術開発室)か
ら遠隔監視するシステムを構築し評価した。その結
果、システムの有効性と安定な動作が確認できた。
現状の問題点としては、
① データ通信に電力線搬送を用いているため、測
定器の設置場所に制約がある。
② 分電盤によっては測定器が内部に納まらない箇
所があり、さらなる小型化が必要である。
などがあるため、今後これらの問題点の解決を図り、
実用化を進める予定である。
電設工業展への出展
「’
99電設工業展」は、東京ビックサイトにおい
て5月25日∼28日の4日間の日程で開催された。当
社からは、当室で開発を行った電力利用の実態を計
測・解析する省エネ診断ツールとしての「小型電力
計測器」や「高調先生」・「才高調くん」、および照
度測定の省力化と精度の高い照度分布状況図の作成
を可能とした「SuperLX(自動照度分布測定シス
テム)」に加えて、電力本部地中線部が、電力ケーブ
ルの剥ぎ取り処理の均一化や作業の効率化・安全性
を狙い開発した、「充電式ケーブルハグラー」を出展
した。省エネに対する関心が高いことや、「充電式ケ
ーブルハグラー」の実演を行ったこともあり、多く
の見学者の注目を集め好評であった。
63
YP62-66H3_だより後記3.3 99.11.16 5:39 PM ページ 62
技術開発室だより
技
術
開
発
室
だ
よ
り
7月1日付の組織改定により、FS研究所から技術
開発室に改め、これまでの内線・環境・情報通信に
関連する技術分野の研究開発に加え、技術開発の総
括部署として位置付け新たにスタートした。
技術企画グループ
技術開発室
実用化推進グループ
研究開発グループ
技術開発室は、FS研究所の研究開発を引き継ぐ
「研究開発グループ」に加え、技術開発の動向調査・
分析および総括管理を行う「技術企画グループ」、研
究開発した技術の実用化を推進すると共に、事業領
域の拡大に向けた調査・研究を行う「実用化推進グ
ループ」で構成され、室長はじめ29名(FS研究所
は25名)の要員となり充実・強化が図られた。
顧客のニーズの多様化により、部門固有の技術に
加えて、異分野の技術を併せ求められるようになっ
ている。そのため、技術開発室における当面の研究
領域は、以前から内線・環境・情報通信に関連する
技術分野を踏襲し実施するが、将来的には配電・電
力関連の技術を含めた体制づくりを進めたいと考え
ている。また、研究課題の設定に当たっては、将来
を展望しての長期的な課題と、現場で抱えている短
期的な技術課題とに区分し、戦略的な取り組みを行
うこととしている。
技術開発室は、技術開発の総括部署としての役割
を担い、各事業所の皆さんとより強く結び付いた環
境で、業務を推進することになります。一昨年より、
研究開発の成果や技術的課題への対応事例等の技術
移転と、現場で抱えている技術的課題の発掘を目的
に、第一線事業所を計画的に訪問し、「技術懇談会」
を通じ技術的な交流を進めてきたが、今後も継続し
て実施し、連携の強化を図りたいと考えています。
懇談会の場に限らず、随時ご意見・ご提言をお待ち
しています。
フィールド試験場の開設
技術開発室は、コンピュータを利用した診断シス
テム技術の開発や、シミュレーション技術、顧客設
備をフィールドとしての計測・評価等を中心に研究
開発を進めているが、技術的な諸問題の検証・解明
を行うための、スペースや設備が望まれていた。
今回、瀬戸営業所の新築・移転に伴い、旧営業所
の社屋と付属設備を「フィールド試験場」として、
太陽光発電に関する研究および省エネ型照明機器の
試験に着手した他、試験設備の導入等の環境整備を
進めている。
試験設備の導入と並行し、次に示す課題について
研究を推進する計画である。
* 低圧電路における波及障害防止の研究
* 高調波伝播の検証およびノイズ対策
* 接地・シールド技術の確立
* 省エネ機器に関する研究
なお、フィールド試験場は、現場で提起された技
術的な課題の解明に、有効に活用できるよう実務担
当部署へも開放する予定である。
米国におけるESCO事業の事情調査
ESCO事業は、我が国の産業、民生部門の省エ
ネルギーの推進に重要な役割を果たし得るニュービ
ジネスとして重要視され、研究会の開催や検証プロ
ジェクトを始めようとする等、事業の可能性を探る
具体的な活動が行われている。
当技術開発室では、将来の事業展開を視野に入れ、
研究会に参加すると共に、顧客のエネルギーの実態
を分析・評価等の調査研究を実施している。今回、
(財)省エネルギーセンター主催の「米国ESCO事
62
情視察団」に参加し、ESCO事業の仕組みや実践
の内容について関係機関からヒアリング調査を実施
することができたので、今後の研究活動や事業化の
検討に資することとしている。
(注)ESCO(Energy Service Company)とは、省エネの計
画立案から改修・管理までを手掛ける事業で、事務所ビル・公共建
物・工場等に省エネのための改修工事を実施し、エネルギー削減分か
らコストおよび投資分を回収する事業である。
大学の非常勤講師として研究員を派遣
FS研究所として発足当時から研究活動の一環とし
て、大学との共同研究や研究員を大学へ派遣する等、
大学との積極的な交流を図っている。一方、大学側
においても産学交流の一環として、大学教育に実業
界から人材を求める傾向にある。
研究活動を通じての人的な交流の積み重ねと、大
学のニーズ等の背景もあって、大学より当室への非
常勤講師の要請があり、下記のとおり4大学に3名の
室員を派遣している。
上原副室長は名古屋工業大学。今枝G長は愛知工業
大学および中部大学。箕輪研究副主査は大同工業大
学で講師として要望に応えた。
技
術
開
発
室
だ
よ
り
小型電力測定器の開発
電気・空調の設備診断とリニューアル提案を行う
ための「設備診断ツール」として、当社の設備診断
技術や計測技術等、現場サイドのノウハウを具現化
した電力測定器を、日置電機㈱と共同開発し、
「3168クランプオンパワーハイテスタ」の商品名で
社外販売を開始した。
本製品は
*分電盤内に収まるサイズ
*長時間連続での計測(200日以上)が可能
*電源が不要
*簡単な設定と容易なデータ取り込み(PCカー
ド)
*選べるクランプセンサー
(2種類のセンサーで5A∼500Aの電流レンジ)
*セット価格12万円の低価格
等の特徴を持っている。
Open PLANETを用いた電力遠隔監視システムの開発
ESCO事業では、お客さまの設備が最適に運転
されている状態を監視・制御する必要がある。その
ツールとして、当社で開発した小型電力測定器(T
E−2001)と、四国電力㈱および㈱四国総合研究
所 が ネ ッ ト ワ ー ク 技 術 と し て 開 発 し た Open
PLANETを用い、「電力遠隔監視システム」を開発
した。
今回開発したシステムを本店ビルに設置し、同ビ
ルの電力使用状態をFS研究所(現技術開発室)か
ら遠隔監視するシステムを構築し評価した。その結
果、システムの有効性と安定な動作が確認できた。
現状の問題点としては、
① データ通信に電力線搬送を用いているため、測
定器の設置場所に制約がある。
② 分電盤によっては測定器が内部に納まらない箇
所があり、さらなる小型化が必要である。
などがあるため、今後これらの問題点の解決を図り、
実用化を進める予定である。
電設工業展への出展
「’
99電設工業展」は、東京ビックサイトにおい
て5月25日∼28日の4日間の日程で開催された。当
社からは、当室で開発を行った電力利用の実態を計
測・解析する省エネ診断ツールとしての「小型電力
計測器」や「高調先生」・「才高調くん」、および照
度測定の省力化と精度の高い照度分布状況図の作成
を可能とした「SuperLX(自動照度分布測定シス
テム)」に加えて、電力本部地中線部が、電力ケーブ
ルの剥ぎ取り処理の均一化や作業の効率化・安全性
を狙い開発した、「充電式ケーブルハグラー」を出展
した。省エネに対する関心が高いことや、「充電式ケ
ーブルハグラー」の実演を行ったこともあり、多く
の見学者の注目を集め好評であった。
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学会等での研究発表・投稿一覧表
学
会
等
で
の
研
究
発
表
・
投
稿
一
覧
表
件 名
既存蓄熱システムの診断に関する研究
1
〈その5〉
発表者(執筆者)または関係者
中井一夫
技術開発室
大二加代子・北野博亮
三重大学
ファジィアブダクションを用いたエキスパートシステム 寺島貴根・相良和伸
〃
発表機関・掲載誌
件 名
発表者(執筆者)または関係者
発表機関・掲載誌
水蓄熱システムの診断と改善検討シミュレーションに
中井一夫・今枝一旗
技術開発室
関する研究
大二加代子・北野博亮
三重大学
寺島貴根・相良和伸
〃
EVALUATION AND SIMULATION OF COST
中井一夫
技術開発室
SAVING OPERATION FOR THERMAL
祝京子
中部電力
Simulation ’99
STORAGE HVAC SYSTEM
北野博亮・相良和伸
三重大学
1999.9
キャンパスにおける電力需要特性とDSM適用による
上原正和・近藤俊作
技術開発室
ピークカットの効果に関する研究
鈴木 均・柴山直幹
中部電力
講演論文集
松井信行・中村光一
名古屋工業大学
1999.3
竹下隆晴・鵜飼裕之
〃
伊藤公一・三辻重賢
技術開発室
日本建築学会
東海支部研究報告集
13
1999.2
空気調和・衛生工学会
学術講演会講演論文集
1999.9
の適用性
技術開発室
平成10年度ロケット誘雷実験における鉄塔近傍の大 箕輪昌幸・三辻重賢
2
地電位差測定
石川高専
櫻野仁志
平成11年電気学会全国大会
14
講演論文集
Proceedings of Building
1999.3
技術開発室
電力用直列リアクトルの高調波障害抑制とリサージュ 上原正和・中村俊弘
解析
3
小林 浩
〃
阿部 守・川田昌武
名古屋工業大学
中村光一
〃
南 昌利
中部電力
平成11年電気学会全国大会
15
低圧電路における対地静電容量の測定
16
4
5
リアルタイムスペクトル解析によるデジタルアクティブ
上原正和・小林 浩
技術開発室
フィルタ
西垣定晃・宅野順美
名古屋工業大学
川田昌武・中村光一
〃
青木 睦
技術開発室
松井 洋・常広 譲
名古屋工業大学
長野市を中心とした戸建住宅の居住環境データベー
河路友也
技術開発室
スの活用
長谷川謙一・黒柳博晃
信州大学
誘導機を併用した配電線の不平衡電圧抑制装置
〃
―断熱気密住宅におけるエネルギー消費量の実態― 山下恭弘
吉竹秋宣
蓄熱式空調システムの熱源運転評価に関する研究
7
講演論文集
1999.3
環状地線の効果に関する一実験
17
for Suppression the Triggered Lightning from
Power Transmission
日本建築学会計画系論文集
石川高専
平成11年度(第17回)
電気設備学会全国大会講演論文集
1999.9
箕輪昌幸・三辻重賢
技術開発室
18
平成11年度(第17回)
電気設備学会全国大会講演論文集
1999.9
第521号
1999.7
電力用直列リアクトルの高調波障害抑制
上原正和・中村俊弘
技術開発室
小林浩
〃
阿部 守・川田昌武
名古屋工業大学
中村光一
〃
ハーモスライサによる直列リアクトルの高調波障害抑
上原正和・中村俊弘
技術開発室
制
阿部 守・川田昌武
名古屋工業大学
中村光一
〃
上原正和・小林 浩
技術開発室
西垣定晃・鵜飼裕之
名古屋工業大学
中村光一
〃
19
技術開発室
祝 京子
中部電力
No.74
北野博亮・相良和伸
三重大学
1999.7
空気調和・衛生工学会論文集
20
International Conference
電気設備学会全国大会
H11.9
電気学会電力技術研究会
H11.9
on Electrical Engineering
Toshio Takeuti
’98
(Aichi Sangyo Univ.)
8
技術開発室
櫻野仁志
電気設備学会誌
中井一夫
(Toenec co.(工務部))
箕輪昌幸・三辻重賢
H11.6(第19巻第6号)
県立新潟女子短期大学
Computer Simulations on Effect of Ground Wires Hitoshi Amano
平成11年度(第17回)
1999.9
平成11年電気学会全国大会
(株)朝日工業社
山岸明浩
1999.9
電気設備学会全国大会講演論文集
雷サージ被害原因に関する簡易実験
6
平成11年度(第17回)
電気設備学会全国大会講演論文集
学
会
等
で
の
研
究
発
表
・
投
稿
一
覧
表
1998.7
Shoshi Inoue, Takaaki Hashimoto
GPSを用いた高調波多点同時計測
21
電気学会電力技術研究会
H11.9
(Aichi College of Technology)
Yukio Katsuragi
(Chubu Electric Power Co.)
9
10
中部地方における地下帯水層の概況及び熱的利用
殷 耀晨
技術開発室
の可能性
岩田宜己・杉山 武
中部電力
宋 徳君
基礎地盤コンサルタンツ
連結完全混合槽型蓄熱槽システムシミュレーション
河路友也・今枝一旗
技術開発室
Windows版について
中原信生
環境システック中原研究処
日本建築学会
学術講演梗概集
1999.9
空気調和・衛生工学会
学術講演会講演論文集
1999.9
11
完全混合式蓄熱槽への多槽連結温度成層化技術
中井一夫
技術開発室
適用に関する研究 〈その2〉1年間の運転実績
岩田宜己・杉山 武
中部電力
学術講演会講演論文集
北野博亮・相良和伸
三重大学
1999.9
中井一夫
技術開発室
大二加代子・北野博亮
三重大学
相良和伸
〃
蓄熱式空調システムにおける流量推定に関する研究
12
64
空気調和・衛生工学会
日本建築学会
学術講演梗概集
1999.9
65
YP62-66H3_だより後記3.3 99.11.16 5:39 PM ページ 64
学会等での研究発表・投稿一覧表
学
会
等
で
の
研
究
発
表
・
投
稿
一
覧
表
件 名
既存蓄熱システムの診断に関する研究
1
〈その5〉
発表者(執筆者)または関係者
中井一夫
技術開発室
大二加代子・北野博亮
三重大学
ファジィアブダクションを用いたエキスパートシステム 寺島貴根・相良和伸
〃
発表機関・掲載誌
件 名
発表者(執筆者)または関係者
発表機関・掲載誌
水蓄熱システムの診断と改善検討シミュレーションに
中井一夫・今枝一旗
技術開発室
関する研究
大二加代子・北野博亮
三重大学
寺島貴根・相良和伸
〃
EVALUATION AND SIMULATION OF COST
中井一夫
技術開発室
SAVING OPERATION FOR THERMAL
祝京子
中部電力
Simulation ’99
STORAGE HVAC SYSTEM
北野博亮・相良和伸
三重大学
1999.9
キャンパスにおける電力需要特性とDSM適用による
上原正和・近藤俊作
技術開発室
ピークカットの効果に関する研究
鈴木 均・柴山直幹
中部電力
講演論文集
松井信行・中村光一
名古屋工業大学
1999.3
竹下隆晴・鵜飼裕之
〃
伊藤公一・三辻重賢
技術開発室
日本建築学会
東海支部研究報告集
13
1999.2
空気調和・衛生工学会
学術講演会講演論文集
1999.9
の適用性
技術開発室
平成10年度ロケット誘雷実験における鉄塔近傍の大 箕輪昌幸・三辻重賢
2
地電位差測定
石川高専
櫻野仁志
平成11年電気学会全国大会
14
講演論文集
Proceedings of Building
1999.3
技術開発室
電力用直列リアクトルの高調波障害抑制とリサージュ 上原正和・中村俊弘
解析
3
小林 浩
〃
阿部 守・川田昌武
名古屋工業大学
中村光一
〃
南 昌利
中部電力
平成11年電気学会全国大会
15
低圧電路における対地静電容量の測定
16
4
5
リアルタイムスペクトル解析によるデジタルアクティブ
上原正和・小林 浩
技術開発室
フィルタ
西垣定晃・宅野順美
名古屋工業大学
川田昌武・中村光一
〃
青木 睦
技術開発室
松井 洋・常広 譲
名古屋工業大学
長野市を中心とした戸建住宅の居住環境データベー
河路友也
技術開発室
スの活用
長谷川謙一・黒柳博晃
信州大学
誘導機を併用した配電線の不平衡電圧抑制装置
〃
―断熱気密住宅におけるエネルギー消費量の実態― 山下恭弘
吉竹秋宣
蓄熱式空調システムの熱源運転評価に関する研究
7
講演論文集
1999.3
環状地線の効果に関する一実験
17
for Suppression the Triggered Lightning from
Power Transmission
日本建築学会計画系論文集
石川高専
平成11年度(第17回)
電気設備学会全国大会講演論文集
1999.9
箕輪昌幸・三辻重賢
技術開発室
18
平成11年度(第17回)
電気設備学会全国大会講演論文集
1999.9
第521号
1999.7
電力用直列リアクトルの高調波障害抑制
上原正和・中村俊弘
技術開発室
小林浩
〃
阿部 守・川田昌武
名古屋工業大学
中村光一
〃
ハーモスライサによる直列リアクトルの高調波障害抑
上原正和・中村俊弘
技術開発室
制
阿部 守・川田昌武
名古屋工業大学
中村光一
〃
上原正和・小林 浩
技術開発室
西垣定晃・鵜飼裕之
名古屋工業大学
中村光一
〃
19
技術開発室
祝 京子
中部電力
No.74
北野博亮・相良和伸
三重大学
1999.7
空気調和・衛生工学会論文集
20
International Conference
電気設備学会全国大会
H11.9
電気学会電力技術研究会
H11.9
on Electrical Engineering
Toshio Takeuti
’98
(Aichi Sangyo Univ.)
8
技術開発室
櫻野仁志
電気設備学会誌
中井一夫
(Toenec co.(工務部))
箕輪昌幸・三辻重賢
H11.6(第19巻第6号)
県立新潟女子短期大学
Computer Simulations on Effect of Ground Wires Hitoshi Amano
平成11年度(第17回)
1999.9
平成11年電気学会全国大会
(株)朝日工業社
山岸明浩
1999.9
電気設備学会全国大会講演論文集
雷サージ被害原因に関する簡易実験
6
平成11年度(第17回)
電気設備学会全国大会講演論文集
学
会
等
で
の
研
究
発
表
・
投
稿
一
覧
表
1998.7
Shoshi Inoue, Takaaki Hashimoto
GPSを用いた高調波多点同時計測
21
電気学会電力技術研究会
H11.9
(Aichi College of Technology)
Yukio Katsuragi
(Chubu Electric Power Co.)
9
10
中部地方における地下帯水層の概況及び熱的利用
殷 耀晨
技術開発室
の可能性
岩田宜己・杉山 武
中部電力
宋 徳君
基礎地盤コンサルタンツ
連結完全混合槽型蓄熱槽システムシミュレーション
河路友也・今枝一旗
技術開発室
Windows版について
中原信生
環境システック中原研究処
日本建築学会
学術講演梗概集
1999.9
空気調和・衛生工学会
学術講演会講演論文集
1999.9
11
完全混合式蓄熱槽への多槽連結温度成層化技術
中井一夫
技術開発室
適用に関する研究 〈その2〉1年間の運転実績
岩田宜己・杉山 武
中部電力
学術講演会講演論文集
北野博亮・相良和伸
三重大学
1999.9
中井一夫
技術開発室
大二加代子・北野博亮
三重大学
相良和伸
〃
蓄熱式空調システムにおける流量推定に関する研究
12
64
空気調和・衛生工学会
日本建築学会
学術講演梗概集
1999.9
65
YP62-66H3_だより後記3.3 99.11.16 5:39 PM ページ 66
写真撮影 : 大石 薫
■編集後記
7月1日付で、FS研究所から技術開発室へ組織変更となり、TDレポートの編集事務局も技術企画グループに変
った。TDレポートの編集は、新しい編集メンバーで引き継いだが、5月の各部門への掲載照会にはじまり、10月
末の発刊を目標として準備が進められていることもあり、前号までの内容を踏襲した編集内容となっている。
TDレポートは、各部門相互間の情報交換の一方策として、1986年に創刊号を発刊し今号で15号の継続刊行と
なり、創刊時の狙いであった個人のノウハウを会社全体のノウハウに拡げ、技術の共有化の一助となっているもの
と考えている。
編集事務局では、技術情報誌としてより一層内容の充実と親しみやすい誌面にしたいと思いますので、ご意見を
お待ちしています。
最後に、15号の発刊にあたって、執筆いただいた方々にお礼を申し上げます。
TDレポート第15号
平成11年10月発行
〒457-0819 名古屋市南区滝春町1-79
●編集/株式会社トーエネック 技術開発室●
TDレポート編集委員会
TEL(052)619-1707
FAX(052)619-1705
66
YP62-66H3_だより後記3.3 99.11.16 5:39 PM ページ 66
写真撮影 : 大石 薫
■編集後記
7月1日付で、FS研究所から技術開発室へ組織変更となり、TDレポートの編集事務局も技術企画グループに変
った。TDレポートの編集は、新しい編集メンバーで引き継いだが、5月の各部門への掲載照会にはじまり、10月
末の発刊を目標として準備が進められていることもあり、前号までの内容を踏襲した編集内容となっている。
TDレポートは、各部門相互間の情報交換の一方策として、1986年に創刊号を発刊し今号で15号の継続刊行と
なり、創刊時の狙いであった個人のノウハウを会社全体のノウハウに拡げ、技術の共有化の一助となっているもの
と考えている。
編集事務局では、技術情報誌としてより一層内容の充実と親しみやすい誌面にしたいと思いますので、ご意見を
お待ちしています。
最後に、15号の発刊にあたって、執筆いただいた方々にお礼を申し上げます。
TDレポート第15号
平成11年10月発行
〒457-0819 名古屋市南区滝春町1-79
●編集/株式会社トーエネック 技術開発室●
TDレポート編集委員会
TEL(052)619-1707
FAX(052)619-1705
66
YH1-P9_タイトル∼フォトグラフ3.3 99.11.16 5:28 PM ページ H4
TDレポート
Technology Development Report
1999.10(第15号)
名古屋市中区栄1丁目20番31号
TEL(052)221-1111
印刷 サンメッセ株式会社