横紋筋肉腫 - 日本小児血液・がん学会

7章
横紋筋肉腫
診療ガイドライン
はじめに
横紋筋肉腫(rhabdomyosarcoma:RMS)は未分化間葉系細胞から発生する悪性
腫瘍で,軟部肉腫中最も頻度が高く,わが国では小児悪性腫瘍中第 7 位で全体の約
2.9 %,年間 90 例前後の発症があると推定される。横紋筋肉腫の発症年齢としては全
体の 2/3 が 6 歳以下であり,乳児期,5〜7 歳頃および 10 歳代に発生ピークがあ
る。性比は男:女= 1.4:1.0 とやや男児に多い。小児の横紋筋肉腫は全身のどこか
らでも発症し得る腫瘍で,一部には骨からは発生しないとの記載もみられるが 1),膀胱
などの平滑筋しか存在しない器官,すなわち,横紋筋組織が存在しない部位からも発生
することは広く知られている。
横紋筋肉腫の初発症状はこのような多様な原発部位と相まって,極めて多彩である。
米国で始まった Intergroup Rhabdomyosarcoma Study(IRS),現在は Children’
s Oncology Group(COG)の Soft Tissue Sarcoma Comittee(STS)による病
期分類(術前ステージ分類,術後グループ分類)は,やや煩雑であるが小児横紋筋肉腫
では極めて実用度が高い。横紋筋肉腫の病理分類については多数の亜型が報告されてい
るが,Newton らの IRS による国際分類が最も標準的である2)。
【参考文献】
1) Hayes-Jordan A, Andrassy R. Rhabdomyosarcoma in children. Current Opinion Pediatr
2009; 21: 373-8.
2) Newton WA Jr, Gehan EA, Webber BL, et al. Classification of rhabdomyosarcomas and
related sarcomas. pathologic aspects and proposal for a new classification ─ an Intergroup Rhabdomyosarcoma Study. Cancer 1995; 76: 1073-85.
7
横紋筋肉腫
Ⅰ
診療アルゴリズム
症状,身体所見,X 線写真,血算,
CT,MRI,肝機能,腎機能,超音波
CQ 1, 2, 15
骨髄穿刺,必要があれば髄液検査
術前ステージ分類
CQ 3, 4, 5, 6
腫瘍切除 or 生検
病理診断(施設と中央病理診断,遺伝子検査)
緊急照射
CQ 7, 8, 9, 10, 11, 12,
13, 15, 17
術後グループ分類
I
II
III
IV
全 摘
肉眼的に全摘
リンパ節転移
なし / あり
a. 生検
b. 亜全摘/50%以上
の部分切除
a. 遠隔転移
b. 髄液/胸水/腹水中に腫瘍細
胞あり
c. 胸膜播種/腹膜(大網)播種
化学療法,放射線治療±
CQ 14, 16, 17, 19
待機手術,二期的手術
治療合併症,晩期障害
CQ 18, 24, 25
大量化学療法
CQ 20
再 発
CQ 21, 22, 23
256
7
横紋筋肉腫
Ⅱ
診断
クリニカルクエスチョン一覧
CQ 1  横 紋筋肉腫の診断には,疾患に精通した小児腫瘍医,病理医,放射線診
断医の協力による集学的診断が必要か?
CQ 2  先天性遺伝子異常症と横紋筋肉腫発生の関係は?
CQ 3  どのような病期分類が用いられるか?
CQ 4  横紋筋肉腫の予後因子は?
CQ 5  病期診断のために必要な検査は?
CQ 6  PET は転移巣や腫瘍生存(viability)の診断に有用か?
治療
CQ 7  生検と一期的手術の適応は?
CQ 8  傍精巣腫瘍の病期決定用同側後腹膜リンパ節郭清(SIRPLND)は再発を
減少させるか?
CQ 9  リンパ節郭清の範囲,方法と意義は?
CQ 10 化学療法前腫瘍再切除(pretreatment reexcision:PRE)の適応は?
CQ 11 頭頸部原発腫瘍に対する手術方針はどのようなものか?
CQ 12 四肢原発腫瘍に対する手術方針は?
CQ 13 膀胱・前立腺原発腫瘍に対する切除方針は?
CQ 14 放射線治療の至適開始時期,基本方針は?
CQ 15 頭頸部,眼窩,傍髄膜原発腫瘍に対する緊急照射の適応は?
CQ 16 強度変調放射線治療,陽子線治療の適応は?
CQ 17 標準的化学療法にはどのようなものがあるか?
CQ 18 肝静脈閉塞症の診断基準にはどのようなものがあるか?
CQ 19 遠隔転移巣に対する局所治療の方針は?
横紋筋肉腫
7
CQ 20 自家造血幹細胞移植併用大量化学療法は有効か?
CQ 21 再発後治療の化学療法レジメンにはどのようなものがあるか?
CQ 22 再発腫瘍に対する局所治療の役割は?
CQ 23 有効な分子標的治療は?
CQ 24 標準治療による晩期合併症は?
CQ 25 治療による二次がんのリスクは?
257
7
横紋筋肉腫
Ⅲ
推 奨
CQ 1
横紋筋肉腫の診断には,疾患に精通した小児腫瘍医,病理医,放
射線診断医の協力による集学的診断が必要か?
推奨
グレード
A
横紋筋肉腫の診断には集学的診断が必要である。
(エビデンスレベル Ⅰ)
背景・目的
横紋筋肉腫の診断には,主に軟部組織から発生する当初は比較的軟らかい腫瘤で進行
性に増大し,次第に硬さを増す腫瘤の中に横紋筋肉腫があることを認識することが必要
である。疾患に精通した小児腫瘍医,病理医,放射線診断医の協力による集学的診断が
必要である。腫瘤の発生部位に対応した熟練の小児外科医,耳鼻咽喉科医,頭頸部外科
医,整形外科医,泌尿器科医,眼科医などとの協力が,腫瘍切除あるいは診断のための
腫瘍生検に必要である1)。
解 説
横紋筋肉腫は頭頸部から躯幹,四肢まで全身のあらゆる部位から発生する可能性をも
つ軟部腫瘍である。腫瘍の進展速度も当初は比較的緩徐であるが,経過とともに急速に
増大する場合が多い。病理診断は特に胞巣型横紋筋肉腫で認められる (
t 2;13)
(q35;
q14) お よ び (1
t ;13)
(p36;q14) の 転 座 に よ る キ メ ラ 遺 伝 子 PAX3-FKHR(最 近 は
PAX3-FOXO1 ともいわれる)および PAX7-FKHR(PAX7-FOXO1)による遺伝子
診断 2, 3)を含めた専門性の高い小児腫瘍病理診断が必要で,中央診断が推奨される疾患
の一つである。
検索式・参考にした二次資料
UpToDate ver19.2 および PubMed で rhabdomyosarcoma,diagnosis を検索し重要
と思われる文献を参考とした。
参考文献
1) Paulino AC, Okcu MF. Rhabdomyosarcoma. Curr Probl Cancer 2008; 32: 7-34.(エビデンス
レベル Ⅵ)
2) Davicioni E, Anderson MJ, Finckenstein FG, et al. Molecular classification of rhabdomyosarcoma ─ genotypic and phenotypic determinants of diagnosis: a report from the Children’s
Oncology Group. Am J Pathol 2009; 174: 550-64.(エビデンスレベル Ⅳb)
3) Sorensen PH, Lynch JC, Qualman SJ, et al. PAX3-FKHR and PAX7-FKHR gene fusions are
prognostic indicators in alveolar rhabdomyosarcoma: a report from the children’s oncology
group. J Clin Oncol 2002; 20: 2672-9.(エビデンスレベル Ⅳb)
258
CQ 2
先天性遺伝子異常症と横紋筋肉腫発生の関係は?
C
推奨
グレード
横紋筋肉腫を発生しやすい先天性遺伝子異常症としては NF 1,LiFraumeni 症候群などいくつかの疾患がある。
(エビデンスレベル Ⅳa)
背景・目的および解説
1)神経線維腫症(neurofibromatosis 1:NF1)
NF 1 が広く知られている。NF 1 での悪性腫瘍発生に関与する遺伝子としては RAS,
MAPK,mTOR,PAK1 が関与するとされる1)。NF 1 では視神経膠腫が最も多く 6 歳
以下で 15 %といわれるが,その他にも神経線維腫,神経線維腫が悪性転化した悪性末
梢神経鞘腫(malignat peripheral nerve sheath tumor:MPNST),GIST などの腫瘍,
そして,Triton 腫瘍(横紋筋肉腫+MPNST),横紋筋肉腫などが発生する。NF 1 での
横紋筋肉腫は発症年齢が低く,泌尿器尿路系に発生する胎児型が多い2)。特に NF 1 の
場合,抗がん剤の減量などの必要性は報告されていない3)。
2)Constitutional mismatch repair-deficiency syndrome(CMMR-D)
体細胞性 DNA ミスマッチ修復遺伝子異常症候群における横紋筋肉腫の発症報告が増
加している。この中には前述の NF 1 も含まれ DNA ミスマッチ修復遺伝子である
MLH1,MSH2,MSH6 や PMS2 のいずれかの遺伝子で両方のアレルに異常がある場
合,横紋筋肉腫あるいは,白血病や脳腫瘍,神経芽腫,Wilms 腫瘍,卵巣原発神経外
胚葉性腫瘍,乳児筋線維腫症などが低年齢から発症する。横紋筋肉腫の頻度などは不明
である4)。なお,成人では Lynch 症候群が知られ家族性大腸直腸癌(I 型)あるいは卵
3)Li-Fraumeni 症候群
広く知られた家族性腫瘍で,第 17 番染色体短腕上(17p13.1)に存在するがん抑制遺
伝子の p53 の変異による常染色体優性遺伝性腫瘍症候群で肉腫,白血病,脳腫瘍,副
腎癌,乳癌などを発症する。約 50 %の本症患者が Tp53 遺伝子変異を有している。
p53 は p63,p73 などと関連し筋芽細胞の分化に関連し,この変異が横紋筋肉腫の発症
表 1 ゲノムの Tp53 変異スクリーニングのための 2009 Chompret の基準 6, 7)
基 準
I
発端者に Li-Fraumeni 症候群(LFS)に属する 1 つの腫瘍(肉腫,骨肉腫,脳腫瘍,閉経
前の乳癌,副腎皮質癌,白血病,気管支肺胞癌)が 46 歳以前にあり,かつ,少なくとも 1
名以上の一親等ないし二親等の者が LFS に含まれる腫瘍があるか多発癌がみられる。ただ
し発端者が乳癌の場合,乳癌は除く。あるいは
II
発端者が乳癌を除く多発がんでそのうち,2 つ LFS 関連癌であり,最初に発症した癌が 46
歳以前である。あるいは
III
家族歴の如何を問わず,患者が副腎皮質癌,あるいは脈絡叢癌
259
7
横紋筋肉腫
巣など女性性器癌,または消化器癌を伴う家族性大腸癌(II 型)が発生する。
に関連するとされている。表 1 の Li-Fraumeni 症候群の診断基準に合致する患者の場
合には本症を疑う5)。
検索式・参考にした資料
PubMed で rhabdomyosarcoma,genetics,review で 検 索 し, こ れ ら の 中 か ら 本
テーマに該当する記載のある文献を選択した。また,UpToDate ver19.2 の rhabdomyosarcoma の項も参考とした。
参考文献
1) Brems H, Beert E, de Ravel T, et al. Mechanisms in the pathogenesis of malignant tumours
2) Ferrari A, Bisogno G, Macaluso A, et al. Soft-tissue sarcomas in children and adolescents
in neurofibromatosis type 1. Lancet Oncol 2009; 10: 508-15.(エビデンスレベル Ⅳb)
with neurofibromatosis type 1. Cancer 2007; 109: 1406-12.(エビデンスレベル Ⅴ)
3) Okcu MF, Hicks J, Horowitz M. Rhabdomyosarcoma and undifferentiated sarcoma in childhood and adolescence: treatment. in UpToDate. June, 11, 2009.(エビデンスレベル Ⅳa)
4) Kratz CP, Holter S, Etzler J, et al. Rhabdomyosarcoma in patients with constitutional mis-
5) Cam H, Griesmann H, Beitzinger M, et al. p53 family members in myogenic differentiation
6) Schneider K, Garber J. Li-Fraumeni Syndrome. In: Pagon RA, Bird TC, Dolan CR, Stephens
match-repair-deficiency syndrome. J Med Genet 2009; 46: 418-20.(エビデンスレベル Ⅴ)
and rhabdomyosarcoma development. Cancer Cell 2006; 10: 281-93.(エビデンスレベル Ⅴ)
K, eds. GeneReviews[Internet]
. Seattle(WA):University of Washington, Seattle; 1993-1999
Jan 19[updated 2010 Feb 09]
.(エビデンスレベル Ⅳ)
7) Tinat J, Bougeard G, Baert-Desurmont S, et al. 2009 Version of the Chompret criteria for Li
Fraumeni syndrome. J Clin Oncol 2009; 27: 1-2.(エビデンスレベル Ⅲ)
260
CQ 3
どのような病期分類が用いられるか?
推奨
グレード
A
IRS による術前ステージ分類がわが国では汎用されている。
(エビデンスレベル Ⅲ)
背景・目的
IRS や SIOP などの横紋筋肉腫治療研究グループでは多施設共同研究のためリスクグ
ループ分類を作成し,治療プロトコールに使用されている。横紋筋肉腫で汎用されてい
る病期分類としては IRS で採用された術前ステージ分類,すなわち,X 線写真,CT,
MRI などの画像検査によって得られた術前情報による分類が汎用されている。基本的
には外科領域で使用されている TNM 分類である。
解 説
横紋筋肉腫で汎用されている病期分類としては IRS で採用された術前ステージ分類
(表 1)
,すなわち,X 線写真,CT,MRI などの画像検査によって得られた術前情報,
および,腫瘍の原発部位,腫瘍径やリンパ節転移の有無により分類されるステージ分類
が汎用されている1-3)。SIOP による分類法も基本的には TNM 分類である。IRS の術前
ステージ分類を表 1 に示す。表 2 は IRS の術後グループ分類である。
表 1 IRS の術前ステージ分類
ステージ
1
原発部位
T1/T2
腫瘍径
a/b
リンパ節
遠隔転移
N0/N1/Nx
なし(M0)
7
2
膀胱 / 前立腺,四肢,傍髄膜, T1/T2
その他(後腹膜,躯幹など含)
a
N0/Nx
なし(M0)
3
同上
T1/T2
a
b
N1
N0/N1/Nx
なし(M0)
なし(M0)
4
すべて
T1/T2
a/b
N0/N1
あり(M1)
注)T 腫瘍/T1:原発部位に限局,T2:原発巣の周囲組織に浸潤
腫瘍径/a<5 cm,b>5 cm
N リンパ節/N0:臨床的に浸潤なし,N1:臨床的に浸潤あり,Nx:臨床的に浸潤不明
M 遠隔転移/M0:遠隔転移なし,M1:遠隔転移あり
表 2 IRS の術後グループ分類
I
局所限局性腫瘍,完全切除
II
顕微鏡的腫瘍残存,肉眼的には全摘,所属リンパ節転移なし/あり,微小残存+/−
III
a.生検のみ,b.亜全摘/50 %以上の部分切除
IV
a.遠隔転移,b.髄液/胸水/腹水中に腫瘍細胞あり,c.胸膜播種/腹膜(大網)
播種
261
横紋筋肉腫
眼窩,頭頸部
(傍髄膜を除く)
泌尿生殖器系
(膀胱・前立腺を除く)
腫 瘍
検索式・参考にした二次資料
PubMed で rhabdomyosarcoma,stage,review で検索し,これらの中から本テーマ
に該当する記載のある文献を選択した。また,UpToDate ver19.2 の rhabdomyosarcoma の項も参考とした。
参考文献
1) Lawrence W Jr, Anderson JR, Gehan EA, et al. Pretreatment TNM staging of childhood
rhabdomyosarcoma: a report of the Intergroup Rhabdomyosarcoma Study Group. Children’s
Cancer Study Group. Pediatric Oncology Group. Cancer 1997; 80: 1165-70.(エビデンスレベ
ル Ⅲ)
2) Spunt SL, Anderson JR, Teot LA, et al. Intergroup Rhabdomyosarcoma Study Group. Routine brain imaging is unwarranted in asymptomatic patients with rhabdomyosarcoma arising outside of the head and neck region that is metastatic at diagnosis: a report from the Intergroup Rhabdomyosarcoma Study Group. Cancer 2001; 92: 121-5.(エビデンスレベル Ⅲ)
262
CQ 4
横紋筋肉腫の予後因子は?
B
推奨
グレード
横紋筋肉腫には初診時年齢,原発部位,病期,組織型,融合遺伝子
など多数の因子がある。
(エビデンスレベル Ⅳ)
背景・目的
IRS や SIOP からの報告で多数の予後に関連した因子が報告されている。
解 説
表 1 に挙げた予後因子などが報告1-4)されているが,報告により項目ごとの重みは若
干異なる。研究の手法なども各々異なるため相互にリスクを比較し得るものではない。
表 1 研究報告からの予後因子
因子分類
予後良好
予後不良
1 歳以上,10 歳未満
1 歳未満,10 歳以上
眼窩,傍髄膜を除く頭頸部
泌尿生殖器(膀胱・前立腺を除く),胆道
傍髄膜,膀胱・前立腺,四肢など
腫瘍直径
5 cm 未満
5 cm 以上
切除の可否
完全切除
腫瘍残存
遠隔転移なし
遠隔転移+
2 個未満で切除可能
2 個以上で切除不能
骨,骨髄転移
な し
あ り
CPK や LDH の著しい高値
な し
あ り
病理組織型
胎児型(含ブドウ肉腫など)
胞巣型,未分化肉腫
遺伝子異常
な し
融合遺伝子あり
遺伝子異常(PAX 遺伝子間
での比較)
PAX7-FKHR
PAX3-FKHR(FOXO1)
治療開始後 100 日未満の増
悪
な し
あ り
規定通りに照射されている
規定の照射なし,規定違反
初発年齢
腫瘍因子
腫瘍原発部位
遠隔転移(ステージ 4)
遠隔転移肺
横紋筋肉腫
放射線治療
7
CPK:クレアチンホスフォキナーゼ,LDH:乳酸脱水素酵素
検索式・参考にした二次資料
UpToDate ver19.2 および PubMed で rhabdomyosarcoma, prognosis, risk factor を
検索し,重要と思われる文献を参考とした。
参考文献
1) Ferrari A, Miceli R, Meazza C, et al. Comparison of the prognostic value of assessing tumor
diameter versus tumor volume at diagnosis or in response to initial chemotherapy in rhab-
263
domyosarcoma. J Clin Oncol 2010; 28: 1322-8.(エビデンスレベル Ⅳb)
2) Oberlin O, Rey A, Lyden E, et al. Prognostic factors in metastatic rhabdomyosarcomas: results of a pooled analysis from United States and European cooperative groups. J Clin Oncol
2008; 26: 2384-9.(エビデンスレベル Ⅰ)
3) Blakely ML, Andrassy RJ, Raney RB, et al. Intergroup Rhabdomyosarcoma Studies I
through IV. Prognostic factors and surgical treatment guidelines for children with rhabdomyosarcoma of the perineum or anus: a report of Intergroup Rhabdomyosarcoma Studies I
through IV, 1972 through 1997. J Pediatr Surg 2003; 38: 347-53.(エビデンスレベル Ⅳ)
4) Meza JL, Anderson J, Pappo AS, et al. Children’s Oncology Group. Analysis of prognostic
factors in patients with nonmetastatic rhabdomyosarcoma treated on intergroup rhabdomyosarcoma studies III and IV: the Children’s Oncology Group. J Clin Oncol 2006; 24: 384451.(エビデンスレベル Ⅰ)
264
CQ 5
病期診断のために必要な検査は?
推奨
グレード
A
各種画像検査,骨髄検査を行い,さらに必要に応じてリンパ節生検
などを行う。
(エビデンスレベル Ⅳ)
背景・目的
横紋筋肉腫の病期診断は必ずしも容易ではない場合もあるが,各種画像検査を併用し
最終的にはリンパ節生検なども行い病期を決定する1-3)。
解 説
胸部・腹部の単純 X 線写真,CT,MRI,可能であれば PET などの画像検査により
腫瘍の進展を検索する。骨転移の検索は 99mTc シンチグラフィーが推奨される。ガリウ
ムによる腫瘍シンチグラフィーは医療被曝が多く推奨されない。10 歳以上の傍精巣の
腫瘍(paratesticular tumor)では CT などによる画像検査でリンパ節転移を後腹膜ま
でみる。骨髄穿刺も行うべきである。画像上頭蓋内進展を認めず脳神経症状がなければ
傍髄膜腫瘍の場合においても脳脊髄液細胞診は行わなくてもよい。
【注】傍髄膜とは,中耳,鼻腔,鼻咽喉,副鼻腔,側頭中頭蓋窩下,翼突口蓋,傍咽
頭の部位を指す。
検索式・参考にした二次資料
UpToDate ver19.2 および日本横紋筋肉腫研究グループ外科ガイドライン,PubMed
で rhabdomyosacoma,imaging に関連する代表的な文献を引用した。
参考文献
1) Okcu MF, Hicks J, Horowitz M. Rhabdomyosarcoma and undifferentiated sarcoma in child18.2 June, 11, 2009.(エビデンスレベル Ⅳb)
2) 外科治療ガイドライン委員会.日本横紋筋肉腫研究グループ外科治療ガイドライン.April,
3) Kumar R, Shandal V, Shamim SA, et al. Clinical applications of PET and PET/CT in pediat-
15, 2004.(エビデンスレベル Ⅳb)
ric malignancies. Expert Rev Anticancer Ther 2010; 10: 755-68.(エビデンスレベル Ⅳb)
265
7
横紋筋肉腫
hood and adolescence: Clinical presentation, diagnostic evaluation, and staging. UptoDate
CQ 6
PET は転移巣や腫瘍生存(viability)の診断に有用か?
推奨
グレード
B
PET は陽性であれば有用と考えられる検査の一つである。
(エビデンスレベル Ⅲ)
背景・目的
PET は各種肉腫に有用とされるが,横紋筋肉腫における有用性が検討され,現在,
初診時からのフォローアップなど有用性が報告されている。
解 説
FDG-PET/CT と全身 CT,MRI,99mTc による骨シンチグラフィー,胸部 X 線写真
などの従来的な画像(conventional image:CI)との比較検討 1)では,3〜38 歳までの
成人も含んだ横紋筋肉腫 35 症例(胎児型 12 例,胞巣型 22 例,ブドウ肉腫型 1 例)に
おいて,原発腫瘍(T)やリンパ節(N)の病期評価には有意差はなかったが,遠隔転
移の評価において FDG-PET/CT のほうが評価率 89 %と正確で,一方 CI では 54 %で
あったとされる。遠隔転移の評価においては FDG-PET/CT のほうが CI と比較して P
<0.01 と有意に正確な診断が可能であった。症例数は必ずしも多くはないが,初診時診
断,遠隔転移巣検索に有効とされている。viability についても造影 CT,MRI より有効
性が高いようであるが,後方視的な解析が多く今後の前方視的な研究が必要である2-4)。
一般的には FDG-PET/CT の場合,グルコースの取り込みが高い中枢神経系や褐色
脂肪細胞などが分布する部位では正確性を欠く場合があるので注意を要する。
検索式・参考にした二次資料
PubMed で横紋筋肉腫を検索し,PET に関連した論文から本テーマに該当する記載
のある文献を選択した。
参考文献
1) Tateishi U, Hosono A, Makimoto A, et al. Comparative study of FDG PET/CT and conventional imaging in the staging of rhabdomyosarcoma. Ann Nucl Med 2009; 23: 155-61.(エビ
デンスレベル Ⅳb)
2) Mody RJ, Bui C, Hutchinson RJ, et al. FDG PET imaging of childhood sarcomas. Pediatr
Blood Cancer 2010; 54: 222-7.(エビデンスレベル Ⅳb)
3) Kleis M, Daldrup-Link H, Matthay K, et al. Diagnostic value of PET/CT for the staging and
restaging of pediatric tumors. Eur J Nucl Med Mol Imaging 2009; 36: 23-36.(エビデンスレ
ベル Ⅳb)
4) Tewfik JN, Greene GS. Fluorine-18-deoxyglucose-positron emission tomography imaging
with magnetic resonance and computed tomographic correlation in the evaluation of bone
and soft-tissue sarcomas: a pictorial essay. Curr Probl Diagn Radiol 2008; 37: 178-88.(エビ
デンスレベル Ⅳb)
266
CQ 7
生検と一期的手術の適応は?
推奨
グレード
A
原発巣が巨大で切除不能,部位的に機能障害をきたすなどの危険性
から完全切除が不能な場合などでは,侵襲の大きい一期的手術より
生検が推奨される。一期的に腫瘍摘除が可能で機能障害が許容範囲
である場合には一期的手術による腫瘍摘出が推奨される。
(エビデンスレベル Ⅱ)
背景・目的
腫瘍が大きく手術侵襲が大きい場合や部位的に摘出不能(例:眼窩,傍髄膜部など)
の場合など,腫瘍生検のみとなる場合がある。生検後,化学療法を行い腫瘍縮小後に待
機手術を行うことにより切除率の向上を図る。
解 説
CT,MRI あるいは可能であれば PET などの画像検査により完全摘出が可能である
と判断される局所性の腫瘍に対しては一期的手術による完全摘出が推奨されるが,機能
温存あるいは美容的な障害が許容し得ることが原則である1)。
以下の場合,腫瘍生検が推奨される。
1)完全摘出不能
2)腫瘍発生部位
a)眼窩
b)傍髄膜
c)腟
などで,外科的摘出が不能の場合
ただし,生検方法としては開創による 1 cm 角程度の腫瘍組織採取が望ましく,針生
検は正確な診断が難しい場合があるので推奨されない 2)。
検索式・参考にした二次資料
PubMed で rhabdomyosarcoma,biopsy,surgery で検索し,これらの内から本テー
マに該当する記載のある文献を選択した。また,UpToDate ver19.2 の rhabdomyosarcoma の項も参考とした。
参考文献
1) Okcu MF, Hicks J, Horowitz M. Rhabdomyosarcoma and undifferentiated sarcoma in childhood and adolescence: Clinical presentation, diagnostic evaluation, and staging. UptoDate
18.2 June, 11, 2009.(エビデンスレベル Ⅳb)
2) 外科治療ガイドライン委員会.日本横紋筋肉腫研究グループ外科治療ガイドライン.April,
15, 2004.(エビデンスレベル Ⅳb)
267
横紋筋肉腫
7
d)胆道系,傍脊椎
CQ 8
傍精巣腫瘍の病期決定用同側後腹膜リンパ節郭清(SIRPLND)
は再発を減少させるか?
推奨
グレード
C
IRS の研究では 10 歳以上の傍精巣原発症例では SIRPLND を行う
ことが望ましく,再発を低下させる。
(エビデンスレベル Ⅲ)
背景・目的
腫瘍側の精巣動静脈ならびに腎静脈レベルまでの範囲でリンパ節を含む組織を郭清す
ることを staging ipsilateral retroperitoneal lymphnode dissection(SIRPLND)とい
う。これらの部位の横紋筋肉腫に対しては術後グループ分類のために SIRPLND を行う
必要性について考慮しなければならない。行う際は射精機能に配慮して操作範囲の交感
神経の温存に努める。
解 説
10 歳未満の症例では CT 上領域リンパ節腫大がない,あるいは術後グループ分類 I
である場合には SIRPLND は必要としないが,CT 上リンパ節腫大を認める例では SIRPLND を行う。IRS の以前の IRS-III と IV 研究における傍精巣原発横紋筋肉腫では 10
歳以上の症例では,SIRPLND を実施しないことにより,再発率が上昇するため SIRPLND を行うべきとされた。これは SIRPLND を行った IRS-III 研究の術後グループ分
類 I,II の 10 歳以上の症例では 3 年無病生存率が 92 %であったのに比べ,行わなかっ
た IRS-IV 研究では 86 %であったことによるものであるが,P=0.10 で有意差はなかっ
たとされている1)。わが国の小児外科における調査では 10 歳以上の症例での SIRPLND
実施率は低いようである。
検索式・参考にした二次資料
PubMed で rhabdomyosarcoma,SIRPLND の該当論文の中から本テーマに該当する
論文を引用した。
参考文献
1) Wiener ES, Anderson JR, Ojimba JI, et al. Controversies in the management of paratesticular rhabdomyosarcoma: is staging retroperitoneal lymph node dissection necessary for adolescents with resected paratesticular rhabdomyosarcoma? Semin Pediatr Surg 2001; 10:
146-52.(エビデンスレベル Ⅳa)
268
CQ 9
リンパ節郭清の範囲,方法と意義は?
推奨
グレード
C
臨床的あるいは画像診断で腫大したリンパ節がなければ,必ずしも
リンパ節郭清が必要ではないが,転移が疑われるリンパ節群の最も
遠位端まで郭清することが推奨される。
(エビデンスレベル Ⅲ)
背景・目的
術後グループ分類は治療方針の決定のうえで極めて重要であるため,原則的に所属リ
ンパ節転移の有無について検索する。領域リンパ節の転移が画像診断で認められる場合
を N 1 とみなす。画像上あるいは術中所見により疑われる場合には積極的に生検を行
い,組織学的診断にゆだねると同時に,切除可能な転移リンパ節は摘除を行うことを原
則とする1)。
解 説
頭頸部原発の横紋筋肉腫での頸部リンパ節転移は稀である。臨床的に腫大したリンパ
節がなければ頸部リンパ節の生検は不要であり,郭清は勧められないが,リンパ節転移
が組織学的に証明されれば,リンパ節摘出術を行ってもよい。
傍精巣原発の後腹膜リンパ節郭清に関しては前述の CQ 8 を参照。鼠径リンパ節に転
移をきたすことは稀であり,領域リンパ節とはみなされないが,陰囊浸潤がある場合に
は鼠径リンパ節生検を行う必要がある。初発年齢 10 歳以上の患者の場合,所属リンパ
節の転移(N 1)は 13 %でそれ以下の年齢の 4 %に比べ,約 3.2 倍と高頻度である。会
陰部,肛門部の原発の症例では 46 %に鼠径リンパ節への転移がみられ予後不良である。
さらに,初診年齢が 10 歳以上では転移率が 64 %であり,IRS-IV 研究では 5 年全生存
膀胱,前立腺原発の場合は初回生検の際に総腸骨動脈周囲リンパ節と傍大動脈リンパ
節のサンプリングも行い,また他に臨床的に転移を疑うリンパ節があればこれも生検す
ることが望ましい。
四肢の横紋筋肉腫の病期分類には所属リンパ節の評価は欠かせない因子である。たと
え触知し得るリンパ節がなくても鼠径リンパ節(下肢原発)あるいは腋窩リンパ節(上
肢原発)の系統的,積極的な郭清は必要である。上肢では大胸筋・長胸神経・胸背神経
を温存するように腋窩リンパ節郭清すれば障害も少ない。下肢の病変に対しては,通常
のリンパ節郭清よりも大腿三角でのリンパ節郭清のほうが望ましい。もし臨床的にリン
パ節転移が考えられれば,所属リンパ節郭清あるいは徹底的な郭清をする前に,臨床的
転移部位のより近位でリンパ節生検を行うこと,すなわち上肢の場合には同側の鎖骨上
窩(斜角筋)リンパ節の生検,下肢の場合は腸骨と傍大動脈リンパ節の双方,もしくは
どちらかのリンパ節の生検を行うこと,これらのリンパ節に転移があれば,所属リンパ
節転移ではなく,遠隔転移とみなす。
269
7
横紋筋肉腫
率 33 %と予後不良である。外科的なリンパ節郭清も考慮する2)。
検索式・参考にした二次資料
PubMed で rhabdomyosarcoma,LN dissection,SIRPLND などの該当論文の中か
ら,本テーマに該当する論文を引用した。
また,日本横紋筋肉腫研究グループ外科治療ガイドラインも参考とした。
参考文献
1) 外科治療ガイドライン委員会.日本横紋筋肉腫研究グループ外科治療ガイドライン.April,
2) Blakely ML, Andrassy RJ, Raney RB, et al. Intergroup Rhabdomyosarcoma Studies I
15, 2004.(エビデンスレベル Ⅳb)
through IV. Prognostic factors and surgical treatment guidelines for children with rhabdomyosarcoma of the perineum or anus: a report of Intergroup Rhabdomyosarcoma Studies I
through IV, 1972 through 1997. J Pediatr Surg 2003; 38: 347-53.(エビデンスレベル Ⅳa)
270
CQ 10
化学療法前腫瘍再切除(pretreatment reexcision:PRE)
の適応は?
推奨
グレード
B
初回手術で腫瘍遺残がみられ,再切除で腫瘍全摘が可能と考えられ
る場合,および切除断端が組織学的に陽性の場合には,術後化学療
法を行う前に再手術による完全切除を行うことが推奨される。
(エビデンスレベル Ⅳa)
背景・目的
初回手術において明らかな腫瘍遺残があり,再切除で腫瘍全摘が可能と考えられる場
合,および切除断端が組織学的に陽性の場合には,術後化学療法を行う前に再手術によ
る完全切除を行うことが望ましい。これを化学療法前腫瘍再切除(PRE)という1)。
解 説
この PRE により完全切除となった場合には,術後グループ分類が変更となり術後治
療も軽減される。文献的には四肢 2)と胸壁原発の腫瘍に関しては PRE の適応が言及さ
れている。ただし,四肢については化学療法後広範切除による全摘が可能であるなら切
断は回避が望ましいとする立場をとっている3)。また傍精巣の場合は経陰囊的に腫瘍が
横紋筋肉腫を想定せずに切除され,術後の病理診断で横紋筋肉腫と診断されたような場
合に,陰囊皮膚などの切除を治療前の再切除として施行することは積極的に行われるべ
きである。
検索式・参考にした二次資料
現在の PubMed では pretreatment reexcision という用語はタグにはなく自動的に同
また,日本横紋筋肉腫研究グループ外科治療ガイドラインから本テーマに該当する記
載のある文献を選択した。
参考文献
1) Hays DM, Lawrence W Jr, Wharam M, et al. Primary reexcision for patients with‘microscopic residual’ tumor following initial excision of sarcomas of trunk and extremity sites. J
Pediatr Surg 1989; 24: 5-10.(エビデンスレベル Ⅳa)
2) Andrassy RJ, Corpron CA, Hays D, et al. Extremity sarcomas: an analysis of prognostic factors from the Intergroup Rhabdomyosarcoma Study III. J Pediatr Surg 1996; 31: 191-6.(エ
ビデンスレベル Ⅳa)
3) 外科治療ガイドライン委員会.日本横紋筋肉腫研究グループ外科治療ガイドライン.April,
15, 2004.(エビデンスレベル Ⅳb)
271
7
横紋筋肉腫
義語に代替されたものを使用した。
CQ 11
頭頸部原発腫瘍に対する手術方針はどのようなものか?
推奨
グレード
B
頭頸部原発横紋筋肉腫の手術は可能であれば広範囲切除がよい。
しかし,広い切除縁を取ることが難しい場合も多く,美容的,機能
的に許容範囲内での切除が推奨される。 (エビデンスレベル Ⅳa)
背景・目的
頭頸部原発横紋筋肉腫の手術については可能であれば広範囲切除が適切である。しか
し,広い切除縁を取ることは頭頸部の浅い部位に発生した患者を除いて一般的には難し
い。
解剖学的制限から 1 mm 以下の小さい切除縁でも許容される。美容的,機能的側面も
常に考慮しなければならないが,これらを考慮した腫瘍全摘手術は現在では技術的に可
能である場合もあり,特に化学療法・放射線治療の初期治療後の遺残した腫瘍ではその
可能性が高くなる。
解 説
前頭蓋底(鼻部,副鼻腔,側頭窩とその隣接部位)の腫瘍に対する頭蓋顔面外科手術
は,経験ある専門チームにより化学療法・放射線治療の初期治療後に遺残した腫瘍に対
して行う。
眼窩原発腫瘍は他部位原発のものより予後良好であり,まず生検を行う。術前ステー
ジ分類 1,術後グループ分類 III であれば化学療法と放射線治療を行う。非切除治療後
に局所再発した場合,転移巣が制御されていれば眼窩内容の全摘術が勧められる。すな
わち再発すれば,眼球を含めて眼窩内容の全摘術を行わなければ完治は難しい。
検索式・参考にした二次資料
PubMed で rhabdomyosarcoma,head and neck,surgery を検索した。また,日本
横紋筋肉腫研究グループ外科治療ガイドラインを参考とした。
参考文献
1) 外科治療ガイドライン委員会.日本横紋筋肉腫研究グループ外科治療ガイドライン.April,
15, 2004.(エビデンスレベル Ⅴ)
272
CQ 12
四肢原発腫瘍に対する手術方針は?
推奨
グレード
B
可能であるかぎり,機能を温存するよう配慮した手術を行うことが
推奨される。
(エビデンスレベル Ⅳa)
背景・目的
四肢原発の横紋筋肉腫はリンパ節転移や遠隔転移の頻度が比較的高く組織型も予後不
良型(胞巣型)の頻度が高い。リンパ節転移の頻度は約 50 %ともいわれる1, 2)。領域リ
ンパ節の評価は病期分類を行ううえで重要となるので,臨床的にリンパ節転移がないも
のでも下肢原発であれば大腿三角のリンパ節,上肢原発であれば腋窩リンパ節のサンプ
リングを行う必要がある。
解 説
四肢では一般的に軟部組織を大きく合併切除するか,筋の一区画を全摘除することに
よって,局所制御に必要な広範な切除縁を得ることは可能である。腫瘍の大きさや浸潤
の程度に応じて,筋肉を起始部から付着部まですべて切除することを回避するように努
める。主要な血管に腫瘍が浸潤している場合でも,患肢切断を回避する余地があるとき
には,血管移植片を用いて患肢温存を図ることも可能である。他にも患肢温存が可能と
なる方法があれば適用してよい3)。
四肢発生の中でも,再発や死亡率が高いのは初回手術で肉眼的に腫瘍が残存した術後
グループ分類 III である。生検のみあるいは極めて小さい範囲での切除のみにとどまっ
た場合,機能などを大きく損なうことがなければ,術後グループ分類 I あるいは II の
状態にするために追加切除を施行すべきである。
開する。
検索式・参考にした二次資料
PubMed の rhabdomyosarcoma,extremities を検索し,日本横紋筋肉腫研究グルー
プ外科治療ガイドラインを参考にした。これらの中から本テーマに該当する記載のある
文献を選択した。
参考文献
1) Paulino AC, Pappo A. Alveolar rhabdomyosarcoma of the extremity and nodal metastasis:
Is the in-transit lymphatic system at risk? Pediatr blood cancer 2009; 53: 1332-3.(エビデン
スレベル Ⅳb)
2) Neville HL, Andrassy RJ, Lobe TE, et al. Preoperative staging, prognostic factors, and outcome for extremity rhabdomyosarcoma: a preliminary report from the Intergroup Rhabdomyosarcoma Study IV(1991-1997)
. J Pediatr Surg 2000; 35: 317-21.(エビデンスレベル Ⅳa)
3) 外科治療ガイドライン委員会.日本横紋筋肉腫研究グループ外科治療ガイドライン.April,
15, 2004.(エビデンスレベル Ⅳa)
273
7
横紋筋肉腫
原発巣生検を行う場合には手術痕が二期手術の妨げにならないよう常に長軸方向に切
CQ 13
膀胱・前立腺原発腫瘍に対する切除方針は?
推奨
グレード
A
可能なかぎりの機能温存的手術を行うことが推奨される。
(エビデンスレベル Ⅱ)
背景・目的
膀胱・前立腺腫瘍の切除の基本方針は機能温存である。IRS-IV,SIOP(MMT 84 と
89)
,ICG(RMS 79 と 88)
,CWS 91 の膀胱・前立腺原発症例をメタ分析した報告では,
この部位では 379 例中胎児型の限局した症例が 322 例(85 %)と多く,5 年無病生存率
は 75 %,全生存率は 84 %であった1)。しかし,このうち 64 %は腫瘍径 5 cm 以上で,
初回手術で膀胱尿道機能を温存したまま腫瘍を全摘除できることは稀であり,ほとんど
の例では生検にとどまる(内視鏡を用いた経尿道的操作,経会陰的,経恥骨上的,ある
いは開腹)
。開腹にて生検を行う場合には総腸骨動脈周囲リンパ節と傍大動脈リンパ節
のサンプリングも行う。すべての保存的治療が終了した後も臨床的寛解に至らず生検に
より確認される腫瘍が遺残する場合や,化学療法や放射線治療の施行にもかかわらず早
期に治療抵抗性や増悪がみられる場合には,積極的な根治的外科手術を考慮する。
解 説
膀胱天蓋部原発の腫瘍では化学療法開始前に全摘されることが多い2-4)。IRS-I〜III
の比較的古い研究ではあるが,171 例の膀胱原発腫瘍のうち,40 例が膀胱部分切除を受
け,うち,33 例(82.5 %)は一期的手術として行われた。7 例(17.5 %)は腫瘍縮小を
待って 10〜57 週で待機手術の形で行われた。31 例(31/40 例:78.5 %)が 2〜16 年無
病生存中である。より遠位の膀胱頸部に近い腫瘍に対しても尿管膀胱新吻合術や膀胱拡
大術と組み合わせることにより施行可能となる場合もある。
前立腺腫瘍の場合,IRS-III 研究 3)では,全症例中約 5 %で平均年齢は 5.3 歳,一般
的に組織型は胎児型で腫瘍径 5 cm を超える大きな腫瘍が多く,全摘出は 97.7 %で困難
で 生 検 の み が 多 い。 待 機 的 手 術 が 通 常 行 わ れ(38/44 例:86.3 %), 予 後 は 81.8 %
(36/44 例,経過観察中央値 6 年)が無病生存,6 例(6/44 例:13.6 %)が死亡してい
る5)。
部分切除などの他の手法が適用できず,また保存的治療に対する反応が不十分な場合
には,尿路変更を伴う骨盤内臓器全摘術や膀胱全摘術を行う。この場合でも特に化学療
法や放射線治療が先行した症例では腫瘍の完全摘除に際して直腸を温存できることが多
い。
検索式・参考にした二次資料
PubMed で rhabdomyosarcoma を検 索 し,surgery,urinary bladder,prostate の
項目から本テーマに該当する記載のある文献の中から適切なものを選択した。
参考文献
274
1) Rodeberg DA, Anderson JR, Arndt CA, et al. Comparison of outcomes based on treatment
algorithms for rhabdomyosarcoma of the bladder/Prostate: combined results from the Children’s Oncology Group, German Cooperative Soft Tissue Sarcoma Study, Italian Cooperative
Group, and International Society of Pediatric Oncology Malignant Mesenchymal Tumors
Committee. Int J Cancer 2011; 128: 1232-9.(エビデンスレベル Ⅰ)
2) Hays DM, Lawrence W Jr, Crist WM, et al. Partial cystectomy in the management of rhabdomyosarcoma of the bladder: a report from the Intergroup Rhabdomyosarcoma Study. J
Pediatr Surg 1990; 25: 719-23.(エビデンスレベル Ⅳa)
3) Hays DM, Raney RB, Wharam MD, et al. Children with vesical rhabdomyosarcoma(RMS)
treated by partial cystectomy with neoadjuvant or adjuvant chemotherapy, with or without
radiotherapy. A report from the Intergroup Rhabdomyosarcoma Study(IRS)Committee. J
Pediatr Hematol Oncol 1995; 17: 46-52.(エビデンスレベル Ⅳa)
4) Lobe TE, Wiener E, Andrassy RJ, et al. The argument for conservative, delayed surgery in
the management of prostatic rhabdomyosarcoma. J Pediatr Surg 1996; 31: 1084-7.(エビデン
スレベル Ⅴ)
5) Filipas D, Fisch M, Stein R, et al. Rhabdomyosarcoma of the bladder, prostate or vagina: the
role of surgery. BJU Int 2004; 93: 125-9.(エビデンスレベル Ⅴ)
横紋筋肉腫
7
275
CQ 14
放射線治療の至適開始時期,基本方針は?
推奨
グレード
A
IRS では緊急照射対象症例を除き 3 コース程度化学療法を施行後
に照射を行うのが,基本方針である。
(エビデンスレベル Ⅱ)
背景・目的
横紋筋肉腫に対する放射線治療の考え方は IRS と SIOP では非常に異なっている。す
なわち,IRS では可能なかぎり治療開始の早期から,横紋筋肉腫の治療量として十分な
線量を完全切除の場合でも原発腫瘍床などに放射線治療を行う。これに対して SIOP の
MMT 研究では残存腫瘍がある場合でも,化学療法により画像上,腫瘤が認められなく
なれば,将来の変形や二次がん発症を低減するため,放射線治療を割愛する。ただし,
IRS でも胎児型で完全切除例では照射を行っていない。
解 説
生検や手術後の顕微鏡的もしくは肉眼的残存がある場合には,放射線治療の適応にな
る。胎児型で完全切除された症例は放射線治療を行わなくても予後良好であるが,胞巣
型の場合には放射線治療は有益である1, 2)。
放射線治療の開始時期は,化学療法を 1〜3 カ月実施してから開始するのが一般的で
ある。治療体積は手術前および化学療法前の腫瘍の進展範囲を GTV(gross tumor
volume) に 設 定 す る の が 一 般 的 で あ る。CTV(clinical target volume) は GTV に
1.5 cm と設定される。しかし,これらの治療体積はリスク臓器(organ at risk:OAR)
の線量制約によって減ずることは許容される。照射線量は主として外科手術の残存腫瘍
量に依存する。残存腫瘍がない場合は 36 Gy/20 回程度,顕微鏡的残存腫瘍の場合
41.4 Gy/23 回程度,肉眼的腫瘍残存の場合は 50.4 Gy/28 回程度の照射線量が行われる。
比較的最近の COG からの報告では,低リスク群の患者で原発腫瘍床からの再発の原
因を調査したところ,プロトコールに違反した放射線治療の割愛や照射線量の軽減が再
発例の 50 %以上にみられたとしている。
検索式・参考にした二次資料
PubMed で rhabdomyosarcoma を検索し,radiotherapy の項目から本テーマに該当
する記載のある文献の中で適切なものを選択した。
参考文献
1) Wolden SL, Anderson JR, Crist WM, et al. Indications for radiotherapy and chemotherapy
after complete resection in rhabdomyosarcoma: A report from the Intergroup Rhabdomyosarcoma Studies I to III. J Clin Oncol 1999; 17: 1027-38.(エビデンスレベル Ⅲ)
2) Schuck A, Mattke AC, Schmidt B, et al. Group II Rhabdomyosarcoma and Rhabdomyosarcomalike Tumors: Is Radiotherapy Necessary? J Clin Oncol 2004; 22: 143-9.(エビデンスレベル
Ⅲ)
276
CQ 15
頭頸部,眼窩,傍髄膜原発腫瘍に対する緊急照射の適応は?
推奨
グレード
A
診断時に頭蓋内に腫瘍が伸展している,脳神経圧迫や浸潤などによ
る脳神経麻痺がある,あるいは脊髄圧迫症状などで放射線治療によ
り症状改善が期待できる場合,緊急照射を行うことが推奨される。
(エビデンスレベル Ⅲ)
背景・目的
診断時に頭蓋内に腫瘍が伸展している,あるいは脳神経圧迫や浸潤などによる脳神経
麻痺あるいは脊髄圧迫症状などで放射線治療により症状改善が期待できる場合に緊急照
射を行う。術後グループ分類 III の傍髄膜腫瘍で頭蓋内に腫瘍が進展している患者の場
合,放射線治療は化学療法開始と同時に開始する1)。
解 説
術後グループ分類 III の傍髄膜腫瘍で頭蓋内に腫瘍が進展している患者の場合,放射
線治療は化学療法開始と同時に行う1)。放射線治療の開始が遅れる場合でも化学療法の
1 クール目の開始より 2 週間以内に行われるべきである。
脊髄圧迫症状などにより緊急照射を必要とする患者の場合も,放射線治療は化学療法
開始と同時に開始されるべきである。
これらの部位に対する手術では,機能的あるいは,美容的予後を考慮して行うのが原
則であるため腫瘍が残存する症例が多く,結果的に照射は緊急ではなくとも必須であ
る。
【注】傍髄膜とは,中耳,鼻腔,鼻咽喉,副鼻腔,側頭中頭蓋窩下,翼突口蓋,傍咽
検索式・参考にした二次資料
PubMed で rhabdomyosarcoma を検索し,radiotherapy,parameningeal の項目か
ら本テーマに該当する記載のある文献の中で適切なものを選択した。
参考文献
1) Michalski JM, Meza J, Breneman JC, et al. Influence of radiation therapy parameters on outcome in children treated with radiation therapy for localized parameningeal rhabdomyosarcoma in Intergroup Rhabdomyosarcoma Study Group trials II through IV. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2004; 59: 1027-38.(エビデンスレベル Ⅳa)
277
7
横紋筋肉腫
頭の部位を指す。
CQ 16
強度変調放射線治療,陽子線治療の適応は?
推奨
グレード
B
強度変調放射線治療は頭頸部などでリスク臓器が近接する場合,リ
スク臓器への線量を低減させることができるので推奨される。
(エビデンスレベル Ⅲ)
背景・目的
強度変調放射線治療(intensity modulated radiation therapy:IMRT)は専用のコン
ピュータを用いて,複数のビームを組み合わせることで放射線に強弱をつけ,腫瘍の形
に適した放射線治療を行う照射方法である。
粒子線治療の中で陽子線治療や炭素線治療は一定の深さで放射線を完全に止めること
ができることから表面への障害が軽減でき,かつ,腫瘍が比較的深部に存在する場合,
照射の有効性を高めることができる。
解 説
IMRT では,頭頸部横紋筋肉腫のようにリスク臓器が近接する腫瘍の場合,リスク
臓器の線量を通常の三次元放射線治療に比べて減らすことができる。したがって,晩期
合併症を減らす可能性がある1-3)。
粒子線治療あるいは炭素線治療は,IMRT と同様リスク臓器への線量を減らすこと
ができる。さらに陽子線 4),炭素線は IMRT に比べて照射容積が少ないため,二次が
んの発症率を減少させる可能性も期待されている。
検索式・参考にした二次資料
PubMed で rhabdomyosarcoma を検索し,IMRT, protone radiotherapy の項目から
これらの中で本テーマに該当する記載のある文献を選択した。
参考文献
1) Wolden SL, Wexler LH, Kraus DH, et al. Intensity-modulated radiotherapy for head-andneck rhabdomyosarcoma. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2005; 61: 1432-8.(エビデンスレベル
Ⅳa)
2) McDonald MW, Esiashvili N, George BA, et al. Intensity-modulated radiotherapy with use
of cone-down boost for pediatric head-and-neck rhabdomyosarcoma. Int J Radiat Oncol
Biol Phys 2008; 72: 884-91.(エビデンスレベル Ⅴ)
3) Curtis AE, Okcu MF, Chintagumpala M, et al. Local control after intensity-modulated radiotherapy for head-and-neck rhabdomyosarcoma. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2009; 73: 1737.(エビデンスレベル Ⅳa)
4) Yock T, Schneider R, Friedmann A, et al. Proton radiotherapy for orbital rhabdomyosarcoma: clinical outcome and a dosimetric comparison with photons. Int J Radiat Oncol Biol
Phys 2005; 63: 1161-8.(エビデンスレベル Ⅳa)
278
CQ 17
標準的化学療法にはどのようなものがあるか?
推奨
グレード
A
わが国や米国などでは IRS の VA 療法(ビンクリスチン+アクチ
ノマイシン),VAC 療法(ビンクリスチン+アクチノマイシン+シ
クロホスファミド)などが標準的化学療法と考えられる。
(エビデンスレベル Ⅱ)
背景・目的
欧 米では,横紋筋肉腫の治療を行 う グ ル ー プ が IRS,SIOP,CWS(Cooperative
Weichteilsarkom Study Group)
,イタリアの AIEOP(Associazione Italiana di Ematologia e Oncologia Pediatrica)など多数あるが,わが国や米国では,標準的化学療法は
IRS の VA 療法〔ビンクリスチン(VCR)+アクチノマイシン(ACD)〕,VAC 療法
〔VCR+ACD+シクロホスファミド(CPA)〕となる1)。現時点で文献報告や教科書的
記載なども多く,わが国では IRS の VA 療法や VAC 療法が汎用されている。IRS-IV
研究での 3 年無再発生存率は術前ステージ分類 1:86 %,ステージ 2:80 %,ステージ
3:68 %,ステージ 4:25 %であった。IRS の術後グループ分類での 3 年無再発生存率
はグループ I:83 %,グループ II:86 %,グループ III:73 %,グループ IV:25 %で
あった。SIOP ではイホスファミド(IFM)を使用した IVA 療法(IFM+VCR+ACD)
が SIOP MMT 84,89,95 などで行われている。MMT 89.1 研究では術前ステージ分類
I,原発腫瘍術後ステージ 1(pT1:postsurgical stage 1;完全切除)では VA 療法が 2
コースのみで,89.2 研究(術前ステージ分類 I,原発腫瘍術後ステージ:pT3ab 不完全
切除で a は顕微鏡的残存,b は肉眼的残存,または pT2 周辺部への浸潤あり,しかし
50 %未満の場合は VCE 療法(VCR+カルボプラチン+エトポシド)に変更するなど
となっており,全部で 6 段階に分かれる治療となっている。5 年無病生存率は MMT 89
の成績で術前ステージ分類 I:61±3 %,II:55±3 %,III:51±6 %で,IV での末梢
血幹細胞移植を使用した大量化学療法では 3 年全生存率は 18 %であった 2-4)。
解 説
IFM 関連腎障害 5)の報告は古くからあり,年齢が低いと 40 g/m2 程度の低い積算量
でも尿細管障害が発症し,加齢とともに増悪するため長期にわたる厳重な経過観察が必
要である。VAC 療法についても高用量の CPA 投与による性腺障害や二次がん,肝静
脈閉塞症の発生などの問題があり,現在,CPA 投与量を 1.2 g/m2 に減量した試験など
も行われており,転換期を迎えている。経験のない施設による文献を参照しながらの治
療は推奨できない。転移性の横紋筋肉腫に対しては IRS での成績は 45 %と十分な成績
とは言い難い。AIEOP での転移性横紋筋肉腫症例へのメルファラン(L-PAM)+チオ
テパ(TESPA)
,CPA+TESPA,L-PAM による合計 3 回の大量療法後に造血幹細胞
をそれぞれ輸注する RMS 4.99 研究では 3 年 OS は 42.3 %,無増悪生存率は 35.3 %で
279
7
横紋筋肉腫
完全切除)では 4 コースの IVA 療法を受けている。2 コースの IVA 療法で縮小率が
表 1 横紋筋肉腫に対する最近の治療の報告(Huh WW, Skapek SX. Curr Oncol Rep 2010 Sep)
研究グループ*1
報告者
CWS(CWS 91)
Dantonello 6),2009
326/局所性
低リスク VACA/5 年 EFS 63 %,
OS 72 %
IRSG/COG/SIOP
Oberlin 7),2008
788/転移+,ステー
ジ 4 症例
VAC,VACA/3 年 EFS 27 %,OS
34 %
France/UK
Williamson 8),2010
210/ステージ1〜4
IVA-VCE/5 年 OS 71 %,EFS
57 %,放射線治療(−)
IRSG/COG
Rodeberg 9),2009
419/グループ III
VAC/5 年 FFS:CR で は 80 %,PR
では 78 %
Italy
Ferrari 10),2010
108/ステージ1〜4
VACA/PAX3+は予後不良
IRSG/COG
Davicioni
120/PAX+
VAC/リスクファクターの検討
IRSG/COG
Arndt
617/ステージ1〜4
VAC/4 年 PFS 73 %,VAC/VTC/
4 年 PFS 68 %
Italy
Bisogno 13),2009
62/転移+
sequential HD/3 年 PFS 60 %
CWS(CWS 96)
Klingebiel
96/転移+
うち 45 例が HD,
51 例が経口維持療法
少量経口は HD に劣らない。経過観察
中央値 57 カ月で HD 24.4 %,経口維
持療法 57.8 %が生存
SIOP(MMT 98)
McDowell 4),2010
146/転移+
sequential HD/改善なし
,2010
11)
,2009
12)
,2008
14)
対象患者数/病期*2
レジメン/PFS %など*3, 4
*1 C WS:Cooperative Weichteilsarkom Study Group,IRSG:Intergroup Rhabdomyosarcoma Study
Group,COG:Children’s Oncology Group,SIOP:International Society of Pediatrics
*2 HD:大量化学療法
*3 VACA:ビンクリスチン+アクチノマイシン+シクロホスファミド+ドキソルビシン
  VAC:ビンクリスチン+アクチノマイシン+シクロホスファミド
  IVA:イホスファミド+ビンクリスチン+アクチノマイシン
  VCE:ビンクリスチン+カルボプラチン+エトポシド
  VTC:ビンクリスチン+ topotecan +シクロホスファミド
*4 EFS:無イベント生存率,OS:全生存率,FFS:治療奏効維持生存率,CR:完全奏効,PR:部分奏効,
PFS:無増悪生存率
あった。低リスク群に対しては IRS の VAC 療法で優れた成績が出ているが,中間リス
ク群,高リスク群症例については未だ,十分な成績とはいえず,CPA の投与量を
1.2 g/m2 に減量するなど,あるいは Ewing 肉腫に使用される VDC 療法(VCR+ドキ
ソルビシン+CPA)の応用などが検討されている。今後のさらなる臨床試験が必要で
ある。わが国では今後,日本横紋筋肉腫研究グループ(JRSG)による治療が標準とな
る可能性がある。表 1 には比較的最近の総説を挙げるが,この中にはステージ 4 症例
に対するタンデム幹細胞輸注も含まれている。また,アルキル化剤の trofosfamide の
ようにわが国では入手不能の薬剤も使用されている。
検索式・参考にした二次資料
PubMed で rhabdomyosarcoma を検索し,chemotherapy の項目から本テーマに該
当する記載のある文献を選択した。
参考文献
1) Breneman JC, Lyden E, Pappo AS, et al. Prognostic factors and clinical outcomes in children
and adolescents with metastatic rhabdomyosarcoma ─ a report from the Intergroup Rhab-
280
domyosarcoma Study IV. J Clin Oncol 2003; 21: 78-84.(エビデンスレベル Ⅲ)
2) Stewart RJ, Martelli H, Oberlin O, et al. International Society of Pediatric Oncology Treatment of children with nonmetastatic paratesticular rhabdomyosarcoma: results of the Malignant Mesenchymal Tumors studies(MMT 84 and MMT 89)of the International Society of
Pediatric Oncology. J Clin Oncol 2003; 21: 793-8.(エビデンスレベル Ⅲ)
3) Stevens MC, Rey A, Bouvet N, et al. Treatment of nonmetastatic rhabdomyosarcoma in
childhood and adolescence: third study of the International Society of Paediatric Oncology
─ SIOP Malignant Mesenchymal Tumor 89. J Clin Oncol 2005; 23: 2618-28.(エビデンスレベ
ル Ⅲ)
4) McDowell HP, Foot AB, Ellershaw C, et al. Outcomes in paediatric metastatic rhabdomyosarcoma: results of The International Society of Paediatric Oncology(SIOP)study MMT98. Eur J Cancer 2010; 46: 1588-95.(エビデンスレベル Ⅲ)
5) Oberlin O, Fawaz O, Rey A, et al. Long-term evaluation of Ifosfamide-related nephrotoxici-
6) Dantonello TM, Int-Veen C, Harms D, et al. Cooperative trial CWS-91 for localized soft tis-
ty in children. J Clin Oncol 2009; 27: 5350-5.(エビデンスレベル Ⅳa)
sue sarcoma in children, adolescents, and young adults. J Clin Oncol 2009; 27: 1446-55.(エビ
デンスレベル Ⅳa)
7) Oberlin O, Rey A, Lyden E, et al. Prognostic factors in metastatic rhabdomyosarcomas: results of a pooled analysis from United States and European cooperative groups. J Clin Oncol
2008; 26: 2384-9.(エビデンスレベル Ⅳa)
8) Williamson D, Missiaglia E, de Reynies A, et al. Fusion gene-negative alveolar rhabdomyosarcoma is clinically and molecularly indistinguishable from embryonal rhabdomyosarcoma.
J Clin Oncol 2010; 28: 2151-8.(エビデンスレベル Ⅳa)
9) Rodeberg DA, Stoner JA, Hayes-Jordan A, et al. Prognostic significance of tumor response
at the end of therapy in group III rhabdomyosarcoma: a report from the children’s oncology
group. J Clin Oncol 2009; 27: 3705-11.(エビデンスレベルⅣa)
10) Ferrari A, Miceli R, Meazza C, et al. Comparison of the prognostic value of assessing tumor
domyosarcoma. J Clin Oncol 2010; 28: 1322-8.(エビデンスレベル Ⅲ)
11) Davicioni E, Anderson JR, Buckley JD, et al. Gene expression profiling for survival prediction in pediatric rhabdomyosarcomas: a report from the children’s oncology group. J Clin
Oncol 2010; 28: 1240-6.(エビデンスレベル Ⅳa)
12) Arndt CA, Stoner JA, Hawkins DS, et al. Vincristine, actinomycin, and cyclophosphamide
compared with vincristine, actinomycin, and cyclophosphamide alternating with vincristine,
topotecan, and cyclophosphamide for intermediate-risk rhabdomyosarcoma: children’s oncology group study D9803. J Clin Oncol 2009; 27: 5182-8.(エビデンスレベル Ⅳa)
13) Bisogno G, Ferrari A, Prete A, et al. Sequential high-dose chemotherapy for children with
metastatic rhabdomyosarcoma. Eur J Cancer 2009; 45: 3035-41.(エビデンスレベル Ⅳa)
14) Klingebiel T, Boos J, Beske F, et al. Treatment of children with metastatic soft tissue sarcoma with oral maintenance compared to high dose chemotherapy: report of the HD CWS-96
trial. Pediatr Blood Cancer 2008; 50: 739-45.(エビデンスレベル Ⅳa)
281
7
横紋筋肉腫
diameter versus tumor volume at diagnosis or in response to initial chemotherapy in rhab-
CQ 18
肝静脈閉塞症の診断基準にはどのようなものがあるか?
推奨
グレード
B
汎用される肝静脈閉塞症の診断基準にはシアトル基準,バルチモア
基準の 2 つがあり,どちらも推奨される。 (エビデンスレベル Ⅲ)
背景・目的
肝静脈閉塞症(venoocclusive disease:VOD)の本態は抗がん剤による血管内皮障
害である。ことに低年齢で VAC 療法〔ビンクリスチン(VCR)+アクチノマイシン
(ACD)+シクロホスファミド〕や ACD,VCR 反復投与例などでみられる。現在は内
科領域を中心に SOS(sinusoidal obstruction syndrome)という用語もしばしば使用さ
れるようになった。
解 説
横紋筋肉腫においては VAC 療法あるいは VA 療法のみの投与でも VOD 発症の報告
がみられる1)。VA や VAC も含むレジメンでの VOD 発症率は 1.4 % 2) で,VAC 療法
のみの治療では 3.1 %の発症率といわれる2)。VOD の診断基準は古くから McDonald
ら3)や Jones ら4)により提唱されている(表 1,2)。
これらは,いずれも骨髄移植関連の VOD(SOS)の診断基準であり,化学療法施行
時の診断には必ずしも適してはいないが,しばしば使用されている。造血幹細胞移植時
の VOD では BNP(brain natriuretic peptide)が 180 pg/mL 以上と高値を示すといわ
れる5)。横紋筋肉腫の VAC 療法では 3 歳以下での VOD の発症が多く,ACD 投与の 7〜14 日後の発症が多いといわれるが,JRSG では 10 歳以上でも発症例がみられてい
る。IRS では ACD 投与量を減量し投与期間も 1 日に短縮し,さらに 3 歳未満で VCR,
表 1 シアトル基準(Seattle criteria)
McDonald の基準(3 項目中 2 つ)
1.肝腫大または右上腹部痛
2.黄疸または高ビリルビン血症(>2 mg/dL)
3.腹水または 2 %以上の体重増加
表 2 バルチモア基準(Baltimore criteria)
Jones の基準診断(1 かつ 2〜4 の項目のうちの 2 つ)
1.高ビリルビン血症(>2 mg/dL)
2.肝腫大
3.腹水
4.baseline から 5 %以上の体重増加
282
シクロホスファミドともに減量が行われた。治療としてはメシル酸ガベキサートあるい
はメシル酸ナファモスタットの投与,海外では defibrotide の投与なども行われている。
検索式・参考にした二次資料
PubMed で rhabdomyosarcoma を検索し,venoocclusive disease の項目から本テー
マに該当する記載のある適切な文献を選択した。
参考文献
1) Sulis ML, Bessmertny O, Granowetter L, et al. Veno-occlusive disease in pediatric patients
receiving actinomycin D and vincristine only for the treatment of rhabdomyosarcoma. J Pediatr Hematol Oncol 2004; 26: 843-6.(エビデンスレベル Ⅳa)
2) Ortega JA, Donaldoson SS, Ivy SP, et al. Venoocclusive disease of the liver after chemotherapy with vincristine, actinomycin D, and cyclophosphamide for the treatment of rhabdomyosarcoma. A report of the Intergroup Rhabdomyosarcoma Study Group. Children Cancer
Group, POG. Cancer 1997; 79: 2435-9.(エビデンスレベル Ⅳb)
3) McDonald GB, Sharma P, Matthews DE, et al. Venocclusive disease of the liver after bone
marrow transplantation: diagnosis, incidence, and predisposing factors. Hepatology 1984; 4:
116-22.(エビデンスレベル Ⅳb)
4) Jones RJ, Lee KS, Beschorner WE, et al. Venoocclusive disease of the liver following bone
marrow transplantation. Transplantation 1987; 44: 778-83.(エビデンスレベル Ⅴ)
5) Kataoka K, Nannya Y, Iwata H, et al. Plasma brain natriuretic peptide is associated with hepatic veno-occlusive disease and early mortality after allogeneic hematopoietic stem cell
transplantation. Bone Marrow Transplant 2010; 45: 1631-7.(エビデンスレベル Ⅴ)
横紋筋肉腫
7
283
CQ 19
遠隔転移巣に対する局所治療の方針は?
B
推奨
グレード
転移巣に対する外科治療は,孤立性病変で切除可能な場合のみ推奨
されるが,予後は不良であることが多い。放射線治療は神経圧迫
や,その他局所症状の緩和に有効である場合が多く推奨される。多
発性転移などでは一般的に対象とならないことが多い。
(エビデンスレベル Ⅲ)
背景・目的
一般的に横紋筋肉腫における転移巣切除手術は全体として予後不良である1)。手術に
よる切除が可能で,かつ,転移巣が他にない場合には外科手術による切除が行われる場
合もあり得るが,転移巣の全身的検索が重要である。それ以外は化学療法+原発腫瘍床
および転移巣への放射線治療が一般的である。
解 説
放射線治療は通常,転移部位に対しては 50.4 Gy が推奨されているが,眼窩には
45 Gy である。マージンは原則では 2 cm であるが,リスク臓器の線量制約によって,
それ以下のマージンでも許容される。
肺転移のみでかつ,転移巣が 1 つのみで手術切除可能である場合は切除を行う(エビ
デンスレベル:III,推奨グレード:A)。肺転移は米国・欧州 cooperative groups 2)で
は各種転移の中で最も頻度が高い。具体的な頻度は 47 %(370/788,胸腔を含む)とさ
れ,このうち 145 例が肺単独転移である。肺転移が切除可能で原発部位も切除可能ある
いはすでに全摘出されている場合は外科的摘出も考慮し得る。全身的に 2 カ所の手術に
耐え得る状況であれば摘出が 1 つの方法であり,それ以外は放射線治療が選択肢であ
る。全肺野に多数の転移巣がみられる場合の全肺照射 14.4 Gy の有効性は不明である3)。
骨髄転移は横紋筋肉腫で 2 番目に多い転移部位で遠隔転移例の 38 %を占める。骨転
移も併発していることが多く,26 %が骨転移を合併する。時に原発巣が不明で白血病
と見誤られることがある4)。しばしば,播腫性血管内凝固症候群(DIC)を治療開始以
前あるいは治療開始後から発症し,従来的な DIC 治療には抵抗性である。骨髄 and/or
骨転移は最も強い予後不良因子である。日本の大量化学療法後方視的解析では遠隔転移
症例で有望な治療法である。しかし,海外では通常の化学療法に比べて有用とのエビデ
ンスはない。今後,前方視的な臨床研究が行われる必要がある。
遠隔リンパ節転移は横紋筋肉腫の遠隔転移の中で 4 番目を占める。可能であれば放射
線治療,改善しない場合は二期的手術切除も考慮する。
骨転移数が 5 箇所以内で少なく,照射可能であれば放射線治療が局所での有効性が高
い
。その他はビスホスホネート5),骨転移部位に対するストロンチウム内照射などを
3, 4)
含めてエビデンスがない 6)。
284
検索式・参考にした二次資料
PubMed(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez)で rhabdomyosarcoma を検索
し,distant metastasis,treatment の項目から本テーマに該当する記載のある適切な文
献を選択した。また,UpToDate 18.2 の rhabdomyosarcoma の項も参考とした。
参考文献
1) Temeck BK, Wexler LH, Steinberg SM, et al. Metastasectomy for sarcomatous pediatric histologies: results and prognostic factors. Ann Thorac Surg 1995; 59: 1385-9.(エビデンスレベ
ル Ⅳb)
2) Oberlin O, Rey A, Lyden E, et al. Prognostic factors in metastatic rhabdomyosarcomas: Results of a pooled analysis from United States and European cooperative groups. J Clin Oncol
2008; 26: 2384-9.(エビデンスレベル Ⅳa)
3) Okcu MF, Hicks J, Horowitz M. Rhabdomyosarcoma and undifferentiated sarcoma in child-
4) Ruymann FB, Newton WA Jr, Ragab AH, et al. Bone marrow metastases at diagnosis in
hood and adolescence: treatment. in UpToDate. June, 11, 2009.(エビデンスレベル Ⅳb)
children and adolescents with rhabdomyosarcoma. A report from the intergroup rhabdomyosarcoma study. Cancer 1984; 53: 368-73.(エビデンスレベル Ⅳb)
5) Corapçioğlu F, Mutlu H, Deveci M. Use of bisphosphonates for hypercalcemia in a child with
6) Lin A, Ray ME. Targeted and systemic radiotherapy in the treatment of bone metastasis.
alveolar rhabdomyosarcoma. Turk J Pediatr 2008; 50: 305.(エビデンスレベル Ⅴ)
Cancer Metastasis Rev 2006; 25: 669-75.(エビデンスレベル Ⅳb)
横紋筋肉腫
7
285
CQ 20
自家造血幹細胞移植併用大量化学療法は有効か?
推奨
グレード
B
自家造血幹細胞移植併用大量化学療法は難治性,転移性症例を対象
として行われるため,成績は必ずしも良いとはいえず,海外では推
奨度は低い。わが国では高リスク症例に対して標準治療では限界が
あるため,臨床試験として行われていくべきとされる。
(エビデンスレベル Ⅲ)
背景・目的
横紋筋肉腫の遠隔転移症例あるいは切除不能症例の生命予後は不良である。これらの
症例に対しては臨床研究として末梢血幹細胞移植などが行われている。成績に関しては
いまだ,不明な点も多い。しかし,従来の VAC 療法(ビンクリスチン+アクチノマイ
シン+シクロホスファミド)などによる治療は極めて予後不良であるため,臨床試験を
行っていく必要がある。
解 説
転移症例や腫瘍切除不能例への造血幹細胞移植併用大量化学療法についてはランダム
化比較試験のデータはみられないが,日本でのアンケート調査による後方視的解析 1)
では高リスク群+中間リスクなどの 22 症例の大量化学療法を受けたものと 20 例の大量
化学療法を受けていない群での比較では前者の 5 年全生存率(OS)58.2 %に対し,後
者の 3 年 OS 18.4 %で著しい差がみられた。しかし,大量療法レジメンが Hi-MEC レ
ジメン2),あるいは TESPA/L-PAM レジメン3)と統一されておらず,かつ,移植症例
の中には低リスク群患者まで含まれている後方視的アンケート調査で,エビデンスは明
確ではない。今後,ランダム化比較試験ないしは単アームの前方視的試験が望まれる。
米国での多施設共同による転移症例あるいは難治例の横紋筋肉腫症 62 例(ただし 17
例は 20 歳以上)での自家末梢血あるいは自家骨髄の移植成績は 5 年無増悪生存率
(PFS) は 29 %(95 % CI:18〜41 %),5 年 OS は 32 %(95 % CI:21〜44 %),1 年
以内の移植関連死亡は 5 %であったという4)。病理組織型による成績の差はなかったと
しているが,胞巣型 / 未分化肉腫では生存期間が通常化学療法より長かったと結んでい
る。SIOP での高リスク群に対する末梢血幹細胞を使用した大量療法では 3 年 OS は
18 %と予後不良であった5)。現状では転移症例あるいは再発症例,および切除不能で照
射後の腫瘍残存例に対する大量化学療法は前方視的臨床試験の対象であろう。表 1 に
大量療法例を示す。
検索式・参考にした二次資料
PubMed で rhabdomyosarcoma を検索し,stem cell transplantation の項目から本
テーマに該当する記載のある適切な文献を選択した。
参考文献
286
1) Hosoi H, Teramukai S, Matsumoto Y, et al. A review of 331 rhabdomyosarcoma cases in pa-
表 1 自家造血幹細胞移植による大量療法の横紋筋肉腫に対する成績 12)
研究グループ*1
著者 / 報告者
患者数
NCI
Horowitz 6)
25
G/A
PBMTG
Koscieleniak 7) 36(5 例は allo)
MSKCC
Boulad 8)
CCMH
Walterhouse
MMT 4-91
Carli 10)
CCG
レジメン*2
全身照射(TBI)
成 績*3
VAdrC
8 Gy/2 回
24 %(6 年 EFS)
MEC など
12 Gy/11 回 ,
1.5 Gy/2 回
19 %(FFS)
24(12 例 転 移
な し,7 例 は 移
植なし)
ME
なし
8
CTC
なし
52
M/MEC/TTBu
なし
30 %±14 %
(3 年 EFS)
Malogolowkin 11) 23
MEC
なし
44 %±12 %
(2 年 EFS)
COG
Stiff 4)
62
MEC など
なし
29 %(5 年 PFS)
SIOP
McDowell
146
MMT-98
なし
18 %(3 年 EFS)
JRMS
Matsubara
15
Hi-MEC
なし
70 %(5 年 OS)
9)
5)
2)
53 %±20 %
(2 年 PFS)
12.5 %(PFS)
NCI:National Cancer Institute,G/A:German/Austria,PBMTG:Pediatric Bone Marrow Transplantation Group,MSKCC:Memorial Sloan Kettering Cancer Center,CCMH:Chicago Children’s Memorial
Hospital,CCG:Children’s Cancer Group,COG:Children’s Oncology Group, SIOP:International Society of Pediatric Oncology,JRMS:日本横紋筋肉腫研究
*2
VAdrC:ビンクリスチン+アクチノマイシン+ドキソルビシン+シクロホスファミド
ME:メルファラン+エトポシド
MEC:メルファラン+エトポシド+カルボプラチン
TTBu:チオテパ+ブスルファン
*3
FFS:治療奏効維持生存率,PFS:無増悪生存率,EFS:無イベント生存率,OS:全生存率
*1
tients treated between 1991 and 2002 in Japan. Int J Clin Oncol 2007; 12: 137-45.(エビデン
2) Matsubara H, Makimoto A, Higa T, et al. Possible benefits of high-dose chemotherapy as intensive consolidation in patients with high-risk rhabdomyosarcoma who achieve complete
remission with conventional chemotherapy. Pediatr Hematol Oncol 2003; 20: 201-10.(エビデ
ンスレベル Ⅴ)
3) Hara J, Osugi Y, Ohta H, et al. Double-conditioning regimens consisting of thiotepa, melphalan and busulfan with stem cell rescue for the treatment of pediatric solid tumors. Bone
Marrow Transplant 1998; 22: 7-12.(エビデンスレベル Ⅴ)
4) Stiff PJ, Agovi MA, Antman KH, et al. High-dose chemotherapy with blood or bone marrow
transplants for rhabdomyosarcoma. Biol Blood Marrow Transplant 2010; 16: 525-32.(エビデ
ンスレベル Ⅴ)
5) McDowell HP, Foot AB, Ellershaw C, et al. Outcomes in paediatric metastatic rhabdomyosarcoma: results of The International Society of Paediatric Oncology(SIOP)study MMT98. Eur J Cancer 2010; 46: 1588-95.(エビデンスレベル Ⅴ)
6) Horowitz ME, Kinsella TJ, Wexler LH, et al. Total-body irradiation and autologous bone
marrow transplant in the treatment of high-risk Ewing’s sarcoma and rhabdomyosarcoma.
J Clin Oncol 1993; 11: 1911-8.(エビデンスレベル Ⅳa)
7) Koscielniak E, Klingebiel TH, Peters C, et al. Do patients with metastatic and recurrent
287
7
横紋筋肉腫
スレベル Ⅳa)
rhabdomyosarcoma benefit from high-dose therapy with hematopoietic rescue? Report of
the German/Austrian Pediatric Bone Marrow Transplantation Group. Bone Marrow Transplant 1997; 19: 227-31.(エビデンスレベル Ⅳa)
8) Boulad F, Kernan NA, LaQuaglia MP, et al. High-dose induction chemoradiotherapy followed by autologous bone marrow transplantation as consolidation therapy in rhabdomyosarcoma, extraosseous Ewing’s sarcoma, and undifferentiated sarcoma. J Clin Oncol 1998; 16:
1697-706.(エビデンスレベル Ⅳa)
9) Walterhouse DO, Hoover ML, Marymont MA, et al. High-dose chemotherapy followed by
peripheral blood stem cell rescue for metastatic rhabdomyosarcoma: the experience at Chicago Children’s Memorial Hospital. Med Pediatr Oncol 1999; 32: 88-92.(エビデンスレベル Ⅳ
a)
10) Carli M, Colombatti R, Oberlin O, et al. European intergroup studies(MMT4-89 and
MMT4-91)on childhood metastatic rhabdomyosarcoma: final results and analysis of prognostic factors. J Clin Oncol 2004; 22: 4787-94.(エビデンスレベル Ⅳa)
11)
Malogolowkin M, Richar S, Les G, et al. Lack of improvement in survival of children with
metastatic rhabdomyosarcoma treated with intensive therapy followed by stem cell transplant for control of minimal residual disease. Pro Am Soc Clin Oncol 1999; 18: 555.(エビデン
スレベル Ⅳa)
12)
Admiraal R, van der Paardt M, Kobes J, et al. High-dose chemotherapy for children and
young adults with stage IV rhabdomyosarcoma. Cochrane Database Syst Rev 2010:
CD006669.(エビデンスレベル Ⅱ)
288
CQ 21
再発後治療の化学療法レジメンにはどのようなものがあるか?
推奨
グレード
C
再発後治療の化学療法レジメンとして比較的エビデンスの高いもの
は ICE 療法(イホスファミド+カルボプラチン+エトポシド)と
なるが,効果は短期・限定的となる。
(エビデンスレベル Ⅱ)
背景・目的
横紋筋肉腫の標準治療に抵抗性あるいは再発性腫瘍の場合に使用されるセカンドライ
ン(second-line)の化学療法レジメンとして IRS でしばしば用いられているものは
ICE 療法〔イホスファミド(IFM)+カルボプラチン(CBDCA)+エトポシド(VP16)
〕である1)。
解 説
ICE 療法による胎児型横紋筋肉腫の再発後 1 年の全生存は 82 %と比較的良好である
が,他の組織型では不良である。ヨーロッパの SIOP では米国の IRS との主に放射線治
療での違いから局所再発が多く,second-line chemotherapy としては VCE 療法〔ビン
クリスチン(VCR)
+CBDCA+VP-16〕が多く使われている2)。ドイツの CESS/CWS
REZ 91 トライアルでは CBDCA+VP-16,VP-16+IFM,CBDCA+IFM による交代
療法が行われた3)。イタリアでの topotecan+VCR+ドキソルビシンの TVD 療法では 9
症例中 1 例のみ,17 歳の胞巣型症例で 17 カ月間完全奏効(CR)が続いた。5 例が部分
奏効(PR)であった4)。
成人の横紋筋肉腫では trofosfamide やゲムシタビンあるいは ecteinascidin(ET743)などが第 I 相試験,血管新生阻害薬などが第 II 相で試験され一定の効果があると
trofosfamide の経口投与(一部にイダルビシンを併用)の維持療法を行ったグループの
比較があり,trofosfamide が優れていたが緩和的な治療であり3),小児でのエビデンス
は少ない4)。
検索式・参考とした二次資料
Pubmed で rhabdomyosarcoma を 検 索 し,second-line therapy,refractory treatment の項目から本テーマに該当する記載のある適切な文献を選択した。
参考文献
1) Van Winkle P, Angiolillo A, Krailo M, et al. Ifosfamide, carboplatin, and etoposide(ICE)reinduction chemotherapy in a large cohort of children and adolescents with recurrent/refractory sarcoma: the Children’s Cancer Group(CCG)experience. Pediatr Blood Cancer 2005;
44: 338-47.(エビデンスレベル Ⅳa)
2) Wu HY, Snyder HM 3rd, Womer RB. Genitourinary rhabdomyosarcoma: which treatment,
3) Klingebiel T, Pertl U, Hess CF, et al. Treatment of children with relapsed soft tissue sarco-
how much, and when? J Pediatr Urol 2009; 5: 501-6.(エビデンスレベル Ⅳb)
ma: report of the German CESS/CWS REZ 91 trial. Med Pediatr Oncol 1998; 30: 269-75.(エ
289
7
横紋筋肉腫
される。小児では比較的大量の化学療法後,タンデムに造血細胞を輸注したグループと
ビデンスレベル Ⅳa)
4) Meazza C, Casanova M, Zaffignani E, et al. Efficacy of topotecan plus vincristine and doxorubicin in children with recurrent/refractory rhabdomyosarcoma. Med Oncol 2009; 26: 6772.(エビデンスレベル Ⅴ)
5) Hartmann JT. Systemic treatment options for patients with refractory adult-type sarcoma
beyond anthracyclines. Anticancer Drugs 2007; 18: 245-54.(エビデンスレベル Ⅴ)
290
CQ 22
再発腫瘍に対する局所治療の役割は?
推奨
グレード
B
一般的に孤立性局所性の再発巣などであれば外科的な切除,あるい
は放射線治療などが推奨されるが,全身性再発であれば局所治療の
役割は限定的で,症状の緩和などの効果が期待できる場合に限られ
る。
(エビデンスレベル Ⅳ)
背景・目的
再発横紋筋肉腫の生存率は非常に低く IRS-III,IV,V 研究での 5 年生存率は 20 %
以下である。組織型による再発後 5 年全生存率はブドウ肉腫型 64 %であるが,胎児型
は 26 %,胞巣型は 5 %と報告されている1, 2)。再発腫瘍に対する局所療法としては放射
線治療のほか,適応は限られるが,外科手術による切除も再発部位が他に転移巣を伴わ
ず切除可能である場合や,稀にダンベル腫瘍や腫瘍圧迫による障害の解除など対症的に
行われる場合もある。
解 説
Hayes-Jordan(2006)の報告によると 32 例の再発横紋筋肉腫のうち 19 例に外科的
切除を,13 例に部分切除 / 生検を行ったところ,7 例(37 %)は再発なく経過,8 例
(42 %)は腫瘍死し,4 例(21 %)は追跡不能であったとして,再発病変に対する外科
的切除は生存率の改善に寄与するのではないかとの考察をしている3)。
Andrassy ら4) の German cooperative group らによると再発に対して外科的手術を
受けた 17 例の検討において無病生存率は胎児型と胞巣型との間に有意差はなかったと
しているが,全生存率では胎児型が有意に良好であったとしている。また根治的な外科
現時点では再発病変に対する外科手術と予後との関連においては胎児型で全生存率を
改善する可能性はあるが,手術の侵襲度と予後には関連なしとの報告にとどまってい
る。JRSG では再発腫瘍が摘出可能であれば局所手術を考慮してもよいとの判断で臨む
べきとしている。
再発腫瘍に対する放射線治療ではリスク臓器の耐容線量内で照射可能であれば,再照
射も含めて照射は可能となるが,多発性の再発などでは適応となりにくい場合がある。
眼窩の局所再発の場合に小線源治療(brachtherapy)を行った報告がドイツから出
ているが,症例数は 10 例で年齢中央値 6.5 歳(1〜19 歳),推計 5 年生存率は 62±18 %
で,照射部位での照射による有害事象は軽度でグレード 3 や 4 のものはなかったとい
う。顔の変形なども 8 例では問題なく,2 例で軽度であったという5)。
検索式・参考にした二次資料
PubMed で rhabdomyosarcoma を検索し,recurrence, treatment の項目から本テー
マに該当する記載のある適切な文献を選択した。
291
7
横紋筋肉腫
手術と局所手術との比較では全生存率に差はなかったとしている。
参考文献
1) Pappo AS, Shapiro DN, Crist WM, et al. Biology and therapy of pediatric rhabdomyosarcoma. J Clin Oncol 1995; 13: 2123-39.(エビデンスレベル Ⅴ)
2) Raney RB, Anderson JR, Barr FG, et al. Rhabdomyosarcoma and undifferentiated sarcoma
in the first two decades of life: a selective review of Intergroup rhabdomyosarcoma study
group experience and rationale for Intergroup Rhabdomyosarcoma Study V. J Pediatr Hematol Oncol 2001; 23: 215-220.(エビデンスレベル Ⅳa)
3) Hayes-Jordan A, Doherty DK, West SD, et al. Outcome after surgical resection of recurrent
rhabdomyosarcoma. J Pediatr Surg 2006; 41: 633-8.(エビデンスレベル Ⅳa)
4) Andrassy RJ. Advances in the surgical management of sarcomas in children. Am J Surg
2002; 184: 484-91.(エビデンスレベル Ⅳa)
5) Strege RJ, Kovács G, Meyer JE, et al. Perioperative intensity-modulated brachytherapy for
refractory orbital rhabdomyosarcomas in children. Strahlenther Onkol 2009; 185: 789-98.(エ
ビデンスレベル Ⅳb)
292
CQ 23
有効な分子標的治療は?
推奨
グレード
C
現状では十分なエビデンスが得られている治療とは言い難く,今後
とも臨床試験が必要な分野である。
(エビデンスレベル Ⅴ)
背景・目的
米 国 で は National Cancer Institute(NCI) に よ る サ ポ ー ト を 受 け た Pediatric
Preclinical Testing Program(PPTP)が実施され,肉腫群に含まれる横紋筋肉腫に対
しても分子標的療法では極めて多数のターゲットが設定され,第 I, II 相試験が行われ
ているが,いずれも,比較的少数例が対象となっている。多くの試験は Ewing 肉腫や
骨肉腫を含めた再発症例に対する試験研究となっている。
解 説
横紋筋肉腫のみの単独の試験研究は mTOR をターゲットとしたエベロリムス(対象
年齢 3〜21 歳,St. Jude 病院)
,胞巣型のみを対象とした PLK1 の阻害剤の BI2536(対
象年齢 18 歳以上,EORTC ※)
,SRC 阻害剤の AZD0530,IGF-1R の阻害剤の IMC-a12
などであるが,安全性などを考慮し 16 歳あるいは 18 歳を超える年齢を対象とするもの
が 多 い。 血 管 新 生 阻 害 剤 の VEGF な い し は VEGFR を 標 的 と す る ベ バ シ ズ マ ブ や
cediranib は横紋筋肉腫のみを対象としているものではないが,2〜18 歳の再発・難治
性肉腫を対象として臨床試験が行われている。有害事象は許容範囲内であるが,効果は
良好ではなく,横紋筋肉腫例は対象症例のうち数例にすぎない 1, 2)。プロテアソーム阻
害剤のボルテゾミブの単独試験は有効例がなく中止された。Epidermal growth factor
receptor(EGFR)阻害剤のエルロチニブが,現在米国 COG ではテモゾロミドとの併
果としては腫瘍進行が停止した例が多いが,完全奏効(CR)はなく,横紋筋肉腫症例
は少数である3, 4)。現在,米国 COG では IMC-a12 を使用した試験が進行中である。
※ EORTC,European Organisation for Research and Treatment of Cancer
検索式・参考にした二次資料
PubMed で rhabdomyosarcoma を検索し,stem cell transplantation の項目から本
テーマに該当する記載のある適切な文献を選択した。
参考文献
1) Benesch M, Windelberg M, Sauseng W, et al. Compassionate use of bevacizumab(Avastin)
in children and young adults with refractory or recurrent solid tumors. Ann Oncol 2008; 19:
807-13.(エビデンスレベル Ⅳb)
2) Glade Bender JL, Adamson PC, Reid JM, et al. Children’s Oncology Group Study. Phase I trial
and pharmacokinetic study of bevacizumab in pediatric patients with refractory solid tumors:
a Children’s Oncology Group Study. J Clin Oncol 2008; 26: 399-405.(エビデンスレベル Ⅳb)
3) Maki RG, Kraft AS, Scheu K, et al. A multicenter Phase II study of bortezomib in recurrent
or metastatic sarcomas. Cancer 2005; 103: 1431-8.(エビデンスレベル Ⅳb)
4) Jakacki RI, Hamilton M, Gilbertson RJ, et al. Pediatric phase I and pharmacokinetic study of
erlotinib followed by the combination of erlotinib and temozolomide: a Children’s Oncology
Group Phase I Consortium Study. J Clin Oncol 2008; 26: 4921-7.(エビデンスレベル Ⅳb)
293
7
横紋筋肉腫
用で使用されエルロチニブ 85 mg/m2/日でテモゾロミド 5 日間との組み合わせで,結
CQ 24
標準治療による晩期合併症は?
推奨
グレード
B
横紋筋肉腫の標準治療による晩期合併症は成長障害,局所の変形,
視力聴力障害,学習障害,性腺障害など多岐にわたる。長期経過観
察上,これらの障害に注意しなければならない。
(エビデンスレベル Ⅲ)
背景・目的
横紋筋肉腫は発生部位が多岐にわたるため,多種の晩期障害が出現する。ことに低年
齢ほど照射部位や手術部位などに伴う変形,成長障害が大きく出るので注意が必要であ
る。
解 説
治療関連晩期合併症として横紋筋肉腫の場合に報告されているものとして,IRS-II
および III 研究の眼窩原発を除く頭頸部の 213 例からでのデータ1) では,① 成長障害
(48 %)
,② 顔面非対称(35 %)
,③ 生歯,歯牙異常(29 %),④ 視力障害(17 %),⑤
聴覚障害(17 %)
,⑥ 学習障害(16 %)が指摘されている。
放射線治療による晩期合併症としては,照射部位における骨軟部組織の成長障害,歯
牙異常,白内障,下垂体機能低下症,性腺機能障害,二次がんなどの発生が報告されて
いる2)。
また,IRS-I,II 研究における膀胱・前立腺を原発部位とする腫瘍 109 例の解析3)で
は,54 例(約 50 %)の症例で膀胱が温存されており,そのうち 38 例(73 %)で膀胱
機能は良好であった。しかし,9 例において遺尿,尿失禁を認め,また 5 例で頻尿を認
めている。腎機能についてはほとんどの症例で保たれていた。
膀胱への放射線治療による慢性的な出血性膀胱炎,化学療法による性腺機能不全が報
告されており,シクロホスファミド(CPA)の総投与量が増加するに従い,性腺機能
不全となる率が増加する。原発部位,照射の有無などにより部位特異的な障害が報告さ
れている。
アントラサイクリン系のドキソルビシンなどが心筋障害の発生原因としてよく知られ
ているが,IRS の VAC 療法(ビンクリスチン+アクチノマイシン+CPA)では大量投
与されている CPA の心筋障害および性腺機能不全が注目されており,2.2 g/m2 から
1.2 g/m2 への投与量の減量が現在,検討されている。
検索式・参考にした二次資料
PubMed で rhabdomyosarcoma を検索し,late complications の項目から本テーマに
該当する記載のある適切な文献を選択した。
参考文献
1) Raney RB, Asmar L, Vassilopoulou-Sellin R, et al. Late complications of therapy in 213 children with localized, nonorbital soft-tissue sarcoma of head and neck : A descriptive report
294
from the Intergroup Rhabdomyosarcoma Studies(IRS)-II and-III. IRS Group of the Children’s Cancer Group and the Pediatric Oncology Group. Med Pediatr Oncol 1999; 33: 362-71.
(エビデンスレベル Ⅳa)
2) Paulino AC, Simon JH, Zhen W, et al. Long-term effects in children treated with radiotherapy for head and neck rhabdomyosarocoma. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2000; 48: 1489-95.
(エビデンスレベル Ⅳa)
3) Raney B Jr, Heyn R, Hays DM, et al. Sequelae of treatment in 109 patients followed for 5 to
15 years after diagnosis of sarcoma of the bladder and prostate. Cancer 1993; 71: 2387-94.
(エビデンスレベル Ⅳa)
横紋筋肉腫
7
295
CQ 25
治療による二次がんのリスクは?
推奨
グレード
B
横紋筋肉腫症例における二次がん発生リスクは 10〜20 年の観察
期間で 1.7〜6 %と推定され,放射線照射野内の骨肉腫や二次性白
血病の頻度が高い。
(エビデンスレベル Ⅲ)
背景・目的
横紋筋肉腫症例における二次がんの発生リスクは 10〜20 年の観察期間で 1.7〜6 %と
推定される。放射線照射野内の骨肉腫や二次性白血病の頻度が高い。化学療法と放射線
治療の併用がリスク因子と考えられる。
治療成績の向上とともに,治療関連性の二次がんの発生が深刻な問題となっている。
治療後の経過観察においては,二次がん発症のリスクを念頭に置くことが早期発見にお
いて重要である。また二次がんの発生を減らすような治療戦略が検討される必要であ
る。
解 説
横紋筋肉腫に対する治療後に発生する二次がんについて,近年の 4 つの報告をまとめ
た。
IRS-I および II 研究における 1,026 例の解析1) では,治療終了後,中央値 8.4 年の観
察期間で 22 症例(1.2 %)の二次がんの発生があった。多いものでは照射後の骨肉腫が
9 例,次いで二次性急性骨髄性白血病(AML)が 5 例に認められた。二次がん発生ま
での期間の中央値は 7 年であり,10 年間の推定発生率は 1.7 %であった。アルキル化剤
の投与と放射線療法をともに受けた患者において発生頻度が高かった。
Memorial Sloan-Kettering Cancer Center における治療終了後 2 年以上の 130 例の解
析 では,7 例に二次がんの発生が認められた。そのうち 3 例は二次性 AML であり,
2)
発生までの期間は中央値 4.5 年であった。固形がんが 4 例に発生し,そのうち 3 例の発
生部位は照射野内であった。発生までの中央値は 10 年であった。リスク因子として,
アクチノマイシン総投与量 9.6 mg/m2 以上,シクロホスファミド総投与量 16.8 g/m2 以
上,照射線量 40 Gy 以上が挙げられた。10 年間の推定発生率は 6 %であった。
MD Anderson Cancer Center の報告3)によると,1961〜1990 年の間に軟部肉腫の患
者から 20 例(14 例が横紋筋肉腫の治療後)の二次がんが発生している。骨肉腫が 6 例
と最も多く,次いで脳腫瘍が 3 例,白血病が 2 例であった。6 例の骨肉腫のうち 4 例は
照射野内の発生であった。発生までの期間は中央値 11.4 年であった。化学療法と放射
線照射の併用がリスク因子と考えられた。
SEER(Surveillance,Epidemiology,and End Results)population-based cancer
registry に登録された 18 歳未満で診断後 1 年以上生存している軟部腫瘍 1,499 例の解
析4) では,27 例の患者から 28 件の二次がんが発生していた。健常人との比較では 6.3
倍の発生頻度であった。原疾患別にみると横紋筋肉腫が 7.7 倍と最も高く,特に化学療
296
法と放射線治療の併用がリスク因子と考えられた。Neurofibromatosis type 1 および
Li-Fraumeni 症候群に合致する症例も認められた。20 年間の推定発生率は 2.9 %であっ
た。
検索式・参考にした二次資料
PubMed で rhabdomyosarcoma を検索し,second malignancy の項目から本テーマ
に該当する記載のある適切な文献を選択した。
参考文献
1) Heyn R, Haeberlen V, Newton WA, et al. Second malignant neoplasms in children treated
for rhabdomyosarcoma. Intergroup rhabdomyosarcoma study committee. J Clin Oncol 1993;
11: 262-70.(エビデンスレベル Ⅲ)
2) Scaradavou A, Heller G, Sklar CA, et al. Second malignant neoplasms in long-term survi-
3) Rich DC, Corpron CA, Smith MB, et al. Second malignant neoplasms in children after treat-
4) Cohen RJ, Curtis RE, Inskip PD, et al. The risk of developing second cancers among survi-
vors of childhood rhabdomyosarcoma. Cancer 1995; 76: 1860-7.(エビデンスレベル Ⅲ)
ment of soft tissue sarcoma. J Pediatr Surg 1997; 32: 369-72.(エビデンスレベル Ⅲ)
vors of childhood soft tissue sarcoma. Cancer 2005; 103: 2391-6.(エビデンスレベル Ⅲ)
横紋筋肉腫
7
297