リスクマネジメント概論

プラン造成講座・リスクマネジメント研修会
リスクマネジメント概論
一般社団法人 全国農協観光協会
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1.リスクマネジメントはなぜ必要か
送り手側の安全
受入側の維持
2.リスクとは
・「ある行動を行うことによる危険にあう可能性や損失をする可能性」→作為
・「ある行動を行わないことによる危険にあう可能性や損失をする可能性」→不作為
・リスク:やってみたいと思って挑戦する時に起こる危険
・語源:イタリア語のリスカーレ(勇気をもって試みる)
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3.「リスク」と「マネジメント」の対応
リスク(例)
(a)企業リスク…成長至上主義、拡大戦略、巨大化追求、猛烈主義、老害、災害対策、
コンプライアンス違反、企業不祥事、ノルマ過大、労働中毒、過労死、
ストレスの家庭への持ち込み、PL事故、企業倒産
(b)家庭リスク…家庭の金銭問題、夫婦間葛藤、親子間葛藤、親の過保護、親の虐待、
家庭内暴力、家庭内人権問題、子供の問題行動、登校拒否、引きこもり、
家庭崩壊
(c)学校リスク…つめ込み教育、偏差値教育、道徳教育、学校崩壊、校内暴力、登下校時の事故、
差別、いじめ、学校の事なかれ主義、校長や先生の無責任
(d)災害リスク…環境破壊、大地震、津波、台風、集中豪雨、河川氾濫、大火災、火山噴火、
花火事故、異常気象
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マネジメント
(a)要素(過程)の循環
(計画、組織、指導、統制)
(b)意思決定の連続
(情報、企画、選択、再検討)
(c)対策(対応)
(導入、事前、渦中、事後)
(d)マニュアルの運用
(作成、解釈、適用、是正)
(e)業務の連続
(Risk ControlとRisk Finance)
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4.ハインリッヒの法則
ヒヤリ・ハットシート
1つの重大事故の陰に29件の軽い事故と
300件のヒヤリ・ハットする場面に遭遇する。
重大な事故・事態が1件
軽度な事故・事態が29件
ヒアリ・ハット 気がかり
300件
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5.ドミノ理論
(1)身体傷害は事故の結果として起こること。
(2)事故は人間的なハザード(原因)や機械的なハザードの結果としてしか起こらないこと。
(3)ハザードは人間の過失ないし遺伝によってしか起こらないこと。
(4)人間の過失は、社会的環境・遺伝によって与えられること。
身体障害
図:ハインリッヒのドミノ理論(武井勲「リスクマネジメント」より)
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6.リスクマネジメントの考え方
リスクの洗出し
(ヒヤリ・ハット・気がかり)
シート
現状把握
どんな危険が潜んでいますか
評価分析
予防策
本質の追求
対策樹立
これが危険のポイント
事故が起こった時
の対処
私たちならどうする
予防策
予防対策
事故事例
事故事例分析
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7.リスク要因の洗い出し
①危険予知トレーニング
②ワークショップ
(http://blog.goo.ne.jp/3788616/e/00371e80a6b51f70884106e9d273093e)
12/6 リスクマネジメント研修会(基本編)東京会場
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8.リスク要因の洗い出しと分析
危険要因は4つの事象観点で洗い出し、机上だけでなく、実地踏査・模擬訓練をして現場でも洗い出していく。
顕
在
リ
ス
ク
潜
在
リ
ス
ク
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想想
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危な 施 は
険ど 設 分
に、か
潜場り
外的な要因
人的な要因
取り巻く環境や外部からもたらされる危険
お客様や指導者が関わることでの危険
例…
落雷、高波、落石、増水している川、農機具を使っ
ての体験、脚立を使う体験、ヘビやスズメバチが出
そうな場所での体験、アレルギーを起こす食物・食
事など安易に想定できる危険
例…
体験指導者の不慣れ、体験指導者のスタッフ不足、
無理な体験プログラム、見張りが少ない水遊び、受
動喫煙、セクハラ、パワハラ、不衛生な台所・調理
器具、長時間の野外体験など人のスキルや体力、集
中力などに起因する危険
例…
天候の急変、護岸流、地震、津波などの自然災害、
古い建物、近くに崖地がある場所や、谷間や斜面で
の体験、農機具、道具を使う体験など見ただけでは
分からないが、現象や場所など実地踏査や下見に
よって見つけることが出来る危険及び想定外の体験
例…
事務局の安全指導意識の欠如、事務局や応援スタッ
フの役割認識不足、個人情報の取扱い、軽トラの荷
台乗車、ダニ、ノミ、大型のペット、1人の指導者
が10名以上の体験を指導、人間関係など…見わか
りにくい人に関しての危険
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9.リスクの評価マップ
洗い出した危険要素を発生率、被害の大きさで仕分けて、リスクの評価を進めていく。
リスクの大きさ(危険衝撃度)=発生確率×被害の大きさ
事故になることが多い
発生確率が高い
予防対策は必須
Cゾーン
最大のリスク
Aゾーン
発生確率は多いが、発生しても被害規模
は比較的低い項目
発生確率も高く、起きると人命に関わる
甚大な被害が予測される項目
危険衝撃度が小
発生しても被害が小さい
発生した場合は被害が大きい
危険衝撃度が大
Dゾーン
Bゾーン
発生確率が低く、発生しても軽微な被害
で済むと予測される項目
発生確率は少ないが、発生した場合は、
被害規模が大きくなると予測される項目
発生確率が低い
事故になることは少ない
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10.リスク予防策を4分類
分析・評価した各リスクの予防策を「軽減」、「回避」、「転嫁」、「保有」のどれにあたるかを関係者全員で話し
合いながら分類していく。
リ
ス
ク
コ
ン
ト
ロ
ー
ル
リ
ス
ク
フ
ァ
イ
ナ
ン
ス
「軽減」(予防、分散、統合)
事故が発生した場合の被害をできるだけ小さくする。危険要因と発生要因を分析して、発生確率を低くし、事故が起きても
軽減なものにするための方策を事前にとる考え方。
「回避」(リスクの遮断、行動の中止)
危険箇所を使う体験や、危険度が高いプログラムは最初から中止にする。止める勇気を持つ。事故に結びつく可能性が高い
体験、老朽化した施設、動力が強い農機具などの機器類の使用、見張りが少ない水辺の体験、周囲に崖地や交通量の多い場
所での体験は避ける。
「転嫁」(保険、共済)
事故が発生した場合に予想される損害・経済的な損失を他で負担させる考え方で、代表的なもので損害賠償保険への加入な
どがある。その他、アウトドアスポーツなどでは自らは危険な作業には関与せずに最初から専門家や専業団体に委託するな
どある。(活動そのものを業務委託契約を締結して責任を転嫁する。)
「保有」(準備、負担、自家保険)
発生率も低く、発生した場合の被害が軽微な事象に対しての対策として、リスクの軽減も回避も転嫁もしない考え方。何の
対策もとらずに体験指導者や管理者の予防判断に委ねる。
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11.リスクマネジメントの手順
①リスクマネジメントの考え方
共有のために協働で作業する
受入れに関わる関係者全員がリスクマネジメントについての考え方を理解し、リスクの洗い出しを一緒に実施してリスクを共有する
②リスク要因の洗い出し方
リスク要因で考える手法(リスクインフォメーション)
関係者全員参加で体験プログラムや受入れ家庭での過ごし方、使用する道具、施設、現場を想定して、見えるリスク、見えないリス
ク、人が関わることでのリスクを考えて、リスクを一項目、一枚の糊付き付箋(ポストイットなど)に書き出し、マップに貼り付け
ていく。
③リスクの分析・評価
リスク評価マップで俯瞰する(リスクアセスメント)
②で洗い出したリスクが発生した場合を想定し、被害の大小と発生確率の高低で区分し、リスクの構成要素を明らかにして総合的に
評価していく。
④リスク予防策を四分類
全員で作業することで共有できる(リスクコントロール)
③で分析・評価した各リスクの予防策を「軽減」、「回避」、「転嫁」、「保有」のどれにあたるかを全員で話し合いながら分類し
ていく。
⑤具体的な対策を講じる(リスクコントロール&リスクファイナンス) 安全管理マニュアル作成・模擬訓練による検証と適切な保険契約
④で分類した予防策について、各々の具体的な対策、留意ポイントを全員でまとめる。
・リスクコントロールは安全管理マニュアル(受け入れの手引き)を策定し、実地踏査、模擬訓練(シュミレートトレーニング)
を行い、点検し、安全精度を上げる、
・リスクファイナンスは洗い出したリスクに応じて保険の補償内容を確認して、契約を結ぶ。
これら一連の流れがリスクマネジメントに通じる!
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12.組織・協議会・団体における組織づくり
(1)安全管理マニュアルはありますか?
(2)関係者全員のトレーニングをしていますか?
(3)保険に加入していますか?
(4)組織内での安全に関る情報の共有化をしていますか?
(5)リスクマネージャーを設置していますか?
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13.釜石で伝えた「避難の3原則」
(1)「想定にとらわれるな」
→ハザードマップを信じるな、浸水想定区域外であったにも関らず、避
難対策をしっかり行っていた。
(2)「最善をつくせ」
→「ここまで来ればもう大丈夫だろう」ではなく、そのときできる最善の対
応行動を取れ。
(3)「率先避難者たれ」
→●いざと言うときには、まず自分が避難すること。その姿を見て、他の
人も避難するようになり、結果的に多くの人を救うことができる。
●「正常化の偏見」を打ち破る。(自分にとって都合の悪い情報を無
視したり、過少評価してしまうこと。)
2011.9.19 石川県 県民津波フォーラムより
群馬大学大学院工学研究科 片田 敏孝教授
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14.「釜石の奇跡」から「釜石の出来事」に呼ばれる
(1)保護者に引き渡した児童ら子ども5人が死亡、学校職
員1人が行方不明になった➡「奇跡」と呼ばれるにはつ
らい。
(2)「常識ではありえないことが起きたわけではなく、訓練
や防災教育の成果。実践した子どもたち自身が奇跡
の意味は違うと感じていた。」➡日頃の取組の積み重
ねであった。
(3)奇跡ではなく訓練の成果。遺族をはじめ地元の複雑
な受け止め方も含め、釜石で起きたことを伝えたい。
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