Ⅳ協働と連携の景観まちづくり

第4章
協働と連携の景観まちづくり
駒ヶ根市景観計画
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1. 市民・事業者が景観まちづくりに参加する仕組み
(1) 景観育成住民協定地区の拡大に向けて
市民や事業者が、景観まちづくりに自らが参加し、良いものをつくれば評価され、駒ヶ
根市の景観のお手本になっている実感が高まることは、景観まちづくりに対する意欲の大
きな原動力になります。
駒ヶ根市では、現在9つの地区で景観育成住民協定を結んでおり、それぞれがよりよい
景観を目指して活動を行っています。今後は駒ヶ根市全域においてさらなる市民による新
たな景観育成住民協定地区の促進を目指します。
(2) 表彰制度
ここでは、駒ヶ根市で今まで行われていた制度、現在行われている制度、他都市で行わ
れている制度を踏まえ、今後これらの継続及び実施を推進します。
駒ヶ根市景観条例
第 32 条 第 1 項 及 び 第 2 項
表彰
市では美しい景観の育成に寄与し
ている建築物等の所有者及び管理者
等、又は寄与する行為を行なった者
を表彰することとし、市政 45 周年、
50 周年、55 周年と 5 年ごとに駒ヶ根
市景観まちづくり賞として表彰を行
っており、今後も開催を継続します。
【 平成21年度
<すずらん通り維持管理組合>
受賞者 】
<火山花と緑の会>
<ふたつのアルプス望岳の里南田市場景観形成住民協定協議会>
<駒ヶ根市広小路商店街振興組合>
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(3) 提案制度と発展的協議
本景観計画は、定性的な基準を中心に整理しましたが、より良い景観づくりには、市民
や事業者により、駒ヶ根市の風土、歴史にあったデザイン等の提案が必要です。建築家や
事業者の優れた提案(建築形態、意匠など)を踏まえ、今後は景観形成基準の見直し、「景
観ガイドライン」への掲載などの充実を図ります。
(4) 地域活動の促進
駒ヶ根市の景観を維持していくためには、行為制限に加え、日頃の清掃活動、緑化活動
など市民、事業者の活動が重要であるため、このような活動に対して今後は市の支援を検
討します。
また、維持管理が行き届いていない建築物や敷地、不法投棄等により、景観を阻害する
場合については、今後、不法投棄の排除、老朽建築物の修繕や除去、庭木などの手入れな
ど、所有者・管理者が行うべき維持管理について、理解と協力を得るための啓発活動も行
っていきます。
1)駒 ヶ 根 市 公 共 施 設 ア ダ プ ト 制 度
自宅や事業所の前の道路、公園等について里親の申請をし、自ら清掃や植栽管理などを
行う制度。市民や事業者自らが景観形成、維持に取り組む制度として推進します。
駒ヶ根市景観計画
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2)花 い っ ぱ い 推 進 事 業 、 花 植 え ボ ラ ン テ ィ ア 支 援 事 業
市民の手により花いっぱいのまちなみを形成しています。市では花の苗の提供、補助を
行うとともに、今後は事業実施の検討、事業のPRを図ります。
3)清 掃 ボ ラ ン テ ィ ア 支 援 事 業
市民やボランティア団体などによる清掃活動への支援として、ゴミ袋や手袋の支給を実
施します。景観まちづくりの第一歩を、子供、自治会等の手により進められるよう、今後
は事業実施の検討、事業のPRを図ります。
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4)協 働 の ま ち づ く り 支 援 補 助 制 度
駒ヶ根市では協働のまちづくりを推進するために、まち普請支援事業の「協働のまちづく
り支援補助制度」などにより、市民団体やグループなどが自主的・主体的に取り組む活動を
支援しています。
(広小路花と緑の街づくり事業)
ねずみ川せせらぎサイエンス
きらめき公園周辺緑化事業
広小路花と緑の街づくり事業
北割一区癒しの空間づくり
天竜川流域侵略植物駆除
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2. 都市計画制度との連携
(1) 都市計画の制度の指定
景観計画における法的な効力は、建築物等の意匠形態、色彩等に関する届出とそれに景
観形成基準をもとにした勧告です。景観計画で目指す将来像へより近づけるため建築基準
法や都市計画法等との連携について今後検討していきます。
具体的には建築確認申請時に併せて景観形成基準との整合性を図る手法としては、
「景観
地区」や「地区計画」
、
「高度地区」があります。
これらの制度によって、より細やかな規程を整備できるとともに、強制力が高まります。
景 観 地 区
景観地区は、街の景観を維持するため都市計画法で定められた地域地区のひとつです。
これから良好な景観を形成していくような地区や、生活景観の保全・形成を図るような地
区についても指定することができます。
景観法の中では都市計画区域(準都市計画区域)内で指定することができると定められて
います。
〔景観地区でできること〕
①形態意匠の基準について市町村長による認定制度が導入できる。
②建築物の高さ、壁面位置の制限、最低敷地規模の数値基準が建築確認
の対象となる。
③工作物及び開発行為等については、必要な基準をそれぞれ条例で定め
ることができる。
高 度 地 区
高度地区は、都市計画法に基づき、建築物の高さが定められた地区をいいます。
住居専用地域など良好な住環境を維持するために建築物を指定した高さ以上にしてはな
らない最高限度を定めた地区と、土地の高度利用の面から、建築物を指定した高さ以上に
しなければならない最低限度を定めた地区があります。
高度地区で建築物の高さを定めることにより建築物の高層化の抑制を図ることが出来ま
す。
〔高度地区でできること〕
●低層の街並みの維持、突出した高さの抑制
●眺望やランドマークへの見通しを阻害する高さの規制
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(2) 他の法制度との連携
景観まちづくりを進めるためには、他の法令との連携も重要です。上記の都市計画法の
みならず、特に駒ヶ根市においては、以下の事項について、今後、推進と連携を図るもの
とします。
1)市 民 緑 地 制 度 (都 市 緑 地 法 )の
推進
駒ヶ根市には、十二天の森をはじめとする
保存が望まれる緑地が多数あり、駒ヶ根市景
観の特徴のひとつとなっています。またその
景観の保全は景観計画の目標像の達成にあた
っての重要なテーマとなります。しかし景観
計画では緑地の保全は難しいため、
「市民緑地
制度」等による緑地の保全・管理を検討します。
市民緑地制度は、土地所有者と駒ヶ根市が、緑地の整備・保全・管理に関する事項について
締結し、緑地や緑化施設を公開する制度であり、現在駒ヶ根市で運用している景観保存樹
木制度とともに、緑地の保全・管理に向けて今後検討します。
駒ヶ根市景観計画
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2)県 立 自 然 公 園 条 例 、 長 野 県 文 化 財 保 護 条 例
中央アルプス県立自然公園区域にかかわる規程、諸手続きとの連携を図ります。
3)屋 外 広 告 物 条 例
今回、屋外広告物については、長野県の
条例内容により規制誘導を図ることとして
いますが、今後市独自の条例を検討します。
駒ヶ根市における景観形成上の問題点の
ひとつは、アクセス道路における屋外広告
物による景観の阻害、特にアルプスへの眺
望の阻害です。こういった本市のメインと
なるエリアの街並み、景観誘導は、景観計
画や景観地区等による建築物のコントロールだけでは十分に整わないことから、景観形成
の効果を上げるべく、屋外広告物の突出した表現を抑えることが重要となります。そこで、
今後は、景観行政団体として、本市独自の屋外広告物条例による屋外広告物のコントロー
ルを検討します。
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3. 景観形成の手続きの流れ
景観計画の手続きの流れ
法 16 条 の 建 築 行 為 等 の 届 出 に 対 す る 手 続 き の 流 れ
建築物の建築等や都市計画法上の開発行為、開発指導要綱に基づく開発行為、その他土地
の開墾や廃棄物の堆積などの行為に対する手続きの流れは以下のとおりです。
建築計画、開発
構想など案件
協定地区以外
協定地区
【景観育成住民協定地区】
協定地区の景観形成基準で事
必要に応じ
事前相談
基準等の事前
確認、他法令の
確認
行為の届出
【審査】
基準の
遵守確認
助言・指導
前審査
特定行政庁等への建築確認、許可権者への開発許可等の申請
手続きの時期
行為着手予定日の 30 日前まで
手続き対象者
景観計画(景観条例)に位置づけている建築行為等の届
出対象者
提出書類
・景観計画区域内における行為の届出書
・委任状(届出事務を委託する場合)
・添付図書
(届出に係る行為の種類により景観法施行規則又は条
例の定めるところによる)
手続き窓口
駒ヶ根市 建設部 環境課
審査内容
景観計画に位置づけている「景観形成基準」に基づき、
周辺景観との調和や建築物・工作物のデザイン・構造、境
界部のデザイン等について協議の上、助言指導する。
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4. より充実した景観計画の整備に向けて
望ましい景観形成に向けて
今後、届け出対象行為となる建築確認案件は、必要に応じて景観審議会へ諮問し、景観
形成基準に準拠しているかどうかの審査が行われます。
しかし、今回策定した景観形成基準は、現段階でベストと考えられる内容ではあります
が、今後経済社会情勢の変化や流行、人々の意識の変化に伴い、より駒ヶ根市の望む景観
づくりを達成する基準、現基準よりもよりよい基準への進化・発展が求められる時期が来る
と考えられます。
そのため、景観審議会の場では、景観形成基準に合致しているかどうかの非裁量的な審
査だけではなく、提案する側の建築家や事業主、デザイン専門家の創造力を最大限に発揮
し、本市に新たな魅力や価値観を生み出すような発展的・創造的な協議の場とする必要が
あります。
景観について協議をすることは、その空間の目標像を育み、イメージを具体的に脹らま
せます。そういった創造的・発展的な協議の積み重ねが、建築家やデザイナーの創造力を生
かしつつ、その目指す空間像の実現へとつながります。
また協議を積み重ねることにより、景観形成のルールに加えて、どのような「人材」
「体
制」「仕組み」が必要なのか、といったことも発展的にバージョンアップしていくと考えら
れます。
そういった知見の集積を生かし、今後、より望ましい景観の形成に向けた景観計画の改
訂を進めるものとします。
駒ヶ根市景観計画
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駒ヶ根市景観計画策定委員会 名簿
(敬称略)
氏
名
所
属
◎ 伊 藤 精 晤
有識者
清 水 裕 子
有識者
伊 藤 伸 二
有識者
吉 川 貴 久
上伊那建築士会
麻 野 一 朗
上伊那塗装広告事業協同組合
橋 本
駒ヶ根商工会議所
仁
吉 見 次 郎
上伊那森林組合伊南支所
岩 崎 康 男
一般社団法人
小 出 一 夫
住民協定地区代表者
倉 田 一 徳
住民協定地区代表者
吉 澤 正 則
住民協定地区代表者
山 本 博 和
住民協定地区代表者
○ 澤 上 和 正
住民協定地区代表者
三 井 貞 明
住民協定地区代表者
粥 川 一 壽
住民協定地区代表者
村 上 守 伸
住民協定地区代表者
北 原 和 雄
住民協定地区代表者
菅 沼 辰 保
住民協定地区代表者
澤 森 祥 人
住民協定地区代表者
山 宮 貞 夫
公募委員
近藤美智代
公募委員
長 尾 孝 雄
公募委員
山田千代子
公募委員
赤 羽 明 人
公募委員
加 治 木 今
公募委員
小 原 茂 幸
公募委員
金 井 美 奈
公募委員
池 上 博 康
商連こまがね
神 野 幸 洋
農業委員
駒ヶ根観光協会
◎座長
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○副座長