© K. HASEGAWA 社会運動の動態・その理論的把握 6.新しい社会運動とは何か(1) 2015.5.28 長谷川 公一 東北大学大学院文学研究科教授 k-‐[email protected] 無断での引用・改変 ・配布等を禁じます 1 © K. HASEGAWA 戦後70年間の国際的キーワード • 1950年代 戦後復興、旧植民地の独立、米ソ冷戦、赤狩り 同調主義、朝鮮戦争(1950.6.25〜53.7.27休戦) • 1960年代 高度経済成長、宇宙開発(1969.7.20 月面着陸) 学生叛乱、ビートルズ、ミニスカート、若者文化、ヒッピー • 1970年代 オイルショック、環境への関心 • 1980年代 新自由主義(サッチャー、レーガン、中曽根など) • 1990年代 ポスト冷戦、経済危機、温暖化問題、グローバル化、 NGO/NPO、インターネット、IT • 2000年代 同時多発テロ(2011.9.11)、ネオコン、携帯・スマフォ、 中国の台頭、文明の衝突(イスラム)、マイノリティの権利 • 2010年代 リスク社会、原理主義、テロリズム、SNS、非寛容? 2 © K. HASEGAWA 社会運動と社会運動研究 長谷川(2004)による 3 © K. HASEGAWA 新しい社会運動とは何か 1960年代の国際的な社会運動の噴出 • New Social Movements • 典型 1960年代の学生運動(仏・独・伊・日・米など) 女性解放運動、フェミニズム運動 cf. 「第一の波」=婦人参政権運動(権利要求運動) 環境・エコロジー運動、反原発運動 Earth Day (1970.4.22〜、毎年4月22日に開催) 平和運動 障害者運動 エスニシティをめぐる運動、地域分権運動(独立運動) 対抗文化 異議申し立て(objection, protest) 4 © K. HASEGAWA 「新しい社会運動」の特質 • 多様性 • 消費点の運動。生産点における運動ではない • 戦後の「福祉国家体制」・民主主義国家の形式性を批判 radicalism 女性・同性愛者・障害者・高齢者・エスニックマイノリティの 排除と差別 周辺的存在による社会運動 • 生得的属性にもとづく運動化・組織化 • 自己決定性、自己表出への志向 5 © K. HASEGAWA 批判社会学・批判理論、黒人学、女性学、 男性学、障害者学、エスニシティ研究、マイ ノリティ・スタディーズなどの勃興 • 社会システム論・構造機能主義(Parsons)の停滞 • マクロ理論の停滞 • 参考 Gouldner, A. 1970, Coming Crisis of Western Sociology= 1974-75, 『社会学の再生を求めて』新曜社。 6 © K. HASEGAWA 「古い社会運動」とは? • 労働組合運動 生産拠点に焦点 体制変革志向 しかし 圧力集団・利益集団的 既得権擁護的 スケジュール闘争的 官僚制的 7 © K. HASEGAWA 資源動員論と「新しい社会運動」論 長谷川(1990)による 8 © K. HASEGAWA 資源動員論 と「新しい社会 運動論」 長谷川(1990)による 9 © K. HASEGAWA アメリカの資源動員論・ ヨーロッパの「新しい社会運動」論背景 • アメリカ マルクス主義の相対的な影響力の乏しさ、強力な共産党の不在、 二大政党的、ロビー活動中心 集合行動論の伝統、実証主義的(仮説検証型)、量的研究主導、 操作主義的 • ヨーロッパ マルクス主義の相対的に強い伝統、強力な共産党(仏・伊)、多 党的、ロビー活動中心 マルクス主義の伝統、理念主義的(了解的、自省的(reflexive)、 質的研究主導、操作主義的に対する抵抗、現代社会論的 10 © K. HASEGAWA national な社会学 • 心理学 とくに実験心理学 操作主義的で、普遍化志向 • 社会学における言語の規定性 国際化が進むのは、1980年代以降 「小さな国ほど、英語が上手」 • インターネットの普及、グローバル化とともに、英語の比重が 高まる 11 © K. HASEGAWA Alain Touraine (1925〜) 『声とまなざし』(1978)などで提起。「新しい社会運動」を理念 型的に構成。経験的に実在するのではなく、社会学者が発見し、 意味づけるもの。 脱工業社会において、テクノクラートを敵手として(敵対性)、 全体社会の方向性(歴史性、全体性、争点の認識・位置づけ) をめぐって、対立する社会運動(主体性)。 工業社会において、企業家と対立する労働組合運動と対比。 社会運動は社会的行為をつうじて社会を産出する(「人間が 歴史を創造する」。 12 © K. HASEGAWA Alberto Melluci (1943〜2001) • Touraineのもとで学ぶ。臨床心理士としての研究蓄積。 • 社会運動は危機への対応ではなく、コンフリクトの表現。 • 複合的な社会のもとでの個々人の主体性の多層性・多重性を 強調。 • 1989, Nomads of the Present, 『現在に生きる遊牧民』岩波書 店(1997). • 1996, Challenging Codes. • 1996, Playing Self, 『プレイング・セルフ』ハーベスト社(2008). 13 © K. HASEGAWA Jürgen Habermas (1929〜) • “New Social Movements”, Telos Vol.49, 1981. システム世界による「生活世界の植民地化」に対抗する運動 例. メディア等の欲望操作による介入・侵食 延命治療、生殖医療 ITの発達と国家による監視 14 © K. HASEGAWA Claus Offe (1940〜) • 周辺的存在者——既存の社会的カテゴリーに依拠しては、自 分のアイデンティティが語られない人びとこそが、新しい社会 運動の担い手。 • ジェンダー、年齢、エスニシティなど、生得的要因によって、ア イデンティティを規定する。 • ニュー・ミドルクラス(例.専門職的な公務員)と周辺的存在者と の同盟 15
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