飼養 2009年 春の号 原稿 「平成20年の鶏卵生産を振り返る」 丸紅エッグ株式会社 社長 島田博 平成20年暦年の東京全農 M サイズ価格は193円と前年の168円より25円も高いも のとなりました。 これは高騰した飼料コストをカバーするということからの相場形成と も見られ、例年なら下がるべき夏場に下がらなかったり、秋冬の需要期に上昇しないとい う年間を通じてのメリハリの無い相場展開になりました。 いわばある意味では異常であ った20年の鶏卵相場について、考えてみたいと思います。 A 平成20年の鶏卵生産の前年対比 平成20年暦年ベースでの鶏卵に関する統計が、各種公表されました。 前年との対比で は、鶏卵生産量・雛餌付羽数・成鶏用配合飼料出荷量という供給を表す統計が前年より落 ち込んでいるのに対し、一人当り家計消費量は前年を上回っております。 それぞれの統 計は資料①の様になっています。 (1) 平成20年鶏卵生産量は前年対比 36 千トン(1.6%)減の 2,547 千トンとなりまし た。 平成19年は平成5年の 2,597 千トンに次ぐ大きな生産量でしたが、平成 20年の生産量は平成15年以前のレベルに戻ったものでした。 都道府県別では 9の都府県で前年生産量より増加しましたが、残りの38の都道府県では前年より 減産となっています。 増産したのが約 15 千トンに対して、減産分が 51 千トンと なりました。 全体として減産となっているにも関わらず、生産量トップ10都道 府県の全国生産に占めるシェアは19年の 49.8%から20年の 50.4%と上昇して おり、トップ20都道府県も 77.8%から 78.1%とわずかながら上昇しております。 これにより鶏卵生産経営は確実に大規模化しているという傾向が、読み取れます。 資料②は平成19年と20年の鶏卵生産トップ10の都道府県と生産量・全国シェ アです。 鶏卵生産全国1、2位の茨城と千葉の両県での生産量が増加しているこ とが、昨年の特徴といえましょう。 (2) 雛餌付羽数は 102,480 千羽となり、前年対比 7,631 千羽(4.8%)減という大きな減 少となりました。 この 102 百万羽というのは、平成になってから一番少ない雛餌 付羽数となりました。 成鶏用配合飼料出荷量も 5,731 千トンとなり、前年対比 399 千トン(2.5%)減となりました。 これは鶏卵生産減少を裏付ける統計といえます が、これも雛餌付羽数同様に平成になってからの最小値となりました。 (3) 一人当りの鶏卵家計消費量は 10,077 グラムとなり、前年対比 192 グラム(1.9%) 増となりました。 鶏卵家計消費量は平成16年1月の鳥インフルエンザ発生によ り大きな減少傾向が起こったのですが、それを毎年回復し続け、5年ぶりに一人当 -1- たりの消費量が10Kg を回復したのは、テーブルエッグ需要の堅調さを物語ります。 特に昨年は1月末に起こった中国冷凍餃子事件が、内食回帰を促したと言われてお ります。 最近では景況感が悪くなっていることから、外食・加工向け鶏卵需要が 一層鈍化している傾向にあり、内食向けのテーブルエッグ需要は堅調に推移するも のと思われます。 平成20年の鶏卵需給を前年対比で見ると、供給については確かに減少傾向となりました。 これは昨年中飼料の実質価格が上昇し続けたことから、一部の生産農家が撤退したり、羽 数を抑えたことが原因かと思われます。 供給が減り、需要の半分を占めるといわれてい るテーブルエッグ需要が堅調であったにも関わらず、昨年後半から余剰卵が発生気味とな っていることは、需要の半分を占める外食・加工用が相当に不振となっていることではな いかと、推察されます。 B 平成20年の鶏卵生産の過去との対比 過去の鶏卵生産量は平成5年に 2,597 千トンという最高生産量を記録してから、ほぼ 2,500 千トン台を維持し、平成 16 年の鳥インフルエンザ以降 3 年間は 2,400 千トン台を続けまし たが、平成 19 年からは以前のレベルに戻ってきたと言えます。 資料③の様に、平成5年 から5年ごとの鶏卵生産統計を比較してみましたが、この15年間で鶏卵生産量が横這い であるにも関わらずトップ 10 都道府県の占めるシェアは 43.5%から 50.4%に確実に上昇し ております。 また単独の県で平成20年に茨城・千葉両県で 186 千トンの生産量となっ ていますが、これは過去最高の生産量となりました。 単純に平成5年と20年の比較を したのが資料④です。これを見ると鶏卵生産量が 50 千トン減少していますが、関東・中国 の2地域での増産が顕著であり、近畿・九州の減産が非常に大きいものとなっています。 県別で見た場合には減少が大きい10県の内、5県が九州で占められています。 また近 畿地域で最大の生産地である兵庫県での減少も近畿地域全体での生産量減の大きな原因と なっています。 っています。 す。 増加した県では千葉・茨城・新潟という関東地域への供給基地が、目立 また近畿地域への供給増としては広島・岡山両県での増加が目立っていま 一昨年1月より本年1月まで続いた相場の西高東低現象は、この15年間の需給構 造の変化によるものであり、当分はこの傾向が継続するものと思われます。 資料①平成19年−20年の主要統計 生 産 量 家 計 消 費 量 雛餌付羽数(出荷) 一人当たり 数量(㌧) 前年比 数量(グラム) 配合飼料出荷量 成 鶏 用 前年比 数量(千羽) 前年比 数量(千トン) 前年比 19年 2,583,292 103.5% 9,885 99.9% 107,626 100.0% 5,878 100.9% 20年 2,547,459 98.6% 10,077 101.9% 102,480 95.2% 5,731 97.5% -2- 資料②平成19年/20年の鶏卵トップ10都道府県(数量単位:トン) 鶏卵生産トップ10 平成19年 都道府県 生産数量 鶏卵生産トップ10 平成20年 シェア 都道府県 生産数量 シェア 1 千 葉 185,034 7.2% 1 茨 城 186,607 7.3% 2 茨 城 181,572 7.0% 2 千 葉 186,414 7.3% 3 鹿児島 166,792 6.5% 3 鹿児島 165,196 6.5% 4 愛 知 137,368 5.3% 4 愛 知 136,498 5.4% 5 広 島 116,139 4.5% 5 広 島 118,004 4.6% 6 岡 山 113,942 4.4% 6 岡 山 113,311 4.4% 7 北海道 111,036 4.3% 7 北海道 110,571 4.3% 8 新 潟 99,658 3.9% 8 新 潟 95,734 3.8% 9 青 森 89,935 3.5% 9 青 森 88,809 3.5% 10 岐 阜 84,457 3.3% 10 岐 阜 82,354 3.2% トップ 10 合計 1,285,933 49.8% トップ 10 合計 1,283,498 50.4% トップ 20 合計 2,009,125 77.8% トップ 20 合計 1,988,662 78.1% 2,583,292 100.0% 2,547,459 100.0% 全 国 全国 資料③平成 5 年/10 年/15 年/20 年の鶏卵生産都道府県トップ 10 比較(数量単位:トン) 1993 年 府 県 平成5年 生産量 1998 年 シェア 府 県 平成 10 年 生産量 シェア 1 鹿児島 157,802 6.1% 1 鹿児島 160,949 6.3% 2 愛 知 136,358 5.2% 2 茨 城 157,837 6.2% 3 茨 城 125,364 4.8% 3 千 葉 152,507 6.0% 4 千 葉 124,080 4.8% 4 愛 知 135,063 5.3% 5 北海道 115,948 4.5% 5 北海道 112,984 4.4% 6 兵 庫 108,527 4.2% 6 広 島 101,872 4.0% 7 岡 山 93,977 3.6% 7 兵 庫 101,786 4.0% 8 広 島 93,102 3.6% 8 岡 山 97,101 3.8% 9 宮 崎 89,256 3.4% 9 青 森 81,679 3.2% 10 岐 阜 85,383 3.3% 10 岐 阜 78,621 3.1% トップ 10 1,129,797 43.5% トップ 10 1,180,399 46.4% トップ 20 1,879,730 72.4% トップ 20 1,877,338 73.8% 全国 2,597,684 100.0% 全国 2,542,465 100.0% -3- 2003 年 府 県 平成 15 年 生産量 2008 年 シェア 平成 20 年 府 県 生産量 シェア 1 鹿児島 172,695 6.8% 1 茨 城 186,607 7.3% 2 茨 城 168,755 6.7% 2 千 葉 186,414 7.3% 3 千 葉 144,414 5.7% 3 鹿児島 165,196 6.5% 4 愛 知 131,994 5.2% 4 愛 知 136,498 5.4% 5 広 島 109,722 4.3% 5 広 島 118,004 4.6% 6 北海道 109,118 4.3% 6 岡 山 113,311 4.4% 7 青 森 94,708 3.7% 7 北海道 110,571 4.3% 8 岡 山 90,912 3.6% 8 新 潟 95,734 3.8% 9 兵 庫 88,419 3.5% 9 青 森 88,809 3.5% 10 群 馬 79,918 3.2% 10 岐 阜 82,354 3.2% トップ 10 1,190,655 47.1% トップ 10 1,283,498 50.4% トップ 20 1,898,886 75.1% トップ 20 1,988,662 78.1% 全国 2,529,128 100.0% 全国 2,547,459 100.0% 資料④平成5年と20年生産量対比 地域別増減量推移 地域 地域別増減率推移 増減量 地域 増減率 1 関東 97,175 1 関東 119.8% 2 中国 38,697 2 中国 114.9% 3 東北 7,730 3 東北 102.2% 4 北陸 ▲ 228 4 北陸 99.8% 5 北海道 ▲ 5,377 5 北海道 95.4% 6 四国 ▲ 13,017 6 四国 91.2% 7 中部 ▲ 37,753 7 中部 90.5% 8 近畿 ▲ 52,116 8 九州 83.0% 9 九州 ▲ 85,336 9 近畿 72.0% 全 ▲ 50,225 国 増加量 143,602 減少量 ▲ 193,827 全 国 -4- 98.1% 都道府県別増減量推移 府県 都道府県別増減率推移 増減量 府県 増減率 1 千 葉 62,334 1 千 葉 150.2% 2 茨 城 61,243 2 茨 城 148.9% 3 新 潟 29,124 3 新 潟 143.7% 4 広 島 24,902 4 広 島 126.7% 5 岡 山 19,334 5 岡 山 120.6% 6 岩 手 11,715 6 岩 手 117.5% 7 鹿児島 7,394 7 群 馬 105.6% 8 群 馬 4,187 8 鹿児島 104.7% 9 青 森 3,816 9 青 森 104.5% 10 福 島 2,171 10 福 島 103.2% 11 香 川 2,044 11 香 川 102.9% 12 愛 知 140 12 沖 縄 100.5% 13 沖 縄 114 13 愛 知 100.1% 増加量 228,518 減少量 ▲ 278,743 全国 ▲ 50,225 15年間で減少が大きい県10県 府県 減少量 減少率 1 宮 崎 ▲ 34,610 -38.8% 2 兵 庫 ▲ 27,494 -25.3% 3 静 岡 ▲ 25,517 -33.6% 4 埼 玉 ▲ 18,406 -24.6% 5 福 岡 ▲ 14,703 -18.8% 6 石 川 ▲ 14,155 -38.2% 7 大 分 ▲ 14,005 -35.9% 8 熊 本 ▲ 11,912 -22.6% 9 長 崎 ▲ 9,958 -23.2% 10 富 山 ▲ 9,717 -30.1% 減少 10 県 ▲ 180,477 減少 34 都道府県 ▲ 278,743 -5-
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