プレイヤーノート/PBM 銀河チェス プレイヤーノート プレイヤーノート(その他回顧録) Play By e-Mail PBM 銀河チェス 担当:西園寺(アッテンボロー元帥) §•1. 承前 §•3. アルファスタック戦術 プレイヤーノートの後半は、主に戦術立案及び戦力表清 書担当として同盟側の作戦に携わった身として、2016 年 05 後に帝国側もキャッチアップしたことでゲーム内の事実 上標準戦術となった。 月 07 日時点で知り得た情報及び記憶をもとにゲーム内のト ピックを振り返ることとする。 統率の高い艦隊司令官を基幹とし*1 、能力の高い参謀・副 司令を付け、分艦隊司令を充足した艦隊をアルファユニッ トとして編成、これを三個まとめてスタックとしたもの。 一陣に三個のユニットを並べる事でフリーとなる敵をな §•2. 戦力表 くし、集中攻撃の発生を防ぐ(と同時に、敵艦隊が少ない場 合には集中攻撃の発生を狙う)。これにより、一対一で戦う 「銀チェス」のキモ。…ではあるが、その扱いは同盟にお 有力な艦隊が一撃で潰走しない限り集中攻撃を受けること いて(帝国においても苦労はあったと思うが)頭痛のタネで はなく、全艦隊の潰走、追撃判定といったより壊滅的な現象 あった。 を予防することができる。 人事、作戦、配分の三要素が相互に絡み合っているが、連 これをスタック単位の波状攻撃に敷衍したデュアルス 動しているわけではない。このため、ワークシート間の矛 タック、トリプルスタック戦術も考案されてはいたが、人 盾が容易に発生するうえ、その根絶が難しい。代表が取り 的資源、艦艇数ともに所要量が膨大であり、実現は至難で まとめて公開し各自が検証、という形式を取ってはみたが、 あった。 提出間際の指摘事項はストレスの素となり、とりまとめ者 がキレかけるという事態もしばしばであった。 不肖自分が戦力表取りまとめを引き継いだのは第 5 ター ンアクションの提出から。 ワークシート操作への慣れだけなら適任は他にもいたが、 §•4. IFCON システム データの突合処理なども含めた手間の問題、艦隊編成案作 IFCON = Integrated Fleet CONtrol(統合艦隊管制)シ 成との兼ね合いもあって最も「手っ取り早い」ことが任され ステム。同盟が投入した新技術である。効力は「三個艦隊 た理由である。 を一人の指揮官の統率値で指揮できる」こと。 作成にあたっては、 「意図が正しく GM に伝わること」を 統率は艦隊戦力の基礎となるパラメータであり、このパ 最優先事項とした。いかに作戦が巧緻を極めようが、伝わ ラメータが高い提督はごく一握り。だが、この技術と共に らないのでは意味がない。 スタックの指揮を執ることで戦力の底上げができる。 特殊なツールをわずとも、スタックを組む艦隊のグルー デメリットは、「司令官の疲労」という表現で連戦へのペ プを色分けしたり、要所にコメントを挿入したりすること ナルティが示唆されていたことと、一個艦隊の潰走がスタッ は Excel の機能でもできること。併せて、「プロット」ワー ク全体に波及すること。 クシートを追加し、ゲームの各フェイズにおいて行う各行 艦隊戦シミュレータへの反映は、「統合指揮」パラメータ 動をステップ毎にウォーターフォール形式で記述した(第 7 に作戦群指揮官の統率値実数を入力することで行えるよう ターンからは作戦図の貼り付けも行うようになった)。 にした。 *1 さすがにマイナス補正がかかると不味いので、極端に戦闘能力が低い者は適さないが。 ―1― PBM 銀河チェス/プレイヤーノート 開発された IFCON システムの実戦試験は第 7 ターンの まで上がることはない。そこに「何か」があるということに なる。 ワールシュタット攻撃で行った。 あえて一線級でない提督をヤンの指揮下に置き、どの程 併せて GM にも照会を行ったが、「ミスではない」「統率 度能力の底上げが行われるかを検証することが目的であっ が関係している可能性を示唆する」旨の回答を得た。つま た、のだが。ここで重大なミスを犯す。 り、「統率が関係する何らかの新要素によって、ミッターマ 前ターンにヤンを敢えて中央から外した陣立て(翼側突 破からの集中攻撃を企図していた)を採っていたのだが、こ イヤー+ルッツの防御力 (192.5) が 19 相当 (270) になった」 ということだ。 れをそのまま引き継いで記載しまったのである。その結果、 パエッタ社長の前にラインハルトが現れることとなり、半 そこからの試行錯誤はかなりごちゃごちゃしている。 殺しに。そればかりか、IFCON のデメリットである「一個 一見上手く行ったようで、他のサンプルに適用すると上 艦隊の潰走が全艦隊に波及」がご丁寧に発動、全面的敗北を 手く行かない。ラインハルトに適用するとヤン艦隊が一撃 喫する羽目になってしまった。注意一秒、怪我一生。個人 で消滅したりする*3 。 で、結論としては「副司令の攻防補正に司令官の統率補正 的にはケジメ案件である。 を上積みする」という式に落ち着いた。イベントで GM が 一見強力そうに見える技術ではあるが、統率値が強化さ 口にした内容とは一致しないが、ダイスを使わずに近似値 れて上昇するのは主に攻撃力であり、防御力の上昇には寄 を出すという意味合いでは極端に外れた結果でもない。し 与しない(と戦闘結果から推測されている)。つまり、アド かも、リスクらしいリスクがない。 また、戦闘結果からの逆算でラインハルトの統率が 19 に バンテージを活かすためには情報能力を高めて先手を取り、 最大の攻撃力で敵を先んじて消耗させることで間接的に損 上昇した可能性も示唆されたことで、「手が付けられん」と 害を減らす必要がある。 投げ出したい気分になったのも事実である。有り体に言っ 運用に制約はあるが、この技術があって初めて三個艦隊× て、ヤン艦隊でもジリ貧にしかならない。陣形不利なんか引 三陣、9 個艦隊 27 万隻という陣容での戦闘(アムリッツァ いた日にはそれだけで壊滅しかねないのだ。このため、末 撤退戦∼イゼルローン防衛戦)が可能となったのも事実で 期の同盟の作戦立案は困難を極めたが、ゲーム終了に救わ ある。 れたというのが正直なところではないかと思う。 「銀英伝」である以上、ゲームデザイン上の「バランス」 というのは同盟と帝国が互することを意味しない。同盟は あらゆる要素で劣勢であるが、ヤン無双によってこれを支 §•5. 幕僚指導ドクトリン え、あるいは覆すのが銀英伝の「お約束」である。しかし、 帝国が実用化した新技術。 単なる劣勢ではなく、システム的にヤンが手も足も出なく 第 9 ターンでの同盟軍精鋭部隊の敗北は衝撃をもって迎 なることでその構図をぶち壊したという意味では、いささ えられたが、「負けに不思議の負け無し」というには不可解 か以上にバランス感覚を欠いた実装であったと言わざるを な点が多かった。負け戦の分析というのは気が滅入るもの 得ない。 ではあるが、できなければゲーム終了を待たず破滅である。 この分析にも艦隊戦シミュレータを使用した。戦闘結果 の予測ではなく、戦闘結果に合致するパラメータの逆算に、 §•6. 概観∼総括 同盟は表向き攻勢を取りこそしたが、その構想は最後まで である。 手前味噌ながら、サンプルとしてアッテンボローの戦績を 防御的なものであった。階級構造の違いによる艦隊規模の 利用した。攻撃力に関して超一流ではないとはいえ、相対す 優勢はいずれ消失することは判っていたし、新技術の効果 るミッターマイヤーの損害が少なすぎたのが疑問だったか は未知数。人材層の厚さに至っては何をか言わんやである。 らだ。パラメータの直接操作*2 などを繰り返し、ほぼ同様の キャッチアップを受けたあとは全面守勢という名のジリ 戦闘結果を得るには、ミッターマイヤーの防御力が 270=19 貧に陥るわけで、それまでにどれだけアドバンテージを稼 相当であるという推定を導いた。リアクションの描写から いで破滅を遅らせられるか。突き詰めればそこである。第 ミッターマイヤーの副司令がルッツであったことが判明し 二次アムリッツァ侵攻の時点から、同盟は常に「退き方を頭 ているが、この組み合わせで補正を行っても防御力がここ に置いた」戦争をしてきたといえる。 *2 *3 これはデータの直接操作などを伴う半分開発寄りの話で、公開されているシミュレータ単体では実施できない。念のため。 戦闘式に乗算が多用されているため。ただ、同様の示唆は GM が数度にわたって行っており、さほど的外れでは無いと思われる ―2― プレイヤーノート/PBM 銀河チェス そんな中、最善を追求してプレイきたわけではあるが、相 たのではないかという後悔は付きまとう。 手があり、人のすることである以上、過誤や蹉跌も少なくは そして、決定的な転機となった第 9 ターン。 ない。 このターンに帝国が見せた人事上の妙手は、キルヒアイ 前述のとおり、第 6 ターンのワールシュタット戦におけ スの副司令官にシュライヒャーを付けたこと。この一事で る敗北は僅かな記載ミスから生じたものではあるが、もう少 もって帝国は同盟の作戦構想を崩壊させ、戦術上の大勝利 し大きく捉えると、フェザーン方面への過大な戦力抽出か と攻勢・防勢の転換という成果を成し遂げたと自分はみる。 らくる構想の不徹底を挙げることもできよう。原作にラグ 後知恵でもこれを覆す方法はないかと後日検討を加えたが、 ナロク作戦が存在した以上、後知恵によらずその可能性を 打つ手はなかった。完敗である。 排除して突き進むには単なる蛮勇以上のものが必要であっ しかし、どうにか同盟はその後の後退戦を完遂。結果的 たように思うが、真に全力を北方に投入できていれば、その にゲーム開始時のラインを維持して 12 ターンを終えること 後の大敗に通じる流れを変えられたかも知れない、という ができた。 結局、同盟の破滅を防いだのは小手先の作戦ではなく、盤 想像をすることはある。 第 7 ターンのフォルゲンにおいてシェーンコップを喪っ たことはまだ兵家の常と言える結果かもしれないが、僅差 石の建艦能力によって攻性防御を支えきったドーソン・プ ランの実現に負うところが大ではなかったかと思う。 であったが故に、何処かでその天秤を傾け直す妙手があっ ■■ ―3―
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