和牛の受精卵移植でがっちり所得アップ

技術
情報
平成 28 年度県立畜産技術センター試験研究課題及び事業
県立総合技術研究所畜産技術センター 次長兼技術支援部長 山田 博道氏
平成 28 年度に実施する試験研究課題及び行政支援
事業が確定し,内容はつぎの表のとおりです。
本年度から開始する課題,完了する課題,成果の技
術移転を行う飼養技術及び育種繁殖に関する研究課題
は10課題です。試験研究課題のうち外部資金(競争
的研究資金)によるものは全体の50%を占めており,
当センターの研究員の研究開発の実力が全国に認めら
れた結果と評価しています。
また,TPP対策として和牛体外受精卵供給を行う
新たな事業が始まります当センターの高い技術力でこ
の事業を支えていきます。
成果獲得に向けて,研究員一同,邁進します!
研究内容等の問い合わせは,技術支援部にお願いし
ます。
平成 28 年度の試験研究課題および事業一覧
年度
1
H26 ~
28
2
H28
3
H28
4
H28
5
H28
6
H26 ~
28
7
H27 ~
30
8
H28 ~
30
9
H28 ~
30
10
H28
11
H27 ~
12
H28 ~
30
課題名
研究種別
内容概略
ダイレクト移植可能な受精卵のガラス
ダイレクト移植の受胎率を向
県単開発研究
化保存法と簡便・容易なガラス化胚移
上させる新たな技術開発
植技術を開発する。
県産和牛の出荷頭数の増加と飼料コス
和牛用 TMR 生産・利用技術の 県単成果移転促進 ト低減ためTMR調製・給与技術の開
発,和牛用TMRセンターの設立にむ
移転・普及
事業
けた技術移転を行う。
競争力あるLED製造技術を
県 単 戦 略 研 究( 成
ビタミンA測定器の製品化支援
県内多くの産業に移転するた
果移転)
めの研究
採取した卵子が移植可能な体外受精卵
高発生能卵作出可能な個別化
県単事前研究
になる割合を高める技術を開発する。
対応型体外成熟技術の開発
次世代差別化要素を持った牛づくりを
広島県産牛肉のうま味向上に
県単事前研究
目標とし,飼養と遺伝管理によるうま
関する研究
味成分向上の技術開発を行う。
新たに見出した難培養性ホモ発酵型乳
難培養性ホモ発酵型乳酸菌を
酸菌を用いて,自給粗飼料の貯蔵にお
用いた発酵飼料の好気的変敗 競争的資金研究
ける好気的変敗とカビ発生の抑制を図
及びカビ防止技術の開発
る。
繁殖成績の向上や栄養管理の
開発センサによる暑熱の影響把握と授
高度化のための次世代精密家 競争的資金研究
精適期を解明し,効率的繁殖技術を開
畜個体管理システムの開発
発する。
汎用型微細断収穫機を活用したWCS
用稲等の効率・低コスト収穫調製シス
和牛産地を支える水田里山の
競争的資金研究
テムの開発,和牛用「たちすずか」TM
戦略的展開
Rの開発・給与実証を行う。
籾米サイレージ等を混合した和牛用T
籾米サイレージ等を活用した
MR給与技術を開発し,牛肉の付加価
低コスト牛乳生産技術及び和
値向上および斉一性向上効果により高
競争的資金研究
牛肉の差別化技術の開発と実
い地域ブランド牛肉生産体制強化を図
証
る。
黒毛和種繁殖雌牛の枝肉6形
繁殖雌牛の枝肉 6 形質におけるゲノム
質におけるゲノム育種価の実 競争的資金研究
育種価の実用化に向けた精度検証を行
用化に向けた検証
う。
優秀な種雄牛を効率的に作出し,県有
種雄牛の凍結精液を安定的に生産供給
家畜人工授精事業
行政支援事業
する。また広島県産和牛の受精卵移植
の普及・定着を加速する。
TPP対策として酪農経営の収益性の
向上と広島産和牛の生産基盤の強化拡
広島血統和牛増産事業
行政支援事業
大を目指して,乳用牛から和牛子牛を
生産するため受精卵の供給を行う。
担当部
育種繁殖研究部
飼養技術研究部
飼養技術研究部
育種繁殖研究部
育種繁殖研究部
飼養技術研究部
飼養技術研究部
育種繁殖研究部
飼養技術研究部
飼養技術研究部
育種繁殖研究部
育種繁殖研究部
育種繁殖研究部
広島
2016年
(平成 28年)5月
〔№ 266〕 26
広島県からのお知らせ
り
和牛の受精卵移植で 所得アップ
がっち
全国的に和牛が不足しており,子牛の価格が高騰し
ています。県内 ET レースでも,4月は全体平均で 50
万円超えとなりました(平均 70 日齢)。酪農経営にお
ける和牛生産は,搾乳に続く,大きな収入の柱となっ
ています。
しかし,受精卵自体も全国的に品薄となっており,
簡単には入手出来ない状況にあります。
そこで,広島県では,次のとおり,新規に受精卵増
産事業を立ち上げ,酪農経営では,和牛受精卵移植で
所得を向上,そして和牛の生産を下支えして頂くこと
により,県内の乳用牛等肥育経営では和牛肥育の拡大
で経営改善を図る仕組みを構築していきます。
広島県の受精卵増産事業(H 28 ~)
【広島県による和牛受精卵採卵計画の推移】
【取組その1】
和牛の体外受精卵を大幅に増産します(1,500 個)
年 度
H24 年度 ~H26 年度 H27 年度
【取組その2】
400 個
600 個
生産された和牛が県内に仕向けられる体制を構 採卵計画個数
築する場合(契約取引),受精卵を事業価格で提供し
H24 年度 100%
100%
150%
ます
【取組その3】
依頼に基づき,手数料を頂き,農家所有の和牛から体外受精卵を製造します
【取組その4】 受精卵移植師養成講習会を開催します
広酪から一言
広酪もこの取り組みを応援します。
効率的に乳用後継牛を確保して,和牛受
精卵移植に取り組み,所得向上を目指しま
しょう。
なお,条件はありますが,酪農家所有の
乳牛からの体外受精卵製造も一部可となっ
ています。詳細はお問い合わせください。
H28 年度
1,500 個
375%
☆次回は,新規事業の詳細とお奨めの移植方法を紹介する予定です☆
◇問い合わせはお気軽に最寄の機関まで 広島県西部畜産事務所 畜産振興課 振興 G (082)423-2441
東部畜産事務所 畜産振興課 振興 G (084)921-1311
北部畜産事務所 畜産振興課 振興 G (0824)72-2015
農林水産局 畜産課 酪肉振興 G (082)513-3598
ほぼ 60 万円に届く状況で推移しており、F1 子牛の
広島県ではチャレンジプランに「酪農経営所得向上」
価格との差は約 30 万円を超えています。
と「広島県産和牛増産」等の対応を掲げ、この着実な
実行を図るとして、広島県内に流通する和牛肉の消費 ▼今後の相場動向は、和牛肉の消費に対する品薄傾向
から、この価格差の状況はしばらく続くとの予想も
量に占める広島県産和牛の消費率の向上を盛り込み、
あります。
この対策として、平成 28 年度では、体外受精卵 1,500
個の大幅増産を行う計画をもって、既にその為の取り ▼以上の点において、あくまでも乳用雌牛の後継牛確
保を行ったうえで、前述の和牛受精卵移植に挑戦さ
組みを開始しています。
れては如何でしょうか。 ▼広島県は、広島県産和牛の増産に向けて、仮腹牛と
して酪農家所有の乳用雌牛への和牛受精
卵移植に大きな期待が寄せています。
▼受精卵移植は、人工授精と比較して受胎
591
率が低い点があるが、これら点を考慮し
受精卵移植の受胎率向上を図るための飼
養管理等の対応が必要であります。
282
▼これら課題の克復策を講じながら、改め
て酪農経営所得向上を図る上で和牛受精
卵移植は有効であります。
▼特に、平成 27 年 2 月以降の ET 和牛子牛
の平均価格は 40 万円を超え、最近では
広島
27
2016年
(平成 28年)5月
〔№ 266〕
日本政策金融公庫
80
農林水産事業からのお知らせ - その -
広島県の酪農家の皆様へ
このコーナーでは日本政策金融公庫から、酪農家の皆様の経営に役立つ情報を提供して参ります
TOPIC スーパー L 資金の貸付当初5年間無利子化制度の継続が決定
認定農業者の方を対象に、設備資金や長期運転資金などで総合的にご利用いただけるスーパー L 資
金について、平成 28 年度も貸付当初 5 年間の金利負担が実質無利子となる制度が継続されることと
なりました。今回は、その概要をご紹介いたします。
< スーパー L 資金実質無利子化のための金利負担軽減措置 >
平成 28 年度において、「人・農地プラン」に基づき、競争力・体質強化に向けて意欲的に生産拡
大等に取り組む農業者等を支援するため、( 公財 ) 農林水産長期金融協会が利子助成することで貸付
当初 5 年間の金利負担が実質無利子となる制度が、今年度も継続措置されます。
※利子助成の上限は 2% です。このため、日本公庫の貸付金利が 2% を超える場合は、2% を超えた
部分は借入者の負担となります。
1. 利子助成の対象者
○「人・農地プラン」に地域の中心となる経営体として位置付けられた認定農業者
※「人・農地プラン」とは、集落・地域が抱える人と農地の問題解決のため、今後の地域の中心とな
る経営体はどこか、地域の中心となる経営体とそれ以外の農業者を含めた地域農業のあり方等に
ついて、集落・地域における話し合いや市町による検討会を通じて策定されるものです。詳細に
ついては、お住まいの市役所・町役場にお問い合わせください。
2. 利子助成の対象事業
○農地等の取得・造成、施設・機械の取得、改良・造成等、長期運転資金
※利子助成の取扱額には限りがあるため、実質無利子とならない場合がございます。
3. 利子助成を受けられる期間
○貸付当初 5 年間
※ 6 年目以降は、通常の利息をお支払いいただきます。また、この措置は毎年度国の予算内で実施
されるものであり、予算の状況によっては、利子助成の内容に変更が生じる可能性がございます。
< ご留意いただきたい事項 >
○実質無利子化のための利子助成措置は、毎年度国の予算の範囲内で実施されるものであるため取
扱額に限りがあり、資金の使いみちやご融資の実行の時期によっては、ご希望に添えない場合が
ございます。
○審査の結果により、ご希望に添えない場合がございます。
○上記以外にも資金をご利用いただくための要件等がございます。詳しくは、下記の連絡先までお
問い合わせください。
※詳細については、農林水産省のホームページをご参照ください。
⇒ http://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/hito_nouchi.html
㈱日本政策金融公庫 広島支店 農林水産事業
所在地 : 〒 730-0031 広島市中区紙屋町 1-2-22 広島トランヴェールビルディング 6 階
TEL:082-249-9152 FAX:082-249-9102
○相談窓口も以下の場所で開催しております。
三次相談窓口(6 月は 1 日と 15 日)
場所 : 三次農業協同組合本店
庄原相談窓口(6 月は 2 日と 16 日)
場所 : 庄原農業協同組合本店
福山相談窓口(6 月は 10 日)
場所 : 日本政策金融公庫福山支店
※予約制で開催しております。ご来店の際は事前にご連絡をお願いいたします。
広島
2016年
(平成 28年)5月
〔№ 266〕 28
家畜改良事業団
黒毛和種のオス精液で高く売れる F1
乳牛の性選別精液については、これまでも何度か本誌を通して紹介しておりますが、今回は和牛の選別精液(♂
精液)についてご紹介します。
① 仔牛の性別による価格差 ( 広島三次F1スモール市場 H27 年 4 月~ H28 年 3 月分集計 )
性別
雄
雌
頭数
2,840
2,601
平均日数
34
35
平均体重
63
59
平均価格(税抜)
211,215
169,785
価格差
約 4 万円
② 性選別精液の種類と価格
1 万円クラス
種雄牛
P 黒 829Y 茂晴花
P 黒 730Y 美津百合
6,000 円クラス
P 黒 876Y 秋忠平
P 黒 827Y 百合勝安
父
平茂晴
百合茂
母の父
第 1 花国
美津福
勝忠平
百合茂
平茂勝
平茂勝
5,000 円クラス
P 黒 656Y 平茂紀
P 黒 612Y 菊花国
P 黒 555Y 奥安福
P 黒 446Y 天保院斗
平茂勝
第 1 花国
安福 165 の 9
平茂勝
安福(岐阜)
菊谷
茂宗
安福 165 の 9
③ 受胎率
下の表は当団が収集した乳牛に F1 用として人工授精した場合の受胎
率になっています。
受胎率としては乳牛の♀精液と同様ないし、若干ですが和牛の♂精
液の方が受胎率は高いという結果になっています。
<肉用牛>
未経産牛
経産牛
合 計
授精頭数
4
20
24
受胎頭数
3
9
12
受胎率
75%
45%
50%
P 黒 827Y 百合勝安
乳牛の♀精液の利用などで十分な後継牛を確保された方は、♀仔牛
より高く売れる♂仔牛の生産する方法として、和牛の♂精液の利用を
検討してみてはいかかでしょうか?
なお、性選別精液 Sort90 は、雄または雌の生産を 100% 保証するも
のではありません。
P 黒 876Y 秋忠平
詳細は岡山種雄牛センター(電話 0868-57-2475)
四宮、または大島までお問い合わせ下さい。
広酪の組合員を対象とする「6月会議」のお知らせ
広酪では、来る 6 月 24 日(金)
午前 11 時から三次ロイヤルホ
テル(三次市十日市東六丁目 13
番 25 号)を会場に第 22 回通常
総会を開催します。
これに関連しまして、次の日
程で「地区懇談会」を開催し、広
酪の業務執行状況とともに組合
員皆様との意見交換会を行いま
すので、通常総会、地区懇談会
に出席下さいますようご案内し
ます。
地域
西部
東部
南部
備北
広島
29
2016年
(平成 28年)5月
〔№ 266〕
開催日時
開催会場
NOSAI 広島・北広島家畜診療所会議室
6 月 10 日(金)
■住所 : 山県郡北広島町春木 461-1
午後 1 時 ~ 午後 3 時
■電話 :0826-72-2128
広酪東部事業所会議室
6 月 14 日(火)
■住所 : 府中市上下町上下 1507-4
午後 1 時 ~ 午後 3 時
■電話 :0847-62-3060
竹仁地域センター会議室
6 月 16 日(木)
■住所 : 東広島市福富町下竹仁 501-11
午後 1 時 ~ 午後 3 時
■電話 :082-435-2301
広酪本所会議室
6 月 18 日(土)
■住所 : 三次市東酒屋町 306 番地の 65
午前 10 時 30 分 ~ 正午
■電話 :0824-64-2071