地方消費者行政充実埼玉シンポジウムの報告 消費者行政充実埼玉会議 代表幹事 池 本 誠 司 11月19日(水)午後2時~4時、さいたま市で、表記シンポジウムを開催しました。 共催団体は、埼玉弁護士会、埼玉司法書士会、埼玉消費者被害をなくす会。 平日午後の開催は参加者数よりも自治体職員の参加を呼びかけたためです。参加者数68 名の約半数が行政職員と相談員でした。参加者数が主催者の予想を超え、配布資料の追加コ ピーを必要としたため、少し遅れて参加された方にはご迷惑をお掛けしました。 <第1部>報告 ①地元相談員(埼玉消費生活コンサルタントの会)から、相談現場の実情や要望を報告。 ②一元化準備室木村茂樹参事官から、消費者庁設置関連法案の概要とともに、第2次補正予 算案に計上された「地方消費者行政活性化基金」の内容を紹介。 「活性化基金」は、9月の概算要求事項から進んで、①本年度内に3年間の交付金を基 金として一括支出し、次年度早々から各地の実情に応じて年度単位を超えて柔軟な計画を 立案し支出できること、②都道府県と市町村の活性化計画を都道府県が取りまとめて基金 を活用することにより、地域の消費者行政活性化計画をより総合的に推進することができ ること、③消費者庁関連法案の成否にかかわらず活性化基金による地方への支援を進める ことなどの特徴があります。 <第2部>パネルディスカッション 相談員(新井)と弁護士(池本)から木村参事官に対していろいろと質問や要望を出し、 木村参事官にコメントを求めるという形式。 以下、主な事項です。(消費経済新聞が来週号に主なやり取りを掲載するそうです) ①消費生活センター・相談窓口の整備について (相談員)相談員配置の増員や待遇改善が必要であり、これに対する国の財政支援が不可欠で ある。交付金を人件費にも支出できるように求める。 (弁護士)センターの要件(目安)を政令に明確にすることが必要。センター設置に至らない 市町村も相談窓口の設置は義務的という意味でよいか。相談員の資格や処遇につい ても明確化すべき。相談員の人件費に対する財政支援は不可欠である。 (参事官)センターの要件は、週4日などを予定しているが、あまり詳細には定めず、センタ ー単独設置か共同設置かなど、自治体の自主性を尊重する。 相談員の人件費が重要であることは理解しており、相談拡充等でできるだけ盛り 込むよう財務省と折衝中。もっとも、相談員の人件費増額を正面から交付金で賄う のは難しい。 これとは別に、現在でも「地方交付税」の算定基礎の中に「消費者行政費」の計 上がある。交付税は使途の規制はないものの、算定基礎が消費者行政費とされてい ることを踏まえ、自治体内の配分において活用してほしい。 ②パイオネットの追加配備について (コーディネーター)第1次補正予算にあったパイオネットの追加配備は本年度中に実現する のか。 (参事官)PIO-NETシステムの刷新を年度内に行い、次年度に追加配備する。現在はセ ンターのみだが、さらに約500か所程度の追加配備を予定している。 ③活性化基金について (弁護士)単年度の交付金から3年間の基金とし、自治体ごとの申請から都道府県による取り まとめとするなど、評価できる点もあるが、自治体からは3年経過後を考えると相 談員の増員も難しいという消極意見や、次年度から実施するには自治体の負担割合 をゼロにする必要があるという要望が強いがどうか。 (会場発言)自治体職員としても、4年目以降への心配が強い、交付税は自治体の予算配分で 消費者行政に回る拘束力がない。 (参事官)3年経過後の延長の可能性は答えようがない。地方交付税の消費者行政費は、都道 府県に対し170万人の標準団体で3000万円、市町村は10万人の標準団体で 500万円が積算されている。概ね人口割りで計算している。(地方交付税の不交 付団体もある) (弁護士)埼玉県内の市町村調査によれば、市町村への交付税額(1人当たり50円)に対し、 消費者行政予算が1人当たり50円以上は40市のうち9市に過ぎず、残りは交付 税額にすら達していない。13市は半分の25円にすら達していない。自治体の予 算配分の中で消費者行政を重視せよという声を、消費者団体から上げる必要がある。 ましてや交付税増額分は確実の消費者行政に回せと働きかける取り組みが必要。 (参事官)国から交付金が出るから自治体の消費者行政予算を減額するという扱いは、交付金 支出の要件において認めない。地方自治体における消費者行政の充実の取り組みを 促す交付金である。 ④相談員の資質の向上・研修強化について (相談員)相談員は不十分な情報の中で手探りの相談処理をしている。研修は自主的に実施 してカバーしている。劣悪な待遇で相談員が続けられない例もある。1人体制の相 談窓口では平日の研修会に参加しにくい。センター内での事例検討会も必要。 (弁護士)あっせん処理能力を向上するには少人数の事例検討会など多様な研修方法が必要。 弁護士等の専門家の参加も多角的なあっせん処理能力の強化に向けること。地方の 多様な研修方法を認めるべき。 (参事官)基金における研修制度への支援は、できるだけ柔軟な制度運用を認める。 ⑤ベテラン相談員による巡回指導(国セン事業)について (相談員)若手相談員の処理能力の強化には意味があると思うが、誰を選任するか、どのよう な指導をするかなど不明確な点が多く、相談員の中でも賛否両論がある。 (弁護士)相談員が事案を一人で抱え込まないために巡回指導は有用である。指導員の選任や 指導方法など、地域の実情に応じて柔軟な運用を認めること。 (参事官)各地の現場の声を反映するものにしたい。 ⑥啓発・教育,団体支援,事業者規制,商品テストなど (弁護士)今回の政府の議論は相談窓口の拡充に傾いているが、地方消費者行政の強化は相談 窓口だけではない。相談情報を啓発・教育,団体支援、事業者規制などに活用して 被害防止を図ることが重要。そのための予算活用も広く認めること。 (参事官)消費者行政全般の充実強化に向けた地域の独自メニューを尊重したい。支援メニュ ー⑦のオリジナル事業がこうした事項を広く含む。ただし、交付金を職員の人件費 に充てることは無理。 ⑦活性化計画の策定スケジュールについて (コーディネーター)第2次補正予算案の審議が遅れているが,年度内支給は時間的に間に合 うのか。自治体はいつまでに何を準備をする必要があるか。 (参事官)補正予算が1月以降にずれ込んでも、年度内に交付金を都道府県の基金に支出する ところまで実行するように、11月中に準備を開始する。 都道府県は、2月までに「活性化計画概要」と「経費概算」を国に提出し、「基 金利用条例」を制定する。国は、配分額を決め3月中に支出する。準備作業として は、計画要綱の提示や条例のモデルなどを国から示す予定。年度内の計画概要と経 費概算と条例は都道府県が準備し、次年度には市町村と都道府県で具体的な活性化 計画を策定し、取りまとめて国に提出することが必要。 (弁護士)活性化計画は、県と市町村が合同で策定する議論をすることが効果的である。こう した協議会に民間有識者や消費者団体を加えて議論することが望ましい。 (参事官)各地の積極的な計画策定を期待する。 ⑧国民生活センターについて (弁護士)消費生活センターへの支援は、独立行政法人国民生活センターの人員の大幅拡充が 必要だが、ほとんど議論されていない。独立行政法人でも政策的に必要な団体であ れば整理合理化計画の対象から除外して増員すべきではないか。国立公文書館の議 論が参考となる。 (参事官)国民生活センターの位置づけについては、これまであまり議論されてこなかった。
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