花と緑を使ったまちづくり ひょうごの花と緑のまちづくり活動100(概要) 調査研究実施者:兵庫県立淡路景観園芸学校主任景観園芸専門員 (兵庫県立大学自然・環境科学研究所 教授)平田 富士男 花と緑のまちづくり活動事例の収集 (特)アルファグリーンネット(AGN)の協力により、会員ネットワークを通 じて「会員が推薦したいと思う花と緑のまちづくり活動」を自薦他薦を問わず収集 した。 平成20年3月 財団法人兵庫県園芸・公園協会 花と緑のまちづくりセンター 目 次 1.研究の背景・目的 2.研究の方法 ………………………………………………………………………………1 ……………………………………………………………………………………2 1)花と緑のまちづくり活動事例の収集 3.結 ……………………………………………………2 2)花と緑のまちづくり活動の内容の把握 …………………………………………………2 3)花と緑のまちづくり活動の内容の分析 …………………………………………………2 果 …………………………………………………………………………………………2 1)花と緑のまちづくり活動事例の収集 2)花と緑のまちづくり活動の内容の把握 4.指導の方針 ……………………………………………………2 …………………………………………………2 ……………………………………………………………………………………4 添付資料 : ひょうごの花と緑のまちづくり事例100 1.研究の背景・目的 兵庫県内においては、特に阪神・淡路大震災以降、その教訓として「自然との共生」「住 民主体のまちづくり、コミュニティづくり」の重要性が強く認識され、住民が主体的にさ まざまな形で、そのための活動を展開してきている。 そこにおいて、「花や緑」を活用した活動は、誰もが気軽に参加しやすく、またその成果が早く 発現し、さらにその成果がわかりやすいことなどから、多くの住民にとって有効なツールと して認識され、利活用されている。 しかし、これらの活動は、取り組み安いとは言え、始めさえすれば必ず大きな成果が上 がることが保証されているわけでもなく、また、活動がうまく始まったとしても、それが 長期にわたって継続していくことも保証されていない。 また、活動の内容がガーデニングと似ていることから、花や緑を育てること、飾ること 自体が目的化してしまい、そこから次のステップであるまちづくりやコミュニティ形成と いったその先の真の目的にまで到達していかないこともある。 このようななか、県内では多くの住民が、いろいろな取り組みを多様な形で主体的に行 ってきており、そこで直面するいろいろな課題を克服しながら、その活動の継続性確保に 努めている。 このような活動展開で、大きな役割を果たしているのが県立淡路景観園芸学校の「まち づくりガーデナーコース」修了生で、兵庫県知事から「まちづくりガーデナー」として認 定されたボランティアの皆さんである。 さらに、まちづくりガーデナーの皆さんは、NPO 法人アルファグリーンネットを組織し、 単独で活動するだけでなく、横のネットワークを形成して、技術や情報を交換しながら組 織としてその活動展開を進めていっている。 そして、それらの活動は、単にガーデニングの域を超えた、まちづくり、コミュニティ づくり、さらには環境共生の社会づくり、そのための啓発、環境教育にまで及んでおり、 花や緑のもつ機能を最大限に活かしているものと言える。また、その活動のなかには、単 に花や緑で美化をするというものだけでなく、その活動にいかに人を巻き込むか、いかに 継続性を確保するか、いかに行政と連携するか、さらにはいかに財源を確保するかなど、 活動の発展と継続、展開、多様化を見据えた「しっかりとした社会運動」として成長して きており、花と緑のまちづくり活動の新たな段階を模索するものとも言える。 ここにおいて、「花と緑のまちづくりセンター」は、「緑のパトロール」と一体となって 県内における住民に主体的な花と緑のまちづくり活動を掘り起こし、活性化させ、そして 持続的なものにして、さらにはその活動の効果をまちづくりのあらゆる場面に広く波及さ せていく役割を担っている。 このような期待される機能を適切に発揮するためには、住民にどのように働きかけ、起 -1- こった活動をどのように誘導していくかについて、「実例に根ざしたまちづくり効果の明確 な実践的かつ具体的な指導方針」を有しておく必要がある。 そこで、本研究では、これら花と緑のまちづくり活動の現状と内容をできるだけつぶさ に把握し、そこから、それらの活動のさらなる展開に参考となる事例を引き出し、それら をわかりやすく整理し、今後の花と緑のまちづくり活動の現場での指導の参考書として活 用できるようにしようとするものである。 2.研究の方法 研究は、以下のような方々で、本年1月から2月にかけて行った。 (1)花と緑のまちづくり活動事例の収集 まず、基礎的データとして県内では、どこでどのような花と緑のまちづくり活動が行われて いるのか、実例をできるだけ集めることとした。 収集にあたっては、(特)アルファグリーンネット(以下「AGN」と記す)の会員ネットワ ークをつうじて、「会員が推薦したいと思う花と緑のまちづくり活動」を自薦他薦を問わずあげ てもらうこととした。 (2)花と緑のまちづくり活動の内容の把握 収集にあたっては、単に活動の内容を把握するだけでなく、「まちづくりへどのように広 がっているか」「活動の継続性確保にどのような取り組みをしているか」など、今後の指導 上の重要なポイントとなる点を明らかにすることとした。 そこで、事例収集にあたっては、推薦用のアンケート用紙に上記の内容を記入する欄を 設けた。 (3)花と緑のまちづくり活動の内容の分析 上記会員ネットワークをつうじて収集された事例を、地域別、活動タイプ別に分類する とともに、そこから引き出される特徴や他に参考となるべき点を抽出して「有効なまちづ くり指導の方向性」を提示する。 3. 結 果 (1)花と緑のまちづくり活動事例の収集 AGNの協力を得て事例収集を行ったところ、2月中旬までに会員を中心に約108通 の事例が提出された。 (2)花と緑のまちづくり活動の内容の把握 ・地域分布 活動の地域としては、明石市、加古川市、播磨町、高砂市の東播磨地域から非常にたく さんの活動事例が報告された。 この数は神戸市より多く、これからこの地域での活動の活性化が予想される。(ただし、 この事例の数が活動の絶対数を表しているわけではないことに注意) -2- ・活動類型 地域に関わりなく、地域内の公園や道路沿いの空地を花や緑で緑化・美化するものが多 いが、里山保全、環境教育、高齢者福祉、オープンガーデン、ボランティアガイドなどの 活動類型も見られる。 また、グループ間のネットワーク形成に関するものも現れている。 ・活動場所 上記のように地域の公園や空地を利用したものが多いが、それらの活動場所にはいくつ かの特徴がある。それは、 ・人目につきやすいところ、人が集まりやすいところ(バス停、駅前、学校前、役所前な ど) ・そのような場所が以前はごみや吸い殻などで汚されていた ・そのような場所を花や緑で美化することにより、ごみやポイ捨てがなくなり、施設管理 者に感謝された ・結果として、その施設管理者からいくばくかの材料費等の支援を受けることができた という流れがあることである。 言い換えれば、当初からこの流れに着目して活動場所を探し、決めるというのも継続性 の確保に一定の効果が期待できるということである。 また、栽培拠点の確保を行っているところがかなりある。大きなスペースは要らなくと も、「トレイが直接雨に当たらないような自治会館の軒下等の記述」もあり、実際に植える 場所と併せて、このような栽培拠点の確保ができれば、経費節減にもつながり、その継続 性が期待できることとなる。 ・活動での特徴的事項 全てのグループが、というわけではないが、いくつかのグループの記述にあった記述か ら以下のような活動上の工夫をしていることがわかる 「デザインはみんなで決める」 「活動の成果を積極的に広報する」 「結果を話し合って総括する」 「栽培拠点を確保する」 「宿根草や低木を活用する」 「グループ員の得意技を活かす」 ・活動の効果 活動の結果どうなったか、という効果を多くのグループが認識して、その成果をもとに さらに活動を活発化している。 -3- 具体的に効果としてあげているもので多いのは、 「ごみや吸い殻、ポイ捨ての減少」 「防犯」 「地域住民どうしのコミュニケーションの醸成」 「子どもの情操教育」 「閉じこもりがちな高齢者の屋外活動促進」 などである。 ・活動の継続性確保のために どのグループも活動の継続性確保が大きな課題であるが、それぞれにいくつかの工夫を している。 それらの課題の内容は、①会員の確保、②材料の確保、③道具類の確保、④水の確保、 ⑤その他の活動経費の確保などである。 これに対して、 ①については、前述した「目立つ場所」で「目立つ時間帯に活動する」ことにより、活動 のアピールを行うこと、マスコミへの情報提供(売り込み)、生涯学習機関との連携などで 対応しようとしている。 ②については、 「花苗等を種から育てる」 「そのための栽培拠点を確保する」 「あるいは、各会員の家庭において少しづつ育ててもらって持ち寄る」 「不要な苗を持ち寄る」 「園芸農家からアウトレット品をわけてもらう」 などのアイデアが出されている。 ③については、 「各家庭や地域から不要品を譲り受ける」などの対応がある。 ④については、 特徴的なものはなかった。 ⑤については、 各自治体や団体の助成金を頼りにしているところが多いが、その情報をきちんと掴んで いる点は評価でき、このような情報把握がグループマネジメントとして求められる。 また、管理主体の明確は土地を活用することで、その管理者からの支援を引きだそうと している様子が伺える。 4.指導の方針 以上の内容を踏まえるならば、今後の花と緑のまちづくり活動の指導の方向性としては、 ・活動の目的を明確にしよう。(活動の目的は多様であるが、地域の課題から導き出される ので、それをグループみんなで把握することにより、それが明確になる) -4- ・活動の目標は、多様な地域住民の誰にどのような効果を及ぼすのか、をポイントに議論 していこう。 ・活動場所は、なるべく目立つ場所で管理者のはっきりしている場所を設定しよう。活動 の効果がその管理者に認識してもらえるような場所がよりよい。 ・活動の内容は、たとえばデザインを決めるにしてもみんなの意見を集約して設定しよう。 ・あわせて、栽培拠点を小さなスペースでよいから確保しよう。 ・まずは、自分たちで材料を確保し、育ててみよう。 ・花苗だけでなく、低木などの木本も効果的に利用しよう。 ・活動の成果をマスコミを使って大いにアピールしよう。 ・活動をつうじて地域住民とのコミュニケーションを活性化させよう。活動のようすを関 心をもって見に来てくれた時がチャンス。 ・活動の成果をその場所の管理者にもアピールしよう。 ・活動が活発になってきたら、その成果をもとに助成金情報を集めて申請しよう。 ・積極的に表彰制度に応募しよう。 ・他のグループとの連携を図ろう。 ・連携を大きな活動の輪にしていこう。 などと言ったことが考えられる。 (以 -5- 上)
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