Ma平井佑季

自主ゼミ
COPD
M2 平井 佑季
COPD(慢性閉塞性気道疾患)とは
定義
• タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで
生じた肺の炎症性疾患である。呼吸機能検査で正常に復す
ことのない気流閉塞を示す。
• 気流閉塞は末梢気道病変と気腫性病変が様々な割合で複
合的に作用することにより起こり、進行性である。
• 臨床的には徐々に生じる労作時の息切れと慢性の咳、痰を
特徴とする。
COPD=肺の生活習慣病
COPDの病態
有毒粒子(主にタバコ)
末梢気道
肺胞
(肺胞壁の破壊)
直径2mm未満の小気管
支、細気管支の炎症
気腫型(肺気腫)
末梢気道病変
中枢気道
(粘液腺の肥大)
非気腫型(慢性気管支炎)
COPDは以下の3つの病態を包括する
末梢気道病変
•気流制限(息を吐きにくい)
慢性気管支炎
肺気腫
•呼吸困難(進行により安静時でも)
•咳、痰、浮腫
•
痰を伴う咳
•換気能低下(酸素分圧低下)
•
痰の貯留(感染を起こしやすい)
•肺の過膨張(胸部X線で認める)
診断基準
•
•
タバコ煙を主とする有害物質の長期にわたる吸入
曝露を危険因子とし、慢性に咳、喀痰、体動時呼
吸困難などがみられる患者に対してCOPDを疑う。
気管支拡張薬吸入後のスパイロメトリーで1秒率
(FEV1/FVC)が70%未満であればCOPDと診断
する。
診断基準
1.
2.
気管支拡張薬投与後のスパイロメトリーで
FEV1/FVC<70%を満たすこと
他の気流閉塞を来しうる疾患を除外すること
1秒量(FEV1)
最初の1秒間に吐き出せる空気の量
努力肺活量(FVC)
最大限に息を吸えるだけ吸い、それを思い切
り強く吐き出した空気の最大量
病気分類
この分類は気管支拡張薬吸入後のFEV1値に基づく
病 期
特 徴
I期 軽症COPD
軽度の気流閉塞
FEV1/FVC < 70%
%FEV1 ≧ 80%予測値
II期 中等症COPD
中等度の気流閉塞
FEV1/FVC < 70%
50% ≦ %FEV1 < 80%予測値
III期 重症COPD
高度の気流閉塞
FEV1/FVC < 70%
30% ≦ %FEV1 < 50%予測値
IV期 最重症COPD
極めて高度の気流閉塞
FEV1/FVC < 70%
%FEV1 < 30%予測値 あるいは
%FEV1 < 50%予測値 かつ 呼吸不全合併
%1秒量(% FEV1)=FEV1実測値÷FEV1予測値×100
男:FEV1(予測値) = 0.036 x HT(cm) - 0.028 × age - 1.178
日本呼吸器学会(JRS)肺生理専門委員会の式(18歳以上)
5
安定時COPDの管理指針
外科療法
換気補助療法
酸素療法
吸入用ステロイドの追加(繰り返す増悪)
長時間作用性抗コリン薬・β
長時間作用性抗コリン薬・β2刺激薬の併用(テオフィリンの追加)
長時間作用性抗コリン薬(または長時間作用性β
長時間作用性抗コリン薬(または長時間作用性β2刺激薬)
管理法
呼吸リハビリテーション(患者教育・運動療法・栄養管理)
必要に応じて短時間作用性気管支拡張薬
禁煙・インフルエンザワクチン・全身併存症の管理
呼吸困難・運動能力の低下・繰り返す増悪
症状の程度
管理目安
FEV1の低下
疾患の
進行
喫煙習慣
Ⅰ期
軽症
→
Ⅱ期
→
→
Ⅲ期
→
→
→
Ⅳ期
→
→
→
重症
FEV1の低下だけではなく、症状の程度を加味し、重症度を総合的に判断した上で治療法を選択する。
6
急性増悪
• 呼吸困難、咳、喀痰などの症状が日常の生理的変
動を超えて急激に悪化し、安定期の治療内容の変
更を要する状態を増悪という
• その原因としては気道感染と大気汚染が最も多い
が、1/3は原因が確認されない。
•短時間型β2刺激薬の使用
•気管支拡張薬の回数・用量の増加
•ステロイドの全身投与(安定期Ⅲ期以上の症例)
呼吸リハビリテーション
• 運動療法→呼吸筋を鍛える
軽いウォーキングなどの適度な運動
• 理学療法
すぼめ呼吸(口をすぼめて、ゆっくり息を吐く)
腹式呼吸
• 栄養療法
→筋肉を落とさないように、また感染症にならないようにする。
カロリーを多めにとる(特にタンパク質)
シナリオ
• Mr.CDは75歳の男性。3週間前、息切れが激しいため入院
となる。既往歴にCOPD。
• 抗菌薬を処方され退院。軽快したが、息切れは相変わらず。
• この1週間で息切れが悪化したため、5日前にクラリスロマイ
シンを500mg、4日前はプレドニゾロンを1日30mg服用した
が症状は改善しなかったためそれからは飲んでいない。
• それからは吸入薬(サルブタモール+イプラトロピウム)を1
日7回使用していたが、症状は改善せず、娘が救急車を呼び
病院に運ばれた。
• 病院につくと、2ヤードくらいしか続けて歩けないほど息切れ
がひどい。慢性の咳、起座呼吸。横になると呼吸が苦しく
なって直立の状態でしか眠れない。
• その他、ふくらはぎまで腫脹があり、また、尿閉はないものの
排尿困難を訴えている。
患者情報
•
•
•
•
•
•
•
•
Mr.CD 75歳
身長:170cm
現病歴:COPD
既往歴:2型DM、虚血性心疾患(CABG治療歴あ
り)、高血圧、心房細動、心筋梗塞、脂質異常症
薬歴:インスリン、クラリスロマイシン、プレドニゾロン、
吸入薬(サルブタモール+イプラトロピウム)
生活歴:機会飲酒、タバコ(40本×30年;2年前から
禁煙)
社会歴:造船所の事務員
腎機能・肝機能:正常
処方された薬
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
アスピリン
ジルチアゼムMR
ベンドロフルメタジド
ロサルタン
フロセミド
アトルバスタチン
カルボシステイン
インスラタード(中間型)
硫酸第一鉄
オメプラゾール
アレンドロン酸
サルブタモール
イプラトロピウム
300 mg
300 mg
2.5 mg
50 mg
80 mg
10 mg
500 mg
14 IU
300 mg
20 mg
70 mg
2.5 mg
500μg
1日1回
1日1回
1日1回
1日1回
1日1回
1日1回
1日4回
1日2回
1日3回
1日1回
週1回
発作時
1日3回
吸入
(ネブライザー)
プロブレムリスト
1. COPD
2. DM
3. 排尿困難
#1 COPD
•
•
•
•
S
息切れがひどくて2ヤードくらいしか続けて歩けない
O
WBC:15.8×109、CRP:16 mg/dL
FEV1:1.2 L →%FEV1: 23%
呼吸数:40回/分、心拍数:115回/分、喘鳴、起座呼吸
2年前から禁煙中(かつては40本/日を30年)
A
%FEV1から判断してⅣ期のCOPD。呼吸困難の悪化、呼吸数、心拍数など
の増加から急性増悪になっている。増悪要因としては、WBC、CRPなどから
感染を疑う。経口ステロイド、抗菌薬が処方されることが望ましい。
COPDの治療として、発作時のβ2刺激薬(サルブタモール)と、長期作用型
抗コリン薬(イプラトロピウム)が処方。ガイドラインから長時間作用型β2刺激
薬、吸入ステロイドが維持療法として必要。酸素療法も必要か。また、合わせ
て呼吸リハビリテーションも行う必要がある。
禁煙中とのことだが、しっかりできているのか? 確認する必要がある。禁煙
薬物療法も必要があれば勧めていく。
P
医師に抗菌薬、経口ステロイド、長時間作用型β2刺激薬、吸入ステロイドの
必要性確認。酸素療法の提案。呼吸リハビリの指導。禁煙状況確認。
#2 DM
• S
• O
インスラタード 14単位 1日2回
血糖値:18.2 mmol/L(→328 mg/dL)
• A
2型DM。中間型インスリンで治療中。DMは感染リスクを高
め、結果的にCOPDのリスクファクターである。食後か食前
の値か不明だが、血糖値は高い。HbA1cで評価必要。75歳
と高齢であり、インスリン注射手技確認する必要がある。
• P
HbA1c確認。インスリン注射手技確認、必要あれば指導。低
血糖の副作用の有無。
#3 排尿困難
• S
尿が出にくい
• O
75歳 男性
抗コリン薬のイプラトロピウム服用
• A
75歳、男性であることから前立腺肥大の可能性。また、抗
コリン薬を服用しているため尿の出が悪くなっている可能性
も。尿閉には達していない。前立腺肥大にはイプラトロピウ
ムは禁忌なので、検査を行い、適切か判断したほうがよい。
• P
医師に前立腺肥大にイプラトロピウムが禁忌であること報
告。まだ検査されていなければ、検査を行ってもらい、処方
の妥当性を評価する。
Q1:Discuss the clinical signs and symptoms for Mr.CD.
息切れ
慢性のせき(湿性ではない)
COPD
起座呼吸、直立で眠る
FEV1:1.2L
WBC:15.8×109
感染
CRP 16mg/dL
排尿困難:抗コリン薬による副作用の可能性
心拍数115回/分
→COPDの増悪、心房細動またはβ2刺激薬によるもの
• グルコース 18.2mmol/L:糖尿病
• Hb 11g/dL:貧血
•
•
•
•
•
•
•
•
Q2a:Discuss the role of smoking history and calculate the total pack years this patient
has been subjected to.
• 喫煙はCOPDの最も重要なリスクファクターであり、長期喫
煙者の7人に1人がCOPDを発症する。
• 喫煙歴の有無はCOPD診断の重要な因子である。
• 1箱20本入とすると、40本×30年/20=60箱/年である。
Q2b:What spirometry should be used to assess Mr .CD s lung function and what main
factors affect the predicted values ?
• スパイロメトリーを使うことでFEV1を求めることができる。
• FEV1から患者の身長と年齢から予測FEV1が求められ、患
者の肺機能を評価する%FEV1が求められる。
• Mr.CDの場合、実測FEV1が1.2L、予測FEVが5.2Lなの
で%FEV1は23%と計算でき、重症度はⅣ期であるといえる。
• 予測FEV1は性別、年齢、身長の3つの因子によって決定さ
れる。
男:FEV1(予測値) = 0.036 x HT(cm) - 0.028 ×age - 1.178
Q3:Discuss the role of oxygen and delivery systems during the acute
exacerbation.
• 急性増悪により肺機能がさらに低下し、低酸
素血症を起こし呼吸不全に陥る。
• 酸素飽和度を測定し、低い場合、酸素吸入療
法を行い90以上になるようにする。
• 急性期の場合、 CO2ナルコーシスを起こし、
昏睡状態になることがあるので慎重に投与す
る。
• 患者は吸入薬を使っているので投与経路とし
ては経鼻チューブで行う。
Q4a:Critically review Mr.CD s list of medicines.
•
アスピリン
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
ジルチアゼム
ベンドロフルメタジド
ロサルタン
フロセミド
アトルバスタチン
カルボシステイン
インスラタード
硫酸第一鉄
オメプラゾール
アレンドロン酸
•
•
サルブタモール
イプラトロピウム
300 mg 1日1回 抗血小板薬。CABG治療による血栓防止
心房細動による血栓生成抑制
300 mg 1日1回 Caブロッカー。心房細動治療
2.5 mg 1日1回 チアジド系利尿薬。高血圧治療
50 mg 1日1回 ARB。高血圧、心保護、インスリン抵抗性
80 mg 1日1回 ループ系利尿薬。浮腫治療
10 mg 1日1回 スタチン系。高コレステロール血量
500 mg 1日4回 去疸
14 IU
1日2回 中間型インスリン DMコントロール
300 mg 1日3回 鉄剤。貧血改善
20 mg 1日1回 PPI。アスピリンによる胃粘膜障害防止
70 mg 週1回 ビスホスホネート薬。ステロイドによる骨量
低下防止
2.5 mg 発作時 短時間型β2刺激薬。COPD治療
500μg 1日3回 長期作用型抗コリン薬。COPD治療
•抗菌薬の追加、経口ステロイドが必要
•維持管理期は吸入ステロイド、長時間型β2刺激薬が必要
•チアジド系利尿薬は脂質代謝・血糖に影響する可能性
Q4b:Discuss the place and route of corticosteroids in Mr.CD’s
management.
• 吸入ステロイド→維持
全身の副作用が少なく、ガイドラインからもⅢ
期以上の患者に投与が望まれる。
• 経口ステロイド→増悪時
ただしⅢ期以上の患者で
一時的に経口ステロイドを使い、安定期まで回復した
あと、吸入ステロイドを導入して維持していく。
Q5:Describe a pharmaceutical care plan for the continued treatment of
this patient.
• 服薬指導
• 吸入手技
吸入製剤として長時間型β2刺激薬やステロイドでC
OPDに適応のあるものはMDIとDPIしかないため、
吸入の手技を指導する。
• 酸素療法の提案
• 呼吸リハビリテーション
• 禁煙支援(禁煙補助薬の情報提供など)
• 予防接種(インフルエンザ、肺炎球菌)の勧奨
• インスリン注射手技指導
• 薬物の過剰服用の危険性説明。(指定された用量
で症状が治らなければすぐに病院へ。)
参考
• COPD診断と治療のためのガイドライン第3版
日本呼吸器学会(2009)
• COPD(慢性閉塞性肺疾患)情報サイト:SpiNet
日本ベーリンガーインゲルハイム・ファイザー
http://www.spinet.jp/index.html