シグナルコンディショニングVol.1 Special Functions

発振回路と素子
用途によっては、耐衝撃性なども検討項目に加える必要があるで
発振回路には多くの種類があります。発振の原理などから分類す
しょう。実際の回路設計に際しては部品のコストや基板上の専有
ることもできますが、多くの場合、CR、LC、水晶、セラミック共
面積も重要です。
振子、SAW フィルタなど、周波数を決定する素子によって分類さ
れています。表に低周波から数十 MHz までを考えた場合の簡単
な比較を示しますが、この表はごく一般的な特性を示したものに
過ぎません。同じ素子を使っても回路が異なれば特性も異なりま
す。また、周波数を可変したい場合も、インダクタやコンデンサ
を連続可変とすることは容易ではないのに対して、水晶発振器を
使って周波数シンセサイザを構成すれば、周波数を細かく設定で
きます。
周波数の設定精度(確度)と安定度については、さらに細かな検討
を必要とします。ジッタ、温度係数、経年変化などは、具体的な
回路と素子さらに使用する周波数によって特性が異なります。
素 子
LCR
水 晶
セラミック
周波数設定精度
安定性
周波数の変更
劣る(数%以上)
劣る
容易
良い( 0.001%程度)
良い
困難
比較的良い( 0.1∼ 1%程度)
良い
困難
▲ 発振器の比較
、LTC、LTはリニアテクノロジー社の登録商標です。
ThinSOTはリニアテクノロジーの商標です。その他の商標は、該当の会社のものです。
ところで、最近の発振回路における最近の大きな傾向として、I C
化が進んでいることが挙げられます。水晶発振器を例に採ると、
クロック用途ではマイコンなどの LSI に発振回路が内蔵されてい
ることが多くなったほか、専用のクロックジェネレータ I C も普及
しています。VCO(電圧制御発振器)などの基準発振器に用いる
場合も、完成された TCXO(温度制御型水晶発振器)として手に
入れることができます。
半導体ベースの発振器もあります。発振周波数を外付け CR に依
存したものもありますが、抵抗だけで、しかもその誤差が周波数
精度に直接影響しないものや、ロジック信号だけで周波数を設定
できるものもあります。そうなると、もはや CR 発振器などとは
言えず、I C 発振器と呼ぶべきかもしれません。発振周波数範囲
も低周波から 60MHz 以上にまで広がってきました。周波数精度
や安定度も気になるところですが、例えば LTC ®1799 では、周波
数誤差:1.5% 以下(∼ 20MHz )、温度安定度:± 40ppm/°C 、
電源安定度:0.05%/V と、通常の CR 発振器を遙かに超える精度
を実現しています。
抵抗で1kHz∼33MHzの周波数を設定可能な
SOT– 23 発振器
1 本の外付け抵抗で周波数を設定
短い起動時間:1 ms 以下
周波数誤差:1.5 % 以下、5 kHz ∼ 20 MHz( TA = 25 °C )
2 % 以下、5 kHz ∼ 20 MHz( TA = 0 °C ∼ 70°C )
温度安定性:± 40 ppm/°C 、電源安定性:0.05 %/V
デューティ・サイクル:50 % ± 1 % 、1 kHz ∼ 2 MHz
50 % ± 5 % 、2 kHz ∼ 20 MHz
高さの低い( 1 mm )SOT– 23( ThinSOT TM )パッケージ
5V
LTC1799は、使いやすく、占有するPCボード・スペースが少
ない高精度発振器。発振周波数は1 本の外付け抵抗(R SET )
でプログラムされます。高精度動作用に設計されていて、2.7 V
∼5.5V の単一電源で動作し、レール・トゥ・レール、デューティ・
サイクル 50 % の方 形 波出力を提 供します。CMOS 出力ドラ
イバにより、高速立上り/立下り時間とレール・
トゥ・レール・スイッ
チングを達成。周波数設定抵抗は 3.32k∼1Mの範囲で変更
でき、それに応じてマスタ発振周波数を100kHz∼ 30MHz( 5V
電源時 )の範囲で選択できます。
1
0.1µF
2
3k ≤ R SET ≤ 1M
1kHz ≤ fOSC ≤ 33MHz
5
V+
OUT
LTC1799
5V
GND
÷100
3
SET
DIV
÷10
4
OPEN
÷1
▲ 基本接続
低消費、抵抗で1kHz∼20MHzの周波数を設定可能な
SOT– 23 発振器
1 本の外付け抵抗で周波数を設定
消費電流:500 µA(標準)、V S = 3 V 、3 MHz
周波数誤差:1.5 % 以下、5 kHz ∼ 10 MHz( TA = 25 °C )
2 % 以下、5 kHz ∼ 10 MHz( TA = 0 °C ∼ 70°C )
温度安定性:± 40 ppm/°C 、電源安定性:0.04 %/V
デューティ・サイクル:50 % ± 1 % 、1 kHz ∼ 2 MHz
50 % ± 5 % 、2 MHz ∼ 10 MHz
短い起動時間:50 µs ∼ 1.5 ms
5V
LTC6900は、使いやすく、占有するPCボード・スペースが少
なくて済む高精度、低消費発振器。発振周波数は 1 本の外
付け抵抗(R SET )
でプログラムされ、2.7V ∼ 5.5V の単一電源
で動作し、レール・トゥ・レール、デューティ・サイクル 50 % の方
形波を出力します。CMOS 出力ドライバにより、高速立上り/
立下り時間とレール・トゥ・レール・スイッチングが保 証されます。
周波数設定抵抗は10kΩ ∼ 2MΩ の範囲で変更可能、それ
に応じてマスタ発振周波数を100kHz ∼ 20MHz( 5V 電源時)
の範囲で選択できます。
1
0.1µF
2
10k ≤ R SET ≤ 2M
3
1kHz ≤ fOSC ≤ 20MHz
5
V+
OUT
LTC6900
5V, N = 100
GND
SET
DIV
4
OPEN, N = 10
N=1
▲ 基本接続
スペクトラム拡散周波数変調機能を搭載した
マルチフェーズ発振器
2 、3 または 4 フェーズ出力
オプションのスペクトラム拡散周波数変調により、EMC 性能が向上
5 kHz ∼ 20 MHz の周波数範囲
1 本の外付け抵抗で周波数と周波数拡散のパーセンテージを設定
消費電流:400 µA(標準)、V S = 3 V 、1 MHz
周波数誤差:1.5 % 以下、5 kHz ∼ 10 MHz( T A = 25 °C )
2 % 以下、5 kHz ∼ 10 MHz( T A = 0 °C ∼ 70°C )
LTC6902は、小型パッケージでマルチフェーズ出力を供給する、
使いやすい高精度低消費発振器。発振周波数は1本の外付け
抵抗(R SET )で設定されます。また、オプションのスペクトラム
拡散周波数変調( SSFM)機能も搭載し、この機能は追加の
外付け抵抗(R MOD )
で起動、制御可能です。マスタ発振器は
R SET 抵抗で制御し、100kHz∼20MHz の周波数範囲を提供
します。また、プログラム可能な分割器(1、10、100のいずれか
で分割 )
を内蔵しているので、さらに広い出力周波数範囲を
提供可能です。
5V
R MOD 10k
0.1µF
OPEN
R SET 10k
V+
SET
DIV
MOD
PH LTC6902 GND
OUT1
OUT4
OUT4
OUT2
OUT3
OUT3
OUT2
OUT1
▲ 20% 周波数拡散 500kHz 、4 フェーズクロック
シリアル・ポートでプログラム可能な1kHz∼ 68MHz発振器
1 kHz ∼ 68 MHz の方形波出力
0.5 %(標準)の初期周波数精度
周波数誤差:あらゆる設定において 1.1 % 以下
分解能:0.1 %
消費電流( f < 1 MHz 、V S = 2.7 V )
:1.7 mA(標準)
2.7V ∼ 5.5V の単一電源動作
ジッタ:
( 1 kHz ∼ 8 MHz )標準 0.4 % 以下
SPI( LTC6903 )または I 2 C( LTC6904 )シリアル・インタフェース
LTC 6903/LTC 6904 は、シリアル・ポートを介して設定される
1 kHz ∼ 68 MHz の高精度周波数を供給する低消費電力の
自己完結型デジタル周波数源。電源バイパス・コンデンサ以外
の外付け部品が不要で、3 V∼5.5 V の広い単一電源電圧範
囲で動作します。デジタル制御設定と周波数の関係を直線化
する独自の帰還ループを搭載しているので、非常にシンプルな
周波数設定式が得られます。
f = 2 OCT •
2078 (Hz)
; 1kHz < f < 68 MHz
DAC
2–
1024
(
)
OCTは4ビットのデジタル・コード、DACは10ビットのデジタル・
コードです。
5V
10k
5V
0.1µF
MICROCONTROLLER
GND
OSC1/CLKIN
OSC2/CLKOUT
MCLR/V P–P RC5/SDO
SDI
OE
LTC6903
10Ω
RC3/SCK/SCL
RC2/CCP1
V DD
V SS
V SS
V+
SCK
CLK
SEN
CLK
1µF
0.01µF
POWER-UP CLOCK
FREQUENCY IS 1039Hz
PIC16F73
▲ マイクロコントローラが自身のクロックを制御
高精度のマイクロパワー、
デルタシグマRMS–DCコンバータ
高精度:50 Hz ∼ 1 kHz で 0.1 % の利得精度、0.25 % の全誤差
低消費電流:標準 155 µA 、最大 170 µA
2.7 V ∼ 5.5 V 単一電源または最大± 5.5 V の両電源動作
一定の帯域幅:入力電圧と無関係、800 kHz– 3 dB 、6 kHz ± 1 %
高い直線性:0.02 % の直線性により、シンプルなシステム較正が可能
わずか 1 個の外付けコンデンサで真の RMS–DS 変換を実現
LTC1966 は、特許取得の革新的なデルタシグマ計算技法を
採用した、真のRMS–DCコンバータ。内蔵のデルタシグマ回路
により、従来のログ –アンチログRMS–DCコンバータと比べて、
使いやすく、高精度、低消費なうえ、柔軟性の面で劇的に優
れています。シングルエンドまたは差動入力信号(EMI/RFI
除去用)で動作し、最大 4 のクレスト・ファクタをサポート。同相
入力範囲はレール・トゥ・レール、差動入力範囲は 1V PEAK で、
かつてないほど優れた直線性を提供します。従来の RMS–DC
コンバータと異なり、どのような入力電圧でも容易にシステム較
正が可能です。
2.7V TO 5.5V
V DD
IN1
OUTPUT
IN2
LTC1966
OUT RTN
DIFFERENTIAL
INPUT
0.1µF
OPT. AC
COUPLING
EN
C AV E
1µF
+ V OUT
–
1966 TA01
V SS GND
▲ 単一電源 RMS–DC コンバータ
高精度、広帯域幅、
デルタシグマRMS–DCコンバータ
広い入力帯域幅:追加利得誤差 0.1 % までの帯域幅:40 kHz 、帯域幅は入力電圧振幅と無関係
4.5 V ∼ 5.5 V 単一電源動作
わずか 1 個の外付けコンデンサで真の RMS–DC 変換を実現
高い直線性:0.02 % の直線性により、シンプルなシステム較正が可能
低消費電流:330 µA(標準)、超低シャットダウン電流 0.1 µA
省スペースの 8 ピン MSOP パッケージ
4.5V TO 5.5V
LTC1967は、革新的なデルタシグマ計算技法を採用した、真の
RMS–DCコンバータ。独自のアーキテクチャを採用することに
より、従来のログ –アンチログ RMS–DCコンバータと比べて、
高直線性で高精度なうえ、帯域幅が振幅に依存することなく、
温度特性が優れています。シングルエンドまたは差動入力信号
( EMI/RFI 除去用)で動作し、最大 4 のクレスト・ファクタをサ
ポート。同相入力範囲はレール・トゥ・レール、差動入力範囲は
1VPEAK で、かつてないほど優れた直線性を提供します。どの
ような入力電圧でも容易にシステム較正が可能です。
V+
OUTPUT
IN1
DIFFERENTIAL
INPUT
LTC1967
IN2
OUT RTN
0.1µF
OPT. AC
COUPLING
EN
GND
▲ 単一電源 RMS–DC コンバータ
www. linear -tech.co. jp/
C AV E
1µF
+ V OUT
–
ここに掲載した技術情報は一部です。
リスト内の情報や製品のデータシート、その他の技術資料は、すべて当社のWebサイトよりご覧いただけます。
www. l i near - tech.co. j p/
DN 339
オートレンジの真のRMSコンバータ
DN 293
LTC6900 低消費電力(SOT–23)発振器のVCOとしての利用
DN 288
簡単になったRMS–DC 変換
DN 262
抵抗 1 個で周波数を設定できる1kHz∼ 30MHzのSOT–23 発振器
AN 93
モノリシック発振器の計装アプリケーション
Linear Technology Magazine Dec 2003
英語
水晶発振器より小さく、丈夫で用途の広い デジタルプログラマブル発振器
Linear Technology Magazine May 2002
英語
LTC6900 低消費電力(SOT–23)発振器のVCOとしての使い方
Linear Technology Magazine Mar 2002
英語
ΔΣの飛躍的進展:LTC1966 ダイオード、ヒータ、対数方式を使わない 真のRMS–DCコンバータ
Linear Technology Magazine Feb 2001
英語
小型で高安定、簡単に使える 新しい5ピンSOT–23 発振器