フィリップ・プルマン

フィリップ・プルマン
英国の作家、1946年英国ノリッジ生まれ。
フィリップ・プルマンは、子供時代の殆どを海上で過ごす。早く亡くした父
親、また継父ともに英国空軍の軍人で、家族は船上の彼らとともに世界中を
移り住んだ。彼の著書には、主題として明らかに死と不在の父親が反映され
ている。
プルマンは、オックスフォード大学で英語を学ぶ。彼の職歴は教師として始
まり、その後、専業作家となるまでに8年間ウェストミンスター大学で教員
となる学生を教える。著書の構想の多くが学生のために書いた学校劇から来
ている。
今にち、彼はファンタジー3部作 、His Dark Materials
(和訳「ライラの冒険シリーズ」)で最も良く知られる。ただしプルマンは
、歴史小説、現代写実的な青少年向け著書、低年齢児童のための空想物語、
伝説の改作やパロディー、絵本、シリーズ小説、短編小説、劇を書いており
、著述者として驚くような多様性を証明している。
フィリップ・プルマンの作家としての経歴は1984年に出版社の懸賞にホラー
小説、Count Karlstein
が入選したことから始まる。コナン・ドイルのシャーロック・ホームズの物
語に閃きを得た彼の2作目 Ruby in the Smoke (1985年)
は、サリー・ロッカート4部作シリーズの初作となった。4部作には、The
Shadow in the North (1987年), The Tiger in the Well (1990年)、 The Tin Princess
(1994年)が含まれる。プルマン自身が歴史スリラー小説と呼ぶこれらの小説
は、英国のビクトリア時代を背景とし並外れた強さと独立心を持つ若い女性
SWEDISH NATIONAL COUNCIL FOR CULTURAL AFFAIRS
P.O. Box 7843, SE-103 98 Stockholm, Sweden Visiting address: Långa raden 4, Stockholm, Sweden
Phone: +46 (8) 519 264 00 Fax: +46 (8) 519 264 99 E-post: [email protected] Website: www.alma.se
が登場する。これは特に「ライラの冒険シリーズ」のライラにも当てはまる
、彼のヒロインの特徴でもある。さらに、Thunderbolt’s Waxwork (1994年)
と続編 The Gas-Fitters’ Ball (1995年)
の2作で、歴史的背景が刺激的で危険な未知の世界としての役目を果たす。
プルマンは、現代写実的なジャンルに精通する作家仲間に敬服する、自分は
あまり使った事がないと語ったことがある。ただし時には、と彼は言う、写
実的小説にしか使えないアイデアが浮かぶこともある。彼はそのような小説
、The Broken Bridge (1990年) および The White Mercedes (1992年, その後 The
Butterfly Tattooと改名)
の2作を書いており、どちらも問題追求的にもそれ以上に教訓的にもならず
に、過酷で暗い若者の現実を描いている。The Broken Bridgeでは、
主人公ジニーの人種的背景は、彼女がアイデンティを探求する中での多くの
構成部分の一つでしかない。The Butterfly Tattooは、
深く悲劇的な結末のスリラー形式の恋愛物語。プルマンは、巧みに築き上げ
たプロットと人物造りの名人である。
より若い読者のためには、特にプルマン自身がサガと呼ぶ、むしろファンタ
ジー物語と言える一連の本、冒険的なThe Firework-Maker’s Daughter
(1995年、和訳「花火師リーラと火の魔王」2003年)、怪奇なClockwork
(1996年、和訳「時計はとまらない」1998年)、魔法使いがシンデレラの従者
に変えたまま元に戻す事を忘れてしまったねずみを主人公とする愉快なI
Was a Ra t! (1999年、和訳「『ぼく、ネズミだったの!
』もう一つのシンデレラ物語」2000年) がある。
プルマンはイラストも趣味だと言っており、ファンタジー3部作の最初の2
作の挿絵は自筆である。また画家と協力しPuss in Boots
(2000年、長靴を履いた猫改作)、Mossycoat (1998年、シンデレラ改作)
、Aladdin (1995年、アラジンと魔法のランプ改作)
等の多くの場合、著名な伝説を基にプルマンのアレンジとイラストによりコ
ミックで新しい次元を加えられた絵本を創作している。
His Dark Materials「ライラの冒険シリーズ」は、Northern Lights
(1995年、米国版The Golden Compass、1996年、和訳「黄金の羅針盤」1999年),
The Subtle Knife (1997年、和訳「秘密の探検」2000年) 、 The Amber Spyglass
(2000年、和訳「琥珀の望遠鏡」2002年)で構成される3部作の総称。ジョン
・ミルトンの「失楽園」等に閃きを得て、プルマンは空想のジャンルにとっ
2
てそれぞれ当時の標石となったトールキンの「指輪物語」やCSルイスの「
ナルニア国物語」と同様に重要な標石をこの3部作で生み出した。プルマン
は、この中で世界の児童文学の中で最も多彩で矛盾した女性像、勇敢なヒロ
インであり、また思春期前の迷える子供、殺人を罪悪感に持つ自由の戦士、
父母の愛を求め続ける児童文学の永遠の孤児、ライラ・シルバートンガを生
み出している。プルマンは、それぞれが私たちの現実を反映する –
近代科学が見る宇宙からそれほど遠くない –
多様な未知の世界を取り入れることによってジャンルを更新した。ファンタ
ジーの主要テーマである善と悪との戦いは、プルマンによって両義性を持た
され、そのため読者は自分で考え選択しなければならない。本の中では、著
者の暗い世界観と児童文学の慣習が要求する楽天主義そして調和の回復との
壊れやすいバランスが維持される。プルマンは、2つのパラレルワールドの
2人の主人公を結びつかせ、いつまでも幸せに暮らしました、と終わらせる
誘惑に負けず、そのために自然法則に違反することもない。特に人間の魂に
、ダイモンのように、物質形体を持たせ具体化する彼の非凡なアイデアは、
空想のジャンルに革命的な新しさをもたらす。真摯で倫理的な問題提起、誰
がどちら側に立っているのか決して分からない両義性を持つ人物描写、特に
私たち自身の現実からわずかに異なるのみの現実を描写する秘訣にも同じ事
が言える。
3部作は、今撮影中で豪華な映画になる予定。2003年には、3部作の完了か
ら2年後を舞台にする単作の小説、Lyras
Oxfordが出版され、プルマンは、この先さらに読者がライラ
を知る事ができることをほのめかしている。
プルマンの最近作、The Scarecrow and his Servant
(2004年)では、魅惑的な悪漢小説、子供のための一種の近代的ドンキホーテ
、児童文学の原型である生きたかかしが新しく意外な役を与えられている。
プルマンは、若い読者と大人の読者の境界線を超越する。彼の著書はどちら
の読者にも同じく評価されており、特にファンタジー3部作はロンドンの国
立劇場で2晩の上演が行なわれた。彼の本は、強い説得力で真に良い児童書
は全ての年齢層向けでもあることを示している。特に女性のカラフルな登場
人物によって彼は、若者たち側に立ち、全ての権威を無慈悲に問いただし、
愛と人間性を説き、最も暗い状況の中でも楽天的な子供を信じる心を失わな
い。
3
フィリップ・プルマンは、カーネギー賞、ガーディアン児童書賞、スマーテ
ィーズ賞、エリナー・ファージョン賞、また初の児童書作家としてThe
Amber Spyglass
でウィットブレッド賞など、多くの名声ある国内の賞を受賞している。彼の
著書は数多くの言葉に翻訳されている。
フィリップ・プルマン自身その著述活動について次のように述べている。
“Books and stories don't just emerge from nothing in a sort of mental Big Bang. They
grow more like plants, from a seed that’s nourished by a rich and fertile soil. All my
books have come out of the background of my own reading and from the things I’ve
seen, or heard, or done, or thought about”
本によって何をしたいのか、本が何を意味するのか、という質問にはこう答
える。“As a passionate believer in the democracy of reading, I don't think it's the
task of the author of a book to tell the reader what it means. The meaning of a story
emerges in the meeting between the words on the page and the thoughts in the reader's
mind. So when people ask me what I meant by this story, or what was the message I
was trying to convey in that one, I have to explain that I'm not going to explain”
(www.philip-pullman.com).
SELECTED WORKS IN ENGLISH:
Count Karlstein, or the Ride of the Demon Huntsman – London: Chatto & Windus,
1982. Illustrated by Patrice Aggs, London: Doubleday, 1991.
The Ruby in the Smoke – Oxford: Oxford University Press, 1985. New York: Alfred
A. Knopf, 1985.
How to Be Cool – London: Heinemann, 1987.
Spring-Heeled Jack: A story of Bravery and Evil – Illustrated by David Mostyn.
London: Doubleday, 1989, Alfred A. Knopf, 1991.
The Shadow in the Plate – Oxford: Oxford University Press, 1987, Published as The
Shadow in the North – Oxford: Oxford University Press, 1987.
The Tiger in the Well – London: Viking, 1990. New York: Alfred A. Knopf, 1990.
The Broken Bridge – London: Macmillan, 1990, New York: Alfred A. Knopf, 1992.
The White Mercedes – London: Macmillan, 1992, New York: Alfred A. Knopf, 1993.
The Tin Princess – New York: Alfred A. Knopf, 1994.
Thunderbolt’s Waxworks – Illustrated by Mark Thomas. New York: Viking, 1994.
The Wonderful Story of Aladdin and the Enchanted Lamp – Illustrated by David
Wyatt. Picture Hippo, 1995.
The Gas-Fitter’s Ball – Illustrated by Mark Thomas. New York: Viking, 1995.
4
Northern Lights – London: Scholastic, 1995, Published as The Golden Compass –
New York: Alfred A. Knopf, 1996.
The Subtle Knife – London: Scholastic, 1997.
Clockwork, or All Wound Up – Illustrated by Peter Bailey. London: Doubleday, 1996.
New York: Arthur A. Levine Books, Illustrated by Leonid Gore, 1998.
Mossycoat – Illustrated by Peter Bailey. London: Scholastic, 1998.
The Firework- Maker’s Daughter – Illustrated by Nick Harris. London: Doubleday,
1995.
The Amber Spyglass – London: Scholastic/David Fickling Books, 2000.
I was a Rat! – Illustrated by Peter Bailey. London: Doubleday. 1999.
Puss in Boots: The Adventures of That Most Enterprising Feline – Illustrated by Ian
Beck. Transworld, 2000. Lyra’ Oxford – Oxford: David Fickling Books, 2003.
The Scarecrow and His Servant – London: Doubleday, 2004.
5