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No.
109
January 2002
■新春のごあいさつ
理事長、学長、病院長
■
組織機構改革について
第12回総合医学研究所秋季セミナー
テーマ:肺の水分調節と疾患
■学事
2大学医学生教育交流研究会
平成14年度特別推薦入学試験(AO入試)、推薦
入学試験、編入学試験終わる
第21回教育懇談会
平成13年度実験動物慰霊祭
附属看護専門学校平成14年度推薦入学試験、社
会人特別推薦入学試験終わる
■学生のページ
私が医師になりたい理由・医師になった理由
痴呆症グループホームでのボランティア体験記ほか
■学術
第12回日本小児外科QOL研究会
The 18th Congress of Pan-Pacific Surgical Association
Japan Chapter
平成13年度総合医学研究所フォーラム
■病院
インフォームド・コンセントに関するシンポジウム
第7回地域医療懇談会
平成13年度病院災害訓練
平成13年度第2回研修医ワークショップ
第16回病院ワークショップ
■管理・運営
創立30周年記念事業募金本格的にはじまる
平成13年度課長代理・主任級研修会
平成13年度永年勤続表彰
■随想・報告
米国バンダービルト大学留学記
20年の勤続に思う
私のナースキャップ論
石川県に移って来て
■教室紹介
医動物学、臨床病理学、消化器内科学
総医研・人類遺伝学研究部門(生化)
□金沢医科大学創立30周年記念事業募金のお願い
□金沢医科大学学術振興基金募金のお願い
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新春のごあいさつ
大学の変革期を迎えて
理事長
小田島 粛夫
皆さん明けましておめでとうございます。
例年と変わりなく皆さんは平穏で、静かな元旦を迎えられたと思いますが、新しい年に大きな希
望を持ちながらも、何んとなく先行きに不安を感じている人も少なくないと思います。日本の資本
主義経済が末期的な状況の中で、徒にグローバル化の言葉のみが先行し、我々の生活の先行きが不
透明になっていることもありますが、それ以上に昨年9月のテロ事件が、私どもの心に大きな暗い
影を落としているように思います。
昨年のテロ事件は「あの9月 11 日で20 世紀は終わり、この日から21 世紀が始まった」と言われ
るほど、歴史的に大きな意味を持っております。この事件は単純に「野蛮なテロ行為」として、ま
た一方では、キリスト教とイスラム教の対立と捉えられておりますが、私は「人間を無視した、人
間の素朴さを忘れた現代社会に対する警告」であると考えており、その根底にはグローバル化があ
ると思っております。
グローバル化社会では勝者は生き残るが敗者は滅びるという厳しい現実があり、貧富の格差の拡
大、価値観の規格化が進むと考えられます。これまでの多様な価値観が容認されている世界では、
この価値観の規格化は受け入れ難く、規模や種類が違っても、今度のような事件が頻発する可能性
があります。大学としてのグローバル化への対応もありますが、社会の一員としても、今度のテロ
事件を「他山の石」として真剣に考えなければなりません。
今度のテロ事件のキーワードはイスラム世界とグローバリゼーション、あるいはグローバル化で
あると思っております。
イスラム教は仏教やキリスト教と異なり、修飾されていない素朴な、それだけにイスラム世界に
密着した宗教であるということができます。その聖典であるコーランは予言者ムハンマドが創造と
破壊を司る偉大な神アッラーの命令をアラビア語のセリフの形で記録したものと言われております。
その中には天国と地獄の描写、殺人、傷害、姦通、窃盗、飲酒や賭博の禁止、食べてはならないも
の、女性の身だしなみなど日常生活についての教えが、具体的に語られております。何れにしても
このコーランの教えは7世紀頃の日常生活を元にしたものであり、イスラム教は素朴な人間の生活
に密着した宗教であるということができます。
もう一つのキーワードであるグローバリゼーションは、本来、例えばアメリカ社会のように、様々
な民族や宗教を許容し、多様性容認型の解放された社会を目標にしていると思います。しかし、グ
ローバル化という名の市場優先の経済がもたらした貧富の差は、世界の潜在的な不安材料になって
この講演の録画は、金沢医科大学イントラネット http://www2.kanazawa-med.ac.jp/ で3月31日までご覧になることができます。
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おり、また、意図されているか否かは別として、グローバル化を通じてアメリカの価値観をもとに、
生活様式や生活文化までもが規格化されつつあることは否定できません。
生活様式までもが規格化されるこのグローバル化に対して、イスラム世界での反米感情がエスカ
レートし、この反米感情を基に、コーランの教えより厳しい戒律を持ったイスラム原理主義が誕生
したと考えられます。例えば女性の服装についてはコーランは「胸と陰部を隠せ。外部に出ている
ところは仕方がないが、その他の美しいところは人に見せぬように」と教えているに過ぎません。
しかし、イスラム原理主義では例えば女性は「ブルカ」の着用を義務づけるなど、その戒律が非常
に厳しくなっております。その是非は兎も角、この様な厳しい戒律による組織の引き締めはイスラ
ム世界への帰属意識を高めるための手段であり、この異常な帰属意識が「自爆テロ」を生み出した
と考えられます。
純粋な若い19 名の学生からなるテロリストの自爆行為には、イスラム世界に対する帰属意識やイ
スラム教への殉教の他に、グローバル化されつつある社会、かつての学生運動のように、努力して
も報いられない社会に対する強烈な抗議のメッセージが含まれていることを見逃してはなりません。
彼らを卑劣なテロ行為に駆り立てた陰の指導者を許すことはできませんが、若いテロリストの人間
としての純粋さは認めざるを得ません。
社会の流れから見て、グローバル化は急速に進むと思いますが、それによって派生する問題も少
なくありません。
教職員の帰属意識について −医療費の不当請求、不正請求報道に関連して−
かつての日本の特攻隊、中国の紅衛兵、そしてテロ事件直後のアメリカでの例を見るまでもなく、
帰属意識は人間としての純粋さを培地に、教育と環境によって育まれると思います。異常な帰属意
識を求めているわけではありませんが、グローバル化社会では、帰属意識なくして組織の運営はで
きないと考えており、このことは平成12 年の年頭の挨拶でも皆さんにお願い致しました。しかし、
不幸にも昨年、本学でこの帰属意識について考えさせられる事件がありました。
皆さんも御存知のように、昨年 10 月 10 日、本学においてカルテ書き換えによる医療費の不当請
求、さらに日常的に数%の医療費の不正請求が行われていると報道され、大学の評価は著しく低下
いたしまた。結果的には報道された不当請求も不正請求も事実無根であることが証明されましたが、
この報道は内部告発によることが明らかになり、大学関係者にとって大きな衝撃であり、また、皆
さんも強い憤りを感じたと思います。大学に対する、そして自分の働く職場に対する帰属意識も人
間としての純粋さも全く見られず、少なくとも6年間の最高学府の教育を受け、社会的には指導的
な役割を果たすべき人間のとる行動ではありません。大学として許し難い行為であり、このような
内部告発者の存在によって、本学の卒業生が受けた打撃は計り知れないものがあり、本学の教育そ
のものが問われることになりました。良医の育成を基本方針として、スモールグループ教育を中心
に「全人教育」を心がけて来ましたが、この様な結果になって非常に残念に思っております。改め
て大学の名誉回復のために、皆さんのご協力を心からお願い致します。
大学の変革期と本学の将来
大学は社会の流れや時代の流れに迎合することなく、大きな理想の下に自己改革を行いながら、
常に社会の進むべき方向を指し示す使命を持っております。大学の社会的使命感の自覚とそれが醸
し出すアカデミックな雰囲気によって、大学の最大の使命である次の世代を担う人材を育成するこ
とができます。その意味で内部告発事件は大学として反省しなければなりませんが、本学のみなら
ず日本の大学には、使命に対する自覚も気概もなく、外部から自己点検・自己評価を迫られるなど、
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新春のごあいさつ
完全に自治能力を失っております。また、文部省から「業者との食事の禁止」など、極めて低次元
な通達が出されるなど、大学の体質そのものに問題があり、その社会的な存在意義が失われている
ことを肝に銘じなければなりません。
一方、グローバル化が進み、弱肉強食を容認するバックグラウンドの中で、勝者が生き残り、敗
者は消滅するという厳しい現実があります。この様な厳しい環境の中で、大学が生き残るために、
そして大学が本来の姿を取り戻すためには、障害を取り除きながら、体質改善を進めなければなら
ないと考えております。
文部科学省は国際的な競争力を持つ大学づくりを進めておりますが、歴史の浅い私立医科大学は
特色ある大学をつくる以外に、厳しいグローバル化の中で生き残る道はありません。そのために重
要なことは教職員の大学に対する帰属意識、大学としての自覚と自治の確立(体質改善)をもとに、
特色ある教育、研究そして診療システム、そして効率的な組織機構をつくり上げることであると思
います。帰属意識や大学としての原理原則の確立については、これまでにも何度か皆さんにお願い
致しております。
特色ある教育・研究、診療システムづくりについて
特色ある教育システムについては学長を中心に懸命な努力が続けられており、平成13 年度は教育
に対して重点的に予算配分を行いました。すでに各大学はこれまでの講義による教育から、名前は
兎も角、スモールグループを中心とした教育システムに変わりつつあります。医学教育が全人教育
である以上、当然の帰結でありますが、これからは本学の教育理念である「良医の育成」を目標に、
本学の、本学による、本学のための教育システムをつくり上げなければなりません。
また、大学院組織の改組を機会に、本学における特色ある研究課題を幾つか選んで、重点的に予
算配分を行うことが必要で、これまでのバラマキ的な研究費の配分からは脱却しなければなりませ
ん。昨年は大学院改組のために特別予算を配分致しましたが、今年は研究拠点としての総医研、ハ
イテクリサーチセンターの見直しを含めて、その充実に力を注ぎたいと思っております。
平成 15 年には新しい病棟が完成しますが、病院新棟の建設に対する投資を 10 年程度ですべて償
還するために、より一層の努力が必要となります。この地区には大型病院が多く、医療制度の改革
などもあって競争が激化することが予想され、病院の収益を上げることは非常に厳しくなっており
ます。病院新棟の建設が過剰投資にならないように、病院の適正規模化、分院構想、さらには特色
ある病院づくりなどについて検討しなければなりません。幸いにしてこの地区の大型病院は公立で
あるのに対して、本学は私立であり、大幅な改革が比較的容易であり、特色ある病院づくりのプロ
ジェクトチームを編成し、早急に成案を得たいと思っております。
組織機構の改革について
これまで病院新棟の着工などで延び延びになっておりましたが、やっと事務組織の機構改革を行
うことができました。事務機構改革の目標は教員が本来の業務である教育、研究、診療に専念でき
るように、これを支える事務組織をつくり上げることであり、この組織機構改革を本年度の重点項
目の一つに致しました。平成14 年4月からはこの新しい組織機構によって大学が運営されることに
なりますが、平成14 年度を試行期間として、訂正すべき点はさらに訂正し、平成 15 年度からパー
マネントなものにしたいと思っております。
この組織機構改革の基本精神は先に述べた通りで、イコールグローバル化対応ではありませんが、
この改革によって事務の合理化、マンネリズムからの脱却が可能になり、このシステムが効率的に
稼働すればグローバル化にも充分対応できると信じております。
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グローバル化における価値観のように、世界が、そして人間は、勝者と敗者、白と黒の2元論で
割り切れるほど単純ではなく、人間の価値観は多様であることは私ども日本人は充分に認識してお
ります。本来、東洋思想を根底にした日本社会は多様な価値観を容認しており、勝者と敗者の区分
は不明確で、この間に大きなグレイゾーンがあり、多くの人はこのグレイゾーンの中で、人間とし
ての尊厳を失わずに生きることができるように思います。これまではこのグレイゾーンが悪用され、
結果として組織の腐敗が起こったと思いますが、この点には充分な配慮が必要であることは言うま
でもありません。
組織機構の改革が単に合理性を追求するものではなく、日本的ないわゆるグレイゾーンが必要で
あると考えており、このグレイゾーンは組織機構の運用の中で取り込むことになります。何れにし
ても「努力すれば報いられる組織」そして「勝者と敗者ではなく、すべての教職員が人間としての
尊厳が保証される組織」が基本となっております。
大学創立30周年記念事業へのご協力のお願い
話は変わりますが、この度、病院新棟の建設並びに教育施設の整備、充実を大学の創立 30 周年記
念事業と位置づけ、教職員、北辰同窓会、北斗会並びに橘会など、さらには本学に縁のある後援協
力会の皆さんにご寄付をお願いすることになりました。病院新棟の建築費並びに主な施設は大学の
積立金によってある程度まかなうことができると思いますが、ご寄付いただいた資金は主に病院で
働いている人のために、また、病院で受診される患者さんのための施設整備と教育施設整備に使わ
せていただきたいと思っております。この様な趣旨の募金ですのでご協力をお願い致します。
21 世紀はグローバル化が進み、世界観、価値観の規格化に伴って人間の素朴さ、自然さが失われ
ることに対する感情的な対立は益々大きくなると思われます。また、科学技術が進歩し、日常的な
生活様式は容易に変えることができますが、変わることのないのが人間性であり、今後、科学の発
展と人間性との調和が失われることが危惧されます。このように非常に不安定な21 世紀の中で、そ
してグローバル化の波から大学を守るためには、教職員すべてが共通の問題意識をもって努力する
ことが必要であると思っております。
皆さんのご協力を心から願って、年頭の挨拶とさせていただきます。
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新春のごあいさつ
学 長
竹 越 襄
明けましておめでとうございます。
皆さんよいお正月を迎えられたことと思います。
私は、毎年、神社へお参りに行っておりまして、例
年、西の方へ行っておりましたので今年は東へと思
い、箱根神社へお参りしてまいりました。毎年神社
を変えているのは理由はございませんけれども、神社
に怒られるかもしれませんが日本の神様はどこも一
緒だろうということで、いろいろまわっております。
箱根といえば、私は毎年楽しみにしております皆さ
んご存知の箱根大学駅伝がありますが、今年は法政
大学の第二走者の感動的な姿を見まして、最近の若
者もたいしたものだと非常に感心しました。
さて、今、小田島理事長から縷々大学のお話をい
ただきましたけども、こういった話というのは、年に
一回新春の年頭挨拶にみなさんにお話するというこ
とで、非常に緊張もし楽しみにもしております。こ
れを機会に今はやりのアカウンタビリティではござい
ませんけれども、私の思っておりますことと、元旦で
ございますので夢のような話もちょっとさせていただ
きたいと思います。私は、立場上、教育関係が中心
になるわけですけれども、昨年度は理事長のおかげ
で非常に経済的援助といいますか支援をいただきま
して、いろいろ仕事が出来たと思っており感謝して
おります。
最初に重要なことは入学試験ですが、これは皆さ
んご存知だと思いますけれども、年々、優秀な学生
が入学してくるようになってきたことです。これはト
ップ10の学生諸君があまり他の大学へ行かなくなり、
10 人のうち6∼7人が残るようになったということで
す。これは非常にありがたいといいますか、本学が
評価されたことの表れではないかと思っております。
大学にとって優秀な学生が入ってくれるということ
は非常に大事でございますので、将来は二次合格者
が一人も他の大学へ行かないような、そういった大
学に出来ればとそういう夢のようなことを考えてお
ります。
それから、国家試験問題ですけれども、これは、
ご存知のように、昨年、文部科学省主導ではありま
すがモデルコアカリキュラムが公表され、これに則っ
ていろいろ教育カリキュラムを作ることになりました
が、これが国家試験問題と非常に連動しており、こ
れをしっかりやると国家試験の成績も良くなるとい
った形を取ってきつつあります。従来は、学校の授
業は授業として、国家試験は国家試験の問題として
といったように、学生諸君には本当に大変な時代で
ございましたけれども、最近はそうではなくて、しっ
かり講義なり授業をカリキュラムに従って学ぶと国
家試験に合格するという流れが出来てきつつありま
すので、これは教育する者にとっては非常に幸いな
事だと思っております。ですから、モデルコアカリキ
ュラムを中心に、国試の出題基準を参考にしながら
学生諸君の指導を行い、それが国家試験の成績に結
びつくのではないかと思っております。
私が2年前学長職につきました時に、大風呂敷を広
げまして、国試は将来100%の合格率に上げると言い
たいということを、事前に菅井前教務部長に相談し
ましたら、ちょっと言い過ぎかもしれないというの
で、軌道修正しまして限りなく100%に近づけようと
いうニュアンスで教授会で話をさせていただきまし
た。将来は 100 %に近く一度は医科大学・医学部 80
校のうちトップの方にいきたいと、夢のようなことを
思っておりますけども、これは必ずしも夢ではなく
この講演の録画は、金沢医科大学イントラネット http://www2.kanazawa-med.ac.jp/ で3月31日までご覧になることができます。
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て、やりようによっては出来る可能な数字であろう
と思っております。それだけ、私が学長職に就いて
以来の2年余で、教職員の教育に対する情熱がひしひ
しと盛り上がってきたのを感じており非常に頼もし
く思っております。さらに今年、来年と前向きで良
い成績を収められるように、皆さんと共に精進した
いと思っております。
それから、PBL、CCS、OSCE、SP を含めまして、
いろいろな教育方法が出てきております。これは、ア
メリカ式と言いますか、世界的な流れでこういった
形には来ておりますけども、これが本当に日本の医
学教育として理想的なものであるかどうかは、やっ
てみないとわからない話で、まだその端緒についたば
かりです。これをどういうふうにうまくやって成果を
上げるか、国試に連動して良い医者を作るかという
ことは、まだ未知のことでもありますので、あまりこ
れに期待しすぎて、これをやれば教育はもう万全だ
というようなことは、私は無いと思っております。将
来、必ずやまた別の新しい医学教育の波が来ると考
えており私もいろいろ模索しておりますが、そういっ
た意味では教育というのはなかなか難しいわけです。
研究とか臨床というのは自分のペースでやれますけ
れども、相手が学生でございますのでなかなか自分
のペースでやれない、一筋縄ではいかないと思って
おります。
皆さんご存知と思いますが、私は昨年と今年2回
に亘りまして6年生の諸君とグループ別に昼飯を共に
しておりまして、これがなかなか面白いことを言いま
す。最終的には教務部にどういう意見が多いか伝え
ているのですが、やはり彼らの最も強い要望という
のは、大学に残りたくなるような先生方になってほ
しいと、要するに魅力のある大学を彼らは希望して
いるわけです。最終的には、それに尽きるわけで、環
境とか駐車場とか細かい要望はあるのですが、彼ら
の底に流れるのは、自分らが勉強して将来大学に残
りたいような、先生方になってほしいという気持ち
が非常に強いわけです。ですから教職員としてはや
はりそれを噛み締めて、学生諸君が将来大学に残る
ような、良い教員のいる大学にしたいとつくづくそ
う思っております。学生の評価が必ずしも全てでは
ございませんけれど、大きな大学の指針の一つにな
ろうかと思います。教育に関しては非常に難しい面
もございますけれど、教職員の情熱が徐々に高まっ
てきているような様子でございますので、非常にあ
りがたいと思っています。
次に研究でございます。研究につきましてはご存
知のように、勝田教授を中心に、大学院改組を目指
しています。皆さんにご面倒をおかけして業績を作
っていただいて申請するわけですが、これがどうなる
か一つの試金石になるわけですけれども、これをな
んとかやり遂げて、良い大学院を作って研究のしや
すい場を作りたいと思っております。これは国公立
全てそうですが大学院の改組ということで、今まで
の講座制に捉われることの無い大学院の体制を作っ
ていきたいと思っております。
これも夢になるのですけれども、今、文部科学省
が言っております大学トップ30 ですが、これに挑戦
するというか、わが大学もこの医学の分野でトップ
30仲間入りをするという目標で頑張りたいと考えて
おります。優秀なスタッフがたくさんいらっしゃいま
すので必ずや将来はトップ30 に入って、資金的にも
研究のしやい環境を作ればと、そういうふうに一つ
の夢ではございますけれども思っております。その他
にもいろいろな改組のために、あるいは研究のため
に、理事長から豊富な資金をいただいて、それを基
に研究プロジェクトを組んでおりますので、そういっ
たことをご理解いただきまして前向きで進めばと思
っております。
それから最後に、診療でございます。これは先程、
内田病院長が病院で30 分近くご講演なさったそうで
私は何も言うこともございませんが、今朝の新聞に、
米韓共同で免疫抑制型のミニ豚のクローン豚を作っ
たということがございました。基礎の段階ですけど
も、着実に医療が進んでいるわけで、私の領域の心
臓移植、臓器移植のほうが免疫抑制のもので自分と
同じ心臓を作って心臓移植するということも間近に
迫っていると思います。そういった先進医療がます
ます近づいてきているということで、優秀なスタッフ
が本学にも病院にもいるわけですから、ひとつ鋭意
努力して高度先進医療をやっていただきたいと思い
ます。どうも最近は医療過誤とか医療事件で萎縮診
療が一部にあるような感じがしますけれども、若い
者は萎縮することなく前向きの姿勢で新しい医療に
挑戦していただきたいと思っております。これも今朝
の新聞ですけれども、一般の方のドクターに対する
信頼感は80 %に上がり、昨年よりも20%もアップし
8
新春のごあいさつ
たということで、インフォームドコンセントやカルテ
の開示も含めまして、患者さんの医師に対する信頼
度が上がってきたと報道されています。これは非常
に良いことで、一般の方や患者さんのために、さら
に我々は医療人として努力する必要があると思いま
す。また、先程、理事長がおっしゃいました共同指
導にまつわる腹立たしい事件もございましたけども、
これもひとつの大学にとって前向きに乗り越えてい
く試金石といいますか、そういった試練でございま
すので、これを乗り越えてもっと良い大学にしたい
と思っております。殆どの教職員はそういうことは
ないのですが、やはりどのような組織にもそういった
人がいるわけで、どうにもならないといえばそうです
けれども、これはつきつめるところ日本の教育、特
に戦後アメリカナイズされて民主主義、自己中心的
なものの考え方、挨拶もできない人間を作ってきた
という教育に問題があろうと思います。しかし、そ
ういうことを言っても仕方がないので、やはり学生
のときから、あるいは医局に入ってからでも遅くは
ないですが、人材の育成といいますか、そういう教
育をして人間を育てる必要があろうかと思います。
大学にとってするべき仕事がたくさんありますけ
れども、いよいよ30 周年を迎えて前向きで非常に気
運が高まってきている大学だと思いますので、心を
一つにしてみんなで良い大学を目指して頑張ってい
きたいと思っております。
それから最後になりますが、日頃あまり本を読む
時間がなくて正月からまとめて乱読するわけですけ
れども、その一つに、人材育成会社アイウィルとい
う会社の社長さんで染谷和己という方が書かれた
「上司が『鬼』とならねば組織は動かず」、「上司が
『鬼』とならねば部下は動かず」という二冊の本を読
んで非常に感銘を受けたのです。ぜひ皆さんチャン
スがあったらお読みいただきたいと思います。ビジネ
スやこうした系統の本では珍しくベストセラーにな
り非常に評判が良く、ここにいらっしゃるのは幹部
の方がほとんどで上司の方が多いようですので、一
読されたら非常に参考になるかと思います。これは
突き詰めていうと一頭のライオンが100 頭の羊の軍団
を引き連れていくと、一頭の羊が100 頭のライオンを
引き連れていく軍団に勝利するということです。要
するに、これは独裁的でちょっと言いにくいのです
が、トップがしっかりしないと下がどんなに強くても
組織は駄目になるということで、ここにおられる方
は上司の方が多いので、そういった心意気で軍団を
率いるつもりで鬼となって大学のために尽くしてい
ただきたいと思います。日頃から、自分は理事長で
あり、学長であり、病院長であるという意識で持っ
て仕事をしていただきたいと思います。そういう視点
で仕事をしてほしいと思います。
いろいろ申し上げましたけども、今、申し上げた
夢が叶うようにみんなで努力して協力して良い大学
にしたいと思います。
どうもありがとうございました。
9
病院長
内 田 健 三
新年明けましておめでとうございます。
平成13 年は病院にとっていろいろなことで激動の
年でありましたが、皆様には、平成14 年の新年を穏
やかに迎えられたことと存じます。平成14 年の年頭
にあたり、平成13年度に病院の方針として実施して
きたことについて簡単に状況を報告し、平成14 年の
病院の重点項目について、引き続きご協力をお願い
して年頭の挨拶としたいと思います。
昨年を振りかえって
まず診療体制について、昨年1月に外来・入院予約
センターを設置しました。これは、より効率的なベ
ッドコントロールを行うため従来は看護部で行って
いたベッドの管理を事務部門に移し、専任の担当者
を配して集中管理することにしたものです。業務と
しては、全病床の空床状況の把握、休日・夜間の空
きベッド、入院予約、退院予定患者の情報を把握し、
この情報を各診療科や救急医療センターに提供しま
す。その結果、空床の照会に対して、適切な対応が
でき、従来に比べて救急車の受け入れを断ることが
殆どなくなったということですし、病床利用率もか
なり向上しております。今年は、外来担当医が即日
入院の患者に対して、直接空床の検索ができる病床
管理システムを構築していきたいと思っています。
続いて、4月には医療安全対策室を設置しました。
これは医療事故、ヒヤリ・ハットが全国レベルで増
加しており、本院でも月当たり約130 件発生しており
ます。中には大事故につながりかねないというヒヤ
リ・ハットもあります。医療安全対策室というのは、
その医療事故関連の情報を収集して、病院職員全体
に伝達することにより、情報を共有化してリスクを
認識していただく、この一連の作業が事故防止にも
つながっていくと考えているわけで、今後、医療事
故、医療トラブルに対する窓口となり、また、医療
安全対策委員会の事務業務を担当することになると
思います。こういう安全対策室というのは無いにこ
したことはありませんが、平成14 年度はこれを充実
せざるを得ないと考えております。
最近の医療事故、医療トラブルに目を向けて見ま
すと、特に患者さんとその家族に対するインフォー
ムドコンセントやコミュニケーションの不足が原因と
なっていることが多いように見受けられ、特に、イ
ンフォームドコンセントに関しては十分な時間を割
いていただきたい。それから、いろんな事が起こりま
すと、カルテへの記載が問題となりますので、日頃
から、患者さんからの訴えとそれに対する医師とし
ての説明内容をカルテに詳細に記載する習慣を身に
付けるよう指導していただきたいということです。一
旦事故やトラブルが発生しますと、その担当医、診
療科長、医療チームはこれを修復するために膨大な
時間と多大の費用を要することになりますので、医
療事故を起こさないよう十分注意をお願い致したい
と思います。
それから、これは医療監視で厚生労働省から指導
されたことでもありますが、毎年、事故防止に関す
るいろいろな講演会やイベントを開催していますが、
職員全員が参加するということを心がけていただき
たいと思います。勤務の都合で参加できない人のた
めに、今年からビデオを作成しておき、不参加者を
対象に2回目としてそれを聴講する機会を設けて全員
が参加できる方向にもっていきたいと考えています。
次に病院の管理運営について、まず、電子カルテの
円滑な運用と情報開示のための体制を確立しました。
この講演の録画は、金沢医科大学イントラネット http://www2.kanazawa-med.ac.jp/ で3月31日までご覧になることができます。
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新春のごあいさつ
電子カルテの迅速化ということに関しては、6月に外
来の端末機を100台更新して、電子カルテ操作のスピ
ードアップを図りました。それからもう一つ、7月に
診療情報管理委員会を設置しました。これは外部か
らの診療録の開示依頼に対して規程に沿って審査を
する委員会ですが、診療情報の公開という面で電子
カルテ内容のチェック機関としても今後活動の機会
が増えてくると思っております。また、今年度から
電子カルテを卒前教育に使用することが計画されて
いますが、学生へパスワードを付与するにはプライ
バシーやセキュリティ、データの保存性など紙カル
テ以上にモラル厳守の必要性がでてくるものと思わ
れ、今以上に電子カルテ使用時のルール違反に対す
る厳格な罰則の構築も必要となることから、慎重に
判断して対応していきたいと考えています。
ここで、電子カルテに関して昨年、NHK を中心に
報道されました2つの事件について簡単に結果に触れ
ておきたいと思います。
1つ目は、看護士が医師のパスワードを使用して薬
剤を持ち出した事件であります。事件の後、院内で
は麻薬・毒薬・向精神薬については、管理・保管方
法を統一し、保管箱に鍵を付けて管理責任者を決め
るなど責任体制の一層の明確化を図りました。さら
に、医師のパスワードの更新を3ヶ月から1ヶ月に短
縮して管理を強化しましたが、根本はモラルの問題
となります。今後とも、パスワードの管理にはもち
ろん十分な注意を払っていただきたいと思っており
ます。
2つ目は、6月の厚生労働省、石川社会保険事務局、
石川県による特定共同指導についてであります。こ
れは電子カルテの記載を整理する目的で書き加えた
ことについて、NHKが医療費の不当な請求が発覚
しないように組織ぐるみで書き換えた、と報道した
ことであります。全く意図しないこととして反論し
ましたが、10 月に再度の個別指導が実施され、書き
加えた全ての部分について再度調査が行われた結果、
「書き加えた内容はすべて通常指摘される保険指導の
範囲内であり、不正な箇所はない」ということでし
た。しかしながら、症状の経過、病名の記載などが
不十分なものは、検査・投薬・指導料などの請求が
行われても保険診療としては認められないので、自
主返還の対象になるということです。
なお、カルテの追加記載に関しては、遅滞がなき
ようということでありますけれども、電子カルテも同
様で遅くとも当該月末あるいは翌月の診療報酬請求
までに記載を済ませるということを周知徹底するよ
う医師を指導していただきたいということです。電
子カルテでは、追加記載日が明確に印字されますの
で特に留意をお願いしたいと思います。
続きまして、建設中の病院新棟についてですが、
新棟完成後の運用については、すでに方針の大筋は
決定しておりますが、8月に新棟基本運用検討委員会
を設置して、施設面・運用面・医療機器等のいろい
ろな分野で最終検討をしているところです。その中
で医療機器については、予算が非常に厳しい状況に
あります。新規に整備が必要な機器あるいはセンタ
ー方式の集中治療室関係の機器で開設時点に整備完
了しておくべき機器装置については、機器施設整備
委員会の高島副院長を中心として調査と当該各部門
長とのヒアリングは終了しております。しかし、予算
的に非常に厳しい状況にあるということから、各診
療科関連の機器についても、経年でも使用可能な機
器については極力移設して使用する方向で検討をお
願いしたいということでございます。
次に、平成13 年に実施した項目の締めくくりとし
て、平成13 年11月までの診療実績の状況について対
前年度との比較で報告します。
1日平均の外来患者数は全体的に減少しておりま
す。外来診療実績は月によってバラツキはあります
が患者数が減っているにもかかわらず診療単価が上
がったこともあり、前年度を上回っております。1日
平均入院患者数は7月から8月にかけ減りましたが11
月から増え前年度より少し増加しました。入院診療
実績は夏場に減少し年末にかけ盛り返したのですが、
診療単価が低くなっているため前年度に対して大幅
に下回っております。
患者紹介率については、診療報酬上の紹介率35%
以上を目標としてきていますが、7月以降11月まで前
年度割れとなっています。例年と殆ど変化はありま
せんが、11 月までの累計平均では、現在のところ過
去3年間でわずかに増加している程度であります。非
常に努力していただいている診療科もありますが、
30 %を切る診療科が数科あるため全体の足を引っ張
る結果となっています。種々ご苦労があるようです
が、病診・病病連携による診療体制の確立は今後の
特定機能病院の診療体制の「かなめ」であるため、
11
一層の努力をお願いしたいと思います。
新しい年の課題と方針について
次に、平成14 年度も含めて新しい年の課題と方針
についてお話をしたいと思います。
医療の安全の確保
まず第1点は、引き続き医療の安全体制の確保とイ
ンフォームドコンセントの徹底であります。先程も
申しましたが、各部門からのインシデントレポート
を医療安全対策委員会を中心に収集しているわけで
すが、この情報を各部門に提供することで、事故防
止に役立てていただきたいと思います。リスクの認
識と共有化、さらに部門や組織ぐるみで対応をして
いく、これがリスクマネジメントの原則であると思い
ますが、それを今年は委員会のリスクマネジャーが
中心となって現状から一歩踏み出して、現場に出向
いて実践指導をしていくという方向にしてほしいと
思います。各部門の関係職員にとっては、リスクマ
ネジャーの指導者によるOJT(on the job training )で
のリスクへの対応を習得する形になると思います。
また、非常に増加している診療に関するトラブルの
原因としては、患者さんとのインフォームドコンセ
ントやコミュニケーションの不足が問題となるケー
スが増えておりまして、患者さんから、対応が悪い、
説明されていない、と言われて医療費の支払いを拒
否されるケースも多々出てきております。また職員
間、医療チーム間の連携の悪さ、これはコミュニケ
ーションの無さかとも思いますが、これが原因のこ
とも非常に多いようです。初歩的なことですが、基
本である診療中の態度、言葉使いに十分注意してい
ただいて、相手の立場とか気持ち、何が言いたいの
か、何が聞きたいのかを理解して診療にあたってい
ただきたいと思います。
効率的な診療体制の確立
2番目として、医療経営の問題について少し触れて
おきたいと思います。
先程、11 月までの診療実績報告の所でも申しまし
たが、平均在院日数はひと頃に比べて短縮はされて
いますが、年間通しで一般病床の平均在院日数を25
日以内にしたいと思います。これにはいろいろな方
策があると思いますが、20 日を切っている関東方面
の大学病院では積極的に実践していることですが、
手術目的で入院する患者さんについては、外来で術
前検査を済ませてもらい、入院日から手術日までの
日数を2日から3日に短縮して、患者の料金負担を少
なくして、在院日数も短くするとか、クリティカル
パスにより1泊2日や2泊3日等の短期入院を意識的
に増加させるとか、同一ベッドでの午前中退院の午
後入院という病床の高回転利用などが普通に行われ
ているようです。この他、我々の病院では6ヶ月以上
入院している患者さんが月延べ平均で約1,000 人位お
られるようですが、こういう患者さんの行き先を考
えていくということが平均在院日数を短縮できる一
つの方策ではないかということです。それには入院時
に退院までのクリティカルパス等を使ったちゃんと
した入院治療計画を説明し、また退院後の他院紹介
や在宅療養なども含めた見通しも入院時に説明する
ことで患者さんや家族も療養計画が立てられ易くな
るという患者への早期退院への指導も必要だと思い
ます。転院等を最初から話しておけば抵抗が無くな
ると思いますがどうでしょうか。
それから、紹介率、これも目標は診療報酬上で
40 %という高い数字になっておりますが、現在は31
∼32 %です。これにもいろいろアイデアがあるかと
思いますが、当院の医師がその派遣先の病院で当院
への紹介、当院からの逆紹介をもう少し増やしてい
ただければ達成できる余地があるということ、それ
から、外来でも症状が固定して薬のみという患者さ
んもおられますので、そうした患者さんを逆紹介し
ていただいて、紹介先から重篤な患者さんを紹介し
てもらうというように、お互いに医療機関の性格と
いうか持ち味を出し合い、相互利用する形での病
診・病病連携を意識していくことが必要かと思いま
す。
それから収支差額の面では、診療上のロスである
薬剤の逓減・査定の減少という大きな命題がありま
す。これは平成12年度は約1億 2,000万円のロスがあ
りまして、これは低成長下での医療収入の対前年度
増加分を上回るくらいの数字となっており、薬品・
医療材料の購入費や関与した医療者の人件費を加え
る損失額はさらに大きくなります。この点について
も十分改善の余地があると思いますのでよろしくお
願いします。特に薬剤逓減は、患者さんの都合もあ
りあまり問題視したくはないですが、いずれ強行対
策を考えなければならない時期も来るかと思ってお
りますので十分に関心を持ってご注意いただくよう
お願いします。
12
新春のごあいさつ
次に平成14 年度の医療費の改訂等に関することで
すが、既にマスコミ報道でご承知のように4月から診
療報酬が2.7 %引き下げられることになります。本院
の診療費で計算しますと約5億円ということで、外来
診療分の1カ月分を上回る額に相当するということで
あります。新しい医療技術の開発等で紹介入院患者
さんを増加させるか、従来の経費支出を大幅に削減
するしか方法がありません。ロスは徹底的に排除し
ていただきたいと思います。
また、大学病院の入院医療に対して包括評価制度
が導入されることがほぼ決定的のようであります。実
施は今年の秋あるいは来年4月かということですが、
その詳細についてはまだ明確ではありません。診療
報酬の決め方は対象医療機関の入院診療報酬を疾患
ごとの患者1人当たり1日定額を原則とし、医療機関
の特性とか適切さを診療報酬請求上で包括評価して
いくということで同じ疾患でも医療機関により点数
に格差が出てくることになりますので、個々の医療
機関が独自で経費を抑えた無駄のない効率的な治療
をしていくことが必要となります。これによって収入
の増加というものが抑制される可能性が非常に高い
と思われます。収入の減少というものが当然、経費
の抑制ということに連動して来るということになり
ますので、できるだけムダのない効率的な診療を行
っていただかねばなりません。それから大学病院と
して新しい診療技術の開発を積極的に行っていただ
くということについて各診療科の自覚とご協力をお
願いしたいと思います。
それから先程の包括評価の導入につきましては、
ICD-10(WHOの国際疾病分類第10 版, 1991)の4桁
以上のコード分類による疾患ごとに各医療機関が自
ら点数を決めるということも話として出ております。
現在、当院の病名は ICD-10 のコード3桁を使用して
いますが、今後4桁以上での病名管理とこれに対応す
る医事会計システムなど運用の改善が必要となって
きます。したがいまして、今年度は ICD コード変更
やICD 疾患別の診療報酬額の試算という作業が重要
な課題となってくるかと思っております。またこれに
関連して、最近、国の補助金絡みでの電子カルテシ
ステムの構築にあり、オーダーシステムに使用する
病名、処置、手術、薬剤、検査、医療材料等のコー
ド化には、厚生労働省の委託事業における用語・コ
ード標準化委員会の方針に基づいた標準マスターを
使用するよう指示が出ております。これは統一化の
方向にあると思われるので、当院の使用コードにつ
いても他との情報の互換性の面から標準マスターに
切り替えていく必要があると考えております。
医薬分業体制について
第3番目は、院外処方箋の全面発行についてです
が、昨年10月にようやく門前薬局の開設の場所や店
舗形式が決定して、現在、入居予定のテナントビル
が病院前に建設中であります。3月∼4月頃には、3
薬局が入居して開業の予定と聞いておりますので、
門前薬局が開業しましたら、5月頃から全面的に院外
処方箋を発行していきたいと考えております。当初
は内科系診療科とし、1ヶ月くらい遅れて全診療科で
開始するという予定でおりますが、運用上の詳細に
つきまして、たとえば院外処方として発行できない
薬剤とか、あるいは対応するかかりつけ薬局等の事
前登録などについては、薬剤部と保険審査課及び院
外処方箋検討委員会で検討しており、逐次、各診療
科に通知しながら実施していきたいと考えておりま
す。厚生労働省の発表によると、全国における平均
薬価差益は7.1 %ですが、それを平成14 年の薬価改正
で5%引き下げ、最終的には薬剤管理料として2%位
をめざしていく方針とも聞いております。当院では
患者さんの利便から院内薬局を維持してきましたが、
医薬分業は国の施策として進められており、すでに
従来の形の院内薬局を維持するには薬剤師不足を解
消することが困難な状況となっています。当院では
院外処方箋の発行への移行を契機に、外来調剤を担
当している薬剤師は病棟服薬指導業務、それから
CRC(clinical research coordinator, 臨床治験コーディ
ネーター)業務に関わっていくことになります。した
がって、服薬指導は、薬剤管理料が保険請求できる
ので、まだ実施されていない診療科は薬剤部に相談
されて、今年度から実行していただきたいと思いま
す。
サービスの向上に向けて
次に第4番目ですが、外来入院予約センターについ
ては、先程、病床の集中管理業務についてお話しま
したが、外来診療に関わる業務はまだ動いておりま
せん。現在、外来の予約変更が非常に多いというこ
とで、これをすべて外来の診察医や看護婦が行って
おりますが、今後は外来入院予約センターが窓口と
なってこの仕事を一括対応していくことにします。
13
これによって外来の医師とか看護婦の仕事量が軽く
なれば、その分患者さんに対するサービスの向上も
期待できるのではないか思います。
最後に2点ご報告をしたいと思います。まず、病院
新棟の工事の進捗状況ですが、現在、約15 %であり
まして、ことしの暮れには約9割程度が出来上がり、
平成 15年の秋には完成する予定であるとのことで工
事は順調に進行しているようです。病床数はどうな
るのかという問題ですが、新棟の病床数は673 床とな
ります。全体の病床数につきましては補助金の関係
もありまして、現在の病床数の約1割程度を削減しな
ければならないとのことで、現在1,013 床ありますの
で、新棟完成時には930 床程度となり、その後、別館
の改修に同様の補助金を導入していくとなるとさら
に50床から60 床程度が削減となり、最終的な許可病
床数は880床程度となる計算になります。しかし、大
学の将来構想の中で、病院の適正な病床規模はこの
程度で良いのかという検討の余地は残っています。
新棟を中心とした病床配分については、以前、病院
総合検討委員会で協議された案を基に現在、各診療
科別の最近5年間の病床利用率の傾向を参考にして、
事務的に割り当て病床、配置病棟を再検討しており
ます。具体的な運用シミュレーションにより、新棟
完成時には効率よく病棟を移転する必要があります
から、今年は、関係委員会で総点検を進め、最終決
定を行っていく予定でおりますのでご協力をお願い
いたします。
最後に電子カルテについてですが、電子カルテの
運用についてはまだ種々の問題点がありますが、特
に各診療科や各データ間で存在する運用上の格差を
解消し、統一された基本的基準の構築を最大目標に
してさらに使い易いものにするということを考えてい
かねばなりません。たとえば、外注検査結果の取り
込み、読影レポートのデジタル化、4桁以上のICD コ
ードによる標準化した病名マスターへの改善とその
運用を進める、それから、入院サマリにはいろいろ
問題がありますが、迅速且つ標準化され、大学病院
として恥ずかしくない内容の充実したサマリを書い
ていただくこと。そういうことを推進して電子カル
テシステムが張り子の虎とならないように着実な開
発を実施していかなければならないと考えています
のでご協力をお願いします。
以上、年頭の挨拶をかねまして、今年の重点項目
について考えの一端をお話しいたしました。医療を
取り巻く制度改革は年々激しさを増しており、今年
も一年、楽な病院経営は期待できないと思います。
皆さんのますますのご健勝とより一層の努力とご協
力をお願いいたしまして年頭の挨拶を終わります。
14
組織機構改革について
本学が創立30 周年を迎える今、大学を取り巻く厳
主な内容は次のとおりである。
しい環境の中で効率的な大学運営を行うため、理事
1.総合企画室の設置
長の強い指導により、大学の組織機構の改革が進ん
経営執行部のリーダーシップのもとで、大学を取
できた。昨年来、役員と各事務部門に於けるリーダ
り巻く外部環境の動向を十分に把握し、将来構想を
ーとの間で、業務の効率化並びに合理化策について
的確かつ迅速に企画・立案し、その構想を現実的に
踏み込んだ検討が行われた結果、先般、新しい組織
施策として具体化することを目的として設置した。
機構の構築がなされたものである。
2.学長室の設置
今回の組織機構改革は、理事長の年頭挨拶で触れ
学長室は、学長のリーダーシップのもとに本学の
られているとおり、教員が本来の業務である教育、 基本理念である教育・研究を中心に将来構想を明確
研究、診療活動に専念し得る組織体制を確立するこ
にし、ソフト、ハードの両面から、その具体的な実
とを目的としている。そして、大学の原点に立ち返
現を目標に企画・立案する組織とした。
って体質改善を行い、基礎体力の充実を図り、大学
3.事務組織
の将来を見据えて、困難な時代を生き抜いて本格的
事務局を設置し、その下に総務部、経理管財部、
な発展につながるような組織機構を目指したもので
医学部事務部、病院事務部の4部を置いた。
ある。
(1)総務部、経理管財部
組織図
学
長
室
金沢医科大学
学
校
法
人
金
沢
医
科
大
学
総
合
企
画
室
大学院
医学部
図書館
大学病院
看護専門学校
総合医学研究所
ハイテクリサーチセンター
総務部
経理管財部
事務局
医学部事務部
病院事務部
入学センター
学術交流室
学術事業センター
教育研究事業推進室
施設整備推進室
出版局
メディア情報センター
15
大学経営を主眼とした法人業務の強化を図るため
に、従来の法人事務部を総務部と経理管財部に分離
した。総務部は法人業務全般を掌握するものとし、
経理管財部には経理課、用度・管財課、施設課の3
課を置き、管財業務の強化を図り、教育研究診療を
財政面から支え、大学の総合的な環境整備を行う部
署とした。
(2)医学部事務部
これまでの庶務課、教学課、大学院課、図書館事
務課、看護専門学校事務課、総合医学研究所事務課、
研究支援課の7課は日常業務(ルーチンワーク)を中
心に担当し、新たに将来構想についての企画・立
案・調査等を担当する部署として上述の学長室を置
き、教学業務の効率化を図ることとした。
(3)
「病院事務部」
病院業務の拡大や変化に対応するため、業務の整
理統合を行い、その結果、病院事務部を管理部門と
医事部門に分け、効率化を図った。管理部門には管
理課、職員課、医療情報課、医療安全対策課の4課
を、医事部門には医事課、診療支援課、地域医療連
携事務課の3課を置いた。
今回の事務機構の改組は、単に業務の合理性を追
求するだけのものではなく、教育、研究、診療活動
に対する支援並びに協働体制を確立し、大学の目的
を達成するためのものであり、かつ、次世代を担う
人材の育成、そして大学の更なる充実、発展に向け
ての組織づくりとなるものである。更に、今回の組
織では、努力すれば報われる組織、教職員が人間と
しての尊厳を保障される組織づくりを基本とし、能
力主義や成果主義による人事評価制度に支えられつ
つも人間味を失わず、働きがい、そして生きがいの
ある職場づくりを目指している。この目的を達成す
るためには、教職員各自の大学人としての自覚と体
質改善が不可欠である。
この新しい組織機構は、平成 14 年4月から運用さ
れる予定である。
(常務理事)
事務組織図
事務局
総務部
総務課
秘書課
人事厚生課
経理管財部
経理課
用度・管財課
施設課
医学部事務部
庶務課
教学課
大学院課
図書館事務課
看護専門学校事務課
総合医学研究所事務課
研究支援課
病院事務部
管理部門
管理課
職員課
医療情報課
医療安全対策課
医事部門
医事課
診療支援課
地域医療連携事務課
16
第12回 総合医学研究所秋季セミナー
テーマ
肺の水分調節と疾患
― Water breather から Air breather へ―
日時:平成13年11月10日(土)
場所:金沢医科大学病院4階C41講義室
プログラム
13:10∼15:00 一般講演 座長 勝田省吾、今西 愿、松井忍、蓮村靖
肺循環と麻酔
関 純彦 (札幌医科大学医学部麻酔学)
透過性亢進型肺水腫と静水圧上昇型肺水腫
芝本 利重 (金沢医科大学医学部生理学Ⅱ教授)
能動的肺胞水分再吸収機序におけるβ刺激薬の役割
佐久間 勉 (金沢医科大学医学部呼吸器外科助教授)
急性肺損傷 −水分調節の意義−
栂 博久 (金沢医科大学医学部呼吸器内科学助教授)
15:10∼16:20 特別講演 座長 高橋敬治
呼吸調節系の発達:胎児呼吸、肺呼吸、坐禅の呼吸
有田 秀穂 (東邦大学医学部生理学第一教授)
今年で第12 回目となる総合医学研究所秋季セミナ
ーは、「 肺の水分調節と疾患」−Water breatherから
Air breather へ−をテーマとして、平成13 年11 月10
日(土)病院本館 C 4 1 講義室において開催された。
世界的に大気環境汚染が深刻な問題となり、ecosensitive organである肺への影響が問題となっている。肺
は外界と直に接してお
り、喫煙、職業性暴露、
細菌感染、大気環境
汚染などの過剰なスト
レスを受けやすい臓器
である。また心因性ス
トレスが増加している
現代社会においてはこ
のストレスが呼吸様式
にも大きな影響をもた
らしている。その意味
で肺は socio-ecosensitive organである。こ
の背景から今回のセミ
今西愿所長の挨拶
ナーでは肺を取り上げ、肺の水分調節と複雑な呼吸
リズムの神経支配に焦点をあてることとした。最近
の研究の興味は専ら細胞生物学、分子生物学、遺伝
子学に目が向けられがちであるが、今回は肺のガス
交換機能の重要性との関連から、生理学的な見地か
らの講演になるように構成した。
17
一般講演は4人
の演者により行
われた。
札幌医科大学
麻酔学関純彦先
生は「肺循環と麻
酔」と題し、麻酔
薬のあるもの(ハ
ロセン)では血管
拡張を抑制する
可能性があるこ
と、麻酔薬が肺
循環系血管壁の
特別講演 有田秀穂教授
トーヌスに及ぼす
影響を血管内皮と血管平滑筋の役割に分離して解説
された。
生理学Ⅱの芝本利重教授は「透過性亢進型肺水腫と
静水圧上昇型肺水腫」について講演された。農薬であ
るパラコートによる肺傷害は透過性亢進型肺水腫の
モデルとなりうること、静水圧上昇型肺水腫のモデ
ルとしてアナフィラキシーショック時の肺循環動態
と肺水腫の発生機序について解説された。
肺胞は水分を調節して水分貯留によるガス交換機
能障害を防御する能動的機能を持ち合わせている。
呼吸器外科佐久間勉助教授は肺胞上皮が有する水
分クリアランス機構の薬理学的な調節機序について
「能動的肺胞水分再吸収機序におけるβ刺激薬の役
割」として解説された。
肺の水分調節バランスの破綻によっておこる肺傷
害の代表的疾患がacute respiratory distress syndrome
(ARDS)である。
一般講演 関 純彦先生
一般講演 芝本利重教授
呼吸器内科学栂博久助教授は「急性肺損傷 −水分
調節の意義−」として肺循環系における微小肺動脈、
肺毛細血管系の循環障害、毛細血管透過性の異常の
観点から肺の水分調節障害としての急性肺損傷
(acute lung injury)
、急性呼吸促迫症候群(ARDS)に
ついて解説された。
今回の一般演題はいずれも生理学的見地から、肺
循環動態、肺血管内皮の透過性および肺胞上皮細胞
の水分調節機構とその異常に伴う肺障害について、
第一線の研究者による演者自身の研究データに基づ
いた説得性の高い発表であった。
特別講演では、東邦大学生理学有田秀穂教授が
「呼吸調節系の発達:胎児呼吸、肺呼吸、座禅の呼
吸」の題で、ヒトにおける呼吸調節系の進化を胎児か
ら成人までの成長の過程に反映させて講演された。
呼吸のリズム調節に深く関わるセロトニン神経系の
重要性について極めて示唆に富む講演をして頂いた。
特に釈迦によって体験的に明らかにされた「座禅の呼
吸」におけるセロトニンの役割についての解説は興味
を引いた。現代人の精神的なストレスにもセロトニ
ン神経系のバランスが深く関わることに言及される
など極めて興味ある講演であった。
第 12 回秋季セミナーは一般演題に対しても活発な
討議が展開され、特に特別講演は時間を超過する活
発な質問がでるなど盛会裡に終了することができた。
特別講演をこころよく引き受けて下さいました有田
教授をはじめ、一般演題を発表していただきました
演者の先生方に感謝申し上げる。またセミナーの司
会をはじめ、企画や運営にご協力をいただきました
総合医学研究所の関係各位に感謝申し上げたい。
(総合医学研究所高橋敬治記)
一般講演 佐久間 勉助教授
一般講演 栂博久助教授
18
学 事
−近畿大学医学部との交流−
単科大学である金沢医科大学の学生は、他大学の医学生を同級生や友人に持つ場合を除き、母校しか知らず
に大学時代を過ごしていることが多いのではなかろうか。医科大学という専門志向の環境で、医師になるため
のカリキュラムの下で黙々と勉学に励むことは一見効率的のようであるが、総合大学のように他の学部生との
交流や刺激も少なく、自らを考える機会が少なくなりつつあるのではないか。入学したときの、医学を学ぼう、
医師になろうという決意さえが、北陸の冬空のように、在学中にいつの間にかどんよりして行くのではなかろ
うか。
ところが、近年受身の教育から能動的な学習へという医学教育の流れが起こり、平成13年度から本学第4学
年生にPBLテュートリアルが導入された。そしてこの教育システムの変化に対しては、教員のみならず学生か
らも賛成あるいは反対、あるいは種々の疑問が寄せられるなど事態は揺れている。
平成 12 年 11 月に国立シンガポール大学で開催された1st ASEAN Conference on Problem-Based Learning in
Health Scienceにおいて、医学教育に非常に熱心な近畿大学医学部第2生理学の松尾 理教授に出会い、それ以
来交流を続けるうちに、本学教員の近畿大学医学部へのPBL テュートリアルの視察、本学の教育懇談会での講
演の依頼という交流にまで発展した。このようにして2大学医学生教育交流研究会は、
「他の大学でもPBL を
導入するから真似をするのか、必要だから変えるのか」
、
「一体、他大学の医学生はどんな教育を受けているの
か、どのように勉強しているのか」といった種々の疑問が出るなかで、教員とともに教育を受ける当事者であ
る学生に実際を見て考えてもらおうという意図のもとにはじまったのである。
(医学情報学・神経内科学 堀有行記)
① 第1回2大学医学生教育交流研究会
PBLテュートリアル合同デモンストレーション
日時:平成13年8月21日(火)午後3時∼6時30分/場所:金沢医科大学C41講義室・病院4階会議室
まず、テュートリアルを組み入れた臓器別のカリ
キュラムを本格的に導入している近畿大学のテュー
トリアルを見せてもらい、一緒にやってみようという
企画から始まった。
近畿大学からは医学部第4学年生8名とこの交流
研究会のコーディネーターの松尾理教授が、平成13
年8月 21 日(火)、台風北上と時を同じくして来学。暴
風を避けて、何度も出発時刻を変更しての到着だっ
た。午後3時から、病院4階の会議室でテュートリア
ルを実施し、多数の教員が出席している C41 講義室
へフォトセンタースタッフの協力で同時中継された。
最初に本学で第4学年用につくった症例に、近畿大
4学年生が挑戦した。活発な発言で討論は盛り上が
り、聞いていた本学の教職員と学生はその活発さに
驚かされた。次に近畿大4学年生と本学の4学年生の
混成チームで2例目の症例に挑戦した。第2学年から
テュートリアルを続けている近畿大生は、2症例目も
関西弁の迫力も手伝って、傍から喋る間を与えてく
れないほどだったが、本学学生の応戦により迫力の
あるテュートリアルが展開された。
テュートリアルのデモンストレーションの後、金沢
医大生と近畿大生の違いについて議論が展開した。
19
発言量の違いは、知識量や思考
過程の問題ではないかというも
のだった。しかしながら、自由
に思ったことを討論できないの
は、そういう習慣を身に付けさ
せてしまった今までの教育の影
響も考えるべきかもしれない。
発言して、違うことを言ってし
まわないか、恥をかかないか、変
な発言をして中継を見ている教
員に馬鹿にされないかなどと考
えさせてしまい、発言すること
を慎重にしてしまったのは、何
を隠そう教員ではなかったか。
これまではある質問をして、そ
の答えを求めるとき、正しい解
答や考え方が出てこないと、
「忘
れた? 勉強しろ!しっかりして
くれよ・・・」というようなやり取
りはあたりまえになっていたよう
に思われる。3年間テュートリア
ルを経験してきて、間違うこと
を恐れず話すことがあたりまえ
の近畿大のプロたち相手に、本
学の学生は互角によくやってく
れたのが第1回の交流研究会の成
果であった。
近畿大学医学部側コーディネーター
松尾理教授
金沢医科大学側コーディネーター
堀有行講師
C41講義室におけるPBLテュートリアル・
デモンストレーション中継
総合司会の鈴木孝治教務部長
近畿大生によるPBLテューリアル
両大学生合同のPBLテュートリアル
デモンストレーション後の討論
討論司会の松井忍教務副部長
学生も活発に発言して討論
交流研究会を終えて別館8階ラウンジでの
交換会
20
② 第2回2大学医学生教育交流研究会
学生による他大学カリキュラム見学 (近畿大学医学部授業見学)
日時:平成13年10月1日(月)午前8時∼午後4時30分/場所:近畿大学医学部
第1回の交流研究会のあと、他の医学部の様子をも
っと知りたいとの声が上がり、近畿大学への見学が
企画され、本学学生(第4学年6名、第5学年2名)
と PBL テューター一行が近畿大医学部を訪問して、
そのテュートリアル、講義、実習などを見学し、医
学教育カリキュラムについて2大学の学生間で討論を
行おうという企画が実現した。期日は本学の授業に
支障を来さないように、本学学園祭(内灘祭)の代
休日である平成 13 年 10 月1日(月)、大阪狭山市にあ
る近畿大医学部に集合して第2回の交流研究会が行
われた。
朝8時、近畿大医学部長の安富正幸先生からの歓
迎の挨拶と同学部の教育方針についての話で研究会
が始まった。
8時 15 分からは、第2学年のテュートリアルのため
のテューター会議と、引き続いて行われたテュート
リアルを見学。終了後、テュートリアルに関する討
論が行われた。そこでは、本学学生からは、次のよ
うな意見が出された。
《問題呈示により、知らないこ
とに対する学習の動機付けがうまくなされている。
学生の発言量が多く感心した。とても2年生の討論と
は思えなかった。発言しようとする意欲が感じとれ
た。テューターの介入の仕方がうまい。学生と教員
の関係もよく、発言しやすい環境である。テュート
リアルのテーマと講義がリンクした臓器別であるこ
とで、学習しやすくなっている。
》
一方、見学を受けた近畿大の第2学年生からは、
《緊張したが見学されることで発言しようと頑張っ
近大テューター会議の見学
た。見られることでテューターが興奮していた。いつ
もにない、積極的なテューターの姿を見た》 と感想
が述べられていた。また、本学学生と一緒にテュー
トリアルを見学した近畿大の第4学年生からは、
《喋
りたがりもいれば、終始下を向いている学生もいる。
グループ分けに左右される部分もある。テュートリ
アルの前に少し早くきて、学生とゲームの話などを
しているテューターがいたが、このようなフレンドリ
ーな関係がよいと思う。2年生のテューターは基礎の
先生がするようになった。臨床の先生の中には 『忙
しいのに来てやっている』 といったテューターが多
かったが、基礎の先生はむしろ時間的に余裕がある
のか、熱心だと思う。テューターも、介入の仕方な
どが徐々にうまくなってきた。横で見ていると、介
入したくなった。介入してしまうテューターの気持
ちがよくわかった。テューターの質が自分たちのとき
に比べて高くなった。学生の発言量もよかったし、
テューターがうまかった》 といった意見があった。
また、テューターは症例に関する専門家であるほう
がよいか、専門外でもよいかとの問いには、
《専門で
ある必要はないが、症例について少し勉強してきて
ほしい》との指摘もあった。
第4学年生の産婦人科症例の呈示の時間では、秘
書が症例を記載したプリントを配布しただけだった。
この症例の解説講義がその日の最後の時間にあるこ
とになっていた。15 名くらいの学生しかこのプリン
トを取りにきていなかったが、学生に聞くと、この
後、プリントは学年全員に行き渡り、講義の時には
見学を終えて両大学交流研究会メンバーで記念撮影
21
80∼ 90 %の学生は症例を解いてきているということ
だった。症例は、よく見ると国家試験の問題集にあ
る過去の問題だったが、モチベーションのつけ方が
大変うまいと思った。
その後、第3学年のアレルギー総論の聴講があり、
昼食となったが、午前の見学で興奮状態の本学学生
たちは、食事そっちのけで、近畿大生や松尾教授と
討論していた。
午後は、第一内科学教室の協力で、心エコーの検
査室、心臓カテーテル室でのレクチャーを受けた。
説明して下さった先生は、あたかも目上の見学者に
対するような丁寧な言葉づかいで説明を続けられた。
そこで気になって、
「いつも臨床実習の学生さんにも
同じ口調で話されるのですか?」と伺うと、「はい、
いつもこんな感じで」と。この先生からは教えてや
っているという態度は微塵も感じられなかった。学
生の人格を大切にして教育に従事しておられる姿勢
がじかに伝わってきて一同は感動した。
総合討論では、臨床実習の詳細、評価方法、主任
教授の教育スタッフへの指導などの論議が繰り広げ
られた。テューターへの報酬などに関する質疑では、
松尾教授から、テューターは教員のデューティーで
あり、現在は特別な評価をしていないが、テュータ
ーが特定の教員に任されていることもよくあり、テ
ューターに対する評価は現在取り組み中との回答で
あった。本学でも、頑張ってくれているテューター
を評価してあげてほしいとの意見が、日頃学生から
も聞かれるようになっており、教員の評価に真剣な
のはむしろ学生なのかもしれない。
③第2回医学生教育交流研究会報告会 〈第20回教育懇談会〉
近畿大学医学部授業見学の報告
日時:平成13年11月20日(火)午後5時∼6時30分/場所:金沢医科大学C41講義室
平成13 年11月 20日(火)午後5時から、前記の近
畿大学医学部で行われた第2回の教育交流研究会に
参加した学生による報告会が第20回教育懇談会とし
て行われた。
いつもの教育懇談会では話題の対象になる学生が、
今回は話題を提供をする形で進行した。第4学年は2
学期の試験直後の週末をつぶし、第5学年は4日後に
試験をひかえた時期だったが、見学してきたことを的
確に分析しながら発表してくれた。第4学年の生方聖
代さん、小川奈津希さん、第5学年の岩本裕敬君がそ
れぞれ、
「第2学年のテュートリアル」、
「講義と臨床
実習」、および「学生連絡会」を担当して報告した。
予行演習の時間もなかったが、スライドを使っての発
表はとても学生とは思えない立派なものだった。ま
た、井本敏弘先生(形成外科学)からは、
「教員から
みた近畿大学について」の意見が発表され、学生と教
員双方の立場か
らの素直な意見
や感想が聞かれ、
有意義であった。
第2学年でのテュートリアル 講義と臨床実習について報告 学生連絡会について報告す
について報告する生方聖代さ する小川奈津希さん(4学年) る岩本裕敬君(5学年)
ん(4学年)
報告会司会の堀有行講師(医学情報学)
22
本学教員の立場から近畿大の教育について報告する井本敏弘助
手(形成外科学)
熱心な討論が続いた
研究会参加者(敬称略)
研究会コーディネーター:近畿大学医学部松尾理(生理学
教授)
、金沢医科大学堀有行(医学情報学講師)
近畿大学医学部第4学年生:江藤智麿、大植祥弘、久保山
修、清水良栄、長瀬末佳、比良野彩子、丸谷怜、森田浩史、
村田佳織
近畿大学医学部:松尾理(生理学教授)
金沢医科大学第4学年生:石井孝政、生方聖代、小川奈津
希、河村秀仁、岸 智、小林直子、椎名伸行、清水利栄、
上西亜衣、泰間美紀、中島千雄、中田麻祐子、堀 真
金沢医科大学第5学年生:岩本裕敬、永井恒志
金沢医科大学:長野 亨(法医学講師)、近澤芳寛(腎臓内
科助手)
、井本敏弘(形成外科助手)
〈研究会コーディネーターのコメント〉
以上、現在までの両大学の医学生教育交流研究会
について報告しました。第20 回教育懇談会の終了時
に、
「どうしてこんなに先生方の出席が少ないのです
か」との学生からの指摘もあり、返答に窮しました。
創立30 年を迎えようとする本学の教育が転機を迎
えていると思います。コアカリキュラムや共用試験
の導入など、日本の医学教育自体に変化が要求され
ています。ただ、従来からのオーソドックスな講義形
態であろうが、能動的な新しい教育であるPBL 形態
の学習であろうが、基本は教員が教育に熱意がある
か、学生が修学に意欲があるかであり、そしてお互
いに尊重し合い、高めあうことが大切であろうと思
います。
「関西と北陸の違い」
、
「教員の違い」
、
「学生
の違い」など、いろいろな意見がありますが、重要
な変化が起こるのは入学してからのように思えてな
りません。新しく赴任される教員は、赴任前から本
学の評判を聞き、学生は本学の過去の国家試験の成
績からいつの間にかその大学にいる自分にランク付
けをしてしまい、両者ともが「うちの学生は・・・」
というバイアスをかけてしまっているのではないでし
ょうか。単科大学であるが故のデメリットが、他大
学と交流することで問題意識として把握でき、解決
への模索と努力を怠らなければ、デメリットはメリ
ットになるように思います。
最近、本学では、正規のPBL テュートリアル以外
にPBL スタイルの勉強会グループが徐々に増えてい
ます。彼らは、放課後テュートリアルをできる部屋
を探し、見つけられなくとも、「今日はやめよう」と
は言わず、通路などでもグループ学習を始めてしま
います(
“Street tutorial”と呼びます)
。勉強は、最終
的には個人の問題ですが、同じ目標を持つ学生が、
互いを高め合うプロセスを経て、良医を目指してく
れる気配を感じさせる光景ではないでしょうか。
最後に、本研究会を支援していただいた 竹越襄
学長、鈴木孝治教務部長をはじめ、教務部・教学課
スタッフ、メディアサポート課スタッフ、また、近畿
大学医学部の松尾 理教授、学務部をはじめとする近
畿大学医学部の皆様に心から感謝いたします。
本研究会の成果は、平成14 年度日本医学教育学会
において本学学生が発表しようと張り切っています。
(医学情報学・神経内科学 堀有行記)
23
平成14年度
特別推薦入学試験 (AO入試)、推薦入学試験、
編入学試験 終わる
◇特別推薦入学試験(AO入試)
◇編入学試験
本学の特別推薦入学試験(AO 入試)は、医師と
平成 1 4 年度編入学試験は、1 1 月 2 5 日(日)、本
なる者の倫理性、人間性が一層強く求められる時
学で行われた。
代にあって、従来の学力を中心とした入学試験で
本学の編入学試験制度は、医学以外の分野を修
は評価が困難であった学習意欲、使命感、人間性
学した者に医学を学ぶ道を開き、すでに履修して
に評価の重点をおいて選考することを主旨として
いる教養科目の重複履修を省いて効率的に医学の
設けられた入試である。建学の精神に沿った人間
専門教育を実施し、医学の研究及び医療の実践に
性豊かな活力のある人材を求めるために、平成 1 3
貢献する有為な人材を育成することを目的として、
年度入試から実施されている。
平成3年度入試から実施されている。
募集人員約5名に対して全国から 102 名の出願が
今年度は、募集人員若干名に対して過去最高の
あった。
92 名が出願し、欠席者7名を除く 85 名が「英語」・
第1次選考は書類選考であって、内申書とともに、 「小論文」・「面接」の各試験に取り組んだ。
本人、教師、家族のそれぞれによって書かれた推
合格者は5名で、11月 30 日(金)午後1時に本部
薦書について選考が行われ、10 月 30 日(火)に第1
棟正面玄関に公示された。
次選考合格者15名が発表された。
なお、平成 1 4 年度一般入試は、平成 1 4 年1月 1 4
第2次選考は、1 1 月 1 8 日(日)に本学にて上記
日(月: 祝日)に第1次試験が行われ、第1次試験
1 5 名について「個人面接」・「小論文」・「集団面
の合格者に対して、1月 29 日(火)又は 30 日(水)
接」が行われた。またこの 1 5 名については、試験
の希望の日に第2次試験がそれぞれ行われる予定で
委員が全国に出向いて推薦書を書いてくださった
ある。
(入試センター 森茂樹記)
教師とも面接して選考の参考とした。
第2次選考合格者は7名で、11 月 30日(金)午後
1時に本部棟正面玄関に公示された。
◇推薦入学試験
平成 1 4 年度推薦入学試験は、 1 1 月 1 8 日(日)、
本学で行われた。
本学の推薦入学試験制度は、目的意識を持ち個
性豊かで優秀な人材を見出し、ゆとりを持って学
習を進めてもらうことを目的として、昭和 6 1 年度
入試から実施されている。
今年度は、募集人員約 2 0 名に対して全国各地か
ら 69 名が出願し、欠席者なしの 69 名全員が「基礎
学力テスト」・「小論文」・「面接」の各試験に取
り組んだ。
合格者は 1 8 名で、 1 1 月 3 0 日(金)午後1時に本
部棟正面玄関に公示された。
24
第21回 教育懇談会
テーマ
卒前臨床教育について
講師:福井次矢教授(京都大学大学院臨床疫学)
日時:平成13年12月5日(水)
第21 回教育懇談会は、京都大学大学院臨床疫学の
福井次矢教授により、卒業前の医学部教育の現状に
おける問題および今後の課題・展望を含めた卒前臨
床教育についての講演をいただいた。福井教授は、
文部科学省により提唱された医学教育におけるコア・
カリキュラム、また全国共用試験など、現在全国的
に推し進められつつある医学教育の改革に関するプ
ロジェクトの中心メンバーである。そのお立場から
医学教育変革の流れを解説していただいた。
講演のなかで強調されたことは、(1)コア・カリキュ
ラムの考え方として、到達目標の明確化が重要なこ
と、(2) 臨床実習は臨床医育成を念頭にした“医療”
教育として行うべきこと、(3) Faculty developmentが
ますます重要となり、同時に学生教育への貢献度を
最も重要な教員評価基準とするべきこと、などが述
べられた。
平成13年度
講師の福井次矢教授
今後の臨床実習については、(1) 到達目標・学生の
行う医行為の水準・評価方法などを明確にすること、
(2) 診療参加型実習(CCS)として行うべきであり、
このためには全科履修ではなくコア科目を中心とし
た履修、学外病院での実習の充実などが今後課題と
なることなどを強調された。
講演全体の印象から、医学教育の充実のためには
教員の質と量の充実、臨床医養成のための新しいプ
ログラム作成が急務であり、卒前臨床実習と、今後
義務化される卒後の初期臨床研修が連動した有機的
な臨床研修(実習)プログラムの作成などが本学に
とって重要な課題と考えている。
(BSL・CCS実施委員会飯塚秀明記)
実験動物慰霊祭
平成 13 年 10 月 31 日(水)12 時 30 分から本部棟1
階学生ラウンジ横において、平成13 年度実験動物慰
霊祭が、竹越襄学長ほか教職員、学生ら120 名余り
が出席して行われた。読経が流れるなか、出席者が
医学の発展に寄与した実験動物の霊に深い哀悼の意
を捧げた。
最後に、総合医学研究所共同利用部門部長の松井
忍教授から「実験動物(本学における過去1年間の実
験動物使用数4,290 匹)の果たした役割が、人類の福
祉に大きく貢献していることを再認識し、今後も動
物福祉を念頭に置き、常に必要最小限を留意しつつ
日々研究に邁進し、医学の発展に努めていきたい」
との挨拶があり、実験動物に対する慰霊の意義を新
たにした。
(総医研共同利用部門荒井剛志記)
25
附属看護専門学校説明会
高校生、高校教諭、保護者を対象に
本校では、18 才人口の減少、進学選択肢多様化の
時代を考慮し、入学者の量と質の確保を目的に、高
校訪問、校外学校説明会への参加、夏期休暇中の数
回に及ぶ一日看護学生体験を実施するなど努力を重
ねてきている。その一環として今年で3回目となる高
校生・高校教諭・保護者を対象とした学校説明会を
10月27日(土)の午後、本校を会場に実施した。
県内全高等学校に呼びかけ24 校71名の参加があっ
た。その内訳は、生徒61名、教諭2名、保護者8名で
あった。当日の飛び入り参加もあった。
生徒は、本校の体験入学に約3割が、本校以外の行
事には約2割、本校以外の説明会には約4割が参加し
ていた。また約4割の生徒はいずれかの病院の看護体
験者でもあった。このように、参加者は非常に看護
への目的志向が明確であり、志望校選択について熱
心に吟味していることがわかった。
先ず、松原純一学校長の看護の本質についての話
からはじまり、酒井教務主任から本校の紹介、看護
(職)と授業内容の実際についての説明が行われ、そ
の後グループに分かれて病院や図書館、情報処理教
室など大学構内の見学ツアーが行われた。帰校後は
在学生を交え質疑応答の時間を持った。
グループ討議では同席した在学生に活発な質問が
向けられ、在学生も活気に満ちた応答をしていた。
アンケートでは、
「知識や技術を学ぶだけではなく、
課外活動等を通して人間として成長、成熟しなけれ
ば一人前の看護婦になれないと強く感じた」
「患者さ
んのための充実した設備などを見て、この学校、病
院は本当に患者さんの事を思っているなと感じた、
30 期生になれるようがんばりたい」等の印象が述べ
られていた。
また実施時期については今回のように10月が適当
との回答の他に、8月、9月に実施してほしいという
要望も多数あり、今後の課題として検討する必要が
あると思われた。
この学校説明会は昨年に引き続き参加者に非常に
好評であり成果があった。(入試センター森茂樹記)
附属看護専門学校
平成14年度
推薦入学試験・社会人特別推薦入学試験 終わる
◇社会人特別推薦入学試験
募集人員約20 名に対して石川県内の各高等学校か
高等学校卒業後3年以上を経過した社会人(就業) ら来年3月卒業見込みの高校3年生34名が出願した。
の経験がある方を対象とした社会人特別推薦入学試
試験当日は、欠席者なしの 3 4 名が「小論文」・
験を今年度から行うことになり、12月2日(日)午前 「面接」の各試験に取り組んだ。
9時から本校で実施した。募集人員は若干名(推薦入
審査の結果、合格者16 名が12月 10日(月)午後1
学の募集人員枠)に対して27名の出願があった。
時に看護専門学校正面玄関に公示された。
試験当日は、午前8時に受付を開始し、 2 4 名が
なお、平成14年度一般入試は、平成14 年1月 25日
「小論文」「面接」の各試験に取り組んだ。選考は志 (金)に行われる予定である。
(入試センター森茂樹記)
願理由書・高等学校調査書・小論文・面接を総合的
に判定して行われ合格者5名が 12 月 10 日(月)午後
1時看護専門学校正面玄関に公示された。
◇推薦入学試験
平成14 年度の金沢医科大学附属看護専門学校推薦
入学試験は、12 月2日(日)午前9時から同校で実施
された。
26
看護学生スポーツ交流会
今年で3回目を迎える石川県私立看護学校連絡協
議会主催の看護学生スポーツ交流会が、平成13 年10
月 26 日(金)、小松総合体育館で開催された。今年
は、こまつ看護学校が担当校で、交流会の計画から
当日の運営までを学生が主体となって進めた。
競技種目は風船割り、借り物競争、担架リレー、
移動玉入れ、バスケットボール、リレー、○×クイ
ズと、頭を使う競技から体力勝負までいろいろ考え
られていた。なかでも、担架リレーでは3人一組とな
り患者役を担架に乗せ、途中指示された部位に包帯
を巻き運ぶという競技であった。わがメンバーは、前
日講義終了後、教員の指導のもとに包帯の巻き方や
担架の運び方等実習室で遅くまで練習していた。そ
の成果もあってか当日はダントツ一位でゴールした。
また、最後の学校対抗リレーではクラスの駿足達が
見事に走りきった。なかでも、アンカーは陸上100 m
インターハイ出場経験もあり、胸のすくような走り
でゴールテープをきった。他種目もほとんど一位だ
ったが、玉入れでわずかに及ばす7点差で総合優勝を
逃してしまった。その時の学生達の落胆ははたから
みてもいたいたしい雰囲気であった。本校は昨年団
体優勝し、今年も“目指せ優勝”と俄然張り切って
いただけに、帰りのバスの中も静かで疲れのみを感
じている様であった。
本校の担任としてこの日を迎えるまでどうなるこ
とかと心配していた。選手の決定やポスター作り、
応援等はじめはなかなか動きが鈍くいらいらした毎
日だった。ところが、当日は全員が一致団結し一生
懸命競技や応援に取り組んでいた。応援団は、競技
種目が始まってから終るまで声をあげ手を叩き飛び
あがり、その熱気は体育館にはちきれんばかりに響
きわたった。他校の教員からは「医科大のパワーはす
ごいですね」と言われとてもうれしかった。この交流
会が、学生達が人として看護者として成長していく
のに何かの役に立てたらと思いつつ、
“若いエネルギ
ーってすごいなぁ”と改めて実感した。そして、これ
からの指導を考えわが身を奮い立たせた一日だった。
(附属看護専門学校 河野由美子記)
27
学生のページ
シリーズ
わ け
私が
わ け
医師になりたい理由・ 医師になった理由
新シリーズの発足によせて
昨年ノーベル賞を受賞された名古屋大学大学院の野依良治教授が若者に与えたことばに「5つのC」というのがあり
ました。Challenge挑戦、 Courage 勇気、Concentration 集中、Continuity継続、Confidence自信の頭文字です。この「5
つのC」は次のようにも解釈することができます。
「Challengeには courageを持って、そしてconcentration とcontinuity
を、それによってconfidenceというものが生まれる」と。
だれもが、
「良医になる」という希望に燃えて本学の門をくぐる。その時の気持、
「医者になりたいワケ」をここに
書き残してみてはどうでしょうか。そして、未知の学問の世界での現実はそう甘くはありません。厳しい現実に遭遇
して、何度となく希望を失いかけ、くじけそうになることもあるでしょう。そんな時には、是非この「5つのC」を思
い出してほしいと思います。また医師となって日夜人を助ける医療の現場に身を置く立場から、
「医者になったワケ」
を語ってください。学生、研修医、大学院生、そして助手や講師、助教授、できるなら教授の先生方にも是非参加し
ていただけないでしょうか。きっとこれから医者になりたいと希望に燃えている学生にも、厳しさにくじけそうになっ
ている若者にも大きな支えになるのではないかと思います。そんな企画で生まれたこのシリーズにご協力ください。こ
のシリーズの"continuity" を願っています。
川上重彦(学生部長)
、相野田紀子(医学教育学)
、金子聖司(学生・学報編集委員)
、奥田桃子(学生・学報編集委員)
私が 医師になりたい理由
よりつね
え
り
な
頼經 英倫那(第1学年)
「大きくなったら、お医者さんになりたい」
私が、小学校の卒業文集に書いた言葉です。あれから
長い年月が経ち、やっとその夢が具体化し始めた今、喜
びでいっぱいです。
私の父は開業医で、毎晩家にカルテを持ち帰って忙し
く仕事をする一方で、診療所が休みの日には家族のため
に時間を割いてくれました。特に冬の間は毎週のように
スキーに連れて行ってもらい、その時教えてもらった技
術は私にとって大切な財産の一つとなっています。その
ような父の姿にあこがれ、いつか父の手伝いをしたいと
思ったのが、医師を目指した最初のきっかけでした。
しかし、今考えるとたいへん情けないことなのですが、
医学部に進むことがとても難しく、また医師という職業
が“あこがれ”だけで続けられるような甘い仕事ではな
いと気付いたのは、浪人中のことでした。ずっと、小学
生の時からのあこがれだけで医学部を目指していた私に
とって、浪人時代は、そのギャップや現実の厳しさにた
いへん悩んだ時期でした。
「本当に医者になりたいのか」
、
それ以前に「自分には医師という職業に就く資格がある
のか」と、自問自答の毎日だったように思います。
そんな中、ニュースで小児救急に関する報道特集を見
ました。その番組には、小児救急を設けている病院が少
ないために急病の子供の受け入れ先がなく、病院をたら
い回しにされた上に子どもが亡くなってしまったという
母親が登場していました。
「我が子が目の前で苦しんでい
るのに、自分は何もしてやれなかった」というその女性
の話を聞いて、私は彼女と同じような悔しい思いはした
くない、自分の子供は自分で守りたいと思うようになり
ました。
現在は1年生なので、まだ専門分野を学んでいません。
しかし、今の私には専門分野を学ぶ以前に、人として学
ばなければならないことが、まだまだたくさんあると実
感しています。これから、大勢の人たちと出会い、様々
な経験を積むことで、少しずつ成長していきたいと思い
ます。
28
学生のページ
私が 医師になった理由
まさき
やすし
正木 康史(血液免疫内科学)
私が医者になった理由。それは、私の父親が開業医で、
その跡取りの長男で、他にやりたい事がなかったからで
す。以上!
えっ、それだけ? と言われると困りますが、本当に
それだけです。
「小さい頃に瀕死の重症疾患に罹り、その時に治療し
てもらったお医者さんに憧れた」とか「小学生の頃に野
口英世の伝記を読んでこの道を志そうと思った」等のエ
ピソードでもあれば良いのですが、生憎です。それどこ
ろか、幼少期から高校生時代まで、医者にだけはなりた
くなかった。夜中でもかかりつけの患者さん達に叩き起
こされる多忙な父を見て育ち、そう思っていました。他
になりたい職業が全く無かったわけではありません。プ
ロレスラー、落語家、ロックミュージシャン…、いずれ
も才能があるとは思えず断念。仕方ないから、親の顔を
たてて医学部を受験するか。
では、今はどうか。医者という職業に従事できて本当
に良かったと思っています。こんなに、やり甲斐と責任
のある仕事は他にはありません。臨床でも研究でも、そ
の気になれば、ジャンルに関わらず非常に生産的な仕事
ができます。また、なりたくなかった最大の理由であっ
た多忙は、実は最大の喜びである事に気付きました。仕
事が無いほど辛い事はない、仕事は忙しければ忙しいほ
どよい、今はそう思っています。
昔はあんなに嫌いだった医学という学問の面白さが
年々わかってきました。あらゆるジャンルで物凄いスピ
ードで進歩していきます。医師国家試験を受けた頃は、
広く深く知っている医者になりたいと漠然と思っていま
した。しかし、進歩のスピードはそんな甘っちょろい理
想論を吹き飛ばす勢いなのです。少なくとも専門の血液
学&免疫学だけでも最先端についていきたいと思ってい
ますが、それでも息切れするくらいです。
せっかく、学報「学生のページ」の新シリーズとして
本稿をご依頼いただいたのに、本来のテーマである何故
医者を志したのかというモチベーションが希薄で申し訳
ありません。でも、モチベーションが無かった事は事実
です。
後輩へのメッセージとして書いて欲しいとのご依頼で
すから、あえて正直に書きました。私と同じような境遇
の学生は当大学には結構いるのではないかと思うのです。
親が医者であまり乗り気もしないけど医学部に来てしま
ったというような人が。モチベーションは希薄でも、そ
こそこ勉強すればいずれは大抵医者になれます。しかし、
医者という社会人になった以上は責任感が生まれます。
ここで仕事が面白いと感じて、やり甲斐を覚えないと、
責任感だけでは重圧に押しつぶされる可能性があります。
幸い私は今までのところ、多くの先輩・同輩・後輩に
恵まれ、一見辛そうな仕事も面白くやり甲斐のある仕事
として、こなしてくる事ができました。いろんな生き方
を選べるのも医者の特権の一つですが、いずれは地元に
帰らねばならないとしても、先ず母校に残って仕事の面
白さやり甲斐を見出してからにして欲しいと願います。
HPを運営していますので、お暇な方は一度お立ち寄り
ください。
http://www.kanazawa-med.ac.jp/~yasum/
《体験記》
痴呆症グループホームでの
ボランティア体験記
おおた
じゅんこ
太田 順子(第5学年)
10月初旬に、私は、金沢市御影町にある痴呆型高齢者グ
ループホーム“こころ”
(岡部病院系列の施設)でボランテ
ィアとして半日を過ごしました。以前、老人ホームや老人
健康保健施設を見学したことがあったのですが、日本でも
まだ数が少ないグループホーム(小人数で共同生活を行っ
ている施設)はその存在しか知りませんでした。一度訪問
したいと思っていたので、とてもよい機会でした。
今回訪ねた“こころ”では8人の女性が基本的には各自の
部屋で生活し、日中は20人近くのデイサービス通所者と共
に食事やレクリエーションを楽しんで過ごしています。8人
の方々は軽度から中等度の痴呆症で、共同生活に支障がない
ようスタッフが常時お世話をする仕組みになっていました。
29
学生のページ
私が今回の訪問でお手伝いさせていただいたのは、昼食
や入浴の介助でした。その他にレクリエーション(この日
は市内の芸者さんがボランティアとして来られ、踊りを披
露していました)に参加したり、入居者の方々のお話しの
相手をさせていただきました。話しをしている時は、
「この
方々は本当に痴呆症?」と思う程、様々な事をはっきりと
話してくださいました。しかしこんなこともありました。突
然「家に帰らなければ。お父さんが家で待っているから」と
言い出した痴呆症のAさん。玄関と間違えてBさんの部屋
へ入ろうとし、それを阻止するBさんの背中を叩きました。
スタッフが「Bさんに謝りなさい。人を叩くのはいけないこ
とでしょう!」とAさんを叱りました。Aさんは一向に聞く
耳を持ちません。
「謝りなさいAさん。人を叩くのはいけな
いことでしょ!」Aさんはまだ「家に帰らないと。あなたた
ちは開けてくれない。いいからそこを通して」と言ってBさ
んの部屋を開けようとします。スタッフはその場から離れ
させようとしてAさんの手を掴みました。Aさんはその手を
振り切ろうと強い力で掴みます。そうした押し問答が20分
程続き、どうにかAさんの興奮はおさまりました。私はこ
の光景を見て、果たしてこれが痴呆症の方に対する対処と
して適切なのかよくわかりませんでしたが、このような異
常行動に対処するには、もっと痴呆症についての医学的知
識が必須であると感じました。
今回の訪問で私は、グループホームの生活を知り、痴呆症
の方々と接し、またそれを支えるスタッフの仕事内容や入
所者の方々の様子を実際に見聞きすることができました。
痴呆症の方を世話する家族の負担の軽減、本人に適度な刺
激を与える環境のある生活を考えると、グループホームと
いう形態は適切な施設ではないかと思いました。しかし現
在日本にはこうした施設は少数しかないのが現状です。今
回の訪問で、普段は“痴呆症の患者さん”としてみていた
視点から、
“痴呆という症状を持ったひとりの高齢者”とい
う視点で考えることが重要であるとも深く感じました。こ
の体験は私の人生にとって忘れられない1頁となりました。
そして今後はこの頁に、医療人としての専門的知識と実践
歴を書き込んでいくことが義務と考えています。
《体験記》
臨床実習体験記
たなべ
あや
田邊 文(第5学年)
「病院」
。これまでは患者として、あるいは授業の実習の
場として私にとって何気なく存在しているだけで、それほ
ど大きな比重を占めてはいなかった。しかし、この春から
は生の患者さんに接する日々となり、人間の原点である生
と死という極限の世界に身を投じ、緊張感が駆け巡る毎日
となった。
実習に入った当座の頃は、白衣を着て病院内を歩くこと
に興奮を覚えたものだった。時には、患者さんから「先生」
と声をかけられることもあり、戸惑いを感じつつも気分を
良くしたものだ。だがそれは、ほんのわずかな間に過ぎな
かった。実習を始めてまもなく、自分の知識の乏しさや今
までの勉強量では、患者さんを目の前にした時、動けない
ことを痛感した。一通りのことは授業で教えていただき、
教科書で理解してきたつもりではあった。が、それらはあ
くまでも、基礎の入り口に立ったにすぎなかったのである。
理解していると自負していたことは、頭の中の言葉のやり
とりにすぎなかったことを思い知らされた。
現場で活躍されている先生方は、頭の中の知識を臨床例
に適確に結びつけ、素早い判断を下し、治療という形に結
びつけている。それらを目の当たりにすることは、学生の
私にとって感動そのものであった。こんなにも知識が現実
に生かされる仕事は、他にないのではないか。これまでは
時々、授業の大変さにネをあげていた私だったが、現場に
出てみて、少しでも多くの知識を身につけておくことが大
切だと教えられた。
そして臨床の場で、それらの知識をいかに活かすかを先
生方に教えられ、医療という専門職になお一層興味を抱い
た。また、臨床の場での体験によって、講義で習った内容
の理解が深まったように感じた。応用できる知識が身につ
いてきたという実感がもてた。まだまだ分からないことば
かりではあるが、日々の勉学の大切さ、重要さを思わない
日はない毎日である。
ある日、患者さんのベッドサイドに行った時、
「自分は、
ずっと病院暮らしをしていて外の生活は今後も望めない」
ということを聞いた。その患者さんの寂しそうな目には、私
を信頼して話しをしてくれているというものを感じた。学
生ではあるが白衣を着た私を、学生の枠を越えて信頼して
くれているのだと思った。また、私が訪問している老人家
庭でも、同様のことを感じる。医学生ということだけでこ
のように信頼がよせられるのであるから、私たちはこの期
待を裏切るわけにはいかない。病をもった人々の気持ちを
充分理解し、奢ることなく、生涯勉学に励み、一人歩きの
できる医師になることが、患者さんたちからの信頼に応え
ることであると思った。
臨床実習の場で、先生方の医師としての姿を目の当たり
にし、自分の甘えた態度を否応なく反省させられた。もっ
と学びたいという内なる向上心が刺激され、背筋が伸びる
ような思いを抱く日々である。
30
学 術
第12回
日本小児外科QOL研究会
会長:小児外科学 伊川廣道 教授
日時:2001年10月6日(土)
会場:金沢市観光会館
第 12 回日本小児外科 QOL 研究会は平成 13年 10 月
6日(土)金沢医科大学小児外科学伊川廣道教授を会
長として金沢市観光会館にて開催された。
小児外科QOL 研究会は、12年前、当時まだ医療関
係者のなかでもなじみの少なかったQOL(quality of
life)の重要性に着目されて発足したものである。小
児外科疾患は手術が終了した時点が人生の出発点と
なるものも多く、合併症の管理や精神面でのケア、
家族の問題なども含め多方面からのサポートが必要
である。実際に研究会の出席者の半分以上は看護関
係者であるという事実が研究会の性格を表している。
発表された演題は全部で38題で、金沢という土地
の持つイメージの効果からか通常より応募演題数は
多く、約200 人が参加し、朝9時から17時まで熱心な
意見の交換が行われた。
留学生情報
東京大学名誉教授・賛育会病院長の鴨下重彦先生
には「少子化とこどものQOLを考える」と題した特
別講演をいただき、改めてこども達のQOL の重要性
を認識した。当科からは胆道閉鎖症患児の肝臓移植
の時期に関する演題と20 歳を過ぎた鎖肛症例の性機
能の問題についての2演題が発表され、小児病棟の看
護婦からは肝臓移植におけるドナーのQOL に焦点を
あてた発表が行われ、それぞれに対して活発な討論
が行われた。
研究会運営面では、一部のセッションで質問者が
多すぎて時間のやりくりに苦慮することもあった。こ
れは日常臨床の場での苦労と、それに対する施設ご
との工夫を何とかして自分の施設へ持ち帰ろうとす
る姿勢の表れであり、熱心な討議に座長が時間を忘
れてのめり込んでしまった結果でもあった。幸い、連
休の始まりに開催日を設定したおかげか、時間の遅
れを忘れ、最後まで多くの参加者が討論に加わり盛
会のうちに研究会を終了することができた。
(小児外科学小沼邦男記)
(2001年11月)
(教育学術交流センター)
1.留学生の往来
2001年11月21日 中国・中国医科大学第一臨床学院眼科学講師の孫茘氏が眼科学において研究を開始した。
2.留学生の紹介
ソン
孫
レイ
茘さん
1969年生、女性(中国)
中国・中国医科大学第一臨床学院眼科学講師/所属
は眼科学
研究テーマは「電磁波による角膜・水晶体障害の実
験的研究」
31
The 18th Congress of
Pan-Pacific Surgical Association
Japan Chapter
(第18回太平洋外科系学会日本支部会)
会長:耳鼻咽喉科学 友田幸一 教授
日時:2001年11月1日(木)∼3日(土)
会場:國立台灣大學醫學院講堂
2001年11月1日(木)∼3日(土)に第18回大平洋外
科系学会日本支部会(The 18th Congress of Pan-Pacific
Surgical Association Japan Chapter)が台北市(台湾)
で開催された。本学会は環太平洋諸国の外科系医師
の集まりでハワイに本部が置かれている。1984年に
日本支部会が発足し第1回が和田壽郎会長のもと東
京で開催された。年に1度近隣諸国において、若い医
師の英語での発表のトレーニングの場として、学科を
越えた知識と技術の習得、家族も含めた各国会員の親
睦を目的に開催される。
第 18 回本学会は、私どもが担当することになり、
國立台灣大學醫學院の協力を得て大学の講堂で学術
講演会を行った。特別講演1として東京慈恵医大高次
元医用画像工学研究所所長の鈴木直樹先生が
“Medical applications of virtual reality for computer
aided surgery”について、また特別講演2として台湾
大学耳鼻咽喉科教授の林凱南先生が“Otologic program for the residents in Taiwan University Hospital”に
ついて講演された。
Plenary Sessionは“Computer-aided Surgery”をテ
ーマに各国の最新のナビゲーション手術やバーチャ
ルリアリティの臨床応用が紹介された。東京女子医
大学長の高倉公朋先生も演者として自ら演台に立た
れ講演された。
一般講演はイメージガイドとナビゲーション、一
般外科、耳鼻科・脳神経外科、整形外科・婦人科、
心臓血管外科の5つのセッションに分かれ、またポス
ター演題は講堂前のロビーにパネルを設置し、コー
ヒーを片手にリラックスした雰囲気の中で討論が行
われた。Social Programとしては、Welcome Party、
Welcome Partyにて
会長と台湾大学学長との交流
ポスター会場にて(和田壽郎先生と)
Banquet がLai Lai Sheraton Hotelにおいて行われ、地
元の料理と演劇に参加者約 130 人全員が満喫し、和
やかな雰囲気に包まれていた。この学会を通じて台
湾医学界とのさらなる親睦が深まることを期待した
い。最後にご支援いただいた大学当局に深謝いたし
ます。
(耳鼻咽喉科学 友田幸一記)
32
第3回
耳鼻咽喉科ナビゲーション研究会
会長:耳鼻咽喉科学 友田幸一 教授
日時:2001年11月24日(土)
会場:石川厚生年金会館
第3回耳鼻咽喉科ナビ
ゲーション研究会が平
成 1 3 年 1 1 月 2 4 日(土)
石川厚生年金会館にお
いて開催された。コンピ
ュータを利用した手術
支援装置(ナビゲーシ
ョンシステム)は最近多
くの外科系の手術に応
用されてきている。リア
特別講演の加藤天美先生
ルタイムに手術部位の
確認が行えることによって安全で確実な手術が期待
されている。耳鼻咽喉科領域では私どもの施設が約
4年前にこのシステムを初めて導入したが、今日で
は10を超える施設で使用されてきている。
過去の2回の研究会を通して耳鼻咽喉科におけるナ
ビゲーション手術の適応がかなり確実になってきて
いる。さらに側頭骨ならびに頭蓋底領域はまだ未開
発の分野で、微細な解剖と周辺臓器との関係からナ
ビゲーション手術の良い適応領域であるが、システ
ム自体の精度や周辺機器に問題点があり、まだ十分
に応用されるに至っていない。今回はこの領域をテ
ーマに取り上げた。精度を上げるためにはシステム
だけでなく、プローブ、レジストレーションに改良を
加える必要のあることが明らかとなった。
特別講演は大阪大学脳神経外科助教授の加藤天美
先生に先進している脳外科の現状と、卒後教育にこ
のシステムをどう取り入れていくかについて講演を
お願いした。早い時期からこのシステムの有用性と
問題点を確実に教えることが大切であると強調され
た。
医療機器メーカー4社からは次世代の機器が紹介さ
れ、テクノロジーの進歩の早さを感じる。我々ユー
ザーは機器の特徴と性能をよく知った上で慎重に取
り扱う必要があることを認識した。
全体で約100 名の参加者が集まり、会場は朝から熱
のこもった活発な討議が行なわれ盛会であった。第4
回の研究会も金沢医大のお世話で平成14 年に金沢で
開催されることに決まった。
(耳鼻咽喉科学友田幸一記)
次世代ナビゲーションシステム
33
平成13年度
総合医学研究所フォーラム
平成 13 年度総医研フォーラムは、平成 13 年 12 月
14日(金)基礎研究棟3Fセミナー室で開催された。
このフォーラムは研究所の所員が過去1年間に達成
した主な研究成果を発表し、研究の新知見と問題点
を明らかにし、討議を交わして相互の理解を深め、
かつ発表をとおして互いに切磋し、研究の質の向上
を目指して昨年度より開始された。今年度は、得ら
れた成果を学内外にも広く発信することを目的に、
一般の自由参加も認められた。今回は技術員、保健
婦の研究発表が2題加わり、合計 24 演題が午前10時
から午後6時まで、活発な討論を加えて予定時間を
4 0 分超過して終了した。冒頭の3題、今西愿所長、
勝田省吾、高橋敬治の両副所長のこの一年間の研究
成果の発表でフォーラムの開始となった。部門毎に
は基礎医科学研究部門 6 題、人類遺伝学研究部門 7
題、難治疾患研究部門 2 題、がん研究部門 3 題、臓
器置換研究部門1題および共同利用部門3題の発表
がなされた。出席者は約40名(うち約10 名は研究所
外)で活発な質疑応答がなされ、盛会裡に終了した。
このフォーラム開催の目的と意義は今後の研究の活
性化となって、次年度以降の成果に反映されるもの
と期待される。
(総合医学研究所高橋敬治記)
フォーラムはリラックスした雰囲気で進められた
フォーラム演題
〈所長〉
アンジオテンシンIIによる催不整脈作用の機序 今西 愿
〈副所長〉
共同研究の紹介
日本におけるCOPDの疫学調査研究
勝田省吾
高橋敬治
〈基礎医科学研究部門〉
偽3倍体V79細胞株の樹立とその基礎的性質 藤川孝三郎
Cytochrome oxidase活性と心筋の機能
石川義麿
高発がん性遺伝病、ブルーム症候群患者由来細胞のハイドロ
キシウレアに対する高感受性について
栗原孝行
ハムスターの長期不完全胆管閉塞により誘発される肝細胞腫瘍
宮越 稔
Amiodaroneの心筋炎に対する治療効果
宗 志平
植物由来物質のヒト培養細胞への影響
村上 学
〈難治疾患研究部門〉
ヒト心筋症のSCIDマウスへの移入実験
松井 忍
培養ラット精細胞減数分裂期におけるアンドロゲンレセプタ
ー蛋白質の発現とそれに及ぼす環境ホルモンの効果
長尾嘉信
〈臓器置換研究部門〉
本年の肝移植症例の検討
伊川廣道
〈がん研究部門〉
二本鎖DNA切断の修復機構
乳癌のNavigation Surgery
伊達孝保
喜多一郎 〈人類遺伝学研究部門〉
ピリミジン代謝異常症の化学診断
久原とみ子
4-ヒドロキシ酪酸尿症の化学診断
新家敏弘
母体血による胎児DNA診断
高林晴夫
簡易ウレアーゼ法を用いたプロピオン酸血症の出生前診断
井上義人
過去1年間の染色体分析において経験した特筆すべき3症例
について
尾崎 守
M-FISH法によるマーカー染色体の同定
北美紀子
保因者診断とその遺伝相談 - 3事例からの一考察高瀬悦子
〈熱帯医学研究部門〉
フラビウイルス持続感染細胞のアポトーシス 竹上 勉
〈共同利用部門〉
細胞核内FGF-2は何ができるのか?
マウス生殖細胞のアポトーシス
吉竹佳乃
井上雅雄
34
病 院
インフォームド・コンセントに関するシンポジウム
テーマ
診療情報の共有化
平成13年12月6日(木)/C41講義室
平成 13 年12 月6日(木)午後5時 30 分から、金沢
医科大学病院インフォームド・コンセント委員会主
催による「診療情報の共有化」を基本テーマとした
シンポジウムが、金沢医科大学病院本館4階C41 講義
室において約150名の職員参加のもと開催された。
このシンポジウムは、平成10 年度から医療を通じ
て本学病院と地域の住民との交流を深めるために院
外で実施されてきたが、今回は、医師、看護婦を含
む医療従事者の参加のもとに、
「院内でのチーム医療
における情報の共有化を考える」ことを主題として
開催された。
〔プログラム〕
挨拶:高橋敬治(呼吸器内科教授/インフォームド・コンセント委員
会委員長)
シンポジウム:診療情報の共有化 −患者・家族の立場に立った
インフォームド・コンセントを考える−
司会:松田芳郎(健康管理センター教授/インフォームド・コンセ
ント委員会副委員長)
高山静子(志雄病院総婦長/インフォームド・コンセント委
員会院外委員)
シンポジスト:
堀 有行(医学情報学講師)
山形壽生(循環器内科学講師)
及川 卓(内科学Ⅰ〈呼吸器内科学〉大学院生)
前野聡子(10階A主任看護婦)
掛下一雄(中央放射線部主任)
鈴木賢一(インフォームド・コンセント委員会院外委員)
追加発表:小堀 勝(薬剤部課長)
インフォームド・コンセ
ント委員会委員長の高橋
敬治呼吸器内科学教授の
挨拶に引き続き、各シンポ
ジストからの発表が行われ
た。
医師、看護婦からは、そ
れぞれの部門でのインフォ
ームド・コンセントの事例
について紹介された。この
高橋敬治委員長
中で、チーム医療としての
情報の共有化については、患者・家族の立場に立っ
て十分なインフォームド・コンセントを行った後、医
療従事者は、患者がどれだけ理解されたかを確認す
ることが重要であること。また、
「どのようなインフ
ォームド・コンセントが行われ、患者(家族)にどの
ような効果をもたらしたか」などの情報を共有すべ
きであり、その手段として、電子カルテの機能を有
効に利用することも重要な要素であると発表された。
中央放射線部からは、職種により患者への診療情
報の伝達内容も異なっているので、職種に合ったイ
ンフォームド・コンセントの標準化の取り決めも必
要ではないかとの提案も出された。また、インフォ
ームド・コンセントを確実に実践するために、各種
関連委員会での意見交換も必要ではないかと発表さ
司会の松田芳郎教授と高山静子志雄病院総婦長
35
堀有行講師と山形壽生講師
前野聡子主任、掛下一雄主任、鈴木賢一さん
れた。
薬剤部からは、現在行っている様々な業務に関す
る情報の共有化について具体的に発表された。また
終末期患者に対する告知の是非などについて論議が
第7回金沢医科大学病院
地域医療懇談会
平成13年10月27日(土)/金沢ニューグランドホテル
特別講演の池田龍介助教授
第7回地域医療懇談会が、平成13 年10 月27日(土)
金沢ニューグランドホテルにおいて開催された。
この懇談会は、本学病院が地域の開業医の先生方
との連携を深め、それぞれの機能に応じて患者さん
の紹介・逆紹介の推進を図り、地域に密着した特定
機能病院として、その使命と責任を果たしつつ、よ
り一層地域医療の発展・充実に貢献することを目的
として毎年開催されている。その歴史は、1980年の
及川卓大学院生
小堀勝課長
あった。
参加者は皆熱心に聞き入り、会場からも活発な意
見が出され予定時間を超過する盛況なシンポジウム
となった。
(管理課 米田正明記)
第1回地域医療推進懇話会開催にさかのぼるが、それ
が1995年第16 回関連病院会議と形態が変わったこと
から、同年にこの懇談会が、第1回地域医療懇談会と
して新しく生まれ変わり、現在に至っている。
懇談会には、北陸三県の医院の院長、本学出身の
開業医の先生など 37 医療機関より 38 名が出席され、
本学からは内田健三病院長をはじめ、副院長と臨床
各科の教授、助教授・医局長が出席し、医療連携の
推進などについて意見交換を行った。
内田病院長の挨拶に引き続き、特別講演として泌
尿器科学の池田龍介助教授が「前立腺癌診断におけ
るPSA(前立腺特異抗原)の意義」
、消化器内科学の
上嶋康洋講師が「原発性肝癌に対するラジオ波焼灼
療法」と題して講演された。
続いて、内田病院長から当院の現状報告と予めお
寄せいただいた当院に対するご意見、ご要望事項に
ついての回答が行われた。
また、堤幹宏地域医療連携室長から、ITを利用し
た当院と地域医療機関との連携システムについての
報告が行われた。
懇談会終了後の懇親会では、出席された先生方と
本学スタッフらが和やかな雰囲気の中で意見交換を
行い、盛会裡に終了した。
(地域医療連携事務課 風端英樹記)
36
平成13年度
病院災害 訓練
内灘町消防署生田秀治主査の講演
平成 13 年 11 月 13 日(火)、14日(水)の2日間に
わたり、内灘町消防署の協力を得て大学と病院の合
同で災害訓練が実施された。
消防法第8条では、病院、デパート等の多数の人が
出入りする施設は特に厳しい防火管理体制が義務づ
けられている。中でも病院、老人福祉施設等は身体
的弱者を収容する施設として、災害が発生した場合
に人命危険度が高いとの理由から特定防火対象物と
して指定を受けており、本学病院では例年春(新入
職員のオリエンテーションの一環としての防災講習
会)と秋に訓練を実施している。
病院内では常に約900 名近くの患者さんが入院して
いるが、そのうち歩行可能な患者さんは約300 名と3
割程度であるということ、また、日中の外来では約
1,300 名の患者さんをはじめ、お見舞いや付き添いの
方など、実に多くの方が院内にいるということを考
えると、改めて訓練の重要性が認識される。また、
県、消防署、病院そして地域住民と合同による災害
対策マニュアルの作成が急がれるが、災害時の人命
優先は基より、地震・火災による直接的災害の抑制、
及び二次災害の防止を訓練の中で確実に行えるよう
にする必要がある。
本年の災害訓練では、昨年の反省会で提起された
現場の緊迫感に欠けるという声を反映し、病棟部門
の防火扉を全て稼働させ、また、火災発生時の行方
不明者の把握に重点を置きながら訓練を実施した。
2日間の訓練内容は以下のとおり。
11月13日(火)
①防災講習会:13:30∼/94名参加
最初に、内灘町消防署生田秀治警防主査から、
「災
平成13年11月13日(火)、14日(水)
害時の心構え」をテーマに、地震発生の際に自分の
身を守る行動、火災発生における初期消火について、
日頃からの心構え等についての講演が行われた。次
に、設備課より、本院の防災設備と、機器の取り扱
い方法について説明が行われた。最後に、看護部か
ら、各病棟に配置されている防災用品の使用方法の
説明、避難誘導の実技指導などが行われた。
②煙中訓練、消火器訓練:15:20∼/53名参加
舟型桶に油を用意し着火して、消火器を使い一人
一人が消火体験をした。また、煙中体験では透明ビ
ニール袋に空気をいれそのまま頭から被り、煙の中
を手探りで避難するという本番さながらの訓練を実
施した。
11月14日(水)
①時間内災害訓練(第1次訓練):14:00∼/539名参加
地震後の火災発生という想定で、4階上の病棟の防
火扉を閉め、各階ごとに出火点を想定し、身体防御、
通報、初期消火、模擬患者の避難誘導、1階に設置さ
れた災害対策本部への避難状況の報告を全館一斉に
実施した。
37
②時間内災害訓練(第2次訓練):15:00∼/56名参加
本館 10階面会コーナーでの火災発生を想定し、病
院、大学の自衛消防隊による消火活動、模擬患者の
避難誘導、内灘町消防隊による放水と、各部署が連
携しての災害訓練を実施した。
③救助袋による降下訓練: 15:40∼/49名参加
本館4階会議室ベランダに設置してある救助袋の操
作方法及び実際に降下訓練を実施した。
④時間外災害訓練:19:00∼/38名参加
本館8階面会コーナーでの火災発生を想定し、夜間
等人員の手薄な時間帯における災害発生時の通報、
非常呼集、避難誘導、消火訓練を実施した。
(管理課 岡本真一記)
38
ショップで、インフォームド・コンセントがいかに大
切なものかを、今日1日短時間ではありますが、十分
に理解していただき、今後の臨床研修に是非実践し
テーマ:
ていただき、良い医師を目指されるよう、心から願
平成13年10月13日(土)/いこいの村能登半島
っています」との挨拶があった。
引き続き栂博久臨床研修副委員長からワークショ
ップの進め方についてオリエンテーションが行なわれ
た後、グループ討議が開始された。
平成13 年10月13日(土)いこいの村能登半島(志
グループ討議は1グループ4名∼5名で 10 グループ
賀町)で、臨床研修委員会が主催する本年度の第2回
研修医ワークショップが開催された。研修医 32 名、 に分かれ、各グループは割り当てられたインフォー
ムド・コンセントの課題について討議を行い、問題
大学院生 16 名の合計 48 名が参加し、インフォーム
点を整理し、問題解決の方策を考え、発表するとい
ド・コンセントを課題として、グループ討議と全体
う形で進められ、最後に全体討議を通じて問題が掘
発表形式で行われた。
り下げられ理解が深められた。各グループ発表後、
最初に、内田健三病院長から「インフォームド・
松田芳郎インフォームド・コンセント副委員長から
コンセントは、医療従事者がどのようにしたら互い
各グループの発表内容についてコメントがなされ、
の信頼のもとに患者さんが満足のいく、より良い医
療を提供できるかを実践するためのものです。その 「インフォームド・コンセントは、全てのケースに対
して具体的な行動指針があるものではないので、研
ためには患者さんが何を必要としているかその要求
修医のみなさんは、インフォームド・コンセントの基
を正しく把握し、患者さんやその家族との信頼関係
本を理解して、自分自身のインフォームド・コンセ
をつくることが大切です。患者さんとの良い信頼関
ントを確立していってほしい」と述べられた。また、
係を短時間でつくるためには、患者さんの気持ちを
高橋弘昭臨床研修委員長からは「今回のワークショ
理解し、謙虚さと誠意をもって接することが必要で
ップの中で得られたことを今後の研修に反映される
す。コミュニケーションの始まりは挨拶であり、お辞
ことを期待している」と述べられ、この研修医ワー
儀、言葉遣い、明るい態度も必要です。品位ある穏
クショップを終了した。
(管理課中谷一也記)
やかな言葉遣いと態度は、誠意ある心遣いや気配り
から自然に出てくるものと思います。今回のワーク
平成13年度 第2回研修医ワークショップ
インフォームド・コンセント
39
第16回 病院ワークショップ
テーマ:
患者さんへの接遇応対
平成13年10月26日(金)、27日(土)
いこいの村能登半島
平成 13年 10月 26日(金)
、27日(土)の両日、志
賀町の「いこいの村能登半島」において、病院接遇教
育委員会が主催する金沢医科大学病院ワークショッ
プが開催された。今回で16 回目を迎える「患者さん
の接遇応対」をテーマとするワークショップは、医
師7名、看護婦 14 名、コメディカル職員8名、事務職
員5名及びテナント従業員1名の計 3 5 名が参加し、
「待ち時間」を全グループ共通の課題として、グルー
プ討議と全体発表という形式で行われた。
開催にあたり、南部静洋接遇教育委員長から「ワ
ークショップは与えられた課題に対して現実的で実
行可能な解決策を見出していく研修方法である。近
年、病院を取り巻く環境は非常に厳しいものがあり
病院としては非常に多くの問題をかかえており、そ
れに適切に対応するため病院に働く全ての職種の職
員が共通の認識のうえで組織として対応していくと
いうことが重要であり、職種をこえて相互の親睦を
図り、コミュニケーションをとりながら、実行可能
な解決策をいっしょに考えていただきたい」との挨
拶がなされた。
引き続き中野万里子接遇教育委員からワークショ
ップの進め方についてオリエンテーションがなされ、
第1日目の午後1時からグループ討議が開始された。
グループ討議は1グループ5名で7つのグループに
分かれ、各グループは与えられた課題について討議
を行い、各人の役割に基づいて発表原稿や報告書の
作成などが午後5時まで続いた。夕食を兼ねた懇親会
では、村上美紀接遇教育委員の司会で参加者全員の
自己紹介を織り交ぜながら、討議を通じて知り合っ
たメンバー同志で、職場紹介や接遇に対する考え方
などについて、お互いに打ち解けたムードで夜遅く
まで話合う光景が見られた。
2日目は、朝8時 45 分から全体発表会で、与えられ
た課題についてのグループ発表が行われ、接遇改善
について活発な質疑と応答がなされた。
グループ発表終了後、高橋弘昭副院長から、各グ
ループの発表内容について講評がなされた。その中
で「各グループとも、患者さんの“待ち時間”に対
する分析・対策について、よく討議されたと思う。
待ち時間の原因にはいろいろな要素があるが、待ち
時間をいかに患者さんに苦痛と感じさせないか、そ
の第一は“待ち時間”に対する患者さんへの十分な
説明と教育が重要であるとの認識がなされた。また、
接遇応対はいかに重要であるかはいうまでもないが、
接遇は意欲をもって取り組み継続することが大切で
あり、自分ならどうするかを常に考えて実践してほ
しい。また、今回のワークショップで職種を越えた
中で得られたことを今後の業務に反映されることを
期待している」と述べられ、ワークショップの全日
程を有意義なうちに終了した。 (管理課中新茂記)
病院ワークショップ。於:いこいの村能登半島
40
第5回
在宅医療研究会
平成13年11月22日(木)/C41講議室
平成 13 年11 月 22 日(木)
、午後5時 30 分から金沢
医科大学病院C41 講議室にて、第5回在宅医療研究会
が開催された。
今回は、日本の嚥下障害の看護の草分けである田中
靖代先生に「看護・介護のための摂食・嚥下リハビリ
テーション」というテーマで講演していただいた。
田中先生は、豊橋市民病院で25 年間嚥下障害のリ
ハビリテーション看護に取り組んでこられ、講演で
は、ビデオとスライドを使用して、発症直後から開
始される嚥下障害へのアプローチの方法を、具体的
に、熱意を込めてお話しされた。当日の参加者は181
名(看護婦96 名他)で、アンケート等では、
「日々の
素晴らしいケアに感服し、当院でも少しでも近づけ
るように努力したい」
、
「すべてのリハビリが摂食・嚥
下障害の改善に繋がることがわかった」
、「嚥下訓練
をふまえた口腔ケアを行っていきたい」等の意見が
出された。
研究会の準備は、当院の嚥下研究会のメンバーが
研究会を担当したスタッフ
講師の田中靖代先生
担当した。嚥下研究会は、医師、看護婦、管理栄養
士、調理師、歯科衛生士、言語聴覚士の有志で構成
され、平成12 年8月の発足以来、毎月、学習会・症
例検討等を続けており、この会の論議を通じて、平
成 13 年4月に嚥下食が誕生し、12 月からは看護婦に
よる摂食機能療法のシステムが稼働した。
また、講演の前には、当院在宅医療相談室が、現
場での嚥下障害の患者・家族・医療スタッフの思い
を、寸劇でリアルに表現され、印象的だった。
この研究会を契機に、当院の摂食・嚥下障害への
アプローチがさらに発展していくことが期待される。
(リハビリテーション科河崎寛孝記)
41
管理・運営
創立30周年記念事業募金 本格的にはじまる
本学の創立30 周年記念事業が、記念式典とともに
各種記念行事、現在建設中の病院新棟の完成披露、
そして教育施設の整備充実を柱として、平成15 年秋
に実施すべく準備が進められている。そしてこの事
業を支援する心強い支えとなる学内外からの募金活
動が、準備を整えて本格的にはじまった。
小田島理事長の年頭の挨拶にあるように、この貴
重な寄付金は新棟ではじまる質の高い医療活動や次
世代育成のための教育活動を支援するハ−ドの整備
にあてられる予定である。この募金は、国から特定
公益増進法人として認められている大学という機関
に対する公共性の高い寄付事業であり、単なる企業
の設備投資といったものではではないという理解に
もとづいて行われる。
平成13年度
課長代理・主任級研修会
講師:中原 勉氏(㈱ビジネスコンサルタント)
講師の中原勉氏
平成 1 3 年度課長代理・主任級研修会(教員を除
く)が平成13 年11 月27 日(火)から11 月30日(金)
までの4日間、基礎棟3Fセミナー室で開催された。
今回の研修対象者は168名と多かったため4グルー
プに分けて行い、各グループとも期間内の1日間、9:
00から17: 00までの研修メニューに取り組んだ。
今回の研修の目的は、現在、本学職員の中核的位
置を占め、日常業務の遂行につき重要な役割を果た
したがって、募金は先ず学内からの積極的な理解
と協力ではじまり、協力の輪を広く学外にも広げて
いきたいとの願いから、すでに、学内の教職員から
の醵金が始まった。そして同時に、北辰同窓会々員、
後援会橘会々員、北斗会々員、しらぎぬ会々員など
関係者各位、そして後援協力会の皆様から協力が寄
せられはじめている。
平成14年1月 10 日現在の状況は、受付件数190 件、
合計金額291,110,000円となっている。
なお、分割納入、税制への対応などについては、
教育研究事業推進室(TEL 076-286-2211 内線2721)
に問い合わせていただきたい。
(教育研究事業推進室)
している各対象者に対し、人事管理と目標管理の2点
を中心とした研修を行うことにより、将来の幹部職
員としての素養を身につけることである。そして平
成 12 年度から本学の人事評価の重要項目として取り
入れている目標管理の考え方をより深く理解しても
らうということであり、その内容は平成12 年度から
実施している管理職研修会(教員を除く)のダイジ
ェスト版で、1日で研修するにはかなり中身の濃いス
ケジュールであった。
研修は、各グループ5∼7名となり、講義と実習を
織り交ぜた内容ですすめられた。中原講師から渡さ
れる資料を見ながら講義を聴き、引き続きその主旨
を生かした課題に基づくグループワークによる討
議・討論が行われるといった内容であり、聞き慣れ
ない熟語や内容に戸惑いながらも、真剣に討議して
いる姿が印象的であった。
最終的に、
「目標設定実施上の留意点」という内容
で各グループから発表がなされ、その内容からみて
今回の研修の目的は充分に達せられたという印象で
あった。
受講者各位の今後の業務遂行に、今回の研修で得
たスキルを発揮していってくれることが期待される。
(人事厚生課 坂尾光一記)
42
表 彰
竹越 襄 学長 厚生労働大臣表彰を受賞
平成14 年1月7日(月)学長室に於いて、石川労働局長から厚生労働大
臣表彰状が伝達された。
この表彰は、永年にわたり厚生労働行政の推進に貢献のあった者を
対象として、厚生労働大臣が表彰するもので、竹越学長は、昭和54 年
5月より石川労働局地方労災医員として特に労災補償行政の運営に従
事し、この度その功績が認められたもの。
平成8年の労働省労働基準局長表彰に続いての受賞となる。
(庶務課出雲淳子記)
表 彰
平成13年度石川県私立学校教職員教育功労者
知事表彰
平成13年12月6日 知事と記念撮影
平成13年度石川県私立学校教職員教育功労者の知
事表彰が12月6日(木)午前 11時に石川県庁知事室
において行われた。
平成13 年度の表彰対象者は72 名であり、そのうち
本学職員は24名であった。
表彰式では、県内私立学校の発展に長年貢献してき
た大学・短大関係者及びその他の計 72名に対して谷
本正憲石川県知事より表彰状と記念品が贈呈された。
本学の受賞者は以下のとおり。
(敬称略)
岡田正人 堤 幹宏 片岡 敏 東 伸明
本多隆文 平口真理 吉田純子 松本順治
本田俊幸 寺井明夫 森 茂樹 坂尾光一
南 勝一 谷口秀一 沢田 裕 野沢幸雄
吉本誠一 加富喜芳 中川啓子 西真知子
小原佳代 中本 慧 米田和可子 松能好子
(人事厚生課坂尾光一記)
43
表 彰
平成13年度
永年勤続表彰
受賞者代表の清水昌寿助教授
平成13 年度本学職員永年勤続(20 年)表彰式が11
月26 日(月)午後3時に本部棟4階講堂において行わ
れた。
平成13 年度の表彰対象者は48 名であり、表彰式で
は、小田島粛夫理事長より表彰状と記念品が受賞者
を代表して清水昌寿助教授(血清学)に贈呈された。
引き続き、理事長よりお祝いの言葉があり、受賞
者を代表して清水助教授から謝辞が述べられた。
(人事厚生課 坂尾光一記)
受賞者は以下のとおり。
(敬称略)
清水昌寿 金光政右 川原 弘 柿崎謙一
原 亮 釣谷伊希子 柳瀬卓也 北本福美
山下 学 山口健三 田中英雄 木村律子
宮崎滋夫 萬元千春 中村久子 永田勝宏
藤田晴美 内山充司 松田茂子 菅野久美子
松田二美 杉澤幸恵 中島素子 須貝みち子
茅野秀子 谷内春美 宮崎雅子 河原文江
辻村和子 川島征江 伊藤幸江 浅田美江子
國府克己 素谷紀男 堂前正秀 廣瀬信雄
北村純子 原島完司 山野清一 松柳ひとみ
柴山峰美 宮下多佳子 辺本智恵美 南 洋子
岩本美香代 定舎良一 寺田好江 油木幸子
表 彰
平成13年度医学教育等関係業務功労者
文部科学大臣表彰
看護部
影近 紀美子 さんに
平成13年度医学教育等功労者に対する文部科学大臣表彰が、平成13年11
月21日(水)東京都港区のホテルフロラシオン青山において行われた。表
彰式では、功労者一人ひとりの氏名が紹介された後、遠山文部科学大臣か
ら永年の労をねぎらうことばが述べられた。
この表彰は、医学教育等関係業務の補助的業務に長年にわたり精勤する
とともに顕著な功労のあった人に対して与えられるもので、本年は全国で
85名が表彰された。本学では影近紀美子さんで10人目の受賞となる。
影近さんは昭和54 年10月に病院本館12階の看護補助員として入職し、現
在にいたるまで同部署に勤務している。その豊富な経験を生かした業務の正
確さや後進に対する適確な指導などの功労により、臨床医学教育や診療活
動を支えてきた功績が認められた。
(管理課 中新茂記)
44
表 彰
北陸中日写真展で最高賞を受賞
フォトセンター主任
杉田順一さん
2001 年度北陸中日写真展の最高賞に当フォ
トセンターの杉田順一主任が撮影した「こき
りこの舞」が選出された。この写真コンテス
トは北陸中日新聞、石川テレビ等が主催して
昨年度から石川県のアマチュア写真愛好家を
対象に年に1回一般公募されるもので、県内
で行われる写真コンテストの中でも最も規模
の大きなものの一つである。
杉田さんの作品は、今年の 10月に五箇山の祭りの一環として行
われた下梨地区にある神社の舞台でこきりこを踊る姿を撮影したも
のである。開催時間の1時間以上前から撮影場所を確保し、動感を
出すためにシャッタースピードとピントに細心の注意をはらいなが
ら夢中でシャッターを切ったことなどの苦労話を聞いた。
作品を審査した著名な写真家は、この杉田さんの作品について、
「フレーミングの的確さに加えて流動感などを見事に写しとってい
る」と講評された。
日頃の仕事で撮影技術を磨き、今回最高賞を受賞したことは当フ
ォトセンターとしても鼻が高い。北陸中日写真展は平成13年12 月
12日から17日まで金沢名鉄丸越百貨店2階スカイギャラリーで開か
れた。
(フォトセンター中谷渉記)
病院増改築/新棟の特徴紹介シリーズ
エネルギーサプライ ③
省エネルギー・省力化と災害対応
廃熱を熱源として利用するコジェネレーション・システ
ムを導入した新しいエネルギーセンターを構築中であるが、
前号までコジェネ・システム導入の経緯、概要について紹
介した。今回はその効果について概略を紹介する。
省エネルギー・省力化
○廃熱有効利用のコジェネ・システム
○低公害の燃料を選択
○一括統合管理の電力監視、中央でのCRT操作
前号で設備課から「地球にやさしい本学の省資源対策」
について紹介されているが、病院新棟の竣工に伴い学内で
のエネルギー消費量が増大するのは必至であり、職員各自
受賞作品:こきりこの舞
〈その8〉
の省エネに関する自覚と取り組みが肝要である。例えば暖
房温度20 ℃の遵守、昼食時の消灯など身近には省エネにつ
ながるものはたくさんある。
導入されるコジェネ・システムは、ガスタービンの運転
で発生する廃熱を利用し蒸気・温水などの熱エネルギーの
有効利用を図るとともに、地球環境対策として従来使用の
C重油(窒素酸化物 NOx の流出が多い)からA重油(NOx
の流出が少ない)に切り替え地球にやさしい省資源対策を
講じている。日々増大する大学及び病院の需要に追従可能
な拡張性をもった使い易いエネルギーセンター、高度医療
を支える信頼度の高い24時間稼動の長寿命のエネルギーセ
ンターを特徴としている。
電力監視は、構内の受変電設備、発電機等について一括
統合管理を行い、施設全体の効率的運用を実現するととも
に、高速かつ信頼性の高いシステムとなることから、中央
での監視、操作はマルチウィンドウ表示、シンボリックな
図形表示を採用し簡便なCRT 操作となり省力化に寄与する
こととなる。
45
災害対応
○災害時でも電力供給が可能
特定機能病院としての、また地域の基幹病院である本学
の使命は大きなものがある。仮に、災害等によって北陸電
力の送電系統が故障で送電が停止することがあっても、ガ
スタービンを稼動させることで電力供給が可能であり診療
活動は停止することなく可能となる。
1995 年(平成7年)1月 17 日の阪神淡路大震災の教訓も
あり、新棟には中央ホールの付近などにコンセントや医療
ガス設備を設置することで多人数の被害者を受け入れ、医
療活動が行われるよう配慮されている。(施設整備推進室)
病院増改築工事の進捗状況
<病院新棟の特徴紹介シリーズ・バックナンバー>
①学報№102「臓器別診療態勢」(2000-May)
②学報№103「臨床教育スペース」
(2000-August)
③学報№104「バリアフリー、アメニティ、プライバシー」
(2000-November)
④学報№105「腎臓病センター」
(2001-January)
⑤学報№106「免震構造」
(2001-May)
⑥学報№ 107「エネルギ−サプライ①コジェネ・システム導入
の経緯」
(2001-August)
⑦学報№108「エネルギーサプライ②コジェネ・システム概要」
(2001-November)
(第4回報告 平成13年11月30日現在)
【病院新棟】
〔全工事出来高:2001(H13年)11月30日現在 10.0%〕
平成 13 年 8月 31 日現在 基礎杭打設、第二次地盤掘削・
搬出、アースアンカー工事
図書館横設備共同溝工事
9月30日現在 基礎杭・柱頭処理、基礎杭打設
完了(9月28日)
10月∼11月末現在 タワークレーン設置
(11月初旬)、
第三次地盤掘削・搬出
マットスラブ工事(床と基礎梁
を合体させた厚めの床版)
免震装置基礎工事 <継続中>
【エネルギーセンター】
〔建築工事出来高:H13年11月30日現在 63.0%〕
〔設備・コジェネ工事出来高:H13年11月30日現在 12.0%〕
平成 13 年 8月 31 日現在 地盤掘削・搬出、設備共同溝配
筋、煙突基礎工事 継続中
9月24日現在 オイルタンク3基搬入据付
10∼11月末現在 設備共同溝工事
躯体工事 <継続中>
(施設整備推進室)
新棟建設工事現場状況(中央にタワークレーン)
2001/11/30現在>
エネルギーセンター建設工事現場状況、2001/11/30現在
46
互 助 会
第21回
文化祭
恒例の第 21回互助会文化祭は、例年のように 11 月3
日(土)から11 月9日(金)までの7日間にわたって病
院本館1階外科系外来ロビーで開催された。今回は、51
名と4グル−プから71点の作品が出品され、期間中、職
員や患者さんの目を楽しませた。
11 月7日(水)には、理事長、学長、病院長の出席を
いただいて、優秀作品の表彰式が行われ、表彰状と記念
品が贈呈された。
(人事厚生課岡山均記)
入賞者の皆さんは次のとおり
理事長賞 後藤知子(管理課)手工芸
学長賞 柏 香樹(外来患者)写真
病院長賞 清水敏子(薬剤部)書
優秀賞 寺井明夫(図書館事務課)写真
米田和可子(フォトセンター)写真
冨田晃子(看護部)写真
大山育子(救急医学)写真
西真知子(皮膚科学)絵
中川佳子(看護部)生花
直井千津子(看護部)生花
国田美由希(看護部)生花
広沢静香(中央臨床検査部)生花
特別賞 高田豊子(入院患者)手工芸
曽根節子(外来患者)手工芸
4階病棟(入院患者)その他
5階病棟(入院患者)その他
表彰状を受ける後藤知子さん
理事長賞:手工芸(後藤知子)
学長賞:写真(柏香樹)
病院長賞:書(清水敏子)
47
秋 のバス旅 行
いきいき法話と精進料理 & 恐竜博物館
平成13年11 月18 日(日)午前8時25 分、心配され
た雨もあがり参加者28名を乗せたバスは、最初の目
的地福井市の「大安禅寺」を目指して大学を出発し
た。
途中10 分程の休憩を入れ目的地には予定時間を20
分程過ぎて午前10時20分到着した。
大安禅寺は、山間の周りを深い森に包まれた中に
あり、駐車場から階段を上がり、門をくぐるとひん
やりと冷たい空気が流れ、今にも恐い顔の修行僧が
出てきそうな雰囲気であった。しかし、玄関で出迎
えてくれたのは、若い女性で、そのテキパキとした応
対は、テーマパークの受付係りを想像させ、修行僧
のイメージを打ち消すものであった。奥へ案内され
ると薄暗い本堂には既に200 人程が待っており、私た
ちが座ると同時に寺についての来歴説明がはじまっ
た。大安禅寺は正式には「臨済宗妙心寺派 萬松山大
安禅寺」と言い、福井藩主の廟所として万治元年
(1658 年)に建立された。また、通称「千畳敷」とい
う石畳が1360枚敷き詰められた松平家の永代廟所が
あり、そこには、福井藩主先祖代々の墓石が並んで
建てられているということであった。現在では、花菖
蒲の寺としても有名だということである。次に、ビ
デオによる住職の挨拶と禅についての説明及び座禅
のミニ体験を受けた。電動でスクリーンが上から降
りて来る様は、いかにも観光名所化されているよう
に思われた。座禅のミニ体験終了後、新しく増築さ
萬松山大安禅寺住職によるいきいき法話
れた大広間へ移動して、いよいよ「いきいき法話」
の始まりである。ビデオで見たそのままの風貌で和
尚が登場。元気な挨拶でいきなり聴衆のこころをつ
かむと、あとは大爆笑の渦である。最近のニュース
や身の回りにあるものを題材に、だるま法師の教え
をユーモラスに語り、30 分の予定時間はあっという
間に過ぎてしまった。お腹の筋肉が痙攣するほど1年
分まとめて笑ったような気分になり、終わってみれ
ば心地良い快感が全身を包んでいた。機会があれば、
是非、もう一度聞きたいものである。余韻を残しつ
つ、精進料理が用意されている部屋に案内された。
食事の前に精進料理についての説明があり、魚介
類、肉類を一切使わず、山菜、野菜、海藻穀類を材
料として作られ、食物繊維やミネラル分など現代人
の摂取しにくい栄養素を多く含んでおり、四季折々
の「旬味」を取り入れた40 種類もの食材が使われて
いるとのことであった。その後、
「食する」ための感
謝と心構えを一同で合唱し食事となった。吟味され
た料理はどれもおいしく、奥深い味わいは、一口毎
に体を浄化してくれるように思えた。
食事の後、バスは次の目的地「勝山恐竜博物館」
を目指した。
恐竜博物館には、予定通り到着、遠くから見えた
ドーム型の建物は、近くで見るとその大きさに圧倒
されるほどであった。正面から入るとそこは3階で、
地下に降りる長いエスカレーターがあり、エスカレ
ーターで地下1階に降りながら見上げた空間の広さは
想像以上であった。実物の化石が埋められた壁のダ
イノストリートを抜け階段を上がると、そこはまさ
に恐竜王国。誕生から死滅までを、発掘された化石
をもとに、実物大の恐竜骨格を中心に展示されてお
り、その数もさることながら、大きさに圧倒された。
40種類もの食材が使われているという精進料理
48
また、中には本物の骨や卵がガラスケースに収めら
れており、何千年もの時を越えて今目の前にあるこ
とに感動を覚えた。さらに、今にも動き出しそうな
リアルな模型が精密に再現されていた。その他、地
球の科学や生命の歴史といった恐竜以外のコーナー
があり、また、図書館、レストラン等も完備され、
館内はなかなかの充実ぶりであった。あっという間
に集合時間になり、後ろ髪を引かれながら博物館を
後にし、大学には予定時間を14 分すぎた午後5時 44
分に無事到着した。
今回の旅行は、法話では、人の一生がいかにはか
ないものであるか、博物館は、地球の長い歴史から
みれば人類(人間)はいかにちっぽけな存在である
かを改めて思い知る旅であった。
(人事厚生課岡山均記)
勝山恐竜博物館
《本学スタッフ新刊著書》
高橋良治、中嶋秀夫、小松一祐著
学会プレゼン新技法
−PowerPoint 2002で変わる〈オンライン〉プレゼ
ンテーション−
日本医事新報社
296頁
3500円+税
2001年12月1日発行
著者らがプレゼンテーションソフト「Persuasion」に
ついての解説本「M a c でスライド」( 1 9 9 3 年刊)、「M a c
でスライド2」(1995 年刊) を出してから久しいが、この
度、同じメンバーによって「学会プレゼン新技法」(日
本医事新報社)が刊行された。
前著は「Persuasion」、
「Photoshop」などを使用したス
ライド作成方法について解説したものであった。当時
は、発表用のフルカラースライドがパソコンで作るこ
とができることがようやく知られるようになった頃で
あり、それなりに一つの道しるべになったかと思って
いる。
時が流れて、今度発表したこの本は「プレゼン新技
法」とあるように、パソコンで作成した画面を直接、
液晶プロジェクタで投影しながらプレゼンテーション
をおこなうことの解説本である。すでにプレゼンテー
ションソフトは Microsoft社の「PowerPoint」が主流にな
り、バージョンもOffice XP (PowerPoint 2002) [Windows
用]である。バージョンアップというのはやっかいなも
ので、従来のものが使えなくなるわけでもないのに、
機能が増えて使いやすくなったということを言われる
と気がそそられるものである。この本は P o w e r P o i n t
2002 (Windows版) に沿って書いてあるが、自分のつく
りあげた画面を動的に示して訴求力を高めるという手
法は以前のバージョンでも、Macintosh版でも同じであ
る。機能を見比べて必要な機能が搭載されているよう
であれば、導入して練習されると良いだろう。
近い将来、スライド出力は不要になり、プレゼンテ
ーションソフトをうまく使いこなしているかどうかで
評価されるようになるだろう。本著はそのための「ス
ライドショー」の作成・設定・実行について解説した
ものである。PowerPointにこんな機能もあったのかと思
うことが必ず発見され、新しい指針となるであろう。
(フォトセンター中嶋秀夫記)
49
随想・報告
報 告
米国 バンダービルト大学留学記
内分泌内科講師
西 澤 誠
留学から帰り早くも半年近くが過ぎよ
うとしている。2年間の留学生活を自分
なりにまとめておきたいと思ってはいた
が、なかなかできないまま時間が流れ、
まあいいかと、半ばあきらめていた。と
ころが今回、本誌に留学記の寄稿を求め
られ、これは好機と利用させていただく
ことにした。
5年前私が本学の内分泌内科にお世話
になることになった時、それまでほぼ毎
年と言ってよいほど、生活の場を移して
いた私は、ようやく落ち着き場所を得た
ような気分であった。当時既に3人の子
持ちであったこともあり、留学は自分に
とっては夢でしかなかった。ところが、
1997年にフィンランドで開かれた国際糖
尿病学会に参加した時の、いろんな国の
Cherrington 教授夫妻と私(中央)
。日本人が集まった時のもの。
人の中に入り議論する(私はほとんど呆
ることとなった。
然と立ちすくんでいたのだが、
)感動がどうやら留学
Cherrington 教授の研究室は、アメリカ合衆国のテ
の導火線に火をつけたらしい。とは言うものの3人い
ネシー州ナッシュビルにあるバンダービルト大学にあ
る子供はどんどん大きくなっていく現実に、その火
る。バンダービルトという大学の名前は、私が高校
はいつ消えるか危いものだった。
生の頃あるバスケットボールの雑誌で目にしたこと
元来優柔不断な私は、運命を時の流れと周囲の人
があり、なにやらオカルト的陰影を帯びた印象とし
の動きに任せることが多いのだが、この時は、私は
てわずかに私の記憶にあるだけであったが、米国内
ついていたようだ。翌年、ある研究会に来日した
では南部の名門校の一つとして知られている。テネ
Alan D. Cherrington教授の講演を拝聴する機会を得
シー州は、米国のなかでは南部に分類されるのだが、
た。彼は、生体内での肝臓の糖代謝調節機構を長年
気候は日本に近く、湿気が多いところまで日本的で
にわたり研究している、この分野における第一人者
ある。その州都であるナッシュビル市は、人口約50
で、彼の研究手法は、派手さはないものの、一つ一
万人の町で、音楽の町として特徴付けられている。
つレンガを積み上げて強固な建物を作りあげるよう
この町の中心にシンボル的高層ビルがそびえている。
な、実直そのものである。私は、自分の言いたいこ
そのビルの最上部には、2本大きな尖塔が立ってお
との十分の一ほどのことを大変な労力をはらい伝え
り、それが青白い高層部とともに夜間にライトアッ
た(今から考えると、十分の一どころかマイナスだ
プされる様は、通称バットマンビルと呼ばれる独特
ったようにも思える)
。ともかく、彼は履歴書その他
の不気味さを演出している。ちなみに、私が米国2日
を送れと言ってくれ、それが今回の留学へと結実す
50
旅行が安くできるのが大きな魅力(カナダのケベック市)
。
兵隊サンは本物です。
目の夜に車を走らせ道に迷った時、絶望感を深めて
くれたのはこの建物であった。
研究室でまず Cherrington 教授が私に言ったのは、
私の呼び名をどうするか、であった。これは、約3秒
で決まった。Makoto だからMak(マック)というこ
とになるらしい。研究室のメンバーは、Cherrington
教授のことを、Alan (アラン)と名前で呼んでおり、
私がためらわずにそうできるまで約3ヶ月を要した。
日米の文化の隔たりは、まだまだ大きいものがある。
しかし、慣れてみると、こうした呼び方だけで妙に
親近感が沸いてくるので、なかなか良いものである。
話を本題に戻すが、この研究室での主な実験は、犬
を使いさまざまな部位にカテーテルを入れ、実際に
血液を採取しデータを取る、古典的とも言える手法
を用いている。最近主流の分子生物学からみると対
極といっていい手法であるが、こうした実験はやは
り重要であると考える研究者が集まった研究室であ
る。
人間の文化の違いもさることながら、犬の文化
(?)の違いもあるようだ(これは、本来の実験の結
果から得たものではない)
。私は、日本でも犬を使っ
た実験に関わったことがあるが、一つ注射をするの
も大変な勇気が必要だった。ほとんどの犬は、注射
が大嫌いで(当たり前だが)中には容易に噛み付く
犬もいた。ところが、アメリカの犬は、とにかくおと
なしい。決して注射が好きなわけはないと思うが、ま
ず噛みついてこない。最初、私は、これは実験用に
飼育された犬だから特別なのだろう、と思っていた。
ところが、その犬は、どこにでもいる犬であった。だ
から、米国人の頭には、犬は噛みつく動物である、
という解釈はないようだ。
私が参加したときの研究室の構成は、研究者が4
名、アシスタントと呼ばれる実験助手が6名、大学院
生が2名の計 12 名からなり、研究者の一人が一年前
から留学している日本人(佐竹昭介先生)であった。
他に近くの研究室にCherrington 研究室から独立した
塩田正和先生がおられ、この二人が私の米国生活の
開始を支えてくれたことは、感謝に堪えない。日本
での実験とは異なり、ここでは実験の下準備や得ら
れた検体のアッセイの多くは、実験助手の仕事とな
る。私の実験では、実験に先立ち犬に多くのカテー
テル等を埋め込むのだが、この手術はそれを専門に
やるドスという男が担当していた。彼の手術の腕は
たいしたもので、初めて研究室を訪れる者に自慢話
をしながら手術を見せることが彼の楽しみであった。
自分の自慢を遠慮なくする、そのアメリカ人らしさ
を観察するのが、万事控えめな私にはなかなか刺激
的であった。しかし、ある時彼が、研究者はみなこ
のラボを出て偉くなる、とさびしげに言った言葉が、
彼の苦悩を表していた。ともあれ、多くのスタッフ
に支えられ私の研究は、順調に進み、2年の間に3つ
のプロトコールを終えることができた。
渡米当時、私の子供は、11 歳、8歳、5歳になって
いた。私は、妻を含め家族を迷わず連れて行ったの
であるが、子供たちのおかげで貴重な経験をするこ
ともできた。生活をはじめて5ヶ月程した頃、次男の
担任の先生(勿論アメリカ人)から、授業時間を一
時間使って日本の話をしてくれ、と依頼が来た。無
謀にも、私は、これぞ日本を知らしめる機会と、喜
んで受けた。こうした話から、私が言葉に不自由し
ない英語が堪能な人間だと思われる方もおいでかも
しれないが、それは間違いである。高校時代に主要5
科目中英語をもっとも苦手としていた私であり、2年
の留学中も言葉に不自由し続けていた。ただ、時々
私は無謀な決断をすることがある。結局、日本を真
中に据えた世界地図を作り(米国の地図では日本は
隅っこに小さくなっている)
、大変な誤解を招きそう
な武者の絵をかき、20 分間の日本紹介を行った。あ
とは、折り紙教室となり、ついに時間を20分延長さ
51
小さな子供には、国境・言葉の問題は、ないようです。
せてしまった。その授業の評判は定かではないが、子
供たちは2年間いじめにあった形跡はなかったようで
ある。2年の留学を終え、家族のうち誰か一人くらい
日本に帰るのを嫌がる者が出るのでは、と思ってい
たが、皆帰国を喜んでいたのは、多少さびしく思っ
た。結局、私たちは日本人だとの思いが強くなった
ように思うが、それで良いのだろう。
米国での研究生活の印象を表すと、「うらやまし
い」の一言になる。時間とマンパワーが圧倒的に余
裕があり、それを支える環境が整っている。これは、
国家・文化のレベルから生じるものであり、今のと
ころ別世界と考えるしかなさそうである。米国人に
対する印象は、
「標準偏差が大きい」となろうか。と
にかく、いろんな人間がいる。その米国人が一つこ
とがあると大統領を中心に一つにまとまるのは、不
思議な感じであるが、2年間の生活でなんとなく理解
できるような気もする。国家・国旗を目立たないよ
うにしている日本とは対照的であり、学ぶことはあ
ると思う。
最後に、この貴重な機会を与えてくださった内田
健三教授および金沢医科大学、不在中の仕事をカバ
ーし、私たちを支えてくれた内分泌内科学の方々に
深く感謝いたします。
52
随 想
2 0 年の勤続に思う
衛生学講師
釣谷伊希子
このたび本学から勤続20 年の表彰状をいただいた。
研究者としては、永年同じ機関にいることがほめら
れることなのかは疑問だが、とにかく、健康に恵ま
れ周囲の人々に支えられて、この大学で働き続ける
ことができたことを心より有り難く思う。
昭和56 年の春、大学で研究に携わって働きたいと
思っていたところ、運良く本学衛生学教室の助手に
採用していただいた。その頃は、とにかく与えられ
た仕事をそれなりにこなそうとしているだけで、研究
者としての自覚や意気込みはほとんどなかったこと
を赤面状態で思い起こす。そして、そんな呑気な私
を当時教授に就かれたばかりの能川浩二先生や教室
スタッフの方々が静かに見守ってくださっていたこ
とに今もって気付かされる。平成6年の夏、英国留学
の機会をいただき、そこで若い研究者たちの活躍す
る姿に刺激を受けた。そこから遅ればせながら、
「QOLの維持」をゴールにした骨粗鬆症の予防に自分
なりに視点を据えて研究テーマを選びながら今日ま
でやってきた。未だ自らの努力が足りず、自分の羽
根で本学を飛び立つまでには至っていないが、これ
まで励まし協力してくださった衛生学山田裕一教授
や教室員の方々、さらに本学の皆さまの助けにどう
か応えなければと思っている。
個人的には、ライフサイクルの後半に突入したこ
とを日々感じつつも、精神的にまだまだ「発展途上」
であると考えたい。さらに、研究、教育活動を通し
て本学のみならず社会全体へ何らかの還元をしてい
く時期にきていることを感じる。
中央臨床検査部
永田勝宏
この度、20 年勤続にて表彰をいただき、大変光栄
に思っています。
中央臨床検査部での20 年には、自動分析器の急激
な進歩やコンピュータによるシステム化、最近では
オーダリングシステムや電子カルテの導入などめま
ぐるしい変化がありました。配属当初、緊急検査項
目を測定するのにストップウオッチやピペットを片手
にお湯を沸かしたり、恒温槽で暖めたりし、検査結
果の報告に時間がかかっていたことが今ではとても
信じられません。
仕事以外では、体を動かすことが好きだったので、
当大学職員の野球チーム(橘ファイターズ)
、ランニ
ングクラブ(金沢医大RC)に所属し、他部署のいろ
いろな方々と交流を深めることができました。その
他に互助会のソフトボール、バレーボール、運動会
などを毎年楽しみに過ごしていました。
しかし、健康の過信からか平成7年2月に脳血管障
害で入院、左片麻痺の後遺症が残りました。たくさ
んの方々のおかげでリハビリ後、社会復帰すること
が出来ました。中検でも暖かく迎え入れていただき、
とても嬉しく思いました。職場の上司・同僚のみな
さんには、多大なご迷惑をかけることとなってしま
いました。私がここまでこれたのは、大勢の方々の
お力添えによるものだと思っています。この場をお
借りして厚くお礼を申し上げます。
今後も足手まといにならないように、大学の発展
のために微力ではありますが精一杯頑張りたいと思
いますのでよろしくお願い致します。
53
随 想
私のナースキャップ論
看護部副部長
ナースキャップを「廃止したい」
、いや「存続した
い」
、当院の看護婦の希望は2対1という調査結果で
あった。看護婦の象徴のようなキャップをかぶるこ
との根拠は何? その意義を探索し、皆でどうするか
の結論を出さなければいけないのだろう。
この問題についてわたし流意見はと言われれば現
在のナースキャップなら廃止しても構わない、と思
っている。何故なら単なる「アクセサリー的存在」の
部分が多いから。
かつてのナイチンゲール時代の挿し絵等でみる看
護婦のユニホームでは、帽子は髪全体を被い、白衣
はロングで、処置時は予防衣を着け、靴は足全体を
被っている。
35 年も昔、私が看護婦になった頃の帽子は現在の
ものよりもっと大きく髪を被うものだった。身だし
なみについて婦長から「看護婦は髪をきちんとまと
め、帽子の中に入れておくこと。患者様の創部に髪
が落ちることの無いように」と言われ、帽子も、予
防衣も、靴も、感染防止対策だと教えられた。従軍
看護婦の経歴を経た明治生まれの婦長の躾は、とて
も厳しく、若かった私には窮屈に感じたが、今にな
って考えるとナイチンゲールが言うように安全性へ
の配慮がなされた理にかなったユニホームであったと
納得できる。
当院でも帽子着用で業務にあたるのは、看護婦以
外に、清潔操作時の医師、薬剤部門、調理部門、洗
濯部門等の職員があげられる。それらの場合は着用
目的が清潔操作のためか異物混入予防のためとかぶ
る目的が明確で、必要な時に着用している。看護婦
は清潔区域、一般区域に区別してそれぞれが決めら
れたものを常時着用している。両者で共通するのは
清潔操作に対応するために帽子を着用していること
である。以前、手術部看護婦はタオルかターバンで
髪を固定し、その上に帽子をかぶるのでヘアセット
しても意味がないと嘆いていたが、職業人としての
マナーは守られていた。この事柄に関する帽子着用
は、安全対策上今後も必要なことであると思う。リ
辻口徹子
スクマネジメント上からも、患者様に不快な思いを
与えないためにも異物混入防止上も帽子着用は必要
なことである。何れも頭全体を被い髪が落ちないよ
うにかぶることが条件であるから、形状的にも密閉
できる形のものが適切と思われる。
問題は一般病棟でのナースキャップであろう。看
護婦は毎日何のために帽子を着用しているのだろう
か? 前述の調査結果によると、多かった意見は、廃
止希望者では「ケアや処置の時じゃまになる」が最
も多く、存続希望者では「看護婦の象徴であるから」
が多かった。どちらも看護婦のナース意識の表れと
いえよう。
また、患者様の安全優先への意見では、廃止希望
者は「環境モニタリングで、キャップから細菌(+)の
結果が出ているのでイヤだ」
、存続希望者は「ナース
の存在が判り安心だ」と“感染防止”か“不安の除
去”かへの意見を述べているが、日頃の行動面で白
衣と同回数のクリーニングをしているか、またケア
時の「不安の除去」を試みる時ナースキャップを意
識しているだろうか。患者様の清潔操作時、髪が落
ちないような行動をしているだろうか。職業人とし
て安全に対する頭の中の風船を限りなく膨らませて
いるだろうか・・・。
当院開設の頃には、一般病棟でも清潔操作を要す
る骨髄穿刺等の介助時は専用キャップに換える。尿
量測定時等は予防衣を着用する。シーツ交換時、三
54
角巾をかぶり埃などから髪を守るなどのことを遵守
したものだった。しかし、30 年の時の流れの中で、
それぞれ根拠のある身だしなみが、
「面倒だ」との思
いの結果、頭の中の風船は劣化してしまったのだろ
うか・・・。
先日、ある方が他院を訪問した際、
「ナースキャッ
プはなかったが、ヘアスタイルの清々しさに感動し
た。当院の看護婦もそうあってほしいね。副部長よ
ろしく頼むわ」との忠告を受けた。
何故、あなたはナースキャップをかぶっている?
そう問うている私もかぶっているが。
最初に断ったように私は、ナースキャップは不要
と思っている。医療の安全の目的で適宜最も適した
形の帽子を着用するのがよいと思っているのだが。
あなたの意見はいかがでしょうか。
随 想
石川県に移って来て
医事課
本学に入職してもうすぐ2年になります。
24 年間住み慣れた大阪から、石川県に移ってくる
にあたっては、いろいろ思い巡らすこともありまし
た。住みやすく楽しい土地なのか? 気候は大阪と比
べてやはり寒いのか?石川県民の人柄は?テレビを
購入しても民放のチャンネルは見られるのか? 等な
ど。
3月に引っ越して、辞令交付式までまだ日があった
ので、香林坊に足を運びました。大阪で立ち読みし
た本に、「北陸最大の繁華街」と書かれていました
(何! 北陸最大の繁華街! ということは、北陸三県
で一番賑やかな場所か! これは見にいっとかんと)
。
ところが実際の光景は、私の想像とかなり違ってい
ました。最初に思ったことは、
「何じゃコリャ?嘘や
ろ、これで北陸最大の繁華街なん?(石川県の人ゴ
メンナサイ)
」大阪のキタやミナミを想像していただ
けに、
「娯楽はあまり期待せんとこ」と思ってしまい
ました。
病院への配属になり働き始めたわけですが、そこ
で働く方々(主に事務職員、看護婦の方々ですが)
を見て思ったことは、大阪から来た私から見て、石
川県の人は、温和な優しい方が多いということです
(逆に言えば大阪の人間はやかましく、せっかちで、
荒っぽい人間が多いと思います)
。これは私自身が事
務職員採用試験を受けに来て、集団面接の時にもそ
う感じました。事実、私のグループはおとなしく、あ
原 章 文
まり発言されない方ばかりでした。しかし、今考え
ると、お喋りな私が勝手に喋りまくったので、発言
のタイミングを逃してしまっただけかもしれません。
それに、外来の看護婦さんの応対を見ても、大阪の
病院で見た看護婦より丁寧で親切であると思いまし
た。大阪のある病院の外来で待っていた時、椅子に
腰掛けていた50 代半ばの患者さんが、私の目の前を
横切り、窓口に歩いていきました。そして、窓口の
事務職員の女性に「わしは、もう2時間も待っとるん
じゃ、早く診察してくれや!」と怒り出しました。
事務の女性が対応に困っていると、40 歳位の看護婦
が出てきました。
「おっ、看護婦さんがなだめに入る
のかな」と思った矢先、「順番だから仕方ないでし
ょ!皆さん待ってはるやろ! あんたもちょっとは我
慢して待っときなさいよ!」と一喝。迫力に圧倒さ
55
れた患者さんは、不満な表情を浮かべながらも再び
椅子へ。もちろん全てがこのような看護婦さんでは
ありませんが、大阪の看護婦は何故か荒っぽい性格
の人が多いように感じていました。看護婦さんが、
怒っている患者さんに対して逆に怒り出すなんて、
ここの病院では見たことはありません。
このような気性の違いは、やはり土地柄のせいな
のでしょうか。大都市、地方都市の生活環境の違い
のせいでしょうか。大阪の人間は石川県の人に比べ
て何故か時間に追われているように感じます。これ
がせっかちな気性を生み、荒っぽい人も増えるのか
な? と思ったりしていますが。時間に追われている
ような感じとは、大阪にいた頃は、別に急ぎの用事
があるわけでもないのに、何故かエスカレーターでも
階段と同じように昇って行ってしまうし、同じよう
に動く廊下に乗っても普通に歩いていました。これ
は、大阪の殆どの人々が同じようにしています。石
川県の人から見れば、エスカレーターを殆どの人々
が階段のように昇っていくのは、不思議に見えるか
もしれません。
そのような場所を離れ、石川県で生活を始めて感
じたことは、時間がゆっくり流れているということで
す(実際は、そんなことはないはずですが)
。大阪に
比べて、ごみごみとしていない地方都市の環境が、
そのように感じさせると思います。私自身どちらか
というとのんびりしている方なので、こちらの土地の
方が性に合っているかもしれません。ただ、合わな
いと思ったのは冬の雪と寒さです。当たり前の話で
すが、大阪の冬よりも寒かったですし雪掻きも初め
て経験しました。雪が積もった最初の頃こそ、少々
楽しく病院駐車場の雪掻きをしていましたが、3日目
にはもう飽き飽きしていました。
こんな私も、引っ越して1年半が過ぎ、なんとか一
人暮しにも慣れてきました。配属先の医事課の方々
もとても親切にしてくださるので(洗剤くださった
り、お米くださったり)
、何とか石川県で生きていけ
そうです。
とりあえず今のところは???。
人物往来
□山内俊雄先生 /埼玉医科大学神経精神科講座教授/昭和 38 年北海道大学医学部卒業/昭和 43
年北海道大学大学院医学研究科卒業/昭和 43 年北海道大学医学部生理学講座助手/昭和 46 年北
海道大学医学部精神医学講座助手/昭和 51 年同講師/昭和 54 年同助教授/昭和 61 年埼玉医科大
学神経精神科講座教授/平成元年埼玉医科大学神経精神科センター所長/平成 10 年埼玉医科大
学副学長として現在に至る/平成 13 年 10月 23 日大学院セミナーにて「性同一性障害を通してみ
えてくること」と題して講演/神経精神医学教室
□原島 博教授 /東京大学大学院情報学環・学際情報学府学際情報学、東京大学工学部電子情報
工学科教授、日本放送協会放送技術審議会委員、日本バーチャルリアリティ学会会長、日本顔学
会理事/ 1968 年東京大学工学部電子工学科卒業 / 1973 年東京大学院博士課程修了、工学博士/
1973年東京大学工学部専任講師 /1975 年東京大学助教授(工学部電子工学科)/1984 年米国スタ
ンフォード大学客員研究員/ 1991 年より現職/ 平成 13 年12 月8日大学院セミナーにおいて「コ
ンピュータで探る顔と表情の秘密」と題して講演/解剖学Ⅰ教室
59
教室紹介
20
医動物学教室
左から松能好子技能員、及川陽三郎講師、池田照明助教授、市川秀隆講師
医動物学教室は、多田功教授(元 九州大学医学部
教授)、藤田紘一郎教授(現 東京医科歯科大学医学
部教授)および、谷荘吉教授(現在 はやしやまクリ
ニック名誉院長)を経て、昭和61年から池田照明助
教授を主任として及川陽三郎講師、市川秀隆講師お
よび松能好子技能員の4名で構成されている。
昨今、日本では、土壌伝搬性の腸管寄生虫症など
は激減したが、生活様式の変化により新たな寄生虫
症が出現したり、世界のグローバル化により輸入寄
生虫症例が増加するなど、寄生虫症に関する問題は
未だ根強く残っている。また、このような近年発生
をみている寄生虫症には、従来の寄生虫学的検査だ
けでは診断が難しい症例がしばしば認められ、専門
的な知識と技術が要求される。当教室の研究は、こ
の様な臨床への対応に直結する研究と寄生虫学の根
本的問題を解明するための研究との2本立てで行って
いる。臨床的な研究では、吸虫症、線虫症および条
虫症について、それぞれ各教員が分担して免疫診断
に有効な手技と特異性の高い寄生虫抗原の分離を進
めている。さらに原虫症については免疫診断法とと
もにPCR 法を用いたDNA診断法も検討しており、あ
らゆる寄生虫症の診断に対応できるように鋭意研究
に努めている。近年、マラリア、赤痢アメーバ症、
アカントアメーバ角膜炎、肺吸虫症、肝蛭症、犬糸
状虫症、犬回虫症、広節裂頭条虫症および大複殖門
条虫症などの内部寄生虫性疾患やマダニ刺症および
ハエ蛆症などの外部寄生虫性疾患など多種多様な医
動物学関連の症例を経験した。これらのうち一部の
症例については、臨床各科と協力して、分離虫体の
薬剤感受性試験や疫学的調査なども行われている。
一方、寄生虫学的研究では、寄生虫が宿主の免疫
機構に対抗して寄生するメカニズムを検討する目的
で、寄生虫の体表抗原あるいは生存に必須な寄生虫
の酵素類(特にプロテア−ゼ)と宿主の免疫機構と
の相互関係を肺吸虫感染およびフィラリア感染系な
どで追求している。また逆に、感染後一定期間内に
宿主より自然に排除されてしまうような腸管寄生虫
感染系については、虫体排除に係る宿主の腸管免疫
機構の解明に向けて研究を進めている。
教育面では、学生の記憶に残るような講義・実習
を心がけており、特に実習では、病理切片標本や固
定した虫体標本だけでなくできるだけ生きて動き回
る虫体標本を多く見てもらい、印象深い実習になる
ように努めている。また、専門分野だけでなく1学年
生の医学英語入門、情報処理入門および4学年生の
PBL チュートリアルでも教室員が各々担当、貢献し
ている。
(医動物学及川陽三郎記)
60
臨床病理学教室
前列左から 早瀬満講師、野島孝之教授、福永壽晴講師、黒瀬望助手
後列左から 梶幸子研修医、木下英理子大学院生、中野万里子病院病理部技師長、
百成富男中央臨床検査部技師長
臨床病理学教室は昭和 49 年7月に寺畑喜朔教授が
着任して始まりました。寺畑教授は中央臨床検査部
の部長も併任され、創成期の検査部および教室の発
展のために尽力されました。寺畑教授の定年退官後、
平成13 年1月より第2代目教授として野島孝之教授が
就任され、現在1年を経たところです。教室スタッフ
は野島教授を筆頭に、早瀬満講師、福永壽晴講師お
よび黒瀬望助手の4名と研修医1名および大学院生1
名であり、講義、実習、研究および臨床検査業務が
行われています。また、野島教授は病院病理部およ
び中央臨床検査部の部長も併任されています。
当教室は病院病理部および中央臨床検査部と、病
院における臨床検査業務を遂行する上で深い関わり
を持っています。臨床検査の分野は近年技術の発展
が著しく、新しい検査法が続々と開発されています。
従って、検査のプロフェッショナルである検査技師
さんたちとの連携のもとに診断学の重要な部分を担
っています。両部との合同勉強会や研究発表会など
は頻回に行い、新しい技術に対応できるようお互い
に努力しています。
教育面では、病理学(総論、各論および実習)を
中心に剖検材料や組織標本などを用いた、より実践
的な教育を心がけています。また、医学英語および
情報処理はこれからの医学教育には重要と考えてお
り、これらの授業にも参加しています。さらに、野
島教授は過去6年間、6学年を対象に病理の勉強会を
週1回開催しており、学生から今までの疑問点や問題
点を整理できると好評を得ています。
研究面では、病院病理学(人体病理学)
、分子細胞
病理学(実験病理学)、検査診断学、臨床微生物学、
呼吸生理学、精度保証(管理)および検査システム
学など幅広い分野で研究が行われています。
以上、臨床病理学は“病態を種々の検査を通して
客観的に認識し、病気の原因を考える学問”であり、
しかも、研究分野は広範かつ多岐に及んでいますが、
研究テーマとしては“診断学に役立つ分野で分子生
物学的手法を用いた解析”を目指しています。
(臨床病理学福永壽晴記)
61
消化器内科学教室
前列左から船崎勉助手、堤幹宏助教授(併)、高瀬修二郎教授、川原弘助教授、島中公志助手
後列左から石澤清宏大学院生、福村敦大学院生、学生、矢野博一助手、岡村英之助手、川口宗一助手、川浦健大学院生、
日下一也助手、谷下田敏夫大学院生、橋本昌子大学院生、学生、澤田佳世子大学院生、学生2名
教室が担う教育・研究・臨床の3本柱の課題を充
分に行うには、教室員一人一人の熱意が必要です。
幸い当教室には、個性は様々であっても、熱意だけ
はどこにも負けない人材がそろっていると自負して
います。平日はもとより土日の深夜であっても、研
究室と医局の明りは消えることがなく、黙々と働く
若い姿を見ることが出来ます。一旦自宅へ帰って家
族との食事を済ませた後、9時には医局でコンピュー
ターをたたいている人。文献や仕事をいっぱい抱え
ながら家に帰り、翌朝には仕上げている人。家で教
科書を読みながら内視鏡のイメージトレーニングを
して、気がつけば机で寝てしまった人。それぞれが
自分の出来ることを精一杯行っています。
教育面では、消化器内科の授業は分かり易く、学
生から「目うろこ講義」と呼ばれていることを耳に
し、さらにやる気が出てきています。5年生のBSLで
は担当医が親身になって面倒を見るため、6年次の
CCS で消化器内科履修を希望しても、残念ながら抽
選に漏れてしまった学生が多数出る事態も生じまし
た。また、大学院生も学生に早く医師になって欲し
いとの願いをもって接してくれています。さらに、川
原助教授は毎日、授業内容の質問や学生の悩みをメ
ールで受付け、夜中までかかりながら一人一人に返
事を送り、親身な指導をしています。
研究面では、多方面で活躍中の堤助教授が中心と
なってリサーチミーティングが定期的に開催されて
います。最近の研究の成果として、1999年国際消化
器病学会において土島助手が銀賞を受賞しました。
研究における中心課題は「アルコールと肝障害」で
すが、現在、アルコールによるミトコンドリア遺伝子
異常、アルコールの肝および食道癌発生への影響、
および非アルコール性脂肪肝炎とレプチンの関係な
どの検討がすすめられています。
臨床面では、増加する入院・外来患者の診療と内
視鏡検査等に追われる状況が続いています。休日の
緊急患者も多く、日直医や実験中の医師までが病棟
と外来患者両方の診療に飛び回らなければなりませ
ん。このような忙しい中にあって、若い教室員が早
期胃癌の粘膜切除術を行ったり、消化管出血を手際
よく止血している姿を見るたびに、誇らしく思われ
ることがあります。また、水曜日のクリニカルカンフ
ァレンスが終って憔悴しながらも、検査手技レクチ
ャーに参加して、日ごろ抱えている疑問を議論しあ
い、全員が技術向上を目指して励んでいます。他に
も医療危機管理の問題に取り組んでいる船崎助手、
適正な医療およびレセプトチェックのために月の3分
の1を費やしている日下助手など、当教室には朝日に
輝く露だまのような医局員が溢れています。
まもなく、高瀬修二郎教授が初代の高田昭教授の
後を受け、就任して10 年目を迎えようとしています。
現在、教室員18名、大学院生8名となりました。今、
新米医局長は教室員一人一人にとってかけがえのな
い場となるような教室と医局の構築をめざして、何
をなすべきかという命題に取り組んでいるところで
す。
(消化器内科学 島中公志記)
62
総医研・人類遺伝学研究部門 (生化)
前列左から新家敏弘助教授、久原とみ子教授、井上義人講師
後列左から大土井千恵研究員、坂井田朝美事務員、山崎妙子事務員
本部門は昭和 58 年4月に人類遺伝学研究所として
化合物にまたがっている。これらの化合物をガスク
設立され、松本勇教授(現名誉教授)のもと、先天
ロマトグラフィー・マススペクトロメトリー(GC/MS)
性代謝異常症の化学診断法の開発をメインテーマと
で分析し、体内での動的代謝変化を的確にとらえて
して研究体制がスタートした。平成元年4月総合医
病気の診断に役立てるいわゆる診断支援が行われて
学研究所の開設に伴ない、人類遺伝学研究部門生化
いる。
として再スタート、平成9年3月松本勇教授の定年退
各人の分野は久原が分枝鎖アミノ酸やプリン、ピ
職の後は久原とみ子教授の指導のもと、新家敏弘助
リミジンの代謝異常症など新規疾患の診断法の開発、
教授、井上義人講師の3名の専任スタッフと、大瀬守
安定同位体希釈法、前処理の自動化、化学診断の自
眞ハイテクリサーチセンター研究員(平成10 年から)
、
動化を、新家は脂肪酸β-酸化障害の診断、MS/MS
大土井千恵研究員(平成11 年)が加わり、学内外の
によるアシルカルニチンなどの難揮発性物質の定量、
機関と共同研究している。
ガラクトース、フェニルアラニン、チロジン代謝異常
部門の研究主題は「先天的(遺伝性)あるいは後
症に焦点を当てた研究を、井上は出生前診断、高ア
天的(生活習慣的)に発症する代謝異常症などの病
ンモニア血症の鑑別診断、FAB/MS による難揮発性
気の分子レベルの研究」である。病気を生化学的に
物質の定量、カナバン病を中心に研究を行っている。
解析することにより、その早期発見を可能にし、治
1995年からろ紙尿の簡易ウレアーゼ前処理・GC/MS
療法の開発にも結び付けることを目的としている。 法による新生児スクリーニング試験研究を開始し、
本研究部門の特徴は、本来化合物の構造解析機器で
また、ハイリスク患者の化学診断も高精度化、自動
ある質量分析計(mass spectrometer、MS) を病気の診
化を目指して、教室員一丸となって取り組んでいる。
断補助に使用することにある。MS は火星に生命が存
松本勇名誉教授が発起人となり日本医用マススペク
在するかどうかの判定にも利用される定量感度、同
トル学会と北陸質量分析談話会が設立されたが、山
定精度共に非常に優れた分析機器で、MS を使用した
崎妙子、坂井田朝美が事務局を担当している。
病気の原因解析、迅速、精密多項目検査法の開発な (総医研・人類遺伝学研究部門〈生化〉新家敏弘記)
どでは本研究部門は我が国では最先端の成果を挙げ
ている。分析対象化合物は有機酸、アミノ酸、糖類、
糖アルコール類、アミン類、核酸塩基類など幅広い
63
大学院セミナー
Pulmonary surfactant protein-A and -D,
microbial recognition, and innate immunity
in the lung
甲状腺癌の病理診断をめぐる諸問題
講 師 Dennis R. Voelker博士
講 師 寺畑信太郎先生
(コロラド大学医学部準教授)
(市立砺波総合病院臨床病理科部長)
日 時 平成13年10月4日(木)17:00∼18:00
日 時 平成13年10月12日(金)18:00∼19:30
場 所 病院4階C41講義室
場 所 病院4階C41講義室
担 当 呼吸器内科学 大谷信夫教授
担 当 臨床病理学 野島孝之教授
〔講師紹介〕
Voelker博士はJ. Biol. Chem.
や Biochim. Biophys. Actaの
編集委員をつとめ、脂質生化
学、肺サーファクタント研究
分野では世界の第一人者であ
る。コロラド大学医学部で教
鞭をとるかたわら、同じデン
D. R. Voelker博士
バー市内にある National
Jewish Medical & Research Centerに研究室をかまえて
おり、日本からも多数の研究留学生を受け入れてい
る。
〔セミナーの内容〕
今回は数多くの研究業績の中から当科に関連する
「肺サーファクタントアポタンパク質の生体防御機構
における役割」を講演していただいた。
肺サーファクタントは複数の脂質と4種類のアポタ
ンパク質の複合体であり、肺胞表面に薄膜を形成し、
表面張力を低下させることで呼吸を安定化させてい
る。これが不足すると呼吸窮迫症候群を起こすこと
は古くから知られている。ところが最近になってア
ポタンパク質-A,-D は細菌やウイルスと結合し生体防
御機構に重要な役割を担っていることが明らかにな
ってきた。Voelker 博士はこれらアポタンパク質がマ
イコプラズマと結合すること、その結合特性、マイ
コプラズマ内結合分子の部分解明を示された。
これらの講演は基礎医学的内容から呼吸器感染症
の新たな理解に道を開く画期的なものであり、聴衆
に深い感銘を与えるものであった。
(呼吸器内科学長内和弘記)
〔講師紹介〕
寺畑信太郎先生は本学出
身(昭和 5 5 年卒)で、卒業
後直ちに、金沢大学臨床検査
医学に入局され、その後、防
衛医科大学、アメリカジョー
ジワシントン大学で病理組織
診断学、細胞診断学を研鑽
寺畑信太郎先生
し、多数の業績を報告してい
る。日本における甲状腺病理学の第一人者である。
〔セミナーの内容〕
今回、セミナーには大学院生をはじめ60 名を超え
る医師、検査技師、医学生が参加し、演題への関心
の高さが示された。講演では甲状腺癌に関する基本
的な病理組織像の解説に始まり、乳頭癌や濾胞癌を
診断するために必要な組織や細胞診標本の基本的な
見方を解説された。
乳頭癌は濾胞上皮由来の悪性腫瘍で、基本構築と
して乳頭状構造を示す。腫瘍細胞の特徴的な所見は
核所見で、重畳核、スリガラス状核、核溝、核内細
胞質封入体を認める。しばしば砂粒小体が見られ、
リンパ行性転移を示す。一方、濾胞癌も濾胞上皮由
来の悪性腫瘍で、濾胞構造を示すが、充実性、索状
配列などが見られ、腫瘍細胞の被膜浸潤像、脈管侵
襲像が診断の決め手となり、血行性転移が多いと言
われている。しかし、増殖形式や転移形式には例外が
あり、乳頭癌と濾胞癌の鑑別に際し、難渋する症例
は決して少なくなく、濾胞腺腫や橋本病などの良性
腫瘍や炎症性疾患と鑑別を要する症例も多い。また、
最近の知見、島状癌や髄様癌、難解例、稀少例など
も提示し、甲状腺病理学の奥深さを感じさせた。講
演終了後、診断学に関する活発な質疑応答がなされ、
参加者にとって非常に有意義なセミナーとなった。
64
大学院セミナー
セミナー終了後先生を囲んで親睦会が行われ、講
演内容や学生時代について話が盛り上がった。約20
年前の金沢医科大学に比べて現在大学が大きく躍進
している点、当時なかった2階の渡り廊下などに大変
驚かれていた。学生時代、バスケットボール部で活
躍した話や学園祭での思い出話もお聞きした。充実
した内容の講演会と親睦会であった。
(臨床病理学黒瀬望記)
慢性心不全の治療効果は基礎心疾患に
依存するのか
講 師 丸山幸夫教授
(福島県立医科大学医学部第1内科学)
日 時 平成13年10月18日(木)18:00∼19:30
場 所 病院本館4階C42講義室
担 当 循環器内科学 竹越襄教授
平成 13 年 10 月 18日、福島県立医科大学内科第一
講座教授丸山幸夫先生を講師に迎えて大学院セミナ
ーを行った。
〔講師紹介〕
丸山教授は、昭和 41 年東北大学をご卒業になり、
昭和50年から昭和52年まで南カリフォルニア大学に
留学し、帰国後東北大学の講師、助教授を経て平成
元年福島県立医科大学教授にご就任され現在に至っ
ている。
〔セミナーの内容〕
今回のテーマは、
「慢性心不全の治療効果は基礎疾
患に依存するのか」についてお話になりました。
、講
演内容は、慢性心不全の成因と病態から心不全に対
する治療について解りやすく尚且つ丁寧にお話にな
り、大学院生ばかりでなく我々医局員も大変参考に
なる内容でした。心筋細胞の肥大には、angiotensin II
の増大およびその直接作用が知られている。一般に、
angiotensin IIは血管に対しては血管収縮作用を示し、
心臓に対しては冠血管収縮および心肥大を起こさせ
る。心不全状態に対しアンギオテンシン変換酵素阻
害剤(ACE-I)を投与するとブラディキニン産生が増
加し、更に血管内皮細胞由来の一酸化窒素(NO)産
生が増大するため冠循環血液量が増加する。またこ
の変化は、nitric oxide synthase inhibitorである LNAMEの投与で冠血流量が減少することから、NO の
存在が心不全の治療に重要であることも話された。
また、虚血性および非虚血性心不全の管理は、同様
な治療方針で扱ってよいものだろうかという問題を
Journal of American College of Cardiology(1997 年)に掲
載されている冠動脈造影上虚血性および非虚血性の
心筋症を対象にした患者の死亡率を参考に話され、
基礎疾患に虚血性心疾患の合併を認めた場合死亡率
が増加することを強調され、心不全の治療に加えて
虚血に対する考慮も重要であることを力説された。
また更に、最近の慢性心不全に対する大規模臨床試
験でβ1 選択的遮断薬ビソプロロールの生存率につい
ても話された。この大規模試験は、CIBIS-II(Cardiac
Insufficiency Bisoprolol Study-II)と呼ばれLancet(1999
年)に掲載されており、安定した心不全患者において
β遮断薬は生存率の改善に有益であったとの報告を
紹介された。
そして、自ら投げかけられた「何故β遮断薬は心
不全に有効であるのか」という疑問をラットのモデ
ルを用いた実験で証明され、また実験から論文の掲
載までのエピソードについても話され、非常に重厚
な内容に聴衆側も時間の経つのを忘れるほどすばら
しい講演でした。
(循環器内科学大久保信司記)
性同一性障害を通してみえてくること
講 師 山内俊雄教授
(埼玉医科大学神経精神科講座)
日 時 平成13年10月23日(火)17:30∼18:30
場 所 病院4階C41講義室
担 当 神経精神医学 地引逸亀教授
性同一性障害とは「生物学的性(sex)と性の自己
意識あるいは自己認知( gender)が一致しないため
に、自らの生物学的性に持続的な違和感を感じ、反
対の性を求め、時には生物学的性を己の性の自己意
識に近づけるために性の転換を望むことさえある状態
を言う」と定義される。明確な疾患として捉えられる
ようになったのは1970 年代からであり、我が国でも
65
大学院セミナー
genderの問題が精神医学的に
悪性リンパ腫の診断に対する新しい
クローズアップされるように
考え方
なったのはごく最近である。
山内俊雄教授の講演は、埼
講 師 森 茂郎教授
玉医科大学倫理委員会に性
(東京大学医科学研究所病理学研究部)
同一性障害の外科的治療の
日 時 平成1
3年10月24日(水)17:00∼19:00
問題がもちこまれて様々な議
場 所 病院本館4階C41講義室
論が行われ、治療を容認する
担 当 病理学Ⅰ 田中卓二教授
山内俊雄教授
旨の答申が発表され、治療の
ガイドラインが作成され、そして我が国初めての性
転換手術が公に行われるという、それまでの経緯を 〔講師紹介〕
軸とした内容ですすめられた。山内先生が倫理委員
森茂郎教授は昭和 4 2 年に
会委員長として、マスコミへの対応等に苦労された
東京大学医学部を卒業、直
経験なども披露され、ユーモアを交えた楽しい講演
ちに東京大学病理学教室に入
であった。
局、以来病理学の先端的研
性同一性障害の実際の治療については、外科的治
究に邁進して来られた。専門
療に入る前に、まず本人の生物学的、心理学的な情
の研究領域は悪性リンパ腫を
報を充分集めた上で診断が確定される。さらに第一
はじめとする血液病理学で、
段階の治療として精神療法、第二段階の治療として
常に学問の領域のトップラン
森 茂郎教授
ホルモン療法が行われ、それらが充分行われた上で手
ナーとして走り続けて来られ、現在、東大医科学研
術療法が行われる。その間、本人の性についての心理
究所副所長、そして平成13年 11月からは社団法人日
社会的な問題もふくめ、充分検討されるわけである。 本病理学会理事長の要職にもつかれた。
さらに術後は化粧法、発声法、態度などをふくめたア
多忙を極めておられるにもかかわらず、
「内灘で講
フターケアも必要となるということであった。
義を」との私達の依頼に気軽に応じられ、10 月24 日、
そして性同一性障害を通して見えてくることとし
本学において「悪性リンパ腫の診断に対する新しい
て、現代における性指向、性役割など性の多様性が
考え方」とのタイトルで大学院セミナーの講演をい
あり、またそれに関連して必ずしも性転換は望まな
ただいた。
いが、性の違和感に悩んでいるいわゆる性別違和症 〔セミナーの内容〕
候群と呼ばれる人たちが実際多く存在することがあ
セミナーで森教授は、悪性リンパ腫の診断を、従
げられる。彼らにもきちんとした精神療法的対応が
来の組織学及び免疫組織化学的手法に加えて、染色
必要であり、精神科医のみではなく関連各科の医師
体異常、遺伝子異常の有無とその部位のウイルス感
の協力、法的問題の解決、社会的認知が重要である
染の有無を加えて分類するという、
「診断に対する新
と山内先生は結論として強調された。
しい考え方」を示され、更にそれらを臨床に還元し
(神経精神医学 窪田孝記) て治療の向上に直結させるという方向性を示された。
学究肌で真摯、かつ、ユーモアに溢れ、飾らない
森教授の講義スタイルに、会場の全員が引き込まれ、
静寂の中、教授の声と暗闇に浮かぶスライドの光に
聴衆の神経が集中した。 大学院生、病理学教室等
の基礎医学教室のスタッフのみならず、血液免疫内
科を始めとする臨床医学のスタッフも多数来聴に訪
れ、講義室には熱気が溢れ、素晴らしいセミナーが
展開された。
森教授の、新しいけれども極めて分かり易い講義
66
大学院セミナー
内容に関し、基礎、臨床、更には大学院生からも熱 〔セミナーの内容〕
心な討論が相次ぎ、応える森教授にも学生のような
講演ではまず顔の研究を始めたきっかけとして、
純な熱意が表出し、あたかも、研究を開始したばか
精神医学の診断の場での表情の客観的な数値化の研
りの新進気鋭の学徒のような感さえ与えた。秋たけ
究があったことをあげられた。その研究を更に発展
なわの若干肌寒い夕ながら、そこでは熱気にあふれ
させ、顔の筋肉や関節の運動をワイヤーフレームモ
たとてもホットで有意義なセミナーの一刻が過ごさ
デルにより解析し、画像処理並びにコンピュータグ
れた。
(病理学Ⅰ 谷野幹夫記) ラフィックスの手法を駆使して顔・表情画像の動的
な分析と合成を行なったことを話された。講演は先
生のラップトップコンピュータを液晶プロジェクター
に繋げて行われ、モナリザに喜怒哀楽の表情をさせ
コンピュータで探る顔と表情の秘密
た合成画像や加齢変化の画像などを提示されただけ
でなく、1枚の写真から顔の表情や向きを変える、先
生の開発されたソフトウェアをその場で実際に動か
講 師 原島 博教授(東京大学大学院情報学環・
し、表情の変化や動作を動的に提示してくださった。
学際情報学府学際情報学)
また、性別や職業の平均顔、明治・大正・昭和・平
日 時 平成13年12月8日(土)13:10∼14:40
成の美人美男の平均顔、過去 50年間の日本人の顔の
場 所 病院4階C41講義室
変遷を外挿した50年後の未来顔などの合成画像も紹
担 当 解剖学Ⅰ 平井圭一教授
介され、
「顔学」の学際的な拡がりを感じさせられる
ものであった。その一方で、
「つくり笑顔」など意識
顔では約 3 0 個の表情筋の
的な表情は左右非対称性となり、無意識な情動によ
働きで繊細な表情が織りなさ
る自然な表情を合成するには左右対称性が重要にな
れており、生き生きと暮らす
るといった神経機能学につながる知見も紹介された。
人は豊かな表情をしており、
今回のセミナーは解剖学特別講義でもあったこと
年齢より若く感じられる人が
から多くの学部学生も参加した。先生の魅力的な語
多く、他人に対し好感を与
り口と動的なプレゼンテーションは聴衆を惹きつけ、
える。このように顔の表情は、
またそのユーモラスな話術により講演は終始なごや
感性的な人間同士のコミュ
かな雰囲気で行われた。 (解剖学1島田ひろき記)
ニケーションの基本であり、 原島 博教授
その研究は将来の情報システムや通信システムにお
けるヒューマンインターフェイスの設計に大きなイン
マイクロサージャリーの基礎と臨床
パクトを与えるものと予想される。
〔講師紹介〕
原島博教授(東京大学工学部電子情報工学科)は
総務省情報通信審議会委員、日本放送協会放送技術
審議会委員、日本バーチャルリアリティ学会会長等
もされており、日本のマルチメディア研究の第一人
者として人間主体のヒューマンコミュニケーション
技術の確立を目指しておられる。また、文理の区別
のない学問体系として世界的にも類を見ない「顔学」
なる新分野を開拓し日本顔学会の設立もされている。
今回、原島先生には解剖学と工学との融合によるヒ
ューマンインターフェイスの最先端をお話いただい
た。
講 師 光嶋 勲教授(岡山大学大学院医歯学
総合研究科 機能再生・再建科学専攻
形成再建外科学講座)
日 時 平成13年12月14日(金)18:30∼22:00
場 所 病院4階C42講義室
担 当 形成外科学 川上重彦教授
本セミナーでは、最初にマイクロサージャリー発
展の歴史的経過について、従来創始者として知られ
ている人より以前に、優れた先人たちが血管外科な
どの画期的な手術を行っていたことを数々の文献の
67
大学院セミナー
中から新たに発掘され述べら
れた。
本題からは離れるがダーマ
トームという皮膚採取用器具
を日本人が世界で最初に開発
していたという事実には驚か
されると同時に英文発表の重
要性も再認識させられた。
光嶋 勲教授
遊離皮弁の項では先生の
最近の世界的業績である穿通枝皮弁という、より末
梢の血管を使う皮弁の開発について述べられた。末
梢の血管を用いることで剥離が少なくて済み、患者
への負担が軽減されるのが最大の利点とされた。一
方、吻合する血管茎が細くなるために従来のマイク
ロサージャリー手技では対応が困難で、スーパーマ
イクロサージャリーというべき手技の習得が重要で、
吻合だけではなく血管剥離についても洗練された手
技を要することを力説された。併せてそれに使える
微細な手術器具も開発しておられた。これにより0.5
mm以下の血管吻合が容易に行えるという。先生が
開発された穿通枝皮弁には下腹壁動脈穿通枝皮弁、
殿筋穿通枝皮弁、外側大腿回旋動脈系穿通枝皮弁な
ど様々なものがあり、皮膚のみでなく骨や筋膜、筋
なども同時に移植することで、通常ならば再建が困
難な組織欠損も、それらを用いて一見いとも簡単に
修復されているのには一同驚かされた。
マイクロサージャリーの一端として、リンパ浮腫
の治療にも言及され、四肢末梢での極細のリンパ管
静脈吻合の手技はビデオクリップを用いてわかりや
すく述べられた。
以上、世界最先端の技術を駆使された手術手技と
その結果を拝聴できたことは極めて有意義であった。
(形成外科学石倉直敬記)
68
金沢医科大学創立30周年記念事業募金のお願い
本学は平成 14 年には創立 30 周年を迎えることになります。これを記念して平成 15 年秋を目標に次
の金沢医科大学創立30周年記念事業を計画いたしました。
1 病院新棟の建設
2 教育施設の整備充実
3 創立30周年記念行事(記念式典、講演会および30年史発行)
この病院新棟建設を主体とした創立 30 周年記念事業には 200 億円余りの費用が予測されており、
皆様のご協力をいただきたく下記のとおり募金を展開することになりました。絶大なご支援をお願
い申し上げます。
趣意書
金沢医科大学は、昭和 47 年に日本海側でただ一つの私立医科大学として金沢市に隣接する
内灘の地に開学しました。「良医を育てる、知識と技術を極める、社会に貢献する」という建
学の精神のもと、優れた教員を確保し、最先端の教育、研究、医療設備を充実させ、次世代
の医療の良き担い手の育成に努力してまいり、開学以来 29 年を経て約 2,400 名の卒業生を世
に送り出しました。
本学が、来る平成14年には創立30周年を迎えるのにあたって、21世紀の社会が求める医育、
医療に応えるために、教育・研究施設のさらなる整備充実が必要となっており、また年月の
経過に伴い、病院の建造物の老朽化も目立っております。さらに患者さんの療養環境の改善、
特定機能病院および教育病院として社会からの負託に応え得る診療機能と教育機能の改善が、
現場からの強い要望として出されるようになりました。
約 10 年にわたる検討を経て、この度、病院新棟の建設と教育施設の整備充実を、創立30 周
年記念事業として計画いたしました。病院新棟については、平成 12 年12 月に着工し、平成15
年の完成を予定しております。
これらの計画の実現には多額の資金を必要とします。本学では鋭意、自己資金の確保、経
営の合理化などの努力を行っておりますが、関係各位の格段のご支援を仰がねば、この計画
を達成することは困難であります。
つきましては、経済情勢も大変厳しき折から誠に恐縮に存じますが、医学、医療の果たす
べき役割、私学教育の育成という観点から、何卒これらの趣旨をご理解いただき、格別のご
協力を賜りたく心からお願い申し上げます。
学校法人 金沢医科大学
理事長 小田島 粛夫
学 長 竹 越
襄
募集要項
寄付金の性格により手続上、個人対象の場合と法人対象の場合に区別されております。
1. 金 額
特定公益増進法人寄付金(個人対象)
10億円
受配者指定寄付金(法人対象)
7億5000万円
2. 募集期間
平成13年7月1日∼平成15年6月30日
3. 申込方法
個人用、法人用、それぞれの寄付申込書の所定の欄に必要事項をご記入の上、教
育研究事業推進室へご提出願います。
4. 税制上の特典 特定公益増進法人寄付金制度と受配者指定寄付金制度により、税制面での優遇が
あります。
詳細については、金沢医科大学教育研究事業推進室へお問い合わせください。
TEL 076(286)2211
内線 2720∼2724
FAX 076(286)8214
69
創立30周年記念事業募金寄付者ご芳名(敬称略) No.1(平成14年1月8日まで、受付順)
〈個 人〉
山縣 重之(宮崎県)
立花 肇(北海道)
田中 弘吉(福岡県)
水沼 孝義(大分県)
岡田 逸夫(愛知県)
石垣 清(静岡県)
垣内 零(岐阜県)
内山 安弘(群馬県)
金原 太(大阪府)
石川 勲(石川県)
東 伸明(石川県)
市橋 七郎(福井県)
山田 義久(石川県)
小栗 絢子(富山県)
柿木 幸子(石川県)
米地 稔(宮城県)
行岡 尚彦(大阪府)
坂井 秀樹(高知県)
仲里 博彦(沖縄県)
篠崎 修(愛知県)
亀井 康二(富山県)
山口 淑美(新潟県)
水株 正紀(石川県)
萩原 麗子(大阪府)
矢野 哲也(愛媛県)
吉田 清三(石川県)
中川 真人(石川県)
島田 杉作(秋田県)
緒方 盛道(福岡県)
成田 晴紀(愛知県)
池田 龍介(石川県)
坂口 勝信(埼玉県)
片岡 敏(石川県)
〈法 人〉
カサマツ明希㈱ ㈲アカシア商会
㈱アクト
青木内科医院(青木哲郎)
フクダ電子㈱
渡邊醫院(渡邊一幹)
大渕 宏道(秋田県)
朝日 晋(滋賀県)
齋藤 紀雄(三重県)
大山 充徳(群馬県)
金子 正(兵庫県)
島 保幸(大阪府)
青木 隆一(福井県)
坂本 滋(石川県)
伊藤 透(石川県)
能村 武資(石川県)
金川 雄(石川県)
東田 紀彦(富山県)
宗像 良雄(和歌山県)
辻 外幸(富山県)
太田 則武(石川県)
中野 浩(愛知県)
山口 一(福島県)
播磨 一雄(山口県)
山内 英通(岐阜県)
東 貢(富山県)
相野田紀子(石川県)
三好 研造(千葉県)
緒方 博文(熊本県)
三秋 宏(石川県)
安藤 光彦(長野県)
小島 学(岐阜県)
柳瀬 卓也(石川県)
鎌田 修二(宮城県)
兼田 幸兒(山口県)
佐藤 雅典(福岡県)
笠井 恵子(石川県)
宮下 良(石川県)
森田 賢一(埼玉県)
千葉 博信(青森県)
相原 令子(福島県)
畑 嘉也(三重県)
上畠 泰(北海道)
鴨田 隆三(埼玉県)
奥村 芳子(北海道)
今福 章(広島県)
升谷 一宏(石川県)
小田島粛夫(石川県)
尾張 昊(石川県)
廣瀬源二郎(石川県)
石川 義麿(石川県)
茅原 保(新潟県)
鶴見 隆史(東京都)
山下 公一(石川県)
三矢 哲英(愛知県)
秋山 澄(石川県)
泉 純治(熊本県)
山村 剛康(東京都)
小坂井秀宣(岐阜県)
曽根 潮児(石川県)
藤井 公也(鹿児島県)
藤田 知三(福井県)
山田外喜子(埼玉県)
越後谷洋子(秋田県)
斉藤 一史(愛知県)
吉田 勝彦(石川県)
松田 久夫(石川県)
北村 昌子(滋賀県)
佐久間 勉(石川県)
野坂 佳子(石川県)
高橋 捷允(岐阜県)
市川 義男(高知県)
池田 正一(神奈川県)
篠田 廣(愛知県)
沼田 知明(青森県)
後藤 鹿島(群馬県)
諏訪 邦彦(群馬県)
池田 毅(秋田県)
松田 健志(石川県)
閨谷 薫(石川県)
竹越 襄(石川県)
中山 正喜(石川県)
廣瀬 優子(石川県)
藤井 博之(石川県)
永井 徹(愛知県)
熊井 則夫(宮城県)
円山 恵子(石川県)
北楯 誠一(山形県)
遠藤 義彦(大阪府)
大西 吉昭(京都府)
木越 俊和(石川県)
近藤 裕成(石川県)
廣村 次(石川県)
角田 弘一(石川県)
正島 和人(佐賀県)
石田 哲也(富山県)
山本 武人(富山県)
和田松太郎(京都府)
渡邊 一幹(京都府)
加藤 安宏(京都府)
佐野 貞彦(奈良県)
朝野 茂男(秋田県)
山下 治彦(愛媛県)
竹中 茂樹(岐阜県)
宮崎 巨(石川県)
北邦医薬㈱ ㈱井上誠昌堂
㈱フレット
河北郡衛生㈱
フクダ電子北陸販売㈱
セントラルメディカル㈱ 大牟田共立病院(緒方盛道)
石川クリニック(石川英明)
㈱田井屋
福田医院(福田繁)
村中医療器㈱
㈲八田物産
㈱クラヤ三星堂
渡邊医院(渡邊恒)
うすい会(確井静照)
金沢医科大学学術振興基金募金について
募集要項 学術振興基金の募金も従来どおり受け付けています。
1. 目標額:10億円
などをご連絡致します。
2. 寄付方法:寄付申込書等を本学教育研究事業推進室にご
3. 本学は、平成10年9月1日付で文部大臣より特定公益増進
請求ください。(TEL 076-286-2211 内線 2720 ∼ 2724、
法人であることの証明を受けております。
FAX 076-286-8214)折返し、寄付方法、税務に関すること
金沢医科大学学術振興基金への寄付者ご芳名(過去1年間の分、敬称略)
松田 芳郎(石川県)
医療法人こまくさ会(長野県)
㈱アドマック(石川県)
中川 平義(滋賀県)
山中 啓明(北海道)
佐藤 一巳(福島県)
由木 邦夫(栃木県)
櫻井 泉(富山県)
藤代健太郎(東京都)
中川 克宣(長野県)
花田 紘一(福岡県)
石澤 清(山形県)
中根 英晴(三重県)
高田 弘(石川県)
久村 正也(北海道)
升谷 一宏(石川県)
柴田 英徳(長崎県)
丸文通商㈱(石川県)
島田 杉作(秋田県)
医療法人社団 健松会(宮崎県)
医療法人玉水会(鹿児島県)永友 知澄(鹿児島県)
岩 修三(大阪府)
鈴木登喜子(宮城県)
成瀬 孟(千葉県)
森下 昭三(高知県)
大橋 冱子(富山県)
唐沢 善徳(長野県)
医療法人社団一水会安富診療所(兵庫県)
松田 輝夫(大阪府)
三治 秀哉(石川県)
小田 政行(岐阜県)
小林 慶子(兵庫県)
米地 稔(宮城県)
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金沢医科大学のホームページです
本学では、多くの分野でインターネットが利用されています。Webや Mail はもとより、文献
検索、地域の医療機関や全国の同窓生との連携、各種事業の公示に利用されているほか、学内
イントラネットも拡充されています。教育・研究・医療の分野で大いに活用されることを期
待します。
(広報委員会)
金沢医科大学専用個別郵便番号は
〒 920-0293
本学へ差し出される郵便物にこの番号が記載してあれば、住所記載がなくても配達されます。
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表紙写真
金沢医科大学報 第109号
新装金沢城
中谷 渉
NHK の「利家とまつ」とともに 2002 年が明け
た。厳しい戦国時代のサバイバルに立ち向かった
夫婦二人三脚の物語は、困難な時代を迎える今、
多くの教訓を与えてくれるだろう。
ひしやぐら
百年後の国宝にと復元されつつある菱櫓をはじ
めとする新装の金沢城もあらためて独特の姿を披
露しはじめている。
城さへも膨らんで見ゆ冬日和
山田弘子
(山田弘子氏:京極杞陽・高浜虚子・稲畑汀子に師事。俳誌
「円虹」を主宰。日本伝統俳句協会幹事、同関西支部副支部長)
平成14年1月15日発行
発行者 金沢医科大学理事長 小田島 粛 夫
編 集 金沢医科大学概要・学報編集委員会
山下公一 西川克三 廣瀬源二郎
平井圭一 川上重彦 伊川廣道
木越俊和 朝井悦夫 谷口 豊 相野田紀子 太田隆英 國府克己
坂井輝夫 木村晴夫 小平俊行
森 茂樹 佐野泰彦 北野 勝
中谷 渉 林 新弥 加富喜芳
中嶋秀夫 中川美枝子 金子聖司
奥田桃子
発行所 金沢医科大学出版局
〒920-0293 石川県河北郡内灘町大学1−1
TEL 0 7 6 ( 2 8 6 ) 2 2 1 1
印刷 能登印刷株式会社