神戸製鋼ラグビー部 コベルコ・スティーラーズ スポーツプレイヤー向け ロジカルシンキング・プログラム 導入事例紹介 1928年の創部以来、実に77年に及ぶ歴史を持つ神戸製 鋼ラグビー部、コベルコ・スティーラーズ。全国社会人大 会、日本選手権において、ともに8回の優勝を誇り、トッ プリーグでも毎年熱い戦いを繰り広げる強豪チーム。今 回はコベルコ・スティーラーズの増保輝則監督と、松原 裕司キャプテンに、選手の論理的思考能力の強化を目 的として実施した『ロジカルシンキング・プログラム∼ Einstein』の導入背景と、その成果について伺いました。 増保 輝則 監督 早稲田大学出身。昨年、27年ぶりに監 督制が復活した神戸製鋼で、監督に就 任。今年2年目の監督を務める。 日本代表キャップ47。 Terunori Masuho 導入内容 ■受講者数:神戸製鋼コベルコスティーラーズ選手 14名 ■受講日 :2005年8月27日 ■タイトル :「Einstein」 (ロジカルシンキング・プログラム) 情報量が増大するラグビーの世界。 情報を整理し判断するためには「ロジカルシンキング」の必要性を感じた 。 論理的な思考方法(ロジカルシンキング)を選手に浸透 させよう思った理由はどこにあるのでしょう? M.T(増保監督・以下同)━近年のスティーラーズは、ベテラ ンと若手の二極で構成された比較的若いチームとなってい ます。今はこれから新しいチームをつくっていく「生みの苦 しみ」の状態なのですが、うちの場合、ラグビーの技術向上 はもちろんですが、それに加えて試合の様々な局面できち んとコミュニケーションがとれるかどうか、個々のメンバーが 状況を分析しながら統一された意識を持って試合を進めら れるかどうか、といったようなことが大切だと感じていました。 そういったこともあり、本来は企業向けといわれていたこのロ ジカルシンキング研修が、今のうちのチームに必要なので はないかと思い導入しました。若い選手はこのプログラムを 通じて、新たな発想方法や論理的な思考技術を学ぶ良い きっかけになったと思います。またベテラン選手の中には、 今回学んだロジカルシンキングをこれまで無意識に実践し ている人もいましたが、あらためて再現性のある技術として 再認識してもらうことができたのではないかと思います。もち ろん、この研修はラグビーにおいてのみではなく、当然仕 事にも使える考え方なので、選手のセカンドキャリアのため にも有効だと思っています。 ラ グビーチームにおいて、「ロジカルシンキング」が なぜ重要だと思われたのですか? M.T━今、ラグビーのみならず、スポーツ全般を見たときに、 昔に比べて情報量が圧倒的に増えています。下手をする と、監督の私よりも選手の方が多くの情報に接している状 況なんですよ。かつて選手が情報を持ち得ていない頃は、 選手がとるべき選択肢は限られていたわけですが、たくさ んの情報を得ることができる状況においては、選手にはそ の情報を的確に処理し、体系的に選択・判断していく思考 スキルが必要となります。バラバラな情報のままでは混乱し てしまいますからね。もちろんチームとしても選手が混乱し ないよう基本となる戦略や戦術を準備しますが、ラグビーの 場合それらを最終判断するのはフィールド上にいる選手達 です。 フィールドにいる選手達が最適なプレーを選択できる状 態にしたいのですが、チームでルールや原則を作りそれに 縛られるのはウチのチームカラーに合いません。そうでは なく、個々人が情報と判断基準を持ち、それぞれの判断で プレーする。ボールを持っていない時間に、いかに情報を 処理・判断し実行するのかという瞬時の思考は、普段じっく りと考える機会を持たないとできるようにはなりません。その 点で、今回のロジカルシンキング研修は、選手にそのよう な考え方を身につけてもらうためには大変有効な機会だっ たと感じています。プレーする選手にとってだけではなく、 私自身にとっても、多種多様な情報を選手にわかりやすく 伝えるための手法を学ぶ良い機会なりました。 この研修導入後、チーム内でどのような変化がありましたか? M.T━私個人は今回学んだ考え方をよく使っていますよ (笑)。例えば、フィールドを「分類・ラベリングの技術」に よってゾーンに分解し、そのゾーンごとに「選択基準(MU ST/WANT)の技術」によって基準が明確に示されてい れば、ラインアウトの時のゾーン別のオプション選択なんか も有効に行えます。この研修で学んだ「思考の道具」が戦 術選択を行っていくためのツールになりつつありますね。 試合では臨機応変に対応しなければならないことも多い 研修を受講していただいた選手を代表して松原キャプテン にお話を伺いました。 神戸製鋼ラグビー部 コベルコ・スティーラーズ 松原 裕司 キャプテン 1979年9月5日生まれ。明治大学出身。 平均年齢28 歳のチー ムを引っ張る、 入部4年目の若きキャプテン。 全日本キャップ5。 研修を受けての感想は? M.Y(松原キャプテン ・以下同)━実は最初は面倒くさそう だと思っていたんです(笑)。でも実際に研修を受けてみる と、楽しくて時間がたつのが早かった。単に話を聞くだけで はない「グループワーク」という方法が新鮮で、最初は興味 が沸かなくても、ディスカッションやゲームに取り組むことで 自然にのめり込んでいきました。ウチのチームはチャレンジ 精神が強いから皆最終的には積極的に参加していたと思 います。また、研修のケーススタディが、身近な題材だった ので分かりやすかったですね。個人的には、ケーキ屋を題 材にした「売上減少の原因を究明せよ!」というケーススタ ディが面白かったです。原因究明は日常よくあることなの で、IS/IS NOTという「切り分けの技術」はとても有効だ と思います。 ロジカルシンキング研修で学んだ「思考の道具」を使って いますか? のですが、情報を整理し理解するといった事前準備をもっ て試合に臨むことで、想定外の出来事にパニックにならず に対応できるようになると思います。そういう意味では、ロジ カルシンキングは試合におけるリスクマネジメントという観 点でも必要だと思います。もちろんチームのマネジメントに おいても有効ですね。 とを考えていく上でも様々な選択肢を持てるようになったと 思います。研修で学んだ「思考の道具」の中でも、「切り分 けの技術」と「判断基準の技術」は実践でもよく使っていま す。例えば悪いキックに対して、「どの段階の何がどう悪 かったのか?」と、状況を要素に切り分けて考えるようにな りましたし、プレーの選択においても、とにかくぶつかるの ではなく、トライに向けてどのような判断をすべきか、といっ た発想を自然に持てるようになったと思います。 また、コミュニケーションの重要性について再認識できた ことも大きな収穫でした。例えば、ボールが相手に渡った 瞬間に誰かが声をかけ、それに反応する。見える人間が必 ず声を出す。それに対して、全員が意識を集中する。それ によって防げている失点が今シーズンは多いと感じていま す。ロジカルシンキングは個人のみで完結するのではなく、 コミュニケーションによってチームに生かされなければ意味 がありませんからね。キャプテンとしても、他人に対して強 制的にこうしろ!というアドバイスではなく、自分自身で考 えさせるというアドバイスが出来るようになりました。 ロジカルシンキングはこれからのスポーツに必要でしょう か? M.Y━これまではまだ根性論が強かったのですが、今後、 集まる人間のレベルと集まる情報の質・量が向上すれば、 チームにおいては論理的な発想がかならず必要になると 思いますよ。これからのスポーツには、情報の処理技術で あるロジカルシンキングと、それを相互に結び付けるコミュ ニケーションが重要となることでしょう。現状はまだ「ロジカ ルシンキング」という発想はあまり使われていないかもしれ ませんが、これから徐々に浸透してくるのではないかと感じ ています。 M.Y━何かの.壁に当たった時に、なんとなく考えるのでは なく、今回学んだ道具を使えばいいんだ、と思うだけでも 心に余裕が出来ましたね。自分たちがこれからチームのこ 〒104-0061 東京都中央区銀座3-7-3 銀座オーミビル4F Tel:03-3538-8623 fax:03-3538-8624 e-mail:[email protected] http://www.lmi.ne.jp/for_sports/
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