総説3回連載躁うつ病の生化学 (II)-神経ペプチドと神経内分泌学的研究

I
総説3回 連載躁うつ病の生化学 (II)-神経ペプチドと神経内分泌学
躁 うつ 病 の 成 因 研 究 の 中 で 従来 の ア ミ ン仮 説 に 比 べ,
よ リ新 しい 研 究 対 象 とな った 神経
ペ プ チ ドの病 者 に つ い て の 所 見 を 展 望 す る と, 定 型 うつ 病 で は 脳 脊 髄 液 中 の ソマ トス タチ
ン, バ ゾ プ レシ ンの 減 少 と, CRF,
オ ピオ イ ド活 性 の 増 加 とが 注 目 され る 。 ま た, 神 経 内
Database Center for Life Science Online Service
分 泌 学 的 指標 と して は, デ キ サ メサ ゾ ン抑 制 テ ス ト, TRHテ
ス トが 条 件 づ き で 有 用 な も
の と して 認 め られ る。 これ らの 所 見 は 視 床 下 部-下 垂 体-副 腎 系 とい う上 位 か ら下 位 へ の 機
能 系 の 異 常 の み で は 説 明 され な い もの を 含 ん で お リ, 今 後 これ らの ペ プ チ ドと情 動 との 関
係 に つ い て 臨 床 的 ・実 験 的 研 究 が 一 層 期 待 され る。
は じめ に
神 経 ペ プ チ ドは 中 枢 神 経 系 に お け る伝 達 物
チ が要 求 され る。 そ の結 果, 髄 液 を用 い て脳 内 の ペ プ チ
質 あ るい は伝 達 修 飾 物 質 と して 近 年 活 発 に研 究 され て き
ド動態 を 推察 し よ う とす る研 究 が 多 数 あ る。 髄 液 中 に 含
た のに 伴 い, 躁 うつ 病 の発 症機 序 や 治 療 薬 の 作用 機 序 に
ま れ る神経 ペ プ チ ドは 以下 の4つ の経 路 を介 して脳 か ら
関 係 して い る こ とを 示 唆す る 研 究 も しだ い に 増 え て き
髄 液 中 へ 拡 散 して く る と考 え られ る。
た 。 と く に動 物 脳 を用 い て各 種 神 経 ペ プ チ ドの 含 量や 受
容 体 の脳 内分 布 が 調 べ られ, こ れ に 対 す る 治 療 薬 の 急
性 ・慢 性 投 与 の影 響 が研 究 さ れ て い る。 しか し動 物 実 験
(1)
神 経 終 末部 な どの遊 出部 位か ら脳 実質 間 隙 を通
っ て髄 液 に 拡 散す る。
(2)
末 梢血 液 か ら血 液 ・脳 関 門透 過 性 が比 較 的 高 い
の研 究 と とも に, 病 者 につ い て の 神 経 ペ プ チ ドの 意 義 の
脳 部 位 (正 中 隆 起, 松 果体, 脳 弓 下器 官, 交 連 下 器 官,
研 究 が 不 可 欠 で あ り, そ の所 見 に 基 づ い た 動物 研 究 が 最
最 後 野 な ど) を 経 て 遊 出す る。
も重 要 で あ る と思 わ れ る。 本 稿 で は 広 般 な 動物 研 究 の結
果 に は ふ れ ず, も っ ぱ ら躁 うつ病 者 に つ い て の 神 経 ペ プ
(3)
門脈 血 液か ら第三 脳 室 周 囲 の有 尾 上 衣細 胞 を 経
て, 髄 液 へ 遊 出す る。
チ ドの 研 究 な らび に生 物 学 的 指 標 と して 注 目さ れ て い る
(4)
神 経 内 分 泌 学 的 所 見 につ い て概 説す る こ とにす る。
上 記 (1)
神 経 細胞 か ら髄 液 へ直 接 遊 出す る。
あ るい は (4)
の 経 路 で遊 出 した ペ プ チ ド
は脳 の ペ プ チ ド活 性状 態 を反 映す るで あ ろ う。 ま た, 髄
.
躁 うつ 病 者 の 神 経 ペ プ チ ド
液 に脳 内活 性物 質 の積 極 的 な輸 送 機 関 と して の 役割 を 仮
定 す るな らば, この とき も髄 液ペ プ チ ドの測 定 は た い へ
1.
ん意 味 の あ る もの で あ ろ う。
脳脊髄液 中のペプチ ド
躁 うつ 病 者 の脳 内 ペ プ チ ド活 性 を検 索 し よ う とす る場
合 に も, 直 接, 脳 を扱 う こ とが理 想 的 で は あ るが, 脳 組
織 の 入 手 は 困 難 で あ り, ま た 倫理 的 に も間 接的 ア プ ロー
Ryo
Takahashi,
Haruo
Shibuya,
A.
エ ン ドルフ ィ ン
臨床 的 に は うつ 病 者 は 頭 痛, 頸 部 痛, 関節 痛 や 不 快 感
な ど身 体 的 不 快 を 多 く訴 え るが,
東 京 医 科 歯 科 大 学 医 学 部 神 経 精 神 医 学 教 室 (〒113東
彼 らに 熱刺 激,
京 都 文 京 区 湯 島1-5-45)
[Department
of Neuropsychiatry, Faculty of Medicine, Tokyo Medical and Dental University, Yushima, Bunkyo-ku,
113, Japan]
Biochemistry of Manic-depressive Disorder (II)-Neuropeptides
and Neuroendocrinological Research
Key【ソマ
word トス タチ ン】 【バ ゾ プ レ シ ン】 【エ ン ドル フ ィ ン】 【生 物 学 的 指 標】
圧刺
Tokyo
躁
う つ 病 の 生 化 学 (II)
激, 電 気 刺 激 を 荷 して 痛 み 閾値 を 測 定 す る と, そ の閾 値
ナ プス 間 隙 でエ ン ドル フ ィ ン利 用 が亢 進 して い る こ とを
は高 く, 痛 み に耐 性 が あ る こ とが 知 られ て い る。 こ の一
示 唆 す る。 一 方, これ を 否 定 す る報 告 もい くつか あ る。
見 矛 盾 す る所 見 は, うつ 病 で は 身 体 感 覚 の情 緒 的 解 釈 が
Naber
混 乱 して い るた め に 認 知 ・感 覚 系 の ホ メオ ス タ シス が 閾
病, 分 裂 病 か らな る89例
値 上 昇 の方 向 へ 偏 位 す るた め と 推 察 され て い る^<1)>。
さら
ド活 性 を 測 定 して,
に, うつ 病 の 体 液 所 見 や 薬 理 学 的 研 究結 果 か ら脳 内 エ ン
が, うつ病, 躁 病 で は対 照 と差 が な く, 躁 病 相 と うつ 病
ドル フ ィン作 動 系 の異 常 が うつ 病 者 の痛 覚 閾値 を 上 げ る
相 を 経 時 的 に 観 察 で きた 少 数 例 で は, 躁 病 相 で有 意 に 高
と同 時 に, 精 神 症 状 を もひ き起 こ して い る と の考 え が あ
い オ ピオ イ ド活 性 を 認 め て い る 。 彼 らは 同 時 にRIAで
る。
髄 液 β-エン ドル フ ィン免 疫 活 性 を 測 定 した が,
うつ 病 者 の髄 液 内オ ピオ イ ド活 性 物 質 に つ い て 最 初 に
ら^<5)>は41例の対 照 者 と うつ 病, 躁 病, 分 裂 感 情
の精 神 病 者 髄 液 中 の オ ピオ イ
男 性 分 裂 病 で 有 意 に 低 下 して い た
群 の間 に 差 異 を 認 め ず,
各疾患
また β-エン ドル フ ィ ン免 疫 活
一 派^<2)>で
あ る。 彼 らは ヒ ト髄 液
性 とオ ピオ イ ド活 性 の間 に相 関関 係 もな か った とい う。
内 に オ ピオ イ ド受 容 体 ア ッセ イで 検 出 さ れ るモ ル ヒネ 様
同 様 に 服 薬 して い な い うつ 病 者 あ るい は 躁病 者 の 髄 液
物 質 が あ る こ と, さ らに, この 物 質 を ゲル ク ロマ トグ ラ
β-エン ドル フ ィ ン免 疫 活 性 に 変 化 が な く, 病 気 の 重 症 度
フ ィーを 用 い て β-エン ドル フ ィ ン と エ ンケ フ ァ リンの
と も関 係 が な い とい う報 告 も あ る^<6)>。
報 告 した の は Terenius
Database Center for Life Science Online Service
47
中 間 に溶 出す る分 画Iと エ ン ケ フ ァ リン部 分 に 溶 出す る
躁 うつ病 の血 液 中 エ ン ドル フ ィ ンにつ い て も さま ざま
分 画IIに 分 け る と, 躁 うつ 病 の 躁 病期 に分 画Iが 異 常 に
の 結 果 が 報 告 さ れ て い る。Emrich^<7)>は躁 うつ病 の 血 漿
増 加 してお り, 躁 症 状 が 軽 快す る と と もに分 画Iは 減 少
β-エン ドル フ ィン免 疫活 性 に 変 化 を 認 め な か っ た が,
す る と報 告 した 。 後 には 症 例 数 を ふ や し, 92例 の 大 う
Pickar
つ 病 の髄 液 分 画Iに つ い て 報 告 して い る^<3)>。
それに よる
の オ ピオ イ ド活 性 は 有 意 に減 少 した とい う。他 方, 内 因
と, 大 うつ 病 で は 単 極 型,
双極 型 と もに 健 常 者 よ り 高
ら^<8)>は
躁 か ら うつ 病 相 ヘ ス イ ッチ した とき血 液 中
性 うつ 病 者 で, β-エン ドル フ ィン, β-リポ トロ ピン,
く, と くに単 極 うつ 病 で は 一 段 と高 い 。 電 気 け い れ ん 療
ACTHが
増 加 して お り, 抗 うつ 薬 デ シプ ラ ミンの 治 療
法 を行 な った 患 者 では 分 画Iが 減 少 し, 正 常 レベ ル に 復
で 症 状 が 改 善す る と と も に, β-エン ドル フ ィ ンが 減 少す
した 。 髄 液 採 取 時 期 か ら分 画Iの 季 節 変 動 を み る と, 単
る と の報 告 もあ る^<9)>。Rish^<10>も
大 うつ 病, 分 裂感 情 障 害
ピー
の血 漿 β-エン ドル フ ィ ン免 疫 活 性 が 高 く, か つ フ ィ ゾ
クが あ り, 春 に は低 値 を 示 した 。 こ の よ うな 季 節 変 動 は
ス チ グ ミンに よ る β-エン ドル フ ィ ン増 加 も 両 疾 患 で 高
うつ 病 の発 症 や 自殺 頻 度 の季 節 変 動 と似 て お り, 興 味 あ
い こ とを 認 め,
極 型 で は8月 末 に, 双 極 型 で は10月
末 に 分 画Iの
うつ 病 で は コ リ ン作 動 系 に制 御 され て い
る所 見 であ る。 モ ル ヒネ 様 活 性 物 質分 画Iが い か な る物
る視 床 下部-下 垂 体 のACTH-エン
質 か, なが ら く関 心 を 集 め て い た が, 最 近HPLC,
RIA
動 状 態 に あ る と推 定 して い る。
な どを用 い て分 析 報 告 され た^<4)>。SephadexG-10で
分離
され る ヒ ト髄 液 中 の比 較 的 低分 子 モ ル ヒネ様 物 質 は プ ロ
エン ケ フ ァ リンA由 来 のMet-エ
Met-エン
ン ケ フ ァ リンーArg^6や
ケ フ ァ リンが 最 も 多 く, プ ロエ ンケ フ ァ リン
B由 来 のLeu-エ
ン ケ フ ァ リン-Arg^6や
ダイ ノル フ ィ ン
B.
CRF,
ACTH,
ドル フ ィン系 が 過 活
コルチゾール
内 因 性 うつ病 者 で 高 率 に血 液 コル チ ゾー ル値 が 高 く,
デ キ サ メサ ゾ ン抑 制 試 験 (DST)
で非 抑 制 を示 す こ とか
ら, 視 床下 部-下 垂 体-副 腎 (HPA)
系 の機 能 異 常 が推 定
され る。 しか しな が ら, 髄 液 のCRF,
ACTH,
コル チ ゾ
Aは そ の2割 あ ま りであ り, ダ イ ノ ル フ ィンA_<1-8>,ダ イ
ー ル を 測 定 した 報 告 は まだ 多 くは な い 。Nemeroff
ノル フ ィンBは 検 出 で き ない 。プ ロエ ンケ フ ァ リンA, B
は 大 うつ病, 分 裂 病, 老 年 痴 呆, 健 常 者 の髄 液CRF免
の両 者 か ら 生 成 し うるLeu-エン
疫 活 性 を調 べ た 結 果, 大 うつ 病 患 者 で の み増 加 を 認 め て
ケ フ ァ リンは わず か し
か 含 まれ ない 。 さ ら に, 1∼3Kエ
分 が プ ロエ ン ケ フ ァ リンBに,
ン ドル フ ィ ンは 大 部
5耳 以上 の エ ン ドル フ ィ
い る ので, CRFの
分 泌 過 多 が, 大 うつ 病 のHPA系
る。 うつ病 者 の 血 中ACTHや
究 か ら分 画Iは
泌 に 関 して は,
合 成CRFを
ドル フ ィンか ら構 成 され る と考 え られ るが, な お充 分 に
質 系 を 賦 活 した とき,
は明 らか で な い。 プ ロエ ンケ フ ァ リンA, Bの
ACTH分
構 造 とそ
れ らに 由来す るペ プチ ドは 図1に 示 した とお りで あ る。
うつ 病 者 で 髄 液 中 の エ ン ドル フ ィン が 多 い こ とは, シ
の過
活 動 の少 な く と もひ とつ の要 因 であ る可 能 性 が考 え られ
ン の大 部 分 は プ ロエ ン ケ フ ァ リンAに 由 来す る。 この 研
ダ イ ノル フ ィンAを 主 とす る複 数 の エン
ら^<11)>
コ ル チ ゾー ル の 過 剰 分
投 与 して 下 垂 体-副 腎皮
うつ 病 者 で は 健 常 者 に 比 較 して
泌 反応 が 低 下 して い る こ と^<12)>,
さ らに うつ 病
の病 相 期 と回 復 期 でACTH,
コル チ ゾー ル の 反 応 に差
異 が な い^<13)>と
の報 告 が あ る の で,
うつ 病 者 で は素 因 と し
1301
蛋 白 質
核 酸
酵 素
Vol.
33 No. 8
(1988)
Database Center for Life Science Online Service
48
図1.
ウシ下 垂 体 中後 葉 の プ ロオ ピオ メ ラ ノ コル チン, ウ シ副 腎 髄 質 の プ レプ ロ エン ケ フ ァ リンA, ブタ視床下部の
プ レプ ロエ ソケ フ ァ リ ンBの 構 造 とそ れ らに 由 来 す るペ プチ ド
て下 垂 体-副 腎 皮 質 系 よ りもっ と上 位 に 障害 が あ る とい
者 と比 較 し有 意 に 高 く, 血 液, 尿 の コル チ ゾー ル と相 関
え そ うで あ る。 髄 液 のACTHに
つ い て は 高 い とい う所
を み る こ と, 疾 患 の 重 症 度 と相 関 を 認 め る との 報 告 もあ
見 とそ れ を否 定 す る報 告 が あ り, な お 明 らか で は な い 。
る^<14)>。
これ が 単 に うつ病 の髄 液 コル チ ゾー ル レベ ル の 日
うつ 病 者 の 血 液 コル チ ゾー ル レベ ル が 高 い こ とは 意 見 の
内変 動 に 由来 す る もの か 検討 を 要す る点 で あ るが, うつ
一 致 がみ られ て い るが , 髄 液 中 のそ れ に つ い て は 差 が な
病 の視 床 下 部 機 能 障 害 を 示す 状 態 依 存 性 の 指 標 で あ る可
い とい う報 告 が 多 い よ うにみ え る。 しか し, うつ 病 者 の
能 性 はあ る。
髄 液 コル チ ゾー ル が健 常 者, 強 迫 症 患 者, 非 うつ 病 自殺
1302
躁
C.
の 生 化 学
TRH
(II)
49
認 め た が, オ ピオ イ ド活 性 とは 相 関 が なか っ た とい う。
サ イロ トロ ピ ン放 出 ホ ル モ ン (TRH)
は3個 の ア ミノ
Rubinow
ら^<19,20)>も
大 うつ病, 分 裂 病, 情緒 障 害, 健 常 者
酸か らな る, 最 初 に 同定 され た視 床下 部-下 垂 体 ホ ル モ
につ い て 検討 し, 大 うつ 病 で のみ 低 く, しか も病 相期 の
ンで あ り, 下 垂 体 前葉 か らの ,TSHお
よび プ ロ ラ クチ ン
そ れ が 回 復期 よ り も有 意 に 低 い こ とを認 め た。 単極 うつ
の分 泌 を 刺激 す る。脳 に も広 く分 布 し, 神 経伝 達 物 質 あ
病 と双極 うつ 病 と もに 低 値 を 示 し, 両 者 の 間 に 差 が なか
るい は 伝 達 修 飾 物 質 と して機 能 して い る と考 え られ る。
った とい う。 うつ 病 者, 分 裂 病 者 のDSTと
甲状 腺 障 害 が しば しぼ精 神 症 状 を 伴 い, と くに機 能 低 下
チ ンの 関 係 を 調 べ る と, ソマ トス タ チン 値 はDST非
症 が うつ 病 様 の症 状 を 示 す こ とや, TSHやL-ト
制 者 で 低 く, か つDST後
リヨー
ソマ トス タ
抑
の コル チ ゾー ル 最 大 濃 度 と
ドサ イ ロ ニン が 三 環 系 抗 うつ 薬 の抗 うつ 効 果 を 促 進 す る
負 の 相 関 が あ った 。 以 上 の 所 見 は, ソマ トス タチ ン が
こ と, うつ 病 者 にTRHを
HPA系
投 与す る と短 期 間 であ るが 改
善 す る こ と, 多 く の患 者 でTRH投
に 抑 制 的 に作 用 して い て, うつ 病 で のHPA系
の脱 抑 制 に関 与 して い る こ とを示 唆す る。
与 に対 す るTSH反
応 が低 下 して い る な ど, うつ 病 では 甲状 腺 機 能 低 下 が あ
E.
り, 甲状 腺 ホ ル モ ン の増 加 が うつ 病 の回 復 に関 与 す る と
下 垂 体 後 葉 ホ ル モ ン と して の バ ゾ プ レシ ン, オ キ シ ト
バ ゾ プ レシ ン
ら^<15)>は15例
の 内 因性 うつ 病
シ ン は視 床 下 部 室旁 核, 視 索 上 核 で 作 られ, 水, 電 解 質
測 定 して有 意 に 高 い こ とを 認 め た 。そ
平 衡 の保 持 がお も な生 理 作 用 で あ る。 髄 液 バ ゾプ レシ ン
して, 電 気 け いれ ん療 法 に よ り症 状 の 改善 した あ とに も
の 役割 は解 明 され て い な い が, 血 漿 バ ゾプ レシ ン量 と平
TRHは
行 しな い こ とか ら, 脳 か ら髄 液 へ 直 接 分 泌 され た も の で
の 考 え が あ る。Kirkegaard
者 の髄 液TRHを
Database Center for Life Science Online Service
う つ病
減 少 せ ず, TRH負
荷 時 のTSH反
応 性 に も うつ
病 の再 発 に も 関連 が なか っ た とい う。 しか し な が ら,
あ り, 脳 のバ ゾプ レ シ ン ニ ュ ー ロン 活 動 を反 映 して い る
Rafaelsen
と 推 察 さ れ る^<21)。
髄 液バ ゾプ レシ ン量 に 日内変 動 が あ
ら^<16)>は
彼 らの髄 液TRH所
見 を確 認 で きず,
内因 性 うつ 病, 非 内 因 性 うつ 病, 分 裂 病, 対 照 の 間 で差
り, そ れ が うつ 病 の 気 分 変 動 に 類 似 す る こ と, 記 憶 学 習
異 が ない と報 告 して い る。 内 因 性 うつ 病 で はTRHの
産
作 用 に かか わ る こ と, 電 気 け いれ ん療 法 がバ ゾプ レ シン
生 が亢 進 して い るあ るい は分 解 が 低 下 して い る可 能 性 は
の 遊 出 を うな がす こ とな どか ら, うつ 病 で はバ ゾ プ レ シ
あ るが,
ン機 能 が 低 下 し, 躁 病 では亢 進 して い る との 仮 説 が あ
うつ 病 の 成 因 にTRHが
直 接 関与 して い る こ と
る。Gold ら^<22)>に
よ る と, 躁 うつ 病 患 者 の うつ 病 相 で は 髄
を示 す 証 拠 は 乏 しい のが 現 状 であ る。
D.
液 バ ゾ プ レシ ン値 が 躁 病 相 のそ れ に比 較 して, ま た 健 常
ソ マ トス タチ ン
ソマ トス タチ ンは14個
の ア ミノ酸 か らな る成 長 ホ ル
者 のそ れ と比 較 して 有 意 に低 い とい う。 ま た,
うつ 病 期
モン 分 泌 を抑 制 す る視 床 下 部 ホル モ ン であ るが, 脳 内 に
に は高 張 食 塩 水 に 対 す る血 漿バ ゾプ レ シ ンの 反 応 性 も低
広 く分 布 し, と く に視 床 下 部 脳 室 周 囲 か ら正 中 隆 起, 海
下 して い る。Gjerris ら^<23)>も72例
に つ いて 測 定 して, 内
馬, 扁 桃, 内側 前 視 覚 領 域, 大 脳 皮 質, 線 条 体, 嗅 索 な
因 性 うつ 病, 非 内 因性 うつ 病 のバ ゾプ レシ ンは 健 常 者 よ
どに高 濃 度 に存 在 す る。 ソマ トス タチン あ る いは そ の類
り有 意 に低 い こ とをみ て い る。 しか し, Gold
似 物 を動 物 に投 与 す る と, 運 動, 睡 眠, 摂 食 行 動, 痛 覚
な り, 躁 病 で有 意 な増 加 を認 め な か った 。 経 時 的 に測 定
ら とは異
閾値 な どに大 き な影 響 を与 え る事 実 は, うつ 病 にみ られ
した とき, うつ 状 態 か ら回復 後の バ ゾ プ レシ ン は増 加 傾
る身体 行 動 上 の変 化 に ソマ トス タ チ ン系 が関 与 して い る
向 は示 す も の の有 意 差 は検 出 で き な か った 。 ま た横 断 的
可 能 性 が あ る。
に調 べ て も, うつ 病 の 臨 床的 重症 度 と の相 関 は認 め なか
髄 液 中 の ソマ トス タ チ ン は脳 脊 髄 の損 傷 や 髄 膜 炎 で増
っ た とい う。 内 因性 うつ 病 と非 内 因 性 うつ 病 の間 で差 異
加 し, 老 年痴 呆 や ハ ンチン トン病 で減 少す るこ とが知 ら
が な い こ とも, 髄 液バ ゾプ レ シン の低 下 が うつ 病 に伴 う
れ て い るが, うつ 病 で も低 い こ とをす べ て の報 告 が共 通
二 次 的変 化 で あ る こ とを 示す よ うに 思 え る。
して 示 して い る^<17∼20)>。Agrenら^<18)>は85例
の種 々 の病 相
F. VIP
期 に あ る大 うつ 病 者 の髄 液 ソマ トス タ チ ンを測 定 した結
vasoactive intestinal polypeptide (VIP)
果, ソマ トス タ チ ンの低 値 は うつ 病 の 臨床 評 価 と強 い相
は28個
のア
ミノ酸 か らな り, 強 い 血 管 拡 張 作 用 を有 す る。 中枢 神経
関 を 示 し, 悲 哀, 倦 怠感, 外 界 に対 す る離 人 感, 不 眠 な
系 で は 大 脳 皮 質, 視 床 下 部, 海 馬 に多 く含 まれ,
どを 特 徴 とす る うつ 病 の状 態 依 存 性 の生 物 学 的 指 標 に な
ア セ チ ル コ リ ン との 関 連 か らそ の生 理 的 役 割 の 解明 が注
る と報 告 して い る。 ま た, 髄 液 ソマ トス タ チン は血 小板
目さ れ て い るペ プ チ ドで あ る。 脳 室 内髄 液のVIPは
頭
MAO活
部 外 傷, て ん か ん 患 者 で 低 い。 腰 部 髄 液 中 のVIPは
動
性 と負 の 相 関 を, 髄 液TSH濃
度 と正 の相 関を
と くに
1303
〓〓
50
蛋 白 質
酵 素
Vol.
脈 瘤 患 者 で著 し く減 少 して い る。 精 神 疾 患 患 者 に つ い て
2.
は91例
ヒ ト死 後 脳 の生 化 学 的 分 析 に際 しては, 死 因, 脳 の保
の髄 液VIPを
核 酸
測 定 して 内 因 性 うつ 病, 躁 病,
(1988)
うつ 病 者 死 後 脳 の ペプ チ ド
分 裂 病 で 対照 と差 が な か った が, 非 内因 性 うつ 病 で のみ
存 状 況, 脳 の分 割 手 技, 治 療 薬 な ど種 々 の要 因 が所 見 に
減 少 して い た 。 この 非 内 因 性 うつ 病 は 午 後 に 症 状 が 増 悪
影 響 を 与 え, 問 題 点 は 多 い 。 しか しな が ら, 臨 床 症 状 を
す る 日内 変動 を 認 め, 身体 異 和 感 を 訴 え, 病 相 期 は 明 確
呈 した 患 者 脳 の標 的 とす る微 小 部 位 を 直 接 検 索 で き る こ
で な く遷 延 して い るな ど の特 徴 が あ った とい う^<24)>。
そ し
とは, 他 の手 段 に 代 え られ な い研 究 方 法 で あ る。前 述 し
て,
た よ うに, 髄 液 ペ プ チ ド所 見 が 混沌 と して い るこ とか ら
うつ 病 者 につ い て 症 状 消 失 後 の再 検 査 で もVIP値
に 大 き な変 化 が な く, 抗 うつ 薬や 電 気 け いれん療 法 の影
も, 躁 うつ 病 者 死 後 脳 の 検 索 は 興 味 あ る と ころ で あ る
響 を受 け な い 。以 上 の所 見 は一 群 の うつ 病 で は髄 液VIP
が, 報 告 は き わ め て 少 な い 。Kleiman
の低 値 が病 相 期 に 依 存 しな い生 物 学 的 指 標 で あ る可 能 性
を 示 して い るが, 今後 さ らに 検 討 が 必 要 で あ る。
G.
質
(SP)
は と くに痛 み を伝 え る一 次 知 覚
側 坐 核, 被 殻, 淡 蒼 球, 視 床 下部 で は変 化 が なか っ
CCKに
て い る 。脳 で はGABA線
VIP,
し, 黒 質-線 条 体 ドー パ ミンニ ュー ロ ンに 促 進 的 に 働 い
て い る。 ま た, 手 綱-脚 間核 路 に も含 ま れ て い る とい う。
髄 液 中 のSPに
つ い て は脊 髄 後 根 に高 濃 度 にあ る こ とや
脊 椎 上 位 と 下 位 でSPの
濃 度 勾 配 が な い こ とか ら, 大
有 意 に増 加 して い るこ とを認 め た。 前 頭 葉 皮
た 。 そ の他, Met-エ
ニ ュ ー ロ ンの神 経 終 末 に局 在 し, 伝 達 物 質 と して機 能 し
維 を 含 む線 条 体-黒 質 路 に存 在
ら^<29)>は11例
の感
情 障害 お よび 非特 異 的精 神病 者 死後 脳 につ い て調 べ, 尾
状 核SPが
サ ブ ス タ ンスP
サ ブ ス タ ンスP
Database Center for Life Science Online Service
33 No. 8
ン ケ フ ァ リン, ニ ュ ー ロテ ン シ ン,
つ い て も 測 定 したが, 変 化 を 認 め て い な い 。
CCK,
TRH,
ニ ュー ロテ ン シ ンに つ い て は, そ の
他 の測 定 報 告 で も うつ 病 で変 化 が なか っ た とい う。
以 上 述 べ た 躁 うつ 病 者 の髄 液 内 の各 種 ペ プチ ド濃 度 の
様 相 を ま とめ る と表1の
よ うに な る。 す なわ ち, 大 うつ
病 あ る い は定 型 うつ 病 で は ソマ トス タ チ ン, バ ゾプ レシ
部 分 が 脊 髄 に 由来 す る も の と 考 え られ て い る。Rimon
ンが 減 少 してお り, か つ これ らが 状 態 依 存 性 であ る こ と
ら^<25)>は
大 うつ 病, 分 裂病, 健 常 者 の 髄 液SP免
が 一 貫 して 認 め られ て い る。 そ して,
測 定 して分 裂 病 で は健 常 者 の約2倍,
疫活性 を
うつ 病 で は約4倍
に 増 加 して い る こ とを 認 め た。 こ のSP免
疫活性 を 電
気 泳 動 法 で分 析 す る と, SP_<1-11>では な く, SP_<5-11>や
CRFの
増 加 や ソマ トス タチン の減 少 が 視 床 下 部 ・下 垂
体 ・副 腎 皮 質 系 の機 能亢 進 に促 進 や 脱 抑 制 と して 関 与 し
て い る可 能 性 が推 測 され る。 注 目す べ き所 見 と して,
SP_<3-11>のC末 端 断 片 であ っ た とい う。Berrettini ら^<26)>は つ 病 で オ ピオ イ ド活 性 (分画1)
未 治 療 の うつ 病, 躁 病 患 者 のSPを
測 定 した が, 健 常 者
と の間 に差 を 検 出 で き なか っ た。 彼 らは髄 液 中 のSP免
うつ 病 者 の 髄 液
う
や サ ブス タ ンスPの 増
加 が 報 告 され た が, 死 後 脳 の所 見 とあ い ま って 今 後 の研
究 に値 す る所 見 であ ろ う。
疫 活 性 は凍 結 ・融 解 を く り返 す たび に増 加 す る こ とに気
づ き, Rimon
ら の所 見 も 人 工 的 な 産 物 に よ る可 能 性 が
あ ると して,
うつ 病 者 髄 液 中 のSP増
加 を 否 定 して い
表1. 髄
液 の ペ プ チ ド
る。
H.
コ レシ ス トキニ ン
コセ シス トキ ニ ン (CCK)
側 坐 核, 尾 状 核,
CCKニ
は 大 脳 皮 質 に 最 も 多 く,
視 床 下 部 に も 豊富 に 存 在 し, 一 部 の
ュ ー ロン に は ドー パ ミンが 共 存 す る こ とか ら,
分 裂 病 の成 因 論 の方 面 か ら関 心 を 集 め て い るペ プチ ドで
あ る。51例
の健 常 者 を対 照 に して 単 極 うつ 病,
双極 う
つ 病, 未 治 療分 裂 病, 治 療 した 分 裂 病, パ ーキン ソン病
につ い て髄 液CCK免
疫 活 性 を測 定 して,層双 極 うつ 病 と
未 治 療 分 裂 病 で のみ 有 意 な 減 少 を 認 め た とい う報 告 が あ
る^<27)>。
しか し, そ の他 の内 因性 うっ 病, 非 内 因 性 うつ病,
躁 病 を調 べ た報 告 はCCKの
い な い^<16,17,24,28)>。
1304
増 加 あ るい は減 少 を認 め て
: 有 意 な 増 加 あ るい は 減 少, 〓
:未測定。
: 有 意 な 変 化 を 認 め な い,【triple bond】
躁 う つ 病 の 生 化 学 (II)
%で
II.
神経内分泌学的研究
51
過 剰 反 応 を 認 め, 双極 うつ病 で は15%に
認 め るに
す ぎな い とい う。 彼 らは プ ロ ラ クチン の過 剰 反 応 は原 発
性 定型 うつ 病 単極 型 を 双 極 型 か ら区 別 す る特 徴 で あ り,
躁 うつ 病 の生 物 学 的 指 標 を 探 し出 し, そ こか ら成 因 に
近 づ こ う とす る試 み や, 指 標 を 用 い て 亜 型 分 類 や 有 効 な
治 療 法 の選 択, さ らに 予 後 判 定 の助 け に し よ う とす る試
る。
成 長 ホ ルモン (GH)
の 分 泌 は ソ マ トス タ チ ンに抑 制
み は さか ん であ り, 多 く のす ぐれ た 総 説 が あ る^<30∼34)>。
下
的 に 調 節 され て お り, α-ア ドレナ リン遮 断 薬, β-ア ドレ
垂 体 ホ ル モ ン の分 泌 は視 床 下 部 の支 配 下 に あ る こ と か
ナ リン作 動 薬,
ら, 内分 泌 反 応 の異 常 は うつ 病 に お け る視 床下 部 お よび
分 泌 を 抑 制す る。 促進 因 子 は ま だ 化 学 的 に 同定 され て い
そ れ よ り上 位 の機 能 異 常 を 推 量す る手 がか りに な る。
な い成 長 ホ ル モ ン放 出 因 子 で あ るが, 感 情 的 ・身 体 的 興
内 因性 うつ 病 にお け るHPA系
Database Center for Life Science Online Service
そ の 背 景 に 脳 内 セ ロ トニ ン活 性 の亢 進 が あ る と考 え て い
の主 要 な 異常 所 見 と し
奮 もGH分
ドーパ ミンや セ ロ トニ ン拮 抗 薬 の投 与 も
泌 を 促 進す る。うつ 病 者 で は イ ン ス リ ン低 血
て, (1)血 漿 コル チ ゾール値 の 中 等 度上 昇, (2) コル チ ゾー
糖 に対 す るGH:分
ル分 泌 活 動 の 日 内 リズ ム の異 常, (3) DSTに
い る。 こ の 差 異 が脳 内 ノル ア ド レナ リン系 の異 常 に求 め
お け る コル
泌 反 応 が 健 常 者 に 比 較 して 低 下 して
チ ゾー ル の抑 制 不 全 が あ げ られ る^<31)>。Carroll
ら^<35)>は215
られ た が,
例 の 内因 性 うつ 病 を 含 む318例
ア ドレナ リン 作 動 薬 ク ロ ニ ジ ンに 対 す るGH分
泌反応
も低下 して い る こ とが 報 告 され 七 い る。TRH負
荷時 に
の精 神 障 害 者 にDSTを
行 な い, 内因 性 うつ 病 診 断 に 感 度43%,
診 断 確 実 性96%と
特 異性96%,
い う値 を 得 て, こ の テ ス トが 内 因性
それ を 裏 書 きす る よ うに,
通 常 は 生 じな い血 漿GH値
うつ 病 者 で は α-
の上 昇 が 約 半 数 の うつ 病 者
うつ 病 診 断 に有 用 で あ る こ とを 述 べ て い る。 しか し, そ
で 起 こ り,
の後 の多 く の追 試 か ら, DSTは
とが報 告 さ れ 注 目さ れ た が, 個 体 差 が 大 き く, うつ 病 者
うつ 病 の 内 因性, 非 内
因 性 の鑑捌 には 有 効 で あ るが, 摂 食障 害, 痴 呆, 精 神分
裂 病 そ の他 で もDST異
うつ 病 回 復 後 はGH上
昇 反 応 が な くな る こ
に 共通 す る所 見 に は 至 っ て い な い 。
常 が み られ, ス ク リー ニ ン グ検
査 と して あ ま り有 効 で は な い とさ れ て い る。
TRH負
荷 時 のTSH反
応 はDSTと
並 ん で よ く検 討
され てい る。 一 般 に は500μgのTRHを
の 血 中TSH値
静 注 後3時 間
を 測 定 して, 基 礎値 か らのTSHの
が5.0μU/ml以
お わ りに
躁 うつ 病 者 の脳 脊 髄 液 に つ いて 神 経 ペ プ チ
ドを測 定 した研 究 は比 較 的 新 しい も の で, ほ とん ど1980
増加
年 代 に な っ てか らで あ る が, そ れ だ け に, 対 象 患 者 群 の
下 の も の を反 応 低 下 とす る。 一 次 性 う
診 断 の信 頼 性 は高 い とい え る。 しか し, 多 くの種 類 のペ
つ 病 の1/4は 反応 低 下 を示 す が, 高 率 に過 大 反 応 や 遅 延
プ チ ドが測 定 され て い る に もか か わ らず, 首 尾 一 貫 した
反 応 を 認 め, そ れ ら異 常 反 応 も考 慮 に 入れ る とTRH試
所 見 は多 くは な い。 そ の 中 で ソマ トス タ チ ン, バ ソプ レ
験 の メ ラ ン コ リー を伴 う うつ 病 の診 断 に関 す る感 度, 特
シ ン の うつ 病 にお け る減 少 は注 目に値 し, そ の機 序 の解
異 性, 診 断 確 実 性 はDSTを
凌 駕 す る と い う^<30)>。TRH
明 が今 後 さ らに期 待 され る。 内分 泌 学 的 マ ー カ ー と して
DSTやTRH負
試 験 は うつ 病 の 予 後 判 定 に も 有 効 であ る。Kirkegaard
荷 テ ス トが 広 く検 討 され て きた が, こ
ら^<36)>は35例の 内 因性 うつ 病 につ い て電 気 け い れ ん療 法
の臨 床 的 価 値 は条 件 づ き な が らも 大 き い 。 内 因 性 うつ 病
で 寛 解 した あ とに200μgTRHを
の診 断, 治 療 の選 択, 予 後 判 定 に お け るDSTの
を 調 べ た 。TSH増
例 は全 部6カ
加 が2.0μU/ml以
負 荷 してTSH反
応
下 の低 反 応 群19
月 以 内 に再 発 し, 2,0μU/ml以
上 の群 で は
16例 中3例 が 再 発 した だ け で あ った とい う。TRH試
験
意義 は
とく に幅 広 く検 証 され て い る。 こ れ らにつ い て は本 稿 で
は 省 いた が, 躁 うつ 病 の生 化 学 に とっ て もDST非
やTRHテ
抑制
ス トな ど の マ ー カ ー の発 生 機 序 が ア ミンや 神
は うつ 病 寛 解後 も異 常 を示 す も のが 多 く, 疾 患 特 異 的 な
経 ペ プ チ ドの変 動 と関 連 して今 後 も研 究 され る こ とが 有
指 標 に な るか も しれ な い。
用 であ ろ う。
下 垂 体 前 葉 か らの プ ロラ クチ ン分 泌 は ドーパ ミン な ど
の抑 制 因 子 とセ ロ トニン, TRHな
ど の促 進 因 子 に よ り
文
献
調 節 され て い る。 躁 うつ 病 者 の血 漿 プ ロラ クチ ン基 礎 値
に 関 して は上 昇, 低 下, 不 変 の報 告 が あ り, 一 定 して い
な い。 しか しなが ら吉 田 ら^<34)>に
よる と, TRH負
荷時 の
プ ロ ラ ク チン 分 泌 反 応 は 原発 性 定型 うつ 病 単 極 型 の55
1)
2)
Davis, G.
Jr.: Am.
Terenius,
Widerlov,
C., Buchsbaum, M. S., Bunney, W. E.
J. Psychiat., 136, 1148-1151 (1979)
L., Wahlstrom, A., Lindstrom, L.,
E.: Neurosci.
Lett.,
3, 157-162
1305
52
蛋 白 質
核 酸
酵 素
(1976)
Agren, H., Terenius, L.: Psychiatry Research,
10, 303-311 (1983)
4) Nyberg, F., Nylander, I., Terenius, L.: Brain
Res., 371, 278-286 (1986)
5) Naber, D. N., Pickar, D., Post, R. M., van Ka
mmen,D. P., Waters, R. N., Ballenger, J. C.,
Goodwin, F. K., Bunney, W. E. Jr.: Am. J.
Psychiatry, 138, 1457-1462 (1981)
6) Gerner, R. H., Sharp, B.: Brain Res., 237, 244247 (1982)
7) Emrich, H. E.: in Typical and Atypical Anti
depressants,Vol. 1 : Clinical Practice (eds.
Costa, E., Racagni, G.), pp. 77-84, Raven
Press, New York (1981)
8) Pickar, D., Cutler, N. R., Naber, D., Post, R. M.,
Pert, C. B., Bunney, W. E. Jr.: Lancet, 1,937
(1980)
9) Genazzani, A. R., Petraglia, F., Facchinetti, F.,
Monittola, C., Scarone, S., Brambilla, F.: Neu
ropsychobiology,12, 78-85 (1984)
10) Risch, S. C.: Biological Psychiatry, 17, 10711079 (1982)
11) Nemeroff, C. B., Widerlov, E., Bissette, G., Wal
leus,H., Karlsson, I., Eklund, K., Kilts, C. D.,
Loosen, P. T., Vale, W.: Science, 226, 13421344 (1984)
12) Gold, P. W., Chrouses, G., Kellner, C., Post, R.,
Roy, A., Augerinos, P., Schulte, H., Oldfield,
E., Loriaux, L.: Am. J. Psychiatry, 141, 619627 (1984)
13) Holsboer, F., Gerken, A., Stalla, G. K., Muller,O
. A.: Biological Psychiatry, 20, 276-286
(1985)
14) Gerner, R. H., Wilkins, J. N.: Am. J. Psychia
try,140, 92-94 (1983)
15) Kirkegaard, C., Faber, J., Hummer, L., Rogow
ski,P.: Psychoneuroendocrinology, 4, 227-235
(1979)
16) Rafaelsen, O. J., Gjerris, A.: Prog. Neuro
- Psychopharmacol. Biol. Psychiat., 9, 533-538
(1985)
17) Gerner, R. H., Yamada, T.: Brain Res., 238,
298-302 (1982)
18) Agren, H., Lindqvist, G.: Psychoneuroendocri
nology,9, 233-248 (1984)
19) Rubinow, D. R., Gold, P. W., Post, R. M., Bal
lenger,J. C., Cowdry, R., Ballinger, J., Reich
lim,S.: Arch. Gen. Psychiatry, 40, 409-412
(1983)
20) Rubinow, D. R.: Biological Psychiatry, 21,
341-365 (1986)
21) Doris, P. A.: Neuroendocrinology, 38, 75-85
(1984)
22) Gold, P. W., Goodwin, F. K., Ballenger, J. C.,
Weingartner, H., Robertson, G. L., Post, R.
M.: in. Hormones and the Brain (eds. de
Vol. 33
Database Center for Life Science Online Service
3)
1306
23)
24)
25)
26)
27)
28)
29)
No. 8
(1988)
Wied, D., van Keep, P. A.), pp. 241-252, Uni
versityPark
Press, Baltimore (1980)
Gjerris, A., Hammer, M., Vendsborg, P., Chris
tensen,N.J., Rafaelsen, O.
J.: Brit. J. Psy
chiatry,147, 696-701(1985)
Gjerris,A., Rafaelsen, O.
J., Vendsborg,
P.,
Fahrenkrug,J., Rehfeld,J. F.: J. Affective
Disorders,7, 325-337(1984)
Rimon,R., LeGrevos,
P., Nyberg,F., Heikkila,
L., Salmela,L., Terenius,L.: BiologicalPsy
chiatry,19, 509-516(1984)
Berrettini,W.H., Rubinow,D.R., Nurnber
ger,J.I. Jr., Simmons-Ailing,
S., Post,R.M.,
Gershon,E. S.: BiologicalPsychiatry, 20,
965-970(1985)
Verbanck,
P. M.P., Lotstra,F., Gilles,C., Len
kowski,P., Mendlewicz,
J., Vanderhaeghen,
J. J.: Life Sci., 34, 67-72(1984)
Post,R.M., Gold,P., Rubinow,D.R., Ballen
ger,J.C., Bunney,W.E. Jr., Goodwin,
F. K.:
Life Sci.,31, 1-15 (1982)
Kleinman,J.E., Hong,J., Iadarola,M., Govo
ni,S., Gillin,C.J.: Prog. Neuro-Psychophar
macol.Biol. Psychiat.,9, 91-95(1985)
30)
野 村 純 一 : 神 経 精 神 薬 理,
31)
花 田 耕 一 ・高 橋 三 郎 : 精 神 医 学,
9,
173-200
(1987)
26,
19-26
(1984)
32)
高 橋 三 郎 : 精 神 医 学,
22,
1295-1305
33)
星 野 仁 彦 : 精 神 医 学,
29,
564-577
34)
吉 田 秀 夫 ・高 橋
良 : 精 神 医 学,
(1980)
(1987)
26,
27-37
(1984)
35)
36)
Carroll, B. I., Feinberg, M., Greden, J. F., Ta
rika,J., Albala, A. A., Haskett, R. F., James,
N. M., Kronfol, Z., Lor, N., Steiner, M., deVig
ne,J. P., Young, E.: Arch. Gen. Psychiatry,
38, 15-22 (1981)
Kirkegaard, C., Bjdrum, N.: Lancet, Jan. 19,
152 (1980)