データセンター及びデータセンターを活用した ビジネスの将来

産業経済研究所紀要 第 24 号 2 0 1 4 年 3 月
論 文
データセンター及びデータセンターを活用した
ビジネスの将来動向に関する調査・研究
Study on Datacenter Business and Datacenter Technology
小 川 裕 克
Hirokatsu OGAWA
永 井 義 明
Yoshiaki NAGAI
1.はじめに
インターネットの普及 と共 に,データセンターは,ビジネスを支 える重要 な IT(情
報技術)基盤 として注目 されるようになった。多 くの企業 において,情報システムを
構成 するサーバーやデータは,データセンターで集中的 かつ効率的 に管理 されてお
り,使用電力量 やシステム管理コストの削減,情報セキュリティの強化 に役立ってい
る。さらに東日本大震災以降,BCP(事業継続計画)の観点 からもデータセンター活
用 の重要性 が再認識 されるようになった。
ところが,日本国内 のデータセンターは,いくつかの課題 を抱 えている。例 えば,
今後発生 し得 る災害 や,サーバー等 の高密度化 による使用電力量 や発熱量 の増加 に
どう対応 していくか,コストをセーブしながら,今後 の技術革新 にどう対応 していく
か,ビジネスの変化 にどう柔軟 に対応 できるかということである。これは,日本 は地
震等 の災害 が多 いことや電力料金 や土地代 が高 いことが大 きな要因 の一 つとな っ
ている。このため,事業会社 の中 には利用 するデータセンターをシンガポールやタ
イ等 の海外 に移 す動 きも顕在化 してきている。また竣工 20年以上経過 し,老朽化 し
つつあるデータセンターも増加 してきている。これらのデータセンターは,サーバー
等 の技術革新 やビジネス環境 の変化 に追 いつけなくなりつつあるのである。
― 83 ―
小 川 裕 克 ・ 永 井 義 明
ところで,データセンターを利用 して IT サービスを行 うビジネスがデータセン
ター事業 である。例 えば,データセンターのフロアスペースを貸出 し,サーバー等 の
運用サービスを提供 する形態 もその一 つである。データセンター事業 は年々伸 びて
いるものの,近年 においては,アマゾンやグーグル等 のグローバル IT 事業者 が日本
に進出 し,データセンターをフルに活用 してクラウドサービスや電子取引 を展開 し
ている。このような状況 の中 で,国内 IT 事業者 はデータセンター事業 を今後 どう展
開 していくべきかも重要 な課題 の一 つとなってきていると考 えられる。
本研究 は,以上 を踏 まえて,データセンター事業 の現状 と今後 の動向,データセン
ターにおける技術革新 の現状 と課題,今後 の方向性 を調査 ・ 研究 することを目的 と
している。
これまでのデータセンター事業 の調査結果 を見 ると,ハウジングやホスティング
を中心 とした事業 に絞ったものが多 く,広 い意味 でのデータセンターを活用 したビ
ジネスとして捉 えたものがなかった。そこで本研究 では,クラウドサービス等 も含
めたビジネスをデータセンター事業 として捉 え,その現状 と動向 を調査 ・ 研究 する
こととした。なお調査・研究 にあたっては,各種文献 の調査 と共 に,データセンター
事業 を行っている企業 を数社ピックアップし,ヒアリングを行った。
2.データセンターの概要
2. 1 データセンターの定義と特徴
データセンターとは,情報システムのサーバーやデータ通信装置 などを設置・管理
し,大量 のデータを処理・保管 している施設 のことをいう。データセンターと利用企
業 のオフィスにある端末機器 とは専用回線 またはインターネットを介 して接続 され
ている。
データセンターは多数 のコンピュータや膨大 なデータを集中的 に管理 ・ 運営 して
いるため,各企業 が個別 に電力 を消費 するよりも効率的 になる。また少数 の技術者
がサーバーの運用管理 を効率的 に行 うことができるため,その分人件費 も節約 でき,
コンピュータシステム運用 の専門家 を利用企業 で養成 する必要 もない。
さらに,データセンターは一般的 に,地震等 の災害 やセキュリティ対策等 が施 さ
れており,建物 や電源設備等 の信頼性 も高 い。しかしこのデータセンターが何 らか
の理由 により機能 しなくなった場合,利用者 に重大 な影響 を及 ぼすことになる。以
下 にデータセンターの主 な特徴 を挙 げてみた。
― 84 ―
データセンター及びデータセンターを活用したビジネスの将来動向に関する調査・研究
① 建物
多 くのデータセンターの建物 は耐震構造 を採用 している。特 に最近 では免震 ・ 制
震機構 を備 えているものが増 えている。データセンターの床 やラックなどに免震・
制震装置 を設 け,建物 の揺 れをコンピュータ等 の機器類 に影響 しないようにしてい
る(図表1)
。しかしながら 20年以上前 に建設 されたデータセンターや一般 のオフィ
スに作 られたデータセンターは必 ずしも耐震構造 を採っているとは限 らない。
図表1.データセンターの例
⒜ 野村総合研究所
東京第一センター外観
⒝ 免震装置
⒞ 縦揺れ制震ダンパー
(写真提供)野村総合研究所
② 電源設備
一般 にデータセンターで管理 されている情報システムは,昼間 はもちろん夜間 も
稼働 している。もし停電等 により電力供給 が途絶 えると,コンピュータが利用 でき
なくなるばかりか,ハードウェアが破壊 されてしま
う危険性 もある。従ってデータセンターでは,コン
図表2.自家発電設備の例
ピュータが通常 24時間 365日,安定稼働 できるよう
な対策 を行っている。電源設備 をトータルに冗長
化 し,UPS(無停電電源装置)や蓄電池,非常用自
家発電機(図表2)も備 えている。また変電所 から
複数 の送電線 を引 き込 んでいるケースもある。
(写真提供)野村総合研究所
③ 空調設備
コンピュータ機器 は大量 の熱 を発生 させる。データセンターでは,これらの機器
を正常 に稼働 させるために空調設備 を設置 し,室内 の温度 や湿度 を一定 の範囲(た
とえば温度 20 ~ 25 ℃,湿度 35 ~ 55 %)に保 つようにしている。特 に最新 のデータ
1)
センターでは,冷風・温風 の流 れを考慮 した設計 ,場合 によっては外気 の利用 もな
されており,効率的 な電力利用 が図 られている。
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小 川 裕 克 ・ 永 井 義 明
④ 消火設備
データセンター内で火災が発生した場合に備えて,消火設備を用意している。デー
タセンター内 の電子機器 に悪影響 を与 えないように,ハロンガスや窒素,二酸化炭素
2)
などの消火設備 を採用 している 。
⑤ 通信設備
データセンターに設置 された情報システムを利用 するためには,ユーザーが利用
する端末機器等 と通信回線 で接続 される必要 がある。データセンターには他 のデー
タセンターやユーザオフィス等 と接続 するための専用回線 やインターネット接続用
の通信設備 が備 えられている。データセンター利用企業 は,利用 する通信回線 を複
数 の通信キャリアから選択 できる。
⑥ セキュリティ
図表3.セキュリティ設備
データセンター には重要 な情報 や コン
ピュータが集中 しているため,セキ ュ リ
テ ィ の確保 は最 も重要 な要件 の一 つであ
る。データセンターはセキュリティの3要素
である「機密性」「完全性」「可用性」の観
点において,通常の建物よりも高いセキュ
リテ ィ を維持 している。 具体的 な セキュ
リティ対策 の一 つとして,入退館 やフロア
内各 エリアでの入退室 を厳重 に管理 して
(写真提供)野村総合研究所
いる。しかもデータセンターの所在地 を関係者以外 に開示 していない。
以前は事前登録制の入退室管理やセキュリティゲートシステムの採用によるセキュ
リティ対策 に留 まっていたケースも多 かった。しかし最近 では携帯電話 やカメラ等
の持 ち込 み禁止 は元 より,IC カードやバイオメトリクスによる個人認証装置,X 線
手荷物検査装置,監視カメラの設置 なども行 われている。さらに最新鋭 のデータセ
ンターの場合,データセンターに入 る業者 と利用者(エンジニア)が通 る通路/フロ
アを分 けたり,3D ボディスキャナ装置 を導入 しているところもある(図表3)。
また最近 はサイバー攻撃 による被害 も増加 しているが,ファイアウォールの設置
3)
等 による対策 や,外部 からの侵入 に対 する監視 にも万全 を期 している 。
2. 2 データセンターの分類
データセンターはその用途 および所有者,設置 された地域,データセンターの規模
等 により以下 のように分類 することができる。
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データセンター及びデータセンターを活用したビジネスの将来動向に関する調査・研究
(1)
データセンターの用途および所有者による分類
データセンターは,ユーザー企業所有 のデータセンターと,データセンター事業者
が所有 する商用データセンターに分 けられる。ユーザー企業所有 のデータセンター
は,自社 の情報システムを運用 する目的 で当該企業自身 が所有 するデータセンター
である。また商用データセンターはデータセンター事業者が運営するデータセンター
である。なお当研究 で対象 とするのは商用データセンターである。
(2)
施設の構造,拡張性等による分類
データセンターはその施設 の構造,拡張性等 図表4.モジュール型
データセンター(平屋型)の例
により,
「ビル型」「モジュール型」「コンテナ
型」に分 けられる。
「ビル型」はビルをデータセンターとして利用
する形態 であり,データセンター専用 のビルを
建設 して利用 する形態 と,オフ ィ スビルを利
用 する形態 がある。専用ビルの場合,データセ
ンターとしての高度な災害対策やセキュリティ
対策 が施 され,信頼性 が高 いが,ビル建設コス
トが高 く,建設期間 も 2年近 くかかるという
欠点 がある。逆 にオフィスビルの場合,建物 の
堅牢性 やセキュリティの点 で難点 があると言
(写真提供)電算システム
える。
「モジュール型」は,データセンターとしての構成要素 を一 つのモジュールとして
標準化・部品化 することで増設 が簡単 にできる形態 で,
「平屋型」と「屋内型」がある。
「平屋型」は1,2階の建物を1つの単位として扱うデータセンター(図表4)で,
「屋
内型」はセンター内 の内部機器 やラック群 を一 つの単位 として扱 うデータセンター
である。
「モジュール型」は「ビル型」に比 べ低コスト・ 短期間 で建設 でき,空調 も効
率化 できる。
「コンテナ型」は輸送用コンテナに空調設備,電源設備 があらかじめセットされてい
るもので,外部 の通信回線 と接続 し,電力供給 を行 えばデータセンターとして利用
できる。
「コンテナ型」は簡単 に増設 が可能 なため,緊急時 の対応等 で威力 を発揮 で
きる。コンテナ型 は,国内 では IIJ(インターネットイニシアティブ)等 ごく少数 でしか
採用 されていないが,欧米 では Google や Microsoft なども採用 しており,一般的 な
構築方式 の一 つとなっている。
― 87 ―
小 川 裕 克 ・ 永 井 義 明
(3)
立地による分類
データセンターはその立地 により,都市型データセンターと郊外型データセンター
に分 けることができる。都市型データセンターは東京都内 などの大都市 にあるデー
タセンターで,郊外型 は都市郊外 もしくは地方 に設置 されたデータセンターとなる。
都市型データセンターは利用企業 の近 くに設置 されているため,情報システム等 に
何 らかの問題 が発生 した場合,ユーザーやハードウェア・ メーカー等 のエンジニア
が直 ぐに駆 けつけることができるメリットがある。しかし一般的 に土地代 が高 く,
広 い土地スペースを確保 することが困難 な場合 もあり,数階建 ての建物 にする必要
があったり,高性能 な空調器 を備 える必要 があったりする。その結果,建設・運営コ
ストが高 くなるという欠点 もある。さらにデータセンターの直 ぐ隣 りに別 のビルが
建設 されたりしているケースも多 く,災害対策 やセキュリティ確保 という面 で若干
問題 がある可能性 もある。
一方郊外型データセンターは,一般的 に地価 が安 く,広大 な土地 を確保 すること
が比較的容易 であり,低層 のデータセンターを低コストで建設 でき,既存 のデータセ
ンターが満杯 になれば隣 りの敷地 に追加 できるというようなメリットがある。特 に
寒冷地中心 に外気 を利用 して空調 することも可能 となり,データセンターの運営コ
ストも比較的低 いというメリットもある。なお米国 の場合,郊外型データセンターが
主流 となっているようである。
2. 3 データセンターの変遷
(1)
データセンターを取り巻く環境等の変化
データセンターを取 り巻 く環境 は図表5に示 すように大 きく変化 してきている。
データセンターは当初,汎用大型コンピュータを設置・管理 するために作 られた。汎
用大型コンピュータは高価 であり,コンピュータが正常 に稼働 するには温度 や湿度
を一定 の値 に保 つ必要 があること,またその重量 や消費電力 も大 きかったため,専
4)
用 の施設 であるデータセンター が必要 であった。
1980年代以降,コンピュータのダウンサイジング(小型化)が進 み,オフコンやミ
ニコンが普及 していった。そしてオフィスの一角 にコンピュータが設置 されるなど,
コンピュータの分散配置 が進 んでいった。特 に 1990年代 に UNIX サーバーと PC ク
ライアントとを LAN で接続 したクライアント・ サーバーシステムが普及 し,分散化
が急拡大,ユーザーオフィス内(のマシンルーム)にサーバーが多数配置 されるよう
になった。
― 88 ―
データセンター及びデータセンターを活用したビジネスの将来動向に関する調査・研究
図表 5.データセンターをとりまく環境の変化
コンピュータ
等 の設置場所
ネットワーク
利用環境
情報システム
の利用者
情報システム
の利 用 形 態
利用 する業務
システム の開
発
デ ー タセン
ターの提供者
SIer としての
ビジネスの変
化
メインフレーム
(一極集中)の時代
(~ 1980年代)
CSS
(分散処理)の時代
(1990年代~)
・ データセンターで集中
管理
・ 80年代前半 に は オフ
コン / ミニコン を オ
フィスに設置 して利用
する形態 も出現
・ コンピ ュ ー タの ダ
ウンサイジングと共
に,オフィス等 に分
散( 基幹 シ ス テ ム
は デ ー タセンタ ー
で運用)
・ サーバー及びデータ
は再 び デ ー タセン
ターに集中
・ 低速 の専用回線(また
は公衆回線)
・ 高速 の専用回線
(数 Mbps)オフィ
ス内 は LAN(~
100 Mbps 程度)
・ 高速インターネット,
高速専用回線,有線・
無線 LAN
・ 社内外 のネットワー
クがシームレスに接
続 される
・ 大企業中心
・ 企業全般,官公庁全
般(社会システム)
・ 個人一般 にも広 が
る
・ 自社システムを利用
・ ノンインテリジェントな
端末 を利用
・ 自社内の様々な場所
・ 自社内外 の様々な
にある システムを,
システム(サービス)
LAN,WAN を介 し
を,LAN,WAN,
て利用
インターネット等 を
・ PC 等 の高機能端末
介 して利用
を利用
・ 端末 はスマートフォ
ン等多様化
・ 自社のシステム部門
・ コンピュータメーカー
・ SIer(システムインテ
グレーター)
・ 独立系 または自社シス
テ ム部 門 を子 会 社 化
した SIer
・ SIer の下請け中小ソフ
トウエアハウス
・ 同左+ユーザー
(End User Computing)
・ 同左+クラウド
サービスの利用
・ 自前(大企業)または
SIer
・ 同左
・ 同左+新 たなデー
タセンター事業者
が参入
・ システムコンサルテー
ション
・ システム開発・維持・
運用
・ 各種計算処理(給与計
算,科学技術計算等)
・同左
・ クラウドサービスの
増加(海外ベンダー
と競合&協業)
・ データセンター事業
の強化
・ システムコンサルテー
ション
・ システム開発・維持・
運用
・ IT-BCP 対応
(出所)筆者作成
― 89 ―
Web 2 . 0以降 の時代
(2000年~現在)
小 川 裕 克 ・ 永 井 義 明
しかしこの分散化 によりコンピュータ機器 やネットワーク機器 の管理 や監視 に手
間 がかかるようになり,いわゆるシステムマネジメントの負荷 が高 くなってしまっ
た。結果 としてコンピュータシステムをデータセンターで集中的 に管理 する形態 の
優位性 が再認識 されることとなった。特 に 2011年3月 11日 に発生 した東日本大震
災 により,BCP(事業継続計画)の一環 として,コンピュータシステムをデータセ
ンターへ集約 する動 きが大 きくなった。
2000年代 に入 るとハウジングやホスティングの需要 が増 え,データセンター事業
へ多 くの企業 が参入 することとなる。この頃,外資系データセンター事業者 が東京
都心部 に集中 して進出 してきた。このような状況 の中,これまで独自 にデータセン
ターやサーバールームを設 けていた企業 も,外部データセンターを利用 する動 きが
活発化 した。今日 ではさらに,内部統制(IT 全般統制)の整備 や,エコ/グリーン対
応,震災リスクへの対応 などでデータセンターの利用 が注目 されてきている。
(2)
データセンター施設・設備の変化
データセンターの建物や設備もIT革新と共に大きく変化してきている(図表6)。
データセンターは当初メインフレームを管理 するために水冷 の装置 を導入 すると共
に堅牢性 の高 い建物 が建設 され,ユーザ企業 に比較的近 く,交通 の便 の良 いところ
に設置 されるのが当 たり前 だった。
2010年前後 にはブレードサーバーが普及 し,1ラックにたくさんのコンピュータ
が集約 されるようになった。このため,ラックあたりのコンピュータからの発熱量 や
重量 が増加 し,何 らかの対応 が必要 となってきた。また大量 のコンピュータがデー
タセンターに収容 され運営 されるようになり,ひとたびデータセンターに何 らかの
障害 が発生 すると一企業 のみならず,社会への影響も甚大となった。そのため,デー
タセンターはこれまで以上 に,高度 なセキュリティ対策 や堅牢性 の確保 が必要 とな
り,さらに免震 ・ 制震構造 の造 りが採用 されるようになってきた。また省エネ対策
もなされるようにもなってきた。
データセンターは,ビル自体,一度構築 するとその構造 を簡単 に変更 することが出
来 ない。これを解決 するために,モジュール型 やコンテナ型 のデータセンターを採
用 するケースも出 てきた。そしてクラウドコンピューティングの本格活用 が進 むに
つれ,高密度機器の収容や迅速な構成変更を前提としていない旧式のデータセンター
は,今日 のインフラ要求 に応 えることが難 しくなってきた。
― 90 ―
データセンター及びデータセンターを活用したビジネスの将来動向に関する調査・研究
図表 6.データセンター立地・設備の変遷
メインフレーム
(一極集中)の時代
(~ 1980年代)
立地条件
センタ ー
設備
CSS
(分散処理)の時代
(1990年代~)
Web 2 . 0以降 の時代
(2000年~現在)
・ 大 規 模 広 域 災 害 等 に
ついてはそれほど意識
しない
・ 遠隔オペレーション機
能 が弱 い た め, ユ ー
ザ ー が短時間 で駆 け
つけられることが条件
・ 同左
・ クラウドコンピューティ
ングの普及により地方
にもデータセンターが
建設 される
・ 建物 は堅牢性 を追求
・ 水冷中心
・ 大型ボックス型コン
ピュータ
・ 非常用電源(電池,発
電装置)
・ 高度 なセキュリティ
対策
・ 通信:オフィスの端
末 との接続中心。コン
ピュータメーカ独自
の通信プロトコル
・ 空冷中心
・ 小型ボックス型コン
ピュータ
・ 非常用電源( 電池,
発電装置)
・ 高度 なセキュリティ
対策
・ 建 物 は堅 牢 性 を追
求
・ 通 信 : 高 速 LAN,
WAN,通信 プロト
コルはTCP/IP
中心 になる
・ 空冷中心(多様 な空調
設備 が出現)
・ ブレードサーバー
・ 発熱対策
・ 免震・制震構造
・ 非常用電源(電池,発
電装置)
・ さらに高度 なセキュリ
ティ対策
・ 堅牢性・エコ対策
・ モジュール型データセ
ンターの採用 による建
設期間 の短縮,建設コ
ストの削減
・ データセンター内サーバー
等のリソースは仮想化
技術 によって増設・変
更等 が柔軟 になる
(出所)筆者作成
2. 4 データセンターの現状
(1)
データセンターの立地
日本データセンター協会(以下,JDCC と省略)によると,国内 に設置 されている
5)
データセンターは,関東 が 58 %,関西 が 17 %と,関東,関西 に偏在 している 。特
に サ ー バ ー ル ー ム面積 でみると,東京 が全体 の 47 %(関東全体 で 70 %),大阪 が
11%(関西全体で 15%)と,都市型データセンターが半分以上を占めている。つまり,
ビジネスが行 われている近 くにデータセンターが集中 していることになる。この理
由 として挙 げられるのは,ユーザー企業 の多 くが,
「自社オフィスからアクセスが比
較的容易 な場所 にデータセンターが設置 されていることが必要 である」と認識 して
いることである。つまり①システムトラブル等 の問題 が発生 したとき,メーカーの
エンジニアや利用企業 のIT部門 の担当者 が直 ぐにデータセンターに駆 けつけるこ
とが必要 である,②情報システムのシステム構成 はハードウェア等 の修復 において
は,エンジニアが直接データセンターを訪問 して作業 する必要 があるため,都心 に近
― 91 ―
小 川 裕 克 ・ 永 井 義 明
い方 が良 い,ということである。実際,ユーザー等 によるデータセンターの訪問頻度
6)
を見 ると,常駐 も含 めて,月 に数回以上訪問 している割合 は 51 % となっている。
一方,地域 によっては市 がデータセンターを勧誘 し,補助金 や優遇措置 を取って
いるところもある。例 えば石狩市 は,石狩湾新港地域 に工場 やデータセンターの誘
致 を積極的 に行っている。データセンターの新設・増設 に際 しては,固定資産税・都
市計画税 を最大5年間免除 にする等 の優遇措置 を設 けている。現在 さくらインター
ネットがこの地域 に進出 し,石狩データセンターを運営 している。
なお中部圏 については,関東 や近畿 に次 ぐ経済規模
7)
であるが,そのデータセン
ター数及 びサーバールーム面積 は大阪府 とほぼ同一規模 である。つまり外部データ
8)
センターの利用割合 が関東 や近畿 に比 べて少 ないということになる 。JDCC が調
査 した「電力会社別データセンター電力利用比率」でも,東京電力 6 . 86 %,関西電力
1 . 71 %に対 して,中部電力 は 0 . 96 %と,データセンターの電力利用比率 が低 い。つ
まり中部圏 の企業 の多 くは,自社 のデータセンター(自社オフィス内 のマシンルー
ムも含 む)を利用 しているということが窺 える。中部圏 の外部データセンターの利
用割合 が低 い理由 の一 つとして,①企業 の規模 に限 らず,所有 する土地 に比較的余
9)
裕 がある,②中部圏 の場合,中小企業 が産業 を支 えている (一般的 に中小企業 は外
部データセンターの利用割合が少ない),③中部圏の産業の特性として,製造業やサー
ビス業 の割合 が高 い,ということが考 えられる
10)
。
一方インターネットメディア総合研究所 の調査 によると,2012年 における BCP 対
策目的 で実施 または検討 しているデータセンターの移転先地域 を見 ると,関東(東
京以外)が27 . 9%,東京が26 . 4%,近畿が25 . 0%,九州が14 . 3%に対して,東海は7 . 9%
に過 ぎない
11)
。今後発生 する東南海地震等 を考 えると,東海地域 はデータセンター
の立地 という観点 からは必 ずしも最適 な環境 とは言 えないと評価 されている可能性
もある。なお東海地域所在企業 の BCP に対 する意識 が低 い可能性 も考 えられるが,
東日本大震災以降,愛知県 や岐阜県 が県主導 で BCP に積極的 に取 り組 んでおり,こ
の可能性 は低 い。
(2)
データセンターの所有形態と用途
JDCC の調査
12)
によると,データセンター事業者 がデータセンターの土地・建物共
に所有 しているケースと,どちらも所有 していないケースは共 に 41 %となっている。
データセンター事業者 が複数 のデータセンターを運営 しているケースが多 いが,こ
の場合,データセンターによって自社所有 であったり,借用 であったりとまちまちで
ある。中には自社で所有していたデータセンターを投資ファンドに売却し,投資ファ
ンドから借用 して利用 しているケースもある。またデータセンターを借用 している
中 では,
(有効回答数中)フロア借 りが 58 %,一部借 りが 22 %,一棟借 りが 21 %でフ
ロア借 りが圧倒的 に多 い。設備 について見 ると,電気 ・ 空調設備 は自社所有 の場合
― 92 ―
データセンター及びデータセンターを活用したビジネスの将来動向に関する調査・研究
が多 い(有効回答数 の 77 %)。
所有形態 の違 いは,データセンター事業者 の事業戦略 もしくは自社 の顧客層 など
に依 るものと考 えられる。例 えば,金融機関 の場合,特 にデータセンターの堅牢性
を求 めるケースが多 い。つまり金融機関 を顧客 とする大手 SIer 等 のデータセンター
事業者 は自 らデータセンターを所有 した方 が,顧客 の要求 に対応 しやすいというメ
リットがある。一方で大手 SIer でも建物は自社所有でないケースも多い。これはデー
タセンターの建設 には多大 なコストと完成 までに長 い時間 を要 することなどが大 き
な理由 となっている。
中堅 SIer は自 らデータセンターを所有 する体力 がないため,データセンター事業
者 が提供 するデータセンターを使ってビジネスを展開 しているケースも少 なくない。
ただし中 には,データセンターを所有 して事業 を展開 していることが自社 のステー
タスになると判断 し,自社所有 のデータセンターを構築・運営 している例 もある。
図表 7.データセンターの建屋構造
構造/耐震構造
SRC 造(鉄骨鉄筋コンクリート造)
構 造
構成比
(%)
148
44
RC 造(鉄筋コンクリート造)
72
21
S 造(鉄骨造)
47
14
7
2
その他
7
2
無回答
57
17
338
100
219
65
免震構造
78
23
制震構造
12
4
CFT 造(コンクリート充填鋼管構造)
CB 造(コンクリートブロック造)
合 計
耐震構造(従来型)
耐震構造
回答数
耐震 ではない
無回答
合 計
1
0
28
8
338
100
(出所)JDCC「 2012年度データセンター調査結果報告」
(3)
データセンターの建屋構造,建物の用途
データセンターの建屋構造 は「耐災害性」という観点 から,高 い堅牢性 が求 められ
ている。実際,図表7に示 すように多 くのデータセンターの建屋構造 は堅牢 な造 り
になっている。特 に地震 の多 い我 が国 においては,耐震構造 であることが必須条件
といえる。しかしながら,耐震構造(従来型)であっても免震 ・ 制震構造 を採用 して
いないと,東日本大震災 のような大 きな地震 に遭った場合,サーバー等 の室内機器
― 93 ―
小 川 裕 克 ・ 永 井 義 明
が損傷 する可能性 がある。
なお建物 の用途 としては,データセンター専用ビルが有効回答数 の 53 %,多目的
13)
ビルをデータセンターとして利用 しているケースが同 47 %とあまり差 がない 。特
に都市型データセンターの場合,サーバー設置スペース等 の確保 やアクセスの容易性
から多目的ビルをデータセンターとして活用 するケースが多 いようである。
一方,国内データセンターの建物 の種類 を見 ると大半 がビル型 である。富士キメ
ラ総研 によると,2013年見込 みでビル型 が 97 %,モジュール型 が3%,コンテナ型
14)
は 0 . 1 %となっている 。その理由 として考 えられるのは,①コンテナ型 が登場 した
15)
16)
のは比較的最近 である ,②堅牢性 という観点 ではビル型 に劣 る,③建築基準法 に
よる制限 がある,④既設 のデータセンターにスペースの余裕 がある,⑤モジュール型
(平屋型)は地価 が高 い都市 ではスペースの有効利用 という観点 からは,必 ずしもそ
のメリットが享受 できない,などである。
(4)JDCC ファシリティスタンダード(JFS)レベルと設備
JDCC はデータセンターの建物 やセキュリティ,空調設備,電気設備,通信設備 の
運用 における信頼性 を測 る基準 としてファシリティスタンダード(JFS)を作成 し
ている
17 )
。JFS では,レベルがティア1~ティア4に分 けられているが,ティア4は
データ専用建物 で電源 やネットワーク等 は冗長性 を確保 し,非常 に高 いレベルでの
セキュリティや耐災害性 が確保 されていることなどが基準 となっている。またティ
ア3は複数用途 の建物(単一テナント)で,電源 やネットワーク等 は冗長性 を確保,
災害 に対 して一般建物 より高 いレベルでの安全性 が確保 されていることなどが基準
となっている。ティア2,ティア1になると複数用途 の建物(複数テナント可)で,災
害 に対 する安全性 は一般建物レベル,セキュリティ管理 もサーバールームのみとな
り,大幅 に基準 が低下 する。
国内データセンターの JFS レベルの現状 を見 ると,ティア2以下 が有効回答数 の
18)
35 %を占 めている 。これらティア2以下 のデータセンターに対 しては何 らかの信
頼性向上のための対策が必要であると考えられる。例えば停電時間についてみると,
東京電力 の場合,東日本大震災以前 は,商用電源 の停電時間 がこれまで 18分/年
19)
であり,ティア1やティア2でもあまり問題 なかったと言 える。しかしながら東日本
大震災発生時,計画停電等 の実施 されたこと,関東地域 で震度5弱レベルにも達 した
こと,東海・東南海・南海地震 の発生 も想定 されていることなどを考慮 すると,最低
でもティア3レベル,できればティア4レベルが望 ましいと考 えられる。また IT-
BCP
20 )
対策 の一環 としてバックアップのデータセンターの検討 が必要 である。なお
データセンターとして必須要件 である無停電電源装置及 び自家発電装置 を装備 して
いるデータセンターが大半 である(無停電電源装置有 りが有効回答数 の 100 %,自家
21)
発電装置有 りが同 99 %) 。
― 94 ―
データセンター及びデータセンターを活用したビジネスの将来動向に関する調査・研究
(5)
データセンターの稼働率と設置年度(稼働年数)
国内データセンターは建物 の稼働率 の向上(供給過剰 への対応)と老朽化 への対応
という課題 に直面 している。JDCC による調査
21)
は,338のデータセンターが対象 と
なっているが,2000年以降 に新設 されたものは有効回答数 の 82 %( 247センター)と
なっている。これに伴 い,サーバールーム面積 も大幅 に増加 してきており,2012年
には国内全体 で 81万㎡ に達 している。また 2012年 における稼働率 を見 ると,60 %
以下 のデータセンターが有効回答数 の 45 %にも達 している。特 に 2011年以降,首
都圏 での開設 が相次 いでおり,2013年 にはサーバールーム面積 で新 たに 58 , 600㎡
ほど供給 される予定 で
22)
,供給過剰( 2013年問題 と呼 ばれている)も指摘
いる。オフィスの空室率を見た場合,大都市の空室率は 10%前後
23)
されて
24)
であるため,デー
タセンターの稼働率 がいかに低 いかがわかる。
一方,サーバー等 の IT 機器 は数年 で大 きく変化 しており,20年以上経過 したデー
タセンターの建物 や設備 は IT 機器 の革新 に対応 できなくなってきている。例 えば
サーバーの高密度化(ブレードサーバーの増加)は,ラック当 たりの消費電力 と重量
を急増 させ,電力容量 の不足 や床荷重不足
25)
等 を発生 させている。また東日本大震
災 を機 に,免震構造 の採用 や,消費電力 の低減 も要求 されるようになってきている。
さらに最近 ではデータセンター同士 が相互バックアップできる仕組 みなどもニーズ
として上 がってきており,10年位 の期間 で見 ると,データセンターに求 められる要
件 は大 きく変化 していくことになる。
3.データセンター事業の現状と課題
3.1 データセンター事業の定義
データセンター事業 といった場合,主 としてデータセンターのインフラ機能 を提
供する事業を指す。この定義に当てはまるデータセンター事業として,①ハウジング,
②ホスティング,③クラウドサービス(PaaS・IaaS)がある。一方,IT 事業者(通信
キャリアを含む)は,これ以外にもデータセンターを核に,④クラウドサービス(SaaS)
および ASP サービス,⑤通信回線サービス,⑥プライベートクラウド,⑦ その他情報
処理サービス,などの事業 を行っている。
① ハウジング
データセンターのラックスペースの一部 をユーザー企業 に貸 し出 すサービスであ
り,サーバー等 の機器類 は基本的 にユーザー企業自身 で調達 し,データセンター事
― 95 ―
小 川 裕 克 ・ 永 井 義 明
業者 はデータセンターの物理的 な環境 を管理 する。従ってユーザー企業 がサーバー
環境等 を比較的自由 に構築 できる
26)
。
なおデータセンター事業者 の中 には,他 のデータセンター事業者 からハウジング
サービスを受 け,これを使ってデータセンター事業 を行っている例 もある。これも
データセンター事業 の一 つと言 える。
② ホスティング
データセンターのラックスペースのみならずコンピュータ等 の設備 もデータセン
ター事業者 が提供 するサービスである。ユーザー企業 にとって,ハウジングと比 べる
と自由度 は低 くなるが,サーバー環境等 の構築及 びその運用 はデータセンター事業
者 が行ってくれるため,手間 が省 ける。
③ クラウドサービス(PaaS・IaaS)
データセンターにあるサーバー等 のリソースを提供 するサービスである。ここで
PaaS(Platform as a Service)はユーザーがアプリケーションを開発 ・ 実行 するた
めのプラットフォームをサービスとして提供 する形態 を指 し,IaaS(Infrastructure
as a Service)はサーバーやストレージ,ネットワークなどのコンピュータ資源をサー
ビスする形態 を指 す。
このクラウドサービスはホスティングの一形態 と見 ることもできる。クラウドサー
ビスを利用 している企業 は,基本的 にデータセンター自身 やコンピュータシステム
のハードウェア構成 を意識 する必要 が無 い。
④ クラウドサービス(SaaS)およびASPサービス
SaaS(Software as a Service)
は電子メールや営業支援等,クラウドコンピューティ
ング基盤(プラットフォーム)上 で稼働 するアプリケーション機能 を提供 するサービ
スである。また ASP(Application Service Provider)サービスは,データセンター
事業者(特 にシステムインテグレーター)が金融取引等 のアプリケーションシステム
を開発 し,これをユーザー企業 が共同 で利用 する形態 である。SaaS も ASP サービ
スもアプリケーションサービスがメインであり,データセンターはそのためのプラッ
トフォームとして活用 されている。
⑤ 通信回線サービス
その名 の通 り通信回線接続サービスを提供 するサービスである。ユーザーは通常
複数 の通信業者 の中 から選択 することができる。
― 96 ―
データセンター及びデータセンターを活用したビジネスの将来動向に関する調査・研究
⑥ プライベートクラウド
不特定多数 のユーザーが利用 するパブリッククラウドと異 なり,個別 の企業 や組
織 のみが利用 するクラウドコンピューティングである。プライベートクラウドには,
ユーザー企業 が自 ら所有 するデータセンターを利用 するケースと,IT 事業者 が提供
するデータセンターを利用 するケースがある。本研究 では後者 を対象 としている。
⑦ その他情報処理サービス
データセンターを活用 した情報処理サービスで,例 えば給与計算 や各種帳票 のプ
リント,科学技術計算,通信販売 における決済処理代行,サイト運営業務 などの情報
処理サービスである。
ここでは,上記 の①~③ を(狭義 の)データセンター事業 と定義 し,これに④~⑥
を加えたものを(広義の)データセンター事業と定義する。本研究では,
(広義の)デー
タセンター事業 を研究対象 とする。そして今後特 に断 らない限 り,データセンター
事業 といった場合,
(広義 の)データセンター事業 を指 すこととする。また⑦ その他
情報処理サービスは IT 事業者 によって多種多様 なサービスを行っているため,本研
究 の対象外 とすることとした。
ところで,電子商取引(EC:エレクトロニックコマース)はインターネット等のネッ
トワークを活用 したビジネスであり,2012年 の EC の市場規模 は,B to C で 9 . 5兆円,
B to B で 262兆円 にも達 している
27)
。EC も基本的 にデータセンターを活用 したビ
ジネスと考 えられるが,ユーザー企業 によるビジネスが主 であると捉 えられるため,
データセンター事業 から除外 することとした。
3. 2 データセンター事業の市場規模
データセンター事業者 によっては,その売上金額 を開示 していなかったり,データ
センター事業 を明確 に分別管理 していないケースも多 いようである。従ってその市
場規模 の精度 は必 ずしも高 いとは言 えない。しかしながら,本研究 では各種白書 や
調査会社数社 の資料 を参考 に,データセンター事業 の大 よその市場規模 を推計 して
みた。
図表8はデータセンター事業 のカテゴリ別 の売上予測 である。2012年度 には1兆
4 , 700億円 だったものが,2017年 には2兆 2 , 500億円 と約 1 . 6倍 となるものと予想 さ
れる
28 )
。どのカテゴリも増加傾向 にあるが,特 に伸 びが大 きいのはプライベートク
ラウドと SaaS/ASP である。プライベートクラウドは各企業のシステム開発から運用,
場合によってはシステムコンサルティングと幅広くビジネスを行うことができるため,
SIer にとっては魅力的 な分野 であると同時 に,大手 SIer 等 の牙城 となっている
― 97 ―
29)
。
小 川 裕 克 ・ 永 井 義 明
図表8.データセンター事業の市場規模予測
億円
25000
22,500
20000
15000
14,700
800
1,800
3,400
10000
700
3,200
5000
4,800
0
2012 年度
プライベートクラウド
3,000
通信回線サービス
2,200
SaaS/ASP
PaaS・IaaS
6,600
1,400
ホスティング
ハウジング
3,300
6,000
2017 年度
(出所)各種資料 を基 に筆者作成
また ASP サービスは業務アプリケーションのサービスが含 まれているため,利益率
の高 いサービスであると考 えられるが,この分野 もやはり利用企業 の業務 に精通 し
た大手 SIer 等 の牙城 となっている。中堅 SIer がこの分野 で事業 を展開 するには,大
手 SIer 等 がまだ行っていない業種 や事業,中小企業等 をターゲットにする必要 があ
ると考 えられる。
ハウジングはホスティングよりも市場規模 が大 きいが,ユーザー企業 がサーバー等
を持 ち込 んでしまうため,利益率 という点 ではホスティングに比 べて低 いと考 えら
れる。従ってハウジングを事業 の中心 とする場合,信頼性等 を担保 としながらも,
データセンターの建設 ・ 運営コストをできるだけ押 さえることが重要 であると考 え
られる。
なお,情報サービス産業協会「情報サービス産業白書 2014」に載っている情報サー
ビス会社 の売上高 のうち,計算事務等情報処理 6 , 940億円,サイト運営業務 5 , 750億
円,コンテンツ配信業務 3 , 930億円,データベースサービス 1 , 340億円,課金 ・ 決済代
行業務 170億円,セキュリティサービス業務 160億円 の合計1兆 8 , 290億円 の規模(全
体 の 16 %)が前述 の「その他情報処理サービス」に相当 すると推定 され,データセン
ター事業 よりも大 きい。
3. 3 データセンター事業者の分類とマーケットシェア
図表9はデータセンター事業者 を分類 したものである。データセンター事業 は,情
報システムの構築 と運用サービスを担ってきた SIer やコンピュータメーカーが自社
― 98 ―
データセンター及びデータセンターを活用したビジネスの将来動向に関する調査・研究
のデータセンターを使ってシステムインテグレーション及 びシステムの運用,事務
(技術)計算サービスなどを手掛 けていた。そして現在 では通信キャリアもデータセ
ンター事業 に参入 してきている。通信キャリアは電話 の交換機 を設置 した建物(フ
ロア)を多 く所有 しているため,これをデータセンターとして容易 に活用 することが
出来 るという強 みを持っており,広 い地域 で多 くのデータセンターを所有 している
ケースも多 い。ただし通信局舎 を活用 したデータセンターの規模 は比較的小 さい。
また倉庫業 などを営 む企業 が(狭義 の)データセンター事業 に参入 してきている。天
井 が高 く,堅牢性 の高 い倉庫 をデータセンターとして活用 すれば,利益率 も高 くな
るためである。主 にハウジングを中心 にビジネスを展開 しているが,都市型データ
センターとしても,また IT-BCP の受 け皿 としても存在感 を出 している。またアマ
ゾンなどの外資系クラウドサービス事業者 も参入 してきており,クラウドサービスの
拡大 と共 にデータセンター事業 を拡大 しつつある。さくらインターネットのような
中堅データセンター事業者 は,クラウドサービスまたはホスティングサービスを中心
とした事業 を主 としているが,東日本大震災以降,ハウジングも予想以上 に拡大 して
いるという。
図表9.データセンター事業者の分類
分
類
SIer
(システムインテグレーター)
説 明
野村総研 や NTT データなど,システムの開発 からシステムの
運用 までを手掛 けている。 その多 くは SaaS/ASP サービスも
行っている。
コンピュータメーカー
富士通,日立製作所,日本 IBM など,サーバー等 の IT 機器 を
製造販売 している事業者 であるが,その多 くは SIer でもある。
通信キャリア
NTT コミュニケーションズや KDDI,IIJ など,通信事業 ととも
にデータセンター事業 も行っている。
(狭義 の)
データセンター事業者
外資系
クラウドサービス事業者
さくらインターネットや iDC フロンティア,ビットアイルなど,
ハウジングやホスティングを中心 に,クラウドサービス(IaaS・
PaaS)も行っている。基本的 にシステムインテグレーション事
業 は行 わない。
アマゾンやグーグル,セールスフォース・ ドットコムのような
外資系 IT 事業者 で,クラウドサービスを中心 にビジネスを展
開 している。
(出所)筆者作成
図表 10はベンダーカテゴリー別 の売上規模 を推定 したものである。SIer およびコ
ンピュータメーカーはデータセンターを核 としたビジネスを早 くから展開 してきた
こともあり,2012年度 の売上 は全体 の 80 %,2017年度 は 74 %となっている。つま
りシステムの設計 から運用 までを手掛 けているコンピュータメーカーや SI ベンダー
は,データセンター事業 における収益基盤 は強固 であると言 える。
― 99 ―
小 川 裕 克 ・ 永 井 義 明
図表 10.ベンダーカテゴリー別の売上規模の推定
億円
25000
22,500
4,400
20000
15000
14,700
1,500
(狭義の)データセンター事業者
+外資系クラウド事業者
通信キャリア
Sier+コンピュータメーカー
1,600
1,300
10000
16,600
5000
0
11,800
2012 年度
2017 年度
(出所)各種資料 を参考 に筆者作成
なお,外資系 IT 事業者 であるアマゾンの 2013年通期 の総売上高 は 744億 5 , 000万
ドル,日本 の売上高 は 76億 3 , 900万ドルであるが,その大半 はネットショッピングか
ら得 られる収益 であり,競合相手 は IT 事業者 というよりも楽天 のような EC を主 と
している企業 である。
図表 11.地域別データセンター市場の規模の推定
億円
25000
22,500
3,800
20000
15000
10000
14,700
4,100
2,650
2,650
14,600
5000
0
9,400
2012 年度
2017 年度
(出所)各種資料 を参考 に筆者作成
― 100 ―
その他
関西
関東
データセンター及びデータセンターを活用したビジネスの将来動向に関する調査・研究
3. 4 地域別データセンター市場の規模
図表 11は地域別 デ ー タセンタ ー 市場 の規模 を推定 したものである。 関東地域 が
2012年度 9 , 400億円 から 2017年度 は 1兆 4 , 600億円 と増加し,両年度共に全体売り上
げの約65 %を占 める。そして残 りの 35 %を関西 とその他地域 で分 け合っている
30)
。
従って当面 はデータセンター事業 の地域分散 が進 まないということになる。
3. 5 IT 事業者同士の競合と協業
(1)
グローバル IT 事業者との競合への対応
アマゾンやグーグル,セールスフォース・ ドットコム等 のグローバル IT 事業者
は日本 にも進出 し,クラウドサービスを大 々 的 に展開 している。アマゾンの AWS
(Amazon Web Services)のユーザーは 2013年6月時点 で,全世界 で数十万社,日
本 でも2万社 を超 えるという
31)
。SAP のようなソフトウェアパッケージを提供 して
いるグローバル IT 事業者もクラウドサービスという形態でサービスを開始している。
これらグローバル IT 事業者 の動 きは国内 IT 事業者,特 に SIer のビジネスにも影響
を与 えつつある。これまでの個別企業向 けシステム構築 がクラウドサービスの提供
へと徐々に変化 してきているからである。
国内 IT 事業者 は,これまでも海外 で開発 されたソフトウェアパッケージを国内 で
販売 したり,システム開発 で利用 したりしてきた。クラウドサービスはそれがネット
ワークを使ったサービスに拡大 されたものと解釈 できる。つまりグローバル IT 事業
者 と提携 し,クラウドサービス利用者 に対 して,システムサポートやコンサルティン
グサービスを提供 することが対応策 の一 つと考 えられる。例 えば,顧客(ユーザー
企業)がアマゾンのクラウドサービスを利用 しようとしても,技術的 な面 などでハー
ドルが高 いケースも多 い。 このような顧客 に対 する各種サポートを事業 の一 つに
するわけである。2013年末現在,国内 においてアマゾンとパートナー契約 を締結 し
ている IT 事業者 は 100社以上 となっている。データセンター事業 に関 しては,現在
SIer 5社がアマゾンとデータセンター同士を直接接続しサービスを実施している(こ
の5社 は AWS ソリューションプロバイダ(Direct Connect)という位置 づけになっ
ている)
。顧客 にとっては,国内 IT 事業者 のデータセンターを利用 することにより,
セキュリティや IT 内部統制上 の懸念 を払 しょくでき,かつ AWS を利用 することが
できるというメリットがある。
国内 IT 事業者自 らもデータセンターを活用 したクラウドサービスを拡大 しつつあ
る。特 にプライベートクラウドの構築 にはシステムインテグレーション能力 が必要
となるため,SIer の強 みが発揮 できる。プライベートクラウド環境 を SIer のデータ
― 101 ―
小 川 裕 克 ・ 永 井 義 明
センターに構築 できれば,今後 のビジネス継続 に大 きく寄与 する。
データセンター事業 を営 む国内系通信キャリアの中 には海外 で積極的 にデータセ
ンター事業 を展開 しているものもある。主 に海外 に進出 している日系メーカーを対
象 にしているようだが,日系企業 の情報システムはグローバル化 が遅 れているのが
現状 である。現地 の企業 も顧客 としたデータセンター事業基盤 を構築 する必要 があ
る。ただし日系企業による内外データセンターの一体的活用をサポートできればユー
ザー企業 とデータセンター事業者 の双方 にメリットが出 るものと期待 される。
(2)
データセンター事業者と他の IT 事業者との協業
データセンター事業者 は他 のIT業者 を対象 にデータセンター事業(多 くの場合
はハウジング)を行っているケースも多 い。最近 では,日本 IBM のように,顧客 に最
適なソリューションを提供する目的で,他社のデータセンターを自社データセンター
のように活用(ハウジング)するケースも出てきている。また利用ユーザー数社とデー
タセンター事業者,SIer が協力 して共同利用システムを構築 し,データセンターも共
同利用 する例 が出 てきている
32)
。
3. 6 データセンター事業の課題
企業活動 において重要 な役割 を果 しているデータセンターであるが,以下 のよう
な課題 を抱 えている。
(1)
データセンターの建設・運営コストの削減によるデータセンター事業の
競争力強化
HurleypalmerflattとCushman & Wakefield が 2013年5月 に発表 した Data Centre Risk Index によると,日本のデータセンターとしての競争力は 30 ヵ国中 26位と,
極 めて低 い。順位 が低 い理由 として,特 にエネルギーコストや法人税 の高 さと自然
災害 の影響 が挙 げられている
33)
。
一方,データセンターのコスト構造 はデータセンター事業者 により異 なるが,おお
よそ人件費 14 %,地代家賃 19 %,電気代 15 %,減価償却費 22 %,ネットワーク 14 %
となっているという
34)
。データセンター事業 の収益向上 のためには,これらを減 ら
す努力 が必要 となる。
まずデータセンター内 の電力消費 を大 まかに見 てみると,IT 機器 が 30 %程度,空
調関係機器が 45%程度,電源関係が 25%程度の比率である
34)
。しかも我が国のデー
タセンター(インハウスサーバーも含 む)の電力消費量比率 は現在2%程度 であり,
今後更 に比率 が増 えると考 えられる。今後 のデータセンターの需要 の拡大 に伴 い,
エネルギー利用効率 とコスト削減 のため,空調技術 や電源給電技術 の更 なる進展 が
― 102 ―
データセンター及びデータセンターを活用したビジネスの将来動向に関する調査・研究
必要 となる。
日本 の電気料金 は他国 に比 べて高 い。電気料金 の高騰 や,ビジネスのグローバル
化 の流 れと共 に,ソニー等,グローバルにビジネスを展開 している企業 の一部 は立
地条件 の良 い海外 デ ー タセンタ ー に主体 を移 している。IEA(The International
Energy Agency)によると,2012年 の産業用電気料金(US ドル /MWh)は,OECD
加盟国の中でイタリアが 291 . 8とずば抜 けて高 く,次 に日本 194 . 3,スロバキア 169 . 7,
アイルランド 155 . 2,ドイツ 148 . 7と続 く。日本 の場合,米国 67 . 0の3倍近 い料金 で
35 )
ある 。これを解決 しなければ,データセンター事業 はもちろんのこと,データセン
ター利用企業 の競争力 も高 まらない。ただし電気料金 の問題 は日本国内全体 の問題
である。 電力効率 PUE(=施設 の消費電力÷IT機器 の消費電力)の値 を下 げるの
みならず,再生エネルギーの利用や外気冷房の利用,直流給電の利用,省電力サーバー
の採用 もしくはサーバー動作保障温度 の引 き上 げ(例 えば 35 ℃から 40 ℃へ)などの
対策 を考 え,データセンター全体 の消費電力 を低減 していく必要 がある。
次 に地代家賃 の削減 である。比較的地価 の安 い郊外型データセンターをうまく活
用 できなければ,国内データセンターの競争力 は高 まることはないであろう。その
ためには,システムトラブル等 が発生 した場合,わざわざデータセンターに行 かず,
遠隔地 から対処 できるようにし,かつ未 だに利用企業 に根強 い「何 かあったら,とり
あえず現地(データセンター)にかけつける」「データセンターが遠隔地 にあると,万
一何 かあったら問題 だ」という価値観 を転換 する必要があると考えられる。ただし郊
外型データセンターの場合,
都心 から遠隔地 にあるため,
専用回線 の利用料金 が高 くな
36)
ることや,情報伝送時 の遅延 が無視 できなくなる場合 もあるという難点 がある 。
人件費 の削減 や減価償却費 の削減 については,データセンター運営 の自動化推進
や,設備 や IT 機器 の標準化 の推進,グローバルレベルでのデータセンター運営 など
を検討していく必要がある。一方で,建築基準法や消防法を見直すことによる,デー
タセンターの建築コストや運営コストの低減,ビジネスのスピードに対応 したデータ
センターの変革 を可能 にすること(建設期間 の短縮化,柔軟 なレイアウト変更 など)
も必要 であると考 えられる。
(2)
災害等に耐えうる信頼性の高いデータセンターの構築
国内データセンターが海外 のデータセンターと伍 していくためには,地震等 の災
害 や停電 に耐 えうる信頼性 を確保 することが必要 である。既 に最新鋭 のデータセン
ターには免震 ・ 制震装置 の設置 などの対策 がとられているが,データセンター個々
に信頼性 を高 める対策 を打 つと建設コストや運営コストが上 がってしまう可能性 が
高 い。複数 のデータセンターを仮想的 に一つのデータセンターとして統合できれば,
ある程度コストを押 さえながら信頼性 を高めることが可能となるものと考えられる。
また米国 などの海外 のデータセンターにおいては,テロ攻撃 などに備 えて広大 な
― 103 ―
小 川 裕 克 ・ 永 井 義 明
敷地 を確保 し,データセンター建屋 への直接的 な攻撃 を困難 にしているところも多
いという。一方 で日本 のデータセンターの場合,隣 の建物 と近接 していたり,道路
から近 い場合 が多 い。テロのリスクは低 いと考 えられるが,将来的 にテロへの対応
をどう考 えるかも課題 の一 つと考 えられる。
(3)
データセンターのライフサイクル管理
最近 のサーバーの高密度化 ・ 高速化,さらには仮想化,並列処理 の普及等,データ
センターで運営 するシステムの技術革新 は速 く,数年 で陳腐化 してしまうほどのス
ピードで変化してきている。しかも災害等への対応やエコ(ecology)への対応等,デー
タセンターへの要求 は益々高 まってきている。しかし電気設備 や空調設備等 の耐用
年数 は 15年程度 と長 い。ラック当 たりの電気容量 も2KVA 以下 のものも多い
37)
が,
現在 では 10 ~ 20 KVA が当 たり前 になってきている。さらに建物 にいたっては耐用
年数 が 50年位 と,機器 や設備 との耐用年数 との差異 が大 きい。データデンターの競
争力を維持するためには主要設備の更新も含めたライフサイクル管理が課題となる。
富士キメラ総研 によると,2012年 における竣工 から 20年以上経過 したデータセン
ターの割合 は,全体 の 38 %近 くを占 め,今後数年 で少しずつ拡大するという
38)
。つま
り現在稼働中 の 40 %以上 のデータセンターの価値 が今後大 きく低下 していくこと
になる。また老朽化したデータセンター(ファシリティ)を所有する事業者の対応は,
「移設 を進 めている」が 46 %,
「設備更改 で対応」が 38 %,
「現状維持」が8%と,移設
が一番多 いという
38)
。
以上 を参考 に考 えられる対応策 をまとめて見 ると,①データセンター内 の空調 や
UPS 等 のファシリティ機器 を計画的 に入 れ替 えて対応 する,②古 いデータセンター
で稼働 しているシステムを新 しいデータセンターに移行 し,古 いデータセンターは
廃棄 する,③ IT-BCP の一環 で,古 いデータセンターを活用 する,④パブリッククラ
ウドサービスや ASP サービスとして活用 し,利用企業 にとってデータセンターの存
在 をあまり意識 しなくても済 むようにする,⑤データセンターの新設 にあたっては
コンテナ型 を採用 する等,データセンターの建設期間 を短 くし,建設コストを低 く
抑 える,となる。いずれにしてもデータセンター事業者 としては重要 な経営判断 が
必要 となる。
(4)
データセンターの所有形態の選択
「 2 . 4 データセンターの現状」で述 べたように,JDCC によると,2012年 における
稼働率 60 %以下 のデータセンターは(有効回答数 の)45 %に達 している。データセ
ンターのライフサイクル管理 と併 せて,データセンターを自社所有 にすべきか,建物
もしくはフロアを借 りてデータセンターを構築 するのか,さらにはデータセンターそ
のものを他 の事業者 から借 りて事業 を行 うべきか,重要 な経営判断 が必要 となる。
― 104 ―
データセンター及びデータセンターを活用したビジネスの将来動向に関する調査・研究
(5)
データセンター事業の拡大(事業戦略)
狭義 のデータセンター事業(ハウジングとホスティング,クラウドサービス(IaaS・
PaaS)
)の規模 は,2012年度 で 8 , 700億円程度,2017年度 でも1兆 700億円程度 の規
模 と,それほど大 きいわけではない。また国内データセンターの大半 を占 める都市
型データセンターの場合,建設コスト等 が高 いため,データセンター事業者 にとって
iDC(インターネットデータセンター)やハウジングは採算性 が低 い。一方 で海外大手
データセンター事業者 はデータセンターの標準化 を徹底的 に進 め,低コストでデー
タセンターを構築 ・ 運営 しているという。今後海外大手データセンター事業者 との
競争 も激化 していく可能性 がある。
このような状況 において,データセンター事業 を拡大 していくためには,データセ
ンターを活用 した,付加価値サービスを拡大 していく必要 があると考 えられる。
現在,外部データセンター利用企業 の 80 %近 くは従業員数 1 , 000名以上 の大規模
39 )
企業 である 。中小企業 の多 くは,サーバー等 を自社 のサーバールームで運用 して
いる。データセンターを利用 した方 が電力消費 の減 りや運用 の煩 わしさが無 くなる。
またエコにも貢献 でき,自社オフィスが計画停電 に巻 き込 まれてもサーバーの運用 は
基本的 に問題 ない。しかし移行コストや移行作業 の煩 わしさ,柔軟 な運用 ができな
くなるなどにより,中々進 まない。データセンターを利用 していない企業 に対 して,
データセンターへの移行を促し,ビジネスを拡大する努力も重要であると考えられる。
4.データセンターの技術革新と課題
データセンターで利用 されている技術 は,建屋及 び空調・電源,そしてサーバー等
の IT 機器 の技術革新等,幅広 い分野 にまたがっている。
4. 1 データセンター建屋・設備の技術革新
(1)
建屋
ビル型データセンターのフロアは,フリーアクセスが一般的 に使用 されているが,
最近 これを更 に進 め,サーバー格納フロアの下 にメンテナンスフロアを作 り,IT エ
ンジニアと設備業者 の動 きを分離 し,セキュリティ強化 や設備 のメンテナンス効率向
上 を図ったダブルデッキシステムを採用 したデータセンターが出現 してきている
40)
。
ただし,このダブルデッキシステムは建設コストが上 がってしまうという難点 があ
る。
― 105 ―
小 川 裕 克 ・ 永 井 義 明
一方,クラウドサービスを指向 するデータセンターでは,低コストで効率的 な空調
を狙ってフロアは敢 えてフリーアクセスとしないものもある。またデータセンター
によっては,建物 の外壁 にガリバリューム鋼板 を使って簡素化 し,コストを抑 えて
いるものもある。
(2)
空調設備
データセンターの空調 はエネルギー消費,コストの両面 で極 めて重要 である。コス
ト削減策 の一 つとして,最近寒冷地 を中心 に外気空冷 を採用 するケースが出 てきて
いる
41 )
。低温 の外気 を取 り入 れ,余分 な湿気 や塩分 を取 り除 き,サーバーからの排
熱 を伴った空気 と混合 させて 20 ~ 22 ℃程度 の空調適温 にしてサーバールームへ取
り入 れる仕組 みである。
またサーバーの動作保証温度 を通常 の 35 ℃から 40 ℃に上 げることができれば,空
調 のための使用電力 を節約 できる。そこでサーバーに使用 する部材 の耐熱性能向上
や,冷却ファンを強力 にするなどの冷却部材 の改良,エアフローの改善 により,40 ℃
で使用可能 とする技術 が開発 されてきている
42)
。
更 にトータルシステムとして空調 を自動制御 し,継続的 に改善 を行 える空調自動
制御システム(DCIM: Data Center Infrastructure Management)が開発されている。
この中 には,人工知能エンジンを使用 して見 える化 と更 なる効率改善 を目指 したシ
ステムも開発 されている
43)
。
(3)
電源供給設備
(a)高電圧直流給電方式の登場
データセンターは電力供給元 となる電力会社 の送電線 から 66 , 000V の交流 で受電
し,データセンター内 で必要 とする電圧 に降圧 しサーバーや空調設備 に給電 してい
る。通常 のデータセンターでは,図表 12(a)に示 すように,交流/直流,直流/交流
変換 を行ってサーバーに交流 で給電 している。このため電力効率 は 60 ~ 80 %と低
くなってしまう。この変換 による電力ロスを回避 するため,図表 12(b)のように直
流給電方式 を採用 することにより電力ロスが減少 する。但 し,サーバーで使用 する
12 V 程度 の低電圧直流 では大電流 による電力ロスが発生 するので 400 V 程度 の高電
圧直流給電 の技術 が開発 されてきている。この高電圧直流給電 により,電力利用効
率 が約 20 %削減 できたと報告 されている
44)
。
― 106 ―
データセンター及びデータセンターを活用したビジネスの将来動向に関する調査・研究
図表 12.データセンターの電源システム
(a)現在主流 の交流電源システム
STS
STS
UPS
UPS
AC
AC
AC
AC
DC
DC
PDU
PDU
サーバーラック
サーバーラック
サーバー
サーバー
AC
AC
AC
AC
DC
DC
電源ユニット
電源ユニット
CPU
CPU
メモリ
メモリ
HDD
HDD
バッテリ
バッテリ
電力効率 60~80%
60~80%
電力効率
(b)高電圧直流給電 による電源システム
AC
AC
サーバーラック
サーバーラック
PS ラック
ラック
PS
AC
AC
PDU
PDU
DC
DC
DC
DC
集中電源
集中電源
サーバー
サーバー
CPU
CPU
メモリ
メモリ
HDD
HDD
HDVC
HDVC
バッテリ
バッテリ
電力効率 90%
90%
電力効率
UPS(無停電電源装置),STS(電源切 り替 え装置),HDVC(高電圧直流給電)
,PDU(分電盤)
(出所)「さくら田中社長 が考 えたポスト石狩 の 「予想外」 と 「未来」」
,2013年2月4日 を参考 に筆者編集
(b)分散型UPS給電方式の採用
ビル型 デ ー タセンタ ー の場合 は,UPS や蓄電池 は共通 の設備 として ビルの電源
給電フロアに設置 されるが,モジュール型 やコンテナ型データセンターでは分散型
UPS 給電方式 により,サーバーモジュールやコンテナごとに UPS や蓄電池 を配置 し,
サーバー能力 のスケーラブルな変更 を可能 とする技術 が開発 されてきている。
4. 2 データセンター内 IT 機器の技術革新
(1)
サーバー・ハードウェアの技術革新
現在 のデータセンターは,サーバーの設置密度 を上 げるためにラックマウント方式
が主流 となり,多 くの場合ブレード型サーバーが使用 されている。更 に,ブレードの
厚 さを3U(1U は 1 . 75インチ)にして縦 に複数 のサーバー(例 えば8個)モジュール
を詰 め込 むことによる高密度化方式 が採用 されるようになった。サーバーに使用 さ
れる CPU はインテル社 の IA プロセッサーが主流 となっている。今後 は,より消費電
力 の少 ないインテル ATOM アーキテクチャーの CPU や低消費電力 でスマートフォン
― 107 ―
小 川 裕 克 ・ 永 井 義 明
向 けに急拡大中 の ARM アーキテクチャーの CPU が増 えていく可能性 もある。
個々のサーバーの冷却 については,現在,空冷 が主流 であるが,更 に冷却効率 の良
い液冷方式 の研究開発 が行 われている。しかし,サーバーモジュールや冷却用 の液
体 を循環 させるパイプを張 り巡 らせる必要 があるなど,メンテナンス性 に課題 が残
ると言 われている。一部 には熱 を発生 するサーバーを冷却液 の中 に浸 ける方式 も検
討 されている
45)
。
ストレージに関 しては,高速 の SSD(Solid State Drive: フラッシュメモリを用
いた記憶装置)の採用 が増加 してきており,高速処理 は SSD で行 い,大量 のデータの
格納 にはハードディスクを利用 する形態 が増 えている。
(2)
サーバーの仮想化技術の進展
サーバーに搭載 されているオペレーティングシステム(OS)は,WindowsServer や,
Linux,AIX などの Unix 系 が多 い。データセンターでは,これらの OS を VMWare 社
の vSphere などを使った仮想マシン(Virtual Machine)の上 で運用 されるケースが
通常 となってきている。このサーバーの仮想化 により,処理能力 をスケーラブルに
変更 できるようになり,データセンターの利用価値 が大幅 に向上 してきている。
図表 13.SDDC(Software Defined Data Center)の構成
I T 管理者
企業内ユーザー
顧客/消費者など
各種アプリケーション・ソフトウェア
ハウジング型
プライベートクラウド
ホスティング型
プライベートクラウド
パブリッククラウド
Software Defined Network
スイッチ/ルーター
スイッチ/ルーター
スイッチ/ルーター
Software Defined Server(Virtual Machine)
サーバー
サーバー
サーバー
Software Defined Storage
ストレージ(SSD,HD)
ストレージ(SSD,HD)
Software Defined Data Center
(出所)筆者作成
― 108 ―
ストレージ(SSD,HD)
データセンター及びデータセンターを活用したビジネスの将来動向に関する調査・研究
(3)
ネットワークの仮想化技術の進展
最近注目 されているネットワーク仮想化 の技術 として,Open Flow と SDN(Software Defined Networking)がある。これらの技術 は現在進行中 の仮想化技術 であ
るが,これをデータセンター内 やデータセンター間 で利用 できれば,複数 のデータセ
ンターをあたかも一 つのデータセンター(SDDC: Software Defined Data Center)
46 )
のように扱 うことが可能 となる(図表 13)。今後 SDDC が利用 できるようになると
データセンターの信頼性向上 や CPU 及 びストレージの拡張等 が柔軟 にでき,災害対
策 にも活用 できるようになる。
4. 3 データセンターに関する技術の標準化の推進
仮想化技術 を中心 としたデータセンターを柔軟 に利用可能 とする技術 が進展 する
に従 い,データセンターに関係 した技術開発分野/領域 が拡大 してきており,世界
の有力 な事業者 も単独 でデータセンターを構築/運営/管理/利用 するための技術
の開発 を進 めるのが難 しくなってきている。これを解決 する方策 として,共同 で技
術開発 する機運 が高 まってきている。
(1)
ソフトウェアを中心とした標準化技術動向
ソフトウェアの場合,オープンソースソフトウェア(OSS)として技術開発 が進
むケースが多 くなっている。データセンター事業者側 も,特定 のデータセンター関
連機器 や ソフトベンダ ー に ロ ッ クオンされるのを避 けるため,あるいは,力 のあ
るデータセンター事業者 は自社 で OSS ベースのソフトウェアをカスタマイズする
ため,オープンなシステム基盤技術 を求 めている。データセンターに関連 した有力
な標準化技術動向 と し て,Cloud Stack
47)
と Open Stack
48)
が挙 げ ら れ る。Cloud
Stack は IaaS を構築 し管理 するためのオープンソースのソフトウェアであり,Open
Stack はモジュール化 された各コンポーネントに明確 な API(Application Program
Interface)が規定 され,Web との親和性 も高 い。
(2)
ネットワークに関連した標準化技術動向
49)
(a)Open Flow
既存 のネットワーク機器 は自律的 に収集 した情報 を元 にしてパケットの転送 ・ 振
分 を行 う。L 2スイッチは MAC アドレスを用 いて転送・ 振分 を行 い,ルータは経路
制御プロトコルを用 いて転送 ・ 振分 を行 う。どちらのケースもネットワーク機器自
体 がパケット受信/送信機能 と転送/振分制御機能 との両機能 を統合 して実装 され
ている。つまり,データセンター事業者/ユーザーがネットワーク機器 の制御 を自身
― 109 ―
小 川 裕 克 ・ 永 井 義 明
のデータセンターの状況 に合 わせて改造 しようとすると,ネットワーク機器事業者
が持 つ製品内部 の設計情報 の公開 などの問題 が発生 し,柔軟 なネットワークを構成
することができない。
そこで,ネットワーク機器の中の Data Plane(パケットデータの送受信を行う部分)
と Control Plane(転送/振分制御部分)とを分離 し,Control Plane をソフトウェア
でユーザが実装 できるようにして,柔軟 に制御可能 なネットワークを構築 できるよ
うにする技術 が Open Flow である。
Open Flow の標準化 は現在,2011年 に設立 された Software Defined Networking
(SDN)技術 の推進団体 である Open Networking Foundation(ONF)により推進 さ
れている。
(b)SDN(Software Defined Networking)
50)
ソフトウェアによって物理的世界 とは異 なる仮想的 なネットワークを構築 する技
術 であり,データセンター事業者 やネットワーク事業者 あるいはユーザー企業 が物
理的 なネットワークの制約 から離 れて自身 のニーズに即 したネットワークを柔軟 に
構築 するための技術 である。先述 の Open Flow は SDN を実現 するための重要 な要
素技術 となっている。
現時点 の開発状況 は ONF の参加メンバーがそれぞれの立場 で提案 を行 い,一部先
行製品化 している段階 である。SDN の対象範囲 は広 く,広範 な適用 は今後 に期待 さ
れる部分 が多 いが,データセンター内 あるいは少数 のデータセンター間 などの SDN
は実験的 な適用 が始 まっている。今後,更 に標準化 が進展 し,標準 に準拠 する製品
が発表 されるに従 い,順次応用 が拡大 すると期待 される。
(3)
ハードウェアを中心とした標準化技術動向
ハードウェアの標準化を進め,低コストでスケーラブルなデータセンターを構築可能
とするための技術開発が開始された(2011年4月)
。この技術開発は,SNS(Social Networking Service)大手 の Facebook 社 の提案 と主導 で Open Compute Project
51)
により行 われている。
Open Compute Project は,インターネットサービス業者 の観点 から比較的最近 の
コンピュータ技術の成果やトレンドを取り入れており,新仕様のラックサイズやサー
バーへの直流給電 を積極的 に取 り入 れるなど,特 に低コストで大量 のコンピュータ・
リソースを必要 とするパブリッククラウド型データセンターの技術開発 に影響 を与 え
る可能性 が高 い。
― 110 ―
データセンター及びデータセンターを活用したビジネスの将来動向に関する調査・研究
4. 4 データセンターにおける技術的課題
(1)
空調設備における課題
(a)外気空冷方式
近年,世界的 に寒冷地 にデータセンターを立地 させ,低温 の外気 を用 いた空調方
式 が採用 されてきているが,低温外気吸入時 に粉塵,雪 など異物 を取 り除 くだけで
はなく,年間 を通 じて適切 な温度 と湿度 を維持 できるように,気候条件 を綿密 に調
査 して空調制御システムを構築 する必要 がある。また,サーバー室全体 の熱発生源,
冷気/暖気 のエアフローをリアルタイムに情報収集 し制御 するシステムが必須 であ
る。制御システムを精密 に作成 するためには熱発生源 や空気 の流 れなど精緻 なモデ
ル化 が必要 となる。サーバー機器 や空気 の流 れの設計 をデータセンター側 で設定 で
きるクラウド型データセンターは効果 が期待 できるが,ハウジング型 の場合 はクラ
ウド型 ほど大 きな効果 を得 ることが容易 ではない可能性 がある。
(b)高温動作サーバー技術
サーバーを 40 ℃などの高温 でも動作保証 するためには,サーバー機器内 の特定 の
部材 が高温 にならないよう平均的 に温度 を維持 する必要 がある。 最 も熱 を発生 す
る重要 な部材 はプロセッサーであるが,現在主流 であるインテル社 の Xeon 系列 の
プロセ ッ サ ー は高性能 ではあるが発熱量 が大 きい。 性能 は低 いが発熱量 が少 ない
ATOM アーキテクチャーのプロセッサーへ移行 するなど,サーバーに使用 する個々
の部品 の発熱量 と耐熱性 の観点 からの見直 しを進 める必要 がある。
(c)DCIM(Data Center Infrastructure Management)
空調 をトータルシステムとして制御 する DCIM が注目 されている。DCIM はサー
バー室 の熱発生源 からのエアフローをモデル化 し,各機器 に設置 されたセンサーか
ら温度 や湿度データを収集 し,制御アルゴリズムに基 づいてリアルタイムで最適 な
空調 を実現 するシステムである。クラウド型データセンターの場合 は,データセン
ター側 の計画 に従って機器 を導入 できるので精緻 なモデルを構築 できるが,ユーザ
が独自 の仕様 のサーバーを導入 するハウジング型データセンターではモデル化 が難
しい。気象条件 の変動 やサーバー機器 の突然 の不具合 など,サーバー室 の環境条件
が変動 した場合 に適切 に追随 する制御アルゴリズムの作成 が課題 となる。この課題
への対策 として,人工知能エンジンを使って柔軟 に対応 することを目指 したシステ
ムが研究開発 されてきている。
― 111 ―
小 川 裕 克 ・ 永 井 義 明
(2)
電源供給設備に関する技術的課題
(a)高電圧直流給電方式の課題
実証実験 では約 20 %の電力削減効果 が報告 されているが,直流給電 ができるサー
バーが普及 しておらず高価格 のため,システム全体 のコスト削減 には結 びついてい
ない。今後 の直流給電サーバーの技術開発/製品開発 が期待 される。なお,直流給
電技術 が注目 されてきた背景 には,パワー半導体 による電力変換効率 の向上 がある
が,この技術 は従来型 の給電方式 でも効率 の向上 を望 める側面 もあり,今後 の技術
動向 が注目 される。
(b)分散型UPS給電方式
UPS を分散化 することにより,サーバー能力 のスケーラブルな変更 が柔軟 にでき
ることになるが,個々の UPS や蓄電池 は小容量 となり,全体 の効率 は一般的 に低 く
なる傾向 がある。また,トータルシステムとしての見 える化,効率化 のための技術開
発 が必要 となる。
(c)リチウムイオン蓄電池
本調査研究 の中 で訪問 したデータセンターは全 て安全性 を重視 し 100年以上 の実
績 のある鉛蓄電池 を使用 していたが,鉛蓄電池 はエネルギー密度 が約 35 kwh/kg で
エネルギー効率 も 87 %程度 である。このためデータセンター内 で大 きな設置場所 を
必要 とし,電力ロスも大 きく発生 する。エネルギー密度 が約 4倍 でエネルギー効率 も
95 %と高 いリチウムイオン蓄電池 の利用 が検討 されている。開発当初 は携帯電話 や
ノート PC などの小型電子機器 で利用 されてきたが,最近 は,電気自動車 や旅客機 で
も使用されるようになってきた。安全性の確認が最重要ではあるが,データセンター
での今後 の利用 が期待 される。特 に,エネルギー密度 が高 いので,コンテナ型/モ
ジュール型データセンターの分散型電源供給ユニットに好適 であり,電源供給能力 を
柔軟 に変更可能 となることが期待 される。
5.データセンター事業及びデータセンター関連技術の今後の方向性
(1)
データ量の増加に伴い,データセンターの役割も拡大
日本情報システム・ ユーザー協会(JUAS)の 2012年度 の調査 によると,BCP 対策
52)
として外部データセンターの活用 を検討中 の企業 が 22 . 8 % (導入済 み・試験導入・
導入準備中 は 48 . 6 %)となっている。データセンターとインターネットを中心 とした
― 112 ―
データセンター及びデータセンターを活用したビジネスの将来動向に関する調査・研究
サービスであるクラウドコンピューティングも今後拡大 していくものと予想 されて
いる。以上 から,データセンターの役割 は今後 ますます拡大 していくものと予想 さ
れる。
一方調査会社 IDC 社によると,
「全世界で生成・複製されるデジタル情報の総量(デ
ジタルユニバース)は,2012年 の 2 . 8 ZB(ゼッタバイト : Zetta Byte)から,2020年
には 40 ZB に急増 し,企業データセンターで管理 される情報量 は 14倍 になると見込
まれる」という
53)
。これらのデータの大半 は従来 の観点 からするとビジネス等 で活
用できない “つまらない”情報であったが,宝の山と変わっていく可能性が高い。デー
タセンターを核 にどういうアイデアを出 していくかがビジネス成功 の鍵 となるもの
と予想 される。
(2)
モジュール型/コンテナ型データセンターの拡大
老朽化 したデータセンターに代表 されるように,IT 革新 や利用者 のニーズの変化
に対応 できないデータセンターは今後淘汰 されていくものと考 えられる。ここ数年
の期間 で見 る限 り,都市型データセンターの需要 は高 く,低コストで柔軟 に増設可
能 なモジュール型/コンテナ型データセンターの拡大 の割合 は小 さい。しかしなが
ら,利用中 のデータセンターの選択理由 で一番多 いのが「運用コストが安 い」ことで
あり,次 が耐震・免震 や防火 などの安全性 が高 いことである
54)
。長 い目 で見 た場合,
何 らかの付加価値 が無 い限 り,運用コストの高 いデータセンターが生 き延 びる可能
性 は,低 いものと予想 される。
また企業 がパブリッククラウドを利用 する場合,データセンターの建屋構造 をそ
のサービスの重要 な選定条件 にするということは考 えにくい。
以上 から今後 10年近 くの長 い期間 で考 えると,土地代 が安 い地方中心 に,コン
ピュータの処理能力 を柔軟 に拡大 できるモジュール型/コンテナ型データセンター
が拡大 していく可能性 が高 い。
(3)
データセンターの標準化の進展とインテリジェントデータセンターの実現
データセンターの標準化 も進展 していくものと予想 される。現在データセンター
で使 う各機器類,例 えば電源 など,海外 の標準品 は国内 で使 えない。JIS 規格 と合
わないためである。 標準化 の流 れに乗 れば,これも解決 されていくものと予想 さ
れる。現在,サーバーや空調設備等 のファシリティの仕様 の標準化 とオープン化 を
推進 している団体 が オ ー プンコンピ ュ ー トプロジ ェ クト(OCP:Open Compute
Project)である。2014年1月現在で,OCP への日本国内の参加者(団体,企業,個人)
は 60近 くとなっている。
デ ー タセンタ ー 関連技術 の標準化 が進 むことにより,将来的 には複数 の デ ー タ
センターをあたかも一 つのインテリジェントデータセンター(Software Defined
― 113 ―
小 川 裕 克 ・ 永 井 義 明
Datacenter)として運営することが可能になり,データセンターの信頼性向上と共に,
システム資源 の柔軟 な活用,さらに BCP 対応 が容易 にできるようになるものと期待
される。
(4)データセンター関連の個別技術の進展
データセンターのエネルギー消費量 の削減 やコスト削減 を追求 した空調 ・ 電源供
給関連の技術開発が今後更に進展すると考えられる。特に今後予想される膨大なデー
タセンターの電力需要増 に対 し,超電導直流送電技術 の進展 が大 いに期待 される。
周知 のとおり,電力 の送電 に当 たっては伝送路 の電気抵抗 により,大量 の電力ロ
スと発熱 が生 じてしまう。データセンター内 も同様 で,発生 した熱 を冷却 するため
にさらに電力 を消費 している。伝送路 の電気抵抗 を限 りなくゼロに近 づければ電力
ロスを減 らし電気抵抗 による熱 も取 り除 くことができ,データセンターの電力コス
トを劇的 に減 らすことが可能 となる。これが可能 となれば国内 のデータセンターの
競争力 は大 いに増 すものと期待 される。
この伝送路 の電気抵抗 を ゼロとする有望 な技術 として超電導送電 があり,特 に,
従来 の交流超電導送電 よりも効率 の良 い超電導直流送電 が注目 を集 めている
55)
。超
電導直流送電技術 を使 えば,発電 に適 した遠隔地 の発電所 からデータセンターへの
大量 の電力送電 を効率的 に行 うことが可能 になる。
夢 の技術 である超電導直流送電 には,現在 いくつかの課題 があり,これらを解決
すべく実験・研究 が行 われている。
①超電導 を維持 するためには- 200 ℃近 くまで電導体 を冷却 する必要 があり,この
ための冷却媒体(通常は液体窒素)を安価に製造するエネルギーが必要である。デー
タセンターの中 には近辺 に LNG の基地 があり,LNG から気体 の天然ガスに戻 すと
きの気化熱 を利用 して液体窒素 を安価 に製造 することが可能 なケースがある。北
海道 の石狩市 は近 くに LNG を用 いた発電所 が計画 されており,気化熱 を用 いて
液体窒素 を安価 に製造 できる。超電導直流送電技術 を採用 したプロジェクトが北
56)
海道石狩市 で現在進行中 である(参照 石狩プロジェクト )。
②極低温 の超電導状態 から常温状態 に変換 して電力 を取 り出 せるようにするための
終端装置 の部分 で冷却熱エネルギーのロスが大 きくなる。従来 からこの課題 は指
摘 されており,特 にデータセンター構内 の短距離区間 で超電導送電 を行 う場合 に
重要 となる。この問題 に対 し,ペルチェ素子 を用 いた熱効率 の極 めて良 い終端装
置 が研究開発 され,実証プラントで良好 な結果 を得 ている
57)
。
③超電導送電線 が高価 である。超電導送電 が実現 する電線 の素材 は,ビスマス系 な
ど限 られた希少金属材料 を必要 としていることや未 だ世界 で大量 に使 われていな
いため,通常 の電線 に比 べて高価 である。しかし,今後,超電導送電 が普及 すれば
コストも急速 に低化 するものと期待 される。
― 114 ―
データセンター及びデータセンターを活用したビジネスの将来動向に関する調査・研究
④革新的技術 であるため,安全性 の懸念 がある。超電導線 の周 りを-200 ℃近 くの
低温 に保 つ必要 があるため,超電導線 の周 りに液体窒素 を流 し,その外側 を真空
にすることにより断熱 する構造 のケーブル管 を施設 する必要 があるが,このケー
ブル管 が事故等 により破裂 した場合 の環境 に与 える影響 などの調査研究 が更 に
必要 と考 えられる。これについては,現在進行中 の石狩プロジェクトの実証実験
結果 による実証データの積 み重 ねにより克服 できると期待 される。
6.おわりに
データセンターは,基本的 にあまり目立 たない裏方 の存在 である。データセンター
のセキュリティ確保 という観点 からすると当 たり前 であり,企業 のビジネスを支 え
る基盤 でしかなかったからである。しかしながら,今後データセンターの重要性 が増
してくるとしたら,何 らかの形 でデータセンターを表舞台 に出 す必要 があろう。
まずデータセンター運営担当者 やビジネスでデータセンターを利用 している社員
の意識改革 が必要 である。データセンターの運営担当者 の多 くは技術的 な面 に特化
し,ビジネスの観点 から見 たデータセンターのあり方 について考 えることはあまり
無 いように見 える。彼 らにとって,情報システムや IT 機器・設備 の安定稼働 が最優
先事項 であるからである。しかしながら,データセンターの役割 がビジネス上益々重
要 になっていくとしたら,データセンターの運営 を担 う技術者 も,ビジネスの素養
も身 につけ,ビジネスの視点 からのデータセンターのあり方 を提案 できる能力 が必
要 となろう。
また,ビジネスでデータセンターを利用 している者 にとっては,データセンターが
安定的 に稼働 しているのが当 たり前 であり,データセンターを特別 に意識 しない場
合 が多 い。しかしながら今後 はデータセンターを戦略的 な武器 として活用 すること
を考 えていくことが必要 であると考 えられる。
一方データセンターを構築 し運営 するにあたっては,様々な分野 の専門家(専門企
業)の参加 が必要 となる。 そこで利用 されている技術 は,建屋 から空調設備等 の各
種設備,さらにはサーバー等 の IT 機器 など広範囲 に亘っているからである。しかも
今後 のエネルギー問題 やエコに対応 すべき技術 は発展途上 のものも多 い。データセ
ンター事業者 は関係各社 の総合力 を結集 し,競争力 のある最先端 のデータセンター
を構築 し運営 していく必要 がある。
今後 のデータセンター関連技術動向 が注目 される。
― 115 ―
小 川 裕 克 ・ 永 井 義 明
注
1)
新 しいデータセンターではホット・アイル/コールド・アイル方式 を採用 しているケースが
増えている。これは熱排気の通路(ホット・アイル)と冷気の通路(コールド・アイル)を分け,
熱効率 を高 める方式 である。
2)
ハロンガスはオゾン層 を破壊 する危険性 があり,地球環境 に悪影響 を及 ぼすということで,
最近 では人体 に無害 の窒素ガスを採用 しているデータセンターが増 えている。
3)
ハウジングサービスのように,サーバー等を利用企業が自らデータセンターに持ち込む場合,
情報システムのセキュリティは基本的 に利用企業 の責任 で行 うことになる。
4)
当時 は一般的 にコンピュータセンターまたは計算センターと呼 んでいたケースが多 かった。
5)JDCC「 2012年度データセンター調査結果報告」による。データセンター事業者 が所有 して
いるデータセンターの数である。関東は東京,神奈川,千葉,埼玉,茨城,栃木,群馬と定義し,
関西(近畿)は大阪,兵庫,京都,滋賀,奈良,和歌山 の区域 を一体 とした広域 を指 している。
6)
インターネットメディア総合研究所「データセンター調査報告書 2012」インプレス R&D,2012
年8月8日,資料 3 . 5 . 11を参考 に,月数回以上 の訪問頻度 のものを算出 した。
7)
国土交通省都市局 の「平成 24年度中部圏開発整備計画 の実施 に関 する状況 」によると,平
成 22年 における中部圏 の名目 GDP は全国 の 17 . 7 %( 87 . 8兆円)となっている。また中部圏
の GDP 構成比 をみると,製造業 が 29 . 1 %と一番高 く(全国 では 18 . 5 %),次 にサービス業
16 . 9 %(同 19 . 6 %)が続 いている。なおここでの中部圏 とは,富山,石川,福井,長野,岐阜,
静岡,愛知,三重及 び滋賀 の区域 を一体 とした広域 を指 している。
8)
JDCC「 2012年度データセンター調査結果報告」による。JDCC は中部圏 を新潟,富山,石川,
福井,山梨,長野,岐阜,静岡,愛知,三重 と定義 し,国土交通省 の定義 と若干異 なる。
9)
「
2013年版中小企業白書」によると,愛知県 の中小企業 における常用雇用者数 ・ 個人従業者
総数 の割合 は 66 . 6 %と,東京(36 . 3 %),大阪(62 . 3 %)に比 べて高 い。
10 )富士キメラ総研「データセンタービジネス市場調査総覧 2013年版」(下巻 p. 17)によると,
業種別の外部データセンター利用の割合は,製造業は 53 . 5%,流通・サービス業は 54 . 3%と,
業種全体 の 56 . 1 %に比 べて若干低 い。
11 )インターネットメディア総合研究所「データセンター調査報告書 2012」参照。回答ユーザー企
業 140社。
12 )JDCC「 2012年度データセンター調査結果報告」参照。回答企業 は 84社( 338データセンター)
。
うち土地/建物と設備の所有形態に関する無回答は共に 50センター(14 . 8%)となっている。
13 )
JDCC「 2012年度データセンター調査結果報告」参照。有効回答数 292のうち,データ専用ビ
ルが 156,多目的ビルが 136であった。
14 )富士キメラ総研「データセンタービジネス市場調査総覧 2013年版」
(上巻 p. 55 )参照。
15 )2006年 にサン・マイクロシステムズ(現オラクル)が発表 した「Project Blackbox」がコンテナ
型データセンターの先駆 けとされている。
― 116 ―
データセンター及びデータセンターを活用したビジネスの将来動向に関する調査・研究
16 )
野村総合研究所「平成 21年度産業技術研究開発委託費(産学連携ソフトウェア工学実践事業
(クラウド・ コンピューティングに関 する国内外 の精度 ・ 技術動向等 の調査研究))報告書」
2010年3月 によると,建築基準法上コンテナ型 も建築物 と見 なす自治体 もあるという。こ
の場合,建築確認申請 や建築工事届,
(準)耐火建築物 の確認等 が必要 となり,コンテナ型 の
低コスト,迅速性 という観点 でのメリットが削減 されてしまう。ちなみに米国 ではコンテナ
型 は建築物 として扱 われていない。
17 )詳細 については JDCC「データセンターファシリティスタンダードの概要」参照。JFS は米国
の民間団体 Uptime Institute が作成 した「Tier」を日本 の実情 に合 わせて作成 したファシ
リティ基準 である。
18 )JDCC「 2012年度データセンター調査結果報告」によると,有効回答数 260のうち,ティア1
が2(0 . 8%),ティア2が88( 33 . 8%),ティア3が104( 40 . 0%)
,ティア4が60( 23 . 1%)となっ
ている。
19 )JDCC「データセンターファシリティスタンダードの概要」2010年 10月 18日(p. 3 )参照。
20 )IT‒BCP とは情報システム等,企業(組織)の IT に関連した事業継続計画(BCP)のことをいう。
21 )JDCC「 2012年度データセンター調査結果報告」参照。
22 )
富士キメラ総研「データセンタービジネス市場調査総覧 2013年版」(上巻 p. 12 )参照。サー
バールームの供給過剰 により,2014年新設分 は大幅 に減 るものと見込 まれている。
23 )日経コンピュータ 2012年 10月 25日(No 820)号(pp. 46 ~ 49)参照。
24 )CREIS Japan によると,2013年 12月 における主要都市 の空室率 は,東京 23区 6 . 3 %,大
阪市 9 . 4 %,名古屋市 10 . 3 %,札幌市 7 . 9 %,福岡市 9 . 2 %となっている〈http://www.cbrecreis.jp/〉。
25 )古 いデータセンターではラック当 たりの電気容量 も2KVA 以下 のものが多 いが,現在 では
10 ~ 20 KVA が当 たり前 になってきている。また床荷重 もこれまで 800 ~ 1 , 000 kg/ ㎡ が
一般的 であったが,現在 では最低 でも 1 , 500 kg/ ㎡ の床荷重 が必要 とされてきている。さら
にデータセンターの電力効率 を示 す PUE は,これまで 2 . 0程度 だったものが,現在 では 1 . 4
以下 が求 められるようになってきている。ここで,PUE= データセンターの消費電力 ÷ デー
タセンター内 IT 機器消費電力 で定義 される。
26 )建物 やフロア等 の不動産賃貸契約 はハウジングに含 めない。
27 )経済産業省「電子商取引 に関 する市場調査 の結果」2013年年9月 27日〈http://www.meti.
go.jp/press/ 2013 / 09 / 20130927007 / 20130927007 .html〉
28 )ハウジング及 びホスティング,通信回線サービスの市場規模 は富士キメラ総研 の調査 を参考
にした。また PaaS・IaaS とプライベートクラウドについては MM 総研「国内クラウドサー
ビス市場,需要動向調査」2013年8月 29日 を参考 にした。SaaS/ASP については野村総研
「IT ナビゲーター 2014年版」(第3章ネットワーク市場)を参考 にした。
29 )MM 総研「国内クラウドサービスの市場規模 ・ 予測 と需要動向 に関 する調査」2013年 8月
によると,プライベートクラウドの場合,IT 事業者 へアウトソースする割合 は全体 の 20 %程
― 117 ―
小 川 裕 克 ・ 永 井 義 明
度 である。従ってプライベートクラウドの市場規模 そのものは図表8の数値 の5倍程度 に
膨 らむ。
30 )地域別 のシェアは,富士キメラ総研 の推定「データセンタービジネス市場調査総覧 2013年
版」(上巻 p. 11 )を参考にした。ここで,関東は東京,神奈川,千葉,埼玉,群馬,栃木,茨城を,
関西 は大阪,京都,奈良,兵庫,和歌山 を指 す。
31 )
ITmedia エンタープライズ「AWS Summit Tokyo 2013レポート:なぜ日本企業 は AWS を採
用 するのか」〈http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/ 1306 / 07 /news 035 .html〉
32 )富山県 の7つの信用金庫 とデータセンター事業者 であるパワー・アンド・IT,SIer である富
士通エフサスの例 が挙 げられる。
33 )詳細 は Hurleypalmerflatt and Cushman & Wakefield ʻDATA CENTRE RISK INDEX
Informing global investment decisions 2013 ʼを参照。この中 で,第1位 がアメリカ合衆
国 で,2位イギリス,3位スウェーデン,6位香港,13位韓国,15位シンガポール,16位マ
レーシアとなっている。
34 )田中邦弘「クラウドの虚像 と実像」2009年 11月 24日,さくらインターネット。
35 )
International Energy Agency,“ ENERGY PRICES AND TAXES QUARTERLY
STATISTICS 2013”
, October 2013 .
36 )金融ビジネスのようにマイクロ秒 を争 うようなビジネスが存在 するため,都心近 くにある金
融証券取引所 の近 くにデータセンターが必要 な場合 もあり得 る。
37 )JDCC「 2012年度データセンター調査結果報告」によると「ラックあたりの最大供給可能電
力」が 2 . 0 KVA 以下 のデータセンターは有効回答数 132のうち,48 . 5 %を占 める。
38 )富士キメラ総研「データセンタービジネス市場調査総覧 2013年版」
(上巻 pp. 60-61 )参照。
39 )富士キメラ総研「データセンタービジネス市場調査総覧 2013年版」
(上巻 p. 9 )参照。
40 )
ダブルデッキシステム,野村総合研究所,
「IT フロンティア」
,2011年 09号。
41 )
さくらインターネット石狩データセンター,外気冷却方式。
〈http://ishikari.sakura.ad.jp/〉
42 )NEC,
「 Express テクノロジー読本 40 ℃環境下 で動作可能 な冷却設計」。
〈http://www.nec.
co.jp/products/express/tech/cooling/〉
43 )エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社/株式会社 NTT ファシリティーズ(共同
プロジェクト),
「革新的 な人工知能エンジンを有 する空調自動制御システム(DCIM)を活
用 した継続的改善活動 と国内 DC のエネルギー効率底上 げへの貢献」,グリーン・ グリッド
データセンターアワード 2012最優秀賞。
44 )さくらインターネット石狩データセンター,HDVC(高電圧直流給電方式)。
〈http://ishikari.
sakura.ad.jp/〉
45 )Green Revolution Cooling が提 唱 し て い る油 冷 方 式。〈http://www.extremetech.com/
extreme/ 124197 -cooling-computer-servers-with-oil〉
46 )VMWARE,〈 http://www.vmware.com/jp/virtualization/virtualization-management/
overview.html?src=WWW_Mgmt_JP_HPHero_SimplifyManageDatacenter〉
― 118 ―
データセンター及びデータセンターを活用したビジネスの将来動向に関する調査・研究
クラウド Watch,
〈http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/ 20131107 _ 622469 .html〉
47 )
Clud Stack は VMOps 社 が 2010年 に開発 したものを Citrix 社 が買収 し,2012年5月 にオー
プンソース推進団体 の Apache Software Foundation へ寄贈 し,Apache Software Foundation が Apache Cloud Stack としてオープンソースで提供 されているものである。なお,
Citrix 社 は別途 Citrix Platform Powered by Apache Cloud Stack という形 で製品 として
販売 している。
Cloud Stack には「IaaS 構築/管理 のための多様 な機能 が実装 されている」「対応 するベン
ダーの実績 が多 い」などの実績 がある。詳細 は「日本 Cloud Stack ユーザ会資料」〈http://
cloudstack.jp/〉参照。
48 )
Open Stack は NASA と Rackspace Hosting 社 が主体 となり設立 された Open Stack Project が推進 している( 2010年 に設立)。Open Stack のユーザーは必要 に応 じてコンポーネ
ントを取捨選択 して利用 でき,既存 の IT 技術 との連携 や新技術 の導入 などユーザーが実装
を進 めて行 くための選択肢 が広 がっている。現時点 では,Cloud Stack ほどの実績 はない。
詳細 は「日本 Open Stack ユーザ会資料」〈http://openstack.jp/frontpage.html〉参照。
49 )
JPNIC 解説記事〈https://www.nic.ad.jp/ja/newsletter/No 52 / 0800 .html〉
50 )
SDN Japan 2013 〈
. http://www.sdnjapan.org/program/〉
51 )
Jay Park, “Open Compute Project Datacenter Ver 1 . 0 ”, Open Compute Project, 2013 .
52 )JUAS「企業 IT 動向調査報告書 2013」(p. 274 )参照。
53 )調査会社 IDC「エンタープライズ 「全世界のデジタル情報量,2020年には40ゼッタバイトに」
」
2012年 12月 12日,ITmedia〈http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/ 1212 / 12 /
news 049 .html〉参照。または ITpro「データ量 の増加 に管理 や投資 が追随 できていない」
2013年1月 24日参照。
〈http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/ 20130124 / 451768 /〉。
なお 1 ZB = 10 21バイト,1 GB = 10 9バイト。
54 )
インターネットメディア総合研究所「データセンター調査報告書 2012」インプレス R&D,
2012年8月8日(p. 142 )参照。
55 )
S.Yamaguchi, “ Experiment of 200 -meter superconducting DC cable system in Chubu
University”, Physica C: Superconductivity, Volume 471 , Issue 21 , pp. 1300 - 1303
S.Yamaguchi, “Experiment of the 200 -Meter Superconducting DC Transmission
Power Cable in Chubu University”, Physics Procedia,Volume 36 , 2012 , pp. 1131 - 1136 ,
SUPERCONDUCTIVITY CENTENNIAL Conference 2011 .
56 )
COOL SMART LAND ISHIKARI, 高温超電導直流送電システムの実証研究,千代田化工建
設株式会社,住友電工株式会社,中部大学,さくらインターネット株式会社。
57 )山口作太郎,“電流リード”,特開 2013- 105907,及び山口作太郎,“熱電冷却型パワーリード”,
特開 2004- 6859。
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小 川 裕 克 ・ 永 井 義 明
参考文献
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Cワークショップ
富士キメラ総研研究開発本部『データセンタービジネス市場調査総覧 2013年版(上巻,下巻)』
2013年3月 11日,富士キメラ総研
インターネットメディア総合研究所『データセンター調査報告書 2012』2012年8月9日,イン
プレス R&D
日本情報システム・ ユーザー協会(JUAS)『企業 IT 動向調査報告書 2013』2013年6月3日,日
経 BP 社
野村総合研究所『ITナビゲーター 2014年版』2013年 12月 12日,東洋経済新報社
情報サービス産業協会『情報サービス白書 2014』2014年1月 14日,日経BP
総務省『平成 25年版情報通信白書 ICT白書』2013年7月 17日,日経印刷
中小企業庁『 2013年版中小企業白書』2013年8月 23日,佐伯印刷
野村総合研究所『平成 21年度産業技術研究開発委託費(産学連携ソフトウェア工学実践事業(クラ
ウド・ コンピューティングに関 する国内外 の精度 ・ 技術動向等 の調査研究))報告書』2010
年3月
経済産業省『電子商取引 に関 する市場調査 の結果』平成 25年 9月 27日〈http://www.meti.go.jp/
press/ 2013 / 09 / 20130927007 / 20130927007 .html〉
日本データセンター協会『データセンターファシリティスタンダードの概要』2010年 10月 18日
国土交通省都市局『平成 24年度中部圏開発整備計画 の実施 に関 する状況』2014年1月
林雅之『オープンクラウド入門』2012年9月,インプレスR&D
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International Energy Agency, “ENERGY PRICES AND TAXES QUARTERLY STATISTICS 2013”October 2013 .
MM 総研『国内クラウドサービス市場,需要動向調査』2013年8月 28日〈http://www.m 2 ri.jp/
newsreleases/main.php?id= 010120130828500〉
インプレス『データセンター完全ガイド 2013年冬号』2013年1月1日,インプレスビジネスメディア
Albert Greenberg et al. “The Cost of a Cloud: Research Problems in Data Center
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Volume 39 Issue 1 ,
January 2009 pp. 68 - 73
日経コンピュータ『クラウド大全 2014』2014年1月 29日,日経 BP
日経コンピュータ『仮想化大全 2013』2012年 11月 15日,日経 BP
白川 功『企業情報 完全防衛術』2013年1月 29日,幻冬舎
谷島宣之『ソフトを他人 に作 らせる日本,自分 で作 る米国』2013年 12月 25日,日経 BP
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データセンター及びデータセンターを活用したビジネスの将来動向に関する調査・研究
泉田良輔『日本 の電機産業』2013年 4月 15日,
(株)日本経済新聞社
Jay Park et al., “Open Compute Datacenter V 1 . 0” Draft,The Green Grid
OCP “Open Compute Project Proposed Track for Open Hardware Management” , Draft,
Open Compute Project,2011年 12月 28日
伊藤智『次世代モジュール型データセンタの 省エネ効果実証実験』2013年7月 11日,
グリーン・グリッドフォーラム
唐木眞,他『データセンターに関 する 日本 の地域特性 Data Center Regional Consideration
Japan』
,The Green Grid White Paper # 47,2012年9月 24日
Victor Avelar et al.『 PUE 指標 に関 する総括』
,The Green Grid, White Paper# 49,2013年5
月 28日
― 121 ―