検査の結果 ―507― 平成21、22、23、24各年度決算検査報告掲記の 「意見を表示し又は処置を要求した事項」の結果 第Ⅱ章 8 § 本院が意見を表示し又は処置を要求したもののうち、平成24年度決算検査報告までに当局に おいて処置が完了していないものは、平成21、22、23又は24年度決算検査報告に掲記された計 処置が完了したものが82件、処置が完了していないものが13件となっ 95件(注)である。このうち、 ており、対象となった各省庁等が本院指摘の趣旨に沿い改善のために執った処置及び処置状況 を整理すると次のとおりである。 1 処置が完了したもの 平成21年度決算検査報告 (1)国営公園の維持管理業務に係る委託費の精算等について(国土交通省) <指摘の要旨(処置要求事項㉞)> 国土交通省の地方整備局等は、 国営公園の維持管理業務を3財団法人に委託している。一方、 各財団法人は、独立行政法人都市再生機構が国営公園に設置又は管理するレストラン、駐車場 等の特定公園施設の営業及び管理業務を同機構との契約により行っている。しかし、同省は、 維持管理業務に係る委託費の精算に当たって、特定公園施設の営業及び管理業務に従事してい る職員の人件費との業務の従事割合が明確でないまま、その全額を実支出額に計上したり、一 般管理費についての負担額の根拠が明確でないまま、契約額で計上できる額と同額又はほぼ同 額を実支出額に計上したりしている事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、次のような処置を講じていた。 ア 職員の人件費については、平成22年10月から、地方整備局等が、維持管理業務と特定公園 させて職員の従事割合の実態の把握に努めていた。そして、25年3月に地方整備局等に事務 連絡を発して、各財団法人等に勤務実績簿を整備し保管させて、精算等を適切に行うことと した。 イ 一般管理費については、22年度から25年度まで各財団法人等から資料の提供を求めるなど して負担額に係る検討を行い、26年3月に地方整備局等に事務連絡を発するなどして、維持 管理業務における一般管理費の負担額の配賦方法等を具体的に定めて、これを周知し、精算 等を適切に行うこととした。 (注)本書では、同様の指摘事項については、それらをまとめて記述している。 (検査報告645ページ) 意見表示・処置要求事項の 結果 施設の営業及び管理業務に従事している職員の勤務実績簿を各財団法人等から定期的に提出 ―508― 検査の結果 平成22年度決算検査報告 第Ⅱ章 (2)場外勝馬投票券発売所及び競馬場に自動販売機及び売店等を設置するための子会社等 との契約の見直しについて (日本中央競馬会) <指摘の要旨 (処置要求事項㉞)> 日本中央競馬会 (競馬会) は、場外勝馬投票券発売所(場外発売所)及び競馬場の施設に自動販 売機及び売店等を設置させるため、これらの設置場所となる施設の一部等を子会社等に貸し付 けている。しかし、競馬会は、自動販売機及び売店等の設置及び運営を行う販売会社を直接競 争により選定して自ら契約できるのに、販売会社に自動販売機及び売店等の設置及び運営を委 託している子会社等に、随意契約により設置場所となる施設の一部等を貸し付けていたり、競 馬開催に伴う来場者を販売の対象としているのに、販売で生じた利益を子会社等に帰属させて いて競馬会が享受していなかったりしている事態が見受けられた。 <講じた処置> 競馬会は、次のような処置を講じていた。 ア 自動販売機の設置及び運営については、順次、競争で選定した販売会社等と契約を行い、 その際は、来場者の便宜への影響に配意しつつ、競馬会が売上額の多寡を反映した管理料等 の支払を受けることができるように所要の見直しを行うこととした。 イ 売店等の設置及び運営については、子会社等に通知を発して、売店等の新規の募集時にお ける公募手続の徹底を周知するとともに、子会社等への施設の貸付料が妥当かどうかを検証 して競馬会が売上額の多寡を反映した利益を享受できるように、売店等の売上額、管理料等 を定期的に報告させることとした。 (検査報告752ページ) 平成23年度決算検査報告 (3)人事・給与等業務・システムの最適化の状況等について(内閣、内閣(人事院)) <指摘の要旨 (意見表示事項㊱)> 意見表示・処置要求事項の 結果 人事院は人事・給与等業務・システム(人給システム)の企画、設計・開発等を行っており、 内閣官房は最適化計画に沿ってシステムの設計・開発が進捗するよう、人事院に助言等を行っ ている。しかし、人給システムの移行作業の遅延に伴い多くの参加府省等の運用開始が遅延し ているだけでなく、既に人給システムを運用している参加府省等でも安定的なシステム運用が 実現できておらず、最適化効果の発現が大幅に遅延していたり、移行経費を最適化の実施に係 る投資額として計上していなかったりしている事態が見受けられた。 <講じた処置> 内閣官房及び人事院は、次のような処置を講じていた。 ア 人事院は、平成25年1月以降、人給システムの改修について参加府省等との会議等を通じ て改修要望の優先順位を把握して調整した上で引き続き改修を実施し、改修したプログラム を導入する前にテストを行うよう工程を十分検討したり、プロジェクト管理支援業務につい て管理支援業者の技術的支援が十分受けられるように契約期間を検討したりした。 イ 人事院は、既に人給システムの運用を行っている府省等の実情等を把握して参加府省等と 検査の結果 ―509― 情報共有を図って移行支援を実施したり、ヘルプデスク業務について実際の業務の状況に合 ウ 人事院は、移行経費の合理的な算定方法を検討した上で、25年9月に参加府省等に対して 第Ⅱ章 わせて25年4月に契約内容を変更したりした。 移行経費に関する調査を行い、投資対効果の観点から最適化の実施に係る投資額として計上 できるようにした。 エ 内閣官房は、人事院がア、イ及びウの取組を実施するに当たり、参加府省等との間で正確 な情報共有や適切な検討を行ったり、移行経費の合理的な算定方法の検討や移行経費に関す る調査を実施したりすることができるよう、人事院や参加府省等との会議等を通じて必要な 助言を含む総合調整を行った。 (検査報告68、69ページ) (4)社会福祉法人により設置された民間保育所が保有する積立預金等について (厚生労働省) <指摘の要旨(意見表示事項㊱及び処置要求事項㊱) > 厚生労働省は、社会福祉法人が設置する保育所(民間保育所)に保育の実施を委託した市町村 に対して、その委託に要した費用 (運営費)の一部を交付しており、民間保育所は運営費を運営 費収入として受け入れて、その残余を積立預金又は当期末支払資金残高のいずれかに整理して いる。しかし、一部の民間保育所において、使用計画を作成せず、使途を具体的に説明できな いまま多額の積立預金を保有していたり、過大な当期末支払資金残高を保有していたりしてい る事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、次のような処置を講じていた。 ア 平成24年度に、新制度の設計を行うために民間保育所の経営状況等の実態を調査した。そ して、会計状況が明確になるような仕組みを設けることについては、内閣府に設置された子 ども・子育て会議で検討が行われ、25年12月に、民間保育所における会計処理は、公費の透 明性確保の観点から、事業ごとの区分経理を求め、その上で財務諸表の公表を求めていくこ とを基本とする対応方針が取りまとめられた。 は、指導監査において指導を行い、それでもなお過大な保有となっている場合には、過大な 保有が解消されるまでの間、交付する運営費を減額することとするなど、民間保育所への具 体的な指導方法等を定めて周知した。 (検査報告363ページ) (5)森林整備加速化・林業再生基金事業における費用対効果分析について(農林水産省) <指摘の要旨(意見表示事項㊱)> 林野庁は、都道府県が行う森林整備加速化・林業再生基金事業に必要な基金の造成に要する 経費に補助金を交付しており、この基金事業のうち、木造公共施設等整備事業等を実施する場 合には、評価要領に基づき事業主体が費用対効果分析を行うこととしている。しかし、費用対 効果分析において、交流資源利用効果等の効果額が適切に算定されていなかったり、効果額の 算定に用いられる係数の算出根拠が不明となっていて効果額の算定が適切に行われているか検 証が困難となっていたりなどしている事態が見受けられた。 意見表示・処置要求事項の 結果 イ 24年11月に都道府県等に通知を発して、当期末支払資金残高のうち過大な保有分について ―510― 検査の結果 <講じた処置> 第Ⅱ章 同庁は、次のような処置を講じていた。 ア 平成25年4月から26年2月までの間に開催した有識者会議の検討結果を踏まえて、同年3月 までに評価要領等を改正し、費用対効果分析の適切な実施のために必要となる基本的な考え 方等について具体的に記述するとともに、効果額の算定の基礎となる係数については、公的 機関等が公表し確実に説明可能な数字を使うこととした。 イ 26年5月までに都道府県に通知を発するなどして、費用対効果分析等の適切な実施及びア の評価要領等の改正の内容について事業主体に周知徹底を図るよう指導するとともに、事業 主体が行った費用対効果分析の内容を十分精査するよう指導した。 (検査報告503ページ) (6)道路防災事業におけるポケット式落石防護網の設計について(国土交通省) <指摘の要旨 (処置要求事項㉞)> 国土交通省は、道路防災事業の一環として、直轄事業又は国庫補助事業等により落石防護工 を実施している。しかし、事業主体において、ポケット式落石防護網の設計に当たり、可能吸 収エネルギーの算定方法が区々となっていて、その算定結果が設計に大きな影響を与えるほど 相違しているにもかかわらず、平成21年6月に改訂された「道路土工のり面工・斜面安定工指針」 (安定工指針) の取扱いについて、社団法人日本道路協会(注)に確認等を行っておらず、また、道 路事業者にその取扱いを周知していない事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、次のような処置を講じていた。 ア 25年10月に、公益社団法人日本道路協会に設置されたワーキンググループで、「落石対策 便覧」(便覧) の適用範囲等の詳細な検討結果が取りまとめられたことを踏まえて、26年3月に 地方整備局等に、可能吸収エネルギーの算定方法を明確に定めた事務連絡を発して、地方整 備局等からその取扱いを道路事業者に周知徹底した。 イ アの事務連絡を踏まえて、26年3月に地方整備局等に事務連絡を発して、地方整備局等が、 事業主体への調査を通じて、21年6月以降に設計されたポケット式落石防護網の可能吸収エネ 意見表示・処置要求事項の 結果 ルギーの算定方法について安定工指針と便覧との適合性を検証するよう、指導又は助言した。 (検査報告646ページ) (7)騎手送迎用自動車運行契約に基づく経費の負担範囲の見直しについて (日本中央競馬会) <指摘の要旨 (処置要求事項㉞)> 日本中央競馬会 (競馬会) は、競走の公正を確保するための措置の一環等として、競馬会所属 の騎手のトレーニング・センター(トレセン)と中央競馬が開催される5競馬場又は地方競馬が 開催される9競馬場との区間のタクシーの運行経費を負担している。しかし、中央競馬での開 催最終日の最終騎乗終了後のタクシーの運行については第三者との接触を防止する必要がな く、また、地方競馬が開催される競馬場との間のタクシーの運行については競走の公正を確保 するために必要な措置とは認められないにもかかわらず、これらの経費を負担している事態が (注)平成25年4月1日以降は公益社団法人日本道路協会 検査の結果 ―511― 見受けられた。 競馬会は、中央競馬が開催される5競馬場からトレセンまで開催最終日に運行されるタクシー については、平成24年12月に、騎乗の変更に対応するために最終レースまで待機させた騎手の 第Ⅱ章 <講じた処置> 分を除いて、また、トレセンと地方競馬が開催される9競馬場との間で運行されるタクシーに ついては、26年6月に、騎手がトレセンで調教を行った当日にトレセンからこれらの競馬場へ 移動した場合等を除いて、それぞれ運行経費を負担しないこととする処置を講じていた。 (検査報告753ページ) (8)障害者雇用納付金関係業務における障害者雇用納付金の徴収、障害者雇用調整金の 支給等について (独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構) <指摘の要旨(処置要求事項㉞)> 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構は、障害者である常用雇用労働者の割合が法 定雇用率を達成していない事業主から障害者雇用納付金を徴収して、法定雇用率を達成してい る事業主等に障害者雇用調整金又は報奨金を支給するなどの業務を行っている。しかし、事業 主が、常用雇用労働者に該当しない障害者を雇用障害者数に含めて納付金の申告又は調整金等 の申請をするなどしていることにより、納付金の徴収が不足していたり、調整金及び報奨金が 過大に支給されていたりしている事態が見受けられた。 <講じた処置> 機構は、納付金の徴収不足及び調整金等の過大支給が見受けられた125事業主に納付金の納 付及び調整金等の返還のための手続をとるとともに、次のような処置を講じていた。 ・・ ア 週の所定労働時間と実態の労働時間の間に常態的なかい離がある場合は、実態の労働時間 によって常用雇用労働者に該当するか否かを判断する取扱いになっている旨を注意喚起のた めに支給申請書等に係る記入説明書に明記するとともに、事業主に対して説明会を開催する などして更なる周知徹底を図った。 イ 事業主から提出された支給申請書等の記載内容を確認するなどの審査等に関して、①常用 金等の支給に係る要領等を改正して、26年度分から、対象となる雇用障害者の勤務実態等が 確認できる関係書類を提出させるなどすることとして、26年4月からこれらの関係書類に基 づく審査を開始し、②納付金の申告及び常用雇用労働者が300人を超える事業主が行う調整 金の支給申請については、同年3月に納付金の徴収及び調整金等の支給についての調査に係 る要領を改正して、おおむね3年に一度の割合で調査を実施するなどして調査を強化するこ ととし、同年6月から同要領に基づく調査を開始した。 (検査報告852ページ) (9)水資源開発施設等の保有及び管理について(独立行政法人水資源機構) <指摘の要旨(処置要求事項㊱)> 独立行政法人水資源機構は、水資源開発施設等の保有及び管理を行っている。しかし、機構 の業務の目的に沿った用途に供されておらず、使用承認等により機構以外の者が使用している などしていて、今後使用する見込みがない土地、構築物等を水資源開発施設等として保有、管 意見表示・処置要求事項の 結果 雇用労働者が300人以下の事業主が行う調整金等の支給申請については、平成25年4月に調整 ―512― 検査の結果 理していたり、兼用道路の管理費用が応分の負担となっていなかったりしている事態が見受け 第Ⅱ章 られた。 <講じた処置> 機構は、次のような処置を講じていた。 ア 平成24年12月に作成した事務マニュアル等に基づいて水資源開発施設等の保有の必要性を 検証して、不要なものについては、その使用実態等を踏まえて地方公共団体や使用承認によ り使用させている者等への売却等の検討及び協議を行うとともに、25年6月に機構本社に資 産管理等整理推進委員会を設置するなどして、水資源開発施設等の必要性について機構全体 で不断に見直しを行う体制を整備した。 イ 26年3月に、兼用道路で大規模な工事等を実施する場合の道路管理者との間の費用の標準 的な負担方法等に係る協議に関する基本方針を定めて、機構の関係部署へ通知を発するなど して周知徹底を図るとともに、応分の負担を求められるよう道路管理者と協定の見直しにつ いて協議を行った。 (検査報告857ページ) (10)国立大学法人等が実施する施設整備等に係る資金の貸付け及び交付について (独立行政法人国立大学財務・経営センター) <指摘の要旨 (意見表示事項㊱)> 独立行政法人国立大学財務・経営センターは、国立大学法人等に施設整備等に必要な資金の 貸付事業及び交付事業を行っている。しかし、貸付事業において、個々の附属病院の収支状況 等に即した審査基準等が定められていなかったり、交付事業において、営繕事業費の配分方法 が国立大学法人等の自己収入等の獲得額の格差等を十分に考慮したものとなっていなかった り、今後の財源の見込みが十分に立っていなかったりしている事態が見受けられた。 <講じた処置> センターは、次のような処置を講じていた。 ア 貸付事業については、平成25年10月に独立行政法人国立大学財務・経営センター施設費貸 付事業審査基準等を改正して個々の附属病院の収支状況等に即した審査指標を追加し、26年 意見表示・処置要求事項の 結果 4月からその基準等による審査を開始した。 イ 交付事業については、28年度からの国立大学法人等の次期中期目標期間に合わせて、国立 大学法人等の自己収入等の獲得額の格差等を考慮した新しい配分方法による交付を実施する よう見直すこととした。また、今後の交付事業の財源の見込みについては、文部科学省等の 関係機関との連携を図るとともに、26年度からのセンターの中期計画で、中期計画期間中に 具体的な検討を実施することとした。 (検査報告881ページ) (11)ニュータウン整備事業の実施状況について(独立行政法人都市再生機構) <指摘の要旨 (意見表示事項㊱)> 独立行政法人都市再生機構は、ニュータウン整備事業を実施しており、平成25年度までに工 事を完了し、30年度までに土地の供給・処分完了に向けた取組を推進することとされている。 しかし、造成工事に着手できない地区があり25年度までに工事を完了できないおそれがあった り、長期未処分地があり事業効果が発現していなかったり、仕掛不動産勘定等に係る土地の時 検査の結果 ―513― 価が地区によっては簿価を下回っている可能性があったり、宅地造成等経過勘定の繰越欠損金 第Ⅱ章 の解消方策を明確にしていなかったりしている事態が見受けられた。 <講じた処置> 機構は、次のような処置を講じていた。 ア 25年度までに工事を完了できないおそれのある地区について、工事完了までの工程を明確 に定めるとともに、工事の早期完了に向けた方策を執るに当たり、財務状況に与える影響等 に留意しながら、区域の縮小等について関係機関等との協議等を行った。 イ 長期未処分地について、24年11月に通知を発して、需要を喚起するための各種方策を実施 したり、より需要が見込まれる土地利用種別への変更等を検討した上でこれまで以上に地方 公共団体等の協力を得られるようこれらの地方公共団体等と協議したりした。 ウ 財務諸表作成時の土地の時価の算定について、25年11月に通知を発して、時価の把握に要 する費用に留意しつつ、個別の要因を把握できる土地については、その要因により時価を補 正して土地の時価を算定する際の精度向上を図り、その結果に基づいて25年度以降の決算を 作成することとした。 エ 宅地造成等経過勘定の繰越欠損金について、将来発現するおそれのある様々なリスクを 勘案した解消方策を検討して、その結果を踏まえて26年3月に第3期中期計画を策定した。 (検査報告892ページ) (12)証券化支援事業における住宅ローン債権に係る審査について (独立行政法人住宅金融支援機構) <指摘の要旨(意見表示事項㊱)> 独立行政法人住宅金融支援機構は、民間の金融機関から長期・固定金利の住宅ローン債権を 買い取る証券化支援事業を行っている。しかし、早期延滞案件や融資金の詐取等の不適正案件 が多発している状況の下、金融機関では機構から示された有効な融資審査の方法が十分に実行 されておらず、 機構では、 金融機関への十分な働きかけや効果的な買取審査が行われていなかっ たり、金融機関が十分な融資審査を行うよう動機付ける取組が十分でなかったりしている事態 <講じた処置> 機構は、次のような処置を講じていた。 ア 平成24、25両年度に金融機関ごとの融資審査の状況等を把握するために書面及び実地調査 を行い、必要な審査が十分でないと認められた事項等は、金融機関に、是正等を行いその結 果を報告するよう働きかけを行っており、26年度以降も引き続き融資審査の状況等を確認す ることとした。また、より慎重に買取審査を行う対象を拡充したり、収入の虚偽申告のおそ れがあるものなどは追加資料を提出させたりするなどして効果的な買取審査を行うこととし た。 イ 25年4月から金融機関による勤務先の在籍確認等の特に重要な審査の実行を債権買取りの 条件とするとともに、26年4月に買取債権の管理・回収業務の金融機関への委託契約を変更 して、早期延滞案件の発生率が一定の基準を超過するなどした金融機関への業務委託手数料 を減額することとした。 (検査報告901ページ) 意見表示・処置要求事項の 結果 が見受けられた。 ―514― 検査の結果 平成24年度決算検査報告 第Ⅱ章 (13)特別交付税の額の算定における過疎債ソフト経費の確認等について(総務省) <指摘の要旨 (処置要求事項㉞)> 総務省は、特別の財政需要があることなどにより、普通交付税の額が財政需要に比して過少 であると認められる地方団体に特別交付税を交付している。そして、特別交付税の額の算定に おいて、過疎地域自立促進のための地方債(過疎債)を財源として行うことが必要なソフト事業 の経費のうち、過疎債を財源とした経費(過疎債ソフト経費)は、普通交付税による地方財政措 置との重複が生じないよう算定の対象とはならないこととなっている。しかし、過疎債ソフト 経費を算定の対象に含めていたため、 特別交付税が過大に交付されている事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、次のような処置を講じていた。 ア 平成26年1月までに、都道府県及び市町村に、特別交付税の額の算定事項ごとの財政需要 に関する基礎資料 (算定資料) 等に点検項目を設けた上で通知を発するなどして過疎債ソフト 経費は特別交付税の額の算定対象とならないことを周知したり、関係する担当者が必要な情 報を共有することにより算定資料等の確認等を適切に行うよう助言したりした。 イ 市町村に、全ての特別交付税の額の算定事項について、当該市町村の特別交付税の取りま とめを担当する者が算定資料等の作成に関する情報を確認して都道府県に報告するよう助言 した。 ウ 交付税検査の実施に当たり、過疎債ソフト経費が対象経費とされていないことの確認を適 切に行うよう都道府県に助言するなどした。 (検査報告116ページ) (14)震災復興特別交付税の額の算定における一般単独災害復旧経費の確認等について (総務省) <指摘の要旨 (処置要求事項㉞)> 総務省は、東日本大震災に係る災害復旧事業、復興事業その他の事業(災害復旧事業等)の実 意見表示・処置要求事項の 結果 施のため特別の財政需要があることなどを考慮して道府県及び市町村に震災復興特別交付税を 交付している。しかし、同交付税の額の算定において、国の補助金等を受けないで実施する災 害復旧等事業に要する経費のうち地方債をその財源とすることができる額として総務大臣が調 査した額(一般単独災害復旧経費) の算定対象に、災害復旧事業等に該当しない経費、補助金等 の交付を受けて実施する事業に要する経費等を含めていたり、同一の災害復旧事業に要する経 費を重複して含めていたりしていて、同交付税が過大に交付されている事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、次のような処置を講じていた。 ア 一般単独災害復旧経費の算定対象とならない経費を、同交付税の額の算定事項についての 財政需要に関する基礎資料 (算定資料)の記載要領等に具体的に明記したり、算定資料の様式 に点検項目欄を設けたりするとともに、都道府県及び市町村に算定の誤りの例を通知するこ となどにより一般単独災害復旧経費の算定対象となる経費の範囲を周知したり、算定資料等 の審査に当たり点検項目欄を活用することにより算定対象となる経費であるかの確認を適切 に行ったりすることにした。 検査の結果 ―515― イ 平成25年9月及び26年1月に、都道府県及び市町村に通知を発するなどして、関係する部局 対象となる経費であるかの確認を適切に行うよう助言した。 第Ⅱ章 が算定対象となる経費の範囲、算定対象事業等の必要な情報を共有することなどにより算定 ウ 地方交付税の額の算定資料に関する検査である交付税検査の実施に当たり、一般単独災害 復旧経費についての検査項目や確認事項等を定めて算定対象となる経費であるかの確認を適 切に行うよう都道府県に助言するなどした。 (検査報告117ページ) (15)地上テレビジョン放送のデジタル化に伴い発生した空き周波数帯の利用について (総務省) <指摘の要旨(意見表示事項㊱)> ・・ 総務省は、電波需要の増加による周波数のひっ迫に対応して周波数の有効活用等を図るため に、地上テレビジョン放送のデジタル化により発生する空き周波数帯を、四つのシステムに割 り当てて利用させることとしている。しかし、四つのシステムのうち、V-Lowマルチメディア 放送及び高度道路交通システムはいまだに実用化されておらず、また、公共ブロードバンド移 動通信システムは一部実用化されているものの十分に使用されておらず、空き周波数帯が十分 に利用されていない事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、次のような処置を講じていた。 ア V-Lowマルチメディア放送については、平成25年11月までに利用者等関係者の意見を調整 した上で、同年12月に関係省令を改正するなどして制度整備を行った。 イ 公共ブロードバンド移動通信システムについては、25年11月から26年7月までの間に開催 された会議等で、都道府県等の想定される利用者に、導入効果や機材導入経費等の情報を提 供するなどしており、今後も引き続き情報提供を行うなどして導入促進を図っていくことと した。そして、導入が促進しない場合は、32年度に実施する予定の電波利用状況調査の結果 及び利用者の意向を踏まえた上で、 他の目的へ割り当てるなどの方策を検討することとした。 ウ 高度道路交通システムについては、25年10月及び26年3月に開催された関係四省庁連絡会 周波数帯としていることを説明するなどして、利用に向けて調整を行った。 (検査報告118ページ) (16)刑事施設等における防災用移動式炊事機器の整備について(法務省) <指摘の要旨(処置要求事項㉞)> 法務省は、東日本大震災における刑務所等の刑事施設等の被災状況等を踏まえて、防災用物 品を整備することとしている。そして、これらの各刑事施設等は、防災用移動式炊事機器を調 達して、刑事施設等の本庁、管下の刑務支所、拘置支所等に配置している。しかし、これらの 炊事機器が配置される整備箇所において、炊事機器の能力、災害時に炊事機器を使用して調理 した食糧等を給与する対象として想定される人員等に照らして、炊事機器の調達台数が過大と なっている事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、整備箇所に配置する炊事機器の台数を施設の規模等に応じたものとすることにより、 意見表示・処置要求事項の 結果 議で、警察庁等に、路上に設置された通信装置と車両との間の通信に用いる周波数帯を空き ―516― 検査の結果 災害時に必要とされる施設で有効に活用されるよう、炊事機器の配置について、整備箇所の職 第Ⅱ章 員定員、被収容者の収容定員等を考慮して検討を行い、平成26年7月に、他の整備箇所への管 理換の方針を策定する処置を講じていた。 (検査報告139ページ) (17)刑事施設等の整備に係る予算の執行等と執行段階における統制について(法務省) <指摘の要旨 (処置要求事項㉞)> 法務省は、刑事施設等の新営工事等の契約を歳出予算又は国庫債務負担行為に基づいて締結 している。しかし、本省において、歳出予算及び国庫債務負担行為のそれぞれにより付与され た権限を超えた支出負担行為が行われていたり、支出負担行為の額が示達額及び予算を超えて いたりしていて、会計法令及び予算に違反している事態、財政法に基づく歳出予算の繰越しが 制度の趣旨にのっとって行われていない事態及び支出負担行為認証官による統制が十分に機能 していない事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、次のような処置を講じていた。 ア 平成26年2月に、会計事務担当者に研修を実施するなどして、予算執行等を適正に行うた めに必要な会計法令等の基本的事項について周知徹底を図った。 イ 26年3月に、予算の執行等を行う上での留意点や執行段階の支出負担行為認証官による統 制を十分に機能させる上での留意点等をまとめた「適正な予算執行等のマニュアル」を作成し て、会計事務担当者に周知した。 (検査報告139ページ) (18)刑事施設等の常勤医師の外部研修制度の運用について(法務省) <指摘の要旨 (意見表示事項㊱)> 法務省は、刑務所等の刑事施設等の医務部門に常勤で勤務する医師又は歯科医師に、国家公 務員法等により所定の給与を支給している。そして、これらの常勤医師は、医療技術の維持向 上等を目的として、勤務時間中に、大学医学部、大学病院等の外部医療機関等における研修(外 部研修)を行うことが認められている。しかし、刑事施設等において、外部研修中の勤務時間 意見表示・処置要求事項の 結果 の管理、研修内容の把握等が適切に行われていないにもかかわらず、外部研修が研修計画どお りに適正に行われたとしているなどの事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、平成26年6月に各矯正管区に通知を発するなどして、次のような処置を講じていた。 ア 外部研修の実施に当たり、刑事施設等の長と研修先の研修責任者との間で、研修協定書等 の研修の委託内容が確認できる文書を作成することとした。また、外部研修中の勤務時間管 理等が著しく困難であり客観的に研修の実施状況を確認できない自宅又は図書館での研修を 認めないこととした。 イ 研修先での各研修日の出欠状況、研修内容等を、毎月、一定の書式等により、常勤医師か ら刑事施設等の長に報告させることとした。 ウ 常勤医師から提出させる研修結果報告書に記載すべき事項を具体的に示すことなどによ り、研修内容を適切に把握することとした。 (検査報告140ページ) 検査の結果 ―517― 各省各庁の長は、一般会計の歳入歳出決算に添付される「国の債務に関する計算書」及び特別 第Ⅱ章 (19)債務に関する計算書に計上される国庫債務負担行為に係る債務額について(財務省) <指摘の要旨(処置要求事項㉞)> 会計の歳入歳出決算に添付される「債務に関する計算書」を各省各庁の支出負担行為担当官の報 告書に基づき作成している。そして、債務には、複数年度にわたって国が支出の義務を負担す る国庫債務負担行為があり、原則として、財務省会計センターが管理している官庁会計システ ムに必要な情報を入力することにより、国庫債務負担行為の債務の発生又は消滅が計上され る。しかし、財務本省等における平成21年度から23年度までの年度末の国庫債務負担行為の債 務額について、必要な情報の入力漏れなどに起因する計算書の誤びゅうが見受けられた。 <講じた処置> 同省は、26年5月までに次のような処置を講じていた。 ア 各府省の本府省がその所管する各官署の支出負担行為担当官の負担した債務額を確認する ためなどの機能を同システムに追加した。 イ 国庫債務負担行為と支出負担行為及び支出とを関連付ける入力の漏れを防止するための機 能を同システムに追加するなどした。 ウ 各府省の担当者に、同システムの操作方法等について、説明会を実施するなどして周知徹 底を図った。 エ 各府省に通達等を発して、同システムに追加した機能により出力した情報に基づき計算書 に正確な計数が計上されていることの確認を求めるなどして、債務の計数の確認体制を充実 させた。 (検査報告187ページ) (20)義務教育費国庫負担金の交付額の算定について(文部科学省) <指摘の要旨(処置要求事項㉞)> 文部科学省は、公立の義務教育諸学校に勤務する教職員の給与等に要する経費を負担するた めに、義務教育費国庫負担金を都道府県に交付している。しかし、「地方公務員の育児休業等 に関する法律」 (育休法)に基づく任期付採用等を行うことなく正規の教職員に育児休業者が担 り、教職員の標準定数等の算定に用いる標準学級数に5月1日時点で児童又は生徒が在籍してい ない学級数を加えていたりしていたため、 負担金が過大に算定されている事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、次のような処置を講じていた。 ア 各都道府県が作成する公立義務教育諸学校教職員実数調等の各種資料の記入要領等に、育 休法に基づく任期付採用等を行うことなく正規の教職員に育児休業者が担当していた職務を 行わせている場合には育児休業代替教職員の実数に計上してはならないこと及び教職員の標 準定数等の算定に用いる標準学級数に5月1日時点で児童又は生徒が在籍していない学級数を 加えてはならないことを記載した。 イ 平成26年1月に都道府県・指定都市教育委員会管理・指導事務主管部課長会議を開催する などして、アの内容について各都道府県に周知徹底した。 (検査報告228ページ) 意見表示・処置要求事項の 結果 当していた職務を行わせている場合にも育児休業代替教職員の実数に計上するなどしていた ―518― 検査の結果 第Ⅱ章 (21) (22)文化芸術振興費補助金による映画製作支援事業における収入の納付について (文部科学省、独立行政法人日本芸術文化振興会) <指摘の要旨 (意見表示事項㊱)> 文化庁及び独立行政法人日本芸術文化振興会は、映画の製作活動を支援するために、映画製 作を主たる目的とする我が国の団体に文化芸術振興費補助金及び同補助金を財源とした助成金 を交付している。そして、これらの補助金等の交付を受けた団体に映画の公開により相当の収 入があった場合には、補助金等の交付額を限度として国又は振興会に納付させること (収入の 納付)ができることとなっている。しかし、収入の納付を求めるために必要な体制が整備され ていなかったり、収入状況の報告書が収入の納付の要否の判断や納付すべき額の算定に活用で きるものとなっていなかったりしている事態が見受けられた。 <講じた処置> 同庁及び振興会は、平成26年6月にそれぞれ交付要綱を改正するとともに、手引書を作成す るなどして次のような処置を講じていた。 ア 交付要綱及び手引書に、納付すべき額の算定方法、納付の手続等を定めて、収入の納付を 求めるために必要な体制を整備した。 イ 手引書に、報告書に記入する収益の捉え方や添付する根拠資料の詳細を定めた。 ウ 26年7月に、手引書を補助金等の交付を受ける団体に送付して、要件に該当すれば収入の 納付を行わせることを明確に示した。また、27年度の募集案内に手引書の内容を明記した。 (検査報告229、849ページ) (23)公立学校施設の耐震補強事業における補強工事及びその関連工事の取扱いについて (文部科学省) <指摘の要旨 (処置要求事項㊱)> 文部科学省は、耐震補強事業を実施する地方公共団体に学校施設環境改善交付金等を交付し ており、同事業の対象となる工事の範囲を、同省の通知において、平成22年度以降、補強工事 及び補強の関連工事 (これらを「補強工事等」)に限定するよう改めている。しかし、補強工事等 意見表示・処置要求事項の 結果 の対象とはならない設備の耐震化等を目的とした工事や、補強工事の施工箇所とは関連性のな い箇所で施工された工事を耐震補強事業に含めている事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、次のような処置を講じていた。 ア 25年5月に都道府県に発した通知において、補強工事は学校建物の耐震性能向上を趣旨と した工事であって、構造計算等で耐震性能の向上に資することが明確にされているものに限 ること、及び補強の関連工事は補強工事の施工に係る必要最小限の範囲のものとすることを 明確に示した。 イ 補強工事等の対象となる工事について、より具体的に示した事務連絡を25年12月に都道府 県に発したり、同年5月から26年3月にかけて全国施設主管課長協議会総会等で説明したりす るなどして、事業主体及び都道府県に周知徹底を図った。 (検査報告230ページ) 検査の結果 ―519― <指摘の要旨(処置要求事項㊱)> 第Ⅱ章 (24)太陽光発電導入事業により公立学校に設置された太陽光発電設備について (文部科学省) 文部科学省は、環境教育への積極的な取組を推進するために、公立の義務教育諸学校等 (公 立学校)へ太陽光発電設備を設置する地方公共団体 (事業主体)に交付金を交付している。しか し、公立学校に設置された太陽光発電設備が授業や特別活動等で十分に活用されていないなど 環境教育への活用が低調となっている事態や、災害時の非常用電源としての使用方法が学校防 災マニュアル等に記載されておらず、災害時での使用が困難となり得る事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、平成25年11月及び26年4月に通知を発するなどして、次のような処置を講じていた。 ア 事業主体に、環境教育における太陽光発電の導入の意義及び効果や新たに太陽光発電設備 を導入する場合に環境教育への活用方法を事前に検討することを周知して、環境教育への活 用を促した。 イ 事業主体に、太陽光発電設備のうち停電時でも使用可能な機能を有するものについて、学 校防災マニュアル等に非常用電源としての使用方法を記載することなどを指導した。 (検査報告231ページ) (25)東日本大震災からの復旧・復興を担う専門人材育成支援事業により開発された教育 プログラム等の成果物の被災地での活用状況について(文部科学省) <指摘の要旨(処置要求事項㊱)> 文部科学省は、東日本大震災からの復旧・復興を担う専門人材育成支援事業を学校法人等に 委託して実施している。しかし、委託事業で開発された教育プログラム等の成果物が岩手、宮 城、福島各県(被災地) の専門学校等には導入されておらず、委託事業の目的が十分に達成され ていない事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、平成26年3月に委託要綱等を改正して、次のような処置を講じていた。 の活用方法を事業計画書に具体的に記載させるようにし、事業選定に当たって成果物の活用 方法等が個別具体的に記載されているかなどの点を評価の観点に追加するなどして、成果物 が被災地の専門学校等に早期に導入されるような委託事業の選定を図った。 イ 開発された個々の成果物の活用方法を実績報告書に具体的に記載させるようにした上で、 26年4月に成果物ごとに被災地での活用状況を調査し、その結果を踏まえて活用を図るための 検討を行った結果、地区ごとに開催される専門学校等の関係者の会議で本事業の成果物の積 極的な活用を依頼するなどの対応策を実施することとしたり、同年5月に被災地に所在する専 門学校、専修学校関係団体、県等に情報を提供したりなどして、成果物の活用促進を図った。 (検査報告231ページ) 意見表示・処置要求事項の 結果 ア 委託先を原則として被災地に所在する学校法人等とするとともに、開発する個々の成果物 ―520― 検査の結果 第Ⅱ章 (26)不正受給疑い事案における徴収金等債権に係る事務処理について (厚生労働省、日本年金機構) <指摘の要旨 (処置要求事項㉞)> 日本年金機構は、厚生労働大臣から権限の委任及び事務の委託を受けて、年金の不正受給者 等からの徴収金等について発生する徴収金等債権に係る事務処理を行っている。しかし、不正 受給疑い事案について、徴収金等債権の確定等が行われていなかったり、確定等は行われてい たものの、事務処理が遅延したりしていたため、徴収金等債権の一部が時効により消滅し返還 請求ができなくなっている事態が見受けられた。 <講じた処置> 厚生労働省及び機構は、不正受給疑い事案のうち確定等が行われていない徴収金等債権の確 定等の事務処理を行うとともに、次のような処置を講じていた。 ア 機構は、平成25年10月から機構本部で不正受給疑い事案の進捗状況等の確認を定期的に 行ったり、26年4月から不正受給疑い事案の事務処理の状況を機構本部から本省に毎月報告 したりすることとした。機構は、これに伴い、25年10月に年金事務所の業務を支援するため に設置されている9ブロック本部で不正受給疑い事案の担当者を明確に定め、26年4月に機構 本部及びブロック本部の担当者を増員するとともに、同年2月に同省と連携してブロック本 部及び年金事務所の担当者を対象とした説明会を実施したり、同年8月に年金給付費の不正 受給者への対応を定めた手引を改訂したりして、不正受給疑い事案の事務処理の円滑な実施 に向けた体制整備を図った。 イ 同省は、機構からアの報告を受けて機構の不正受給疑い事案の処理状況を把握した上で、 必要に応じて機構を指導することとした。 (検査報告364、797ページ) (27)単身世帯の被保護者の死亡により保護を廃止する場合や葬祭扶助を行う場合に係る取 扱いについて (厚生労働省) <指摘の要旨 (処置要求事項㉞)> 厚生労働省は、生活保護法等により、都道府県又は市町村(特別区を含む。これらを「事業主 意見表示・処置要求事項の 結果 体」)が支弁した保護費について生活保護費等負担金を交付している。しかし、事業主体は、単 身の被保護者が死亡した場合に、過払いとなった死亡月の翌月以降の分の保護費の返還の処理 を行っていなかったり、 葬祭費用が葬祭扶助の基準額を超える葬祭に葬祭扶助を行っていたり、 死亡した被保護者の遺留金品を把握して葬祭扶助費に充当できるか検討しないまま葬祭扶助を 行っていたりしている事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、過払いとなった保護費について、事業主体に返還の処理を行わせるとともに、平成 26年3月に都道府県等に通知を発するなどして、次のような処置を講じていた。 ア 事業主体に、①過払いとなった死亡月の翌月以降の分の保護費については返還の免除をす ることはできず、返還の処理を行う必要があること、②葬祭費用が葬祭扶助の基準額を超え る葬祭に葬祭扶助を行うことはできないこと、③死亡した被保護者の扶養義務者ではない者 に葬祭扶助を行う場合には、死亡した被保護者の遺留金品を適切に把握して、葬祭扶助費に 充当できるか検討する必要があることを明確に示した。 検査の結果 ―521― イ 生活保護法施行事務監査において、アの処置について確認を行い、適切な取扱いが行われ (検査報告365ページ) 第Ⅱ章 ていない場合には、事業主体に指導を行うこととした。 (28)厚生労働省の施設等機関における重要物品の管理等について(厚生労働省) <指摘の要旨(処置要求事項㉞)> 厚生労働省は、施設等機関の総務部長等を物品管理官に指定してその施設等機関に属する物 品を管理させている。しかし、施設等機関において、物品管理簿に記録されている重要物品(取 得価格が50万円以上の機械及び器具)の管理が適正を欠いていたり、研究者が科学研究費補助 金で購入した取得価格が50万円以上の設備備品が研究者の所属機関に寄附されておらず国の物 品として管理されていなかったりしていて、物品管理簿及びその管理する重要物品についての 大臣への報告書 (内部物品報告書) 、ひいては同省の物品増減及び現在額報告書が重要物品の現 況を反映した正確なものとなっていない事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、次のような処置を講じていた。 ア 施設等機関における重要物品について、平成26年4月までに現況や亡失の状況を調査把握 して、物品管理簿の修正等所要の手続をとり、厚生労働大臣に亡失の報告をさせるなどした り、25年10月に通知を発するなどして前記の設備備品について直ちに寄附を行わせて国の物 品として適切に管理することとしたり、内部物品報告書を重要物品の現況を反映した正確な ものとしたりした。 イ 施設等機関の職員に、25年10月、26年1月及び同年2月に物品の管理等に関する研修を行う などして、重要物品の適正な管理等の重要性について周知徹底を図ったり、不用決定の承認 手続や検査員による物品管理官に対する定期検査等を適切に行わせたり、施設等機関に、25 年10月に通知を発するなどして、規程等に従って設備備品の寄附手続を適切に行うことにつ いて研究者に周知徹底を図ったり、内部監査等により重要物品の管理等の実態を適宜把握し て、必要な指導監督を行ったりした。 (検査報告365ページ) <指摘の要旨(処置要求事項㉞)> 厚生労働省は、国民健康保険の保険者である市町村に、療養給付費負担金及び財政調整交付 金を交付している。そして、市町村が、自らの負担で被保険者の一部負担金をその被保険者に 代わり医療機関等に支払う負担軽減措置を実施した場合には、これらの負担金及び交付金のう ち普通調整交付金の交付額算定に当たり、負担軽減措置の対象者に係る療養の給付に要する費 用の額等に、当該額等に対する被保険者の一部負担金の負担割合に応じた所定の率 (減額調整 率)を乗じて減額調整を行うこととなっている。しかし、負担軽減措置のうち、一部負担金に 定額の上限を設けて負担を軽減する定額制を実施している多数の市町村において、被保険者が 実際に負担した一部負担金の額 (実負担額)に基づく負担割合を算定していなかったり、実負担 額に高額療養費を含めて負担割合を算定していたりしているため、より減額の度合いが低い減 額調整率が適用され、療養給付費負担金及び財政調整交付金のうち普通調整交付金が過大に交 意見表示・処置要求事項の 結果 (29)国民健康保険の療養給付費負担金及び財政調整交付金の算定における減額調整につ いて(厚生労働省) ―522― 検査の結果 付されている事態が見受けられた。 第Ⅱ章 <講じた処置> 同省は、平成25年12月に都道府県に通知を発して、定額制の負担軽減措置を実施した場合に は、適正な実負担額に基づく負担割合を算定した上、この負担割合に応じた減額調整率を適用 するよう、その算定方法を具体的に示して、これを都道府県を通じて市町村に周知するととも に、その適用に関する技術的助言を行う処置を講じていた。 (検査報告366ページ) (30)雇用保険の雇用調整助成金に係る事業所訪問調査の実施について(厚生労働省) <指摘の要旨 (処置要求事項㉞)> 厚生労働省は、雇用調整助成金の支給を行っており、事業主による同助成金の不正受給に対 処するために、都道府県労働局 (労働局)及び管内の公共職業安定所(これらを「労働局等」)は、 休業又は教育訓練 (休業等) の実施状況等を確認する事業所訪問調査を行うとともに、休業等の 実施に疑義があるなどの場合は再度の事業所訪問調査等(再調査)を行っている。しかし、労働 局等において、事業所訪問調査における関係書類の確認が十分でなかったり、再調査が必要で あると判断していたのに行っていなかったりなどしていて、不正受給を把握できていない事態 が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、平成26年3月に通知を発するなどして、次のような処置を講じていた。 ア 本省は、事業所訪問調査を行う際に確認すべき項目やその確認方法を明確にしたチェック リスト及び報告書の様式を例示して労働局等が行う事業所訪問調査で活用させることとし た。また、同年4月から、事業所訪問調査及び再調査の実施状況について労働局から定期的 に報告を受けるなどして把握し、取組が十分でない労働局には、事由等を確認して必要な指 導や助言を行うこととした。 イ 労働局は、前記の通知に基づき、上記チェックリストを活用することなどにより、出勤簿、 賃金台帳等やそれらの裏付けとなる書類の確認を十分に行うこととし、不正受給が疑われる 場合には再調査を行うか否かの判断を行ったり、報告書の記載内容から再調査が必要である 意見表示・処置要求事項の 結果 と判断した場合には再調査を速やかに行ったりなどすることとした。(検査報告367ページ) (31)試験研究機関に所属する研究者に交付された厚生労働科学研究費補助金の経理等に ついて (厚生労働省) <指摘の要旨 (処置要求事項㉞)> 厚生労働省は、研究者等に厚生労働科学研究費補助金(厚労科研費)を交付しているが、研究 者による不正な使用等が後を絶たないことなどから、研究機関等において、公的研究費の使用 等の規則の整備や管理、監査の体制整備等に取り組むこととしている。そして、同省の試験研 究機関に所属する研究者に交付される厚労科研費の経理等の事務については、同省の通知によ り、研究者が所属する試験研究機関の長に必ず委任し、試験研究機関において、適切な経費の 管理が可能な事務体制を整備したり、内部監査の体制を整備したりすることとなっている。し かし、試験研究機関では、研究費の使用等の規則を整備していないため、研究者本人が物品の 発注業務を行うなどしている事態や、内部監査でこれを看過するなどしている事態が見受けら 検査の結果 ―523― れた。 第Ⅱ章 <講じた処置> 同省は、次のような処置を講じていた。 ア 本省は、試験研究機関に通知を発して、平成25年10月から厚労科研費で物品を購入する場 合は、国の会計法令に準じた内部規程を整備した上でこれに従って発注業務等を行うことや、 厚労科研費の管理及び経理の体制が適切に整備されているかについても十分に留意するなど して内部監査を適切に行うことを指導し監督した。 イ 試験研究機関は、アの通知に基づき、25年10月から厚労科研費で物品を購入する場合は、 国の会計法令に準じた内部規程を整備した上でこれに従って発注業務等を行うとともに、26 年6月に内部監査の規程を改正するなどして、厚労科研費の管理及び経理の体制についても 十分に留意して内部監査を行うこととした。 (検査報告368ページ) (32)医療費の過誤払による返還金債権の把握、管理、回収等について(厚生労働省) <指摘の要旨(処置要求事項㉞及び意見表示事項㊱) > 厚生労働省は、医療保険制度及び後期高齢者医療制度において、これらの保険者又は後期高 齢者医療広域連合 (合わせて「保険者等」)が行う医療給付に要する費用の一部として、療養給付 費負担金等(国庫負担金) を交付している。そして、国民健康保険等において、患者負担分を控 除した診療報酬又は調剤報酬である医療費の過誤払による返還金等が発生した場合の国庫負担 金の算定に当たっては、保険者等が調査及び決定するなどした返還金の額を対象費用から控除 することとなっている。しかし、保険者等において、返還金債権の把握等が適切に行われてい なかったことなどから国庫負担金が過大に算定されて交付されていたり、返還金債権の回収が 速やかに行われていなかったりしている事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、過大となっていた国庫負担金を保険者等から順次返納させるとともに、平成25年7 月に都道府県等に通知を発するなどして、次のような処置を講じていた。 ア 後期高齢者医療広域連合に対して、後期高齢者医療制度において返還金等が発生した場合 等において返還金が発生した場合は返還金債権の把握等を適切に行うとともに国庫負担金の 算定を適正に行うことを市町村等に周知徹底すること、②市町村等が提出した国庫負担金に 係る事業実績報告書の審査等を十分行うこと及び③市町村等に指導監査等を行う際は返還金 債権の把握等を適切に行い国庫負担金の算定を適正に行うことを重点的に指導することにつ いて、都道府県等に技術的助言等を行った。 イ 返還金債権の回収を速やかに行うことなどができるよう、返還金に係る医療費相当額を保 険者等の間で相互に調整できる体制を整備することについて、関係府省とも調整するなどし て、具体的な検討に着手した。 (検査報告369ページ) (33)社会福祉法人が経営する特別養護老人ホームの積立金等について(厚生労働省) <指摘の要旨(意見表示事項㊱)> 厚生労働省は、社会福祉法人が経営する特別養護老人ホーム(特養ホーム)に市町村が支払っ 意見表示・処置要求事項の 結果 の国庫負担金の算定方法等について、都道府県等を通じて周知した。また、①国民健康保険 ―524― 検査の結果 た介護給付費及び介護保険制度の実施前において必要な介護を居宅で受けることが困難な高齢 第Ⅱ章 者を市町村が特養ホームに入所させる場合の養護に係る費用(措置費)の一部を負担している。 そして、特養ホームが安定的な経営を継続していくためには、特定の目的の支出に備えるため の積立金(目的積立金) を計画的に積み立てるとともに、財務状況の透明性の向上を図っていく ことが重要となっている。しかし、多数の特養ホームにおいて、多額の次期繰越活動収支差額 等があるのに、 将来の施設の改修等に備えた目的積立金を貸借対照表に計上していなかったり、 措置費の残余である移行時特別積立預金(特別積立預金)と移行時特別積立金(特別積立金)との 間に開差が生じていたりなどしている事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、平成26年6月に都道府県等に通知を発して、特養ホームの財務状況の透明性の向上 が図られるよう、次のような処置を講じていた。 ア 特養ホームにおいて次期繰越活動収支差額に余剰が生ずる場合には、施設整備等積立金等 の目的積立金の計画的な積立てに努めるよう指導することについて技術的助言等を行った。 イ 特養ホームにおいて特別積立預金の額が特別積立金の額を下回る場合には、適切な手続を 経て特別積立金を特別積立預金と同額まで取り崩すよう指導するとともに、特別積立預金を 保有している場合には、これを有効に活用するための具体的な使途等を検討するよう指導す ることについて技術的助言等を行った。 (検査報告370ページ) (34)国民健康保険の財政調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金)の算定について (厚生労働省) <指摘の要旨 (処置要求事項㊱)> 厚生労働省は、会社の倒産、解雇等の理由により離職して保険料(税)が軽減される世帯の一 般被保険者(非自発的失業者) に対する保険料(税)軽減措置による財政負担が多額になっている 市町村に、財政調整交付金の特別調整交付金として、非自発的失業財政負担増特別交付金(失 業特別交付金)を交付している。しかし、失業特別交付金について、各医療保険者が社会保険 診療報酬支払基金に納付する介護納付金についての国民健康保険料(税) (介護分)に係る調整基 意見表示・処置要求事項の 結果 準額の算定方法が適切でなく、失業特別交付金が各市町村の非自発的失業者に係る財政負担増 の実態を十分に反映せずに交付されることになっている事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、失業特別交付金の介護分に係る調整基準額の算定に当たっては、介護分に係る各月 末時点における非自発的失業者数から賦課期日時点の非自発的失業者数を控除した人数である 増加非自発的失業者数の総数が実態をより適切に反映したものとなるよう、平成25年12月に新 たな算定のための通知を発して、都道府県を通じて、市町村にその周知徹底を図るなどの処置 を講じていた。 (検査報告371ページ) (35)地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金等により整備した地域密着型施設の利用 状況について (厚生労働省) <指摘の要旨 (処置要求事項㊱)> 厚生労働省は、 地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金等 (整備交付金) を市町村に交付して、 介護保険の被保険者であって常時介護が必要な状態にあると認められた者等 (要介護者等)に地 検査の結果 ―525― 域密着型サービスを提供する地域密着型施設 (認知症対応型通所介護事業所及び小規模多機能型 サービス利用上の問題があったりなどしていたため、事業所が全く利用されていなかったり、 第Ⅱ章 居宅介護事業所) を整備している。しかし、サービスの需要が的確に把握されていなかったり、 利用が低調となっていたりしていて、事業効果が十分発現していない事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、次のような処置を講じていた。 ア 平成26年2月に開催した都道府県担当課長会議及び同年4月に発した事務連絡において、整 備交付金の交付申請に当たり、サービスの需要を的確に把握することの必要性について、都 道府県を通じるなどして市町村に周知するとともに、交付申請の審査等に当たり、需要の有 無等の把握を的確に行ったかについて十分に確認するよう都道府県等に周知した。 イ アの都道府県担当課長会議において、利用が低調等となっている地域密着型施設が所在す る管内の市町村に、これらの施設の整備後の利用状況を的確に把握してフォローアップを行 うなど事業効果の発現のための取組について事業所を指導するとともに、地域密着型施設が 提供するサービスの機能や特徴等について要介護者等への周知等を十分に行うよう指導や助 言を行うことについて、都道府県に周知した。 (検査報告371ページ) (36)事業所内に設置される保育施設に係る計画の審査等について(厚生労働省) <指摘の要旨(処置要求事項㊱)> 厚生労働省は、労働者の雇用の安定に資することを目的として、自ら雇用する労働者等の子 の保育を行うために、事業所内に保育施設の設置等を行った事業主等に、事業所内保育施設設 置・運営等支援助成金を支給している。しかし、保育施設の運営規模の妥当性や長期的かつ安 定的な運営の可能性を検討するなどの審査が十分に行われておらず、廃止又は休止された保育 施設が多数生じていたり、事業主等に保育施設の休止状態の解消を図るための指導が十分に行 われていなかったりしている事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、平成25年5月及び26年4月に上記助成金の支給要領等を改正するなどして、次のよう ア 保育施設の設置等計画の審査の際に、①定員等に係る積算根拠資料として運営開始初年度 から5年度目までの利用希望に関するアンケート調査結果等の資料を、②決算報告書等の財 務関係書類として申請日が属する年度の直近3か年の損益計算書等の資料を、それぞれ事業 主等に提出させて、都道府県労働局 (労働局)が定員等の積算根拠及び事業主等の財務状況を 確認するよう、支給要領等に明記して労働局に周知した。 イ 休止期間が5年を超える施設について事業主等に3年以内を計画期間とする再開計画を提出 させたり、休止期間が5年以下の施設についても現地調査による運営状況の確認の結果等を 踏まえて事業主等に再開計画を提出させたり、保育施設の休止期間中は労働局が年1回以上 現地調査等を行うことにより再開計画の取組状況を把握したりなどするよう、支給要領等に 明記して労働局に周知した。 (検査報告372ページ) 意見表示・処置要求事項の 結果 な処置を講じていた。 ―526― 検査の結果 第Ⅱ章 (37)農地・水保全管理支払交付金事業の実施について(農林水産省) <指摘の要旨 (処置要求事項㉞及び意見表示事項㊱) > 農林水産省は、農地、農業用水等の保全管理を行う地域ぐるみの共同活動及び老朽化が進む 農業用用排水路等の長寿命化のための補修・更新の工事等を行う向上活動を支援するために、 農地・水保全管理支払交付金事業を実施している。しかし、共同活動に取り組む組織が遊休農 地の発生を防止するための保全管理を適切に実施しているか具体的に確認できず、実施期間の 最終年度である平成23年度末に遊休農地が相当数発生していたおそれがある状況となっていた り、向上活動に取り組む組織が取得した財産に関して市町村等への譲渡が進んでいないことか ら財産の帰属及び管理責任の所在が明確になっていない状況となっていたり、財産譲渡のため に必要となる図面等の書類の整備が十分でなかったりしている事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、次のような処置を講じていた。 ア 地域協議会及び市町村に共同活動に係る農用地の保全管理の実態把握調査を行わせ、実施 期間終了時に保全管理が適切に行われていなかった農用地37,585a(52協議会)について、地 域協議会にその農用地に係る国庫交付金相当額を26年10月までに国庫に返還させた。 イ 地域協議会及び市町村に、農用地の保全管理の状況の確認方法を示して、その指導の徹底 を図るとともに、26年4月に、農地・水保全管理支払交付金の組替えなどにより新たに創設 した多面的機能支払交付金の実施要領にもこの確認方法を定めて周知した。 ウ 市町村等が所有し管理する施設において向上活動に取り組む組織が施設の長寿命化のため の更新工事を行う場合には、財産管理上必要となる図面等の書類を整備したり、工事終了後 できるだけ速やかにこれらの市町村等に財産譲渡を行ったりするよう指導の徹底を図るとと もに、上記の実施要領にこの取扱いを定めて周知した。 (検査報告503ページ) (38)漁船保険振興事業資金の有効活用について(農林水産省) <指摘の要旨 (意見表示事項㊱)> (特別会計)から 水産庁は、昭和41年度及び48年度に漁船再保険及び漁業共済保険特別会計(注) 意見表示・処置要求事項の 結果 計47億円を漁船保険中央会 (中央会) に交付している。中央会は、この交付金を漁船保険振興事 業資金(振興資金) として設置造成し、その運用益により漁船保険組合等に各種の助成等を行う 漁船保険振興事業として、平成22、23両年度に漁船保険推進対策事業、無事故漁船報償事業及 び海難防止助成事業の3事業を実施している。しかし、漁船保険振興事業において、振興資金 の運用益の減少に伴い事業費が大きく減少する中で、多くの漁船保険組合が研修会を開催する のに必要とは認められない経費を助成の対象となる事業費に含めていたり、類似の制度が整備 されていることなどから事業の意義が低下していたりなどしている事態が見受けられた。 <講じた処置> 同庁は、次のような処置を講じていた。 ア 漁船保険振興事業については、従来の事業の在り方の抜本的な見直しを行い、3事業を25 年度末で全て廃止させた。 イ 振興資金の活用について検討した結果、振興資金の運用益等を活用して、海難事故の防止 (注)平成26年度からは食料安定供給特別会計(漁船再保険勘定) 検査の結果 ―527― を目的として船舶自動識別装置を導入した漁船等に保険料の一部を助成する新規事業を26年 ついては、26年10月に中央会から全額を返還させた。 (検査報告504ページ) 第Ⅱ章 度から28年度まで実施させることとした上で、特別会計から交付された47億円の振興資金に (39)旧政府倉庫等の処分状況について(農林水産省) <指摘の要旨(意見表示事項㊱)> 農林水産省は、平成22年10月までに用途廃止された旧政府倉庫等の処分について、地方公共 団体に対する購入等の公的要望の確認等を地方農政局長に行わせることとしている。しかし、 11倉庫等について、地方農政局において公的要望の確認等に長期間を要していたり、処分に向 けた計画の策定や処分手続が適時適切に行われていなかったり、本省において統一的な進行管 理等が適切に行われていなかったりなどしていて、倉庫業務を終了してから長期間が経過して いるのに処分が完了していなかったり、処分手続が順調に進捗していなかったりしている事態 が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、次のような処置を講じていた。 ア 25年9月に、食料安定供給特別会計 (食糧管理勘定及び業務勘定)所属普通財産の取扱要領 を改正して、これにより各地方農政局は、旧政府倉庫等の処分に向けての具体的かつ詳細な 計画を同年10月までに策定した。 イ 本省は、同取扱要領により各地方農政局から定期的に提出されるアの計画に基づいた統一 的な進行管理を行うとともに、各地方農政局に指導等を行った。 ウ 旧政府倉庫等の処分に当たって必要となる建物等の取壊し等については、各地方農政局が、 本省と協議しつつ11倉庫等について検討を行い、このうち2倉庫について取り壊した上で売 却等を行うこととする計画を25年10月までに決定した。 エ 各地方農政局の公的要望の確認及び地方公共団体等との売払いなどに向けた協議等に際し て、同取扱要領により、あらかじめ地方公共団体等との間で目標期限の設定等を行った。 (検査報告505ページ) <指摘の要旨(処置要求事項㊱)> 農林水産省は、加工・業務用途における国産農畜産物のシェアを向上させることを目的とし て、生産者、食品製造業者等を構成員とする国産原材料供給・利用協議会(協議会)が実施する 国産原材料サプライチェーン構築事業 (事業)に補助金を交付している。協議会は、事業の事業 実施計画を作成するに当たり、計画承認年度の3年後の目標年度に達成すべき成果目標を設定 することとなっている。しかし、協議会において、事業実施計画を作成する際の構成員間の合 意形成が十分でなかったことや、生産者が生産した加工・業務用原材料等(協議会生産物)の需 給の見通しの検討、予測等が十分でなかったことなどにより、達成することが困難な成果目標 等が設定されるなどして、 成果目標等に対する達成率が低調となっている事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、次のような処置を講じていた。 意見表示・処置要求事項の 結果 (40)国産原材料サプライチェーン構築事業の効果的な実施について(農林水産省) ―528― 検査の結果 ア 産地活性化総合対策事業実施要領を平成26年4月に改正するなどして、協議会が事業実施 第Ⅱ章 計画を作成する際に、協議会の構成員の合意形成を十分に図ることとするとともに、事業が 効果的に実施されるよう、成果目標等の設定に当たり、協議会生産物の需給の見通しについ て、その設定根拠を明確にすることとした。 イ 地方農政局等に、26年5月に、上記の要領に定められた内容について協議会を指導すると ともに、事業実施計画の事前の審査及び確認を徹底するよう指示した。 (検査報告506ページ) (41)鳥獣被害防止総合支援事業等における費用対効果分析について(農林水産省) <指摘の要旨 (処置要求事項㊱)> 農林水産省は、鳥獣被害防止総合支援事業等を実施する事業主体に補助金等を交付する都道 府県に対して交付金を交付しており、交付金の実施要綱等により、事業主体は、鳥獣の侵入防 止柵の設置等の整備事業を実施する場合には、費用対効果分析を行うこととなっている。しか し、費用対効果分析の実施に当たり、年効果額の算定の基礎となる被害状況を示す根拠が明確 でなかったり、事業主体全体を一つの単位として投資効率を算定していて地区単位で投資効率 を試算すると妥当投資額が総事業費を下回る地区が多数あったり、直営施工により侵入防止柵 を設置する場合の総事業費に労務費等を加えないで投資効率を算定したりしている事態が見受 けられた。 <講じた処置> 同省は、次のような処置を講じていた。 ・ ア 平成26年2月に交付金の実施要領等を改正して、被害状況をほ場単位や農家単位等で把握 した上で現地確認等の調査又は農業共済組合等第三者の有するデータによる客観的な数値等 を活用することとするとともに、年効果額の算定に用いる数値の根拠資料を、事業終了の年 度の翌年度から起算して5年間整理保管しておくこととし、投資効率の算定の単位について は、原則として、集落等の地区を単位とすることとした。 イ 都道府県に、26年2月に、実施要領等の内容及び直営施工により侵入防止柵を設置する場 合の総事業費に労務費等を加えることについて、事業主体に周知徹底を図るよう指導すると 意見表示・処置要求事項の 結果 ともに、事業主体による費用対効果分析の内容等について十分精査するよう指導した。 (検査報告507ページ) (42)経営安定関連保証等対策費補助金により造成された基金による信用保証協会に対す る貸付けについて (経済産業省) <指摘の要旨 (意見表示事項㊱)> 中小企業庁は、資金繰りに支障が生じている中小企業者への資金供給を円滑にするために、 社団法人全国信用保証協会連合会(注)に補助金を交付し、連合会は、これを財源として、信用保証 協会の収支悪化等により、中小企業者からの信用保証の引受けに支障が生ずる事態を避けるた めに、各協会の収支差額変動準備金の状況を基に、財政基盤の強化が必要と思われる協会に無 利子の貸付けを実施している。しかし、貸付けを受けた32協会は地方公共団体からの出えん金 等から成る基金と基金準備金 (これらを「基本財産」)を十分保有しているのに、連合会はこれを (注)平成25年4月以降は一般社団法人全国信用保証協会連合会 検査の結果 ―529― 考慮することなく貸付けを実施したり、貸付けの必要性や必要額を見直すことなく貸し続けた 第Ⅱ章 りしている事態が見受けられた。 <講じた処置> 同庁は、次のような処置を講じていた。 ア 連合会の貸付事業に係る貸付基準を平成25年9月に改正して、保証債務残高に対する収支 差額変動準備金残高の比率が1%未満という従前の要件を満たし、かつ保証消化率(基本財産 に一定の倍数を乗じた最高限度額に対する保証債務残高の割合)が70%を超えるという要件 を満たす協会を貸付対象とすることとした。 イ 金銭消費貸借契約証書のひな形を25年9月に改正して、貸付期間中でも貸付金の全部又は 一部を連合会に償還させることができるようにした。 ウ 連合会の業務方法書を25年4月に改訂して、貸付事業の資金を損失補償事業の出えん資金 に振り替えることができるようにするなどした上で、25年度までに償還された貸付金156億 円については、今後不足が見込まれる損失補償事業の出えん資金に全額振替を行い、26年8 月に48協会に対して計388億円の損失補償金の出えんを行っていた。また、今後、償還され る貸付金についても、償還時に振替等の検討を行い、効果的な活用を図ることにしている。 (検査報告544ページ) (43)国が管理する国道のトンネルの維持管理について(国土交通省) <指摘の要旨(処置要求事項㉞) > 国土交通省は、トンネルの覆工、坑門等のトンネル本体工及び換気設備等のトンネル附属物 の点検を実施している。しかし、トンネル本体工及び換気設備の定期点検を点検要領等に基づ き適切に実施していなかったり、定期点検の結果を維持管理に反映させていなかったりしてい る事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、平成25年10月に地方整備局等に通達を発して、次のような処置を講じていた。 ア 国道事務所等に、トンネル本体工及び換気設備の定期点検の重要性を認識させ、定期点検 結果を維持管理に反映させるよう指示した。 イ 国道事務所等にトンネル点検計画を作成させるとともに、地方整備局等が管内国道事務所 等の同計画を把握して、定期的に同計画の進捗状況を確認できる体制を整備した。 (検査報告647ページ) (44)国が管理する国道のトンネルに設置したジェットファンの有効活用について (国土交通省) <指摘の要旨(処置要求事項㉞)> 国土交通省は、国が管理する国道のトンネルにおいて、「道路トンネル技術基準」及びその解 説書に基づき、換気設備であるジェットファンの設置工事を毎年度実施している。しかし、平 成20年10月に改訂される前の解説書 (旧基準)等に基づいて設置しているジェットファンについ て設置の必要性等を検討していなかったり、検討の結果、不要となったジェットファンの有効 意見表示・処置要求事項の 結果 を点検要領等に基づき確実に実施し、その結果に基づく迅速な修繕等を行って、定期点検の ―530― 検査の結果 活用を検討することなく新たにジェットファンを製作したりしている事態が見受けられた。 第Ⅱ章 <講じた処置> 同省は、25年10月に地方整備局等に通達を発して、旧基準等に基づき設置しているジェット ファンについて、20年10月に改訂された新基準に基づいて設置の必要性等を検討するよう地方 整備局等から国道事務所等に周知するとともに、検討の結果、不要となったジェットファンの うち、転用可能なジェットファンの情報を集約した転用計画を策定し、26年6月に地方整備局 等に事務連絡を発して、転用先が未定のジェットファンの情報を地方整備局等から国道事務所 等に提供して有効活用が図られるようにする処置を講じていた。 (検査報告648ページ) (45)国有港湾施設の維持管理について(国土交通省) <指摘の要旨 (処置要求事項㉞及び意見表示事項㊱) > 国土交通省は、港湾法等に基づき港湾施設を整備しており、直轄事業で整備するなどした港 湾施設 (国有港湾施設)については、港湾管理者に管理の委託等をしなければならないことと なっている。しかし、国有港湾施設の管理委託契約及び維持管理計画書について、財政上の問 題等により港湾管理者との協議が継続していて締結や引渡しなどに至っていなかったり、港湾 管理者において維持管理計画書に基づく維持管理が行われていなかったりしている事態や、国 有港湾施設が原状又は用途を変更して利用されるなどしているのに同法及び管理委託契約に基 づく管理手続が的確に行われていない事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、平成25年12月に各地方整備局等に事務連絡を発するなどして、次のような処置を講 じていた。 ア 予防保全の考え方を導入した維持管理の重要性を港湾管理者に改めて説明したり、費用の 平準化を図るなどしつつ、施設の老朽化対策の優先順位を含めた維持管理、更新計画及び対 応方針について港湾管理者と定期的に協議したりするよう各地方整備局等を指導した。 イ 各港湾管理者の維持管理状況等に関する監査をより的確に行い、必要に応じて港湾管理者 に的確な報告を求めたり、必要な指示を行ったりするよう各地方整備局等を指導するととも 意見表示・処置要求事項の 結果 に、必要な手続がとられていない国有港湾施設について、各地方整備局等において、各港湾 管理者から必要な報告を受けるなどした。 (検査報告648ページ) (46)国管理空港の運営について (国土交通省) <指摘の要旨 (意見表示事項㊱)> 国土交通省は、空港法等に基づき、国が設置し管理している空港について、効率的な空港運 営を行うことなどを推進することとしている。しかし、地方航空局及び空港事務所が、空港別 収支を積極的に空港の収支改善の取組に活用できるようにするための方針等を示していなかっ たり、地方公共団体等と十分に連携して需要拡大のための誘致活動を一体的かつ効果的に行え るようにするための検討を行っていなかったり、旅客ターミナルビルを運営する会社等 (旅客 ビル会社)の経営状況の透明化に関する取組が十分図られていなかったり、旅客ビル会社の国 有財産使用料の適正化への取組が必ずしも十分なものとはなっていなかったりしている事態が 見受けられた。 検査の結果 ―531― <講じた処置> ア 平成26年3月に地方航空局に通知を発して、空港別収支の詳細内訳等の情報提供を行い、 第Ⅱ章 同省は、次のような処置を講じていた。 地方航空局及び空港事務所がその情報を空港の収支改善の取組等に活用して空港運営の効率 化等の促進を図ることとする方針を示した。 イ 26年5月に地方航空局に通知を発して、地方公共団体が中心となって組織された協議会へ 空港事務所が積極的に参画し、需要拡大のための誘致活動等について、地方公共団体等の関 係者と一体的に取り組むことを検討するよう指示した。 ウ 25年12月に旅客ビル会社に通知を発して、経営の透明性の確保の観点から、旅客ビル会社 の計算書類の附属明細書を公開するなどの更なる情報の公開を要請するなどした。 エ 25年9月に国有財産使用料の算定要領等を改定して、不動産鑑定評価において、旅客ビル 会社の国有財産使用料の算定方法の検証等を実施することとした。 (検査報告649ページ) (47)巡視船艇に搭載する武器等の製造・定期整備に係る契約方法等について (国土交通省) <指摘の要旨(処置要求事項㊱)> 海上保安庁本庁及び各管区海上保安本部は、巡視船艇に搭載する武器等の製造・定期整備を 行うに当たり随意契約を締結している。しかし、契約における見積工数と実績工数等が大幅に ・・ かい離しているにもかかわらず、契約締結時に確定した契約金額を支払う確定契約を締結して いたり、製造等原価を確認する調査を行うための条項を付していなかったり、実績に基づかな い見積書の提出を受け続けていたりしているなどの事態が見受けられた。 <講じた処置> 同庁は、次のような処置を講じていた。 ア 本庁は、巡視船艇に搭載する武器等の製造・定期整備に係る契約について、従来の確定契 約から製造等原価の実績等に基づいて契約代金の額を確定する契約方法へと見直しを行い、 平成26年3月にその契約方法を適切に運用するために、原価監査実施要領及び標準的な契約 イ 本庁及び各管区海上保安本部は、アの事務連絡により見直された契約方法を適切に運用し ていくこととするとともに、必要に応じて契約の履行期間中又は履行後に製造等原価を確認 するための調査ができる条項及び虚偽の資料を提出又は提示した場合に違約金を賦課する条 項を契約に付すこととした。 (検査報告650ページ) (48)橋りょうの維持管理について (国土交通省) <指摘の要旨(処置要求事項㊱)> 国土交通省は、橋りょうの長寿命化修繕計画を自ら策定する一方、定期点検及び診断を業務 委託により行い、また、都道府県等が行っている定期点検、診断及び同計画の策定の業務委託 に多額の交付金を交付している。しかし、道県等が、橋りょう台帳等に記載されている橋りょ うの重要度等を勘案することなく一律に定期点検の対象としたり、国道事務所等及び道県等が 溝橋(カルバート) を定期点検の対象としたりしている事態が見受けられた。 意見表示・処置要求事項の 結果 書の書式を定めて、同月に事務連絡を発して各管区海上保安本部等に周知した。 ―532― 検査の結果 <講じた処置> 第Ⅱ章 同省は、次のような処置を講じていた。 ア 平成26年7月に事務連絡を発して、都道府県等における同計画の策定に当たっての橋りょ うの重要度等を勘案した定期点検の優先順位の考え方を明確にして、 都道府県等に周知した。 りょう イ 26年6月に橋梁定期点検要領を策定して、同省における同計画の策定に当たってのカルバー トの取扱いを含めた定期点検の対象とすべき橋りょうの定義を明確にしたり、同月に通知を 発してこの定義を都道府県等に周知したりした。 (検査報告651ページ) (49)土砂災害情報相互通報システムの活用について(国土交通省) <指摘の要旨 (処置要求事項㊱)> 国土交通省は、都道府県に土砂災害の前兆現象及び災害発生状況等の土砂災害関連情報を都 道府県と住民とが相互に通報できる土砂災害情報相互通報システムの整備等に係る費用の一部 を補助する土砂災害情報相互通報システム整備事業を実施している。しかし、同システムに、 住民からの情報提供に係る機能が具備されていないことなどにより、住民からの情報提供が行 われていなかったり、住民への情報提供が十分行われていなかったりしていて、同システムが 十分有効に活用されておらず、 同事業の事業効果が十分発現されていない事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、次のような処置を講じていた。 ア 平成26年4月に採択基準を見直して、同システムに双方向機能を具備させることを同事業 の要件とした。 イ 同月に都道府県に通知を発して、同システムに双方向機能を具備させることとする全体計 画を作成して計画的な整備を図ること、及び防災訓練等の機会を通じ住民がシステム機器の 使用方法を確認して直ちに使用できるような体制を整備したり、定期的にシステム機器の使 用状況等を把握したり、システム機器の適宜補修を実施することなどにより管理を適切に 行ったりして、同システムの活用を促進するための方策を適時適切に検討することについて 技術的助言を行った。 (検査報告652ページ) 意見表示・処置要求事項の 結果 (50)進入道路に係る維持管理費の負担について(国土交通省) <指摘の要旨 (処置要求事項㊱)> 国土交通省は、航空路監視レーダー等の設置場所と公道を接続する進入道路を整備して管理 しているが、進入道路の中には、その付近にテレビ局、電力会社、国の機関等の無線中継所設 置者等が無線中継所等を設置等している箇所があり、無線中継所設置者等は無線中継所等の管 理等のために進入道路を利用している。しかし、空港事務所等が進入道路の維持管理費の全額 を負担していて、無線中継所設置者等に応分の負担を求めていない事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、平成25年11月に進入道路の維持管理に係る指針等を制定して、26年1月から2月まで の間に無線中継所設置者等と進入道路の維持管理費について利用状況を踏まえた応分の負担に 関する協議を行う処置を講じていた。 (検査報告652ページ) 検査の結果 ―533― <指摘の要旨(処置要求事項㉞)> 第Ⅱ章 (51)違約金の賦課を定めた資料の信頼性確保に関する特約条項の取扱いについて (防衛省) 防衛省は、過去の過大請求事案を踏まえて、予定価格の算定に当たり原価計算方式を採用し た契約に、違約金の賦課について定めた「資料の信頼性確保に関する特約条項」(信頼性特約) を 付すこととしている。さらに、平成25年4月から締結する契約に、段階的違約金の賦課を定め た「資料の信頼性確保及び制度調査の実施に関する特約条項」(新信頼性特約)を付すとともに、 信頼性特約を付している履行中の契約についても、新信頼性特約へ変更することを契約相手方 に要請することとしている。しかし、情報本部及び海上自衛隊航空補給処が締結した契約で、 信頼性特約が付されていないなどの事態や、このため適切な額の違約金を請求できなかったな どの事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、情報本部及び海上自衛隊航空補給処を含めた全ての調達機関に、履行中の契約につ いて信頼性特約等の付与状況を調査させ、信頼性特約等が付されていないなどの契約について は、契約相手方と協議させて、特約条項を付すこととする変更契約を行わせるとともに、次の ような処置を講じていた。 ア 各調達機関に、25年11月から26年1月までの間に教育等を実施して、新信頼性特約を付す ことを定めた通達の趣旨及びその遵守の重要性を周知徹底した。 イ 各調達機関に、26年3月に通知を発して、決裁書類の確認を的確に行うために、新信頼性 特約の付与状況を確認できるチェックシートを作成させることとしたり、アの教育等を実施 した際に、契約上適切でない事態が明らかになった場合は迅速かつ的確な対応を講ずるよう 指導したり、各調達機関の会計監査部門に、同年4月に通達を発して、新信頼性特約が適正 に付されているかなどについて重点的に会計監査を実施させることとしたりした。 (検査報告722ページ) <指摘の要旨(処置要求事項㉞)> 海上自衛隊は、潜水艦用ディーゼル機関に使用されている連接棒大端部軸受(軸受)が摩耗限 度等の交換基準に達していた場合等には、製造請負契約等で調達するなどしている。しかし、 海上自衛隊は、納入された軸受が仕様書等に適合していなかったことを軸受の損傷事故の調査 か し 報告書等により把握できたにもかかわらず、その事実を看過して、瑕疵や損害の有無等を十分 に調査、検証していなかった事態が見受けられた。 <講じた処置> 海上幕僚監部は、次のような処置を講じていた。 ア 海上自衛隊が締結した契約32件について、納入された軸受全てが仕様書等に適合していな いものであることを確認し、これらの軸受による損害を調査し、川崎重工業株式会社と代金 の減額等について協議を行った。 なお、仕様書等に適合する軸受及び適合しない軸受が現存していないなどのため両者の交 意見表示・処置要求事項の 結果 (52)潜水艦用ディーゼル機関に使用される連接棒大端部軸受の製造請負契約等が適切に 履行されていなかった事態に係る処置について(防衛省) ―534― 検査の結果 換に至るまでの使用時間数の差異を把握できず、損害額の算定ができないことなどから、代 第Ⅱ章 金の減額等は困難な状況となっていた。 イ 装備施設本部が締結した契約4件について、納入された軸受全てが仕様書等に適合してい ないものであることを確認するなどするとともに、これらの契約事務を行っている同本部に 報告して調整した上で、その契約分についても併せて協議を行った。 ウ 平成25年7月に物品管理官等に通知を発するなどして、仕様書等に適合していない物品が 納入されていた事態が判明した場合は、瑕疵、損害等の有無を迅速かつ適切に調査、検証し て契約の適正な履行の確保を図ることの重要性等について更なる周知徹底を図った。 (検査報告723ページ) (53)火薬庫保有会社に保管させている防衛火工品の管理について(防衛省) <指摘の要旨 (処置要求事項㉞)> 陸上自衛隊は、爆破薬、砲弾等の防衛火工品の調達を装備施設本部に要求し、同本部はこの 調達要求に基づき防衛火工品の製造請負契約を締結している。そして、製造させた防衛火工品 の一部について、火薬庫を保有している会社を納地としている。しかし、会社の火薬庫に保管 させている防衛火工品について、国以外の者の施設に保管するために物品管理法等に基づき付 すこととされている必要な条件を保管契約に適切に定めておらず、管理の実態を把握しないま ま保管させていたり、会社で保管規程等に基づく現品の管理が適切に行われていなかったりし ている事態が見受けられた。 <講じた処置> 同自衛隊は、次のような処置を講じていた。 ア 平成25年10月、12月及び26年3月に会社に保管させている防衛火工品と物品管理簿等との照 合を確実に行ったり、防衛火工品の滅失、毀損等の損害が生じた場合の通知義務や損害の賠 償等の必要な条件を付した保管契約に変更するなどして適切な管理体制を整備したりした。 イ 現況調査等の際に、会社に、防衛火工品の管理に関する法令遵守の重要性について周知徹 底を図ったり、新たな保管契約に基づき法令遵守の状況の確認を行うなどして会社による保 意見表示・処置要求事項の 結果 管の適正化を確保したりした。 (検査報告724ページ) (54)第三者行為により療養の給付等を受けた場合における診療委託費に係る債権管理等 について (防衛省) <指摘の要旨 (処置要求事項㉞)> 防衛省は、防衛省の職員の給与等に関する法律等に基づき、自衛官等が公務又は通勤によら ない負傷や疾病により部外の医療機関で診療を受けた場合に療養の給付等に係る診療委託費を 負担しているが、第三者行為によって生じた療養の給付等については、国は療養の給付等に要 した価額の限度で加害者に対する損害賠償請求権を取得することになっている。しかし、陸上、 海上、航空各自衛隊において、高額療養費等の適用を受けた自衛官等に係る診療委託費につい て、負傷の原因が第三者行為に該当するかどうか確認及び検討を行った結果を記録して保存す る仕組みが整備されていない事態や、陸上、海上両自衛隊において、療養の給付等を受けた自 衛官等や療養実施担当者が必要な事務手続をとっていなかったり、国の債権に係る債権発生通 検査の結果 ―535― 知義務者が第三者行為に係る損害賠償請求権の発生を遅滞なく歳入徴収官に通知していなかっ れた。 第Ⅱ章 たりしていて、歳入徴収官が適時適切な債権管理を行うことができないなどの事態が見受けら <講じた処置> 同省は、次のような処置を講じていた。 ア 各自衛隊に、平成25年11月までに、高額療養費等の適用を受けた負傷の原因が第三者行為 に該当するかどうか確認及び検討を行った結果を記録して保存する仕組みを整備させた。 イ 陸上、海上両自衛隊に、26年7月までの講習等の機会に、第三者行為によって生じた療養 の給付等について、療養の給付等を受けた自衛官等及び療養実施担当者が行う事務手続を周 知徹底させるとともに、債権発生通知義務者は金額が未確定であっても遅滞なく歳入徴収官 等に通知するよう周知徹底させた。 ウ 陸上自衛隊に、25年8月に療養の給付等が第三者行為によって生じた場合の事務処理要領 等を定めさせた上で、同月から26年7月までの間に陸上自衛隊各駐屯地に同要領等を周知徹 底させた。 (検査報告725ページ) (55)有償援助による役務の調達に係る受領検査の実施等について(防衛省) <指摘の要旨(処置要求事項㊱)> 防衛省は、アメリカ合衆国政府から有償援助により防衛装備品及び役務の調達を行ってい る。しかし、役務の給付完了後、支出負担行為担当官(支担官)が適時に役務の給付の受領検査 の指令(検査指令) を行っていなかったり、支担官が検査指令書に検査確認事項を記載していな かったり、役務の給付を受ける部隊等 (受領部隊等)が役務の内容等を受領検査官に証明する資 料を保存していなかったりしている事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、平成26年2月に訓令等を改正して、次のような処置を講じていた。 ア 役務の給付完了後は、受領部隊等が属する調達要求元がその旨を直ちに支担官に通知する などの手続を整備した。 見込まれる場合には受領部隊等が属する調達要求元に確認を行うよう周知徹底を図った。 ウ 支担官は、役務の給付完了後に、受領検査官に遅滞なく検査指令を行うとともに、受領検 査官が給付された役務の内容と照合できるように、引合受諾書等に基づき検査指令書に給付 予定の役務の内容等を記載することとした。 エ 調達要求元は、受領部隊等に、給付された役務の内容等を証明する資料の保存及び受領検 査官への資料の提供を的確に行うように指導した。 (検査報告727ページ) (56)予備自衛官手当の支給について (防衛省) <指摘の要旨 (処置要求事項㊱)> 防衛省は、自衛隊法等により、普段は社会人として働くなどしながら、防衛招集命令、災害 招集命令等で招集された場合に、第一線の部隊が移動した後の駐屯地警備、後方支援、災害救 助活動等の任務を担う予備自衛官の制度を設けており、予備自衛官は、必要な練度の維持を図 意見表示・処置要求事項の 結果 イ 支担官は、役務の給付が完了しているか適時に把握するとともに、給付が完了したことが ―536― 検査の結果 るために、毎年度、 5日間の訓練を受けることとなっている。しかし、正当な事由によらないで、 第Ⅱ章 年度内の訓練招集に全く出頭していなかったり、年度内の訓練日数が5日未満であったりして いる予備自衛官にも、 訓練招集等に応ずることで支給される予備自衛官手当が支給されており、 このような状況に対して特段の対応を執っていない事態が見受けられた。 <講じた処置> 同省は、次のような処置を講じていた。 ア 内部部局において、年度内に訓練招集に出頭しない予備自衛官の実態調査の結果を把握し て、関係部局と訓練参加の確保のための方策を検討するとともに、陸上幕僚監部において、 平成26年3月に、第1四半期に連絡等が取れずに出頭日を決定できないなどして訓練への参加 の意思が明確でない予備自衛官に第2四半期以降の直近の訓練招集時期に訓練招集命令書を 交付することなどを予備自衛官等業務マニュアルに盛り込む改正を行うことにより、予備自 衛官手当の一層の適切な支給の確保を図った。 イ 陸上幕僚監部において、25年9月及び26年3月に業務連絡を発して、各地方協力本部に対し て予備自衛官手当の支給の趣旨の周知徹底を改めて図るとともに、25年12月の予備自衛官等 業務担当者集合訓練の際に、予備自衛官が訓練の延期を希望した場合は次回の訓練への参加 の確保を図ることについて、各地方協力本部へ説明するように指示して周知徹底を図るなど した。 (検査報告728ページ) (57)~(62)高速道路と立体交差する橋りょうの点検状況等について (東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会 社、本州四国連絡高速道路株式会社、首都高速道路株式会社、阪神高速道路 株式会社) <指摘の要旨 (処置要求事項㊱)> 東日本、中日本、西日本、本州四国連絡、阪神各高速道路株式会社(それぞれ、東会社、中会社、 西会社、本四会社、阪神会社)及び首都高速道路株式会社は、高速道路を常時良好な状態に保 つように維持、修繕その他の管理を行っている。しかし、一般道路と高速道路本線との間で流 意見表示・処置要求事項の 結果 出入したり高速道路本線間を連絡したりするために高速道路本線を横断する高速連絡橋につい て、点検要領で定められた頻度で詳細点検を実施していなかったり、耐震補強対策を執ってい なかったりしている事態、また、高速道路の新設に当たり高速道路本線と立体交差させて付け ・ 替えるなどした国、地方公共団体等が管理するこ道橋について、管理協定を一部において管理 者と締結していなかったり、管理者が実施している点検状況、コンクリート片等剝落対策や耐 震補強対策の実施状況の把握、情報共有等が十分でなかったり、近接目視、打音等による点検 を管理者に促すことができていなかったり、使用状況の把握が十分でなかったりなどしている 事態が見受けられた。 <講じた処置> 6会社は、次のような処置を講じていた。 ア 高速連絡橋について 詳細点検を実施していなかった高速連絡橋について、西会社は、平成25年11月に詳細点検 を完了して損傷等がないことを確認した。また、耐震性能を検討していなかった高速連絡橋 検査の結果 ―537― について、東会社は、26年6月に耐震補強対策の必要がないことを確認し、西会社は、一部 補強対策が必要なものは26年11月までに対策を完了することとした。 第Ⅱ章 の高速連絡橋を25年12月に撤去するなどし、残りの高速連絡橋も耐震性能を照査して、耐震 イ こ道橋について ア 6会社は、 各会社と各管理者を構成員とする連絡協議会等を都道府県等ごとに設置して、 管理協定の締結に向けた協議を開始等したり、連絡協議会等で管理者が実施している点検 状況を把握して情報共有し、近接目視、打音等による点検を促すなどの連絡体制を構築し たり、損傷状況等を把握して、適切な時期にコンクリート片等剝落対策を実施するよう管 理者に求めたりした。 イ 東会社、中会社、西会社、本四会社及び阪神会社は、連絡協議会等で、耐震補強対策の 実施状況を把握して、早期に耐震性能を検討するなどして対策を完了するよう管理者に求 めた。 ウ 東会社、中会社及び西会社は、連絡協議会等で、使用状況を把握して、使用される見込 ・ みがなく不要なこ道橋を早期に撤去するよう管理者に求めた。 (検査報告768ページ) (63)~(66)特定調達に係る契約事務の実施について (日本郵政株式会社、日本郵便株式会社、株式会社ゆうちょ銀行、株式会社か んぽ生命保険) <指摘の要旨(処置要求事項㉞)> 日本郵政株式会社、日本郵便株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険 の4会社は、一定金額以上の産品及びサービスの調達 (特定調達)を行うに当たっては、世界貿 易機関の下で運用されている「政府調達に関する協定」や我が国の自主的措置として決定された 指針等(これらを「協定等」) に従った契約事務を行うこととなっている。しかし、日本郵政株式 会社及び株式会社ゆうちょ銀行の本社並びに4会社の施設は、電気及びガスの調達に係る需給 契約並びに現金警備輸送業務及び建物の清掃業務に係る委託契約において、一般競争に付して いなかったり、契約期間延長の可能性に関する情報を入札公告に掲載していなかったり、新た 従った契約事務を行っていない事態が見受けられた。 <講じた処置> 4会社は、次のような処置を講じていた。 ア 平成26年4月までに、特定調達手続を改定するなどして、電気及びガスが協定等の適用対 象産品であることを明示したり、適用対象産品及びサービスに係る契約の内容を変更する場 合の具体的な処理方法や契約の期間を延長する可能性がある場合の入札公告への掲載方法に ついて定めたりなどするとともに、特定調達手続に従って契約事務を適切に行うよう、施設 に指示文書を発するなどして周知徹底を図った。 イ 25年9月以降、本社において、施設における毎月の電気及びガスの使用量やこれらの料金 の支払額を把握して、施設にこれらの情報を開示するなどした上で、年間の支払額が基準額 以上となる可能性がある施設に協定等及び特定調達手続に従った契約事務を行うよう指示し た。 (検査報告776ページ) 意見表示・処置要求事項の 結果 に契約を締結することなく既に締結していた契約を変更していたりなどしていて、協定等に ―538― 検査の結果 第Ⅱ章 (67)日本年金機構における届け書等の処理業務の効率化等について(日本年金機構) <指摘の要旨 (意見表示事項㊱)> 日本年金機構は、各都道府県に事務センターを設置して、事業主等から提出された届け書等 の審査、入力等に関する業務を集約して行うこととしている。しかし、事業主等に事務センター への直送を促す周知活動が効果的に行われていなかったり、事務センター及び年金事務所の両 方で点検・確認業務を行っているなど業務が重複していたり、外部委託していた業務を事務セ ンター等の職員が処理していたり、職員が処理している業務に外部委託を検討する必要があっ たりしている事態が見受けられた。 <講じた処置> 機構は、平成26年2月までに事務センター等に指示文書を発するなどして、次のような処置 を講じていた。 ア 届け書等の処理業務については、事務センターへの直送率の向上を図るために、事務セン ターごとに取組計画を策定させて、目標直送率の達成状況を機構本部が管理することとし た。また、点検・確認業務の重複を解消するために、事務センターで行う業務を年金事務所 で行うことができるなどの暫定措置を原則として廃止するとともに、年金事務所で行う点検 業務と事務センターで行う確認業務の内容を業務マニュアルで明確にする方針を策定した。 イ 届け書等の入力等の業務については、機構本部が外部委託による入力等の件数の見込みと ・・ 実績とのかい離が大きい事務センターに個別に指導を行うなどして、外部委託した業務を機 構職員が処理することなく確実に委託業者に行わせることとするとともに、事務センターへ の業務の集約化等の状況を踏まえて委託する業務の範囲を検討し、26年10月の契約更改に合 (検査報告797ページ) わせて外部委託する業務を拡大することとするなどの見直しを行った。 (68)肉用牛肥育経営緊急支援事業に係る支援金相当額の返還について (独立行政法人農畜産業振興機構) <指摘の要旨 (処置要求事項㉞)> 独立行政法人農畜産業振興機構は、牛肉から放射性セシウムが検出されたことにより肉用牛 意見表示・処置要求事項の 結果 の販売の停止等を求められた肥育農家の当面の資金繰りなどを支援するために、肉用牛肥育経 営緊急支援事業として、事業主体である都道府県の畜産関係団体を経由して肥育農家に緊急支 援金等を交付している。そして、緊急支援金等の交付を受けた肥育農家は、肉用牛を販売、死 亡、繁殖用に転用等 (販売等) した場合に緊急支援金等の相当額(支援金相当額)を事業主体に返 還することとなっているが、返還の時期については、東京電力株式会社からの賠償金の確定時 期等に配慮することとなっている。しかし、肉用牛の販売等の後に賠償金が確定して肥育農家 が既にこれを受領していて支援金相当額を返還すべき時期を過ぎているのに、事業主体が肥育 農家に返還させていない事態が見受けられた。 <講じた処置> 機構は、平成26年1月までに事業主体から肥育農家等に通知を発出させるなどして、次のよ うな処置を講じていた。 ア 事業主体に、肥育農家から提出させた賠償金の受領状況が記入された返還計画、事業区域 のJAグループ東京電力原発事故農畜産物損害賠償対策県協議会等の総会資料等により、肥育 検査の結果 ―539― 農家における賠償金の受領状況を正確に確認させた。 ど早期の返還を促進する方策を講じた。 第Ⅱ章 イ 事業主体に、返還されていないなどの支援金相当額の返還期限を肥育農家に周知させるな ウ 事業主体に、真に困窮している肥育農家について返還の猶予等を行う必要がある場合は、 支援金相当額の管理を適切に行わせるとともに、必要に応じて経営診断等を行わせた。 (検査報告840ページ) (69)日常スポーツ活動に対する助成金の交付に係る審査等について (独立行政法人日本スポーツ振興センター) <指摘の要旨(処置要求事項㊱)> 独立行政法人日本スポーツ振興センターは、我が国の優秀なスポーツ選手及びその指導者等 が行う日常スポーツ活動に助成金を交付している。しかし、指導者等と担当選手との指導等の 関係を適切に把握しておらず助成対象活動の要件に合致しているかなどの交付決定時の審査が 十分に行われていなかったり、助成金を交付しているスポーツ選手及びその指導者等への調査 等の権限を活用して証拠書類の提出を求めておらず、額の確定時の審査が十分に行われていな かったりしている事態が見受けられた。 <講じた処置> センターは、 本院の指摘を踏まえて検討し、平成26年2月に交付要綱等を改正して、日常スポー ツ活動への助成を廃止していた。 (検査報告848ページ) (70)~(72)各独立行政法人が保有している有効に利用されていない土地及び資産処分収 入について (独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園、独立行政 法人労働者健康福祉機構、独立行政法人国立高等専門学校機構) <指摘の要旨(処置要求事項㊱)> 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園(のぞみの園)、労働者健康福祉機構及び国立高等専 門学校機構の3独立行政法人は、設立された際にそれぞれ国等から土地を承継し、保有してい 等に係る資産の処分により生じた収入 (資産処分収入)を労災病院の増改築工事等の費用に充て ることとしている。しかし、3独立行政法人では、上記土地の一部が有効に利用されておらず、 これらの土地を具体的な処分計画又は利用計画を策定しないまま保有していたり、労働者健康 福祉機構では、資産処分収入を具体的な利用計画を定めないまま保有したりしている事態が見 受けられた。 <講じた処置> 3独立行政法人は、次のような処置を講じていた。 ⑴ のぞみの園 有効に利用されていなかった土地について、平成26年5月に施設利用者のための就労支援 施設の整備等の具体的な利用計画を策定したり、同年6月に設置規程を改正した資産利用検 討委員会で、保有資産が本来の業務を実施する上で積極的に保有すべきものかどうかを検討 することとするなどして、自主的な見直しを不断に行う体制を整備したりした。 意見表示・処置要求事項の 結果 る。また、労働者健康福祉機構は、厚生労働大臣が定める廃止対象労災病院等以外の労災病院 ―540― 検査の結果 労働者健康福祉機構 第Ⅱ章 ア 有効に利用されていない土地を保有していた7労災病院に26年6月に通知を発するなどし て、その土地が将来にわたり業務を確実に実施する上で必要かどうかを検討させた上で、 同月までに具体的な処分計画又は利用計画を策定させた。 イ 全ての労災病院に26年5月に通知を発して、土地の利用状況等を本部へ報告させること として、新しく本部に設置した保有資産検討会議で、不要財産を定期的に把握して、自主 的な見直しを不断に行う体制を充実強化した。 ウ 全ての労災病院に26年5月に通知を発して、今後、将来にわたり業務を確実に実施する 上で必要がないと認められる土地が生じた場合には、国庫納付等の具体的な処分計画を策 定し、必要があると認められる土地については施設整備等の具体的な利用計画を策定する よう周知徹底を図った。 エ 資産処分収入について、25年12月に、労災病院に係る増改築工事等の費用に明確に充て られるものとするとともに、労災病院に係る施設整備計画の財源の一部とした具体的な利 用計画を定めた。 国立高等専門学校機構 ア 有効に利用されていない土地を保有していた17高専に25年11月に通知を発するなどし て、その土地が将来にわたり業務を確実に実施する上で必要かどうかを検討させた上で、 26年5月までに具体的な処分計画又は利用計画を策定させた。 イ 全ての高専に25年11月に通知を発して、土地の利用状況等を本部へ報告させることとし て、本部で不要財産を定期的に把握して、自主的な見直しを不断に行う体制を整備した。 ウ 全ての高専に26年1月に通知を発して、今後、将来にわたり業務を確実に実施する上で 必要がないと認められる土地が生じた場合には、国庫納付等の具体的な処分計画を策定し、 必要があると認められる土地については施設整備等の具体的な利用計画を策定するよう周 知徹底を図った。 (検査報告855ページ) 意見表示・処置要求事項の 結果 (73)地域ソフトウェアセンターの事業運営及び経営の改善等について (独立行政法人情報処理推進機構) <指摘の要旨 (意見表示事項㊱)> 独立行政法人情報処理推進機構は、ソフトウェア供給力開発事業を推進するために、地域ソ フトウェアセンターに出資している。しかし、全てのセンターで出資目的に沿った事業運営が 十分に行われていなかったり、複数のセンターで長期にわたり繰越欠損金が増加して当該各セ ンターの純資産に機構の持分割合を乗じた価額である出資金価値が低下する状態が継続してい たりしている事態が見受けられた。 <講じた処置> 機構は、平成25年10月に各センターに通知を発するなどして、次のような処置を講じていた。 ア 26年5月までに各センターに改善計画を策定させて各センターの事業の実施状況及び経営 状況を把握した上で、事業運営面及び経営面について指導、支援等を行った。そして、今後 の指導、支援等に活用するために、各事業の取組状況や実績に関する報告書を提出させて、 改善計画の進捗状況に応じた指導、支援等を行うこととした。 検査の結果 ―541― イ 改善計画を実行するなどしても3期以上連続して繰越欠損金が増加しているなど経営不振 治体等が支援を打ち切ることを決めていない場合であっても、他の株主等との連携の下に解 散等に向けた協議等の取組を積極的に進める取扱いとした。 第Ⅱ章 が長期化しているセンターについて、その後の抜本的な改善が見込み難い場合には、地方自 (検査報告858ページ) (74)国立高等専門学校における不適正経理の再発防止策への取組及び物品の管理につい て(独立行政法人国立高等専門学校機構) <指摘の要旨 (処置要求事項㉞)> 独立行政法人国立高等専門学校機構が全国に設置する各国立高等専門学校(高専)は、機構の 会計規則等に基づき、物品の購入等に係る会計事務を行っている。機構は、東京工業高等専門 学校での不適正な会計経理の事態を踏まえて、平成24年3月に高専に通知を発して再発防止策 を行うこととした。しかし、高専において、再発防止策への取組が十分に行われていなかった り、物品が必要な手続を経ることなく無断で処分されているなど物品の管理が適正に行われて いなかったりしている事態が見受けられた。 <講じた処置> 機構は、次のような処置を講じていた。 ア 26年6月に高専に通知を発して、再発防止策の重要性について周知徹底し、再発防止策へ の取組状況を年2回本部に報告させることとした。そして、その報告内容に関するヒアリン グを併せて実施して、状況確認を行うとともに、再発防止策への取組が不十分と思われる場 合には、個別に指導及び助言を速やかに行うこととした。 イ 26年6月に高専に通知を発して、機構の管理規則を遵守した物品の管理を行うよう指導し た。また、25年12月に高専に事務連絡を発して、物品管理の状況を確実に把握するために、 物品検査の結果を毎事業年度、本部に報告させることとした。 (検査報告880ページ) <指摘の要旨(処置要求事項㊱)> 独立行政法人中小企業基盤整備機構は、平成19年度から地域中小企業応援ファンド (スター ト・アップ応援型) 融資事業等として、中小企業の経営の革新を支援するなどの助成事業(ファ ンド事業)の財源となる基金を造成する44都道府県に、その資金の一部を償還期限を10年以内 として無利子で貸し付けている。しかし、その規模がファンド事業の実績に見合っていない基 金が見受けられるのに、機構は、ファンド事業を実施した期間の運用益等の収入の累計額及び 同期間の助成金等の支出の累計額等を用いた収支の状況を適切に把握しておらず、44都道府県 がファンド事業の規模を踏まえて基金の規模を見直していないなどの事態が見受けられた。 <講じた処置> 機構は、次のような処置を講じていた。 ア 25年11月に44都道府県に通知を発して、機構が資金の貸付けに関する細則で規定している、 都道府県が一定事業年度ごとにファンド事業の実績を踏まえて基金の規模を見直したり、必 意見表示・処置要求事項の 結果 (75)独立行政法人中小企業基盤整備機構による地域中小企業応援ファンド(スタート・ アップ応援型) 融資事業等で造成された基金の見直しについて (独立行政法人中小企業基盤整備機構) ―542― 検査の結果 要があるときは基金を造成している運営管理法人を指導したり、貸付金の一部繰上償還によ 第Ⅱ章 り適正な基金の規模に圧縮したりするなどの必要な措置を執ることについて周知徹底を図っ た。そして、この通知に基づき、基金造成から5年を目途に基金を見直すよう助言した。 イ 26年4月に44都道府県に通知を発して、ファンド事業を実施した期間に係る収支割合(運用 益等の累計額を助成金等の累計額等で除した割合)を新たな指標として設定するとともに、 これを記載事項に加えた新たな様式の実績報告書で毎年度報告させることとした。そして、 25年11月に発した通知に基づき、基金の規模を見直すべきかを判断するために参考となる情 報として、全基金の応募倍率、次年度以降に支払を見込んでいない額を用いた繰越比率等の 情報提示を行い、さらに、都道府県等の担当者の会議等を通して、その見直しの結果等の情 報共有を図った。 (検査報告882ページ) (76)特別借受賃貸住宅の運営について(独立行政法人都市再生機構) <指摘の要旨 (意見表示事項㊱)> 独立行政法人都市再生機構は、良質で低廉な賃貸住宅の供給を行うことなどを目的として、 住宅・都市整備公団が特別借受賃貸住宅制度により借り受けた住宅(借受住宅)の運営を、機構 が設立された平成16年7月に承継して実施している。しかし、空き家の解消のために効果的な 対策等を講じていなかったり、借受期間を更新する際に住宅所有者と借受料の減額協議を行っ ていなかったりしていることなどにより借受住宅の運営収支の赤字が多額に上っている事態 や、借受住宅の返還後の賃貸住宅の経営のために住宅所有者に適時適切に助言していなかった り、住宅所有者から機構への割賦金の返済を免除する際の適用要件が緩やかになっていたりし ていることにより割賦金の回収が適切に行われていない事態が見受けられた。 <講じた処置> 機構は、25年12月に支社等に通知を発して、次のような処置を講じていた。 ア 個々の団地の状況等を踏まえた上で、効果的な空き家解消対策等を検討するとともに、借 受期間を更新する事態が生じた場合は、住宅所有者と借受料の減額協議を行うこととして、 借受住宅の収支の改善に努めた。 意見表示・処置要求事項の 結果 イ 借受住宅返還後の住宅所有者の賃貸住宅の円滑な経営に資するよう割賦金の残債のある住 宅所有者に繰上返済を勧めるなどの助言をしたり、割賦金の返済の免除を原則として適用し ない取扱いとしたりして、割賦金の回収を適切に行うこととした。 (検査報告893ページ) (77)独立行政法人奄美群島振興開発基金における求償権損害金の債権管理について (独立行政法人奄美群島振興開発基金) <指摘の要旨 (処置要求事項㉞)> 独立行政法人奄美群島振興開発基金は、事業者等が金融機関から資金の貸付け等を受ける場 合に金融機関に対して債務を保証している。そして、事業者等が最終履行期限から90日を経て 債務を履行しない場合には、金融機関の請求に基づき、保証債務の履行として事業者等に代わ り債務を弁済することとなっており、これにより取得した求償権に係る債権が全て回収された 場合には、その債権額等を基に計算した求償権損害金を事業者等から徴収することとなってい る。しかし、基金において、求償権損害金が時効中断の措置の実施等を記録した求償権時効管 検査の結果 ―543― 理簿により適切に管理されておらず、納入督励が十分に行われていなかったり、時効中断の措 第Ⅱ章 置が講じられていなかったりなどしている事態が見受けられた。 <講じた処置> 基金は、求償権損害金のうち、既に確定しているものについては、その全容を把握した上で 求償権時効管理簿により管理して、平成26年5月までに納入督励及び時効中断の措置を行うな どするとともに、今後発生するものについては、25年9月に債権管理マニュアル等を見直して 求償権時効管理簿により適切に管理することとする処置を講じていた。 (検査報告895ページ) (78)高速道路事業用地の有効利用等について (独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構) <指摘の要旨(処置要求事項㊱)> 独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構は、高速道路事業用地等の資産を保有し、東 日本、中日本、西日本、本州四国連絡、首都、阪神各高速道路株式会社(これらを「道路会社」) に貸し付けるなどしている。しかし、機構は、保有する高速道路事業用地のうち、サービスエ リア等の施設を整備するために取得した用地並びに用途を廃止した高速道路本線及び施設の用 地について、整備予定がなく、有効利用もされていないものがある状況を把握しておらず、用 地を保有し続ける必要性の検証や有効利用についての検討を行っていない事態が見受けられ た。 <講じた処置> 機構は、施設を整備するために取得した用地並びに用途を廃止した高速道路本線及び施設の 用地については、平成25年9月に道路会社に発した通知により、道路会社から整備予定、利用 状況等について毎年度報告を求めてこれを把握することとし、この内容に基づき、整備予定が なく、有効利用もされていないとされた用地については、道路会社等を構成員とする連絡調整 会議を25年10月に設置し、売却等に向けた手続を進める箇所について利用要望の公募を行うな どして、今後も保有し続ける必要性の検証及び有効利用についての検討を不断に行う体制を道 路会社との間で整備する処置を講じていた。 (検査報告896ページ) <指摘の要旨(意見表示事項㊱)> 独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構は、社団法人全国社会保険協会連合会等3運 営委託法人に、社会保険料を財源として設置された社会保険病院等の運営を委託している。し かし、患者未収金の督促、保全措置及び徴収不能損失処理の事務が適正かつ的確に行われてい なかったり、社会保険病院等の運営に係る支出の一部についてその在り方を検討する必要が あったり、監査が行われていなかったりしている事態が見受けられた。 <講じた処置> 機構は、患者未収金の督促、保全措置及び徴収不能損失処理の事務並びに社会保険病院等の 運営に係る支出の在り方に関する方針を定めた上で、平成25年10月に運営委託法人に通知を発 するなどして、運営委託法人の患者未収金の督促事務のマニュアル等により適切な対応を行う よう周知徹底を図るとともに社会保険病院等の運営に係る支出についての基準を示すなどした 意見表示・処置要求事項の 結果 (79)社会保険病院等の運営について (独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構) ―544― 検査の結果 り、病院等の運営を目的として26年4月に機構から改組された独立行政法人地域医療機能推進 第Ⅱ章 機構の会計規程、給与規程等を整備するとともに監査の体制を確立するなどして、上記の方針 を改組された新機構の運営に反映させたりする処置を講じていた。 (検査報告898ページ) (80)研究者が職務上行う研究のための経費として財団法人等から交付を受けた研究費の 管理及び経理について (独立行政法人国立循環器病研究センター) <指摘の要旨 (処置要求事項㊱)> 独立行政法人国立循環器病研究センターは、中期計画において、民間企業等からの資金の受 入体制を構築して、寄附の受入れなどにより外部資金の獲得を行うこととしている。しかし、 研究者が職務上行う研究のための経費として財団法人等から交付を受けた資金(財団等研究費) について、センターが研究者からその管理及び経理の事務の委任を受けるための明確な規程等 の整備等を行っておらず、研究者が個人で管理及び経理を行っている事態が見受けられた。 <講じた処置> センターは、平成25年12月に、研究者が財団等研究費の交付を受けたときはセンターに管理 及び経理の事務を委任しなければならない旨を明確にした事務処理要領を定めて、26年1月か ら適用することとし、25年12月から研究者向けの説明会を開催するなどして、周知徹底を図る 処置を講じていた。 (検査報告902ページ) (81)災害復旧事業により購入するなどした研究設備の地震対策について (国立大学法人東北大学) <指摘の要旨 (意見表示事項㊱)> 国立大学法人東北大学は、東日本大震災で被害を受けた研究実験機器等の研究設備を復旧す る災害復旧事業を行っている。しかし、全学における地震対策の実施状況を把握するなどした 上で地震対策の具体的な実施方法等を示していないなど、地震対策の実施を全学として促進す る取組を十分に行っていない事態が見受けられた。 <講じた処置> 意見表示・処置要求事項の 結果 同大学は、学内における地震対策の実施状況を詳細に把握して分析するなどした上で、地震 対策の具体的な実施方法等を整理した「教育研究用機器等の転倒防止ガイドライン」等の指針を 平成26年3月に策定するとともに、これらの指針を全学説明会等で各部局に周知徹底し、指針 を踏まえた地震対策の実施状況を確認することとして、全学として地震対策を講ずる体制を整 備する処置を講じていた。 (検査報告906ページ) (82)鉄道構造物の維持管理について(四国旅客鉄道株式会社) <指摘の要旨 (意見表示事項㊱及び処置要求事項㊱) > 四国旅客鉄道株式会社は、鉄道営業法等に基づく橋りょう、トンネル等の鉄道構造物の定期 検査として、会社が定めた実施基準等により、保線区等で全般検査を2年に一度実施するなど して、構造物の健全度を判定している。そして、橋りょうについては、全般検査で詳細な検査 が必要と判断された場合に実施する個別検査の結果等により、橋りょう修繕計画を毎年度作成 して修繕工事を順次実施することとしている。しかし、修繕工事が必要な健全度と判定されて から修繕工事が早期に実施されていなかったり、全般検査の検査記録が適切に整備されていな 検査の結果 ―545― いために構造物の維持管理に有効に活用できるものになっていなかったりしている事態が見受 第Ⅱ章 けられた。 <講じた処置> 会社は、次のような処置を講じていた。 ア 平成26年3月に、定期検査等の結果により橋りょう修繕計画に、修繕工事が必要とされた 橋りょうの修繕工事の実施時期を定めるなどした。そして、修繕工事を着実に実施するため の具体的な方策として、新たに修繕工事の管理表を作成し、これにより修繕工事の実績及び 進捗状況を確認することとした。 イ 26年4月に、全般検査の結果が適切に記録されるよう全般検査に関するマニュアルを改正 して、検査記録に記録すべき項目を明確にするとともに、検査記録の適切な整備を図ること を保線区等に周知した。 (検査報告935ページ) 2 処置が完了していないもの 平成22年度決算検査報告 (83)エネルギー対策特別会計の周辺地域整備資金の状況について(経済産業省) <指摘の要旨(意見表示事項㊱)> エネルギー対策特別会計の周辺地域整備資金(整備資金)は、原子力発電施設等の設置を円滑 に進めるための電源立地地域対策交付金の一部に対応できるようあらかじめ資金として積み立 てることにされたものである。しかし、原子力発電所の事故等により、原子力発電施設の着工 までには今後も長期間を要し、整備資金に係る需要が増大する時期についても更に遅れること が見込まれるにもかかわらず、当面需要が見込まれない多額の資金が滞留しているなどの事態 が見受けられた。 <処置状況> 資源エネルギー庁は、整備資金について、平成24年度予算では49億円を、平成25年度予算で を縮減することとする処置を講じていた。なお、資金残高は25年度末で526億7411万円となっ ている。 同庁は、資金を滞留させないような方策について、26年9月末現在、今後のエネルギー政策 の状況等を踏まえて適切に判断していくとしているが、本院指摘の趣旨に沿った方策の検討に は至っていない。 (検査報告543ページ) 平成23年度決算検査報告 (84)独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構における利益の処分について (総務省) <指摘の要旨(意見表示事項㊱)> 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構は、日本郵政公社の民営・分社化前に預入れ などが行われた定額郵便貯金等の郵便貯金及び簡易生命保険を承継して管理しているが、満期 意見表示・処置要求事項の 結果 は66億6672万円を、平成26年度予算では200億7487万円をそれぞれ取り崩して資金残高の規模 ―546― 検査の結果 経過後の払戻しなどが行われないため、多額の権利消滅金及び時効完成益が毎年度継続して発 第Ⅱ章 生し、利益剰余金は増加を続けている。しかし、機構が業務を確実に履行する上で保有する必 要性が乏しい利益剰余金を、5年間の中期目標期間が終了するまで保有し続けている事態が見 受けられた。 <処置状況> 総務省は、機構と協議して、第1期中期目標期間(平成19年10月~ 24年3月)の終了後、利益 剰余金のうち、次期中期目標期間に繰り越すべき金額を控除した残額である郵便貯金勘定382 億2028万円、簡易生命保険勘定108億2794万円、計490億4822万円を24年7月に国庫に納付させ る処置を講じていた。 そして、同省は、適時に利益剰余金を国庫に納付させることが可能となるような制度の整備 については、25年12月に閣議決定された「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」を踏まえ て、機構の在り方について所要の検討を進めるとともに、国の財政事情を踏まえて、機構の利 益剰余金のうち将来にわたり業務を確実に履行するために保有する必要がないと認められるも のに係る国庫納付の在り方について引き続き検討して、関係機関と調整の上、適切な措置を講 ずることとしている。 (検査報告115ページ) (85)スポーツ振興基金の有効活用について(文部科学省) <指摘の要旨 (意見表示事項㊱)> 文部科学省は平成2年度に独立行政法人日本スポーツ振興センターに250億円を出資し、セン ターはこれに民間からの出えん金を加えて運用型の基金としてスポーツ振興基金(振興基金) を 設置して、その運用益等を財源としたスポーツ振興基金助成、スポーツ振興投票の収益を財源 としたスポーツ振興くじ助成等の助成業務を行っている。しかし、振興基金の運用益は当初に 比べて大きく減少し、これに伴い同基金助成の助成額も減少していて、スポーツの振興を図る ための助成業務を運用型の同基金助成により実施する必然性が乏しい状況となっているのに、 振興基金に多額の資金が保有されている事態が見受けられた。 <処置状況> 意見表示・処置要求事項の 結果 同省は、25年2月に、センターに、第3期中期目標 (同年4月~ 30年3月)において振興基金を 有効に活用するための方策を検討するよう指示し、今後のセンターでの検討の状況や政府等の スポーツ振興に係る検討を踏まえて、振興基金の有効活用について引き続き取り組んでいくこ ととしている。なお、センターは、25年3月に、振興基金を有効に活用するための方策を検討 することを第3期中期計画及び25年度計画に明記した上で、25年度には、助成方法の見直しや 振興基金の運用方法の改善を図るなどしていた。 (検査報告227ページ) (86)第三者行為事故に係る年金の支給停止限度期間の設定について(厚生労働省) <指摘の要旨 (意見表示事項㊱)> 厚生労働省は、厚生年金保険法又は国民年金法に基づき年金給付を行っており、年金給付の 原因である被保険者の障害又は死亡が交通事故等のように被保険者等に対して第三者が損害賠 償の義務を負う事故によるもので、被保険者等が第三者から損害賠償を受けたときは、その損 害賠償額を限度として年金の支給停止ができることとなっている。しかし、昭和36年又は37年 検査の結果 ―547― の取扱通知で設定された支給停止限度期間(24月)が見直されていないため、支給停止解除後の <処置状況> 第Ⅱ章 年金の支給額と損害賠償額との重複額が多額に上っている事態が見受けられた。 同省は、年金給付の目的等も踏まえつつ、24月と設定されている支給停止限度期間を一定程 度延長するよう、支給停止に係る事務を実施している日本年金機構の実務面での対応等につい て検討しており、今後、その内容を踏まえて支給停止限度期間の見直しなどの検討を進めて、 機構との連携の下に取扱通知の改正等の所要の処置を講ずることとしている。 (検査報告362ページ) (87)家畜導入事業に係る基金の国庫補助金相当額の返納について(農林水産省) <指摘の要旨(処置要求事項㉞)> 農林水産省は、家畜導入事業のうち特別導入事業の実施に必要な資金に充てるための基金を 造成する事業主体に補助金を交付する都道府県に、国庫補助金を交付していたが、本事業を平 成17年度に終了させたことに伴い、各事業主体は、18年度から23年度までに同基金の国庫補助 金相当額を、都道府県を経由して国庫に納付することとなった。しかし、鹿児島県は、本事業 の事業主体となっていた市町村が同基金を取り崩して引き続き本事業と同様の事業を実施でき るようにしていたため、同県下の34事業主体は、18年度以降、国庫補助金相当額の納付を全く 行っておらず、また、同省も、国庫補助金相当額の納付の進捗に向けた具体的な措置を十分に 講じていない事態が見受けられた。 <処置状況> 同省は、25年3月に、同県から国庫補助金相当額の返納について詳細な返納計画を提出させ た上で、34事業主体のうち9事業主体については、18年度から23年度までに納付すべきであっ た国庫補助金相当額の全額に24年度に発生した利子を加えた額を25年4月に国庫に返納させる 処置を講じていた。残る25事業主体については、上記の返納計画により、18年度から23年度ま でに納付すべきであった国庫補助金相当額にその後発生する利子を加えた額を24年度から29年 度までに分割して返納させることとしており、返納計画に沿って、上記の額の一部を25年4月 いない。 (検査報告502ページ) (88)防衛施設周辺放送受信事業補助金の補助対象区域について(防衛省) <指摘の要旨(意見表示事項㊱)> 防衛省は、自衛隊又は我が国に駐留するアメリカ合衆国の軍隊が使用する飛行場等周辺地域 のうち指定する区域 (補助対象区域) 内で、日本放送協会と放送受信契約を締結した者に対して、 航空機騒音によるテレビ放送の聴取障害 (テレビ聴取障害)対策として、放送受信料のうち地上 系放送分の半額相当額を補助している。しかし、補助対象区域の指定基準を定めた際の根拠資 料が残されておらず、指定基準がテレビ放送の聴取における航空機騒音の実態を適切に反映し たものとなっているか不明となっている事態が見受けられた。 <処置状況> 同省は、平成24年度に、指定基準の見直しなどの検討のための基礎的な資料を収集し整理す 意見表示・処置要求事項の 結果 及び26年4月にそれぞれ国庫に返納させていたものの、残りの国庫補助金相当額は返納されて ―548― 検査の結果 るために文献調査等を実施し、25年度に、テレビ聴取障害の定義付けや指定基準の見直しなど 第Ⅱ章 を検討した上で学識経験者により構成された検討委員会を開催して検証を行い、26年度に、25 年度の検証結果がテレビ聴取障害の現地の実態を反映したものとなっているかを確認するため の調査を実施して、その結果について検討委員会で検証を行っている。同省は、今後も引き続 き検討を行い、指定基準の見直しなどの所要の処置を講ずることとしている。 (検査報告722ページ) (89)高速増殖原型炉もんじゅの研究開発経費及びその関連施設の利活用等について (独立行政法人日本原子力研究開発機構) <指摘の要旨 (意見表示事項㊱)> 独立行政法人日本原子力研究開発機構は、高速増殖原型炉「もんじゅ 」の研究開発を実施し ている。しかし、機構が行うもんじゅ及びその関連施設の研究開発経費の全体規模が把握でき るように公表されていなかったり、関連施設であるリサイクル機器試験施設(RETF)の建設計画 が中断していて建設再開及び供用開始のめどが立っておらず、使用可能な建物部分が使用され ることなく存置されていたりしている事態が見受けられた。 <処置状況> 機構は、平成23年11月に、もんじゅ及びその関連施設の研究開発経費の全体規模が把握でき るように公表すべき範囲や内容を見直し、以前から公表しているもんじゅの研究開発事業費の 予算額に加えて、もんじゅ及びRETFの建設費、固定資産税等の支出額を公表するとともに、職 員の人件費や固定資産税を含めて今後必要になると見込まれるもんじゅの経費についての予算 額を公表し、その後も予算の認可や決算の承認に応じて適宜公表する処置を講じていた。 そして、機構は、RETFの当面の利活用方法については、引き続き、関係部署で技術的及び経 済的な検討を進めており、今後、国のエネルギー政策や原子力政策の方向性を踏まえて、関係 機関との協議を行っていくこととしている。 (検査報告897ページ) 意見表示・処置要求事項の 結果 (90)自動販売機、売店等を設置するための施設の貸付けに係る契約の見直しについて (国立大学法人大阪大学) <指摘の要旨 (処置要求事項㉞)> 国立大学法人大阪大学は、大学構内に自動販売機、売店等(これらを「自販機等」)を設置させ るための施設の貸付けに係る契約を締結している。しかし、競争性及び透明性を確保しないま ま一般財団法人と随意契約を締結していたり、同財団法人が自販機等の設置及び運営を委託し ている販売会社等に施設を直接貸し付けていれば得ることができた適切な利益を享受していな かったりする事態が見受けられた。 <処置状況> 同大学は、平成24年9月に、同財団法人が販売会社等に自販機等の設置及び運営を委託して いる施設の貸付けに係る随意契約の見直し計画を決定して、その計画のとおりに、25年2月及び 26年1月に、契約の相手方について、自販機等の設置及び運営を自ら行う販売会社等を対象と して企画競争により競争性及び透明性を確保した上で決定するとともに、同大学に売上額の一 定割合を拠出金として支払うことなどとする契約を販売会社等と締結する処置を講じていた。 検査の結果 ―549― そして、その他の施設の貸付けについては、26年4月に、同財団法人との随意契約の見直し ている。 (検査報告913ページ) 第Ⅱ章 計画を決定して、今後、競争性及び透明性を確保した企画競争による契約に移行することとし 平成24年度決算検査報告 (91)政府開発援助の実施について (外務省、独立行政法人国際協力機構) <指摘の要旨(意見表示事項㊱)> 外務省及び独立行政法人国際協力機構は、国際社会の平和と発展に貢献することなどを目的 として政府開発援助を実施している。しかし、無償資金協力で調達された機材等が使用されて いなかったり、技術協力で設置された機材が自発的かつ継続的に維持管理されていなかった り、草の根・人間の安全保障無償資金協力(草の根無償)で調達された機材が全く使用されてい なかったりなどしている事態が見受けられた。 <処置状況> 同省及び機構は、次のような処置を講じていた。 ア 無償資金協力について、同省及び機構が機材等の使用に関して事業効果の早期発現に向け た働きかけを行った結果、相手国等は機材等を稼働させるなどしていた。また、機構は、平 成25年12月に通知を発して、相手国等で導入実績のない機材が適切に活用されるよう、据付 けや初期操作指導等の実施状況及び機材設置後の活用状況を把握することや、問題が確認さ れた場合は相手国に申入れを行うことなどを機構内部に周知した。さらに、機構は、26年1 月に「無償資金協力に係る報告書等作成のためのガイドライン」を改訂して、他の設備と接続 して使用することにより効果を発現する機材を調達する場合は、その接続する設備の更新の 必要性等について相手国等と十分検討を行うことを徹底するとともに、同年2月に通知を発 して、事前に合意した相手国等の実施する事業の内容等に変更の必要が生ずる場合は、改め て相手国等と変更内容を十分確認し書面等で明確化を図るよう機構内部に周知した。 イ 技術協力について、機構は、25年11月に通知を発して、事業終了後も自立型の料金徴収シ 発生している場合は相手国に対策を講ずるよう適時申入れなどを行うことを機構内部に周知 した。 ウ 草の根無償について、 同省は、 26年6月に通知を発して、事業実施機関が不誠実な対応を執っ ていることなどにより事業の進捗に問題が生じている場合は、早期に現地調査を実施するな どの対応を執るとともに問題が解決し事後の検証を行うまでの期間は関係書類を保存して事 態の改善に十分活用するよう在外公館に周知した。 そして、同省は、 草の根無償で調達された機材が全く使用されていないなどの事態について、 その機材の状況等を確認するとともに、同省による現地政府への働きかけなどがあり発足した 調査委員会が贈与資金の使用状況を調査していることから、これらの結果に応じて必要な措置 を講ずることとしている。 (検査報告156、841ページ) 意見表示・処置要求事項の 結果 ステムや住民による維持管理体制が継続されているかなどの状況を把握することや、問題が ―550― 検査の結果 第Ⅱ章 (92)国宝重要文化財等保存整備費補助金の加算率の算定について(文部科学省) <指摘の要旨 (意見表示事項㊱)> 文化庁は、重要文化財の所有者等の補助事業者に、国宝重要文化財等保存整備費補助金を交 付しており、補助金交付額の算定に当たっては、補助金の交付要綱等で、補助事業者の事業規 模指数に応じて、補助率を加算できることとなっている(加算された分の補助率を「加算率」) 。 しかし、事業規模指数の算出に当たり、平均収入額に算入する収入額の範囲が補助事業者の一 般会計及び特別会計の会計区分別にみて統一されていないのにこれにより加算率を算定するな どしていたり、複数年度にわたり実施される補助事業で補助事業者の財政規模の変動状況が資 金計画及び加算率の算定に反映されていなかったりしている事態が見受けられた。 <処置状況> 同庁は、平成25年11月以降、平均収入額に算入する収入額の範囲を特別会計の収入額等も含 めた収入の総額を基礎とするよう取扱いを改めることを検討するなどしており、その上で、改 めた内容を交付要綱等に明記するなどの必要な処置を講ずることとしているほか、財政規模の 変動状況を加算率の算定等に適切に反映させる仕組みについても検討することとしている。 (検査報告229ページ) (93)補助事業又は委託事業により実施する展示会事業に係る付加価値税の取扱いについ て(経済産業省) <指摘の要旨 (処置要求事項㊱)> 経済産業省は、地域中小企業の海外販路の拡大を図ることなどを目的として、海外での展示 会等に出展等する補助事業者又は受託事業者である本邦企業等(これらを「補助事業者等」)に補 助金を交付し又は委託費を支払っている。そして、展示会等に係る会場の賃借等の海外で行わ れる調達には一般に現地国の付加価値税が課税されているが、一旦支払った付加価値税の還付 等を受けられる場合がある。しかし、補助金交付要綱等に補助事業者等が還付を受けた付加価 値税から手数料等の経費を差し引くなどした額(還付額)の取扱いが定められていないことなど から、補助事業者等が還付を受けているのにその国費相当額を国庫に納付していなかったり、 意見表示・処置要求事項の 結果 還付等を受けられる可能性が高いのに還付手続を行っていなかったりなどしている事態が見受 けられた。 <処置状況> 同省は、補助事業に関して、展示会事業の付加価値税のうち還付を受けているのに国庫に納 付されていない還付額に係る国費相当額の国庫納付について補助事業者と協議を行ったり、平 成26年3月に関係部局に事務連絡を発して、補助事業により実施する展示会事業の付加価値税 については原則として還付申請の検討を行い、還付を受けた場合は還付額に係る国費相当額を 国庫納付させることを交付要綱等に定めるとともに、関係部局及び補助事業者に付加価値税の 還付制度等を周知したりするなどの処置を講じていた。 同省は、委託事業に関して、展示会事業の付加価値税の取扱いについて、欧州連合加盟国等 における個別法等に照らし適法性を考慮して、引き続き検討することとしている。 (検査報告545ページ) 検査の結果 ―551― 国土交通省は、地震による橋脚の倒壊や橋桁の落下等の被害を未然に防止するために、直轄 第Ⅱ章 (94)既設橋りょうの耐震補強工事の設計について(国土交通省) <指摘の要旨(処置要求事項㉞)> 事業又は国庫補助事業等により、既設橋りょうの耐震補強工事を多数実施している。しかし、 設計に当たり、橋脚の基礎部分への影響を照査するなどして検討した上で橋りょう全体として 耐震性能を確保できる工法を選定していなかったり、橋りょうの耐震性能が確保されないおそ れがある場合に橋脚の基礎部分の耐震補強の要否等について更に詳細に検討していなかったり していて、橋りょう全体としての耐震性能が確保されているかどうか明確となっていない事態 が見受けられた。 <処置状況> 同省は、平成25年12月から国土技術政策総合研究所及び独立行政法人土木研究所と既設橋 りょうの耐震補強工事の設計の考え方について検討を始めており、その検討結果を踏まえて、 耐震性能が確保されているかどうか明確となっていない橋りょうについて橋りょう全体として の耐震性能を確認するとともに、既設橋りょうの橋りょう全体としての耐震補強設計の考え方 を国道事務所等に周知徹底し、この考え方を地方公共団体にも助言することとしている。 (検査報告646ページ) (95)米国に派遣された防衛省職員が行う前渡資金に係る会計事務等について(防衛省) <指摘の要旨(処置要求事項㉞㊱)> 防衛省は、米国に派遣した職員 (派遣職員)を資金前渡官吏に任命し、前渡資金を交付して、 公務に要する経費の支払を行わせている。また、派遣職員には、渡航費及び滞在費として、旅 費が支給されるなどしている。しかし、資金前渡官吏が前渡資金に係る会計事務を適正に行っ ていなかったり、派遣職員が国家公務員の旅費に関する法律に基づく旅行命令の変更申請を 行っていなかったり、これらに関する会計監査が十分機能していなかったりしている事態、事 務所の借上費用の低減等を図るための検討が行われていない事態が見受けられた。 <処置状況> ア 各派遣機関から任命された資金前渡官吏の会計事務及び派遣職員の旅行について、横断的 に調査を行い実態を把握するとともに、平成26年4月に通達を発して内部監査の強化を図っ たり、指導用のマニュアルを策定したりするなどした。また、同年5月に通知を発して、資 金前渡官吏等に上記のマニュアルにより指導等を行うなどした。 イ 事務所の借り上げの実態や派遣職員の派遣先での公務の遂行等に係る情報を一括して管理 することとした。 そして、事務所の集約化、統合化、借上費用の低減等を図るための検討を引き続き行うこと としている。 (検査報告726ページ) 意見表示・処置要求事項の 結果 同省は、次のような処置を講じていた。
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