21H-06 中性子シンチレータの性能評価

21H-6
中性子シンチレータの性能評価
研究テーマ代表者(東北大院工)浅井圭介
実験参加者
(東北大院工)越水正典、原田貴正、羽島幹東
(東大院工) 岩井岳夫
1.はじめに
大強度陽子加速器(J-Parc)計画などにおいて、核破砕中性子源の実現が間近に迫っている一方、実現され
る中性子強度に対応した、高速な検出器の開発が進められている。非晶質のシンチレータ作製法の一つである
ゾルゲル法は、溶液を出発材料とするため、薄膜やバルク体など、その形態を容易に制御できる上、大容量の
材料を非常に安価に作製可能であるという利点がある。また、ホウケイ酸ガラスを作製することにより、中性子検
出に必要なホウ素を非常に大量に含有させることが容易である。昨年度までには、ゾル-ゲル法により、シンチレ
ータ材料が作製可能なことを立証した。昨年度までに、ゾル-ゲル法を用いてホウケイ酸ガラスとポリマーのハイ
ブリッドマトリックス中に蛍光分子を導入した材料について、そのシンチレーション特性を評価した。今年度は、
材料組成の最適化を行い、その性能を市販品と比較した。
2.実験方法
ビーカーにてポリスチレン(PS),ジメチルホルムアミド,テトラヒドロフラン,水,および蛍光体の b-PBD を混合し,
アルミホイルとラップフィルムで密封した後,攪拌器を用いて攪拌させ PS を溶解させた。その後、テトラメトキシシ
ランとほう酸トリメチルを加え,アルミホイルとラップフィルムで密封した後,45℃に保った乾燥器中で 5 時間攪拌
器を用い攪拌させた。次に、溶液をフッ素樹脂製のビーカーに移し,アルミホイルとラップフィルムで密封し 60℃
に保った乾燥器中で 14 日間反応・熟成させた。さらに、70℃に保った乾燥器中に移し,更に 14 日間反応・熟成
させた。ラップフィルムを取り除き,アルミホイルに直径1mm程の穴を数箇所開け乾燥器中に戻し,また,乾燥
器の温度を 70℃から 90℃まで 1℃/h で変化させた後 72 時間 90℃を維持し,自然放熱した。
シンチレーション特性については、 105 B  n 24   37 Li によって放出されるα線を模擬し、1.5 MeV の He+照
京大学大学院工学系研究科原子力専攻の重照尃
研究設備のバンデグラフ型加速器を用いて行った。
発光スペクトルの測定には OMA を用いた。
3.結果,考察
エネルギー移動効率(-)
尃下における発光測定を行った。イオン照尃は、東
PS 含有率が 24.1 mol%の試料のの蛍光測定から、
増加に伴い,エネルギー移動効率が増加した。
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0.0001
PS から b-PBD へのエネルギー移動効率を求め,そ
の b-PBD 濃度依存性を図1に示す。b-PBD 濃度の
1
図1
0.001
0.01
0.1
b-PBD濃度(mol%)
1
PS から b-PBD へのエネルギー移動効率の
b-PBD 濃度依存性
b-PBD 濃度 0.04 mol%前後にて,エネルギー移動効
b-PBD へのエネルギー移動が,輻尃的エネルギー
移動過程が優勢であった状態から,双極子-双極子
相互作用によるエネルギー移動過程が優勢である
Intensity(-)
率上昇の傾向が変化しているが,これは PS から
6000
glass
5000
PS含有率9.6 mol%
4000
PS含有率24.1 mol%
3000
2000
状態へと変化したためであると推測される。また,
1000
b-PBD 濃度 0.3 mol%以上では,エネルギー移動効
0
率の値は飽和し,約 0.85 となった。この結果より,エ
300
ネルギー移動効率の観点のみから考えると,b-PBD
濃度を 0.3 mol%以上とすれば,最大光量のシンチレ
400
500
600
Wavelength(nm)
700
図2 b-PBD 濃度 0.4 mol%の試料の、He+照射下で
のシンチレーションスペクトル
ーションが得られると予想される。
図2に He+を照尃したときの PS 含有率の異なる試
20000
度は共に 0.4 mol%である。PS 含有率によりスペクト
ルの形状が変化しており,ホウケイ酸ガラス製の試
料は 390 nm のピーク,PS 含有ホウケイ酸ガラス製の
Intensity(-)
料のシンチレーションスペクトルを示す。b-PBD 濃
試料は 350 nm 付近,367 nm 付近,および 384 nm
0.4
5000
300
1
発光量(-)
PS の導入により,含有率 9.6 mol%の場合は約 6 倍,
よると考えられる。
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0
+
図3および4に、He を照尃したときの PS 含有率
24.1 mol%の試料のシンチレーションスペクトルと、発
光量の b-PBD 濃度依存性を、それぞれ示す。発光
量は b-PBD 濃度の増加に伴い増加し,0.4 mol%に
700
のシンチレーションスペクトル
PS 含有率 9.6 mol%,24.1 mol%の試料を比較すると,
蛍光体へのエネルギー移動効率が上昇したことに
400
500
600
Wavelength(nm)
図3 PS 含有量 24.1 mol%の試料の、He+照射下で
度について比較する。ホウケイ酸ガラス製の試料と
から b-PBD へのエネルギー移動が起こり,母剤から
0.6
0
スマトリクスに PS を含有させることにより,b-PBD が
加させることに成功した。この結果は,期待通りに PS
0.2
10000
これは蛍光スペクトルと同様であり,ホウケイ酸ガラ
含有率 24.1 mol%の場合は約 9 倍まで発光強度を増
0.06
15000
付近の 3 つのピークからスペクトルが形成されている。
PS 中に分散されたことを示している。次に,発光強
0.02
0.2
0.4
0.6
0.8
b-PBD濃度(mol%)
図4 PS 含有量 24.1 mol%の試料の、He+照射下で
の発光量の b-PBD 濃度依存性
て最大値を示した後,減少している。これは, b-PBD 濃度の増加に伴う PS から b-PBD へのエネルギー移動効
率の上昇及び飽和と,b-PBD の自己消光が拮抗した結果であると考えられる。蛍光測定の結果から、エネルギ
ー移動はその効率が 0.3 mol%以上にて上限に達した。実際に、シンチレーションでは、その濃度に近い b-PBD
濃度 0.4 mol%にて最大の発光量が得られた。