二重染色から見るラットの胸椎・腰椎の発達について

麻布大学附属高等学校 自然科学部
二重染色から見るラットの胸椎・腰椎の発達について
背景と目的
材料と方法
・ラットの透明骨格標本の作製実験を
通じて、主に骨格の構造、硬骨と軟骨
の接合の仕方、胎仔の成長を理解す
る。
・主に体を支える重要な骨である胸椎
及び腰椎の椎弓・椎体の発生過程に
着目する。
・今回の実験において正常な骨格を十
分理解し、正常か異常かを判断できる
ようにする。
・胎齢 19 ・21 日の胎仔は、皮膚に適度な堅さを与えて剥皮しやすくし、さらに固定液の浸透を良くするために、
胎子は腹側および背側部に剪刀で骨に影響のないように切れ目を入れた後、95%アルコールを用いて一次固
定。固定 2 日から 5 日後に胎子を剥皮し、内臓を除去後、 95%アルコールに1週間浸し、二次固定を行った。
・胎齢 15 ・17 日の胎子は剥皮を行わず、そのまま 95%アルコールで一次固定、二次固定を行う。さらにその後、
胎子をアセトンに 1 日から 2 日浸漬して脱脂し、70%アルコールで洗浄後、染色液に浸漬した。
・染色液は A 液(0.3%アルシアンブルー/70%アルコール)とB 液(0.1%アリザリン・レッド/95%アルコール)と酢酸を
各々1 容とし、17 容の70%アルコールと混合し調整する。染色液は37℃にて使用する。胎子を 2 日から 3 日間、
染色液に浸漬後、軽く水洗し、1%KOH水溶液中で 2 日から 3 日間浸透・弁色をして化骨部が赤紫色、軟骨部
が青色に染め分けられた後、20%、50%、80%グリセリン水溶液に 1 日毎に親和させた。
・観察は 50%グリセリン水溶液中で行い、標本はチモールを少量添加した 100%グリセリンに保存した。
・高大一貫教育の一つとして、この実
験は麻布大学獣医学部解剖学第二研
究室山本雅子教授の御指導の下に行
われたものである。
・実体顕微鏡を用い、胸椎・腰椎の写真を撮影。測定及び比較を行うため、各胎齢ごとに定規を胎仔と共に撮
影する。写真をもとに椎弓の横幅(右の椎弓から左の椎弓まで)及び縦幅を測定した。
結果:発達の仕方
胎齢17日目のラット
胎齢 日目のラット
胎齢15日目のラット
胎齢 日目のラット
胎齢19日目のラット
胎齢 日目のラット
胎齢21日目のラット
胎齢 日目のラット
・胎齢15日目では椎弓が観察できる。この段階では硬骨は椎弓のみであることが赤紫色の染色部分からわかる。
・胎齢17日目では個体差はあるが、椎体が観察できるものもあった。椎弓以外の硬骨の確認ができるようになる。
・胎齢19日目ではどの個体にも椎体が観察できる。
・胎齢21日目では椎体・椎弓ともに大きく発達している。以前より硬骨の割合が非常に多くなった。
胸椎・腰椎の測定結果 〔mm〕
〕
15日
17日
19日
21日
15日
17日
19日
21日
第十一胸椎
1.346 1.209 1.867 2.089
第十一胸椎
0.414 0.393 0.506 0.773
第十二胸椎
1.323 1.299 1.960 2.050
第十二胸椎
0.349 0.400 0.533 0.800
第十三胸椎
1.385 1.351 2.027 2.050
第十三胸椎
0.420 0.405 0.550 0.781
第一腰椎
1.376 1.410 2.067 2.188
第一腰椎
0.492 0.488 0.550 0.800
第二腰椎
1.429 1.411 2.133 2.296
第二腰椎
0.425 0.471 0.633 0.827
先天異常
先天異常と疑われる
異常と疑われる
胎齢17日目のラット
胎齢 日目のラット
胸椎・腰椎の測定方法
胸椎・腰椎の横幅
胸椎・腰椎の縦幅
・個体差はあると思うが、胎齢15日目の数値が17日目よりも大きくなってしまった数値
がある。原因はサンプル数の少なさであると考える。
・胎齢17日目以降、19・21日目と順調に数値は大きくなった。
・胎齢17日目の胎仔1匹の第十三肋骨
の長さが全体の肋骨の1/3程度であり、
先天異常の可能性がある。
考察・今後の課題
・胎齢15日目のラット胎仔には椎弓が形成し、その後胎齢17日目のものには椎体が観察できるものもあった。しかし、サ
ンプル数が少なく、個体差が多くあり、胸椎・腰椎径長の測定に関して誤差が出てしまったと考える。しかし、この実験を
行うことにより、二重染色によるラット胎仔の透明骨格標本の作製方法、軟骨及び硬骨の形成順序、胸椎の成長の仕
方を観察することができ、実験に対する考え方、アプローチの仕方を学ぶことができた。
・今回の実験では肋骨の先天異常と疑われるサンプルが見つかった。この原因が何なのか、また他の骨格の先天異常
の原因・発生の仕方についてなど、今後さらに発展させた実験を行なっていきたい。