第114号 2012年 12月 1日発行

第 114 号
◇
発行日 2012 年 12 月 1 日
発行所 社会福祉法人
北九州市手をつなぐ育成会
〒 804-0067
北九州市戸畑区汐井町 1-6
TEL(093)884-1500
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発行責任者 北原 守
知的障害者らのロックバンド、 北九州でコンサート ◇
11 月 10 日、北九州学術研究都市(若松区)で「東日本大震災被災地支援コン
サート『サルサガムテープ Rock and Art ライブ 2012』」が行われた。同コン
サートでは、
北九州育成会が中心となり市内の福祉団体などと実行委員会を組織、
準備や運営などにあたってきた。当日は育成会の各事業所の利用者らのほか、市
内の障害福祉関係者、一般市民など約 340 人がライブを楽しんだ。
華やかな衣装にドラム、ギター、太鼓などの
によるロックバンド「サルサガムテープ」の
Rock and Art ライブ。馴染みのある童謡、ア
ニメのテーマソングなどをロック調にしたもの
や、オリジナルの忌野清志郎との共作「ONABE」
バンドメンバーと観客が
一体 とな っ たス テ ージ
パワフルな演奏でスタートした、知的障害者ら
パワフルンなステー
ジを 楽 し む 観 客ら
では、北九州育成会が中心となり、北九州市障
害福祉団体連絡協議会や北九州市障害者施設協
議会、NPO 法人北九州小規模連、北九州市福祉
事業団などにも呼び掛け、「東日本大震災被災
地支援コンサート実行委員会」を組織、準備や
当日運営にあたった。
が迫力あるパフォーマンスで披露され、後半に
この日は育成会からも各事業所の利用者、職
は観客の障害当事者らもステージに。曲に合わ
員ら約 270 人が参加。それぞれが「ステージと
せて踊りに興じる人、人、人。会場はメンバー
一緒に三三七拍子をしたのが楽しかった」「す
と観客が一体となって大いに盛り上がった。
ごかった」
「初めて見た」などパワフルなステー
同コンサートは、元 NHK「歌のお兄さん」こ
ジに興奮気味に感想を語っていた。「サルサガ
と、かしわ哲さんが率いる N P O 法人ハイテン
ムテープ」では、観客とメンバーがロックン
ションと全日本育成会が共同で独立行政法人福
ロールで楽しさを分かち合うことを目的に活動
祉医療機構の社会福祉振興助成金事業として、
しており、全国各地の公演でも圧倒的な人気を
この 8 月から全国で開催している。北九州公演
博している。
主
張
福祉人材の育成について思う
北九州障害福祉研究センター
研究員 比 舗 進
今、多くの社会福祉法人で
を支援する。一方で与えられた場や機会を通じ
人材育成の在り方や職員研修
て自らの人材としての価値を向上させる責任は
の在り方を見直さざるを得な
職員個人にある。法人が研修を通じた価値の向
いという話をよく聞く。障害
上まで責任を持つというものではない。
者自立支援法で、事業毎の職
研修は教育訓練と同義語であることをまず知
員配置基準や常勤換算方法が
るべきであるし、そこで大事になるのが相互の
定着し、高年齢者や異業種か
信頼に基づく会話である。会話により職員と法
らの職員が増えたことで、基礎的研修の必要性
人の目標、想いを調整し、ニーズにあった研修
が高まっているからだ。また、必要とされる専
を行うのである。
門性を獲得するための研修ニーズも多く、単な
もう一つは、研修に臨む意識である。
「また負
る職種や経験によるこれまでの研修では対応仕
荷が増える」と考えるのか、
「どんな研修でも自
切れなくなっているとも言える。障害福祉領域
分にとって益はある」と考えるかによって大き
の広がりとニーズの多様化と共に職員の仕事観
く違う。ある意味自分次第なのである。その姿
の変化や資格制度の広がり等も含めた育成策が
勢が現場での日常的な業務に対する積極的な姿
求められている。
勢に通じ、つながっていくことを知ってほしい
育成会においては、早くからそのための方針
と思う。
を示し、これまでの中期経営計画においても職
人を育てると言うことは、まず自分自身を育
員の意識改革と共に人材育成に取り組んで来
てる事から始まる。しかし、人の成長は個人的
た。また、来年度からの第 3 次中期経営計画に
なものであり、成長によって備わった新しい知
おいては、これまでの実績や効果を踏まえて
識やスキルが法人、事業所の求める方向と一致
「目標達成に向かい、高め合う人材づくり」を 4
しているかどうかは、はっきりと目に見える形
つの方針の一つに設定し、質の高い福祉人材の
で現れる訳ではない。人材育成の目標がどれだ
育成に取り組むことにしている。また、法人の
け達成できたか、効果をしっかりと押さえてお
理念の浸透、人権意識や社会貢献等の取り組み
く仕組みが必要となる。そこで法人では、中期
を通して福祉人材の根底である豊かな人間力や
経営計画やトータル人事システムとの整合性の
使命感の醸成に取り組むことにしており、育成
あるもので、業務に就くための資格を得るとい
会らしい特色を示している。
う発想を持つことを出発点としている。二番目
人材育成で大事なことはその場面づくりと言
に職員間の能力、スキルのバラつきを少なく
われている。その意味で日常的な経験を積み上
し、法人が期待する人材に育て、全体の底上げ
げる現場でのOJTを育成の要にすべきという
を図るという基本を作ることとしている。そし
ことに変わりはないが、まず知っておいて欲し
て、三番目に職員個々の持つ課題を解決するた
いことは、
「研修は法人(組織)と職員とのパー
めに、得意分野を伸ばし、苦手分野を克服する
トナーシップによって成立する」ということで
ための方策を立て実施することである。
ある。法人は目標を達成するための業務を通じ
研修成果として、人材が育ち、基礎力の向上
て、職員にキャリア開発のための場や機会を提
や専門性の獲得等が広く周知され、一歩踏み出
供するとともに、職員が自ら行う自己啓発活動
す現場環境を構築しなければいけない。
法人の下支えとして奔走する松崎貴之本部事務局次長( 3 8 )
ひ
と
常に〝高目〟を求め自らに挑戦。
「法人執行部と現場をつなぎ、
みんな
が働きやすいようにコーディネートす
ることを心掛けている」と語る。育成
や人事等のマネジメント分野においても役割と
会は、事業所数 26ヶ所、職員数は 300
責任が重くなったと感じている。このため、経
人を超えており、障害者福祉の分野で
営マネジメントについて系統的、専門的に学ぶ
は市内トップクラスの大規模法人と
ため、一念発起して、北九州市立大学大学院マ
なった。
「大きな法人だからこそ、その
ネジメント研究科を受験して合格した。来年 4
役割が重要となるが、やりがいを感じ
月からは夜間、週末を利用してキャンパスに通
ている」という。
う予定。社会福祉法人は、ますます厳しい競争
福岡県立大学人間社会学部社会福祉
環境にさらされており、質の高いサービスを提
学科卒業後、平成9年4月に育成会へ入
供し続けるとともに、社会への貢献活動を進め
職。いくつかの事業所を経験し、現在
ていくことが求められている。育成会は25年度
は、本部事務局に次長として勤務して
から第 2 期の「法人改革」
(平成 25-34 年度)に
いる。この本部事務局は、法人全体が
入るが、「地域から必要とされる法人として認
力を発揮するための「下支え」、
「つな
知され、現場の職員が誇りを持って働くことが
ぎ役」の立場であり、一年中、多くの
できる環境を作っていきたい」と抱負を語って
行事に追われる中で根気強く仕事を完
くれた。
遂している。一人ひとりの担当業務は
また、仕事を成功させるポイントは「人づく
異なるが、「全員で協力しあうチーム
り」であり、
「中堅が職場を超えて学習の場を持
ワークに助けられている」という。ま
ち、お互いに高めあうこと」、
「言われたことだ
た、新原淳常務理事が事務局長となっ
けする風潮を改善し、新しいことに挑戦する流
てからは、
「ホスピタリティの向上」に
れを作ること」が不可決だとも。共に働く職員
取り組み、雰囲気が明るくなったと法
からは、「誰とでも真摯に向き合い接する性格
人内の職員からも好評で、気軽に立ち
で、聡明で優しい心根を持ったひと」と頼りに
寄れる事務局を目指している。
されている。
事務局次長となって 2 年目。昨年は
小倉南区在住。家庭は妻と 2 人暮らし。休日
法人主催の事業や渉外等、主に総務業
は家庭菜園に時間を費やす。さらなる飛躍が期
務を担当してきたが、今年は、財務
待される 38 歳。
当事者活動委員会
利用者主導で会議の企画や運営も
平成24年度の当事者活動委員会がこの5月にスタートして、半年が経過した。
月に1回の委員会では、委員の中から担当者を決めて活動の企画や運営の準備を
している。不十分なところは多いが、失敗や成功を重ねながら少しづつ自信を付
けている。
「当事者活動委員会」の意義につ
いて 話 し 合 う 当 事 者 会 の 様子
育成会では昨年度から、法人全体で利用者中
心の活動を進めていくため、「当事者活動委員
会」を発足させている。13 事業所から代表者 15
人を選び、月に 1 回の委員会を開催している。
5 月に委員会がスタートして半年。本人たち
の意識も変わりつつあり、自分の意見や考えを
述べるようになってきた。委員会の進め方につ
いても以前のように職員の主導ではない。当事
者から担当を立て、月に1・2回の「担当者会」を
開催して、活動の企画や運営の準備をしてい
る。担当者は毎回、委員会の終了時に立候補ま
いた。一方、その後の話し合いでは、毎回「テー
たは推薦で決めているが、担当になりたいと手
マ」を決めて意見交換の場を持っており、8月の
を挙げる者が多く、自分たちで「会を盛り上げ
テーマは、生活のなかで「楽しかったこと、泣
よう」という意識が高まっているようだ。また、
いたこと」。ある参加者は「自分が障害者である
担当者の希望で、委員会の場を和ませるための
ことを知った時に戸惑った」、
「職場での人間関
「アイス・ブレイク」を取り入れており、これま
係で困っている」などかつての悩みを披露し
でにペットボトルを利用した「ボーリング」、
た。声に出して意見を言えるひと、頷くだけの
「フライングディスク」、
「いす取りゲーム」、
「連
ひと、話に集中できていないひとなど、一人ひ
想ゲーム」などを企画。手作りの絵カードを引
とりの受け止め方は様々だが、仲間の気持ちを
知る良い機会となったことは間違いない。ま
月の当 事者 活動 委員 会を準
備す る 担 当 者 会 の メ ン バー
11
た、10 月は「なぜ当事者会をしているのか」を
テーマに話し合ったが、これには参加者全員が
発言。「悩みや不安を話して交流を深めたい」、
「明るく楽しい当事者会にしたい」などと語っ
ていた。自分の思いを声に出したことで自信が
ついたのだろう、自立への一歩となったとの印
象を受けた。
担当者を経験した委員は「皆の気持ちがひと
つになれた」、
「良い経験が出来た」と自信を付
き、ジェスチャーで順次伝えていく「連想ゲー
けている。今後の当事者活動委員会を通して、
ム」では、コミカルな動きに笑いが絶えず、
「ま
良き仲間と交流し、それぞれが成長できること
たやりたい」と好評。企画した担当者も喜んで
が期待される。
楽しかった、来年の中国大会にも
~ 「日・中・韓 障害者交流大会 in 釜山」解団式 ~
11月 21日、
「国際障害者福祉交流
大会 in 釜山」の解団式が戸畑区の
ウェルとばたで和やかに行われた。
これには 10 月 19 日に韓国・釜山で
開催された同交流大会の訪問団員
(利用者や職員)など約60人が出席。
大会のDVDを観賞した後、感想な
どを語り合った。
記念撮影に納まる利用者、職員ら
「あ、私が出てる!」。スクリーンの前に座り
流大会」でパフォーマンスを披露した本城リサ
込み、大会のDVDを楽しそうに観賞する利用
イクル工房の利用者は、「来年の中国ではどん
者ら。障害当事者がパフォーマンスなどを披露
なパフォーマンスをするのか、またどういう目
した「当事者交流大会」の様子や韓国料理を食
的で大会に参加するのかなどを今、みんなで話
べている食事場面、さらには釜山観光などの模
し合っている」といった次回中国大会に向けて
様が映し出され、会場はわきあいあいとした雰
の意気込みを語っていた。また、そのほかの利
囲気となった。
用者も来年の中国大会も絶対に行きたいとの意
「国際障害者福祉交流大会」は日本・北九州育
気込みを見せていた。
成会、韓国・障害者福祉施設協会、中国・江蘇
大会のDVDを楽しそ
うに観賞する利用者ら
省障害者連合会が主催、三カ国の障害当事者が
交流し、友情と相互理解の促進を目的に昨年の
北九州大会から開始された。開催地は輪番制
で、北九州、釜山と続き、来年は中国で開催予
定となっている。
この日は、大会のDVDを観賞した後、古賀
厚志・北九州市障害福祉部長が来賓のあいさつ
をし、訪問団員の利用者ひとりひとりが大会の
感想を披露した。「初めて韓国に行って、楽し
最後に大会訪問団長でもある北原守理事長
かった」
「韓国料理がおいしかった」
「韓国語を
が、
「日中韓三カ国の当事者が交流する、この大
勉強して、来年、会ったときに話せるようにす
会は歴史的なことであり、みなさんは歴史をつ
る」「言葉が通じなくても心で交流することが
くるというすごいことを成し遂げた。来年の中
できて、うれしかった」
「いろいろな経験がした
国大会に向けてがんばりましょう」と呼び掛け
いので、次回の中国にもぜひ行きたい」
「日本語
た。その後、出席した利用者、職員らで集合写
で“ありがとう”と声をかけてもらえたことが
真に納まったが、来年への期待に満ちた明るい
うれしかった」などなど。この中で、
「当事者交
表情が強く印象に残った。
海外だより
(韓国 ・ ソウル市立知的障害者福祉館)
洞雀区/地域と共に障害者体育大会
11 月 9 日、ソウル市立知的障害者福祉館前に
「亀」マラソンに参
加する障害者ら
あるボラメ公園で、同福祉館と南部障害者福祉
館とが主催する「洞雀区障害者生活体育大会」
が開催された。
同体育大会は、社会統合活動の一環として、
韓国洞雀区に住んでいる約16,000人の障害者が
体育活動を通じて、体力増進と健常者とのふれ
あいを図ることを目的として開催された。ま
た、開催にあたっては、洞雀区と洞雀区障害者
フライングディスク競
技を 楽 し む障 害 者 ら
団体協議会が後援し、実行委員会を組織、準備
を行ってきた。実行委員会には、洞雀区障害者
団体協議会(加盟 15 団体)と職業再活施設 2ヵ
所(洞雀区立障害者保護作業場、南部保護作業
場)、昼間保護施設 4ヵ所(ディディムドル、サ
ランソン、南部、知的障害者福祉館)、障害者福
祉館 2ヵ所(南部福祉館、知的障害者福祉館)が
集まり、さらにソウルろうあ者協会・洞雀区手
話通訳センターが手話を担当した。
当日は、秋晴れで温かく、天候にも恵まれ、参
であり、特に発達障害者のためのバスケット
ボールと円盤打ち、フライングディスク、電子
加した障害のある選手とその家族たちは盛り上
ダーツは発達障害者のみではなく、ろうあ者、
がり、体育大会の前に行われたバンド演奏、車
肢体障害者にも人気が高く、多くの人が競技を
いすダンス、レインボウチームの乱打公演に続
楽しんだ。その一方で、それら競技は単純な種
いて、洞雀区障害者団体協議会の金樂煥会長の
目規定だけに今後はもっと楽しんでもらうため
開会宣言によって、スタートした。
「亀」マラソ
の開発が必要なことも確認された。
ンや卓球、ボッチャ、バスケットボール、フラ
さらに、この日は会場であるボラメ公園を訪
イングディスク、電子ダーツ、円盤打ち、Wiiス
れた一般市民も参加できる「分かち合う広場」
ポーツ、漕艇競技など計 9 種目に、障害のある
と「体験広場」も企画された。
「分かち合う広場」
選手 486 人とスタッフ 142 人、ボランティア 61
には保護作業場で障害者が生産したスリッパ
人が参加。洞雀区役所の文忠實区長をはじめ、
や、知的障害者が畑で栽培した大根、ホウレン
区内の著名人も出席して激励した。また、この
ソウ、サツマイモ、キムチなどが販売された。
体育大会を主幹したソウル市立知的障害者福祉
「体験広場」ではインゾルミ(韓国の餅)をその
館の文龍洙(ムン・ヨンス)館長も「今日は皆
場でついて試食できるブースや、電動車イスの
様の日です。思い切って楽しんでください。ま
分解掃除、補助具の修理をするブース、コー
た、この体育大会が開催できるように協力して
ヒーやお茶などを無料で提供するブース、筋肉
くださった皆様に感謝を申し上げます」とあい
の円滑な動きを助けるためのキネシオテープの
さつした。
実演などのブース等も設けられた。
この障害者生活体育大会はエリート障害選手
この障害者生活体育大会では、洞雀区の障害
中心の大会ではなく、誰でも楽しめ、また楽し
者の体力増進だけでなく、地域住民など健常者
みながら体力が増進されることも目的のひとつ
ともふれあい、一つになれた大会となった。
(文責:編集部)
57
実践と研究の協働空間としてのメタ現場
-福祉社会の開発をめざして
「メタ現場」
という未だ世の中にあまり知られ
ていない言葉がある。この言葉は、私の所属セ
日本福祉大学
ンターの研究成果であり、今後の研究テーマで
アジア福祉社会開発研究センター
もある。この紙面を借りて、現場とともに検証
主任研究員 朴 兪美(パク・ユミ)
すべく「メタ現場」を紹介したい。
私が所属している日本福祉大学アジア福祉社
のヒントが得られた。
会開発研究センターは、日本福祉大学 COE プロ
高知県は県土の92%が地理的条件が厳しい中
グラム(2003 ~ 2007)を引き継いで、社会開発
山間地域で、民間の福祉事業者等の福祉資源の
と地域福祉との学際的な融合を図る「福祉社会
確保が容易ではなく、社会福祉協議会が重要な
開発」研究を進めている。
「福祉社会開発」とは、
福祉資源となっていた。その社協に注目した県
「諸個人が共同的な生活能力を開花させ、
市場や
行政は、社協の力量強化を図るために事務局長
政府を利用し変容させながら、自他の福祉を向
の研修会を企画したが、その依頼を受けた当セ
上させる、そうした行為主体を成立させる地域
ンターの平野隆之教授は、参加者が受け身的に
社会の意識的・政策的な形成、すなわち福祉社
なりやすい通常の研修会とは異なる研究会方式
会の開発といえるものである」
(当センター長穂
を提案した。その結果、2年間研究会事業と称さ
坂光彦による定義)。
れた場がつくられ、
「メタ現場」と呼ばれる場が
こうした人びとの行為主体(agency)として
形成されていった。その場の参加者の力量強化
の可能性に注目する背景として、社会システム
は、よそ者の研究者によって与えられるもので
の機能不全をあげることができる。十分な制度
はなく、実践者が自己の日常感覚を「異化」
(ブ
システムがない途上国であれ、高度化した制度
レヒト)し、俯瞰的に現場を振り返り、新たな
システムをもつ先進国であれ、社会システムの
視点をもって現場に戻ることから生まれる。そ
機能不全は一般的な課題として登場する。例え
こにかかわる研究者は、自己の研究枠組みや観
ば、日本の中山間地域のような条件不利地域で
察結果を場に提供し、実践者の日常感覚の異化
は、制度があっても届かないという問題を抱え
を手伝う役割を担う。同時に、研究者自身も実
ているし、震災地域でみられるように、制度が
践者の反応から枠組みや観察結果の修正といっ
機能しない状況に直面することもあり得る。そ
た変化を経験する。すなわち実践者と研究者と
こで、所属センターは、社会システムの機能不
の協働の場となる空間(メタ現場)が形成され
全を補う新たな有機的な社会システムの形を示
ることによって、実践や研究へのフィードバッ
すために、制度を前提としない途上国での参加
クに結びつく相互変化が可能となった。
型開発のアプローチと制度的な福祉の限界に対
こうしたメタ現場の可能性は、まだ研究の途
応しようとしてきた日本の地域福祉のアプロー
中であるが、いくつかの現場ではすでにメタ現
チとの融合を模索してきた。
場の形成につながるような取り組みが確認でき
そのなかで、当センターは主にフィールド
た。私は 2012 年 3 月に北九州市手をつなぐ育成
ワークを研究方法として用いた。
研究員の私は、
会を見学した際、ここでも北九州障害福祉研究
2008年から高知県においてフィールドワークを
センターを中心にメタ現場がうみ出されている
行っている。そのきっかけとなったのが社協ス
のではないかと感じたことがある。きっと今後
テップアップ研究会事業である。この研究会事
の展開にも、新たなメタ現場の可能性が潜んで
業にかかわるフィールドワークから
「メタ現場」
いると期待している。
Topics(法人の動きから)
育成会全国大会に新原常務らが参加
育成会 /25 年度新卒採用試験で 1 7 人が合格
10 月 27、28 日に高知市で「第 61 回全日本手をつなぐ
育成会全国大会高知大会」が開催され、2,000人を超え
る関係者が参加した。
同大会は
「人としての幸せを求めて~生きることの喜
びを感じられる社会づくり~」をテーマに、初日に分科
会、2 日目には全体会が行われ、全日本育成会の責任者
でもある北原守理事長が、大会趣旨を踏まえ、
「共生社
会」
の実現に向けて地域づくりを進めていこうと呼びか
けた。また、第4 分科会では北九州育成会の新原淳常務
理事がコーディネーターを務めたほか、
並行して実施さ
11 月 17 日、ウェルとばたで育成会の「平成 25 年度
新卒採用試験(正規職員)」の二次試験が行われた。こ
れには、11 月 11 日の一次試験(筆記)に合格した県内
外の大学、専門学校、高校などの学生26人が挑戦し、17
人が合格した。
試験は個人面接で、使命感、責任感、専門性などが
問われ、
受験生は緊張しながらも真剣に臨んでいた。
面
接者からは「ボランティアやサークル活動等で社会福
祉の現場を経験し、備えがそれなりにできている学生
が多かった」などの感想が聞かれた。
れた「本人大会」特別分科会のワークショップでは、全
日本育成会の障害認知プログラム「知る見るプログラ
ム」の御船守委員(北九州育成会「本城リサイクル工房」
従業員)が進行役を務めた。
大会は本(親)大会と本人大会のそれぞれが「大会決
議」を行い、盛会の内に終了した。
事業所長会議 / 人事・給与制度見直しで意見交換
11月14、19日に事業所長会議がウェルとばたで開催
され、下期賞与と人事・給与制度の見直し案についての
説明などが行われた。
14日には下期賞与が上期同様、支給月数2.3ヶ月とな
集 合 写 真 に納 ま る 「本 人 大
会」特別分科会の参加者ら
ることや人事・給与制度の見直し案が説明され、同案に
ついては後日、事業所長から質問や意見などが集約さ
れた。19 日にはそれらを受け、新制度への移行措置な
どについて意見交換が行われたが、今後はこれらを受
け、執行部で成案を作成することになっている。
EW協議会 / 下期賞与で労使協議
育成会の労使協議の場である「EW協議会」が 11 月
16 日、ウェルとばたで開催され、下期賞与の支給につ
いて協議した。法人執行部からは比舗進副理事長と各
3 次中期経営計画策定委 / 具体的計画案を協議
「第三次中期経営計画策定委員会」
(堀田秀一郎委員
長)が 11 月 1 日、ウェルとばたで開催された。これに
は同策定委員会メンバー8人と外部アドバイザーの平
尾敬一・社会保険労務士(法人顧問)が出席した。
同策定委員会では、10 月 6 日の法人創立記念式典で
「第 3 次中期経営計画」の骨子を公表し、その後、担当
ごとに具体的な「計画案」の策定を進めてきた。この
日、はじめて全体で計画案についての協議が行われ、
平尾氏からは数値化出来るような内容に、といったア
エリアマネージャーが、労働者組織の「ワーカーズク
ラブ」からは佐川康一郎代表(北九州ひまわりの里)の
ほか、各事業所の職場代表が出席した。
執行部から下期の賞与は上期同様、
支給月数を2.3ヶ
月とするとの提案がなされた。24年度の中間決算にお
ける年間収支差額は増加が見込まれるものの、指定管
理施設の民間譲渡等に備え、多くの内部留保が必要な
ことから支給月数を2.3ヶ月としたことが説明された。
なお、各職場での討議後、12 月 10 日に支給予定。
11 月の苦情は 1 件 (11 月 20 日現在)
ドバイスなどがあった。
今後は、指摘のあったポイントで統一を図ることと
・苦情解決委員会 意見箱等への投函件数 1件
し、各エリアで見直しを行う。
・苦情解決推進委員会 施設現場からの報告 0件
法人 の 予 定
・12/3・4 -ISO更新審査
・12/8 -採用内定者説明会
・12/17 -三役会
・12/19 -当事者活動委員会
・12/10 -三役会、経営会議、苦情解決推進委員会
・12/14 -教育研修委員会
・12/21 -事務局長会議
・12/25 -臨時経営会議、危機管理委員会