「時空のトンネル」ワームホールの検証法

June
59
「時空のトンネル」ワームホールの検証法
阿部 文雄 (ジオスペース研究センター)
21 世紀の今日、人類は永年の夢だった宇宙
旅行をほぼ手中にしたかの様に見えます。今で
はお金さえあれば、国際宇宙ステーションまで
の往復は可能です。今後、月、火星、さらに遠
くの惑星へと夢は現実のものとなっていくでし
ょう。夢はさらに大きく、銀河のかなたの別な
惑星系への旅行へと広がって行くでしょうか?
しかし、ここで技術的問題は別としても、絶対
的な時間の壁が我々人類の前に立ちはだかりま
す。例えば、1 万光年先の天体へ行こうとすれ
ば、1 万年以上かかってしまうことになります。
もちろん、光の速度に近い速度で飛ぶことがで
きれば、相対論的効果により旅行者の乗った宇
宙船の中の時間の進行は遅くなります。1 万光
年先へ 1 週間で行くことも原理上は可能です。
しかし、その後地球へ帰還すると、地球では 2
万年以上たっており、完全に「浦島太郎」にな
ってしまいます。
この様に、時間の壁はあまりに困難であり、
太陽系外への旅行は SF やアニメなど空想上の
もので、永久に実現不可能な様に見えます。と
ころが、一般相対性理論では、遠く離れた時空
の間を短絡的に接続する不思議な解が存在す
ることが知られています ( 図 1)。ワームホール
(wormhole、リンゴなどにできる虫の食った穴 )
と呼ばれるこの解は、アインシュタインとロー
ゼンによって 1935 年に最初に導入されました
( アインシュタイン・ローゼン・ブリッジなど
とも呼ばれる )。その後、いくつかのワームホ
ール解が発見されましたが、不安定なものです
ぐにつぶれてしまうと考えられ、あまり関心を
引きませんでした。ところが、1988 年のモリス
およびソーンによる有名な論文により、ある種
のワームホールは人間が通過可能であり、また
負の質量を持つ「エキゾチック物質」がワーム
ホールのくびれた喉 ( スロートと呼ばれる ) に
大量に存在していれば、ワームホールがつぶれ
るのを防ぐ事ができることが指摘されました。
これにより、ワームホールを通過して宇宙のか
なたへの瞬時移動や過去や未来へのタイムトラ
ベルの可能性が議論される様になりました。
図 1: ワームホールのイメージ図。上と下の時空は、宇
宙の中の遠く離れた場所、過去と現在、現在と未来、
別な宇宙などさまざまな可能性がある。
1
( アインシュタイン・リング ) が見えるという
ものです。しかし、この円形のイメージはあ
まりに小さく、地球上からはとても観測でき
ません。アインシュタインは、同じ論文の中
でもう一つの現象を予言しています。それは、
遠方の星の光が手前の星の重力レンズ効果で
集められ、手前の星が無かった時より明るく
見えるというものです。これが重力マイクロ
レンズ効果と呼ばれている現象です。これな
ら大きな望遠鏡が無くても観測できます。実
際には、星や観測者 ( 地球上 ) の位置関係が変
化しますので、地球から見ていると今まで暗
かった星がだんだん明るくなって、見かけ上
の最接近の際に最も明るくなり、それからま
た暗くなって、もとの明るさに戻るという変
化をいたします。ところが、増光を引き起こ
すほど 2 つの星が接近して視線上に並ぶ確率
は低く、だいたい百万分の一くらいと言われ
ています。しかし、近年の観測技術の進歩は、
大型 CCD カメラを使用して一度に多数の星を
観測することを可能にしました。我々 MOA 共
同研究は、ニュージーランド・マウントジョ
ン天文台に設置した 1.8 m 望遠鏡と大型 CCD
カメラを使用して、銀河中心および大マゼラ
ン雲の毎晩数千万個の星を毎晩観測しており
ます。その結果、毎年数百個のマイクロレン
ズ事象を発見しております。
しかし、そうは言ってもワームホールは理論
的な可能性にすぎません。実際に、この世に存
在するとは限りません。もし、この世に存在し
ないとすれば、ワームホールを使った瞬間移動
やタイムトラベルなどは空理空論です。では、
どうすればワームホールが実際に存在するかど
うか検証できるでしょうか?ワームホールは、
光も電波も X 線も出しません。普通の観測に
はかからないわけです。こうしたワームホール
の探索法として Cramer らは、1995 年の論文で
重力レンズを使う方法を提案しました。彼らは、
ある種のワームホールは負の質量のレンズ効果
を引き起こすと考えました。別の天体が、遠方
の星の手前を通過すれば、重力レンズ効果によ
って、一時的に明るく見えます。この様な重力
レンズ効果による増光現象を重力マイクロレン
ズと呼びます。手前を通過する天体が負の質量
であれば、明るさの時間変化 ( 光度曲線 ) は、
鋭い 2 山の形になるはずです。Cramer たちが
提案したのは、この特徴的な明るさの変化を利
用することでした。
しかし、なぜワームホールの重力レンズ効
果が負の質量になるのかについては、明確な
根拠が示されませんでした。そのため、仮に負
の質量の重力レンズ効果を発見しても、ワーム
ホールを発見したことにはならず、また負の質
量のレンズ効果が見つからないことをもってワ
ームホールが存在しないという証拠とすること
もできないとされていました。ところが、ワー
ムホール自身はその時空構造が分かっているも
のであり、あやふやな推測ではなく厳密に重力
レンズ効果を計算できるはずのものです。こう
した時空構造から重力レンズ効果を求める試み
は、最近になって数人の人たちによって行われ、
2008 年に Dey および Sen によって、ワームホ
ールの一種であるエリス・ワームホールによる
光線の曲げ角が求められました。
では、これを使ってどうやって検証できる
でしょうか?しかしその前に、我々のやって
いる重力マイクロレンズ観測はどの様なものか
ご説明しましょう。重力レンズ効果は、アイン
シュタインが 1936 年の論文で予言した現象で
す。遠方の星の手前に別な星がほぼ完全に一直
線上に並んだ際、手前の星の重力によりレンズ
の様に遠方の星の光が曲げられ、丸いイメージ
図 2:エリス・ワームホールによるイメージ。青い
円は、遠方の星でまっすぐ横に移動したと仮定。マ
ゼンタの楕円が重力レンズで生じたイメージ。上と
下に 1 個づつできる。
2
では、ワームホー
ルの話に戻りましょ
う。我々の観測して
いる遠方の星の手前
を、 ワ ー ム ホ ー ル
が通りかかったとし
ます。観測できるの
は、星の明るさの変
化だけです。ワーム
ホールの重力レンズ
効果による光度曲線
が、星による重力レ
ンズと同じであれ
ば、通過したのが星
なのかワームホール
なのか区別できませ
ん。 そ こ で、Dey お
よび Sen によって導
出されたエリス・ワ
ームホールによる曲
げ角から光度曲線を
求めました。計算法
は、普通の星につい
てはすでにお手本が
あ り ま す (Paczynscki
図 3:エリス・ワームホール(赤)と星(緑)の光度曲線。縦軸が増光率、横軸
が時間。パネルは、ワームホールが通過した位置による違いを示す。左上が最も
近く、右上、左下、右下の順に遠くを通過した場合。
結果は、図 3 の通りです。赤い曲線がエリ
ス・ワームホールによる光度曲線、緑の曲線
が普通の星による光度曲線です。エリス・ワ
ームホールによる増光率は星に比べて低く、
特にピークの前後で一時的に減光します。普
通の星などによる重力レンズでは、決して減
光は起きないとされており、この減光はワー
ムホールに特有のものと考えられます。これ
によって、マイクロレンズ効果を利用したワ
ームホールの検証が可能であることが分かり
ました。もし、こうした特徴を持つ光度曲線
が発見されなかったとしても、ワームホール
がこの世に存在しないと結論することはでき
ません。しかし、その場合には宇宙における
ワームホールの存在量に制限を課することが
可能だと考えられます。すでに我々は、多く
のマイクロレンズ観測データを持っているの
で、その解析を行うことによりワームホール
の検証を行う予定です。
1986)。 星による重力レンズ効果では、曲げ
角が小さなときはレンズ中心からの距離に反
比例して曲がる性質があることが知られてい
ます。それに対して、エリス・ワームホール
は中心からの距離の 2 乗に反比例します。つ
まり、ワームホールの中心近くを通るほど光
は強く曲げられます。重力レンズを通して見
た遠方の星のイメージの位置は、普通の星の
場合は 2 次方程式の解として求められるのに
対して、エリス・ワームホールの場合は 3 次
方程式の解として求められます。結果を見て
みると、両者は良く似ていて重力レンズの中
心から遠方の星の側に一つ、反対側に一つイ
メージができます ( 図 2)。レンズを通して見
るイメージは、単位面積あたりの明るさが同
じであることが知られています。つまり、イ
メージが大きく見えるときはより明るく、小
さなイメージしか見えないときは暗いことに
なります。この性質を利用して、全体の明る
さを計算しました。
3
太陽地球環境科学の社会への役割と責任
佐藤 夏雄 ( 運営協議員 )
国立極地研究所
学と社会との繋がりの難しさです。
これまでに地球惑星関連科学が社会へ貢
献した例として、地球温暖化はグローバルな
問 題 で あ り、 地 球 シ ス テ ム と し て 捉 え る こ
との重要性を提言したことが挙げられます。
いまでは社会や政治にも受け入れられ、温室
効果ガスの世界的規制が行われるようにな
りました。
ここでは、太陽地球環境の自然科学に携わ
っている私たち研究者や研究組織が、社会へ
どのような役割を果たすことができ、どのよ
うな貢献が可能なのかを少し考えてみます。
地球は太陽の惑星であり、地球上の人類や生
物は太陽光の恩恵を受けていることを、社会
の大部分の人は常識として知っています。一
方、オーロラに興味を持っている人は多いの
ですが、オーロラの源が太陽であることを知
っている人は案外少ないと思います。さらに、
最大級のオーロラが出現する時には、人類の
宇宙活動に有害となる宇宙放射線が大量に地
球近傍に押し寄せていることを知っている人
は、なお一層少数であると思います。
人類が安全・安心に暮らせるためには、太
陽の活動の様子を「宇宙天気」として予報し、
ある場合には警報を出してゆく必要がありま
す。この宇宙天気の重要性・有用性が社会に
理解され、太陽と地球環境システムの関係が
社会の感心事となるよう、その努力を続ける
必要があると思います。
さらに、もしも太陽に “ 想定外の大爆発 ” が
起こったとしたら、我々の地球環境はどうな
るのか?などを、大いに真剣に考え、科学的
に研究する必要があるのではないかと思った
りします。
最後に、読者の皆様にもこの機会に一緒に
なって考えて頂くとともに、太陽地球環境研
究所にはこの研究分野の社会への貢献と役割
の中心となって頂くよう期待しております。
今回の東日本大震災と原発事故に直面し、自
然の猛威と人災の不安に打ちのめされる思いで
した。
この大震災により、自然科学の研究に携わる
者や組織は、社会への役割や責任が大いに気掛
かりになった今日この頃だと思います。5 月 25
日に幕張メッセ ( 千葉県 ) で開催された日本地球
惑星科学連合学会のユニオンセッション「東日
本大震災:今、地球惑星科学のありかたを考える」
の会場は超満員で、熱い講演と討論が交わされ
ました。多くの科学者が同じような心境にある
と、私なりに納得し、講演を傾聴しました。
今回の災害では、「“ 想定外 ” の超巨大地震」
または「“ 予想をはるかに越えた ” 津波」など、
“ 想定外 ”、“ 予想をはるかに越えた ” という言
い回しが使われました。社会が、さらには科学
者もが、自然は良く理解されているものとの錯
覚・誤解をどこかでしていたのではないかと思
います。
辞書によりますと、“ 自然とは人間の意志や
知性の関わらないこの世のあらゆるもの ”、と
あります。また、人智を越えたもの、ともあ
ります。私たち人間が、または、現在の科学
が自然を全て知り尽くしているわけでは無い
のです。
一方、自然科学が社会に直接的に役立てるも
のとしては、予測を立て、災害防止の備えを勧
告することがあると思います。今回の大震災で
この予測の重要性を実感しました。5 月 25 日の
島崎邦彦氏の講演では、過去のデ − タが不十分
であっても、地球物理学的知見に基づき予見は
出来る、被害の軽減に資する評価を提供できる、
と話しておられました。
この重要性は、裏を返せば、間違った予測を
発信した際には社会の混乱にもつながりかねま
せん。科学的には予測は確率で示します。社会
が(マスコミが)その意味の十分な理解無しに
発表した場合も混乱を招くことになります。科
4
2011年度各委員会の構成
任期:2010年4月1日-2012年3月31日
○:委員長 ●:幹事
運営協議会
小野
梶田
熊谷
櫻井
笹野
佐藤
津田
中村
星野
湯元
河野
柴田
杉山
所 外 委 員
高幸 (東北大学大学院理学研究科) 隆章 (東京大学宇宙線研究所)
博 (情報通信研究機構)
隆 (自然科学研究機構国立天文台)
泰弘 (国立環境研究所)
夏雄 (情報・システム研究機構国立極地研究所)
敏隆(京都大学生存圏研究所)
正人 (宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)
真弘(東京大学大学院理学系研究科)
清文 (九州大学宙空環境研究センター)
明廣 (名古屋大学大学院工学研究科)
隆 (名古屋大学大学院環境学研究科)
直 (名古屋大学大学院理学研究科)
共同利用・共同研究委員会
所内委員
北
田口
中川
中村
宗像
村田
宮岡
長妻
柴田
大村
横山
巻田
松見 豊
水野 亮
塩川 和夫
伊藤 好孝
菊池 崇
荻野 瀧樹
所 外 委 員
所内委員
和之 (茨城大学理学部)
○荻野 瀧樹
聡 (電気通信大学大学院情報理工学研究科) ●西谷 望
朋子 (東北工業大学工学部) 松見 豊
雅夫 (大阪府立大学大学院工学研究科)
長濵 智生
一起 (信州大学理学部)
塩川 和夫
功 (東北大学大学院環境科学研究科)
平原 聖文
宏 (情報・システム研究機構国立極地研究所) 松原 豊
努 (情報通信研究機構)
徳丸 宗利
祥一 (中部大学大学院工学研究科)
菊池 崇
善治 (京都大学生存圏研究所)
関 華奈子
央明 (東京大学大学院理学系研究科)
和男 (拓殖大学工学部)
共同利用・共同研究委員会専門委員会
専 門 委 員 会
大気圏専門委員会
電磁気圏専門委員会
太陽圏専門委員会
総合解析専門委員会
所
外
委
員
○北
和之 (茨城大学理学部)
村田 功
(東北大学大学院環境科学研究科)
梶井 克純 (首都大学東京都市環境学部)
笠井 康子 (情報通信研究機構)
高橋けんし (京都大学生存圏研究所)
杉田 考始 (国立環境研究所)
○田口 聡
(電気通信大学大学院情報理工学研究科)
宮岡 宏
(情報・システム研究機構国立極地研究所)
長妻 努 (情報通信研究機構)
坂野井 健 (東北大学大学院理学研究科)
○中川 朋子 (東北工業大学工学部)
秋岡 眞樹 (情報通信研究機構)
柴田 祥一 (中部大学大学院工学研究科)
大山 真満 (滋賀大学教育学部)
花岡庸一郎 (自然科学研究機構国立天文台)
永田 伸一 (京都大学大学院理学研究科附属天文台)
羽田 亨 (九州大学総合理工学研究院)
長谷部信行 (早稲田大学理工学術院総合研究所) 宗像 一起 (信州大学理学部)
○中村 雅夫 (大阪府立大学大学院工学研究科)
篠原 育
(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)
河野 英昭 (九州大学大学院理学研究院)
能勢 正仁 (京都大学大学院理学研究科)
浅井 歩 (京都大学宇宙総合学研究ユニット)
品川 裕之 (情報通信研究機構)
海老原祐輔 (京都大学生存圏研究所)
ジオスペース研究センター 運営委員会
所
末松 芳法
長妻 努
篠原 育
山岸 久雄
今村 隆史
中村 俊夫
外
委
員
所 内 委 員
●長濵 智生
松見 豊
水野 亮
●塩川 和夫
野澤 悟徳 大塚 雄一
大山伸一郎
●徳丸 宗利 伊藤 好孝
松原 豊
●関 華奈子
菊池 崇
荻野 瀧樹
草野 完也
増田 智
ジオスペース研究センター総合観測委員会
所 内 委 員
○宗像
湯元
山岸
巻田
橋口
○荻野 瀧樹
(自然科学研究機構国立天文台)
●阿部 文雄
(情報通信研究機構)
(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所) 西谷 望
(情報・システム研究機構国立極地研究所) 松見 豊
塩川 和夫
(国立環境研究所)
増田 公明
(名古屋大学年代測定センター)
徳丸 宗利
関 華奈子
5
一起
清文
久雄
和男
浩之
所
外
委
員
(信州大学理学部)
(九州大学宙空環境研究センター)
(情報・システム研究機構国立極地研究所)
(拓殖大学工学部)
(京都大学生存圏研究所)
所 内 委 員
●長濵 智生
徳丸 宗利
塩川 和夫
増田 公明
西谷 望
関 華奈子
荻野 瀧樹
6
Pc5
-
HF
ULTIMA
Alfvenic-Cowling model
KRM
Cowling
Pi 2
Pi 2
14C
PASS
BC
KHI
GOSAT
7
24
EISCAT
3
GPSTEC
I
EISCAT
/
SuperDARN
IQ
GOSAT
Si
Ca
MLT
Alfven
8
MESSENGER-BepiColombo
ULF
STE
GEMSIS-Sun
2011
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50
STE
STE
STE
STE
(STP)
2012
STE
16
STE
WDS
(
2
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(
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9
STE
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17
STE
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MHD
A. T. Y. Lui
R. J. Walker
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被災大学を支援する臨時「共同研究」
2011 年 3 月 11 日に発生した東北地方太平洋
ました。ふだんから学会や共同研究を通して交
沖地震により尊い命を失われた方々とそのご遺
流があることもあり、滞在中、東北大の大学院
族に深く哀悼の意を表します。また、被災され
生と所内のスタッフとの議論や共同研究が活発
た方々に、心よりお見舞い申し上げます。
に行われました。滞在した大学院生からは、震
この地震の影響で、東北地方を中心に多くの
災後も継続して研究を続けられることへのお礼
大学では、教育・研究活動の中断を余儀なくさ
の声とともに、共同研究がより一層進んだとい
れています。当研究所では、臨時「共同研究」
う感想が寄せられました。また、当研究所のス
公募を新たに追加実施し、旅費や研究環境の提
タッフ、大学院生にとっても、他大学の大学院
供を通して、地震や停電の影響で研究活動に支
生との交流は良い刺激になりました。
障がでている地域の研究者・大学院生の研究活
当研究所では、この臨時「共同研究」のシス
動を支援する取り組みを行っています。
テムが震災後の研究活動継続のために活用さ
この臨時「共同研究」のシステムを利用して、
れ、被災地の一日も早い復興への一助となるこ
東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻超高
とを願って、公募を引き続き行い、随時受け付
層グループの大学院生 9 名と村田准教授が、震
けています。詳しくは下記をご覧ください。
災後の 3 月末から同大学が再開する 5 月初めま
なお、この支援の取り組みについては朝日新
での約一ヶ月間、太陽地球環境研究所に滞在し
聞 (4 月 28 日夕刊 ) でも報道されました。
平成 22 - 23 年度 名古屋大学太陽地球環境研究所 臨時「共同研究」公募概要
本臨時「共同研究」で支援を受ける予定の研究分担者である学生や研究者は、申請書の研究組織に必ず氏
名などを記載してください。本臨時「共同研究」公募は下記に記載変更のある事項以外は通常の「共同研究」
公募要項に準じます。ただし、太陽地球環境研究所の研究施設や研究機能・基盤 (IT インフラや部屋など ) を
利用、又はネットワーク経由で利用することに対して事情の許す範囲で便宜を図ります。
受付・・・・随時
審査・・・・通常の「共同研究」公募要項と同じ
審査結果・・審査後できるだけ速やかに、所長から研究代表者あてに文書で通知
研究期間・・採択時から平成 24 年 3 月 31 日まで
1. 公募事項
本共同研究は、大学その他の研究機関に所属する研究者と本研究所の教員とが協力して次の形態の研究を
行うものです。
・太陽地球環境に関する共同研究
・太陽地球環境に関する観測機器、ソフトウェアの開発等に関する共同研究
・
「共同利用に関する事項※」に掲げる装置、施設等の共同利用
2. 申請資格者
・国、公、私立大学および国、公立研究機関の研究者、またはこれらに準ずる研究者
・本研究所長が特に適当と認めた者
※詳細につきましては、研究所のホームページにある要項をご覧下さい。
http://www.stelab.nagoya-u.ac.jp/ste-www1/news/kyodo/h23/kyodou2/H23kenkyuu-2.pdf
13
The evolution of CMEs and collaborations at STELab
Neel Savani, JSPS Postdoctoral Fellowships for Foreign Researchers
(from Imperial College London, UK)
Prior to arriving at STELab, I had just completed my
PhD from Imperial College London. During my studies
I investigated the morphology of coronal mass ejections,
CMEs, as they propagate between the Sun and the Earth.
I had predominately studied results from the wide-angle
cameras (the HI instrument) on the STEREO mission, but I
also studied the evolving shape from in situ measurements.
I came to STELab under a JSPS short term fellowship to
verify some of the assumptions used in my findings. As such
I have spent my seven month visit learning about heliospheric
simulations and working alongside Professor Kusano-san and
Shiota-san (from RIKEN).
I felt very fortunate to receive such amazing hospitality
while trying to settle into my new life in Japan. This made
the transition very simple and stress-free. The group within
STELab were especially helpful with their guidance from the
simple (e.g. how the rice cooker works) to the more complex
(e.g. intricacies of buying a hanko). I feel very lucky to have
seen some of the many beautiful sights in Japan. It has been
especially nice to be able to visit places like Kyoto during
different seasons of the year.
Top: Me enjoying plum blossom in Fukuoka, bottom left:
demonstrating my love of Japanese tea. Bottom right: at
the IPS observatory at the base of Mt Fuji.
My research at Nagoya University first started with
completing my analysis of the 2D cross-section of the CME
morphology as estimated from 1D in situ measurements.
This work incorporated many assumptions that related the
shape and structure of a CME to Earth’s magnetosphere.
In particular, it was suggested that if the shock stand-off
distance and the inflow Mach number were known then the
vertical size of the CME (perpendicular to the flow direction)
can be estimated. These assumptions may be sufficient for
planetary magnetospheres, but it is less clear if they remain
applicable to a structure that has a drastically different shape
or one that evolves over different heliospheric distances.
shock need to be modified for the ICME shocks; or perhaps
both distortions and a change in the empirical formulae are
required.
The work carried out at STELab has predominately
investigated the shape and structure of CMEs from a 2.5D
simulation code that propagates an axis-symmetric CME
within the MHD domain. Currently the solar wind is set to
behave without a magnetic field and is therefore behaving as
a HD plasma. We aim to find the correct empirical constant
previously implemented, and hope the constant remains
relatively simple by not varying with many dependant
variables such as distance, magnetic field strength, speed etc.
Simplicity in the formulism will then allow us to produce
a more accurate relationship from a generic 3D full MHD
simulation.
45 events measured in situ were analyzed over various
heliocentric distances and compared to geometrical
predictions. Although the scatter of the results is large, it is
clear that the average aspect ratio of the global structure is
less distorted than predicted. These results of smaller aspect
ratios may be caused by significant distortions to the CME’s
leading edge, which would imply the edge structure has a
smaller radius of curvature, thereby appearing to be more
circular. On the other hand, they may indicate the constants
generated by the empirical relationships for Earths bow
This work is still ongoing, so I have no doubts that further
collaborative research will follow, and that the friendships
I have formed will continue for many more years. I greatly
appreciate the opportunity to work within the STELab group.
14
さいえんすトラヴェラー
英国・ブリストル大学での研究生活
鈴木 博之 (大気圏環境部門・平成 22 年度終了生)
2010 年 11 月の約 1 ヶ月間、イギリスのブリス
トル大学で滞在研究する機会を頂きました。ブリ
ストル大学は、これまでにノーベル賞受賞者を 9
人輩出するなどイギリスを代表する大学の 1 つで
す。ブリストルはロンドンの西に位置し、電車で
約 2 時間の港町です。人口 40 万人程度で大都会で
はありませんが繁華街に行けば買い物には全く困
らないし、緑や川、海といった自然もすぐ近くに
感じることができる住みやすい町でした。平日は
大学に通い研究、夜はパブやクラシックコンサー
ト、週末はロンドンや温泉町で有名なバースで観
光、非常に思い出深い 1 ヶ月間になりました。今
回の研究室生活で様々な人と出会い ( 私の過ごし
た居室の 6 人は欧米や中東、アジアなど皆違う地
域の出身でした、多国籍! )、文化や物事の考え方
の違いを日々感じながら過ごした非常に有意義な
時間だったと帰国して改めて感じています。海外
での単身生活、加えて海外渡航と言えば大学の卒
業旅行で行った 2 泊 3 日の北京ツアーに次ぐ 2 回
目でビクビクしていた私が、今回の研究生活で感
じたことを少しですが書きたいと思います。
滞在した研究室では、レーザーと真空チャンバ
ーを用いた室内実験で分子の光解離に関する研究
を行いました。日本での私の研究は対流圏の窒素
酸化物やエアロゾルの大気観測でしたので、少し
違った分野を研究してきたことになります。その
研究室では、1 つの研究テーマを 3 人程度で取り
組み、教授を含めて実験の結果や考察を毎日共有
し議論し合いながら研究を進めていくスタイルで
した。研究スタイルには様々なものがあると思い
ますが、多数の人で研究を進めていくことで実験
ブ リ ス ト ル 大 学 の 象 徴 的 な 建 物 で あ る The Wills
Memorial Building。
はスピーディーになり、様々な考え方の上で実験・
考察が進んでいくと言う点で研究結果が効率的に
得られている印象を受けました。
また、研究でも飲み会でも学生と教授との距離
が近く、意見交換が活発にされ、良い意味で関係
がフランクな印象を受けました。学生は教授に対
しても自分の意見や考えを対等な立場で話し合っ
ていたように見えましたし、教授も然りという印
象です。お互いをファーストネームで呼び合う文
化などがありますから、日本人の私にとってお互
いの距離が近く見えていた部分もあったかもしれ
ません。しかし、毎日の午前・午後のティータイ
ム ( この時間に実験をしていると怒られる ) や週末
のパブなどの時間が、学生と教授が研究以外で触
れ合う時間となり、お互いの距離を近くする良い
コミュニティーの場になっているのだと思います。
滞在中は 9 時から 18 時までの研究を行い、それ
以降は研究室にほとんど人がいなくなる状況。話
には聞いていましたが、本当に 18 時以降は人がい
なくなりました。次の日に研究室に来ると「昨日
の夕方 ( 夜 ) はどう過ごした?」とあいさつとして
毎日聞かれ、イギリス人は研究室の後にもう一つ
の生活があるんだな~と感じる瞬間でした。朝 10
時から深夜まで研究室で過ごし、
「テレビを見て寝
た …」としか答えられない日本での自分の生活を
見直し、メリハリをつけて、ティータイムやプラ
イベートの時間をもつのもアリだな … と海外の学
生や研究者を見て感じました。
一緒に研究したメンバーと実験室にて。右が筆者。
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新人スタッフあいさつ
平原 聖文
観測においても、様々な地上観測を実施して
電磁気圏環境部門
教授
いる STE 研の方々とは、それ以前から衛星・
地上同時観測やデータ解析等で本格的な共同
研究を行い、実り多く刺激的な交流がありま
した。
STE 研への赴任に際し、太陽地球系物理学
の分野では国内最大の研究機関である一方、
4 月 1 日に STE 研に赴任しましたが、私自
私が取り組んできた飛翔体による宇宙空間プ
身、新任という感じが余りせず、所内でも、
ラズマ粒子の直接観測技術開発・データ解析
新任という程の新鮮な印象はない、という方
が STE 研では新規の研究教育活動であるとい
もおられるかと思います。というのも、2007
うことに大きな期待・抱負と責任を感じてい
年 4 月からは客員教員として受け入れて頂
ます。広義の宇宙開発に関しては、名古屋-
き、前々所属の立教大学で研究休暇を取得し
静岡の経済圏に重要な企業の中枢が点在し、
ていた同年 4 - 8 月は主にこちらに滞在し、
本学でも理学・工学の両面で活発な研究活動
9 月に東京大学に赴任した後も頻繁に出張・
が 展 開 さ れ て い ま す の で、2012 年 末 の 研 究
訪問していたからだと思います。私が参画し
棟新設も含め、STE 研の近未来に多少なりと
ている「れいめい」衛星による極域オーロラ
も貢献できればと思っている次第です。
私が STE 研 に入学するきっかけとなったのは、
宇宙飛行士・毛利守さんとの出会いでした。
「自分
ひとりでは宇宙にいけなかった、多くの人の支え
があるからこそだ」と、話されていたのがとても
印象に残り、宇宙飛行士を支える仕事に興味を持
ちました。それについて調べる過程で「宇宙天気
予報」を知り、
そして STE 研を知りました。つまり、
宇宙天気研究に興味を持ったのは、学問的に面白
そうだからではなく、宇宙飛行士の役に
立ちそうだからであり、ちょっと変
わった学生だったかも知れません。
入学して気づいたのが、宇宙天
気といっても一言でこれと言える
ものではなく、多様な研究領域が
あり、多岐にわたる知識が必要である
ことです。太陽・惑星間空間・地球磁気圏の
関係を基本としつつ、それぞれの領域でも詳細な
研究分野に分かれており、その知識の集大成が宇
宙天気予報だと知りました。私は、放射線帯を修
士論文のテーマとしましたが、その他の多岐にわ
たる分野の研究者が STE 研には多数在籍し、活発
な研究がなされています。宇宙天気を研究するに
は、素晴らしい環境であったと思います。
振り返ってみると、より広い視野で考えること
ができたならば、もっとさまざまな研究テーマに
挑戦できたのではと思います。また、STE 研の
研究者達とのフランクな関係、気さくに質問の
出来る環境をもっと有効活用すればよかったな、
と後悔しています。ぜひ、後輩達にはこの環境
を十分に活かして、研究を行っていただけたら
と思います。
私は、現在、宇宙航空研究開発機構で宇宙飛行
士の放射線被曝管理についての仕事をしておりま
す。被曝管理は、宇宙天気予報ととても
密接な関係にあります。宇宙天気予
報を活用し、放射線被曝から宇宙
飛行士を守ります。宇宙天気は
STE 研での活発な研究活動の一
つですが、そのような基礎研究が
あっての宇宙利用であると感じている
日々です。STE 研の皆様のこれからの研究の
ますますのご発展を期待しております。
最後に、素晴らしい研究者の下で最先端の研究
をさせて頂けたことは本当に幸せなことであり、
毛利さんの言葉通り、多くのスタッフに支えられ
た 2 年間の研究生活でした。新しい社会の中でも
STE 研での経験を忘れず、日々頑張って参ります。
ありがとうございました。
松村 智英美
(平成 22 年度修了生 )
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2010 年度 博士号取得者
Observational study on properties of photospheric magnetic field in the polar
region of the Sun
太陽極域における光球面磁場の性質に関する観測的研究
伊藤 大晃
可視光望遠鏡を用い極域磁場観測から、太陽活動極小
期近傍の極域磁場および、磁気フラックスの中長期変
動を詳細に解析することに成功した。
その解析の結果、
両極域の支配的な極性の磁場の割合は、高緯度になる
につれて増加傾向にあることが分かった。
本研究で得られた結果は、極域と静穏領域の光球面
磁場の分布、極域強磁場の微細構造、性質の相違や形
成過程を解明するための重要な示唆を与えた。
太陽極域は、歴史的に長期にわたって観測され続け
ているにも関わらず、未だに十分に理解されていない
重要な領域の一つである。しかしながら、太陽磁場の
極性反転のメカニズム、太陽風の加速機構やコロナホ
ールの形成のメカニズムはまだ解明されていない。太
陽ダイナモや太陽風加速のメカニズムを解明するた
めに、
太陽極域磁場の長期的観測は極めて重要である。
本研究では、
2006 年- 2011 年の間において「ひので」
An indirect search for WIMPs in the Sun and the Earth using upward-going
muon events in Super-Kamiokande
Super-Kamiokande における上向きミューオン事象を用いた太陽及び地球
方向 WIMP 間接探索
田中 隆之
本データセットにおいてはバックグラウンド源である大気
ニュートリノと比較して有意な WIMP イベントは観測されな
かった。そこで、WIMP 起源上向きミューオンフラックス及び
WIMP の反応断面積に対して上限値を算出した。結果、低
質量領域の WIMP に対して強い制限を与えることが出来た。
特に太陽での WIMP- 核子間の反応である spin-dependent
相互作用断面積に対する上限値に関しては広い質量領域で
競合する他実験に比べて良い制限を与えることが出来た。
宇宙に存在が予想されている暗黒物質の有力候補の
一つに WIMP という未知の素粒子がある。この WIMP
は太陽や地球の中心などの重力ポテンシャルの中心に
集積し、対消滅を起こして最終的にニュートリノを放
出すると考えられている。そこでニュートリノ検出器
である Super-Kamiokande の SKI-III (3109.6 日分 ) の全上
向きミューオンデータを用いて、太陽及び地球方向か
ら到来する WIMP 起源ニュートリノの探索を行った。
異 動
2011.4.1 - 2012.3.31 客員准教授
川原 琢也 ( 信州大学准教授 )
【教員】
2011.4.1 採用 教授
平原 聖文 ( 電磁気圏環境部門 )
2011.3.31 退職 助教
住 貴宏 ( 太陽圏環境部門、大阪大学へ )
前澤 裕之 ( ジオスペース研究センター、大
阪府立大学へ )
【外国人研究員】
2011.3.1 - 2011.5.31 客員教授
Jackson, Bernard Vernon (カリフォルニア大学研究員 )
2011.4.20 - 2011.7.20 客員教授
高橋 久夫 ( ブラジル国立宇宙科学研究所超高
層大気物理学部門上級研究員 )
【招へい教員】
2011.4.1 - 2012.3.31 客員教授
小寺 邦彦
柴崎 清登 ( 国立天文台教授 )
常田 佐久 ( 国立天文台教授 )
渡邉 堯 ( 茨城大学名誉教授 )
田中 高史 ( 九州大学名誉教授 )
小原 隆博 ( 独立行政法人宇宙航空開発機構宇
宙開発本部宇宙環境グループ長 )
【事務部】
2011.3.31 退職 事務部長
佐藤 重明
2011.4.1 昇格 事務部長
谷口 哲也(環境学研究科・地球水循環研究セン
ター事務長から)
2011.4.1 昇格 総務課専門員
棚瀬 隆夫 ( 総務課研究支援掛長から )
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2011.4.18 採用
川瀬 淳子 ( 電磁気圏環境部門 )
2011.4.1 配置換 総務課専門員
澤村 明都 ( 研究協力部研究支援課へ )
2011.4.1 配置換 総務課専門職員
山盛 正雄 ( 総務課第一庶務掛長から )
2011.4.1 配置換 総務課研究支援掛長
曽田 薫 ( 国際部国際学生交流課から )
2011.4.1 昇格 総務課人事掛長
松浦 啓介 ( 監査室から )
2011.4.1 配置換 総務課第一庶務掛主任
川口 雄大 ( 農学部・生命農学研究科へ )
【COE 研究アシスタント】
2011.4.1 採用
原 拓也 ( 総合解析部門 )
三宅 芙沙 ( 太陽圏環境部門 )
永井 雄也 ( 太陽圏環境部門 )
川出 健太郎 ( 太陽圏環境部門 )
内田 裕義 ( 太陽圏環境部門 )
福井 暁彦 ( 太陽圏環境部門 )
間瀬 剛 ( 太陽圏環境部門 )
2011.3.31 退職
伊藤 大晃 ( 太陽圏環境部門 )
【研究員】
2011.3.31 退職
齊藤 慎司 ( ジオスペース研究センター )
【研究機関研究員】
2011.4.1 採用
寺本 万里子 ( ジオスペース研究センター )
2011.3.31 退職
和田 龍一 ( 大気圏環境部門 )
【日本学術振興会特別研究員 PD】
2011.3.31 終了
松本 洋介 ( 総合解析部門 )
【日本学術振興会特別研究員 DC】
2011.3.31 終了
間瀬 剛 ( 太陽圏環境部門 )
田中 隆之 ( 太陽圏環境部門 )
福井 暁彦 ( 太陽圏環境部門 )
【事務補佐員】
2011.3.31 退職
岸田 純玲 ( 電磁気圏環境部門 )
STEL ニュースダイジェスト
功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の
意欲の向上を図り、科学技術水準の向上に寄与す
ることを目的とする科学技術分野の文部科学大臣
表彰の一種で、高度な研究開発能力を有する若手
研究者に与えられます。
「浮遊惑星」という新たな系外惑星の存在を発見
伊藤好孝教授 ( 太陽圏環境部門 )、阿部文雄
准教授 ( ジオスペース研究センター ) と大阪大
学住貴宏准教授を中心とする MOA グループは、
OGLE グループとの共同観測で、木星程度の質量
を持つ浮遊惑星が恒星と同じくらい多数存在して
いる事を発見しました。この惑星は、太陽系の惑
星の様に主星の周りを回っておらず宇宙空間を浮
遊していると考えられ、全く新しい種族です。
学生優秀発表賞(Outstanding Student PaperAward)受賞
辻裕司さん ( 総合解析部門 )
が学生優秀発表賞 (Outstanding
Student Paper Award) を 受 賞 し
ました。対象発表は Temporal
and spatial developments of global
ionospheric current associated
with storm-time overshielding 、2010 年 12 月 13
- 17 日にサンフランシスコ(アメリカ)で開催
された米国地球物理学連合(AGU)Fall Meeting
2010 で発表したものです。
平成 23 年度文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞
関華奈子准教授 ( 総合解析部
門 ) が、
「惑星起源イオンのダ
イナミクスに着目した太陽地
球環境の研究」の研究により、
平成 23 年度文部科学大臣表彰
若手科学者賞を受賞しました。
この賞は、科学技術に関する研究開発、理解増進
等において顕著な成果を収めた者について、その
編集後記
訃報
仲井猛敏氏 ( 名古屋大学名誉教授・元空電研究所 )
が、平成 23 年 4 月 17 日 ( 日 ) にご逝去されました。
謹んでご冥福をお祈りいたします。
3 月 11 日に発生しました東日本大震災に被災された方々には、心よりお見舞いを申し上げます。震災に伴い前
号の送付を見合させて頂いた一部の地域の皆様には、今回、前号を合わせて送付させて頂いております。(中山)
編集:名古屋大学太陽地球環境研究所 出版編集委員会 〒 464-8601 愛知県名古屋市千種区不老町 F3-3(250) TEL 052-747-6303 FAX 052-747-6313
STEL Newsletter バックナンバー掲載アドレス:http://www.stelab.nagoya-u.ac.jp/ste-www1/doc/news_book_j.htm
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