子牛の下痢止め薬の与え方

家畜技術情報
写真1 ペースト状の下痢止め薬
子牛の下痢止め薬の与え方
鶴居家畜診療所 茅 先 秀 司
下痢止め薬は、大抵の物が粉状になって市販されています。そのため、子牛に投与する場合、つい
ついミルクに混ぜてしまいがちです。薬を水に混ぜることは問題になりませんが、ミルクに混ぜると
十分な効果がでない場合があります。薬がミルクの成分と反応し、効果が打ち消されてしまうからで
す。ですから、ミルクとの反応を避けるため、食前(ミルクの投与前)や食間(ミルクが胃にない時
間帯)をねらって投与します。薬がミルクと混ざる前に、消化管に作用させるのが目的です。また製
品自体に複数の薬が混ざっているものは問題になりませんが、自分で数種類の薬を混ぜて与える場合、
薬同士で効果を打ち消し合って十分な効果が得られない場合があります。下痢止め薬の投与の基本は、
ミルク投与前に一種類の薬を水で溶かし投与することです。少量の水で薬を溶かし、ペースト状とな
った薬を口の中に塗り込むのも良い方法です(写真1)。私たち人間が病院でもらう飲み薬も、大抵
のものが水で飲み込むように指示されており、薬同士が効果を打ち消しあわないように処方されてい
るのです。釧路地区NOSAIで、農場の常備薬として勧めているものを中心に、薬の効果と使い方
を説明していきます。
パーロンK、ベリノール末など
収斂(しゅうれん)剤:薬が腸粘膜のタンパクと結合し、炎症を抑え、胃腸に病原菌や毒素が付着しないよう
にします。
制酸剤:胃酸を中和し、胃粘膜を保護します。
殺菌剤:胃腸の細菌を殺します。
使い方の注意点:タンパク凝固作用があるので、ミルクの投与前(または食間)に与えた方が効果的です。
またタンパクを成分とする他の薬(生菌剤、消化酵素剤)と混ぜない方が良いでしょう。
スーパーネッカリッチ、薬用炭など
吸着剤:胃腸の有害物質(悪玉菌、毒素、ガス)を吸着し、便と一緒に体外へ排出します。
使い方の注意点:ミルクに混ぜると、栄養分も吸着し排泄してしまいます。長期の連用は成長不良となりま
す。ミルクの投与前(または食間)に与えた方が効果的です。他の薬と混ぜた場合、薬を吸着するので、十
分な効果が得られない場合があります。
ビオペア
消化酵素剤:ミルクや飼料の消化を、酵素タンパクが助けます。白痢(ミルクの消化不良下痢)に有効です。
使い方の注意点:ミルクに混ぜることは問題になりませんが、容器の中で消化が始まり、固形物ができてし
まいます。単独での投与がお勧めです。タンパク凝固作用のある収斂(しゅうれん)剤と混ぜない方が良い
でしょう。
ウルソ散
利胆剤:肝臓からの胆汁分泌を促進したり、直接脂肪に作用し消化吸収を助けます。白痢(ミルクの消化不良
下痢)に有効です。
使い方の注意点:容易に他の物質と結合します。ミルクの投与前(または食間)に単身で与えます。
ビオスリー、宮入菌末、サルトーゼなど
生菌剤:いわゆる善玉菌。悪玉菌(病原性大腸菌など)の増殖を抑えます。
使い方の注意点:薬の中で最も副作用がなく、安心して使えます。ミルクと混ぜても問題ありません。殺菌剤
や抗生剤と混ぜては、せっかくの善玉菌が弱ってしまいます。
ワイドシリン、グレビオマイシン散、バクテロン散、ホスミシン細粒など
抗生剤:悪玉菌を殺す、もしくは増殖を抑えます。
使い方の注意点:ミルクの成分と反応する抗生剤もあるので、ミルクの投与前(または食間)に単身で与え
ます。また抗生剤は、悪玉菌だけでなく、善玉菌も殺します。生菌剤と混ぜては十分な効果が得られません。
新中森獣医散
民間薬:昔から使われてきた健胃・整腸に効果のある天然の薬草。ミルクや他の薬との相性は不明瞭なので、
単独での使用が好ましい。
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かけはし 203