EU 離脱直後の経済インパクト! 英ポンド「12~15%」安の

【2016年5月25日公開】
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
~丸わかり! ロンドン発★欧州経済事情~
「松崎美子」が注目テーマを一刀両断!
『EU 離脱直後の経済インパクト!
英ポンド「12~15%」安のシナリオへ』
執筆者:(ロンドン在住/元為替ディーラー)
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
英国の EU 離脱の是非を問う国民投票まで 5 週間を切った先週、英国財務省は新しい分析レポ
ートを公開した。先月発表された「EU 離脱後の中長期に渡る経済インパクト」に関するレポートに
続き、今回は「離脱直後の経済インパクト」に的を絞っているのが特徴である。
90 ページに渡るレポートを読んだ感想を元に、ここからのポンドについて考えてみたい。
●保守党による対決
6 月 23 日の投票日まで残り1カ月となった今、テレビやラジオをつけるたびに、残留/離脱それ
ぞれのリーダー的存在である政治家のインタビューや発言が飛び出してくる。残留支持の代表と
して、「キャメロン首相」と「オズボーン財務相」。離脱のリーダーは、「ボリス・ジョンソン」元ロンドン
市長と「ゴーブ司法相」である。皮肉なことに、この 4 名全員が与党:保守党に所属しているため、
保守党のカラーであるブルーをもじり、『ブルー対ブルーの対決』と呼ばれている。
キャメロン首相は EU 残留となった場合を想定し、『ブルー対ブルーの対決』による打撃を最小限
に食い止めるため、今後予定されている TV 討論会では、保守党員同士の 1 対 1 のライブ討論は
避けることを発表した。そのため、キャメロン首相 vs ゴーブ司法相の一騎打ちは、日にちをずらし
てのライブ放送に変更。オズボーン財務相vsボリス・ジョンソン氏の対決では、残留/離脱ともに 3
名ずつの支持者による合同討論会となった。
●英財務省:EU 離脱直後の経済へ与える影響に関する分析レポート
(以下レポートアドレス)
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/524967/hm_treasury_analys
is_the_immediate_economic_impact_of_leaving_the_eu_web.pdf
財務省は先週、「EU 離脱(Brexit)直後の経済インパクト」に的を絞った分析レポートを発表した。
90 ページに及ぶこのレポートでは、あらゆる角度から Brexit 決定直後から 2 年間の間に英国が直
面するであろう経済的打撃について分析している。
それによると、英国経済が直面する最初のハードルは、3 つあるとし、以下のリスクが挙げられて
いた。
■移行に伴うリスク
→EU との貿易や投資などの規制を巡る問題。
■不透明感によるリスク
→今まで経験したことがない Brexit に直面した英国が、どのような進路を歩むのか?経済的に
どのような影響を受けるのか?など、あらゆる種類の不透明感。
■金融市場のボラティリティーによるリスク
→Brexit を受けて、マーケットのボラティリティーは否が応でも高まる。
チャート:英財務省「EU 離脱直後の経済へ与える影響に関する分析レポート」(18 ページ)
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/524967/hm_treasury_analysis
_the_immediate_economic_impact_of_leaving_the_eu_web.pdf
オプションでは、「英ポンド/米ドル」のボラティリティーが既に相当高くなっているが、Brexit 後のマ
ーケットは今まで以上に荒れるだろうというのが財務省の結論である。
●インパクトの度合い
財務省は Brexit 後の経済や金融市場が受けるであろうインパクトを分析し、以下の数字を載せ
ている。
データ:英財務省「EU 離脱直後の経済へ与える影響に関する分析レポート」(9 ページ)
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/524967/hm_treasury_analysis
_the_immediate_economic_impact_of_leaving_the_eu_web.pdf
為替に関わる私たちにとって一番重要なのが、黄緑の星をつけた「ポンド実効レート」の部分で
ある。ショックの度合いがあまり強くなくても、12%のポンド安。ショックが強かった場合は、15%のポ
ンド安となるようだ。一部の民間銀行は、Brexit 後のポンドは最大 15~20%急落するという内容の
顧客レポートを出しているが、それと似たような数字となっている。
仮に国民投票が実施された日の「英ポンド/米ドル」が 1.4500 ドルだったとすれば、ポンド実効レー
トが 12%下がると、単純計算で 1.2760 ドルとなる。15%下落だと 1.2325 ドルだ。ここでは実効レート
の細かい説明は省くが、実効レートが 12%下落するということと、「英ポンド/米ドル」が 12%下がる
こととは、同じでない。あくまでも「大まかな目安」として、そのあたりまで下がってもおかしくない…
ということを、ここでは示しただけである点、理解して頂きたい。
●6 月 23 日までのポンド相場
ここから投票日までの 1 カ月間のポンド予想をするのは、正直不可能である。今週 26 日を皮切
りに、来月の投票日までに、BBC と民放あわせて少なくとも 7 回の TV 討論会が放映される。そこ
で残留/離脱支持の代表者が失言などをすれば、世論調査結果が大きく変わり、それによってポ
ンドは乱高下するだろう。
最近のポンド動向を大きく左右していると考えられるのが、シカゴ・マーカンタイル取引所の IMM
通貨先物・取組残高である。4 月 19 日に 55,152 コントラクトのショート(売り越し)となり、それ以降
徐々にショートが減少し、結果としてポンドが上昇してきていた。しかし、ここにきてまたショートが
増えている。
もし今後発表される世論調査で残留が離脱に大きく差をつけて伸びるようなことがあれば、当然
ポンドのショート・カバーが入らざるを得ない。その逆に、例えば今週木曜日の第 1 回目の TV 討
論会で残留支持グループが失言などをした場合は、離脱支持が大きく伸びるだろう。
結論からいうと、もし今週特にポンド売りの材料がでなければ、IMM でのショートポジションのまき
戻しを受け、ポンドはひとまず対クロスで底堅い推移となるイメージを持っている。
これは「ユーロ/英ポンド」の日足であるが、12EMA(ピンクのライン)が通る 0.7790 ポンド台を上抜
けしない限り、そこまで引きつけながら、ベガス・トンネル(144/169EMA:青と緑のライン)が通る
0.7630/70 ポンド台へ向けて売ろうと考えている。
-------------------------------------------------------------------------------【執筆者:松崎美子氏(ロンドン在住/元為替ディーラー)プロフィール】
東京でスイス系銀行 Dealing Room で見習いトレイダーとしてスタート。18 カ月後に渡英決
定。1989 年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店 Dealing Room に就職。1991
年に出産。1997 年シティーにある米系投資銀行に転職。
その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、
証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。
-------------------------------------------------------------------------------【本レポートの趣旨】
本レポートは松崎美子氏より発行されているレポートであり、情報提供のみを目的として
おります。
本レポート中のコメントは独自の見解に基づいたものであり、松崎美子氏、およびワイジ
ェイFX株式会社共にレポート中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明
示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。
また、本レポート内のコンテンツ、データに関する著作権はワイジェイFX株式会社に帰属
しております。
コンテンツ、データ等は私的利用の範囲内で使用し、無断転載、無断コピー等はおやめく
ださい。
さらに、かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、松崎美子
氏、およびワイジェイFX株式会社は一切責任を負いません。
最終的な投資判断は、他の資料等も参考にしてご自身の判断でなさるようお願いいたしま
す。