国際機関日本アセアンセンター 企業人・駐在員のためのASEAN各国経済史 ASEAN発展の歴史 2013年7月29日 亜細亜大学アジア研究所 石川幸一 本日の内容:地域協力機構とし てのASEANの発展の歴史 ASEANの歴史 経済協力・統合の歴史 ASEAN経済共同体形成の現状 域外との経済統合 ASEANの課題 ASEAN発展の歴史 「存続」が危ぶまれていたASEANはなぜ 発展できたのか? 環境変化(脅威・機会)への対応能力 ASEAN発展:環境変化(脅威・ 機会)への対応の歴史 ASEANの略史 国際およびアジアの環境 1967年8月8日ASEAN創設(バンコク宣言) ・ベトナム戦争、中国の革命外交、マレーシアを巡る対立とその 解決(~1965) ・英軍アジア撤退、米中和解、中国国連加盟 ・石油危機、北ベトナムによる統一、インドシナ社会主義化 ・ベトナムのカンボジア侵攻 ・プラザ合意(1985)、日本企業のアジア進出急増、対中投資 ブーム、EU成立、NAFTA合意 ・東西冷戦終焉、カンボジア和平 1971年平和自由中立地帯(ZOPFAN)に関する宣言 1976年第1回首脳会議、ASEAN協和宣言、東南アジア友好協力 条約(TAC)、域内経済協力 1992年第4回首脳会議、AFTA合意 1995年ベトナム加盟、AFAS署名 1997年ラオス、ミャンマー加盟 1997年ASEANビジョン2020、第1回ASEAN+3首脳会議 1999年カンボジア加盟(ASEAN10の成立) 2003年第9回首脳会議、ASEAN第二協和宣言(ASEAN共同体を 2020年に実現) 2005年第1回東アジアサミット 2007年ASEAN憲章採択、ASEAN経済共同体(AEC)ブループリン ト採択、ASEAN共同体2015年に前倒し 2010年AFTAの実現(ASEAN6)、ASEAN+1FTAネットワーク 2011年東アジアサミットに米国、ロシア参加(ASEAN+8) 2013年RCEP交渉開始 2015年12月末ASEAN経済共同体実現 ・アジア通貨経済危機(1997) ・同時多発テロ(2001)、イラク攻撃(2003)、中国インドへの注目 ・世界金融危機(2008) ・TPP交渉開始(2010)・米国のアジア回帰 ASEAN創設前の状況 東西冷戦、アジアの戦争(朝鮮戦争、第一次インドシナ 戦争、第二次インドシナ戦争)、共産主義の脅威とドミノ 理論 マレーシア連邦(1963年)を巡る対立:①フィリピンとの領 土紛争、②インドネシアのマレーシア対決政策、③シンガ ポールの分離独立 東南アジアの協力機構構想:東南アジア連合(ASA:マラ ヤ連邦、フィリピン、タイ、1961年)、マフィリンド(マラヤ連 邦、インドネシア、フィリピン、1963年) インドネシア、フィリピンの政権交代とマレーシアとの対 決策の転換 ASEANの創設 1967年8月8日、バンコク宣言に5カ国(インドネ シア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タ イ)外相が署名 バンコク宣言:①経済成長・社会進歩・文化発展 の加速、②平和・安定、③協力と支援、④年次外 相会議の開催 バンコク宣言の特徴:法的根拠が薄弱、内容・機 構が曖昧(通常は条約・協定に依拠し目的活動 などを具体的に記載) ビルマとカンボジアは参加を拒否(非同盟政策) 脅威・機会への対応(1) 英軍のスエズ以東からの撤退(1967~68年)、米国グア ム・ドクトリン(米軍の東南アジア大陸部からの撤退方針 1968年)、米中和解(1971年)→東南アジア平和自由中 立地帯(ZOPFAN)宣言(クアラルンプール宣言) 北ベトナムによるベトナム統一インドシナ3国の社会主義 化(1975年)→第1回ASEAN首脳会議開催、ASEAN協和 宣言、東南アジア友好協力条約(TAC)、事務局設置 ASEAN協和宣言:①政治的安定のための協力、②政治、 経済、社会、文化・情報の4分野の協力(経済分野では 工業化、貿易協力など)、③ASEAN共同体を目的として あげている TAC:①紛争の平和的処理、②内政不干渉、③地域協 力:TACは東アジアサミット参加の条件となる 脅威・機会への対応(2) 1985年プラザ合意による円高ドル安(ASEAN通 貨安)と日本からの直接投資の急増→BBCス キームの採用(88年)とマニラ宣言による「集団 的外資依存型輸出指向型工業化」戦略の転換 中国の経済的台頭と対中外資ブーム、EU共同 市場(1993年)NAFTA創設(1994年)→AFTA合 意(92年)と発足(93年) 第3次インドシナ戦争の終了とカンボジア和平 (1991年:戦場から市場へ)CLMVの市場経済化 →CLMVのASEAN加盟とAFTA参加、GMS開発の 開始(戦場から市場へ) 脅威・機会への対応(3) 1997~98年アジア通貨経済危機→ASEAN経済統合の 加速(ハノイ行動計画)、ASEAN+3首脳会議、チェンマ イ・イニシアチブ(2000年) 中国の急成長とASEANへの積極外交、WTO交渉停滞と 世界大でのFTA増加、アジアの実態的な統合と生産ネッ トワークの形成→ASEAN+1FTAの交渉・締結、東アジア FTA構想(ASEAN+3、ASEAN+6)、ASEAN中心主義 中国・インドの台頭と外資の中印への関心→ASEAN第2 協和宣言、ASEAN経済共同体創設決定(2003年) 米国のアジア回帰とTPP→RCEP提案(2011年) ASEANの歴史:小括 環境変化への適切な対応と加盟国経済の順調な発展 拡大と機能の変化:5カ国から10カ国へ、東南アジア地域 の安全保障、政治的安定に加え経済統合・共同体へ 一貫してきた目的と規範 目的:①地域の平和と安定、②地域経済統合、③地域の 課題と問題に取組むための協力 規範:①武力・威嚇の使用の放棄、②紛争の平和的解決、 ③内政不干渉、④全会一致(コンセンサス方式) 現在:自己変革の時期 経済協力・統合の歴史 ①環境変化への対応、②機会の活 用、③無理せず緩やかに進める 経済協力の進展 第1段階:1976年から80年代前半の経済 協力:3つのプロジェクトと挫折 第2段階:1992年から2003年まで:AFTA による貿易自由化の進展、サービス、投資 の自由化 第3段階:2003年から2015年:経済共同体 創設、ASEAN域外とのFTA、RCEP 第4段階:Beyond 2015 1.70年代の域内経済協力 1973年石油危機と世界不況(新たな成長戦略の模索)、 途上国の経済協力・統合が開発戦略として注目(南北問 題)、インドシナの社会主義化(政治的安定のための経 済協力) 1976年の第1回首脳会議の「ASEAN協和宣言」で「国連 報告」の提言を域内経済協力として実施することを明ら かにする 国連報告「ASEAN加盟国における経済協力」(1972年): 貿易自由化により域内に大規模な市場を創出し加盟各 国が協力・分担して資本集約的な工業を育成する 中南米のLAFTA(1960年)の経済統合をモデルとした(選 択的貿易自由化と相互補完協定) 3つの経済協力施策 ASEAN共同工業プロジェクト(AIP:1976年):①各国が共同出 資し新規大規模プロジェクトを分担設立、製品にPTAにより特恵 関税適用(尿素肥料、ディーゼルエンジンなど8つのプロジェク ト)、日本から10億ドルの援助、②実現したのはインドネシアと マレーシアの尿素肥料プロジェクトのみ、③各国の利害対立な どで失敗 ASEAN工業補完協定(AIC:1981年):①特定工業製品を4国以 上の民間企業が分担生産しASEANを市場としてPTAにより特恵 を与え規模の経済の利益を得る、②「ASEANカー」構想により各 国に部品を割当(インドネシア:ディーゼルエンジンなど)、③一 部を除き実行されなかった(利害対立、多国籍企業を利するこ とへの警戒) ASEAN特恵貿易協定(PTA:1977年):①基礎的産品、AIP製品、 AIC製品を対象、②譲許率は10%から20-25%に拡大(一部 は50%)、③対象品目は71から1万以上に拡大、④除外品目が 多く(タイ63%など)形式的特恵供与で失敗との評価 失敗の理由およびAJIV 各国の利害対立:相互依存関係でなく競合関係、 輸入代替工業化の枠組みでの協力、強い経済 ナショナリズムと外資への警戒感、外資政策の 違い ASEAN工業合弁事業(AJIV:1983年):①3事業 が成果がなかったため緩やかな条件とした、②2 カ国以上の参加、4年間の関税50%譲許、3年間 の独占生産(新規の場合)、③外資の参加(49% まで)を認める、④15を認可・4小規模プロジェク トが稼動など成果は小さい 2.BBCスキーム ブランド別自動車部品相互補完流通計画(Brand to Brand Complementation) 1982年三菱自動車工業提案、87年にBBC実施決定、88年 覚書調印 自動車メーカーがASEAN内で部品の相互補完を行なう:① 原産地規則(付加価値50%以上、②最小50%の特恵供与、 ③マレーシア、タイ、フィリピンが参加(インドネシアは1995 年参加) 三菱自工、トヨタ、日産、ホンダほかベンツ、ボルボなどが 参加 着実に実施された:①生産効率化(投資重複を避け規模の 経済実現)、②85年以降の円高対応(日本からの輸入 →ASEAN域内相互供給)、③自動車産業の発展に寄与、 ④対日貿易赤字の低減 AICを改善する計画でありAICOに発展した 3.経済統合に向けて(1992年 以降の経済協力):AFTA 冷戦の終結、GATT交渉の難航、地域統合の興隆(EU、NAFTA、メルコ スール)、中国への投資急増、EAEC提案 1992年第4回首脳会議「ASEAN経済協力強化のための枠組み協定」① AFTAの15年以内創設、②共通効果特恵関税制度(CEPT)協定 1993年に開始、15年で域内関税を0-5%に削減、当初は製造業品のみ だったが1994年に原材料と未加工農産品を追加し全品目を対象 原産地規則は累積付加価値40%基準、その後関税番号変更基準を追加、 互恵主義を採用 1994年、98年にスケジュールを前倒し2002年(一部は2003年)に0-5% に削減 1999年に関税撤廃時期を2010年(ASEAN6)と2015年(CLMV)とする 2009年にCEPT協定に代わるASEAN物品貿易協定(ATIGA)を締結 2010年1月に計画通りASEAN6は関税を撤廃した 現在、ASEAN6の自由化率は99.3%、域内関税率は0.95%(92年は 12%) ATIGA CEPT協定に代わる自由貿易協定として2009年に調印、 2010年5月発効 CEPT協定は10条の短い協定だったがATIGAは98条の 包括的協定:AFTA関連規定・制度を整理統合 関税撤廃スケジュール、非関税障壁、原産地規則につい て詳しく規定 貿易円滑化、税関、基準・認証、衛生植物検疫、貿易救 済措置などCEPTにない規定を追加 透明性、詳細な規定、ルールなど経済共同体の市場統 合のベースとなる協定 AICO ASEAN 産業協力スキーム(ASEAN Industrial Cooperation) BBCを改善・拡大するとともにAFTAを個別企業ベース前 倒しで実施 1996年に基本協定締結 個別企業のASEAN域内分業に0-5%の特恵関税を適 用 当初は現地出資比率30%以上の条件だったが1998年 以降適用停止、貿易均衡などの条件が付される AFTAの実施により適用関税率を削減(0%など) 自動車、家電など日系企業を中心に多くの多国籍企業 が利用 サービス貿易の自由化(AFAS) 1995年にASEANサービス枠組み協定(ASEAN Framework Agreement on Service: AFAS)締結 4つのモード(①サービスの越境、②消費者の越境、③商業拠点の越境、④ 供給者の越境)を対象 相当な数の分野について、①実質的に全ての差別を撤廃(内国民待遇)、② 市場アクセス制限を撤廃 WTOのサービス貿易協定(GATS)での自由化約束を超えた自由化を約束 (GATSプラス) 対象:ASEAN加盟国の自然人と法人、非加盟国の法人(外資)は実質的な 事業を行なっていれば対象となる ポジティブ・リスト方式で交渉、現在、第8パッケージまで終了(80分野)し、第 9パッケージの交渉開始 航空輸送と金融は別途交渉 AFASを国際水準の包括的な協定とするべく改定(2015年目標)を進めてい る 投資の自由化 1998年、ASEAN投資地域(ASEAN Investment Area: AIA)協定締結 2010年までにASEAN域内投資、2020年までに域外投資 に全産業を自由化し投資家に内国民待遇を付与 投資保護を目的に1987年に締結されたASEAN投資保護 協定(AIGA)とAIAを統合したASEAN包括的投資協定 (ACIA)を2009年に締結 ACIAは特定措置の要求の禁止、ISDS条項など国際レベ ルの投資協定となっている ACIAは2012年3月発効 1997年の危機とハノイ行動計画、 ASEANビジョン2020 1997‐98年のアジア通貨危機で経済は大打撃 (インドネシアは-13.1%成長、スハルト政権崩 壊) 一部に保護主義的な措置の採用があったが ASEANとしては自由化加速に合意 1997年ASEANビジョン2020:「平和安定繁栄、ダ イナミックな発展における連携、思いやりのある 社会の共同体」 1998年ハノイ行動計画(HAP):①AFTAの実施前 倒し、②投資環境改善、③AICOの改善 4.ASEAN第二協和宣言と ASEAN共同体 2003年第9回首脳会議「ASEAN第二協和宣言」 3つの共同体(政治安全保障共同体:APSC、経済共同 体:AEC、社会文化共同体:ASCC)から構成されるASEAN共 同体を2020年に創設(2007年に2015年に前倒し) AECはシンガポール、APSCはインドネシア、ASCCはフィリ ピンが提唱 2004年:ビエンチャン行動計画 2007年:AECブループリント 2009年:APSCブループリント、ASCCブループリント 2015年12月末 ASEAN共同体完成 ASEAN経済共同体 ASEAN経済共同体:①物品、サービス、投資、資本、熟練労働者の 自由な移動、②単一の市場と生産基地、③グローバルなサプライ・ チェーンの強力な一部 中国とインドの台頭と外資の増加、世界大での地域統合の推進、ア ジアの生産ネットワーク形成、東アジアの地域協力の気運増大 AECは外資誘致を大きな目的としている(AFTAと同様) ビエンチャン行動計画(2004年) 優先統合分野枠組み協定(2004年) AECブループリント(2007年) ASEAN連結性マスタープラン(2010年) 分野別の行動計画(例:輸送はブルネイ行動計画) スコアカードによる実施状況チェック(2010年、2012年) ベースとなる協定:ATIGA(貿易)、AFAS(サービス)、ACIA(投資)、 AMNP(人の移動) ビエンチャン行動計画と優先統 合分野枠組み協定 2004年ビエンチャン行動計画を採択 2004-10年の中期行動計画:APSCは5、AECは12、 ASCCは4の戦略目標 2004年優先統合分野枠組み協定:11の優先統合分野で の自由化などの措置を明示 優先統合分野:①農産物加工、②自動車、③エレクトロ ニクス、④漁業、⑤ゴム製品、⑥繊維・衣類、⑦木製品、 ⑧航空、⑨e-ASEAN、⑩ヘルスケア、⑪観光:後にロジス ティックスを追加 物品の貿易:ASEAN6は2007年1月、CLMVは2012年1月 までに関税撤廃 サービス貿易、投資、貿易円滑化なども自由化の加速を 規定 ブループリント:4つの戦略目標 と17の行動分野 2007年第13回首脳会議で採択:AEC実現へのマスタープラン・工程表 (2008~15年まで2年毎の4フェーズ) 17のコアエレメントと77の措置 Ⅰ単一の市場と生産基地:①物品の自由な移動、②サービスの自由な移動、 ③投資の自由な移動、④資本の自由な移動、⑤熟練労働者の自由な移動、 ⑥優先統合分野、⑦食料・農業・林業→市場統合 Ⅱ競争力のある経済地域:①競争政策、②消費者保護、③知的財産権、④イ ンフラ開発、⑤税制、⑥電子商取引→インフラ整備(輸送・エネルギ-・IT など)・共通政策 Ⅲ公平な経済発展:①中小企業、②ASEAN統合イニシアチブ→格差是正 Ⅳグローバルな経済への統合:①対外関係における一貫したアプローチ、② グローバル・サプライ・ネットワークへの参加→対外FTA 市場統合:物品の貿易 レベルの高い自由貿易地域(FTA)の実現:関税撤 廃は実現、非関税障壁撤廃は難しい 原産地規則を満たした物品が対象、税関検査は残 る 政府調達は対象外 一部品目に製品規格の相互承認(電子電気機器、 化粧品、薬品、医療機器)、木製品・ゴム製品の強 制規格・任意規格の導入 貿易円滑化:通関手続きなどの窓口の一本化と電 子化(シングル・ウィンドウ)を主要港で実施 市場統合:サービス、投資、人の 移動 ① サービス貿易の全分野自由化が目標:AFASにより推進 第1モード(サービスの越境)、第2モード(消費者の越境)は自由化、第 3モード(業務拠点の越境)は外資出資比率制限(70%)が残る、第4 モード(供給者の越境)は熟練労働者・専門家 ただし、15%例外条項がある AFASの改定 ② 投資の自由化:投資規制は最小限が目標、投資前と後の内国民待遇、 投資家の移動の自由:ACIAにより推進 資本の移動:資本市場の統合を進める(ASEAN Exchanges) ③ 人の移動:熟練労働者の移動自由化、専門サービスの資格の相互承 認、域内旅行自由化 2012年11月自然人の移動協定(ASEAN Agreement on Movement of Natural Persons: AMNP)調印:熟練労働者の移動(単純労働者は対象 外) 輸送・エネルギー協力 陸上輸送の円滑化(3つの輸送円滑化協定) 単一航空市場(オープンスカイ)、単一海運市場の取 組み インフラ整備 ①ASEAN高速道路網(AHN)の完成(2020年) ②シンガポール昆明鉄道(SKRL)の完成(2020年) ③ASEAN電力網、ASEANガスパイプラインへの取 組み ASEAN経済共同体(AEC)の市場統合の目 標は経済連携協定(EPA)に類似 EU AEC EPA 関税撤廃 ○ ○ ○ 非関税障壁撤廃 ○ ○(*) △ 貿易円滑化 ○ ○ ○ 域外共通関税 ○ × × 規格相互承認 ○ △ △ サービス貿易自由化 ○ ○(*) ○ 投資自由化 ○ ○ ○ 続き EU AEC EPA ○ △ △ 知的所有権保護 ○ ○ ○ 政府調達開放 ○ × △ 競争政策 ○ △ △ 域内協力 ○ ○ ○ 共通通貨 ○ × × 人の移動 ASEAN連結性マスタープラン 2010年第17回首脳会議で採択 ASEAN経済共同体ブループリントを補完・補強 3分野で主要なプロジェクトをあげる(一部は目標年次を 2020年に延期) 物的連結性:ハードインフラ整備(輸送、ICT、エネル ギー) 制度的連結性:ソフトインフラの整備(貿易自由化・円滑 化、投資・サービス、MRA、輸送協定、越境手続き、能力 醸成) 人と人の連結性:人の移動の円滑化(教育・文化、観光) ASEAN連結性マスタープラン: 主要プログラム ASEAN高速道路網:未接続部分(ミャンマー227キロ)の完成、通過輸送道路の3級以 下道路(2069キロ、ミャンマー、ラオス、フィリピン)を3級に格上げ(2012年) シンガポール昆明鉄道:未接続・要修復部分(4069キロ)の建設・修復:CLMVに多い: カンボジア:ポイペト-シソフォン(48キロ2013年)など 統合され効率的で競争力のある海運システム:Ro Ro船ネットワークを含む大陸部と 島嶼部を結ぶ航路の創設(2015年) ASEANを東アジアの輸送のハブとする統合され継ぎ目のない複合一貫輸送システム の創設:東西経済回廊(ミャンマーの未接続部分、ダナンとヤンゴンのターミナル港)、 メコンーインド経済回廊(ネアックルアンのメコン橋、ダウェイ深海港2020年)、カンチャ ナブリーダウェイ高速道路2020年) 輸送協定:3つの協定(通過物品、複合一貫輸送、国家間輸送円滑化)の批准、同議 定書の批准 ASEANシングルウィンドウ:選ばれた港湾での実施(2015年)、手続き費用を2013年 までに20%、2015年までに50%削減を目標に簡素化、包括的で相互適用可能な税 関規制枠組みの導入(2014年) 人の移動:①ASEAN域内旅行のビザ免除(2012年)、②域内観光促進、③ICT資格の MRAと実施(2015年) 非関税措置:最新の国際分類を利用するデータベースの更新(2015年)、輸入許可手 続きと数量制限のガイドライン(2014年)、非関税障壁撤廃と許容できる非関税措置 の影響の最小限化(2014年) ASEAN憲章 従来のASEAN:緩やかで法的な基盤が曖昧:外相宣言により設立、 外相会議が最高意思決定機関、基本条約の欠如、ASEAN Wayと呼 ばれる意思決定・運営方式 ASEAN憲章:ASEANの基本条約、2007年署名、2008年発効 ①法人格を付与、②共同体創設を目的として明確化、③首脳会議が 最高意思決定機関(年2回)、④意思決定(全会一致、出来ない場合 は首脳会議で決定)など 意義:存立基盤の明確化と強化、目標・基本原則・ルールなどの明 確化 多数決方式、罰則規定は採用されず:インドネシア、フィリピンなどと 新規加盟国の対立 ASEANの組織・制度の整備:首脳会議、調整理事会、3つの共同体 理事会、大使級の常駐代表委員会、事務局機能強化など 経済格差是正 ASEAN6とCLMV大きな経済格差:一人当たり所得(2010 年)で最大60倍の格差 格差是正:ASEANの統合維持、求心力維持と発展のため の大きな課題 ASEAN6の地域における格差是正も課題: ASEAN内のサ ブ・リージョナル(局地的)な協力(BIMP-EAGA、IMT-GT) ASEAN統合イニシアチブ(Initiative for ASEAN Integration: IAI)を実施しているが小規模・人材育成など が中心 ハードのインフラ整備は、ASEAN連結性マスタープランと GMSプログラム(経済回廊構想)、2国間協力で実施 外資の進出、輸出増加でCLMVはASEAN6より高い成長を 実現→徐々に格差は縮小 ASEAN経済共同体の現状 スコアカードによる評価 スコアカードによるフェーズ1、フェーズ2の実行率評価 (2008年~11年)は67.5% 最新の評価は77.5%(2013年4月の首脳会議報告) 自己申告制 協定や行動計画の承認、採択(各国での批准や承認)の 段階の措置が多い 国別の実行状況に大きな差はない(CLMVが大幅に遅れ ていることはない) 各国で措置が実行<施行>されているかが重要 ERIA(東アジア・ASEAN経済研究所)で実行状況を調査 中(要旨のみ公表) スコアカード実行率(2011年12月) フェーズ1 フェーズ2 (2008~2009) (2010~2011) 単一の市場と 生産基地 93.8% 49.1% 65.9% 競争力のある 経済地域 68.7% 67.4% 67.9% 公平な経済発 展 100% 55.5% 66.7% グローバルな 経済への統合 100% 77.8% 85.7% フェーズ1およ び2 (出所)ASEAN Secretariat(2012) ASEAN Economic Community Scorecard 2015年末までに実現するのか 2015年末で100%目標達成は無理 自由貿易地域(FTA)を含め相当実現する サ-ビス貿易(第3モード、第4モード)、投資(最 小の規制)などは自由化できない分野が残る 非関税障壁やASEANシングル・ウィンドウなどは 困難 政府調達は対象外(TPPとの関係) インフラ整備(道路、鉄道など)は資金調達と制 度面の国内調整 一部は2020年が目標年次となる RCEPは実現 域外との経済統合 グローバル経済との統合 グローバル経済との統合は順調に進展している分野 グローバルなサプライチェーンの一部とする 中心になっているのは5つのASEAN+1FTAで2010年1月 に実現あるいは発効(ASEAN+1FTAネットワークの完 成) 二国間FTA、域外とのFTA(EUを含む)も進展 東アジア経済統合ではASEANは「運転席に座る(ASEAN 中心性)」を意図してきた 今までは成功:ASEAN+1、ASEAN+3、ASEAN+6、 ASEAN+8 TPP交渉開始で広域FTA交渉が現実的な課題となり RCEPを提案、2013年から交渉開始 5つのASEAN+1FTA 中国(ACFTA):2005年発効、2010年1月中国、ASEAN6 は関税撤廃、CLMVは2015年、サービス協定、投資協定、 基準・認証と衛生植物検疫規定を追加 韓国(AKFTA):2007年発効、2010年1月韓国とASEAN6 完成撤廃、サービス協定、投資協定 インド(AIFTA):2010年発効、サービスと投資は合意 豪州・ニュージーランド(AANZFTA):2010年発効、包括的 協定(政府調達は含まず) 日本(AJCEP):2008年発効、CLM以外の7カ国とは二国 間EPA 香港とのFTA交渉に合意(2013年4月) 課題:①協定内容は異なっている、②多国間取引の際に 複数の協定が使えない→広域FTAの必要性 5つのASEAN+1FTAの特徴 FTA目標 年 自由化率 原産地規則 特徴 ACFTA 92.0% 2010年 (2015年) 94.6%(中国) 40%付加価値基準 AFTA型協定、自動車、テレ ビなどは大半の国で例外 AKFTA 91.6% 2010年 (2015年) 92.2%(韓国) 40%付加価値基準と 関税番号変更基準 (HS4桁)の選択 AFTA型協定、北朝鮮開場 工業団地製品を対象 AJCEP 89.1% 2018年 -2026年 86.2%(日本) 40%付加価値基準と 関税番号変更基準 (HS4桁)の選択 7カ国とは2国間包括的EPA を締結、サービス、投資協 定を交渉中 AIFTA 76.5% 2013年 -2018年 74.3%(インド) 35%付加価値基準と 関税番号変更基準 (HS6桁)の双方 AFTA型協定、複雑で自由化 レベルは低い、サービス、投 資は交渉済み AANZFTA 94.6% 2020年 -2025年 100%(豪・NZ) 40%付加価値基準と 関税番号変更基準 (HS4桁)の選択 自由化率が高く、包括的(政 府調達は含まない) (注)自由化率は久野新氏による 広域FTA構想とASEAN ASEANをハブとしたFTAネットワークは出来たが問題は 多い→広域FTAの必要性 EAFTA(ASEAN+3:2005年中国提案)、CEPEA(ASEAN +6:2007年日本提案)を研究、FTAAP(2006年米国提 案) 2010年3月TPP交渉開始(8カ国)、2013年7月12カ国で 交渉 TPP(とくに日本の参加検討)が大きなインパクト RCEP、日中韓FTA、日EUEPAの交渉開始 EUとは二国間ベースで交渉(シンガポール妥結、マレー シア、ベトナム、タイが交渉中あるいは交渉入り) TPP 2006年に発効したP4を拡大・改定 12カ国で2013年妥結を目標に交渉中:米国が主導 高いレベルの自由化、21分野の広範な内容(環境、労働、規制の調 和など) アジア太平洋さらには世界大のルール形成に寄与 ASEANはシンガポール、ブルネイ、ベトナム、マレーシアが交渉参加 タイは参加意思表明、フィリピンも関心、インドネシアは不参加を表 明しているが、ASEAN加盟国の参加は増加する見込み(米国市場) 米国とFTAを結びたければTPP参加が唯一の方途 ASEANの参加国はそれぞれ目的・課題がある 運転席に座れないASEAN 各国の自由化、国内改革を促進させAECとRCEPに影響 米国は東アジアのRebalancingを意図 中国の参加は? RCEP(地域包括的経済連携) 2011年にASEANが提案(背景にTPP交渉など) ASEAN+1、EAFTA、CEPEAを統合 当初はASEAN++と称していたがASEAN+6となってい る 2013年交渉開始、妥結目標2015年 中国が参加、米国不参加 高いレベルを目標にしているがインドに引っ張られるので はないか 物品、サービス、投資、知的財産権、競争、経済技術協 力、紛争解決の7分野 ASEAN中心性を維持できる 東アジアの生産ネットワーク形成・活用 ASEANの課題 ASEANの将来 設立当初は存続が危ぶまれたが、優れた環境適応能力 により発展 極めて多様な国の集まりだが、対立と相違を克服して協 力と統合を推進 課題は多いが着実な発展と統合は続いている FTAを超える統合(共同体)を実現する 世界大でみて有数の市場・生産拠点 日本にとっての政治的経済的重要性は増加 日本との経済的な差は着実に縮小(益々対等な関係に) 米中関係の中での重要性増大 日本はASEANを重視し関係緊密化を進めるべき 課題 ASEAN経済共同体は実現するのか :2015年末に実現、 多くの積み残し措置は2020年などを目標に実施 2015年後の展望:「グローバルな国際共同体の中の ASEAN共同体」(2011年首脳会議、2022年のビジョン)、 ASEAN2025の検討など ASEANの基本理念はどうなるか:徐々にルールを基盤に する機構に転換、ASEAN5とCLMVの対立、内政不干渉と 全会一致は続く、ミャンマー民主化の影響 TPPとASEAN:TPP参加国は増える見込み、TPPとRCEP はどうなるか 東アジアの統合・協力で運転席に座っていられるのか: ASEAN+という形式での会議や協定は継続、米中関係 の中で重要性は増すのではないか 課題(続き) 格差是正は実現できるのか:IAIの効果は限定されてい るが外資進出による成長加速により徐々に是正 中所得国の罠:マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、 ベトナムなどで懸念 中国の影響:カンボジア、ラオスには経済協力、投資など で強い影響力、ミャンマーはリバランスを計ろうとしている 南シナ海の領有権問題 ASEAN内の国境紛争:タイ・カンボジアの紛争ほか相当 数の紛争がある:国際仲裁による解決など 親日・友好国:ASEAN 第二次世界大戦およびその後対日感情の悪い時期は あった(forgive,not forget) 1972年~74年の反日運動:タイの日貨排斥、インドネシ アの反日暴動 福田ドクトリン(1977年):①平和に徹し軍事大国にならな い②心と心のふれあう相互信頼関係(政治経済+社会文 化など)③対等な協力者として東南アジア全域の平和と 繁栄に寄与 ルック・イースト政策(マレーシア、1981年):日本に学べ その後反日運動は起きず友好国かつ親日国 貿易、投資、経済協力、観光、文化交流などで太く緊密 な関係 経済連携協定(EPA)の締結:7カ国およびASEAN全体 AECおよびAEC後への協力 参考文献 山影進「ASEAN シンボルからシステムへ」東京大学出 版会、1991年 山影進「ASEANパワー」東京大学出版会、1997年 清水一史「ASEAN域内経済協力の政治経済学」ミネル ヴァ書房、1997年 石川幸一・清水一史・助川成也「ASEAN経済共同体」ジェ トロ、2009年 山影進編「新しいASEAN」アジア経済研究所、2011年 清水一史ほか「東南アジア現代政治入門」ミネルヴァ書 房、2011年 石川・清水・助川「ASEAN経済共同体と日本」文眞堂、 2013年(予定)
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