映像投影技術の応用

わせて位置取りを行う手法。一般的なプロジェク
映像投影技術の応用
ションマッピングに使われる。昨年はこの手法を
赤澤 実樹 赤森 直也
用いて作品制作を行った。
(2)3Dでデータをモデリングする手法
石井 夏稀
図面等のデータを 3D やレーザースキャナーで
1.まえがき
モデリングを行い、三次元情報を取り込む手法。
近年、私たちの身近となっているプロジェクシ
3D プロジェクションマッピングに使われる。
ョンマッピング。私たちの班はより手軽にプロジ
こちらも昨年挑戦したが、実用することが出来る
ェクションマッピングを楽しむことは出来ないの
レベルまで機器の性能を引き出す知識不足だった
だろうか、と考え昨年度より継続して研究を行っ
ためにこちらは断念せざるを得なかった。
た。また、今年は MikuMikuDance(以下 MMD と称す)
(3)ハコビジョンという新しいプロジェクション
の Kinect for Windows を使用したモーションキャ
マッピングの手法
プチャ機能を使用して、作中に出てくるモデルの
今回のテーマは、プロジェクションマッピング
動作に細かい修正を行えるようにした。
をより手軽に楽しむためにどのような工夫をすれ
ば良いのか、ということだ。そこで私たちは 2014
2.原
理
年より販売が開始され、
「日本おもちゃ大賞 2014」
プロジェクションマッピングとは、これまでに
にて、イノベイティブ・トイ部門大賞を受賞され
あった単純投影とは異なり、建物、物体、あるい
たバンダイ様のハコビジョンという食玩の投影シ
は空間などを投影物(スクリーン)として、プロ
ステムと同様にして作品制作に取り掛かった。
ジェクターを用いる映像投影技術のことである。
図1は昨年度 3D プリンターで出力したものにプ
3.研究内容
ロジェクションマッピングを行ったもので、プロ
(1)”ハコ”の製作
ジェクターで斜め上から投影しているものである。
(図 1)
今回は、ハコビジョンの投影システムを使用し
てプロジェクションマッピングを行うので、ハコ
を作るところから始めた。
プロジェクターの役割を果たす端末として、
iPad mini を採用したので、端末の寸法を測り、
ハコの寸法を(155mm,211mm,150mm)に決めた。
また、
上から投影する映像を屈折させる必要があ
るので、厚さ 5mm のアクリル板を対角線上に斜め
に接着剤で固定して取り付けた。
また、内幅を iPad mini の液晶縦幅に合わせる
ことで映像を全て投影させることが可能となり、
上部に乗せるだけで固定は不要となる。(図 2)
(2)フィギュアの製作
図1 昨年度の作品
ハコの寸法が決まった段階でフィギュア(投影
物)の製作に取り掛かった。123D という 3D CAD の
(1)写真や画像を元に補正する手法
ソフトウェアを使用して、3D プリンターで出力し
画像を作成・撮影しそれを加工して実際にプロ
てモデリングを行った。
ジェクション(投影)しながら対象のパーツに合
1
これらを組み合わせて1枚の板にしてから 3D
プリンターで出力をする。(図 5)
図 2 製作したハコ
123D Design という Autodesk 社が無償で提供す
る 3D CAD ソフトでフィギュアを製作した。
フィギュアは、まず各パーツを Sketch という機
図4 パーツを集約させた板
能で描き、それを Extrude という機能で垂直に立
体を造形した。それを、あらかじめ用意していた
板の 3D データにパーツに位置を調整しながら配
置した。最後に各パーツと板をグループ化して 3D
データを STL ファイルにして 3D プリンターに出力
した。
フィギュアを製作するにあたって、まずステー
ジを4方向から撮影した写真を探したが見つから
なかったから正面の写真を見ながらパーツを作成
した。
切削と結合、
グループ化の繰り返しである。
難しかったところは、各パーツの大きさが合わ
なければ作り直しの繰り返しだった。また、3D プ
図5 ハコに板を入れたもの
リンターの出力範囲が小さいため STL ファイルに
出力した後に、3D プリンターの出力範囲より大き
(3)MMD によるモデルを使用したモーション製作
ければ、ステージを小さくしてまた STL ファイル
『MikuMikuDance』
(みくみくだんす)は、
「樋口
に出力の繰り返しである。(図 4)
M」こと樋口優氏が個人で開発し、自身のウェブサ
イト「VPVP(Vocaloid Promotion Video Project)
」
で無償公開しているフリーの 3DCG ムービー製作
ツールである。
モデルは既存のものを使用し、モーションは
Kinect によって取り込んだ。
モデルは、Tda(ティーダ)氏により制作された
Tda 式初音ミク・アペンド、同じく Tda 式 GUMI・
アペンドを使用した。
図3 描き出したパーツ
2
モーションは光速姉妹様の振付をコピーし、実
際に踊り、Kinect を使用してデータとして取り込
んだ。その後、MMD 内でモーションや配置等の細
かい修正をし、動画として出力した。(図 7)
図7 編集画面
4.まとめ
今年の目標は、昨年に技術、知識が貧しかった
ために完成させることの出来なかった MMD×プロ
図6 Tda 式初音ミク・アペンド、
ジェクションマッピングの作品を作り上げ、さら
Tda 式改変 GUMI
にプロジェクションマッピングを小規模、低予算
で楽しめるように…をコンセプトに1年間課題研
「Kinect for Windows センサー」は、NUI(ナチ
究に取り組んできた。
ュラルユーザーインタフェース)を実現するモー
ションセンサーデバイスである。
MMD で Kinect を使用する為に、いくつかのドラ
昨年の研究を終えた後、個々で得意分野の知識
イバーやソフトウェアをインストールする必要が
を蓄えて新たな気持ちで今回取り組んだが、新た
ある。
な機材の導入、それに伴うトラブルも多発し戸惑
・
「Kinect for Windows SDK」v1.8
うことも多々あったが、試行錯誤を繰り返し、無
・MoggDxOpenNI
事何とか形にすることが出来た。
・MoggNUI
これらのドライバー、ソフトウェアを使用し、
5.あとがき
MMD で Kinect を使用できる環境を作り上げた。
僕は、この課題研究を通して、同じ班で協力す
(4) (3)で製作したものにエフェクト等を追加
る大切さを学べたと思う。そして、普段の授業で
AviUtl とは、
「KEN くん」氏が個人で開発して
は学ぶことができないことを体験ができとてもよ
いる動画編集ソフトウェアのことで、動画ファイ
かったと思う。最後の課題研究だったので悔いが
ルを編集・加工したり、色んなコーデックに圧縮
残らないよう真剣に取り組めたと思う。(赤澤)
して出力したりできる。
2年生の春休みを利用して映像加工、編集の知
MMD で出力した動画と音源を取り込み、エフェ
識の補充を行ったが、予想外の出来事が頻繁に発
クトを追加した。追加するエフェクトによっては
生し、製作した映像の修正に多くの時間を使うこ
フレーム飛びしてしまうので、注意する必要があ
とになってしまった。また、昨年とほぼ同じメン
った。(図 8)
バーで継続研究を行ったので、他メンバーと上手
く連携を行い、トラブルは多々あったものの迅速
に作業を進めることが出来た。(赤森)
3
昨年は全く作業が進まずに完成まで持っていく
ことが出来なかったので、同じ轍を踏まないよう
に出来る限り早く動くように心がけた。しかし
Kinect、AviUtl は使った回数が少ないために、十
分に使えるようになるまでに時間を要してしまっ
た。作業を進めていく内に徐々に理解できるよう
になり、楽しみながら制作することが出来たので
良かった。個人の趣味の範囲を抜けないかも知れ
ないが、それでも何かに活かす事の出来るような
技術を身につけたいと思った。(石井)
6.参考文献
(1)「日本おもちゃ大賞 2014」イノベイティブ・
トイ部門大賞受賞!スマホを使って楽しむ、驚愕
の映像エンターテインメント食玩 ハコビジョン
|バンダイキャンディトイ公式サイト
http://www.bandai.co.jp/candy/hakovision/abo
ut/
(2)プロジェクションマッピング – Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%8
3%AD%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%
83%A7%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%94%E3
%83%B3%E3%82%B0
(3)Digital Fabrication
http://digifab.jp/123ddesign/10/
(4) MikuMikuDance - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/MikuMikuDance
(5) AviUtl 初心者が最初に読むべきページ【導入
から使い方まで】
http://aviutl.info/intro/
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