Ⅲ 情報ネットワークシステム Ⅲ-1.情報通信とは (1) 情報通信システム

情報科学 2005
Ⅲ
情報ネットワークシステム
Ⅲ-1.情報通信とは
(1) 情報通信システム
電話回線等の通信回線を用いて、その両端にコンピュータを接続し、コンピュータ間でデータ交換を行
うシステム = オンラインシステム(Online system)
(2) コンピュータネットワーク(Computer network)
多数のコンピュータを通信回線を介して接続し、相互間に密接な関係を構築して、ハードウェア等の各
種資源を共有できるようにしたもの。
Ⅲ-2.情報通信の歴史
TSS の開発 (1963)
コンピュータネットワークの誕生
-
ARPANET (1969)
LAN の構築
-
Ethernet の開発 (1981)
VAN の構築
-
インターネットワーキングの普及 (1985~)
-
パソコン通信
インターネット (the Internet) の普及 (1990~)
Ⅲ-3.通信ネットワークの分類
(1) 回線の専有
① 専用回線:電気通信事業者から借り、ユーザが占有して使う通信回線。特定の相手先と常に接続されて
いる。
② 交換回線:不特定の相手と交換機を介して結ばれている通信回線。利用の度に電話をかけて呼び出す。
(2) 通信方式
① アナログ回線
-
交流が流れる回線。ノイズの影響を受けやすい。
② デジタル回線
-
直流パルス信号が流れる回線
(3) 交換方式
① 回線交換
-
② パケット交換
通信開始時に決定した回線を占有して伝送を行い、通信終了時まで解放しない方式。
-
データを一定の大きさのパケットに分割し、送信先などの情報を付加して伝送する
方式。宛先の異なるパケットが回線を共有できるので、回線占有しない。
(4) 通信速度
① 伝送速度
-
1秒間に伝送可能な総ビット数。単位は、bps。
② 変調速度
-
1秒間にモデムが変調する電気信号数。単位は、Baud(ボー)。
Ⅲ-4.ネットワーキング
(1) 情報通信網
(a) LAN(Local area network、構内情報通信網)
オフィスや企業体など、比較的小さな範囲に存在する小型コンピュータやワークステーション、パソコ
ンなどをネットワークで結合したもの。
(b) WAN(Wide area network、広域情報通信網)
組織体で運用されている汎用コンピュータネットワーク(LAN)を他の組織のネットワークと結合したもの。
(c) VAN(Value added network、付加価値情報通信網)
WAN と同義にも用いられるが、回線提供業者から回線を借り、高度な通信処理機能など付加価値をつけ
て販売するサービス。
(d) MAN (Metropolitan area network)
LAN を都市レベルに拡大したもの。概ね 50km の範囲をカバーすることが想定され、標準化が進められ
た。最近では、地方自治体を中心に整備が行われている。
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(2) LAN の接続プロトコル
① TCP/IP (Transmission Control Protocol/ Internet Protocol)
1975 年に米国防総省で開発されたインターネット標準プロトコル。
② IPX/SPX (Internetwork Packet Exchange/ Sequenced Packet Exchange)
ノベル社の NetWare で用いられるプロトコル。
③ NetBEUI (NetBIOS Extended User Interface)
Windows の主要通信プロトコル。1995 年に IBM が開発した。
④ AppleTalk:Macintosh の主要通信プロトコル。
(3) LAN の規格
(a) イーサネット
低価格で技術的にも成熟し、最も普及したネットワークの標準規格。伝送速度は、10Mbps。最近では、
ファーストイーサネットへ移行し、さらにギガビットへの移行が進んでいる。
① 10BASE-T
:
より対線 (ツイストペア (UTP) ケーブル)を使用するもの。
※古い規格として、10BASE-5 や 10BASE-2 といった同軸ケーブルを使用するものもある。
(b) ファーストイーサネット
イーサネットの技術を継承し、伝送速度を 100Mbps に高速化した LAN のこと。現在の標準。
① 100BASE-TX
:
カテゴリ5のツイストペアケーブルを使用するもの
② 100BASE-FX
:
光ファイバを使用するもの。
(c) ギガビットイーサネット
データ伝送速度が1Gbps の LAN の総称。基幹線を中心に導入が進んでいる。
① 1000BASE-T、CX
: ツイストペアケーブルを使用するもの。
② 1000BASE-LX、SX
: 光ファイバケーブルを使用するもの。
(4) 接続機器
①ハブ (hub)
:
②と区別するために、リピータ・ハブ(repeater hub) とも呼ぶ。情報機器を分散接
続するための装置。あるポートから受け取った信号は、他のすべてのポートに送出されるため、
ある端末が送信しているときは、他の端末は利用できない。最近では、②に移行している。
②スイッチング・ハブ (switching hub)
: ハブの一種。受け取ったデータの宛先を確認し、その端末
が接続されているポートのみに信号を送出する。現在の主流。
③ルータ (rooter) : LAN 同士を相互に接続するための装置。信号の宛先を確認し、 データの送出先
を選択する働きを持つ。ゲートウェイとも呼ばれる。
④ブロードバンドルータ(broadband router):CATV や ADSL などのブロードバンド回線と LAN を接続す
るための装置。最近では、100Mbps 対応機が主流。
Ⅲ-5.インターネット (the Internet)
(1) インターネットとは
世界 140カ国以上にまたがるコンピュータネットワークの集合体。UNIXのLANを相互接続して形成さ
れてきたが、現在ではパソコンなど多種のコンピュータを接続している。
(2) 代表的なサービス
(a) 電子メール (e-mail)
コンピュータネットワークを介して、端末同士が文字や画像などの情報をメールの形で交換するシ
ステム。従来は、メール送信用のSMTPサーバと受信用のPOPサーバ(またはIMAPサーバ)をメールソ
フトから利用してきたが、最近では、Web形式で利用するものが増えている。
(b) ネットニュース
文字のみによる電子掲示板システム。最近は、Web上の掲示板が主流となり、役目を終えた。
(c) World Wide Web (WWW)
1989年、スイスの欧州粒子物理学研究所で開発された広域情報システム。ネットワーク上にハイパ
ーテキストを構築し、あらゆる情報を継ぎ目なしにアクセス可能とする事を目的としている。現在で
は、情報発信の基本手段として普及し、あらゆるサービスがWeb上で提供されている。
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①
電子掲示板 (BBS : Bulletin Board System)
特定のテーマに関心を持つ人々が情報交換をする場。ネットにより、電子会議室、フォーラ
ムなどと呼ばれている。
② ソフトウェアライブラリ
種々のソフトウエア、データなどが収録されており、自由に入手できるシステム。
③ チャット (chat)
即時性のある電子会話。リアルタイム会議ともいう。
④ ショッピング・オークション
⑤ 商用データベースの利用
新聞、雑誌、論文など各種商用データベースが利用できる。有料。
(d) ファイル転送 (ftp)
コンピュータ間でファイルを転送するための仕組み。最近では、Webを用いた方式が増加。
(e) リモートログイン (telnet)
遠隔地からネットワークを介してコンピュータにアクセスして利用すること。
(f) 電子商取引 (electric commerce)
ネットワーク上で、商取引の一部あるいは全部を行うこと。企業間(B to B)および企業と一般
消費者間(B to C)の区別がある。
(3) 接続方法
① ダイアルアップIP接続:公衆回線を用い、インターネット接続業者を介して接続する。
② 専用線によるIP接続:学校や企業など、常時接続する必要がある期間で利用。
③ 常時接続サービス(フレッツADSLなど):
公衆回線を利用し、低料金で常時接続を実現するサービス。
(4)
インターネットのしくみ
① IPアドレス
インターネットで使用するホストに割り当てられる4バイトの数値からなる一意的なアドレス。1
バイトごとに区切って表記される。IPアドレスは、ネットワーク・アドレス部とホスト・アドレス部
から構成される。最近では、クラスを意識しない使用法が用いられている。
・IPアドレスのクラス
クラス
第1バイト
ネット数
ホスト数
A
0~127
128
16777213
B
128~191
16383
65533
C
192~223
2097151
254
D
224~239
-
-
E
240~255
-
-
・グローバル・アドレスとプライベート・アドレス
プライベートアドレスは、外部と接続していないネットワークで利用される。
10.0.0.0~10.255.255.255
172.16.0.0~172.31.255.255
192.168.0.0~192.168.255.255
最近では、アドレスの不足から、アドレス変換技術を利用して、プライベートアドレスを使う場面が増え
ている。
② ドメインネームシステム (DNS)
インターネットで用いられる分散型名前管理システム。ホスト名がIPアドレスと1対1対応をする。
・トップレベルドメイン(TLD):分野別(gTLD)と国コード(ccTLD)がある。
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分野別TLD:世界の誰でも利用できるもの
com(商業組織)、net(ネットワーク)、org(非営利組織)、biz(ビジネス
用)、name(個人名用)、info(制限なし)
利用対象が指定されているもの
gov(米国政府機関)、edu(米国高等教育機関)、mil(米国軍事機関)、
int(国際機関)、pro(弁護士・医師・会計士など)、aero(航空運輸業界)、
museum(博物館・美術館等)、coop(協同組合)
国コードTLD:現在243種類。日本は、jp。
・サブドメイン:ccTLD(.jp)の前につける。
属性型(組織種別型)ドメイン:
ad(ネットワーク管理団体・JPNIC会員)、ac(大学など高等教育機関)、co(一
般企業)、go(政府機関)、or(会社以外の法人)、ne(ネットワーク接続業者)、
gr(任意団体)、ed(小・中・高校など18歳未満を対象とする教育機関)
lg(地方公共団体)
地域型ドメイン:一般地域型(xxxx.shinjuku.tokyo.jp)
地方公共団体型(xxx.pref.aomori.jp)
汎用ドメイン:サブドメインが無く、「組織名.jp」と表記する。
③NIC (Network Information Center)
IPアドレスなどインターネットに関する情報を管理・提供している機関。日本では、JPNICと呼ば
れる機関がこれに相当する。2002年4月より、IPアドレスの登録・管理はJPNIC、ドメイン名の登録・
管理は日本レジストリサービス(JPRS)と役割を分担した。
Ⅲ-6.ネットワーク技術の動向
(1) イントラネット
インターネットの接続方法とWWW等を利用した構内LANのこと。大部分の企業体で導入されている。
(2) セキュリティー対策
①ファイアウォール
内部ネットワークとインターネットの間に設置し、外部からの不正アクセスを防止するとともに
内部ユーザによるサービス制限などを行う仕組み。
②暗号化技術
共通鍵暗号法- 同じ暗号鍵で暗号化と復号化を行う。RC方式、FEAL方式など。
公開鍵暗号法- プライベート・キーとパブリック・キーを用いる。RSA方式
③電子透かし
画像や音声などのデジタル・コンテンツに、品質に影響を及ぼさない形で特別情報を埋め込む技
術。作成者や販売者の名前を埋め込み、不正コピーやデータ改ざんの防止を目的とする。
(3) 情報発信
(4) 高速化
(5) IPv6
インターネット利用人口の増加に加え、最近では、家電製品をインターネットに接続して管理する
研究が進められている。このため、従来型のIPアドレスでは不十分となっており、現行の32ビットを1
28ビットに拡張したアドレス体系の利用が始まっている。この、新しいアドレス体系を、現行のIPv
4に対してIPv6と呼んでいる。
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