研修のまとめ(6年 体育) 1 単元名 2 単元の目標 3 児童と単元

平成22年度授業力向上研修(小・中)
研修のまとめ(6年 体育)
平成22年9月14日(火)
指導者 妙高市立妙高高原北小
教諭
1 単元名
髙橋 健一
「ハードル走」
2 単元の目標
(1) 仲間とかかわり,互いに教え合い,励まし合いながら,運動に進んで取り組む。また,約束を守り,
場や用具に気を配り,安全に運動に取り組む。
(関心・意欲・態度)
(2) 自分やチームの力量に適しためあてを立て,それを達成するための練習方法や練習の場を選択する。
また,競争や記録への挑戦の仕方を工夫する。
(思考・判断)
(3) 3つの課題を克服するためのポイントを意識して,ハードルをリズミカルに走り越える。 (技能)
①第1ハードルを決めた足で踏みきって走り越えるために
◇どちらの足でふみ切るのかの決定 ◇何歩で1台目のハードルを越えるかの決定
②ハードル上で状態を前傾させるために
◇ふり上げ足の方に反対の手を伸ばす ◇ぬき足は横にねせる(また,ひざ,足首が90度)
③インターバルを3歩~5歩のリズムで走るために
◇(ウン)
,1,2,3(4,5)のリズム ◇着地(ウン)したら,1歩目(1)力強く出す
3 児童と単元
(1) 児童について(男子13名 女子9名 計22名)
目的が明確であれば,体育授業に意欲的に取り組むことができる集団である。
100m走の様子では,一生懸命に走り切り,全力を尽くす態度が見られる。男子の3名は,課外活動
でハードル走を専門的に行っている。しかし,その他の児童はハードル走など障害物がある種目に積極的
ではない。通常の高さのハードルを跳べるにもかかわらず,その傾向は女子に顕著である。
学級での人間関係は良好であり,かかわりの面では,互いにアドバイス(技術のポイントについて指摘
したり,練習方法について一緒に考えたり)し合うことに抵抗はないが,自分から進んでという主体性が
弱い。また,仲間の話を聞いて意見を言ったり,仲間の動きを見てアドバイスしたりすることは苦手であ
る。集団で解決・達成することが必要な課題を設定して,児童が主体的にかかわり合うような練習方法や
練習の場を設定する。
これまでの授業を通して,股関節周りの筋力と柔軟性を強化する運動を行い,走力は徐々に高まってき
ている。ハードル走の技術に関わるポイントについては,ほとんどの児童が明確に意識するに至っていな
いと考える。まず,走練習と平行して,走り越す技術のポイントや練習方法を児童に伝える機会が必要で
ある。
(2) 単元について
ハードル走の一般的特性は,一定の距離に置いた数台のハードルを走り越しながら,相手と競走したり,
自分の記録に挑戦したりすることが楽しい運動であり,どちらかというと,個人の目標達成を楽しむこと
を主とした運動であると思う。しかし,本単元では,前述した児童の実態を踏まえ,チームでの目標達成
を目指し,アドバイスし合い主体的に練習に取り組む力を身に付けるように単元構成を行う。
児童が主体的にかかわり合うように,練習の目的を明確にする。単元を通して,チームごとに協力して
達成するような目標(チームごとにメンバーの合計タイムの伸びを競う)を設定する。
児童がお互いにアドバイスし合うように,練習の場(1台目までを練習する場,前傾の姿勢を練習する
場,ふり上げ足とぬき足を練習する場,リズミカルな走りを練習する場)を設定する。また,ハードル間
の距離を段階的に設定して,挑戦の場を選択できるようにする。それぞれの練習の場でアドバイスが活発
になされるよう,技術・練習方法解説シートを準備する。
4 単元の構想
(1) 研究テーマ
児童が仲間とともに達成感を得られる指導の工夫
(2) テーマ設定の意図
新学習指導要領にある体育科のねらいは,生涯にわたって運動に親しむ資質や能力の基礎を育てること
である。運動に親しむ資質や能力の基礎とは,具体的に言えば,運動に対する関心や自ら運動をする意欲,
仲間と仲よく運動をすること,各種の運動の楽しさや喜びを味わえるように自ら考えたり工夫したりする
力,運動の技能などを指している。
陸上運動のほとんどは,自分の技能や記録の伸びを求めたり,仲間と競走して勝負を楽しんだり,個人
で目標に向かって練習に取り組むことを主としている。しかし,その過程は児童にとって一人では厳しく,
楽しさを見出すことが難しい。そこで仲間の存在を大切にして,お互いにアドバイス(技術のポイントに
ついて指摘したり,練習方法について一緒に考えたり)し合うことを活動の中心に置き,集団で協力して
達成する目標を設定する。仲間とかかわり合い,教え合い,励まし合う中で,新しい発見や自分の成長を
確認しながら,児童一人一人が,達成感を味わうように展開していきたい。
(3) 研究テーマに迫るために
①学習の道筋と1時間の流れ
1時間の授業の中で,始めには,前時の児童の様子や学習カードの記述から見取った実態に応じた基本
技術習得のために指導を行う。次に,チームごとに分かれ,仲間同士でアドバイスし合いながら,練習に
取り組む時間を設定する。教師は,チーム間を回りながら支援する。最後に,練習した成果を発揮する機
会を与え,仲間同士で練習の成果を確認し合う。
②異質チームでのトリオ学習
男女,技能が高い,低い,中間の児童を意図的に組み合わせ,異質チームを作りトリオ学習で練習に取
り組む。チームとしての目標に向けて練習に取り組むことで,仲間の技能について興味関心を強くもち,
お互いにアドバイスし合う必要感が生まれる。
授業の中盤で,チームでアドバイスし合いながら練習に取り組む時間を設定する。その中で,チームの
技能の課題を話し合い,練習方法や練習の場を選択する。チームで教え合い励まし合うことで,個人で克
服することが困難な課題にも意欲的に取り組むことができる。また,教師が注目しない僅かな成長を仲間
同士で確認し合い,達成感を得ることができる。
1時間に集中して取り組む課題を2つ決め,チームとしての目的を明確にする。それに向かい,技能の
高い児童は,他の児童を教えたり,手本になったりする。少しずつお互いの技能を見取る目が養われると
ともに,アドバイスが活発になされる。
③技術・練習方法解説シート
技術,練習方法を確認できるようなシートを作成する。アドバイスし合う活動を成立させるには,技術
と練習方法を視覚的に確認できるものが必要である。視点を明確にできるように,連続写真を用いたり,
大切なキーワードを示したりする。技能差のあるチーム学習では,動きを判断する目を養う必要がある。
授業を重ねていく中で,技術のポイントや練習方法の工夫が意識されるとともに,仲間の動きを判断する
目が養われる。
④学習カード
毎時間後,児童は行った練習の出来ばえや成果を仲間とともに評価し合う。また,仲間からのアドバイ
スを振り返り,感想を書いたり,次回の授業でのめあてを考えたりする。教師は,学習カードをもとに,
支援を必要とする児童を把握することと,児童の変容を確認することができる。
(4) 研究テーマ達成にかかわる評価
児童一人一人が自ら進んでハードル走(練習)に取り組んでいる。
(行動観察)
児童一人一人が達成感を得ている。
(学習カード)
5 単元の評価規準
関心・意欲・態度
A 評価
B 評価
C 評価
思考・判断
技能
熱意と高い意欲をもって,自
仲間とともに,チームの力量に ハードル走の技術の課題3つを
ら進んで練習に取り組む。
適した練習方法を選択する。
意欲をもって,練習に取り組
自分の力量に適した練習方法を ハードル走の技術の課題2つを
む。
選択する。
教師や仲間に促され,練習に
何となく練習方法を選択しよう ハードル走の技術の課題1つを
取り組もうとする。
とする。
教師からも意図的な声掛け
参考にする技術・練習方法確認 技術のポイントとその練習方法
をする。
シートを準備する。
達成している。
達成している。
達成している。
を紹介する。
6 指導計画(全6時間 本時4/6時間) □学習活動 ○支援 ・留意点
1時間目
2時間目
3時間目
4時間目
5時間目
6時間目
□チームごとに準備運動を行い,本時のめあてを立てる。
5
□教師から,前時の様子や学習カードの
10
記述から必要と判断されたハードル走の
技術のポイントや練習方法を学ぶ。
15
○場の設定
・上手な児童を手本として視覚的に示す。
□チームで,互いにアドバイスし合いな
20
がら,練習に取り組む。
○技術・練習方法解説シート
25
・アドバイスの仕方をアドバイスする。
30
35
40
□練習の成果を発表する。40mハードル(室内30mハードル)のタイム計測をする。
○ストップウォッチ
・計測をする児童やアドバイスをする児童などの役割分担を明確にする。
□毎時間,行った練習の出来ばえや成果を,仲間と評価し合う。
45
○学習カード
・児童の記述をもとにして,授業の展開や教師の指導を考える。
7 本時の計画
(1) ねらい
仲間とアドバイスし合い,チームの力量に適した練習方法を選択している。
(2) 展開の構想
本時では,前時までの児童の様子と学習カードの記述から,必要と判断されたハードル走の技術のポイ
ントを教師が指導する。上手な児童を手本として視覚的にイメージが作りやすいようにしたい。
本時の中心的な活動では,仲間同士でアドバイスし合いながら練習に取り組む。その際に,技術・練習
方法解説シートを用いる。写真やキーワードを用い,ハードル走に対する児童の理解を深め,活発なかか
わりの一助としたい。すでに,アドバイスし合いながらの練習は,3時間目となっており,常に児童が飽
きることのないように,新しい視点を伝えていく。
タイム計測を行い,チームの合計タイムの伸びを競う。チームの目標を達成するために練習に取り組み,
個人ではなく,仲間とかかわりながら達成感を得られると考える。振り返りでは,学習カードに練習の出
来ばえや成果を記述する。それをもとに,児童の状態を把握するとともに,次時での指導に生かしていく。
(3)展開
時間(分)
□学習活動
教師の働きかけ・予想される反応
※評価 ○支援 ・留意点
5
□チームごとに準備運
・ジョギング→体操→今日のめあて
○チームで克服する課題を
動をする。
を話し合い決定する
2つ決めることとする。
□ハードリングの技術
前時の様子や学習カードの記述から
○上手な児童を手本として,
のポイントや練習方法
再度,ふり上げ足,ぬき足の指導を
視覚的に示す。
を確認する。
行う。
5
20
・アドバイスの視点を得る。
・ふり上げ足の裏が見えるか
・
「黒に向けて振り上げるんだな。
」
に注目するようアドバイス
・
「90度を座って作ってみよう。」
する。
□チームごとにアドバ
チーム間を巡視して,アドバイスの
○教師からもアドバイスや
イスし合い練習に取り
仕方をアドバイスする。
励ましの声掛けを行う。
組む。
子ども同士のアドバイス例
・技能の高さよりも意欲的に
・
「1台目まで何歩でいくの?」
運動に取り組んでいること
・
「ぬき足はもっとねせよう!」
を評価して声掛けする。
・
「
(ウン)
,1,2,3(4,5)」
※チームの力量を判断して,
・
「ふり上げ足に向けて,反対の手を
適切にアドバイスをし合い,
伸ばそう」
・
「もっと低くまたぎ越そう」
10
5
練習方法を選択する。
(思考・判断)
□30mハードル走の
タイムを計測する。
○足を真っ直ぐふり上げて
タイム計測をする。
・
「足の裏が見えたよ。
」
いるか?ぬき足は横にねて
・
「ぬき足が横にねてきたよ。」
いるか?に注目するように
□学習カードに練習の
タイムを発表する。
視点を示す。
出来ばえや成果を振り
・友達からのアドバイスを書く。
・学習カードの記述を元にし
返り記入する。
・練習の成果や次回への課題を明確
て,次回の授業でポイントを
にする。
アドバイスする。
(3) 評価
授業中,チームでお互いの技能について見取り,アドバイスをしている。
(思考・判断)
学習カードの記述から,自分や仲間の力量を判断して,練習方法を適切に選択している。
(思考・判断)
8 実践を振り返って
(1)仲間とともに学習する意義
ハードル走の学習において,仲間の存在を大切にして,お互いにアドバイス(技術のポイントについて
指摘したり,練習方法について一緒に考えたり)し合うことを活動の中心に置き,集団で協力して達成す
る目標を設定するという実践を行うにあたり,次のような指摘をいただいた。
ハードル走の機能的特性からすると,個人内の克服(ハードルを跳べる)
・達成(技能,記録の向上)
,
二者間の競争(競走しての勝ち負け)がある。集団で協力して達成する目標を設定する意味はあるのか。
よりシンプルな学習活動ではだめなのか。仲間と一緒に学習することは,ハードルが苦手な子どもにとっ
て,自分のペースでできないので苦痛ではないのか。楽しさが見出せるのか。技能が高まるのか。
以前,私は平泳ぎを仲間とともに学習する実践を行ったことがあった。その折,一番水泳が嫌いだった
子どもが,
「先生や仲間が一生懸命にアドバイスしてくれたので,私も生まれて初めて,水泳の授業で頑
張ろうと思いました。来年も頑張りたいです。
」と感想を書いた。それは,仲間とかかわり合い,教え合
い,励まし合う中で,新しい発見や自分の成長を確認しながら,達成感を味わった成果だと考えている。
その経験を前提として,ハードル走も仲間とともに学習する意義があると考えた。
(2)指導(手立て)の有効性
①学習の道筋と1時間の流れ
仲間とともに学習するだけであれば,質の高い学習は成立せず,技能面で課題を残すことは予想できた。
子どもたちが仲間とともに学習する前提には,正しいハードリング技術と練習方法の理解が必要不可欠で
あり,単元前半は,教師からの指導を多くし,後半に向けて,徐々に子どもたちが仲間とともに学習する
場面を増やしていくようにした。子どもたちは,教師から紹介された技術のポイントを大切にしながら,
練習に意欲的に取り組み,技能を向上させることができた。
授業の終わりに,毎回タイム計測を行ったが,タイムの伸びに一喜一憂する子どもたちの姿が見られ,
向上しようという意欲が溢れていた。
②異質チームでのトリオ学習
男女,技能が高い,低い,中間の児童を意図的に組み合わせ,異質チームでのトリオ学習に取り組んだ。
技能が低い,中間の子どもは,技能が高い子どもからアドバイスをもらい,自分が上手になっていくこと
に達成感を得ていた。くじけそうになっても,「上手になったね」と励まされることで意欲を継続させる
ことができた。技能が高い子どもは,自分のアドバイスした子どもが上手になることに達成感を得ていた。
仲間が上手になることに刺激を受け,自分も上手になろうという意欲を継続させることができた。
チームで目的を明確にして取り組んだことにより,活発な子どもたちのかかわり合いが見られた。個人
での取組との,決定的な違いはここにある。かかわり合う必要感が生まれていた。
ハードリング技術確認シート(妙高高原北小学校)
③技術・練習方法解説シート
ハードリングの様子!(横から&前から)
技術のポイントと練習方法を視覚的に解説するシートを作成し,チーム
ごとに活用することとした。
チェックポイント
チェックポイント
☆どちらの足でふみ切るのかを決める!
☆ぬき足は横にねせる!(また、ひざ、足首は90度)
なるべく遠くから踏み切る!
足の裏が見えるようにまっすぐにふり上げる!(黒)
☆ふり上げ足に向けて反対の手を伸ばす!(前傾する)
とび越えるのではなく、低くまたぎこす!
ハードルの近くに着地する!
☆次のハードルに向かって一歩目を力強く出す!
技能差のあるチーム学習では,動きを判断する目を養う必要がある。子
どもたちは,シートと動きを見比べながら練習し,課題を把握することが
できた。
「どうだった。
」と確認する子,
「こうするんだよ。」とアドバイス
する子,仲間とともにアドバイスし合う活動が成立するために,シートが
ハードリング練習方法確認シート(妙高高原北小学校)
☆1台目までの練習
スタートから1台目
までは12mある。1
大きな役割を果たした。
を決めよう!
☆前傾する練習
ハードリングの姿勢
が高い子どもへ,的確にアドバイスをする様子が見られた。全員が意欲的
にアドバイスする雰囲気ができあがった
ハードルの黒の部分に
台目まで何歩で走るか
ふみ切り足はどちら
技能が低い,中間の子どもでも,シートと動きを見比べることで,技能
☆ふり上げ足とぬき足の練習
向けて、ふり上げる!
(ウン)1,2,3
のリズムで行おう!
ぬき足のまた、ひざ、
足首は、90度だよ。
ハードルのわきを歩き
ぬき足をねせてまたぐ。
☆リズムよく走る練習
ハードル間は、6m、6.5m、7m!
そのハードル間を3歩でリズミカルに
走ろう!
(ウン)1,2,3のリズムで走る。
※(ウン)は、ハードルを越えた着地!
④学習カード
学習カードには,めあて,選択した練習,感想(心に残った友達からの
アドバイスなど)の項目を設定した。チェックポイント,アドバイス例も
載せた。
単元が進むにつれて,子どもたちが書く記述の中に,友達からもらった
的確なアドバイスや自分の明確な課題が見られるようになった。めあての
【チェックポイント(授業の終わりに◎,○,△でチェックしよう)】
チェックポイント(ハードル走)
設定→振り返りで課題の確認→めあての設定→という見通しをもったサイ
クルを継続することができた。
2
3
4
5
6
☆主体的にハードル走の練習に取り組んでいるか?
☆友達と教え合い励まし合い練習に取り組んだか?
☆自分やチームの力量に合っためあてを立てているか?
☆自分やチームのめあてに合った練習方法や練習の場を選択しているか?
☆1台目のハードルを同じ足でふみ切れているか?
子どもたちの振り返りから,教師は次時に指導するべき内容を見取り,
練習のポイントとして紹介することができた。また,上手くいっていない
つまずいている子どもへの支援を考えることができた。
☆ハードルをまたぎこすときに前傾できているか?
☆ハードル間を3歩でリズミカルに走れているか?
○40mハードルのタイムを記録しよう!(例 5秒6 → 5.6 )
○チームの合計タイムを記録しよう!(例 16秒7 → 16.7)
アドバイスするなら「こんなこと!」
◇どっちの足でふみ切るか決めるといいよ。 ◇1台目まで何歩でいくか決めるといいよ。 ◇スタートは○足を前にかまえるといいよ。
◇ハードルの黒い部分を目がけて、足をふり上げるといいよ。 ◇とび上がるよりもまたぎこすように低くハードリングするといいよ。
◇ぬき足をもっと横にねせるといいよ。
(また、ひざ、足首が90度) ◇ふり上げ足の方に、反対の手を伸ばすようにするといいよ。(前傾)
◇(ウン)
,1,2,3(4,5)のリズムで走るといいよ。 ☆着地(ウン)したら、1歩目(1)を力強く前に出すといいよ。
(3)本実践の考察
①成果(子どもの日記から)
技能が高い,低い,中間の子どもの最終日の日記を紹介する。(3人は別チーム)
ぼくは,今日最後のハードル走で,アドバイスを意識して,相手が分かりやすいようにと思いながらアド
バイスしました。みんなアドバイスを受けるうちに,自分の課題点を見つけることができて,そこを重点的
に練習しました。自分で,今だめだったと思っても,見てもらっているメンバーに,自分でも気付かないア
ドバイスをしてもらって,とてもうれしかったです。そのおかげで,とても上手く跳べるようになりました。
それに負けないくらい,メンバーも上手くなって,タイムも上がりました。今日の授業で,アドバイスやよ
く見ることの大切さを実感しました。
(技能が高い子ども)
私は,最後のハードル走で,一番いいタイムが出ました。今日,タイムを計るまでの練習のとき,最初,
一回やってみたら,とても上手くいきました。そしたら,S 君が,「今,とっても上手だったから,次は,
もう少し,手を伸ばした方がいいよ。」と言ってくれました。そのとき,少し自信がつきました。次にやっ
たときは,T 君が「良かったよ。
」と言ってくれたので,今まで怖かった練習が楽しくなってきました。歩
数も合うようになったし,ぬき足も寝てきたので,とっても良かったです。みんなのアドバイスのおかげで,
とっても最初より速く上手にできるようになりました。アドバイスってすごいと思いました。みんなとハー
ドル走ができて,本当に良かったです。
(技能が低い子ども)
私は,最初のとき,体がねじれちゃったり,ぬき足ができなかったりして上手くいきませんでした。タイ
ムも計ったけれど,思うようなタイムが出なくて,すごく残念でした。だけど,K 君からいっぱい教わった
し,S 君も跳べるようになったし,だんだんチームワークができてきました。私は,K 君から教わって,走
ってみて,一番タイムが速くなったのは,7秒2です。これを出せたのは,K 君が「高く跳び過ぎるな」と
言ってくれたおかげだと思います。すごくうれしかったし,チームのタイムも縮まって良かったです。今度
は他の人ともやってみたいです。
(技能が中間の子ども)
これらの感想から,子どもたちは技能に関係なく,仲間とともに達成感を味わうことができたと言える。
最初ハードルが嫌いだった子どもが,
「チームの絆が深まったと思いました。そして,ハードルのことも少
し好きになったのでよかったです。
」と書いた。これも,仲間とともにハードル走の学習に取り組んだ成果
である。
②課題(協議会の話合いから)
繰り返しになるが,仲間とともに学習することの前提には,教師の指導が必要となる。どこまで深く教材
研究をして,授業に臨めるかということが全てである。本実践では,ハードリングについての教師の理解が
あと一歩であった。前傾の仕方やぬき足の軌跡など,いろいろな面でさらに教材研究を深める必要を感じた。
それが,つまずいている子どもへの的確で早急な支援につながると考える。