SPARC Open Access Newsletter issue #153, “Open access in 2010” を翻訳したもので ある。原文は、http://www.earlham.edu/~peters/fos/newsletter/01-02-11.htm オープンアクセスの 2010 年 OA はこれまで、根深く、広く着実に成長を遂げてきた。これは筆者の 2003 年度末のレビ ュー以来、年を追うごとに確実となってきており、この成長を細部まで記録することの困 難さは、実際ここ数年殆ど手に負えない状況になっている。OA の動向は非常に大規模であ るため、時には(今現在)、レビューが未完成か、もしくは半年遅れになることを余儀なく される。時間的制約の中でこの領域をカバーするために、筆者はこれまで長いこと、オー プン教育や、公的部門の情報、wikipedea などにおける多くの新しい発展を省いてきた。ま た、OA に関する新しいジャーナルや、OA リポジトリ、もしくはオープンデータやデジタ ル化されたオープンプロジェクトをすべて載せるようなこともしない。筆者は昨年から、 不況に関する節を加えた。不況はほぼあらゆる場面で、活動・方針などに影響を及ぼして いる。 しかし、こうした状況の中でも、ここに 2010 年度の OA におけるハイライトをお読みいた だきたい。 (1) 資金配分機関におけるオープンアクセスの方針 10 月、EUR-OCEANS Council(欧州大洋評議会)は投票により、圧倒的多数で OA 指令 を受け入れることを決定した。EUR-OCEANS Consortium(欧州大洋連合)は 15 カ国 の 29 組織を代表し、海洋生態系の調査を取り仕切っている。 この指令は EUR-OCEANS に より資金提供を受けるすべての調査と、すべてのメンバーに適用される。EUR-OCEANS の投票に至るまでに、最大の共同 OA 指令が 2009 年 10 月のフィンランド 26 応用科学大学 に採択された。共同 OA 指令の意味するところは、志を 1 つにする者同士がそれぞれの組 織において、同じような発見をする手間や、メリット、間違いや専門用語の再確認、とい った手間を省くことにある。EUR-OCEANS とフィンランドの応用科学研究の OA 共同指 令は、今や資金配分機関や大学にとって、驚くべき事例を示している。事業体はみな注目 すべきであろう。 OA 共同指令に近いものとして、4 つの欧州の公的基金が OA 指令もしくはそれまでの OA 政策の強化を受け入れるという共同声明を提出した。その基金とは、Health Research Board Ireland(アイルランド医学研究委員会) 、Science Foundation Ireland(アイルラン ド科学基金) 、Telethon Italy(テレソンイタリア)と Austrian Science Fund(オーストリ ア科学基金)である。 個々で活動している資金配分機関の中で、筆者は 2010 年、新たに 7 つの OA 指令を確認し た。まずは Agricultural Research Service(農務省農業研究局)(少なくとも機関内)、 France’s Institut National de la Recherche Agronomique(フランスの農業研究国家機関) (INRA)、France’s Institut francais de recherché pour l’exploitation(フランス海洋調査 開発研究所) (Iflemer)、ポーランドの生化学研究機関とそして Sweden’s Royal Library(ス ウ ェ ー デ ン 王 立 図 書 館 )( Kungliga biblioteket )、 Sweden’s Riksbank Tercentenary Foundation(スウェーデンの Riksbank 300 年基金) (Riksbankens Jubileumsfond:スウ ェーデン国立銀行記念事業基金)である。 かの Gates Foundation(ゲイツ基金)は、その新計画の 1 つとしてグリーン OA 指令を採 択したのみならず、CCBY ライセンスの下での無料の OA 指令も採択した。 ほんの一計画に対し採択しただけではあるが、このゲイツ基金により、2010 年は 17 カ国 計 38 基金が OA 指令に至った。17 カ国は、カナダ、デンマーク、エストニア、フィンラン ド、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、ラトビア、モロッコ、ノルウェー、ポーラ ンド、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、そしてイギリスとアメリカである。それに 比べ、2009 年度は 10 カ国にて 15 の新たな指令があった。 2010 年、少なくとも 2 つの基金が OA 政策を考慮・推進すると宣言している。Indian Council of Agricultural Research(農業研究委員会)(ICAR)と India’s National Metallurgical Laboratory(インド国家金属研究所)(NML)である(さらに、前年から継続するかなり多 くの基金がある)。NML は India's Council of Scientific & Industrial Research(科学産業 研究委員会)における 40 超の研究所の 1 つであり、2009 年の 2 月に、すべての研究所に 対し OA 指令の採択を促した。そしてそのすべての有料アクセス(TA)を OA へと変更途 中である。National Institute of Oceanography(国立海洋研究所)のように CSIR 研究所 の中には既に指令を受け入れているものもあり、その他において NML が計画中の唯一の機 関である、ということではなさそうである。 Alhambra Declaration(アルハンブラ宣言)では、OA を採用する大学を求めると同時に、 資金提供者も求めた。Denmark’s Open Access Committee(デンマークオープンアクセス 委員会)も同様に、デンマークの資金配分機関と大学の双方に重点を置いた。デンマーク における資金配分機関の応募はデンマーク科学技術革新相の Charlotte Sahl-Madsen によ る支援をうけた。Iceland's Science and Technology Council(アイスランド科学技術会議) は、国内最大級の研究支援基金である Rann にグリーン OA を勧告した。Chinese Academy of Sciences(中国科学院)OA 指令の副責任者である LI Jinghai は、北京で開催 された Berlin8 conference in Beijing(Berlin8 北京大会)において、公的資金運用機関が、 “研究者らにより生産された情報を、資金を提供している国民が利用できるようにする道 義上の責任”を担っていると述べた。 教育的資源の解放をうたったブラジルのプロジェクトでは、ブラジルでの公的基金による 教材に OA を要求した。Matseliso Moshoeshoe-Chadzingwa はアフリカの図書館に、“研 究者や政治的指導者”に関わる OA の支持を求め、アフリカ連合に OA をアフリカの査読 システムによる国家の能力評価に利用するように促した。南アフリカの全域で地域的なオ ープンアクセスのワーキンググループが OA の運用を始めている。南アフリカの科学技術 相、Grace Naledi Mandisa Pandor は OA 政策の進展について次のように述べた。 「個別の コンテンツの内容を精査し、優先権の認可や機密性による実質的利益が認められない限り、 政府のコンテンツや政府の資料を使ったコンテンツがオープンになることを政府は保証す るであろう。 」(Pandor が新たな政策を宣言したともとれるが、これは単なる提言であり、 保守的な側面もあることに注意すべきである) ドイツ司法省におけるヒアリングの後、内閣のメンバーである Michael Kretschmer と Tancred Schipanski はドイツの公的資金による研究に対し OA を要求した。どちらも CDU/CSU(ドイツキリスト教民主同盟・キリスト教社会同盟の統一会派)のメンバーであ る。Kretschmer は議会の教育・研究・技術評価委員の有力なメンバーであり、文化・メデ ィアの委員でもある。CDU/CSU それ自体はドイツ社会へのインターネットの影響を研究 するようアンケート委員会に提案した。様々な質問と共に、公的助成を受けた研究に OA を課す政策への調査もなされている。Germany’s Action Coalition on Copyright for Education and Science(ドイツの教育・科学の著作権活動連盟)はドイツ議会に、2009 年 10 月の Lars Fischer の請願書を補足する新たな請願書を提示した。この新たな請願書は、 ドイツの公的助成を受けた研究に OA を適用するように請願した当初の議論を拡張したも のである。 ドイツ海賊党は公的助成を受けたコンテンツに関する政策提言と、OA のマニフェストを更 新している。Julian Hoffmann は公的助成をうけた研究への OA 適用などの政治綱領を掲 げ、パーダーボルンからドイツ海賊党の州議会や連邦議会(Landtag or State Parliament) に立候補した。St.Gallen 州の保守派代議士、Pfister Theophil はスイス議会に、公的助成 を受けた研究への OA 適用を要求した。 ユネスコは明確に OA を、特に公的助成を受けた研究への適用を支持する声明を公表して いる。EC Commissioner for Research, Innovation and Science(EC の研究・革新科学担 当委員)の Geoghegan-Quinn と、EC Vice-President (EC 副理事)の Antonio Tajani は欧州委員会に次のような報告書を提出した。 「EU を“イノベーション連合”へと変える キーファクターは、公的資金による研究へのアクセスを最大限開放することだ」 。一連の強 力な公的声明のなかで、欧州委員会のデジタル検討会議の副委員長、Neelie Kroe は「公的 助成を受けた研究について、科学データ・論文出版へのオープンアクセスを通じて広く公 開されるべき」と主張し、ヨーロッパの OA 政策の“拡張”とオープンデータを必要とす るプログラムへの FP8 の資金供与を要求し、そして「オープンアクセスの素晴らしさを無 視することはできない、これは知識の開放に向けての運動だ」と述べた。 Swedish Library Association(スウェーデン図書館協会)は公的助成による研究のための OA 政 策 を 呼 び 掛 け る キ ャ ン ペ ー ン を 行 っ た 。 International Council for Science Committee on Freedom and Responsibility(科学活動の自由・責務における科学委員会の 国際会議)は、Advisory Note on Science Communication(科学情報通信の注意)を公表 した。ガイドライン#9 では、科学情報は「可能な限り公にアクセス可能であるべき」とさ れている。International Federation of Library Associations and Institutions(国際図書 館協会連盟) (IFLA)は IFLA の総会に対し、「オープンアクセスに明確に依拠し、活動戦 略を発展させる」組織を要求する決議を起草した。 Paris THATCamp の参加者は、データやメタデータ、メソッド、コード、フォーマット、 そして研究結果への OA を要求した。Subbiah Arunachalam は the Consultative Group on International Agricultural Research(国際農業研究協議グループ)にグリーン OA 指令を 呼びかけるグループレターを書き上げた。注目すべき記事において、Fay Bound Alberti はイギリスにおける公的助成を受けた研究について OA を要求している。 トロント大学の会合において、Canadian federal funding(カナダ資金配分機関連盟)に OA 指令を受け入れるように要求する合意声明が採択された。カナダ政府は、OA を公的助 成を受けた研究に適用するよう求める勧告を含めたデジタル経済協議へのコメントを募集 した。 アメリカでは 2010 年、Federal Research Public Access Act(連邦政府研究パブリックア クセス法案) (FRPAA)が、2006 年の開始以来、さらに計画を促進させたが、投票には至 らず、111 回総会を終えた。FRPAA は、NIH における OA 指令の普及を図り、連邦政府最 大の 11 資金配分機関へとそれを拡張し、認可までの制限期間を 6 カ月へと短縮した。これ は 2009 年に上院に再提出され、2010 年、下院に提出された。2010 年の終わりにおいて、 この動議は上院で、超党派の 2 人の共同提案者を得、下院では 17 人の共同提案者がいた。 (112 回総会ではさらなる支持が期待できる。2010 年 2 月の SOAN における筆者の記事を 参照) FRPAA は 120 人のアメリカの大学理事長や学長、そして 41 人のノーベル賞受賞者らによ り支持を受けてきた。財界主導の商工会議所は 2004 年、連邦の OA 運用を支持しており、 代表して書簡を送ってもいるが、Elsevier が組織に加わった後の 2005 年から 2006 年、少 し事情が変わってきている。とはいえ、商工会議所が 2010 年、FRPAA に反対の意向を示 す前に(実際 4 月に反対の意向を示した)、FRPAA はすでに財界主導の経済開発委員会(メ ンバーに GE や IBM、Merrill Lynch、Pfizer、Toyota North America を含む)および、 NetCoalition(メンバーに Amazon、Bloomberg、eBay、Google、Yahoo らそのほか多く のプロバイダーを含む)の支持を得ていた。 SPARC がスポンサーとなっている、OA 政策が経済に与える影響に関する John Houghton の研究は、 「今後 30 年、FRPAA が提案するアーカイブ寄託から得られる潜在的、累積的利 益は、かかる費用の 8 倍となる」と結論づけた。FRPAA は著作権の制限期間のバラツキを 調整するという条件のもとで、Nature の編集者からも支持されている。 Todd Tiahrt(R-KS)は、FRPAA の全文を歳出予算案への修正条項として提出し、労働、 福祉・厚生サービスと教育の下院歳出委員会から、党派を越えた支持をうけた。しかし、 分科委員会の議長は彼に、修正案の適用範囲をアメリカの保健社会福祉省内の機関のみを 対象とし、分科会の権限を制限し、また開放の制限期間を 6 カ月から 12 カ月に延長するよ う要求した。分科会はその後、その結果を受け入れた。再出予算のプロセスが泥沼化する 中で、議会はばらばらの予算案を簡素化したものを含む、Tiahrt の修正案を一括法案にま とめた。しかし、12 月の委員会が死に体と化すなか、民主党の指導部は、共和党の議事妨 害の脅威に直面し、この一括法案が廃案となって(この議事妨害は財源のレベルでの話で あり、Tiahrt の OA 修正案とは全く無関係であった)。さしあたって議会は、政府に、別の 予算継続決議による予算を供与するであろう。Tiahrt は選挙を控えて退職し、復帰するこ とはなさそうであるが、112 回議会における Tiahrt の OA 案がどうなるかは分からない。 また、議会が死に体化している間議会の両院はアメリカ COMPETES(米国技術・教育・ 科学における卓越性に関する意味ある促進機会の創造法)再決議を通した。良いニュース としては、国立科学財団(NSF)や米国標準技術局(NIST)、エネルギー省の科学局 (Department of Energy's Office of Science)などに新たな資金供給を行う法案が通ったこ とである。先月の SOAN において、筆者は COMPETES への資金供給が、予算削減をして いる今の政府においては難しいだろうと予測したが、これは間違っていたことが分かり安 堵している。OA 関連としては、COMPETES の活動が、省庁間の公的アクセス委員会を設 立することであるが、これは良いニュースにも悪いニュースにもなりうるだろう。筆者が 先月、この状況をまとめた様に、「OA の支持者も反対者も、委員会が予測できないような 方法で、連邦の OA 政策の細部について、未解決のまま決着をつけてしまうのではないか と危惧していた。どちらも FRPAA のような強力な政策を出しぬけるかどうかを決めかねて いたのである」。 2009 年の 11 月から 2010 年の 1 月にかけて、ホワイトハウスのオバマ大統領は FRPAA の 様な計画を、 連邦政府をまたぐ NIH 政策へと拡張することについて、広く意見を募集した。 オバマ陣営はまだ、意見を調整し、政策反応を作成している。オバマの大統領令は、法律 制定により命令が恒久化されるようになるまで、政府機関を拘束でき、それは法律を補足 し、立法府に政治声明文を示すことができる。しかし、いずれにしろ 2010 年は、ホワイト ハウスがほぼ一年を通じて、この考えに協力的なコメントをしつつ、実行に移されていな い。ここでもし、何らかのアクションを起こしていたら、新たな議会の新たな状況下での 活動を強いられたであろう。この政策の最新情報については、先月の SOAN を参照された い。 ホワイトハウスはまた、待望された科学的公正性に関する大統領の覚書を公表するが、こ れは OA を提供するというよりは政治的圧力から政府系科学者を保護するものである。し かし、覚書の指示の 1 つに見られるように、二つの目的が重なっている。 「開かれた政府構 想と一貫して、政府機関はオープンフォーマット上でオンラインにアクセス可能とするこ とにより、科学技術の情報へのアクセスを拡張、推進すべきである…」 2010 年 1 月、下院の科学技術委員会により設立された学術出版会議は、アメリカ連邦機関 が最小の制限期間で、連邦が助成した研究への gratis OA を提供するよう勧告した。これは OA 指令を支持も反対もしていない。 7 月、アメリカ下院の監督委員会と、情報政策・国勢調査・公的文書の行政改革委員会は、 連邦による助成を受けた研究に OA を適用するかのヒアリングを開いた(特に FRPAA につ いてではない)。2008 年の下院司法委員会に提出されようとしていたヒアリングと同様に、 これは議会のメンバーに、出版側ロビィからは得られなかった情報をもたらした。例えば ジャーナルは、論文の著者には支払いはしないこと、他の国の多くは OA で運用している こと、そして、直接意見を求めても、出版側は NIH において OA を運用することの不利益 を、何も指摘しなかったということだ。 ヒアリング実施の期間中、the American Psychological Association(アメリカ心理学会) の科学本部長 Steven Breckler は、FRPAA や公的助成をうけた研究への公的アクセスを保 証する他の政策に反対する、親オバマ的な新議論を展開する。すなわち、これらの政策が、 2009 年 11 月のオバマ大統領の政府機関透明化に関する覚書に違反している可能性がある、 というものだ。オバマの覚書は国家の安全やプライバシー、その他の“必要不可欠な利益” を例外とするよう求めており、Breckler は公的資金を使い、民間の出版社を保護すること は、この“その他必要不可欠な利益”に当たるとした。 支持が表明される中で、National Association of Graduate-Professional Students(大学院 生連盟)は、公的助成金を受けた研究に対する OA 指令を支持し、7 月の公聴会を支持する 声明を出した。The Association of Health Care Journalists(医療ジャーナリスト協会)は 議会に、公的助成をうけた研究への OA の適用を支持し、議会に公開書簡を提出した。ロ ックフェラー大学出版の理事、Mike Rossner は出版業界からの反対に対処し、下院の科学 技術委員会に書簡をおくった。 研究論文以外の OA 運用を提案する 2 つの法案もあった。下院の Steve Driehaus(オハイ オ)は、Access to Congressionally Mandated Reports Act(議会による強制の報告書への アクセス法) (HR6026)を提示し、議会や下院に委任された報告を OA で運用するとした。 Steve Israel(民主・ニューヨーク)は Public Online Information Act(公的オンライン情 報法)(HR4858)を発表し、現在公開が望まれているが、紙面でしか入手できないすべて の政府情報に対し OA の運用を目指した。 (その他のアメリカの OA に関する法案について は、第6、7節を参照) 最新の会計検査報告書によると、2009 年に出版された、Wellcome の資金援助を受けた研 究中 59%の査読付き論文は、Wellcome 社の“完全な”OA の為の 3 つの基準を順守してい る。すなわち PMC か UKPMC を通じた即時の OA(制限期間なし)、刊行される編集状態 (著者の原稿そのままではなく)、論文レベルでのオープンライセンス(単に無償 OA では ない)である。 (Wellcome の法令順守率は 2007 年以降、倍となった。)NIH は NIH の OA 政策を順守しているか否かについて、被譲与者のモニターを補助するツールを開発した。 2010 年年末、NIH はいまだ OA 運用し 6 カ月以上の認可制限期間を設けた、世界で唯一の 医療調査基金である。他の 20 の OA を運用した医療調査機関はこの期間の上限を 6 カ月と している。 JISC と Research Information Network(研究情報ネットワーク)(RIN)は、2 つの研究 プロジェクトの OA 運用に対し資金提供した。1 つは、研究論文のよりよいアクセスへの移 行のダイナミクス、もう 1 つはアクセスギャップの位置についてである。JISC は「オープ ンアプローチ」を扱う個別の基金計画を立ち上げた。Competitiveness and Innovation program(欧州競争力・イノベーションプログラム)は、OA プロジェクトへの資金を求め ている。科学的刊行物の利用に関する国際ネットワークは、10 のプロジェクトに OA を推 進するための 300(原文中単位不明)を付与するコンペティションを立ち上げた。Wikimedia Germany は OA 推進の“際立ったアイデア”に対し 500 から 5000(原文中単位不明)を 提供することを申し出た。 2010 年の間に、情報・アドボカシー国際 OA ウェブサイトがフランス、アイスランド、ア イルランドで設立された。スウェーデンはこの国際サイトを Phase Two(第 2 段階)とし、 ドイツのサイトはオーストリアとスイスをカバーするまで拡大した。 比較に関しては、資金配分基金による OA 政策の筆者のレビューを参照(原文中にリンク)。 (2)大学におけるオープンアクセス政策 2010 年、30 もの研究機関が、職員の研究論文のグリーン OA 指令を受け入れた。オースト リア大学、ロンドン大学の Birkbeck カレッジ、Brunel 大学、Chalmers 技術大学、Concordia 大学、デューク大学、Edith Cowan 大学、エラスマス大学ロッテルダム校、Ghent 大学、 ハーバードビジネススクール、ハーバード神学校、Instituto Polit nico de Bragan、 Instituto Universit io de Lisboa、ハワイマオア大学、香港大学、インディアナ大学-パデュ ー大学インディアナポリス校、V. N. Karazin Kharkiv 国立大学、リンカーン大学、リスボ ン大学、インド国立海洋機関、Catalonia オープンユニバーシティ、プエルトリコ大学法 科大学、リーディング大学、ロリンズ大学 Faculty of Arts and Sciences、ロンドン大学、 ロイヤルハロウェイ、Strathclyde 大学、スウェーデン国立図書館(職員の出版方針)、ダ ブリントリニティカレッジ、ティーズサイド大学、トロムソ大学。 これらは 15 カ国に及ぶ。オーストラリア(2)、ベルギー(1)、カナダ(1)、香港を含む 中国(1)、インド(1)、アイルランド(1)、オランダ(1)、ノルウェー(1)、ポルトガル(3)、 スコットランド(1)、スペイン(2)、スウェーデン(2)、ウクライナ(1)、イギリス(6)、 プエルトリコを含むアメリカ(6) ウェークフォレスト大学の図書館において、2010 年、学部内の OA 指令があった。 2 つの機関が、過去の OA 政策を強化した。マルメ大学は 2003 年の OA 政策の指令を作成 した。カンザス大学は 2009 年の OA 政策を強化し、権利放棄を前提に寄託と認可の双方を 必要とすることを明確にした。 これらの OA 指令の中には、アイルランドで初めてのもの(ダブリントリニティカレッジ)、 カナダにおける初の組織内指令(Concordia:コンコーディア)、初の神学校(ハーバード) での指令、そしてスウェーデンにおける初の義務的指令(Chalmers:チャルマース)など がある。カンザスの政策は 2009 年における初の大学を通じた OA 政策であり、その強化版 は、初のアメリカの公立大学における明確な OA 指令となっている。 The Polytechnic University of Madrid(マドリッド科技大)は、異種のグリーン OA 指令 を受け入れた。これは組織内で出版されたすべての研究論文に適用されるのではなく、大 学が助成したものすべてに適用される。こうした政策は 2009 年、スペインの他の 2 大学に よって先駆けられた。サラマンカ大学とマドリッド CarlosⅢ大学である。2010 年、この種 の政策がスペイン以外の大学によって初めて、Washington State Board for Community and Technical Colleges(ワシントン州コミュニテイーアンド 工科短大教育局:SBCTC) により、適用された。このワシントンの政策は、コンソーシアム全 34 の大学で SBCTC フ ァンドを受けた研究すべてに適用するものである。 3 つの OA 指令が 2010 年前に採択されてはいたが、明確に表明されたのは 2010 年が最初 であった。スウェーデンの Bleking 技術大学、ノッティンガム大学、構造物調査協会、カ ナダ国立研究機構の中の一組織などである。Ian Henderson がカナダの政策を評したよう に、大学のリポジトリ中の蓄積を直接指令するのではなく、単に、促進委員会がリポジト リ所蔵の論文を検討することだけを規定するものである。これらの“(OA の)促進と(文 書の)保有権”のインセンティブはリエージュ大学と Edinburgh Napier 大学の双方により、 2008 年に始められ、グリーン OA のもっとも強力かつ自然なインセンティブとなっている。 筆 者 は カ ナ ダ に お け る 最 初 の 例 で あ る と 捉 え て い る 。 リ エ ー ジ ュ に お い て 、 Rector Bernard Rentier は 2010 年の急速な発展(一年で 10000 から 40000)が、大学の指令政 策と、促進・保有権のインセンティブの為であるとしている。 学科レベルの OA 指令を数えるとすれば、“資金提供者としての大学”の指令(ワシントン 34の SBCTC 指令は控えめに 1 つとする)、指令へと強化された、以前に適用された政策、 そして 2010 年に最初に公表され、既に適用された政策など、 15 カ国で 72 の指令にも上る。 比較として、2009 年には 14 カ国で 52 の総合大学の OA 指令と 8 学部の OA 指令の、計 60 の指令があった。これは 2009 年を通じ 20%の増加を示している。 (34 のワシントン SBCTC 指令を 1 つではなく 34 と計上する場合、計 105 に上り、2010 年の成長率は 75% に上る)。 グリーン OA 政策のうちの 7 つはある程度無料の OA を提供している。アリゾナ州立大学 の図書館、オーストラリア国立大学、ハーバードビジネススクール、ハーバード神学校、 サッサリ大学、スウェーデン国立図書館、34 の大学を代表する Washington State Board for Community and Technical Colleges(ワシントン州コミュニテイーアンド 工科短大教育 局:SBCTC)などである。これを 5 と数えようが(政策決定の数)、38(取り上げた機関 の数)としようが、いずれにしろ 2009 年の3つの無料グリーン政策を大きく上回る。筆者 がこれまで論じてきたとおり、無料グリーン指令政策は、早急過ぎると著者に害を及ぼす ものだが、他の OA 政策や OA 運動により、出版社がこれら政策の条件下で著者の論文を 出版するのを拒みにくくなれば、グリーン指令は賢明な選択であり、正当化しうる。筆者 は、諸機関に影響力のバランスの変化や、政策を強化する、適切な機会を注意して見定め るよう勧めてきた。また筆者は、正当な時期が、客観的な基準により明らかになるという よりも、自己実現を目的とする幾人かのリーダーの行動に依存している場合もあると述べ てきた。増加する無料グリーン政策は、この政策を支持する集団が確立しつつあることを 示唆している。 こうした無料グリーン政策に加え、2010 年の elFL の、発展途上国や移行期の国を対象と したオープンライセンスの研究により、中国やポーランド、南アフリカのリポジトリが既 に CC ライセンスの下で無料のグリーン OA を提供しており、他のボツワナとポーランドと 南アフリカのリポジトリがこれを推奨していることが分かった。同様の研究は、20 カ国の、 調査した機関のうち 66%が機関リポジトリを保有し、13%がグリーン OA 指令をしている ことが分かった。第1節で述べたように、the US Scholarly Publishing Roundtable(アメ リカ学術出版会議)は、連邦により助成された研究に対し、無料のグリーン OA 指令を行 うことを推奨している。 15 の機関はそれぞれ OA を要求するのではなく、 “推進”する政策や議決を採択した。それ らの機関は、アリゾナ州立大学図書館、Forschungszentrum Dresden-Rossendorf、Freiburg 大学、カールスルーエ工科大学、College of Mount Saint Vincent、ネブラスカ大学リンカ ーン校、ノーザン・コロラド大学、オレゴン州立大学海洋大気科学科、クイーンズ大学図 書館、サンホセ州立大学、サッサリ大学、Stellenbosch 大学、イギリス癌研究所、バージ ニア大学、バージニアコモンウェルス大学である。 2009 年度には推奨するだけの政策が 10 あるのみであった。 (この数の成長が正味多くなる か少なくなるかは、読者が調べてほしい)しかし、この 8 年間、OA を要求・推進するより 弱い政策を受け入れた機関があるが、それらよりも多くの機関が OA 指令を受け入れた。 2010 年には、推進政策の 5 倍近い実際の指令があった。 OA を CIARD(Coherence in Information for Agricultural Research for Development: 農業研究発展のための情報統合)から農業研究に適用されたマニフェストは、分類・換算 するのが難しいが、重要な前進が見られる。少なくとも 36 の CIARD 機関のパートナーが、 マニフェスト(CIARD イニシアチブのパートナーは、一連の公共利益に基づき、研究成果 をアクセス可能にすることを合意した)に条文化された原則に従い、OA 政策を受け入れる ことに合意した。しかし、これらが政策を受け入れるまで、36 の新たな指令が出たのか、 もしくは 36 の新たな OA 推進政策が打ち出されたのか、または指令と推進政策が混在して いるのかは明確ではない(このマニフェストは我々の特殊な機関的要求に従い[パートナー により]、適用されると思われる)。さらに、機関パートナーの中には研究機関があるが、そ の中には資金配分機関として分類できるものもあるであろう。特定のカテゴリーの重複を 避けるため、これら 36 の政策を基金や大学の指令のカテゴリーに加えていない。 The International Alliance of Research Universities(国際研究型大学連合:IARU)は、 メンバーである10大学にグリーン OA を“勧誘”または推進するよう求めた。IARU は、 メンバーがかなり異なる状況にあるため(オックスフォードやケンブリッジ、バークレー、 イェールを含む)、強い姿勢は取らなかった。筆者が知る限り、IARU のメンバーはまだ、 協会推奨に応じて、政策を適用してはいない。 欧州とラテンアメリカの 6 カ国を代表する、NECOBELAC プロジェクト(Network of Collaboration Between Europe & Latin American-Caribbean countries:欧州・ラテンア メリカ-カリブ諸国間のネットワーク協調)において、6 つの機関パートナーは Bogot 宣言 を発表し、 「自国で科学的成果にオープンアクセスを促進する」ことを誓った。この 6 つの 機関パートナーのうち、少なくとも 3 つは資金配分機関であり、2 つは大学である。そして 4 つは既にグリーン OA に関する政策を示している。(イタリアの Instituto Superiore di Sanit 、 ポ ル ト ガ ル の Universidade do Minho 、 ス ペ イ ン の Consejo Superior de Investigaciones Cient íficas、イギリスのノッティンガム大学)これは、他の 2 機関もグリ ーン OA を促進していることを意味していると考えられる(ブラジルの BIREME と、コロ ンビアの Instituto de Salud Publica)。 12 大学が学位論文に対する OA 指令を採択、前もって OA 指令を採択することを宣言した。 Adam Mickiewicz 大学、ノッティンガム大学、San Joes 州立大学、バージニア工科大学、 Sassari 大学、ヒューストンのテキサス大学生物医学大学院、Turin 大学、Wageningen 大 学と研究センター、ウェストミンスター大学などである。 2010 年、大学の OA 政策のうち 9 つが満場一致の投票で採択された。デューク大学、北コ ロラド大学、オレゴン州立大学の海洋大気学部、プエルトリコ大学法科学校、ロリンズカ レッジ、San Joe 州立大学、ダブリントリニティカレッジ、Wake Forest 大学図書館、バー ジニア大学などがある。対象的に、2009 年には 12 の投票があり、2008 には 5 つしか行わ れなかった。 2010 年末、SPARC Campus Open Access Policies (SPARC キャンパスオープンキャンパ ス政策)(COAP)プロジェクトは、77 の学校が OA 政策を考慮しているか、もしくは OA 政策を推敲していることを把握している。2009 年末には、その数は 53 であった。 政策を検討している多くの学校はまだ、“実施校”として数えられるに至っていない。しか し、多くは審議の兆しを見せている。コスタリカ大学、北海道大学(現存の政策を強化し ている)、インド Inflibnet センター、アルバータ図書館協会、北メルボルン Institute of Tertiary and Vocational Education and Training(高等・職業教育機関)の、学部生出版 プログラム、ペンシルバニア大学、北テキサス大学、Twente 大学、アムステルダム VU 大 学などがある。(ここでは 2010 年以前に審議された形跡のある機関は除外した) 周知の兆しから政策審議が推測されるものもある。例えば、コスタリカ大学は、この新た な機関リポジトリが“自発的な資金配分として始まった”として、指令の実施を示唆して いる。マハトマ・ガンジー大学は既に ETD 指令を行っているが、副総長の Rajan Gurukkal は世界規模の OA を要求する会議を開き、機関自体の政策が ETD のものをまもなく超越す る可能性がることを示唆した。 オーストリア大学会議(sterreichische Uneversit enkonferenz)は、メンバーの機関が法 的に許される限り早急にグリーン OA を研究に提供することを推奨した。The German Library Association(ドイツ図書館協会)(Deutsche Bibliotheksverband)は OA を承認 し、ドイツの学術図書館にこれを承認させる声明を発表し、機関内からそれを支援する人 員を採用している。Universities UK(英国大学協会)は、the new Research Excellence Framework(新研究評価)に認可されたすべての論文に OA を適用するよう要求している。 第1節で述べたとおり、アルハンブラ宣言は大学と資金配分機関の双方におけるグリーン OA 指令を要求している。これは Denmark’s Open Access Committee(デンマークオープ ンアクセス委員会)や Southern African Development Community(南部アフリカ開発共 同体)の新たな OA ワーキンググループなどが既に実施している。 「エビデンスや政策、システム、 10 の主要機関(イギリスの 9 機関とアメリカの 1 機関)が、 アドバイス、ガイダンスを調整し、著者らにとってオープンアクセスを選択しやすく、す べての大学の利益にかなうものにするために」 、UK Open Access Implementation Group (イギリスオープンアクセス施行グループ)を組織した。このグループは現在、エジンバ ラ大学、Salford 大学、Universities UK(英国大学協会)、Research Libraries UK(イギ リス研究図書館協会)、Society of College, National and University Libraries(英国大学国 立図書館協会)、JISC、イギリス研究会議、Wellcome Trust、Association of Research Managers and Administrators UK(ARMA:英国研究管理団体)、そして Public Library of Science(PLoS:科学公共図書館)などの代表からなる。 SPARC と Sience Commons は、Covington と Burling の 2 人の弁護士(Simon Frankel および Shannon Nestor)の手による、いかにして大学の OA 政策での法的落ち度を回避で きるかについての報告書を公表した。これはハーバードと MIT の政策をモデルとして使っ ている。Alam Swan は JISC が OA 指令でビジネスを行うための重要なレポートを手掛け、 OA を適用した際のコストと利益をモデル化した。彼女は次のように計算する。 「出版物の 定期購読を合わせた大学リポジトリモデルの、研究と図書館の年間のコスト節約は 100,000 ユーロから 1,320,000 ユーロに及ぶ…」。 サウサンプトン大学の EPrints チームは OA Week のオープンアクセス指令採択チャレンジ を立ち上げ、Alma Swan は結論を示した。この週だけで、7 つが機関での指令を採択し、1 つが部署での採択を受け入れ、3 つが論文への OA 指令を採択し、そして 3 つが部署での指 令を提案していることが分かった。 筆者の考察によると、2010 年 8 月は一カ月を通して(OA ウィークだけではなく) 、歴史上 OA 政策にとってもっとも多産な時期となった。この時期 には、2 つの資金配分基金が OA 指令を採択し、6 つの研究機関で OA 指令が採択され、29 の組織を代表する複数機関の共同体が OA 指令を採択し、3 つが OA に関する議決や誓約を 受け入れ、1 つが論文の OA 指令を採択し、3 つの OA 論文指令が以前に採択されていたが 10 月に公表され、2 つが近々OA による運用を行うとしており、1 つの OA 指令が準備段階 に入っており、そして 1 つが部署内での OA 指令を提案している。占めて 20 カ国の 38 機 関において 20 の活動が示された。(9 月の SOAN で筆者が刊行したリストでは、1 つ見落 としているものがあった) Harvard’s Office for Scholarly Communication(ハーバードの学術交流オフィス)は、大 学の OA 政策モデルのバージョン 1.7 を公表した。JISC は、学術交流を改善する 90 活動 を提案する学術交流活動ハンドブックを出版したが、多くは OA についてのものであり、 そのうちの 16 項目は大学リポジトリを通じたグリーン OA 政策についてのものであった。 OA ウィークの間、JISC’s Research Communications Stratery project (JISC の研究交流 戦略プロジェクト)は、OA アンサーのホームページを立ち上げ、回答の補助にソースへの リンクを加えた FAQ(Q&A)方式とした。ワルシャワ大学の、数理コンピューターモデル 学際センターでは、Polish(Przewodnik po otwartej nauce)上での OA のガイドを出版した。 Reme Melero らは、スペインの Consejo Superior de Investigaciones Cient icas(CSIC)内 の Instituto de Agrogu ica y Tecnolog de Alimentos(IATA)で MELIBEA を立ち上げた。こ れは、大学と資金配分機関の OA 政策のリストであり、それぞれを項目に分け、評価して いる。 Saskatchewan 大学の学生は OA 政策を強く要求している。カルガリー大学の学生学術集会 はカルガリー大の学部と研究者らに OA を支持するように要求している。(Calgary’s Division of Library and Cultural Resources(カルガリー図書部・文化リソース部)は前年 度に OA 指令を採択したが、その他機関はいまだ採択してはいない。 )学生主体の OA 促進 グループであり、発足当初は Steering Committee(運営委員会)と名乗っていた The Right to Research Coalition(研究権連合)は、OA 擁護のブログを立ち上げ、学生が OA を学び、 行動を起こす手助けとなる最新記事を載せたサイトをブログに設置した。それぞれの学生 が今、組織外の者でも自分の主張を Right to Research に掲載することができる。2010 年 度末、連合は 550 万人以上の学生を代表する 28 の学生グループを取りまとめている。 比較に関しては、大学における OA 政策の筆者のレビューを参照(原文中にリンク)。 (3)数字上の増加 2010 年度末、Directory of Open Access Journals(DOAJ:オープンアクセスジャーナル ディレクトリ)は、2009 年末の 4535 誌から増加し、5936 誌の査読付きジャーナルをリス トに挙げた。2009 年以来、加えられたものは 1401 誌にも上り、2009 年の 723 誌の倍近い。 2009 年には一日に 2 誌ずつ加えられた計算となるのに対し、2010 年は 4 誌が加えられた ことになる。2009 年は 19%増加したのに対し、2010 年は 31%の割合で増加した。 OA リポジトリの数は Scientific Commons では総計 111(10%)の割合で増加し、 OpenDOAR は 533(34%)増加した。ROAR の図表を用いると、2010 年は一週間当たり 10 の新たなリポジトリが追加されたことになる。Scientific Commons は今、世界で 1269 のリポジトリをリストしており、OpenDOAR は 1817、ROAR は 2090、となっている。 Scientific Commons によると、これらのリポジトリに所蔵されている記事数は 2010 年、 5,980,186 増加し、これは 19%の増加に当たる。また一日に 16,000 の割合で増加している。 (これはかなり厳しく見積もった数である。というのは、SC は去年の最終四半期に、その 数値を更新していないからだ。) 本節の数値の多くは、British Columbia Electronic Library Network(ブリティッシュコ ロンビア州電子図書館ネットワーク)のプロジェクトコーディネイター、Heather Morrison により集計・計算されたものである。 増加数の比較に関しては以下を参照(原文中にリンク)。 (4)オープンアクセスアーカイビング(グリーン OA) 前節において、2010 年の週平均で世界の OA 支持者が 10 以上の新たな OA リポジトリを 立ち上げ、世界規模の OA リポジトリのネットワークにおいて 115,000 以上の新たな記事・ 書籍を所蔵したことを確認した。これとは別に、グリーン OA で起こったことは何か? 諸調査によると 85%のオーストラリアの大学が機関リポジトリを保有し、発展途上国・過 渡期の国のうち 66%の機関がリポジトリを保有、そして中国科学院の 63 機関がいまや OA リポジトリのホストとなっている。 ワシントンを拠点とする Banco InterAmericano de Desarrollo はラテンアメリカ全域にお いて機関リポジトリを推進するプロジェクトに資金提供した。(Estrategia Regional y Marco de Interoperabilidad y Gesti ・ para una Red Federada Latinoamericana de Repositorios Institucionales de Documentaci ・ Cient 凬 ica)。アルゼンチンの科学技術 庁 と 大 学 評 議 会 は 、 OA リ ポ ジ ト リ の 基 金 プ ロ グ ラ ム を 立 ち 上 げ た 。 オ ラ ン ダ Forschungsgemeinschaft (DFG)は OA リポジトリを支持する基金プログラムを立ち上げた。 アイルランドは OA リポジトリの多国間ネットワークへの国内窓口を設け、DuraSpace は DSpace と Fedora を使う新メンバーや機関に向け、Registered Service Provider Program (サービスプロバイダ登録プログラム)を立ち上げた。JISC は 2 つのプログラムを立ち上 げた。1 つは“研究実践などに対する寄託を組み込むことで、著者の論文寄託を奨励する” 方法に焦点を当てるもので、もう 1 つはリンクデータを通して所蔵物をより目に見える、 入手可能なものとすることに焦点を当てるものである。コーネル大学は 85 機関の arXiv で 発生したコストを運用するために 300,000 ドル以上を確保した。 注目すべき活動着手の中に、高エネルギー物理研究所 CERN、DESY、Fermilab、そして SLAC などから、INSPIRE のベータバージョンが挙げられる。INSPIRE は、この分野で 主要なグリーン、ゴールド OA の、統一インターフェイスと改良型検索を提供する。The International Census of Marine Life(海洋生物国際調査)プロジェクトは OA リポジトリ Ocean Biogeographic Information System (海洋生物地理情報システム (OBIS))-を立 ち上げ、10 年におよぶ研究の集大成となった。共生 Texas Digital Library(テキサスデジ タルライブラリー)は、州をまたいだデータベースとウェブサイトからの水資源研究の促 進に OAI-ORE を使用し、OA Texas Water Digital Library (TWDL:OA テキサス水資源 デジタル図書館)を立ち上げた。ハワイ大学は Mana’o を再度立ち上げ、主催した。これは 2007 年 10 月に Alex Golub が開始し、2009 年 10 月に中止となった、人類学分野の OA リ ポジトリである。 Pubmed Central Canada が、国立研究会議のカナダ科学技術情報機関、カナダ健康調査機 関、そしてアメリカ医療国立図書館の共同プロジェクトとして立ち上げられた。スペイン の科学革新省とマセドニア Metamorphosis Foundation が少数の資金配分機関とともに、 独自の機関リポジトリを立ち上げ、それらに対応する政策がすぐに可能であることを示唆 している。 カナダ国立研究会議は、カナダ Virtual Health Library(CVHL:バーチャル保健図書館) (CVHL)、Canadian Health Libraries Association(CHLA:カナダ保健図書館連合)と Canadian Institutes of Health Research(CIHR:カナダ保健研究所)との合同プロジェ クトなどを発表した。American Medical Informatics Association(AMIA:アメリカ医療 情報協会)はグローバル保健情報科学パートナーシップを立ち上げた。これは南半球に OA の保健情報を広める非営利活動である。 モルドバの経済研究学会の科学図書館は経済分野で、国内初の専門 OA リポジトリを近々 立ち上げることとなる。ドイツ最大の製本サービス、Mister Wong はユーザーがほぼすべ てのフォーマットのファイル・ドキュメントをアップロードでき、CC ライセンス無しでも それを配布できる機能をリポジトリに加えた。 アメリカ研究開発基金は、地域の OA デジタルライブラリーを北アフリカ向けに始めた (Algeria, Morocco, Tunisia)。2006 年、同機関はイラク向けに同様のデジタルライブラリ ーを設立し、2010 年、これをイラク政府に引き継がせた。韓国、中国、日本の国立図書館 は中国・日本・韓国デジタルライブラリーイニシアチブを開始した。 オーストラリア大学図書館会議は公開奨学金についての声明をアップデートし、そして関 係者への OA について教育や、研究者の OA での論文作成の補助、機関リポジトリの立ち 上げ、そして OA を公的助成を受けた研究やデータに最大限活用するためオーストラリア 政府との連携などを手掛けるメンバーを募集した。ニューメキシコ大学の e-奨学金事務所 は、OA、データ共有、著作権に関する学部・学科との協議の支援を行う“e-奨学金革新セ ンター(eSIC)”を提案した。SPARC はオープンアクセスリポジトリを支持する声明を発 表した。 これらの成長やサポートは、OA、特にグリーン OA に対する継続的な不認知や無理解と関 わりがある。学会と専門業界の出版協会(ALPSP)による英国の学会メンバーの調査によ ると、OA が OA ジャーナルであり、その概念が支持されていることを殆どの学生が知って いると答えたが、具体的に知っている者は殆どいなかった。 “60%が OA ジャーナルを読ん でおり、25%がそれらで公開していると答えたが、いずれも、名前が挙がったジャーナル のおよそ 3 分の 1 は OA ではなかった。”加えて、“セルフ・アーカイビングが何かを知っ ていたのは半分以下であり、36%がそれを良いと答えたが 50%は信頼していなかった。半 分以下がセルフ・アーカイビング論文のリポジトリを使用したと言っているが、解答の 13% が、実際はセルフ・アーカイビングではなかった。29%が自分の論文をセルフ・アーカイ ブにしていると述べたが、その中の 10%はいずれも公的にアクセスできるサイトではなか った。”Tania Bardyn の UCLA 研究者の調査は、NIH 政策の声明の意図を知らず、95.4% がジャーナルでの出版時に、著作権の取得を行ったことがなかった。 Rowena Cullen と Brenda Chawner による調査によるとニュージーランドは“研究活動の ペースは、機関リポジトリの概念を取り入れるには遅く、そして自身の研究へのアクセス を増加させるリポジトリの使用や、他人の論文へのアクセスにあまり興味がなさそうであ る。所蔵量は少ない…” 。東アングリア大学における調査では、同様に“論文著作権の認知 レベルは研究活動・研究者らの間でもっと高くあるべきだ”ということが示された。オー プンジャーナルシステム(OJS)を使ったノルウェージャーナルの調査で、Karolina Lindh と Mikael Graffner は、ジャーナルのうちは 2 誌がセルフ・アーカイブを認めておらず、4 誌がセルフ・アーカイビングの政策が明らかでないことが分かった。Muluken Wubayehu Alemayehu のノルウェーの著者らに対する調査では、 “機関リポジトリへの認知度は低いが、 大学の機関リポジトリへ論文寄託には関心があった”とされている。 “学術研究の成果への 無料アクセスの提供に積極的であった”にも関わらず、である。イギリスの(1982 から 1994 年の間に生まれた)Y 世代(1982-1994 に出生した世代)のドクターコースの学生に対する 英国図書館の研究では、 “彼らは一般的に OA を支持するが、多くはオープンアクセスが何 を意味するのかを明確には知らず、よってオープンアクセスのリソースを使うのには消極 的であることがわかった。”とした。 Hideki Uchijima は、査読付き学術ジャーナル論文の年間総数のうち、ほんの 11.1%だけ が、国の 158 の機関リポジトリを通じたグリーン OA であることを報告した。Elisa Mason は Refugee Studies ジャーナルにおいて出版された 119 論文のうち、OA リポジトリに寄託 されているのはほんの 1 論文であることを発見した。Klaus Graf はドイツの主要な LIS ジ ャーナルである、Zeitschrift f・ Bibliothekswesen und Bibliographie により 2008 年に出 版された 24 論文のうちのほんの 1 つが 2010 年においてオンラインであることを確認した。 Jorum Learning and Teaching competition(ジェルム学習・指導コンテスト)の受賞者 6 人のうち、コンテスト当時ジャーナル・リポジトリに論文を寄託している者はいないこと が分かった。 Research Information Network(研究情報ネットワーク)(RIN)と OCLC Research が“機 関の壁を越えた文書・情報の共有”に関し、大学がウェブ上の手段を提供するよう推奨し た際、彼らは“オープンアクセス”を使う気にはならなかった。ユネスコの報告書は発展 途上国の著者にかかる料金の影響を懸念していたが、殆どの OA 雑誌に料金はかからず、 グリーン OA がゴールド OA の、無料の代替手段であるとは気づいていないようであった。 UK Council of Research Repositories(イギリス研究リポジトリ評議会)の議長である Graham Stone ですら、公的声明で“私は、そうあるべきかどうかはわからないが、ゴール ドを唯一の OA として認めねばならない。…” 明るい面を挙げると、Yassine Gargouri や Stevan Harnad らは、グリーンとゴールドの両 方にある論文をグリーンから除外しても、OA 論文に多いのがゴールドよりもグリーン OA であることが分かった。同様に、Joseph Hardin と Aristeles Caro らは Universidad Politecnica de Valencia やミシガン大学などの学部の 26%がセルフ・アーカイブのポスト 出版を有し、低い数字ではあるが、OA ジャーナルで公開した割合の 17%を大きく上回る という結果が得られた。2009 年度の生物医学の出版に限ると、Keiko Kurata らにより、 OA の割合はここ数年にわたって上昇したが、ゴールド OA やジャーナル関連の成長の殆ど が最初にゴールドを使い、次にグリーンを使っている(PubMed Central におけるジャーナ ルの論文寄託などに見られる)、ということが分かった。彼らは次のように述べている。 “機 関リポジトリや著者のサイトからアクセス可能な OA 論文の割合はあくまで低い”。Ithaka の調査では、研究者の 3 分の 1 が論文をグリーン OA にしているが、半分はその計画は無 いと判明した。 Bo-Christer Bjk らは OA の量について、2008 年に出版された論文を基に、これまでで最 も完全な調査を発表した。彼らは 2008 年に出版された研究論文のおよそ 5 つに1つは、何 らかの形式にてオンラインで無料となっていたことを発見した。OA 論文については、およ そ 58%がグリーン OA で、42%がゴールド OA であった。OA 率は地球科学において最も 高く、化学において最も低かった。医学、生化学、化学の分野において、ゴールド OA は グリーンよりも広く使われており、他のすべての分野ではその逆であった。DINI 認証され たドイツのリポジトリの Germany’s Netzwerk von Open-Access-Repositorien は、医療分 野が 11.7%の寄託率で、他の分野を上回ったことを確認した。Holly Mercer は、学術図書 館の学術論文のうち、半分近く(49%)が、何らかの形で OA であり、これは以前の研究 における報告数よりも多いことを確認した。David Lipman は 2009 年、PubMed Central に所蔵される論文の 98%が少なくとも一度はアクセスされ、69%が少なくとも 10 回はア クセスされていたことを報告している。 Graham Currie が運送の分野における研究の OA リポジトリである、SORT(運送の社会 研究)のユーザーを調査したところ、 “全ユーザーの 56%…また専門家/熟練者の 65%…が、 SOAT を重要/非常に重要と考えている”ことがわかった。RAND ヨーロッパと Farhana Sarker らはそれぞれの研究で、機関リポジトリが高等教育機関において、機関の利益より も著者や読者に利益をもたらすことを発見した。 Les Carr がコンピューター科学における Mendeley の所蔵と、サウサンプトンにおける自 身の学部のリポジトリを比較したところ、Mendeley はより多くのリポジトリ記録を有する が、サウサンプトンはより多くのフルテキスト論文を有することが分かった。機関リポジ トリに 1 票と数えられる。しかしながら、この報告ではケンブリッジの教員と Mendeley のメンバーが 53 人混在している。ケンブリッジの機関リポジトリ(IR)で論文を寄託した のは教員 2 人のみである。これは Mendeley が IR を利用せずとも教員の関心を引きつけた ことを示唆している。しかし残念なことに、53 人のうち実際に Mendeley にテキストを寄 託していたのは 9 人だけであった。その間に、Mendeley は API を開始し、OA 論文を選別 するために検索エンジンを強化した。7 月、Guardian 紙は Mendeley を“世界を最良の方 向に導くであろう”プロジェクトとした。2010 年末には、Mendeley は 5660 万の研究論文 を記録し、そのうちの少なくとも 297,000 は gratis OA であった。 Jason Priem と Kaitlin Light Costello は、学術ツィッタ―が時に論文自体というよりはむ しろ、論文についてのブログ投稿、または他のソースにつながり、こういった機能が論文 に対する課金からうまく逃れる手立てとなっていることを確認した。 OA による引用の優位性に対して調査が続けられた。これは、変数を見出だし、OA 論文の 引用増加のインパクトが OA 自体の影響なのか、もしくは OA リポジトリに彼らの論文を 寄託するという著者の決定の影響であるかどうかの断定を試みた。OA での引用を認めない 傾向について、Philip Davis による最近の研究では、記事を APS ジャーナルの OA と他の TA にランダムに出版されるようにすることによって、自主的な選択によるバイアスを取り 除いた; OA 論文が TA 論文より引用件数が少ないが、TA 論文より頻繁にダウンロードさ れていることが分かった。OA 引用における優位性を認める傾向について、Yassine Gargouri、Stevan Harnad らによる最近の研究は、OA での引用の優位性が、自主的な OA アーカイブと指令による OA アーカイブとでは同程度であったことを示し、自主的な選択 のバイアスを除外した。同様に、農業研究に限定されているが、Kayvan Kousha や Mahshid Abdoli らの最近の研究では、OA の引用における優位性を確証するために、OA と非 OA 出 版物の無作為標本を使用した。Steve Hitchcock はこの問題の研究に関する、自身の膨大な 文献目録をアップデートし続け、そして、Ben Wagner と Alma Swan は現在までの論文の 分析を発表した。 英国 PubMed 本部は、ユーザーが寄託した記事は全て、ユーザーがクリックすると Web of Science の引用情報を参照できる機能を加えた。RePEc は、新しい引用や論文、文書、シ リーズやジャーナルに関して、RSS の提供を加えた。また、有害でまぎらわしいヒットを 除外するために、使用している数的指標をアップグレードした。BioMed Central のオープ ンリポジトリは、デジタルオブジェクト識別子(DOI)の所蔵に Scopus からの引用数を加 えた。Maria Cassella は機関リポジトリの成功を判断する、一連の指標を提案し、また Mellon 財団は MESUR(Metrics from Scholarly Usage of Resources:リソースの学術利 用に基づく指標)を強化するためインディアナ大学に補助金を提供した。 Arthur Sale は、論文を機関リポジトリに所蔵できるよう著者らを説得し、自身の経験から 得た教訓を書き上げた。Welsh Repository Network(ウェールズリポジトリネットワーク) は、学部の反対や、OA アーカイブへの誤解に対処するための提案、もしくは成功事例のリ ストを編集した。 JISC はリポジトリ所蔵増加を目指したプロジェクトをいくつか抱えている。JISC は Association for Research Managers and Administrators(研究管理者・運用者協会)とと もに、リポジトリを運用する際に避けるべき落し穴について調査した。そして、リポジト リに関する教訓や成功事例に触れることができるよう、新たな基金プログラムを立ち上げ た。その新たな RePosit Project は、リポジトリ寄託のインターフェイスとして、Symplectic 出版物管理システムの利用を広げることを目的とした。CTREP(ケンブリッジ TETRA リ ポジトリ強化プログラム)は、目標とされたリポジトリの所蔵を増やし、プロセスに関す るユーザーの満足感を向上させる手法を取り上げ、その他と共に最終報告にまとめ、提出 した。 Scholarly Communications Action Handbook(学術コミュニケーション活動ハンドブッ ク)と Digital Repository infoKit には、OA リポジトリ運用において、実際に推奨される ことや、成功事例などが挙げられている。その Repositories Support Project(RSP: リポ ジトリ支援プロジェクト)では、経験不足の者が経験豊かなリポジトリ管理人の専門知識 を共有できるようにする、英国リポジトリを対象とした支援システムを開始した。 Delft 技術大学は、リポジトリ寄託を増やすための、独創的方法を検討した。この年の始め、 グリーン OA への誘因としてゴールド OA を試みた。そして、所蔵する学部の中で抽選を 行い、当選者に有料 OA ジャーナルにおける論文 10 本分の料金を提供した。同年、そのリ ポジトリへの寄託 1,000 本に付きヤギ一頭をバングラデシュの家庭に寄付すると発表し、 寄託推進への新境地を開拓した。 ロチェスター(IR-Plus または IR+)大学が開発したリポジトリ・ソフトウェアの最新版は、 執筆プロセスにリポジトリ寄託を組み込むことで、リポジトリ寄託を奨励している。Stuart Lewis は、EasyDeposit をリリースした。これは種々のファイル・文献に対しカスタマイ ズされた SWORD の寄託インターフェイスを作成し、リポジトリに即座に寄託するための ツールである。MIT は、出版者が IR に直接論文を寄託できるよう SWORD と SWAP の使 用を開始した。Open-Access-Fachrepositorien は、機関リポジトリから適当な専門分野・ 科目のリポジトリへとメタデータを流通させる DFG に関して資金援助を受けた新ツールで ある。Bielefeld 大学は、オートメーション化したリポジトリ寄託のソースとして、個人の 出版リストを用いたプロジェクト2つに関して最新情報を公開した。ESCAPE(Enhanced Scientific Communication by Aggregated Publications Environments:集合的刊行による 強科学コミュニケーションの強化)は、OAI-ORE リソースマップを通じて関連文書のグル ープと接続する Fedora プロジェクトである。Open Access Repositories(ROAR:オープ ンアクセスリポジトリ)のレジストリはリアルタイムに世界中のリポジトリ寄託文書を示 す動画マップを作成した。また、BibApp は機関リポジトリで所蔵可能な新出版物を発見し、 それらを寄託するツールのバージョン 1.0 をリリースした。 テキサス農工大の大学図書館は、IR に関して、電子学位論文や論文収集のツールを作成し、 それを用いて 2,300 以上の ETD に寄託した。イリノイ大学大学院は、リポジトリの合計 ETD 文書の 85%(223/262)の保存に関し、テキサスデジタル図書館と良く似たツールを 使用した。OpenThesis は、ETD における新しい OA リポジトリであり、あらゆる機関・ 国にとっての「もうひとつの学術文献」である。 The UK Repositories Support Project(英国リポジトリ支援プロジェクト)は、リポジト リ・ソフトウェアに関する 2010 年の調査の結果を発表した。Siddharth Singh、Michael Witt、Dorothea Salo は、主要なパッケージの比較を自身で書き始めた。ロチェスター大学 は、リポジトリ・ソフトウェアである IR+をオープン化し、バージョン 2.0 のソースコード を公開した。DuraSpace は、DSpace バージョン 1.7.0 と Fedora バージョン 3.4.1 をリリ ースした。OPUS は、バージョン 4 をリリースした。EPrints(最初の OA リポジトリ・ソ フトウェア)は、バージョン 3.2.4 をリリースして、10 年目を迎えた。DuraSpace は、 DuraCloud にソースコードを公開し、バージョン 0.7 をリリースした。Kindura は、 DuraCloud と Fedora に基づく、JISC 資金助成を受けた新たなクラウドベースのリポジト リである。The Center for History and New Media(歴史・新メディアセンター)と、 Corporation for Digital Scholarship(デジタル研究団体)は、デジタル博物館向けのクラ ウドベースバージョンの Omeka、オープンソースリポジトリ、プラットフォームをリリー スした。TierraCloud Technologies は、HC2(プライベートクラウドストレージのオープ ンソース・プラットフォーム)を立ち上げた。HC2 は Duraspace Fedora Commons と EPrints リポジトリをサポートする。Public Knowledge Project(公共情報プロジェクト) は、Open Harvesting System のバージョン 2.3.1 をリリースした。 OpenAIRE は、参加しているヨーロッパのリポジトリに向けて、ガイドラインのリリース・ バージョン 1.0 を計画している。リポジトリによっては、ガイドライン遵守、プロジェクト への参加にあたり、新たに加えなくてはならない機能もあるであろう。ポルトガルの RCAAP プロジェクトは、OAI Extended Addon(OAI-PMH 機能を強化し、ヨーロッパの リポジトリを OpenAIRE に対応させる DSpace パッチ)をリリースした。 カリフォルニア Digital 図書館(CDL)は eXtensibleText Framework(XTF:拡張可能な テキストフレームワーク)を立ち上げた。これは CDL のグリーン・ゴールド OA(リポジ トリと出版の双方)プラットフォームに関して、ソースコードとサポートを提供している ウェブサイトである。LSpace は DSpace の簡略化バージョンであり、Visual Basic で記述 されているが、Institute for Computer Studies and Technology at the Colegio de San Juan de Letran-Calamba で OA ブックリポジトリとして使われている。香港大学のリポジ トリは、論文のインデックスや著者ベースの書籍インデックス、そして著者のメディアへ の言及を示す加盟著者の研究者ページを加えた。ビラノバ大学は、VuFind(ユーザーが機 関リポジトリと OPAC を同時検索できるツール)のバージョン 1.0 を開始した。Open Access Plagiarism Search は、OA リポジトリ所蔵の出版物における盗用を検知するドイツの研究 基金の新サービスである。 ヨーロッパの 2 年に渡る DRIVER II プロジェクト(ヨーロッパにおける研究向けデジタル リポジトリインフラビジョン)は、終了した。全てのプロジェクト結果は、DRIVER リポ ジトリ・ガイドライン、D-NET ソフトウェア、プロジェクト・ウェブサイトで閲覧可能で ある。 比較に関しては、OA アーカイブ、グリーン OA に関する筆者のレビューを参照(原文中に リンク)。 (5)オープンアクセスジャーナル(ゴールド OA) 3 節では、毎日新たに 4 つの査読付きジャーナルが、オープンアクセスジャーナルの名簿に 加えられていることを確認した。 それらの新規立ち上げは別として、TA から OA に切り替えたジャーナルは 30 件(その分 野において最有力のジャーナルが1件含まれる)、20 年以上にわたり出版され続けたものが 8件、50 年以上の間のもの 6 件、80 年以上のものが 5 件あった。また TA からハイブリッ ド OA へと切り替えたものが 23 件、TA から、遅延 OA(その 1 つは、完全な OA への段 階的な移行における 1 歩)へと切り替えたもの 7 件、ハイブリッド TA から完全な OA へ、 また gratis OA から libre OA へと切り替えたものが1あった。他方で、即時 OA からへ切 遅延 OA へと切り替えたものは 1 件だけであり、そして、OA から TA へと切り替えたもの は0件である。 (上記の数は筆者が、日々少しずつ調査してきたものであり、恐らく実際より少ないと思 われる。) Canada’s National Research Council Research Press(カナダ国立研究評議会・研究出版) が Canadian Science Publishing(カナダ科学出版)という新名の下に、民間部門へ移行し た際、多くはその 17 冊の OA ジャーナルが TA に変わることを懸念した。しかし、機関は OA への関与を維持し拡大さえする、とすぐに発表した。 Polar Research(ノルウェーの極地研究所のジャーナル)は変化に対する新しいアプロー チをとった。OA 出版者に対しジャーナルから OA への切り替え、また 36 ヵ月間公開する ことに関し入札を行ったのである(更新権利も付帯)。最終的に、Wiley-Blackwell から Co-Action Publishing へと切り替え、CC-BY-NC ライセンスの下で出版し、出版料を課金 しないことを決定した。 Ahmed Hindawi(Hindawi Publishing の共同創設者であり、CEO)は同社の OA(2007 年に完了)への転換が、 “我々がとった最良の決定であった”と述べた。2010 年、Hindawi は申し込みが 2008 年の 7,600 から 2009 年の 16,500 以上へと、2倍以上になることを報 告した。2010 年の 8 月だけで、2,000 以上の申し込み(1ヵ月で 1,000 件到達してからわ ずか 18 ヵ月間)を受理した。Andrew Richardson(Business Development at Wolters Kluwer Health Medical Research(Wolters Kluwer 保健研究事業発展)副会長)は、イン タビューにおいてこう語った。“我々は産業として、会社として、ある一定期間を経験した と思う。その間、我々はオープンアクセスを脅威とみなした…。我々現在はそれをむしろ 産業として、そしてチャンスとして見る…” デンマークにおいてグリーン OA が求められたことに加え、国内のオープンアクセス委員 会もデンマークのジャーナル出版者に、 “デンマークの定期刊行物とデンマークのモノグラ フを、どのようにオープンアクセスに変えることが出来るかに関して、提案を準備…”す るよう要求した。筆者はこれが、ジャーナル出版者が OA への国家転換に巻き込まれるき っかけであったと考える。(ゴールド OA 寄託の要求ではない。)スウェーデンの Malm・ University はグリーン OA 指令を採択するだけでなく、大学の出版物の OA への切り替え も求めた。アルハンブラ宣言は、グリーン OA 指令だけではなく、ゴールド OA への移行 も求めている。 オレゴン図書館とオレゴン州立大学大学図書館などが共同で後援する新たな Open Access Journal Publishing Service(オープンアクセスジャーナル出版サービス)は、新しい OA ジャーナルを出版するだけではなく、TA ジャーナルから OA への切り替え補助も行う。あ るブロガーが、アメリカ経済協会に、会費を安くするより TA ジャーナルを OA に切り替え るよう要求した。 中国のジャーナル出版者を悩ましている問題の多くは、OA への転換によって解決されると、 Nature 誌が論じた。同様に、21 世紀の医療従事者の教育への Lancet’s Global Independent Commission(ランセットグローバル独立委員会)からの最終報告では、発展途上国と過渡 国で医学教育を強化する方法の 1 つとして、OA ジャーナルを示した。 Cambrige Economic Policy Associates(ケンブリッジ経済政策協会)と、Mark Ware Consulting は、グリーンやゴールドの OA など、研究に関する改良型アクセス 4 つの形態 に関して“移行コスト、利点、リスク、チャンス”を調査し始めた。BritishLibrary(英国 図書館)、Association of Learned and Professional Society Publisher(学術・専門書出版 社協会)、Joint Information Systems Committee(情報共有システム委員会)、出版社協会、 Research Information Network(研究情報ネットワーク)、Research Councils UK(英国 研究会議)、Research Libraries UK(英国研究図書館協会)、Society of College(大学協会)、 National and University Library(国立大学図書館)、SPARC Europe、Universities UK (英国大学協会)や Wellcome Trust などを含む広範囲にわたる英国ステークホルダーが、 共同で支援する。 Donald King は全ての TA ジャーナルが、平均 1,500 ドルの有料 OA に切り替わる場合、米 国の著者が支払う料金は 1 年で 4 億 2750 万ドルとなることを示した。これは米国研究開発 費のおよそ 0.76%である。平均料金が 2,500 ドルである場合、コストは 7 億 1250 万ドルで あり、米国研究開発費の 1.27%となる。Heather Morrison は、King のデータを使い、切 替により、米国だけで 34 億ドルの節約になりうると計算した。Morrison は、2 のケースの 計算を行っている。“もし、2009 年、 [インターナショナルコミュニケーション協会の]ジ ャーナル 5 誌で発表された 541 の論文がすべて、1,600 ドルの標準的な PLoS 論文手数料を 課金する OA として発表されたとすると、総支出はおよそ 132,000 ドルであった”-これ は 2007 年の ICA 剰余資金 500,000-600,000 ドル の 4 分の 1 であった。加えて、 “世界 で毎年出版されるおよそ 150 万の査読付き学術ジャーナルの論文”が 1,649 ドルの PLoS 平均料金または 1,560 ドルの BMC 平均料金を課す有料 OA に切り替わった場合、図書館は 現在支払っているジャーナル費用の 40%未満の出資で抑えることができる。別の調査にお いて、Morrison ら 4 人は、“OA への転換に関するモデルはいずれも、 (カナダの)図書館 の大多数から支持を受けるだろう”と述べている。 Martin Weller は、研究者がジャーナルの査読チェックに費やす時間が、19 億ユーロ/年に 相当すると計算した。彼は、この無償の労働と引きかえに研究者が OA を要求し、OA ジャ ーナルのみに対して査読チェック行うべきであると結論付け、多くの研究者にそれを促し た。The Compact for Open Access Publishing Equity(COPE:オープンアクセス出版に 関する共同支援組織)は 2010 年、そのメンバーがほぼ二倍になった。そして、バルセロナ 大学、カルガリー大学、CERN、デューク大学、ミシガン大学とサイモン・フレーザー大学 などが加わった。COPE も、プロジェクトを支持する個人・機関のサポーターのプログラ ムを起動した。個人のサポーターの中には、多くのノーベル賞受賞者がおり、機関サポー ターらの中には、BioMed Central、Creative Commons、Open Access Scholarly Publishers Association(オープンアクセス学術出版協会)(OASPA)、SPARC、SPARC Europe や Wellcome Trust などがある。COPE 機関は OA ジャーナル基金を維持しつつ、他の機関に 同様の動きを奨励する。 COPE に加わることなく、OA ジャーナル基金を開始した機関もある。それらは例えば、フ ロ リ ダ や ワ シ ン ト ン の 大 学 群 、 ド イ ツ の Hohenheim 大 学 で あ る 。 ド イ ツ Forschungsgemeinschaft(DFG)は、有料 OA ジャーナルで学部が出版する料金を支払う 際に、ドイツの大学を支援する計画を立ち上げた。この計画では、大学は最低でも 25%を 払わなければならない、そして、供給資金はハイブリッド OA ジャーナルに使用されない 可能性もある。オンタリオ・ゲノム研究所(OGI)は、影響の大きな OA ジャーナル(8 以 上の影響因子があるか、特別な OGI リストに名が挙がっている)の料金のみを賄い、著者 に研究成果をゴールド OA、同様にグリーン OA にすることを要求する基金を開始した。 オランダ科学研究機構(Nederlandse Organisatie voor Wetenschappelijk Onderzoek: NWO)は、有料 OA ジャーナルの出版料金を支払う 2009 の計画を一新し、新たな OA ジ ャーナルを立ち上げる、100 万ユーロの新計画を開始した。別のの NOW 計画が、人文科学 分野における OA ジャーナル(OA として誕生したジャーナル、また TA から OA に替えた ジャーナルに対しても)に資金供給をしている。これらのゴールド OA イニシアチブに加 え、NWO は現在 OA を専門とするセッションの学会会議をサポートし、またグリーン OA 指令を検討している。 Helmholtz 協 会 は Springer や BioMed Central と 交 渉 し 、 Helmholtz の 著 者 が SpringerOpen や BMC ジャーナルで発表する際、出版料金を支払うことに同意した。4 つ のノルウェーの大学(ベルゲン、オスロ、トロンヘイム、トロムズ)は同様の取り組みを 行い、また香港大学、ポーランドの学術機関を代表する科学高等教育省、オランダ人の研 究者を代表するオランダ大学協会もまた Springer と同様の同意を交わした。Max Planck 協会と Springer の 2008 年の協定は 2010 年に期限切れとなったが、2 つの機関が新協定を 議論している。イタリアの Project NECOBELAC(ヨーロッパとラテンアメリカ-カリブ諸 国の共同ネットワーク)は、ヨーロッパにおいてラテンアメリカの共著者らの代わりに有 料 OA ジャーナルの出版料金を支払う計画を立ち上げた。 寄託費用に関する新 Knowledge Exchange(情報交換)への意見において、Wellcome Trust はジャーナルが基準を満たした際、Wellcome が被譲与者に代わって寄託料と出版料金を支 払うことを明らかにした。 BieMed Central は、Shared Support(機関メンバーシップの新テーマ)を開始した。“こ の会員制システムは資金配分基金で運用されるが、それは研究者から投稿・受理された論 文の処理代金の 50 パーセントを補填し、残りの 50 パーセントは、著者と彼らの補助金に よって補填される” Alberto Cerda らは、ラテンアメリカで技術的・法的サポートを OA ジャーナルに提供する にあたり、Creative Commons から Catalyst 補助金を獲得した。Redalyc プロジェクトは、 ラテンアメリカ、カリブ海、スペインとポルトガルで OA ジャーナルを進める一連の新サ ービスを発表した。ピッツバーグ大学の図書館システムは、教職員の OA ジャーナル開始 を援助するため、オープンジャーナルシステム(OJS)を用いたEジャーナル出版プログラ ムを開始した。Florida Center for Library Automation (フロリダ図書館自動化センター) はまた、フロリダの公立大学から出版される OA ジャーナル全ての受け入れのため、OJS を使ったプログラムを立ち上げ、Florida digital Archive の自動的アーカイブを行っている。 そして、上述の通り、オレゴンの 2 つの学術図書館は、新規・切り替えの OA ジャーナル に関して、共同で Open Access Journal Publishing Service を立ち上げた。アムステルダ ム大学プレスは、低地帯(オランダ・ベルギー・ルクセンブルグ)で OA の考古学ジャー ナル出版費用のサポートを目的とした、9 つの機関による組合をまとめた。 SCOAP3(Sponsoring Consortium for Open Access Publishing in Particle Physics:素粒 子物理学におけるオープンアクセス出版のためのスポンサーコンソーシウム)の予算構築 時期の終わりが近づくにあたり、中国や日本、ロシアから最初のメンバーや関心の有無を 募った。しかし、期限は切れ、時期も存続するためには、組合はまだその予算のおよそ 4 分の 1 の資金を必要としている。 (先月の SOAN で詳細を記述している。)CERN は、オー プンアクセスへの広範囲のアプローチ、特に SCOAP3 プロジェクトに関する Scholarly Communications(学術コミュニケーション)において、極めて高い成果をあげ、SPARC Europe’s2010 Award(SPARC ヨーロッパ2010年賞)を受賞した。 Elsevier は、初の完全版(ハイブリッドではない)OA ジャーナル(インターナショナル Surgery Case Reports(外科症例報告)ジャーナル)を開始した。しかし、この事実はプ レス・リリースで注目を浴びることはなかった。Sage Open は、Sage Publications から近 刊予定の、社会科学と人文科学の複合分野の査読付き OA ジャーナルである。SSH の PLoS ONE のように、“テーマの重要性による内容制限を行わず、個々の研究の品質を基準に論 文を受理する”。SAGE Open は、幾つか強化機能を有することとなる。それにより、イン デックスやコメント欄、科目カテゴリー、論文ランキング、推薦などにより、公開された 論文の重要性を、読者が決定する支援を行う” 。 Springer は、CC ライセンスの下、一連の新たな完全 OA(ハイブリッドの OA ではない) ジャーナルである SpringerOpen を開始した機能の 1 つとして、SpringerOpen は自動的に 参加機関リポジトリに論文投稿を行う際に SWORD を用い、BMC メンバーシップは新し いジャーナルをカバーする目的で拡張されるであろう。2008 年、Springer の BMC 獲得に より、Springer がより BMC に近い形となるのか、もしくは BMC がより Springer の形に 近づくのかに関しては、上記は前者をサポートしているように思える。 Salvatore Mele は、これまでもっとも広範かつ深く掘り下げたゴールド OA 研究である、 SOAP プロジェクトの最初の結果を発表した。調査結果では、調査を受けた 4000 人の研究 者の 89%は、OA ジャーナルが自身の分野に有益であると回答した。また、ハイブリッドジ ャーナル出版者の平均取り込み率が 2%であると報告した。 オックスフォードの著者ハイブリッド OA の取り込みは、 2009 年に 5.9%で、2008 年の 6.7% から落ちた。一年以上前のハイブリッド OA ジャーナルのみカウントした場合、率は 6.8% から 6.7%まで落ちるのみであった。 (最初の声明において、オックスフォードは OA 自体へ の著者の関心に関して、グリーン OA などの OA に対する関心と、有料ゴールド OA への 関心が同様であるかのように、数字が落ちていたと結論した。それ件はその後のプレス・ リリースにより明らかになった。) Nature Publishing Group は、全ての学術誌をハイブリッド OA に切り替えた。Karger Publishers は、CC-BY-NC ライセンスを使う、ハイブリッド OA を開始した。メイニー出 版はその 35 冊の STM ジャーナルに、ハイブリッド OA を採用し、最終的には同じくそれ を、人文科学ジャーナルへと拡張した。Methods of Information in Medicine(医療情報メ ソッド)は、ハイブリッド OA オプションを採用し、9 年間のバックファイルを OA に切り 替えた。 Biologist 社の 3 冊のハイブリッド OA ジャーナル(Development, Journal of Cell Science, and Journal of Experimental Biology)は、UKPMC 基金グループの libre OA 標準に合わ せて諸条件を修正した。4 冊目の COB ジャーナル(Disease Models と Mechanisms)は、 ハイブリッド OA から完全な OA へと変えた。 Springer は、2009 年の著者の OA 取り込み率を反映し、ハイブリッド OA ジャーナルの価 格を 2011 年に引き下げる。王立協会は 2012 年同様に引き下げるようで、2010 年にグリー ン OA で の 運 用 制 限 措 置 を 撤 廃 し た 。 Nature Publishing Group は Nature Communications(初のオンライン限定・ハイブリッド OA ジャーナル)を立ち上げ、“購 読制に守られている論文量を考慮し、検討中のハイブリッド OA ジャーナルの購読料を現 状維持することを”約束した。 BMJ はそのビジネス・モデルを変更し、現在は出版料金を、 “出資者が支払いをすると誓約 した際のみ”請求している。料金支払いの有無に関係なく、すべての BMJ 研究論文は OA である。しかし、BMJ はその“社説、教育、コメント、特徴、ニュース”に関して会費を 課金し続け、OA 出版料金からの収益に合わせてその購読料金を引き下げないであろう。 アメリカの物理学会は米国の公立図書館とそのユーザーに、117 年におよぶ完全なバックフ ァイル OA を作成した。恐らくこれは初の試みであろう。 内分泌学学会は、医療における今年のノーベル賞受賞者、R・エドワーズのジャーナルの 論文に対し、一時的に(3 ヵ月)、過去の論文を含む、gratis OA を提供した。物理研究所 は、今年のノーベル物理学賞受賞者、Andre Geim と Konstantin Novoselov の論文に、一 時的に、過去の論文も含む、gratis OA を 3 ヵ月間、提供した。Geim と Novoselov は arXiv に、合計 25 本の永久 OA 論文を有する。 70%以上の OA ジャーナルが出版料金を請求しないということは分かっていたが、ウィリア ム・ウォルターズとアン・リンビルは少数規模の有料 OA ジャーナルが、OA ジャーナルに よって発表される論文のおよそ半分を占めていることを示した。これは TA ジャーナル出版 の場合のように、OA ジャーナル出版において、影響力のある大きな出版社が少数の中、小 さな出版社群と共存していることを示す、膨大な研究結果の一部分である。 Jan Erik Frantsv は、大多数の小規模 OA 出版者が OA 出版性の効率を制限し、規模に関 する経済的機会を低減させていると主張した。 Brian Edgar と John Willinsky は、OJS ベースのジャーナルの研究を発表した。それは、 多くが劇的に低い収益と費用で運営されており、オープンソースソフトウェアにて OA ジ ャーナル運用資金の構図を変化させていることを示している。Edgar と Willinsky は、調査 したジャーナルの 29%が費用を請求しておらず、20%は 1 ドル-1,000 ドルの間で費用を請 求し、また 31%は 1,001 ドル-$10,000 の間で費用を請求していると報告した。また、44% は収益を上げず、1 ドル-1,000 ドルの間の収益をあげたものは 16%であり、1,001 ドルの -$10,000 の収益を上げたのは 24%であった。 Miche Dassa らは DOAJ にリストされている、社会科学と人文科学ジャーナルの 78%は、 5 つの主要 SSH ジャーナル・インデックスではインデックスを付けられないことを示した。 その 5 つのインデックスは、Arts and Humanities Citation Index(人文科学引用インデッ クス)、Social Science Citation Index(社会科学引用インデックス)、Scopus、European Reference Index for Humanities(ヨーロッパ人文科学参照インデックス)、Agence pour l'Evaluation de la Recherche et de l'Enseignement Sup 駻 ieur である。その原因がインデ ックス(遅い、保守的)にあるのか、ジャーナル(弱い、新しい)なのか、もしくは、ど ちらにもないのかは、まだ明らかでない。Olaf Zawacki-Richter らは、通信教育の分野で は、少なくとも、OA と TA ジャーナルがその評判で比較可能であることを見出した。 The Library of Congress’ Cooperative Online Serials(CONSER:米国議会図書館協会オ ンラインマガジン)は、Open Access Journals のディレクトリにリストされるあらゆるジ ャーナルに関して CONSER の記録を作成する計画を開始した。Sigi Jottkandt による調査 により、“米国における WorldCat の学術図書館の大多数(54%)は、彼らの所蔵における DOAJ ジャーナルにて、少なくとも 1 つ記録を有する”ことがわかった。 Ithaka は、2009 年の学部(実務)調査の結果をリリースした。その調査結果の一部は以下 の通り。どこに論文を提出すべきかについて決定する際、ゴールド OA は著者らにとって 比較的、優先順位が低い。(著者の最大のプライオリティーは、ジャーナルが同士の間でよ く読まれているということであり、これは OA により確実に強化できる)。読者に関する研 究において、Carol Tenopir、Donald King ら 6 人は、研究論文の唯一重要な特質として、 関連性の次に、それが“個人での費用負担無しにアクセスできるオンライン”であるとい うことを確認した。OCLC Research によるメタ分析は、現在、アクセスが研究成果より重 要な問題であるという結論に、多くの研究が収斂してきたことを示した。 4 つのスカンジナビアの組織は、Open Access Journals Publishing に、Online Guide(オ ンラインガイド)をリリースしたが、これは実際的な情報と成功例の一覧である。このガ イドは、スウェーデンと Nordbib の国立図書館からのサポートで、Co-Action Publishing と Lund University Libraries Head Office(ランド大学図書館本部)により開発された。 The Chinese Academy of Science(中国科学院)は、OA ジャーナルの入り口となる、 CAS-OAJ を立ち上げた。カタール財団は、OA ジャーナルの新たなポータルとなる、 QScience を開始した。アフリカのジャーナル・アーカイブはアフリカの研究・文化遺産の 新 OA ポータルである。そして、カーネギー財団の資金供給を受け、Sabinet が管理してい る。Versita は、Versita Open(OA ジャーナルのためのデジタル出版プラットフォーム) を開始した。BioMed Central は、OA の日本ゲートウェイをたちあげた。これは OA ジャ ーナルだけではなく地域の OA と研究へのポータルである。オックスフォードは、全ての ジャーナルの内容を Highwire 2.0 プラットフォームに移行した。インドの Inflibnet セン ター(情報・図書館ネットワーク)は、現在、OA ジャーナル 1,000 誌と同じ経路で、イン ドの大学に 4,000 冊の TA ジャーナルへのアクセスを提供している。 Sherpa RoMEO は、新しいジャーナル・データベースの試作品を立ち上げた。ポルトガル の Project Blimunda は Sherpa RoMEO にポルトガルの OA ジャーナル出版者に関するデ ータを供給し始めた。そして、ノルウェーの NORA プロジェクト(ノルウェーのオープン リサーチアーカイブ)はノルウェーの OA ジャーナル出版者に関して、同様のデータを供 給し始めた。書籍メタデータの収集に加えて、John Mark Ockerbloom の Online Books Page(オンライン書籍ページ)は、デジタル化したパブリックドメインのジャーナル・バ ックファイルに関するメタデータを収集し、ユーザーに OA 全文を公開する予定である。 Elsevier は、ScienceDirect、Scopus と SciVerse Hub 向けのコンテンツ API を開設した。 “対応した基本アプリケーションを構築すれば、非加入者でも保護されたコンテンツへの アクセスが可能である…” Open Access Scholarly Publishers Association(OASPA:、オープンアクセス学術出版社 協会)は、登録をした実際の住所を公開することをメンバーに要求する新規則と、新しい 取扱手順では加盟出版者による不正行為の報告を扱う新たな手続きを採用した。また、無 料で OASPA メンバーが 1 年につき最高 50 の DOIs を登録することができる合意を CrossRef と交わした。 Public Knowledge Project は Open Journal Systems バージョン 2.3.3 をリリースし、OJS が現在世界中で 7,000 以上の機関で使われていることを報告した。マンチェスター大学チ ームのチームは、Utopia Documents を開始した。これは既存テキストの語彙データをカバ ーする新出版ソフトウェアである。 Ken Masters は、40 カ国の 248 機関から、491 の TA ジャーナル・データベースの不正ア クセス・コードを共有しているオンライン・フォーラムを発見した。Charlie Rapple は、 ハイブリッド OA ジャーナルに関する新たな問題を提示した。これは、リンク・リゾルバ ーがしばしば OA 論文を TA とみなすという点である。 アメリカ化学会(The American Chemical Society)(ACS)は新しい出版契約が「著者権 利を拡大する」と豪語した。しかし、それは著者の評判が最悪で、最も OA で扱いにくい 契約となっている。David Rosenthal は TA ジャーナルが現在、Portico(ダーク・アーカ イブ)で複製を提出することにより PubMed と Medline でインデックスを付けられると報 告したが、過去に PMC(オープンリポジトリ)で所蔵されている必要があった。よって国 が奨励する OA の量を減少させている。 比較に関しては、OA・ゴールド OA の筆者のジャーナルを参照(原文中にリンク)。 (6) データ アメリカ国立科学財団(The US National Science Foundation) (NSF)はデータ共有計画 を提出することを被譲与者に要求する、待望の方針を発表した、そして、Association of Research Libraries(ARL:北米研究図書館協会)は、新しい NSF 政策へのガイドを出し、 これに素早く追随した。The US National Oceanic and Atmospheric Administration (NOAA:米海洋大気局)は、物理的な気候データに OA 政策を採用し、そのオープンデ ータの新しいポータルを開始した。米国環境保護局(EPA)は、危険汚染物質データに関 する OA ポータルを開始し、同様のデータ OA の設立に対する新規則を提案した。五大湖 保護の補助金プログラムは OA 指令を受け入れた。 オバマのホワイトハウスは行政部と機関の全ての長官に、基金プログラムに関するオープ ンデータを提供するよう求めた。そして“研究者のデータ共有政策を更新し、相互に運用 可能なフォーマットにより、公共とデータを共有するインセンティブを創出し、プライバ シーや国家の安全、そして機密性問題と矛盾せず、最大の価値を保証するよう”要請した。 これは命令ではないが、彼ら White House Office of Management and Budget(OMB: ホワイトハウス行政管理予算局)と Office for Science and Technology Policy(OSTP:科 学技術政策オフィス)からの協力を要請する際、該当機関はこれに応じなければならない。 ホワイトハウスも、International Working Group on Scientific Collections(IWGSC:関 係機関間の科学コレクションワーキンググループ)による 2009 年の勧告に各機関が対応す るよう促した。この勧告の第 3 項は、機関に対し、“保有物の文書化に共同で取りかかり、 可能な限り、市民や研究者集団にとって有用なオンライン情報を創出し、これを 36 カ月以 内に実行する”よう、要請している。オバマ大統領は、大統領の科学技術におけるアドバ イザー会議(PCAST)に、Josh Knauer を指名した。Knauer は“非営利的団体と政府ク ライアントのため、オープンデータを先駆けたパイオニア”である。新しい役割として、 彼は“オープンデータの定義や収集、連邦機関による公開などの標準化に関する”プロジ ェクトを率いることになるだろう。 The UK Natural Environment Research Council(英国自然環境研究委員会)は、オープ ンデータの運用へと、オープンデータ政策を強化した。JISC の基金プログラムは、Open Data Commons Public Domain Dedication & License の下でデータを公表することを被譲 与者に要求した。 産業と研究、エネルギーにおける欧州議会の委員会は、満場一致で“セキュリティ以外の 全ての衛星データをオープンにするという提案を承認した”。欧州委員会は、来る FP8 の研 究プログラムから資金提供を受けるプロジェクトに、オープンデータを要求・勧告するこ とを公表した。 Christian Bizer は、オープンデータ・プロジェクトのインタラクティブ・デジタル・マッ プを製作した。CODATA は、環境科学における組織のオープンデータ政策のリストを立ち 上げた。米国国立公文書館と記録管理(NARA)は、国民に、機関のオープン化活動に関す る最新情報を提供する目的で、新しいウェブサイトを開始した。 科学(2009 年に立案される)のオープンデータのための Panton Principles(パントン原則) は、2010 年 2 月に公表され、署名を集めている。(この原則は、イギリスのケンブリッジ のパブ名をとって名づけられた)。この原則はオープンライセンスで、というよりも、デー タをパブリックドメインに割り当てており、Science Commons' Protocol for Implementing Open Access Data(オープンアクセスデータ施行のための Science Commons プロトコル) や、Open Knowledge(情報公開)財団の Open Knowledge(情報公開)とオープンデータ 定義と互換がある。SPARC は、Peter Murray-Rust、Cameron Neylon、Rufus Pollock と John Wilbanks ら、2009 年の科学オープンデータに関するパントン原則の著者らを 2010 年中間期の SPARC イノヴェーターとして表彰した。Open Source イニシアチブは、Open Knowledge Definition(情報公開定義)(Open Knowledge Foundation (情報公開基金)) を、オープンデータの公式定義としている。 別の方向性として、Open Data Commons(ODC)は、ODC Attribution や ODC-BY ライ センス(テキストの CC-BY ライセンスに対応するデータ・データベース)をリリースした。 ドイツ科学機関連盟(Allianz der deutschen Wissenschaftsorganisationen)は研究データ 取扱に関する原則をいくつか採用したが、著作権とライセンス問題については触れていな い。同時に、連盟は公的助成を受けた研究のデータに、OA を要求した。 BioMed Central は、より広い議論を行うため、オープンデータとライセンスに関する草案 を公開した。この草案はパントン原則を支持しており、どのようにオープンデータ・ライ センス政策を通じ、BMC がパントン原則を実行可能かに関するアドバイスを求めている。 BMC の Research Notes は、出版論文のオープンかつ再利用可能なデータの提供を望むジ ャーナルに向けて、標準と最良実施を定義する計画を開始した。BMC も、BMC 著者のデ ータ共有賞を設定した。 Digital Curation Centre および Key Perspective からの報告は、資金提供者に対しオープ ンデータ指令を採択するよう求め、そして出版社には補助データに OA を提供するよう求 めている。International Aid Transparency Initiative(援助の透明性を高めるイニシアチ ブ:IATI)の技術補助グループは、国際的な発展に関するデータをオープンにする計画に 対し、一般のコメントを求めた。科学データにおける、ヨーロッパに拠点を置く High-Level Group は、“均一のアクセス、使用、再利用とデータ信用性をサポートする、科学的 e-infrastructure”を要求する報告を公表した。Heather Piwowar は、どれだけの libre OA データセット(再利用可能なもの)が実際に再利用されるか について、潜在的研究プロジ ェクトを説明した。― そして、ASIS&T's Special Interest Group on Information Needs Seeking and Use(情報ニーズ探索および利用研究会)から 2010 年の最高提案賞を獲得し た。 新設の ProteomExchange はオープンデータ指令を呼び掛け、データに一般的なアクセス番 号を設けることによって、その会員リポジトリのデータ共有を正式化した。オンライン請 願書では、cryoEM の単粒子再構成の研究者に自身のデータを Electron Microscopy Data Bank(3D-EM データバンク)を通して公開するように呼び掛けているした。エール大学 法学部における 2009 年 11 月会議の参加者は、再現性のある研究を生み出す大プログラム の 1 つとして、オープンデータやコード、OA テキストの一連の提言を公表した。 米国言語学会(LSA)の委員会はメンバーとその他言語学者に彼らのデータをオープンと するように推奨する決議を採択し、ケンブリッジ大学の World Oral Literature Project(世 界の口承文学収集プロジェクト)は危機言語の OA データベースを開始した。 American Naturalist, Evolution, the Journal of Evolutionary Biology, Molecular Ecology, and Heredity などの主なジャーナルは、出版論文の基礎データには OA が必要であるとす る共同政策を採択した。Molecular & Cellular Proteomics(アメリカ化学会出版)は出版 の時点で、原質量分析データを OA リポジトリに置くことを著者に要求すると発表した。 BMJ の新しいジャーナル(BMJ Open)は、“可能な場合” 、原データに OA を要求してい る。Nature Publishing Group(NPG)は、Nature Precedings(OA リポジトリ)で再出 版データ共有を促進するための試験を開始した。Nature は、Nature Precedings と Peter Murray-Rust か ら の 、“ IsItOpenData ” の 質 問 に 答 え た :“ は い 、 - Supplementary Information(補完情報)は、全ての Nature 関連ジャーナルで包括的な許可の下で出版さ れます…”。 Institute of Physics Publishing(物理出版研究所)から出版された、Environmental Research Letters は、著者が自身の出版論文と共に、原データ・ファイルの OA 作成を許 可した(要求はしていない)。他に、Society for Neuroscience の Neuroscience ジャーナル は、著者がジャーナル・サイトでデータ・ファイルを OA 化する許可を取り下げ、査読論 文の場合、査読データ・ファイルの OA 化も許可しない。BioMed Central は、Neuroscience の告示を通じ、オープンデータに対するサポートの多様な形式をアピールした。 出版をオープン依存とできるため、ジャーナルによる研究データセットのオープンは大き な影響を及ぼす。GnuBio は、研究室のハードウェアと同様の働きを示す。これにより最安 価の遺伝子配列機器が開発されたのである。興味深いのは、ユーザーが結果として得られ るシーケンス・データを GnuBio のオープンデータリポジトリに置かなければならないと いうことである。 7 年目となる Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative(アルツハイマー病神経画像検 査イニシアチブ)は、病気の進行を遅らせる生物学的マーカーの特定に関する重要な進展 を報告した。これは、全プロジェクト・データにすぐに OA を提供し、プロジェクトの発 見を特許化することを禁止した政策が成功したため、得られた結果である。 Peter Murray-Rust は、Green Chain Reaction を立ち上げた。出版社に対しジャーナルの データアクセスをへに許可を求めるものである。Heather Piwowar は、補足資料に関する ジャーナル方針の論文の Mendeley 文献目録を作成した。Open Access Directory は Piwowar と Nick Weber の主導のもとで、ジャーナルのオープンデータ政策のリストを作 成し始めた。リストはまだ製作中であるが、2011 年に公式に立ち上がるであろう。 Jelte Wicherts と Marjan Bakker は、アメリカ心理学会(APA)のジャーナルで公表した 73%の研究者が彼らのデータを共有において、(倫理規定・出版マニュアルの両方の規約に おいて)APA 規則に従わないことを発見した。問題解決の支援に代わり、APA 出版マニュ アルの最新版では、データを生成する側と、それを共有したいと思う側の間で書面による 同意書を求めており、コンプライアンスの必要性は薄い。 Open Knowledge Foundation (情報公開基金)は、世界中のオープンデータセットを特定 する “Data Hunt”イベントを開始するプロジェクトに関して、意見を求めた。また、 “Is it Open Data?(それってオープンデータ?)”を立ち上げた。これは、所定データセットが オープンか、またそれらのうちどのくらいがオープンかに関してクラウドソーシングし、 その答えを市民と共有するプロジェクトである。このプロジェクトの問題に回答した最初 の 2 つの出版者は、BioMed Central と Public Library of Science (PLos)であった。両 者は、出版論文にも使用した CC-BY ライセンスが補足情報に使用されたことを述べた。し かし、両者とも CC-BY ではなくパブリックドメインを必要とするパントン原則を支持する と述べた。 Florence Bourgeois らは、産業界から資金を供給された治験が、“2 年の研究期間内では結 果が得られず、他のソース(臨床薬治験データへの OA 強化)によって資金を供給される 治験の方が、良好な結果が報告される傾向にある”と報告した。European Medicines Agency(EMA:欧州医薬品審査庁))は、臨床試験や他のビジネス文書からのデータに関 し“より大きな開放性と透明度”を約束した。;現在、EMA は文書に対する要請だけに応じ てデータを共有するが、次の 5 年で OA データリポジトリを開始する予定である。ドイツ 議会の以前に、新法案では臨床薬裁判データの公的共有を求めた。米国医師会ジャーナル の記事において、医学専門誌編集者が、全ての臨床薬-治験データのオープンデータ化に賛 成し、医療ジャーナルは発表する論文をオープン化すべきであると主張した。Akaza Research は OpenClinica Case Report Form Library を立ち上げた。これは、オープンソ ース OpenClinica のユーザーが臨床試験症例報告を共有し、それらを再利用できるウェブ サービスである。BioMed Central ジャーナル(Trials)は、臨床研究データを共有する、 新シリーズを開始した。 Sage Bionetworks(Merck spin-off)は、Pfizer を、製薬データと研究において、OA Commons に加えた。GlaxoSmithKline は、マラリア治療・治癒への可能性を察知し、CC0 を用い、13,500 の化学合成物に関するそのデータを公開し始めている。MIT は、Neglected Tropical Diseases に対して Pool for Open Innovation に特許を提供するにあたり、 GlaxoSmithKline と Alnylam Pharmaceuticals に参加する最初の学術機関になった。ノル ウェーの Knowledge Center for Health Services(医療サービス情報センター)は、オープ ンソース薬剤発見プロジェクトを始める計画を発表した。 The European Molecular Biology Laboratory(欧州分子生物学研究所)の European Bioinformatics Institute(欧州生体情報研究所(EMBL-EBI))は、ChEMBLdb(薬や、 薬のような小さな分子の OA データベース)を開始した。2008 年に、バイオ技術会社の Galapagos NV はデータをパブリックドメインに公開した、そして、Wellcome Trust はそ れを主催・管理のため EMBL-EBI に補助金を供給した。SciClips は、米国の特許、特許出 願と研究記事から収集される治療薬をターゲットとした OA データベースを開始した。 Cyprotex は、市販薬の吸収、配布、代謝と排出に関して OA データベースを開始した。 Drugs.com は、モバイル版の OA データベースを開始した。 Decision and Policy Analysis Program of the International Centre for Tropical Agriculture (熱帯農業国際センターの決定・政策分析計画)は、農業試験データの OA ポ ータルを開始し、この分野でのデータ共有を標準化するため、可能な対応を行うと発表し た。 イギリスの公式調査では、イーストアングリア大学の気候科学者は、彼らの不正データに 関し責任が無いと結論付けられたが、調査報告では気候研究において、さらなる開放性を 要求した。応えて、JISC は House of Commons Science and Technology Select Committee (下院科学技術専門委員会)のオープンデータ推奨を実行する、イーストアングリア大学 の Climatic Research Unit(気候研究ユニット)に資金を供給した。同時に、JISC と英国 気象庁(または米国気象課)は、Climategate の報告を通じて、データをオープン化する約 束を公表した。世界中の気象台は、より正確な気温資料の収集だけではなく、個々の精査 で利用できるよう OA 化するため、英国気象庁の提案を支持した。John Graham-Cumming は英国気象庁による温度データ記録における間違いを幾つか訂正し、オープンデータによ ってのみ、この種の訂正が可能であると主張した。 米国の David Vitter 上院議員(R-LA)と John Barrasso(R-WY)は Public Access(公的 アクセス)を Historical Records 法(S. 4015)に導入した。これにより、NASA と全国 Climatic Data センターからの歴史的気候データに、遡及的に OA が提供される。米国海洋 大気局(NOAA)と climate.gov は、市民と政策立案者向けの気候変動に関するオープンデ ータをまとめるため、 “climate dashboard”を立ち上げた。米国エネルギー省は、DOE グ リーン Energy(グリーンエネルギー研究の OA ポータル)を開始した。米国環境保護局 (EPA)は Health and Environmental Research Online(HERO:健康環境研究オンライ ン)データベースを開始した。これは EPA の規制決定の基礎となる、300,000 を超える研 究論文の OA コレクションである。 NASA は蒸発散量に関する衛星データの OA コレクションを公開し、また Federal Space Agency(ロシア連邦宇宙 Roscosmos)は地球の画像衛星データに OA サービスを提供し始 めた。世界気象機関は、世界的な温度資料の OA データベースの開始について、審議を開 始した。気候研究者グループは、気候研究において、オープンデータとオープンソースソ フトウェアをサポートするため、Climate Code 財団を設立した。InterAcademy 会議は国 連の依頼により、Intergovernmental Panel on Climate Change(気候変動に関する政府間 パネル:IPCC)を評価しており、IPCC のプロセスと手順に関して一般の意見を求めた。 そして Clear Climate Code は、全ての IPCC データに libre OA を要求する 55 人の署名付 きで、意見書を提出した(実は筆者は署名者のうちの 1 人である)。その他ニュージーラン ド国立水圏大気圏研究所はオープンデータを要求する次のステップに入った。 薬治験データと気候データの他、2010 年のオープンデータの、最も活発な活動の 1 つとし て、図書館カタログ記録と目録データがある。OCLC は、以前よりもデータをオープン化 するが、パブリックドメインに入れるには至らない WorldCat データの使用に関する、新試 案について、一般の意見を求めた。Library Thing は、OverCat を開始した。これは若干の 使用規制を伴う図書目録データの OA インデックスであり、WorldCat だけを考えると、2 番目の規模を有する。一方で、世界中の図書館は、規制を解除して、パブリックドメイン に、(通常 CC0 の下)自身の図書目録を置き始めた。この動向は、Cologne plus the Hochschulbibliothekszentrum des Landes Nordrhein-Westfalen における 6 つの図書館な ど、ドイツから始まったらしく、直後にコンスタンツ大学、Rheinisch-Westf 舁 ische Technische Hochschule Aachen そして T・ingen 大学などが、後に続いたようである。ド イツ以外では、ケンブリッジ大学や CERN によって同様の処置がとられた。その年の後半、 英国図書館は 300 万の文献記録やそのカタログの 20%を、CC0 の下で OA 化し、さらに公 開すると発表した。そしてその後、JISC Open Bibliography は、英国図書館データをより 役立つものとするため、 早急にツールとサービスを公開した。JISC は EDINA に、OpenURL ルーターデータを再利用としてオープン化できるか否かの調査を依頼している(筆者の推 測では、法的には可能であるが、技術的に不可能であろう)。 JISC は司書のカタログ記録共有の補助ツールキットを発表した。そして図書館のカタログ 記録に OA を提供し、機関用 Open Bibliographic Data Guide でそれを実行した。Open Knowledge Foundation (情報公開基金)は Open Bibliographic Data に関するワーキン ググループを開始した。その直後に、一般の意見を求める目的で、Open Bibliographic Data の Principles の草案バージョンをリリースした。OKF も、Bibliographica のプレビューを リリースした。これは意味的に豊富な文献情報を収集し、共有するための新しいオープン ソース・ツールである。 2010 年、緊急人道援助におけるオープンデータは非常に有用で、壮大であった。2010 年 1 月のハイチ大地震の後、マーク・フェスト(ナイト財団副会長)は、情報を PersonFinder (CC-BY ライセンス下でデータを公表するオープンソース Google アプリケーション)に 提供するよう報道機関を説得した。Architecture for Humanity は、ハリケーン・カトリー ナの経験に基づき、救済データを OA 化するため、ハイチ中で救済センターの設置を提案 した。OpenStreetMap は、救助要員をハイチで支援する目的で、OA データとツールを提 供したが、これはかつて作られた中でも最良のハイチの地図とされた。Google は、そのハ イチの MapMaker データを公表した。DigitalGlobe と GeoEye は、ハイチの衛星写真のオ ープンバージョンをリリースした。TrailBehind は無料の iPhone アプリ、GaiaGPS を公 表し、モバイル機器を使用する救助要員向けに、OpenStreetMap、DigitalGlobe、GeoEye など様々なオープン地理データを重合させた。米国米国医学図書館(NLM)と、Professional & Scholarly Publishing の米国出版者協会支部は、ハイチで 200 を超える生医学ジャーナ ルと 30 以上の参考図書への無料オンラインアクセスを、ハイチの図書館と病院に提供した。 2010 年 2 月のチリ地震の後、チリの地震学者は、この地震に関するデータをオープン化し た。英国地質学会はチリの構造地質学の OA 研究コレクションを公表し、コロンビア大学 の公共政策スクールの学生は、犠牲者への人道援助を容易にする目的で、テキスト・メッ セージ(電子メール)から集められた危機情報や e メール、ツイッターなどをまとめた。 掘削装置の爆発により、2010 年 4 月メキシコ湾で石油が海中に流出した後、米国海洋大気 局は OA(流出への対処に関する、ほぼリアルタイム情報)のウェブサイトを開始した。そ して、災害に取り組んでいる全ての米連邦機関からデータを収集した。米国環境法研究所 は、流出に関わる状況の追跡のため、Deepwater Horizon Oil Spill Litigation Database(デ ィープウォーターホライズン石油流出事故訴訟データベース)を開始した。米国医学図書 館は、その OA Hazardous Substances Data Bank(危険物質データバンク)に原油と、そ の拡散に関するデータを加えた。Cornell Ornithology Lab(コーネル鳥類研究所)は、流 出した石油により危険にさらされている 22 の鳥種に関する OA 情報を提供した。 BP は、石油流出の研究目的で US gulf coast の科学者を雇用したが、BP は彼らが“収集す るデータについての研究結果の発表、他の科学者との共有、話し合いを最低でも 3 年間” 禁じ、研究者に“BP が裁判で争うこととなった場合、裁判所命令を受けてもデータの発表 を控える”ことを要求し、また“科学者は BP の承認を得た研究に対してのみ支払いを受け る”ことを文書にて規定した。この反応として、13 の学会が石油流出の研究に公的資金を 求め、米国上院に共同の嘆願書を提出した。これは BP が、一般のアクセスに対し、受け入 れがたい規制を行っていることを主張している。 GameSpy のようなオープンデータの開発は、それほどその必要性に切迫性はない。これは GameSpy 技術により“すべてのゲームがオープンデータアクセスを通じて、より社会に流 通するよう促進する”イニシアチブである。この必要性が薄いプロジェクトにより、重要 な情報であるほど OA が重要となるという原則に従っているという、ギャップの多くが浮 き彫りになる。 非常事態または人道援助に関連する注目すべきデータセットのいくつかが、2010 年に OA へと切り替えられた。The US Center for Disease Control and Prevention(米国疾病管理 予防センター)(CDC)は、その BioSense データベースを OA に切り替えた。これは“バ イオテロリズムと伝染病の発生”のリアルタイム・モニタリングをサポートし、連邦・州・ 地域活動の連携を支援する。The UN Food and Agriculture Organization(国連食糧農業 機関)(FAO)は、FAOSTAT(世界最大の食物、飢餓、農業情報データベース)を OA に 切り替えた。世界銀行は、発展に関するデータセットを OA に切り替えた。以前、このデ ータセットは TA なだけではなく、英語版のみであった。また OA に切り替えるだけでなく、 世界銀行はアラビア語、フランス語、スペイン語で利用できるようにしている。Ebrary は、 ネット上のいじめに関する ebooks のコレクションを OA に切り替えた。 以前、Royal Society of Chemistry(英国王立化学会)に会費を支払った会員のみ無料だった ChemSpider は現 在情報データを OA で提供している。ドイツの SOLIS ポータル(Social Science Literature Information System:社会科学情報システム)は OA に切り替えた。 様々な機関がオープンデータの原則について同意する一方で、リリースのタイミングに関 する意見の相違がまだ見られる。新 NERC オープンデータ政策は、NERC 資金によるプロ ジェクトで収集したデータに対して、2 年間“先制使用権”を保証する。2010 年の新方針 のなかでの注目なのは、権利期間の上限についてである。通常最初の 1 年間の先制使用権 を許可している NASA は、ケプラー計画の天文学者のデータ分析時間を獲得するため、ケ プラー宇宙船で収集した新データの公開を 2、 3 ヵ月先延ばししたが、これは議論を呼んだ。 一般に、出版論文の基礎データに OA を要求するジャーナルは、出版までに、寄託と OA を必要とするが、例えば、それは Molecular and Cellular Proteomics(分子細胞プロテオ ミクス)が今年採用する方針であった。前述のように、Nature Publishing Group は、Nature Precedings で出版前のデータ共有の奨励を試みている。Martin Fenner は、ジャーナルも しくは学会で初めて報告された際に適用できる適用できる臨床試験データオープンデータ 指令を提案した。UK Information Comissioner(英国情報長官)は、国の情報公開法によ り、30 年以上前から収集された研究データを共有するべきとした。その幾つかは実際にデ ータを収集した科学者がまだ発表していない物だ。(パントン原則では、時期の問題につい て語られていない。) 2010 年における最も刺激的な新オープン・データ・プラットフォームは Morgan Langille と Jonathan Eisen から発表された BioTorrents であった。これは BitTorrent を使った生 物学 P2P データ共有サービスである。こういったものが、メガバイトやギガバイト程度で はなく、テラバイトやペタバイトのレベルの情報を共有する様々な分野において必要とさ れるであろう。 Google は Metaweb や OA データベース、Freebase を買収し、 Google Labs は Google Fusion Table を開始した。これは、量的データをグラフ化し、地理データを地図化するオープン API と内蔵型ツールを備えた、アップロード・共有・データ可視化のための新プラットフ ォームである。PLoS は、その Level Metrics データセットを Google Fusion Table にただ ちにアップロードした。Google も、データ可視化ツールをその公共データ検索エンジンに 加えた。英国図書館は、研究データセットのサーチ目的で、カタログ検索エンジンをアッ プグレードした。Elysium Open Access は、保健情報交換を通じたデータ共有のための新 プラットフォームである。 スペインの研究者は PubDNA Finder、すなわち OA テキストやオープンデータを集積する ための新ツールを開始し、彼らが分析し、解明した核酸配列をドキュメント形式で、PubMed Central にリンクを設けた。Elsevier は、論文から OA データベース、すなわち PANGAEA (Network for Geoscientific and Environmental Data(地理・環境データネットワーク)) の関連個所をリンクさせ、同時に PANGAEA からも論文へとリンクするように設定した。 数か月後に、さらに一歩進めて、テキストデータを統合した。 Elsevier は、現在“PANGAEA において、研究データをリンクさせた ScienceDirect 論文 へのマップを作成しており、それらのデータが利用可能な全ての位置を表示する。PANGEA ではユーザーがワンクリックで ScienceDirect 論文から研究データセットまで移動するこ とが可能だ…” Open Knowledge Foundation (情報公開基金)は、CKAN バージョン 1.2 を公開した。 科学 3.0 はパブリックドメインのデータセットに関して無料の RDF データ・ホスティング サービスを開始し、またノルウェーの Social Science Data Services(社会科学データサー ビス)は Nesstar データ出版ソフトを、フリーウェアでリリースされたバージョン 4.0 に 変更した。Kitware は MIDAS(データ表示システム)のキーパーツにソースコードをオー プン化した、そして、Georgi Kobilarov は Uberblic.org(様々な OA データセットを集積 する計画)を立ち上げた。 ココアの木のゲノム解析を行っている研究者らは、データを“フルオープンアクセス”と さらに“パブリックドメイン”にすると主張したが、細則においては商用利用を制限し、 書面による許諾なしでデータを再配布することを禁止している。 比較に関しては、オープンデータに関する筆者の記事を参照(原文中にリンク) 。 (7) 書籍とデジタル化 長期に渡り一触即発状態であった Google Book Settlement(2009 年後半に改訂)は、つい に、2010 年 2 月の公聴会で、その公平性が認められた。しかし、米国の地方裁判所 Denny Chin 判事は、米国司法省からの新たな異議など、多くの報告・意見の消化に、時間が必要 と説明した。彼は判決を下さず、いつ判決を下せるかについても語らなかった。10 月に、 Google は現在まで 1500 万冊の書籍をデジタル化したと発表した。 その間、もう 3 人のフランスの書籍出版者(Gallimard ら)は、Google が許可なしで彼ら の書籍をデジタル化したことを訴えた。フランスの Bibliotheque Nationale(Google の書 籍スキャンに最も強く反対していた組織の 1 つ)は、共同のデジタル化プロジェクトにつ いて Google と話し合いを始めた。年末頃には、書籍のスキャンで Google と合意した初の フランスの出版者となった。Google はまた、Austrian National Library(オーストリア国 立図書館)、National Library of the Netherlands(オランダ国立図書館) 、Consultative Group on International Agricultural Research ( 国 際 農 業 研 究 協 議 グ ル ー プ )、 Oceanography、Scripps Institution of Oceanography Library(スクリップス海洋研究所 図書館)、Israel Antiquities Authority(イスラエル考古学庁) (死海文書)などと、共に書 籍のスキャン活動を開始した。Google のパートナーである2機関(スタンフォード大学と バージニア大学)は、Google 書籍のスキャン活動を拡大した。カメラマンやアーティスト の中には彼らの作品を無許可でデジタル化したことで Google を訴えたが Google は検索ま たはオンライン版で彼らの作品を載せているわけではない。 Google は、その品質への批判に対し、すでにデジタル化した 1000 万本以上の書籍のメタ データを改善するための基金ライブラリによって応えた。その他の批判に対しては逆に、 図書館の書籍のスキャン契約において、独占条項を施行しないことを決定し、Google がス キャンしたデジタル・テキストにインデックスを付け、他の検索エンジンに門戸を開くこ ととした。 “full view” (ダウンロード、記録、印刷が可能な OA)を利用可能とするために は、パブリックドメインでの書籍の特定に当たり一般からの支援が必要である。Google が 継続的な問題を解決するのを待たず、Klaus Graf は screencast を立ち上げ、米国外のユー ザーが Google Books を読む際、どうアメリカのプロキシを使うべきかを解説した。 昨春、Google は、著作権があるものも含め、Google Books コーパス内の文書をテキスト マイニングする人文科学系の学者に、資金提供を開始した。Google は、ユーザーがイメー ジスキャンを Google Docs にアップロードするのを許可した。Google Docs は Google がス キャンし、他のアプリケーションに移転可能なテキストにする。ここ 2 週間で、Google は Google Books Ngram Viewer を開始した。これは 520 万冊以上の Google がデジタル化し た書籍 の、シンプルテキストマイニングクエリーを行う無料ツールであり、全書籍のお よそ 4%がこれまで公表されている。ハーバードの研究者(この人物はツールを使用した最 初の研究報告を共同執筆した)は、それを“人文科学の歴史上、最大のデータ・リリース” と呼んだ。 2010 年、HathiTrust は最初の創立メンバーを増やし、当初の Google でスキャンした書籍 数を大幅に増やし、拡張した。2010 年の末には、HathiTrust には 3 つのコンソーシウム パートナーと 52 の機関パートナー(2008 年の創設時メンバーのおよそ 4 倍)がいた。2010 年、HathiTrust は創始のパートナー(Triangle Research Libraries Network:トライアン グル研究図書館ネットワーク)を越え、初のコンソーシウムパートナーを承認したが、そ れは初の米国外のパートナーであった(Universidad Complutense de Madrid)。リポジト リは現在 770 万冊のデジタル化された書籍と、193,600 のジャーナル・タイトルをホスト しており、それらは Google、インターネット Archive、組織のパートナーによってスキャ ンされたものである。 HathiTrust コレクションのおよそ 24%は、パブリックドメインにある。これは、大規模な 投資があったことを意味する。The Trust は、その Copyright Review Project におよそ 20 人のスタッフを有する。彼らは慎重にコレクション中でデジタル化した本の著作権状態を チェックしている。本が PD である場合、Trust はそれを規制のない OA にする。これは、 読者に利するだけでなく、データベースにとっても利益となる。例えば、H.W.Wilson Essay & General Literature Retrospective や、Short Story Index Retrospective、そして Book Review Digest Retrospective databases 等であり、これらは今、HaithiTrust 上で、コン テンツからフルテキストのパブリックドメイン図書へのリンクを張っている。コレクショ ン中の著作権対象書籍に関して、the Trust now は、著者が作品の OA 化を依頼できるウェ ブの形式を提供している。 米国の主要機関の中には Digital Public Library of America Digital (米国デジタル公共図 書館)を計画する目的で Sloan 財団の補助金を受けた。これは時に、米国国立デジタル図 書館と呼ばれていた。参加者は、ハーバード大学、スタンフォード大学、ミシガン大学、 バージニア大学、メロン・スローン基金の、the Council on Library and Information Resources(図書館情報資源振興財団)、Internet Archive(インターネットアーカイブ)、 Library of Congress(米国議会図書館)と Public.Resources.Org 等である。 カール・マラムッドは、米国政府に“10 年間毎年最低 2 億 5000 万ドル”を、政府情報(米 国法律の主要ソースを含む)のデジタル化、そしてその全ての OA 化に使用することを求 めた。Malamud もまた、Yes We Scan(主に Google の Project 10^100 から助成、米国法 律のデジタル化プロジェクト)とインターナショナル Amateur Scanning League(米国国 立公文書館から 3,000 の DVD をデジタル化・オープン化する、“クラウドソーシングによ るデジタル化実験”)を開始した。 Open Library は現在スキャンオンデマンド(必要に応じたスキャン)をサポートしており、 ユーザーが Open 図書館カタログにすでに存在しない、パブリックドメインの書籍をスキャ ンする依頼を許可している。Internet Archive(インターネットアーカイブ)は、その OA コレクションを大規模化するため、book drive を開始した。IA に PD プリントの書籍を郵 送すると、book drive がそれをスキャンし、コレクションに加えるのである。Nick Hodson はウェブ・ユーザーが Internet Archive(インターネットアーカイブ)においてパブリック ドメインの書籍の OA コピー投稿を許可する、Grassroots Book-Scanning 計画を開始した。 Project Gutenberg の Michael Hart は、10 億冊の書籍に OA を提供するという計画を説明 した:1000 万冊の PD 書籍が、各々100 言語に翻訳された。John Mark Ockerbloom の Online Books Page は Hathi Trust、Google、Microsoft、Internet Archive(インターネッ トアーカイブ)や他のソースから書籍のメタデータを収集した。そして、コレクションの “repertoire of titles”を 20 倍にまで拡大した。Ockerbloom も、デジタル化されたパブリ ックドメインのジャーナル・バックファイルに関するメタデータを収集し、ユーザーに OA 全文を提供する予定である。 The US National Library of Medicine(米国医学図書館)は、Digital Collections(デジタ ルコレクション)を立ち上げた。これは NLM History of Medicine Division(NLM 医療史 部門)からのモノグラフやフィルムで構成される。SPIE デジタル図書館は、公式に SPIE eBooks を開始した。完全に OA の書籍もあるが、いくつかは特定章の OA であった。アメ リカの American Folklore Society(アメリカ民俗学会)とインディアナ大学ブルーミント ン図書館は公式に Open Folklore Portal を立ち上げた。これは、他の OA の本と同様に、 IU の民間伝承収集(“その部門において、世界で最重要なコレクション”)から、57,000 冊 の書籍とジャーナルを OA で提供するウェブサイトである。 EU Culture and Education Committee(EU 文化教育委員会)は、満場一致で Europeana への新たな資金提供を支持し、コンテンツ増加に加わっていない加盟国からより多くのコ ンテンツを求めた。また、加盟国にデジタル化の加速、自国でデジタルアクセスを制限し ないよう要請した。EU と IBM は共同のデジタル化プロジェクト(Text(IMPACT)への Improving Access)を開始し、ヨーロッパの全域の機関が “新ツールと最良施行”を利用 可能とした。第 5 節で記したように、デンマーク Open Access Committee(オープンアク セス委員会)は、デンマークの学術出版者に、 “デンマークの定期刊行物とデンマークのモ ノグラフのオープンアクセスへの切り替え手法に関して、提案を準備するよう”勧告した。 筆者が知る限り、それはジャーナル出版者が OA への国家転換に関わった最初の勧告とい うだけでなく、モノグラフの出版者になされた初の勧告でもある。 欧州委員会からのレポートによると、まだ著作権の下にある 13%のヨーロッパの書籍が出 所不明の作品であると考えられる。英国図書館、JISC、Research Councils UK(英国研究 会議)、ボドレー図書館、Wellcome Trust および Universities UK など 21 の主要組織から の公開状は、Orphan Works Clause of the UK Digital Economy Bill(英国デジタル経済法 案の権利の所在が不明な著作物に対する修正案)から、大規模デジタル化を保護した。 1000 万を対象とした 2010 の目標より遥かに進み、Europeana は現在 1400 万冊以上のデ ジタル化された書籍などを OA で提供する。メキシコと南アフリカは World Digital Library (世界デジタル図書館プロジェクト)に加わり、またアイルランドの Health Service Executive(保健サービス局)の OA リポジトリは OA WorldWideScience Alliance に加わ った。 カンパラの Makerere 大学、 South African Institute of Affairs(南アフリカ国際問題研究 所)と Canada’s Centre for International Governance Innovation(カナダ国際統治イノ ベーションセンター)は、アフリカ・ポータルを開始した。それは書籍、ジャーナルなど のテキストに OA を提供する。コンテンツのいくつかはすでにデジタルだったが、他は特 にポータル用に、デジタル化された。World Digital Library(WDL:世界デジタル図書館) からの補助金により、ウガンダ国立図書館はデジタル化センターを立ち上げ、WDL での所 蔵用にウガンダの歴史・文化文書のデジタル化が可能になった。インドの Inflibnet センタ ーの委員会は、学位論文や論文をなどの OA に関して、文書をデジタル化する資金を大学 に供給するよう大学助成委員会に勧告した。 映画製作会社2社とオランダ議会の議員1人が Great Book Robbery Project を開始した。 これは、パレスチナ人が所有している、1948 年のアラブ・イスラエル戦争中、イスラエル 軍に接収された 60,000 冊超の書籍のデジタルライブラリーOA 化業務をクラウドソーシン グするためのものだ。プロジェクトはまた、本の法定相続人(著作権者や当初の持ち主) を見つけ、この戦争に関する記録フィルムの作成を目的としている。 OAPEN(Open Access Publishing in European Networks:人文・社会科学系学術図書の OA 化を推進するコンソーシアム)は 2008 年に設立され、資金供給を受け、2009 年その最 初の書籍が出版された後、2010 年までに公式に立ち上げられた。EU が資金供給する OAPEN は、現在、人文科学と社会科学において、査読チェックのある OA の雑誌で最も注 目された出版者のうちの 1 つである。2010 年度の、公式に OAPEN が設立される以前、 OAPEN は人文科学と社会科学における OA 雑誌出版のビジネス・モデルについての、主な 報告を発表した。OAPEN のコーディネーター(アムステルダム大学プレスの Eelco Ferweda)は、“戦略”部門で 2010 年の SURFshare Open Access Awards(SURFshare オープンアクセス賞)を獲得した。 ノルウェー国立図書館はそのデジタル化されたコレクションの“大部分”を OA で提供し た。これにはパブリックドメイン書籍と著作物が含まれる。著作物は、出版者や著者協会 を代表する会社である、Kopinor との協定を通して入手可能となった。 University of Ottawa Press(オタワ大学プレス)は芸術、人文科学と社会科学における 36 の OA 書籍コレクションを開始し、University of Calgary Press(カルガリー大学プレス) は OA Week の間、その最初の OA 書籍を公開した。ネブラスカ大学‐リンカーン校図書館 は、独自の学術モノグラフの出版にあたり、OA imprint を作り上げた。2009 年後半からの データにより、アメリカ大学出版協会は、25 の加盟プレス(調査回答率 42.4%)が現在フ ルテキストの OA ブックを出版していると報告した。 Society for Biblical Literature(聖書文学会)は、古代近東モノグラフの OA シリーズを開 始した。6 つのスイスの図書館が、16-19 世紀までの書籍をデジタル化し、オープン化す る e-rara プロジェクトを開始した。NASA、バージニア工科大の Center for Digital Discourse and Culture(デジタル論文・教養センター)、OA ジャーナル出版者、InTech、 TA ジャーナル、Academic Medicine はすべて、2010 年に最初の OA 雑誌を出版した。 シャットルワース財団は Yoza を開始した。これはアフリカにおける、OA“m-novels”、 もしくは携帯小説ユーザーのライブラリである。チュニジアの国立図書館は、フランス語 と ア ラ ビ ア 語 の デ ジ タ ル 化 書 籍 を モ バ イ ル 機 器 で ダ ウ ン ロ ー ド 可 能 に し た 。 Berlin Academic は 2010 年、ドイツ・英国における新規の OA ブック出版者であったが、その開 始を 2011 年に延期した。 米国下院において、議員のデイビッド(D-OR)は Open College Textbook Act of 2010(H.R. 4575)を導入した。これは、 “オープンテキストの創造・アップデート・適用に補助金を認 可する”の新法案である。カリフォルニアは Free Digital Textbook Initiative(オープンソ ース・デジタル・テキストブックを実現するためのイニシアチブ)の Phase 2 を開始し、 高校での歴史、社会学、高等数学における OA 教科書の新たなコホートを要請した。国に 調査によると、CC-ライセンスを受けた OA テキストで、調査した 10 のうち 8 つは、公立 学校での国の基準に 100%適合しており、国はカリフォルニアの学校で使用に当たり、30 の OA テキストを新たに承認した。 米国 Student Public Interest Research Groups(PIRGs)は大学教科書と学生の選好に関 する調査を公表し、出版者、大学と政府がオープンテキストやその他の可能なものに投資 するよう勧告した。ヒューレット財団は、OA と TA テキストの教育学的効果を比較するた めに、ブリガム・ヤング大学に補助金を付与した。高等教育改善のための US Fund は、OA 教科書(topic TBA)の作成にあたりイリノイ大学に補助金を付与し、OA 教科書の採択に 対する障害を調査するため、フロリダ Distance Learning Consortium(遠隔地学習コーソ ーシウム)に補助金を付与した。フロリダ州議会は、高価な教科書に代わる、OA テキスト など、入手可能な代替手法を調査するため、専門調査委員会を設立した。 OA 教科書出版者 Flat World Knowledge は、Barnes & Noble College Booksellers と NACS Media Solutions と合意に至った。教授が必要に応じて Flat World のテキストを改訂し、 編集し直す際、提携した大学書店は、印刷版を望む学生に安価な POD 版を作成できる。Flat World はまた、2008 年 Higher Education Opportunity (高等教育機会)法(HEOA)に おいて教科書採用規則を満たす学校に新採用法を適用し、OA 教科書を推進するためのイン ターンシップ・プログラムを開始した。 LibriVox(OA オーディオ・書籍の最古・最大手)は、基金調達のキャンペーンを開始し、 OA 書 籍 や OA オ ー デ ィ オ の 検 索 ・ 閲 覧 ツ ー ル ( Librophile ) を 発 表 し た 。 BooksShouldBeFree は、OA オーディオ・ブックの新たなソースとして、この分野に参入 した。ノースカロライナ図書館は、500 のダウンロード可能な OA オーディオ・書籍をその コレクションに加え、その総計を 1,300 とした。 Ronald Snijder は、OA は書籍へのアクセスを改善したが、書籍の売上高・引用に影響を及 ぼさなかったと結論した研究結果を発表した。一方で、ブリガム・ヤング大学のJ・ヒル トン III の博士論文は、フルテキストの OA 書籍が印刷版の売上を刺激する、という新しい エビデンスを示した。それぞれの研究において、ヒルトンとデイビッド・ワイリーは、書 籍の OA 版の許可に同意した 10 人の著者(小説家1人、科学、法律、人文科学分野の学者 9 人)と面談し、彼らの売上高と仕事への影響を調べた。JISC Collections は、OA 書籍出 版の実現可能性と影響を試験する計画(OAPEN-UK)への参加に、人文科学と社会科学の モノグラフ出版者を招いた。出版者は学術論文の“一対の組”を作り、プロジェクトがラ ンダムに、1 つはデジタル OA、一方はデジタル TA とする。プロジェクトは実験参加に際 し出版者に費用を支払い、2011 年 5 月から 2014 年 4 月まで継続される。ここで注目すべ きニュースは、逸話であった段階を越えて、フルテキストの OA 書籍が、印刷書籍の売上 を増加させるか、それとも減少させるか、という問題に対し経験的研究の段階まで来てい ることだ。 ランディ・コーエン(ニューヨークタイムズの倫理コラムニスト)は、誰かが購入した印 刷版の未許可のデジタル・コピーをダウンロードすることは、違法であるが、非倫理的で はないと主張した。(2008 年 2 月コーエンは、絶版であるが、まだ著作権が効力を有する 書籍をコピーすることは違法であるが、非倫理的でないという議論と類似している。) Oldenbourg Wissenschaftsverlag と Akademie Verlag は、書籍中の章に関して、最初のハ イブリッド OA 政策となる可能性のあるものを採用した。このモデルにおいて、著者は書 籍おけるジャーナル記事もしくは章のオープン化に、出版料金を支払う可能性もある。 スイスの e-rara プロジェクト(上述)は、最初に CC BY-NC-SA ライセンス下で、パブリ ックドメインの書籍のデジタル化コピーを広めた。Digital Allmendring が PD の作品につ いて CC ライセンスを与えられないと反対した際、e-rara はライセンスを解除に同意し、 デジタル・コピー自体が PD であったと認めた。スウェーデンの王立図書館は PD 作品のデ ジタル化コピーに対し、CC ライセンスの下で OA を提供すると約束したが、筆者が知る限 り、同様の異議はなかった。スウェーデンの博物館(Historiska Museet)は、PD 作品の デジタル・コピーに関して CC-BY-NC-ND と CC-BY-NC-SA ライセンスを採用したが、徐々 に規制を削減する予定である。時間とともに規制を取り払う計画は、無いよりはましであ るが、作品が PD である場合、途中のステップで不必要な遅延が生じ、違法コピーを招きか ねない。スイスの国立図書館は、コレクションの PD ブックのデジタル化に関して、公的資 金を投入したが、OA にはせず、オンライン化すらしなかった。テキスト CD または PDF で、15 フランから販売されている。 重要機関の中にはこれに決着をつけたものもある。2010 の Europeana Public Domain Charter は、PD の作品をデジタル化することが新しい権利を生み出さず、デジタル・コピ ーそれ自身が PD であるという原則を盛り込んだ。オーストラリア収集機関のオープンアク セス規定と同じものを、EU Culture and Education Committee(EU 文化教育委員会委員 会)は満場一致で支持した。ARL の Principles to Guide Vendor/Publisher Relations in Large-Scae Digitization Projects of Special Collections Materials(特別コレクションの大 規模デジタル化計画に際しての 9 原則)2010 年規定は、ほぼ同意に至ったと考えられる。 University of Ottawa Press(オタワ大学プレス)は、OA モノグラフの新シリーズに“無 制限のアクセス”を提供していたが、“転載禁止”の書籍に対する著作権宣言をまだ使用し ている。Richard Poynder とのインタビューにおいて、プレス rebook のコーディネーター、 レベッカ・ロスは、これまで書籍は無料ではあるが、libre OA ではないことを宣言した。 Librarian of Congress(連邦議会司書)は、米国デジタルミレニアム著作権法の反迂回に 対し新たな例外を 6 つ挙げた。とりわけ、その例外により、Hacking ebooks が代替フォー マットや、読み上げ機能をサポートすることが可能となった。ケンブリッジ大学プレスと Bookshare は、選ばれた書籍とジャーナルを、米国の学生向けの gratis OA として、目の 不自由な人が利用しやすいフォーマットへと切り替えた。インターネットアーカイブは、 目に障害がある読者、失読症の読者、視覚に障害のある読者などの為に、100 万冊以上のデ ジタル化された書籍を DAISY トーキング・ブック・フォーマットに切り替え始めた。 Library of Congress’s National Library Service for the Blind and Physically Handicapped(視覚・身体障害の米国議会図書館サービス)に登録する読者は、著作権の ある書籍も含めて、OA を無料利用できる。 アップル iPad は、読書機能として始まった。ユーザーの中には(インターネットにおける 機能不足や、一般的なソフトウェア・サポートを削減)Kindle の様な、煩雑な機能が無い ものを好む者もいる。しかし、他の多くは、インターネットとの接続があり、カラーで、 他種のソフトウェアに対するサポートのある book reader を好む。年末、Google ebookstore は、それ自身には接続機能の無い ebooks を提供した。これは、インターネット接続を有す る殆どすべてのデバイスで読むことができる(ゆえに Kindle を除外) 。Inkstone Software は、MegaReader(小型の iPhone 向けの ebook reader)を開始した。レイ・カーツワイル は、Blio(自社のソフトウェアに基づく ebook reader)を導入した。新アレックス Reader は、e-ink とカラーを 2 種のスクリーンでサポートする。Internet Archive(インターネッ トアーカイブ)はそのオープンソース BookReader をアップグレードした。これは現在オ ープンライブラリーと一体化し、新しい共有オプション(ウェブ・ページへの書籍の組み 込み、各ページへのリンクの共有など)を提供する。Jonathan Zittrain の指導下で、ハー バードのバークマン・センターの開発者は、オープンソース H20 プラットフォーム上に、 法学部の OA 判例集を簡単に作成できるようなアプリケーションを作成した。 Internet Archive(インターネットアーカイブ)と Amazon は、ユーザーがオープンライブ ラリーから Kindle へ、PD タイトルを送信する方法を考案した。IA も、Overdrive.com の Digital Library Reserve(電子書籍管理サービスシステム)に申請しているユーザーが、オ ープンライブラリーから ebooks を“借りる”ことができるサービスを開始した。書籍は PD タイトルに限られてはおらず、2 週後に自動的に有効期限が切れる。加えて、IA はその BookServer プロジェクトの最初のコンポーネントを発表した。すなわち Open Publishing Distribution System(OPDS:公開出版流通システム)のカタログフォーマットであり、 これは、“どんな場所からでも、どんな装置でも、そして、どんなアプリケーションでも、 デジタルコンテンツを発見できる”オープン・スタンダードである。アップグレードした オープンライブラリーには、各テーマに関する書籍がリストされており、その出版史がグ ラフで示されている。 Stian H 虧 lev は、ウェブサイトが 2007 年以降更新されなかったユニバーサルライブラリ ーに何が起こったのかについて調査を開始した。スクラントン大学とライス大学のプレス は、2010 年にどちらも閉鎖された。これはライス大学プレスにとって第 2 の死であった。 このプレスは 1996 年に閉鎖され、OA に焦点を絞って 2006 年に復活していた。 比較に関しては、OA ブックに関する筆者のレビューを参照(原文中にリンク)。 (8) 著作権とライセンス Creative Commons はパブリックドメインマークを開始した。これによりユーザーはパブ リックドメインにおいて項目にタグを付けることができ、検索エンジンでタグを付けられ た項目を検索することが可能となった。これで作品が PD であるかどうかを判別するという 時間のかかる作業が減ることはないが、誰かが知る必要がある時には、無駄な作業の繰り 返しが無くなる。また、フィルター検索に対しては、PD をオープンとし、またユーザーが 関連語の把握だけでは無く、再利用権を可能とする。さらに、CC はその最初の特許ツール、 Research Non-Assertion Pledge と Public Patent License の草案バージョンをリリースし た。 前述の如く、筆者は公共部門情報の多くのオープン・ライセンス・イニシアチブを省略し ている。しかし、2010 年に、少なくとも、それが北アメリカ、ヨーロッパとオーストラリ アを越えて広がったと言える、それらの地域ではオープンライセンスが 2009 年にクラスタ ー化している。カタール情報・通信技術最高評議会(ictQATAR)は、国に“デジタルオー プン学会”を創設し、CC ライセンスとオープンソースソフトウェアの使用を促進する計画 を発表した。APIN(アジア太平洋情報ネットワーク)会議の参加者はフィリピンに、パブ リックドメインと CC ライセンスの優れた使用法など、新情報方針を勧告した。 英国首相デイビッド・キャメロンは、著作権者からライセンスを得てコストを下げ、公正 使用に基づく米国スタイルの規定を加え、英国の著作権法を“インターネット時代に適合 させる”計画を発表した。英国調査委員会は、ジェームズ・ボイルをメンバーに指名した。 ボイルは、英国人であり、Creative Commons の共同創設者で、デューク法学校のパブリ ックドメイン研究センターの共同創設者であり、Electronic Frontier Foundation(電子フ ロンティア財団)から選出された 2010 年・パイオニア賞受賞者のうちの 1 人である。 英国議会の新法案により、ウェブサイト著作権者が“検索エンジン・サービスを提供する 目的においてのみ、検索エンジン・サービスの提供者に、自身のウェブサイトの内容の一 部または全てを複製する通常実施権を与える”と、検索エンジンを効果的に合法化した。 英国の OA 環境に関する主なレポートによると、Wellcome Trust と NIH が長期に渡って行 ってきたように、The Center for Research Communications(研究情報センター)は、英 国資金提供機関が“著作権に対して強硬な姿勢を維持し、出版者との合意に先立ち OA ア ーカイブの著作権を留保する”よう勧告した。英国図書館は、英国著作権法がいかに研究 を支援し、また障壁となるかに関するエッセイのコレクションを公表した。一面からの意 見のみならず、エッセイは“現代化する世界と、発展中の研究技術の流れを組み、著作権 の法律を再定義する必要があるというコンセンサス”を反映している。2010 年の間の英国 自民党員マニフェストには、“全ての州資金による研究(臨床試験など)が公的にアクセス 可能となり、その結果は査読を条件とし、出版されることを保証する”という誓約が含ま れている。労働党宣言と保守党の両党は、公共部門情報に関して OA 化を要求している。 著者にセルフ・アーカイビングの権利を与えるというドイツの著作権改革案は、出版者と 研究者の間に、厳しい議論を引き起こしている。議案を支持しているその他グループには、 Germany’s Coalition for Action(ドイツ活動連盟) :Copyright for Education and Research (教育・研究の著作権)と、新たに設置された Europian Network for Copyright in Support of Education and Science(教育・科学支援における著作権のたまの欧州ネットワーク: ENCES)などがある。いずれも親 OA 的な著作権改革へ取り組んでいる。Coalition for Action も、著作権改正で、研究・教育に関する既存の例外を強化するよう推奨した。ENCES とともに、Coalition for Action は他のヨーロッパ諸国で同様の改正を提案する予定である。 Coalition for Action はまた、ドイツ議会にラーシュ・フィッシャーの 2009 年 10 月の陳情 を補足する新たな嘆願書を公表し、ドイツの公的助成による研究を OA 化する当初の陳情 を延長した。ドイツの弁護士 Till Kreutzer は、出版者が著作権化できないものを管理する ことができる、新しい準著作権保護法に反対する運動を開始した。これらのイニシアチブ と土俵は異なるが、Higher Education(Deutscher Hochschulverband)のドイツの協会は “ 教 育 ・ 科 学 に 親 和 的 ” な 著 作 権 政 策 ( bildungs-und wissenschaftsfreundlicheres Urheberrecht)を要求した。それは、OA 指令を除外するものを意味する。 COMMUNIA が主導する 16 のヨーロッパの非営利的団体は、Public Domain Manifesto (パ ブリックドメインマニフェスト)を公表し、個人・組織から署名を求めた。他の条項の中 で、このマニフェストはパブリックドメインが原則であり、その例外を著作権で保護する よう指摘している。今期末、別のヨーロッパの非営利的団体と技術会社の連盟が Copyright for Creativity(創造に対する著作権)をリリースした。これは“インターネット時代に真 に適合したヨーロッパの著作権法を求める宣言”であり、著作権改革により、市民が教育 的・研究的材料を発展させ、共有することを支援する宣言である。Europeana の新パブリ ックドメイン憲章は、“パブリックドメインコンテンツのデジタル化は、新たな権利を設け ず”、また“Public-Private Partnerships(公民パートナーシップ)は内容をデジタル化さ せる重要手段であるが、この憲章は、期間限定で非独占とするものではなく、パブリック ドメインから資料を取り出さないよう勧告する”ことを明記している。 European Commission(欧州委員会)は、大規模なデジタル化や、ヨーロッパの文化遺産 の OA 化に対する、技術的・法的・財政的な障害を克服する手法を推奨するため、Reflection Group(Comit・des Sages)を設立した。グループは 2010 年に一般の意見を求めて、2011 年にはその報告書提出することになっている。Neelie Kroes(デジタル会議欧州委員会副議 長)は、著作権法が作者より先に介在することを止めねばならず、Europeana がヨーロッ パの文化遺産に OA を提供することを妨害することは許されないと主張している。彼女は また、欧州委員会がこれら著作権の壁の除去・緩和に向けて“即刻、議会の提案をする” と発表した。 米国では、Copyright Principles Project(著作権方針プロジェクト) ―法学教授やディズ ニー、ワーナー・ブラザーズの代表者など ― の 20 人のメンバーは、権利保持者と市民の 利益間のリバランシング著作権法に関する 7 つの原則と、25 の勧告についての草案報告を 発表した。筆者は、獲得した許可を実施可能にしている 8 つの OA 親和な勧告と一旦作品 が PD に入ると、PD の状態を維持することを義務づけているも勧告 1 つを確認した。 Association of Research Libraries(ARL:北米研究図書館協会)は Federal Depository Library Program(連邦政府刊行物寄託図書館制度)に関する原則を公表し、そして、“パ ブリックドメインの広範囲のデジタルコレクション”への“幅広いアクセス”の必要性を 主張する。これもまた、Large-Scae Digitization Projects of Special Collections Materials ( 特 別 コ レ ク シ ョ ン の 大 規 模 デ ジ タ ル 化 計 画 に 際 し て の 9 原 則 ) の 、 Guide Vendor/Publisher Relations(供給者と出版者)の原則を発表した。これは“最も幅広いユ ーザーアクセスの可能性”と、“パブリックドメインのコンテンツの非商業的な使用に関し て、アクセス料金やロイヤルティを要求しない”ことを求めた。Opening Australia’s Archives project(オーストラリアアーカイブ開放プロジェクト)はオーストラリアの収集 機関にオープンアクセス原則のバージョン 1.0 を公表した。それはデジタル化されたコレク ション OA の製作に関するガイドライン7冊が含まれる。 Library Content Licenses(図書館所蔵ライセンス)の Author-Rights Language の Ad Hoc Working Group を代表し、アイビー・アンダーソンは、Author Rights Model Licensing Language のバージョン 0.8(2010 年 4 月)を発表した。デューク大学は、一連のモデル、 すなわち OA 配布に関する形態とライセンスを公表した。 米国法は、著作権法の侵害が許されないことをユーザーに警告するため、コピー機に通知 を貼ることを図書館に要求する。著作権がユーザーに公正な使用を許可するという必要条 件は無いが、ミシガン大学はその第 2 項にそういった補足を付け加えることを決定した。 ミシガン大学図書館はまた、ウェブサイトコンテンツに CC-BY ライセンスを使用する最初 の主要学術図書館となった。マイクロソフトでさえも、libre OA が利益にかなうとして、 CC-BY-NCSAライセンス下でその Security Development Lifecycle(SDL:セキュリテ ィ開発ライフサイクル)文書を公表した。これにより、Windows 版の安全なアプリケーシ ョンの構築を可能な限り、簡素化した。The Corporation for National Research Initiatives (国立研究計画法人:CNRI)は、同様に、オープンライセンス下でハンドルシステム技術 を配布している。ハンドルシステム技術の重要ユーザーには、DOI システムや DSpace 等 がある。 ある米連邦巡回裁判所は、公正使用の目的のために DRM を遮断することは、必ずしもデジ タルミレニアム著作権法の反迂回を侵害しないと判決を下した(MGE UPS Systems 対 General Electric)一方で、著作権下にある作品を遡及してパブリックドメインにおくこと ― すなわちパブリックドメインからの海賊行為 ― が米国憲法の著作権条項を犯さない と(Golan 対 Holder)とするウルグアイ・ラウンド合意を支持する判決もあった。後者の 判決は、WIPO 報告がパブリックドメインにある作品の著作権を過去に遡り拡張すること に反対したのと同月に下ったものである。 遡及的な著作権に反対する、この WIPO 報告書(Scoping Study on Copyright and Related Rights and the Public Domain:著作権、それに関連する権利およびパブリックドメインに 関する調査研究)では、OA を“知的所有権の体系を内部から打倒し、その独占的性質に反 対し、知的所有権を社会化する”ものとして記している。…まるで、著作権への期限や例 外を設けず、また著者が著作権を放棄する権利もなく、著作権法が一方的に著者や出版社 に権利を設けるかのごとくである。この報告は、比較的 OA に親和的な WIPO 開発議会に よって受託された。 ブラジルでの著作権改革案により、公正使用目的において、DRM での迂回を可能とした。 これはまた、ユーザーによる公正使用権利の行使を阻み、妨害するような試みを罰すると している。もう 1 つの規定― リチャード・M・ストールマンの公開状により支持― は、 インターネット加入者から安い料金をとり、非商業的なファイルの共有を合法化した。 南アフリカの Intellectual Property Rights(知的財産権)のワークショップは強く 2008 の Publicly Financed Research and Development Act(公的助成を受けた研究開発に関す る法)を批判した。これは、公的助成をうけた研究の OA 化よりも、むしろ商業化を要求 しており、確実に国を誤った方へと進ませる。アフリカの情報アクセスに関する新基準で ある、African Copyright and Access to Knowledge(ACA2K)project(アフリカ著作権お よび情報アクセス権プロジェクト)は、 “アクセスし易い著作権環境”を作ることを推奨し、 南アフリカの著作権法が“デジタルポータルを通じた必要情報へのアクセスを妨げている” と結論した。 終了した投票において、アフリカ 17 か国の連合は、伝統的な知識と民間伝承を保護するプ ロトコルに署名することを票決した。1 月の国連報告が西側の著作権概念を“伝統的なコミ ュニティの集団で所有する情報に適用することのないように警告していた”とはいえ、 WIPO はこの動きを称賛した。ガーナはガーナの民間伝承を使用に関し支払いと政府の許 可を要求する 2005 年の著作権改革を強化すると公表している。 チェコ議会を前にしたある法案は、オープンライセンスの使用を希望する者全てが、官僚 によるチェックを受けるというハードルを設けた。English Heritage はストーンヘンジの 写真を販売する英国画像図書館に同様のレターを送付し、ストーンヘンジの著作権所有を 主張し、彼らの利益の削減を要求した。モニカ・ガウディオは、オンラインマガジンの Cook Source が記事の 1 つをウェブサイトからコピーし、許可なく出版されていることを発見し た際、彼女は、Columbia School of Journalism(コロンビアジャーナリズム学校)へ謝罪 と 130 ドルの寄付をするよう要求した。雑誌編集者、ジュディス・グリッグスは、次のよ うに説明する。“ウェブは『パブリックドメイン』と考えられ、我々はあなたの記事を丸ご と“盗んだ”わけではなく、他人の名前でそれを紹介したわけでもないので、あなたはそ れで満足なはずだ!”。 カナダの(Conference Board of Canada)産業審議会からの報告は、公的助成による研究 に対し、カナダに OA へのサポートを要求するものだ。OA 需要の混乱の中、これは注目す べきである。というのは、2009 年に取り下げられたテキストのカット&ペースト(使いま わし)に関する 3 つの産業審議会報告や、International Intellectual Property Alliance (IIPA:国際知的財産権同盟) (米ロビー団体)からの勧告と同質のものであったのである。 2010 年、パブリックドメインにおける作品の遡及著作権を認めさせた米国のロビー活動の 勝利により、IIPA は潔白を証明された。 年末、Open Access Journals(DOAJ)のディレクトリにリストされるジャーナルの中で CC ライセンスを使用しているのはわずか 19%であった。DOAJ ジャーナルで、CC-BY、 すなわち SURF と Open Access Scholarly Publishers Association(OASPA:オープンア クセス学術出版社協会)が推奨するライセンスを必要とする SPARC ヨーロッパの承認を得 ているのは 11%足らずであった。第4節で述べた、Lindh/Graffner 調査によると、オープ ンジャーナルシステムを使用している北欧のジャーナルの中で、CC ライセンスを使用して いるのは半分足らずであり、誰も CC-BY を使っていないことが明らかになった。疑う余地 なく CC ライセンスを使用しない OA ジャーナルの中には、他のオープンライセンスを使っ ているものがあるが、それらが重要とは考えられない。CC ライセンスの使用率は昨年より 上昇し(15.6%→19%)、SPARC 認可率も上昇している(9.9%→10.9%)。しかし、gratis OA を越え、libre OA を提供するオープンライセンスを使用している数は、嘆かわしいほど低 くいままだ。OA ジャーナルは弁解の余地もないが、OA リポジトリがめったに、libre OA に必要とされる許可を得ることができないというのも、また変わらないままである。 SOAP(SOAP:オープンアクセス刊行研究)の結果における 2010 年のプレビューは、学 術出版社のオープンライセンスの現状に光を投げ掛けている。 “大規模”OA 出版者 14 のう ち、半分は CC ライセンスを使用しており、彼らのほとんどが CC-BY-NC を使用しており (82%)、残りは CC-BY ライセンスを使用している(18%)。小規模の OA 出版者に関して は、CC ライセンスを使っているのはわずか 5 分の 1 であった。CC ライセンスを使用して いる 7 つの“大規模”OA 出版者は、SOAP が調査したジャーナルの 72%、論文の 71%を 占める。この範囲外で、出版者の 4 分の 1 以上は、著作権情報の提供さえしなかった。こ れらは、問題の多くが、著作権問題や、gratis OA の先にある libre OA をほとんど考慮し なかった小規模の OA 出版者の末端に限られている、という見方を確証しているようだ。 通信分野の学者の調査によると、3 分の 1 が著作権問題を起こすような話題を避け、5 分の 1 が、著作物の学究的使用に対する出版者の抵抗に遭い、5 分の 1 が著作権上の問題で、進 行中の研究を止めていることが明らかになった。多くの人々は、著作物を議論・批判する には許可を求めなければならないと話す。 Rufus Pollock は、2 つの新研究を発表した。その1つはヨーロッパのパブリックドメイン (およそ 900 万冊)のサイズに関するものであり、もう 1 つは、その経済価値に関するも のである(英国において、PD ブックは“およそ 5‐15%ほど、著作権のものと比べて安い”)。 Computer & Communications Industry Association(コンピューター通信産業協会)は、 次のような報告をしている。“ 2007 年、公正使用した産業は 4 兆 7000 億ドルの利益を発 生し、2002 年の 3 兆 4000 億ドルの収益に対し、36 パーセント増加した。… この公正使 用により利益を得た産業の雇用者は 2002 年の 1690 万人から、2007 年、1750 万に増加し た。アメリカ合衆国の 8 人の労働者中およそ 1 人は、公平使用により得られる保護から利 益を得る産業で雇用されている…” 。 The International Federation of Library Associations and Institutions(国際図書館連盟) は、世界中の“主要図書館協会”が OA を支持していることを報告した。これは全地域で 事実となっており、ヨーロッパと北アメリカで例外はなかった。インターネットと協会・ eIFL.net のバークマン・センターは、Copyright for Librarians(発展途上国の司書のため の OA カリキュラム)を発表した。 The Alliance of German Science Organisations(ドイツ科学機構連合)(Allianz der deutschen Wissenschaftsorganisationen)の OA ワーキンググループは、Legal Guide for Online Delivery of Older Publications(旧刊のオンラインデリバリーに関する法律ガイド) を発表した。そして、the Interuniversity Council of France Community(フランスコミ ュニティーの大学間協会)(Conseil interuniversitaire デ・ラ Communaut・fran 軋 ise) は OA を含む科学的出版技術の法律面書籍1冊分のガイドを出版した。第 2 節で記述した 通り、SPARC と Science Commons の 2 人の弁護士が記述した白書は、大学は OA 政策に おいて著作権問題を回避するため、ハーバードと MIT モデルに従うよう勧告した。対照的 に、Chicago Manual of Style の第 16 版は、利益を最大にしたい出版者に対し、最低でも OA を避けるか、妨げるようアドバイスを載せている。(著者より出版者を優先して、スタ イル・ガイドラインから回避するのか?) Google Code は、あらゆるオープンライセンスを使うプログラミング・プロジェクトの一般 的オープンソースリポジトリとなった。その設立の 5 年前から、Google Code は、認可プ ロジェクトに対し特定の狭い範囲内でライセンスを使用するよう要求することで、ソフト ウェアライセンスの激増を制限しようとした。Yolink ブラウザー・プラグインは CC ライ センスにサポートを加え、ユーザーがオンラインコンテンツを見つけ、Google Doc を通し てそれを CC ライセンスにより、共有することを可能にした。Akila Wajirasena は、CC0 を用い作品をパブリックドメインに割り当てるツールに関して、Creative Commons Open Office プラグインをアップデートした。 113 人の新しいスタンフォード大学の博士のうち 60 人は、大学の新オプションを利用し、 大学 IR を通して OA にデジタルで論文を提出した。その 60 人のうち、52 人が、ETD に CC-BY ライセンスを選んだ(そして、36 人は無制限でフルテキストを公表しない方を選ん だ)。Flickr における CC ライセンス公認の写真は、4 年間に 1000 万から 1 億 3500 万まで 増加した。CC ライセンスの中でも、制限的なライセンスが CC-BY より一般的であるが、 制限的な CC ライセンスの頻度は減少しており、CC-BY は増加している。 Andrew Rens は、南アフリカの法律下で 2010 年、パブリックドメインに入った作品のリ ストの一部を公表した。The Center for the Study of the Public domain(パブリックドメ イン研究センター)は、著作権の期間が 1976 年に延期(1978 年に発効)されなければ 2010 年 に パ ブ リ ッ ク ド メ イ ン に 入 っ た で あ ろ う 対 象 の リ ス ト の 一 部 を 公 表 し た 。 Open Knowledge Foundation (情報公開基金)は、2011 年にパブリックドメインに入る作品の プレビューを行った。OKF Director Rufus Pollock はもし著作権の期限が最初の 14 年を越 えて延長されないか、14 年に一回の更新であれば、“今日入手可能な書籍の 52%は実際に は 19%ではあるが、パブリックドメインにはあったであろう”と計算した。 Peter Hirtle は、米国 Copyright Term and the Public Domain のチャート(現在 CC-BY ライセンス下)に、2010 の最新版をリリースした。Tulane 大学法学校は、Durationator (各国の法律下における作品の著作権状態を確認するツール)を開始した。 恒例通り、一月一日はパブリックドメインの日であった。というのも新年の始まりに書籍 やその他の作品が著作権期限切れになるからである。Public Knowledge は、Fair Use Day として 1 月 12 日を祝った。Day Against Digital Restrictions Management(DRM:反デ ジタル化規制の日)は、2010 年 5 月 4 日であった。2010 年 3 月 31 日は、Document Freedom Day(DFD:文書自由化の日)であり、“文書解放のための世界的な日”であり、“Free Document Formats(自由化フォーマット)の重要性と大方のオープンスタンダードについ て市民の理解を得た草の根の努力”の結果である。そして、10 月 18~24 日はもちろん、 Open Access Week であった。 比較に関しては、研究のオープンライセンスに関しては、筆者のレビューを参照(原文中 にリンク): (9) 不況の影響 過去と同様、継続した不況により OA に必要な資金が減少し、またそういった状況が増加 している。 しかし、2009 年より資金減少の例は少なかった。エール大学は、国立科学図書館の組織の メンバーに書簡を送り、決定が予算上の問題であったことを説明した。しかし一方で、ウ エスタンリザーブ大学のケースでは BioMed Central とともに、失効していたサポーターメ ンバーシップを復帰させており、グリーンズボロのノースカロライナ大学は新たな契約を 交わしている。 プリンストン大学は、大学チャンネルを中止させた理由として財政的な理由を挙げる。し かし、一方で講義や会議の多くに OA を提供する他の手法を模索しているようである。ま た 2010 年に OA から TA へ切り替えたジャーナルは見当たらず、即時 OA から遅延型 OA 切り替えたものはわずかに 1 つだけであった(ジャーナルの第5節参照)。 大部分の研究アクセスが未だ有料アクセスであるので、図書館の予算削減は、図書館への 学者のアクセス削減を引き起こす。Megan Scudellari は“2009 年の、61 カ国 835 図書館 の世界規模の調査で、学術図書館のほぼ 3 分の 1 が、10 パーセント以上の予算縮小となっ ていた”と報告している。ラスクルーセスのニューメキシコ州立大学は予算を 27%削減し、 継続して行われる(83%)。コロラド州立大学は、その図書館予算を 600,000 ドル削減した。 ワシントン大学は、1,600 題目(ジャーナルとデータベース)、バージニア図書館は 1,169 題目、ニューメキシコ州立大学は 700 以上を削除した。ウェルズリー・カレッジ図書館は 2003 年以降初めてのの組織的ジャーナル削除の確認を行い、200,000 ドル(8-9%)の予算 削減に備えた。 6 月に、カリフォルニア大学(UC)図書館は、Nature Publishing Group がそのサイト・ ライセンスの価格を 400%上昇することを希望するとカリフォルニア大学教職員に通知し た。もし NPG が折れない場合、図書館は彼らの NPG を削除して、NPG の著者/エディ タ/レフェリー・ボイコットを行う予定だった。(筆者は、SOAN の 2010 年 7 月号におい て、この UC/NPG 対立について掘り下げて述べている。 )、南イリノイ大学は、UC と同 様の不満を NPG に抱いており、同様の処置をとる必要がある可能性があることを発表した。 パーデュ大学は、Committee on Institutional Cooperation(機関協力委員会)(CIC)が UC と不満を共有しており、来年、同様の処置を取る必要があると考えられ、その措置を NPG に制限しないこともありうることを明らかにした。8 月に、UC と NPG は、互いの相 違を乗り越える目的で、対話を継続することに合意し、建設的な会議を開催した。これま で、会談の結果は、公表されていない。 プリンスエドワードアイランド大学は、Science の ISI ウェブにその購読を取り消し、教員 に対し、理由を説明する公開状を送った。Mark Leggott は、大学に“Knowledge for All” と呼ばれる、提携図書館による wiki ベースインデックスの OA 構築を提案している。 32 の中国の学術図書館は、独占的かつハイパー・インフレ的な“不合理で断定的に受け入 れがたい”水準のジャーナル価格の高騰に抗議し、国際的 STM 出版者に対し、共同で公開 状を公表した。米国エネルギー省は“コストを考慮すると、DOE 本部でさえ、従業員のわ ずか 5%しか、購読ジャーナルにアクセスすることが出来ない…”と発表した。イギリスの 大学連合は、 “イングランドの大学の 3 分の 1 以上は、政府金融の削減の結果として閉鎖の 危機にさらされている”と報告した。生き残ったとしても、厳しい予算削減は、厳しいア クセスの削減をもたらすに違いない。 Research Libraries UK(英国研究図書館)(RLUK)は“本当に値下げされない限り、将 来、ジャーナルとの大きな取引行わない”と報告した。値下げが無ければ、英国図書館は “相当数の購読を断念せねばならず”、“他の方法を用いた研究者と学生への情報資源の提 供を強いられ”、それにはおそらく OA が含まれている。The International Coalition of Library Consortia(ICOLC:国際図書館コンソーシアム連合)は、Global Economic Crisis and Its Impact on Consortial Licenses(世界的経済危機とそのコンソーシアムに与える影 響に関する声明) (2009 年の 1 月に公表)でその声明を再び取り上げ、更新した。そして、 “真の値下げ”と、“主要コンテンツとアクセスの削減を必要としない創造的解決”を要求 した。アタバスカ大学は、著作権の 10 倍の料金を支払うよりは、Access Copyright でライ センスを更新しないほうを選んだ。その代わり、アタバスカ大学はより、オープンの教育 ソースや、著作権者との直接の交渉を頼みとし、他の機関がそれに倣うように奨励する。 The Medical Library Association's Ad Hoc Committee for Advocating Scholarly Communications(アメリカ医学図書館協会の学術コミュニケーション支援特別委員会)は、 “継続した経済制約を考慮し”、2011 年の価格を 2010 年レベルで凍結することに同意した ジャーナル出版者のリストを編集し始めた。この委員会は昨年同様のリストを作成し、新 編の編集に関して一般に支援を求めている。筆者が出版社に出向いた際、リストには 32 の 出版社 ― 商業的ビックネームはひとつとしてなく、大部分は非営利的団体、大学プレス や協会― があった(8 月以来更新されていない) 。 Simba Information は、ジャーナル出版者にとって厳しい時代の到来を予測している。 “図 書館の予算的制約や広告支出の減少が続くと、“図書館は、大きな契約を解除し始め”、ま た“出版者は、切羽詰まって代替戦略を見出すであろう…”。しかし、2009 年の Elsevier の利益率は 35%であり、Reed Elsevier は 26%であった。Bo-Christer Bj k’s による、年 150 万の記事に関する試算を行い、ヘザー・モリソンは、2009 年の Elsevier の利益が 20 億ド ルで、1 記事につき 1,383 ドルで 2009 年公開の記事の OA 代金を支払うことができたと計 算した。 予算の大幅削減にもかかわらず、10 機関が、有料ベースの OA ジャーナルで出版料金を支 払う新計画を起動した。うち 6 機関は、Compact for Open Access Publishing Equity (COPE:オープンアクセス出版に関する共同支援組織)に加わった(第5節で詳細を記載)。 大学に拠点を置くグリーン OA 指令の増加をこれと一緒にした場合、 (2009 年の 60 機関か ら、今年は最低 72 機関での指令まで増加し、奨励のみの政策のほぼ 5 倍に達する)、財政 的に厳しい時期で投資が必要だとしても、大学が研究へのアクセスを改善できる位置にい ることが分かる。 一方、研究では OA の経済利益がはるかに経費を上回ることを示しており、投資の妥当性 を示し続けた。第1節で示した通り、OA 政策の経済への影響に関する John Houghton ら による最新の研究は(今回は米国) 、次のような計算をしている。 “実施からの 30 年の移行 期間に渡って、提案された FRPAA アーカイブ指令で潜在的に加えられる利益は、経費のお よそ 8 倍となる可能性もある。これらの利益の約 3 分の 2 は米国内で生じ、残りは他国へ 流出する。ゆえに、提案の FRPAA アーカイブ指令により得られる米国国家利益は、経費の 5 倍程度であろう” 第2節での記述の通り、Alma Swan は OA 指令を採択するコストと利点をモデル化するた めに、ホートンの分析法を用い、大学での OA 指令の投資効果を判断するビジネス事例を 報告した。この計算によると、“大学リポジトリモデルでは、購読出版と合わせた研究・図 書館費用における年間節減幅は、£100,000 から£1,320,000 となる…”。Cambridge Economic Policy Associates(ケンブリッジ経済政策協会)と Mark Ware Consulting は OA 政策の経済効果の推定に、ホートン・モデルに代わるものを検討している。 S. Gutam と 4 人の共著者は、部分的に経済発展を加速させるという理由で、インドの助成 を受けた研究に OA を要求した。Adam Keith は、ランドサット衛星および監視活動からの オープンデータが下層企業の発展を刺激すると主張した。Frederick Friend と Knowledge Exchange による分析では、“オープンアクセスの経済的価値は(研究を主導するヨーロッ パの大学外)、大学内のアカデミックな価値よりさらに大きい可能性がある。”と結論付け た。 しかし、これまでの流れとしての惰性を決して過小評価してはいけない。Informatic 社に よる 1,000 の英国企業の調査では、企業は政府データに対する新しいオープンデータ・イ ニシアチブを称賛する一方で、企業のデータを共有することが“商業的な利益をもたらし うる”と認めるとしても、それに公表することを嫌う。企業の 83%は新たなビジネスチャ ンスを得るため、他から提供されるオープンデータを使うとし、その 78%はそれが企業の 投資決定を改善するとした。 比較のため、2009 年における OA への不況の影響に関する筆者のチェックを参照。 (10) ハイライト中のハイライト 2010 年ワースト 10 10. James Murdoch、Rupert Murdoch ニュース帝国を後継。ビジネスに良くないという理 由で、英国図書館の歴史新聞アーカイブの OA 化計画に反対した。 9. English Heritage。ストーンヘンジの著作権を所有し、記念写真を販売する画像図書館 に利益の削減を求める。 8. Todd Platts、ペンシルバニア州共和党代表。2005 年、2010 年に下院。米国陸軍士官学 校の教員の学術文献に著作権を与え、それらの著作権を出版者に譲渡することを要求する 法案を提出(“この種の研究を公共下に置くため”)。 7. 他の利害関係者からの意見を聞くことなく Ministry of Culture(文化省)と National Collecting Societies(国立収集協会)が立案したのチェコ議会の著作権改革案。著者がこの National Collecting Societies(国立収集協会)に通知した場合のみ、オープンライセンス が発効するとし、また、こういった通知に立証責任を加え、オープンライセンスの使用を 望むすべての者に、新たに不必要な官僚のハードルを設けた。 6. スイスの国立図書館。パブリックドメインの書籍をデジタル化するために公的資金を使 い、それを OA とせずに、デジタル・コピーを販売。 5. 通信分野における“Misinformation and gatekeeper conservativism(誤情報と保主義 守)”(Fair Use and Academic Freedom of the International Communication Association (国際通信の公正使用と学問的自由利用の促進協会)。この分野で研究する研究者の 5 分の 1 が著作権問題のため進行中の研究を諦め、3 分の 1 が、著作権問題が生じそうな研究テー マを避ける。そして、著作物を議論・批判する前に許可を求めることを強制している。 4. オープンライセンスを使わない大多数の OA ジャーナル(例えば CC ライセンスを使わ ないオープンアクセス・ジャーナルのディレクトリにおけるジャーナルの 81%が相当)。 グリーン OA のコレクションの大多数に関する利点を 1 つをも理解されていない。そして、 記事をより有用とし、研究調査に役立てることができる libreOA を提供する絶好の機会を 逃している。 3. The German Association of Higher Education(ドイツ高等教育協会)(Deutscher “教育・科学に親和的”な著 Hochschulverband)。教育・科学より先に著作権保護を置く、 作権方針を要求し、OA 寄託を除外。まず基礎研究をする前に公的な立場をとってしまって いる。(昨年の Heidelberg Appeal の様に、DHV はグリーン OA 指令をゴールド OA 寄託 と混同しており、グリーン OA 政策では、研究成果を自身が選択するジャーナルに提出で きる自由があり、互換性があることを理解していない。) 2. BP。メキシコ湾の石油流出の調査に科学者を雇用するが、その契約では“研究を発表し たり、収集したデータについて他の科学者と共有・検討したりすることを、最低でも今後 3 年に渡り禁じ、BP が法廷で争うことになっても、その法廷においてデータを渡さないこと を要求し、また BP の文書承認を得た結果に限り、科学者は報酬を受け取ることができると いう条件を付けた”。これは研究の健全性と研究結果の利用可能性を蝕んででいる。 1. The American Psychological Association(アメリカ心理学会)。議会の審理において、 公的助成を受けた研究に一般のアクセスを要求することは、政府の透明化(覚書の透明性 の部分でなく、国家の安全、プライバシー、“その他必要不可欠な利益”の例外)に関する オバマ大統領の 2009 年 12 月の覚書に反すると主張。そして、研究者や研究を進め公共に 利する責務を有する政府系機関においてさえ、学術的利益以前に、民間出版社の経済的利 益に必要不可欠な利益があることを主張。 ロバート・ハインラインは、70 年以上前(Life-Line、1939)、APA の見解に応じた: “人や会社は何年にもわたり公衆から利益を得てきたため、状況の変化に直面しても、ま た公共利益に反してさえも、政府や法廷がそのような将来利益の保証義務の負うという概 念がこの国の特定層で成長してきた。この奇妙な理論は、法規や慣習法で支持されていな い。個人も会社も、法廷において歴史の時計を止めたり巻きもどすよう求める権利はない”。 2010 年のベスト 10 10. Neelie Kroes、デジタル議会の欧州委員会副議長。彼女は求められる洞察力と影響力の 双方を持ち合わせている。政策に影響を与え、その精神を変えることのできる立場から、 OA とオープンデータを支持する、力強く明確な公的声明を行った。 9. オバマのホワイトハウス。 行政部や執行機関に、データ共有政策を強化するよう働きかけ、連邦政府全体で NIH 政策 を広げる計画についての意見を市民から集めた。実際は、2010 年にそれに従って活動でき るはずであったが、そうはしていない。(この協議により ACTA negotations は新聞と公益 の NGO を除外した。企業ロビィストは含まれている。)しかし、その OA 協議においては、 的確な質問がなされ、支持を表明する意見を数多く集め、それが 2011 年の政策決定の指針 となった。 8. Morgan Langille や Jonathan Eisen の Bio Torrents。オープン性と大ボリュームに対し 最適化したデータ共有プラットフォームを作成。ビッグサイエンス時代に、オープンデー タの扉を開けた。 7. Washington State Board for Community and Technical Colleges(SBCTC:ワシントン 州コミュニテイーアンド 工科短大教育局)。コンソーシアムの 34 機関で、SBCTC 資金に よる研究を支援する libre グリーン OA を開始。 6. 38 機関を支援する 7 つの libre グリーン OA 政策。gratis OA の先を行く libre OA の価 値を考慮。Libre グリーン政策がどれだけ成功しうるかを調査した。 (無料のグリーンや libre ゴールド政策と比較して、libre グリーン OA 政策は検証が進んでおらず、広まっていない。) このグリーン libreOA が広まるようリーダーシップをとった。 5. カナダの産業審議会(CBC)。方向転換し、正常化。2009 年、CBC は米ロビィグループ、 International Intellectual Property Alliance(国際知的財産権同盟)から寄せ集め編集し た著作権勧告と合わせて 3 つの報告書を提出した。これが露見した際、CBC は振り出しに 戻り、2010 年にカナダに公的助成を受けた研究に対して OA を支援するよう要求する報告 書を提出した。これは、自治が腹話術効果に、公益が私益に打ち勝った、見事な 2 重の勝 利であった。 4. 票なしで廃止となったが、111 回会議における FRPAA の再提案。超党派の共同スポン サーを集め、両院(2009 年に上院、2010 年に下院)で提起され、2006 年の最初の導入時 よりも前進した。権利原則と、他の政策よりも多くの査読論文を開放する実質的政策を確 立し、前進に寄与した。昨年の筆者の意見:“超党派的支持が無い衰退した時代に、超党派 的支持を得た”。 3. カリフォルニア大学。Nature Publishing Group のサイト・ライセンスにおける 400% に及ぶ耐えがたい価格上昇に立ち向かった。特に、無類の交渉力をもつ出版社に対して、 その無類の交渉力で立ち向かった。小機関が持ち得ない影響力で押し通した(しかし、影 響力の結果は現時点では不明)。研究者と研究機関の利益に立って活動しており、出版社の 独壇場とはさせていない。他機関に協調した措置をとるため、共通の不満を声に出すよう に促した。 2. EUR-OCEANS Consortium。大学以外の組織に対する、これまでで最大の共同 OA 指令 (15 カ国で 29 組織を網羅)、そして最初の共同 OA 運用が採択された。他の偉大な一歩を 刺激した、偉大な一歩である。 1. 17 カ国(第 1 節)の 38 の新規資金配分機関 OA 指令と 15 カ国(第 2 節)の ― 数え 方次第ではある― 72-105 大学でのグリーン OA 指令。今年 1 年で、月平均で 3 つ以上の資 金配分機関 OA 指令と 6-9 の大学での指令を記録した。これは勢いを保ち、拡大した。研究 機関が知識囲い込みの利益より、知識共有の利益を優先する、新たなスタンダードをもた らした。 比較に関しては、筆者の OA ハイライトを参照(原文にリンク): * 後書き これら年次評価の執筆においては、文書化された意見にリンクを張るのが唯一の方法であ ろう。ここで言及される全ての情勢と組織へのリンクに関しては、筆者のブログと会報に ある、検索対応のアーカイブを参照されたい。また、“oa.new”は Open Access Tracking Project からライブラリにタグを付けている。リンクが見つからない場合は、筆者にご一報 いただきたい。 本稿の誤記などに関しては筆者がその全て責任を有するが、最終段階の事実確認の助力に ついて、筆者はこの場を借りて Heather Joseph、Heather Morrison、Heinz Pampel に感 謝の意を表したい。 また、前年の年次評価を参照。 * 後書き 2。 個人的な事情で、前年ほとんどブログを止めてはいたが、2010 は筆者が Open Access News (OAN)を記録した年であった。少なくとも 3 つの問題に遭遇した:まずは、バークマン・ センターでの新たな業務に時間を裂く必要がでてしまったこと、1、2 人では大規模化する OA 活動に対処するのは困難であること、さらに Google の Blogger ブログへの FTP サポー ト撤退である。筆者は 2009 年に開設した Open Access Tracking Project(OATP)を通し て新しい OA の情勢を公表し続けてきたが、OATP はブログでやってきたこができる作り にはなっていない。手がふさがってしまった 3 つの要因に関しては残念ではある。OAN は OA の履歴であり検索可能なものではあるが、継続的なニュース速報や、着実に展開中の OA の進展状況についてのコメントは載せることができない。 概要 前回の会報以来、研究や評価を通じた活動や政策を中心として、起こったこと、気がつい たことをここで記す。最重要な項は最初の方に置き、2 重のアスタリスクを付けた。またそ れほどでもない物は、トピックごとにまとめた。Roundup フォーマットでこれらの成果を 再述する際にいただいた Katharine Dunn の助力に謝意を表する。 最近の OA 情勢の包括的な構図に関しては、OA Tracking Project のプロジェクトを参照さ れたい。 + 方針 ** ポルトガルの Instituto Universit 疵 io デ・リスボン(リスボン大学研究所)は、OA 指 令を採択した。 ** ハワイ-マノア学部評議会大学は、ウェーバー・オプションでハーヴァード・スタイルの OA 指令を採択した。 ** オーストラリアのエディス・カウアン大学は、OA 寄託を採用した。 (PS:方針メタデータによると、政策が最後に修正されたのは「01/09/2012」であった。 どなたか実際の日付を御存知であろうか?) **India’s National Institute Oceanography(インド国立海洋学研究所) (NIO)は、OA 指 令を採択して、ROARMAP にそれを掲示した。 (PS:筆者は、NIO がいつ方針を採用したかについて把握していない。ROARMAP に掲 示される言語は、NIO サイトの検索においては現れなかった。) **バージニアコモンウェルス大学教授会は昇格・テニュア委員会(Promotion and Tenure Committees)に「オープンアクセスや、オープンアクセスによる査読論文とその再版など における出版・編集努力が付加価値を生み、高価なジャーナル出版での研究成果よりも、 大きな公益となる」ことを認識させる決議を採択した。 **Stellenbosch 大学は文理双方の情報に関して、ベルリン宣言に署名し“大学の研究者が 研究論文をグリーンもしくゴールドの OA にするよう奨励する方針を実行する”ことを約 束した。 *イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校は、学位論文と論文に対し OA 指令を採択した。 *トリノ大学は、学位論文と論文に OA 指令を採択した。 *ヒューストンのテキサス大学生体医科学大学院は、学位論文と論文に対し OA 指令を採択 した。 *OpenAIRE(Open Access Infrastructure for Research in Europe:欧州研究者のための OA インフラストラクチャー)は 2009 年に計画され、2010 年 5 月に仮着手となったが、 2010 年 12 月 2 日に公式に立ち上げられた。OpenAIRE は、Seventh Framework プログ ラム(FP7)やヨーロッパの Research 会議(ERC)が助成するヨーロッパの研究者向けグ リーン OA インフラである。研究者が OpenAIRE に論文を寄託する際、リポジトリがあれ ば、自身の組織のリポジトリにリダイレクト、またはリポジトリが無い場合 CERN ホスト のリポジトリにより配布される。 *Neelie Kroes(Digital Agenda 責任者の欧州委員会副議長)は、OpenAIRE の開始に関し て、公式声明をだした。 「OA は単に PDF の記事をダウンロードすること以上のものを意味 する。また、研究結果にインデックスを付け、注釈をつけ、整理し、それにリンクを張る、 新しい方法も意味し、そしてこれらを自動化する新たな方法でもある。しかし何よりも、 それが公的資金を使って生み出される情報に対するアクセス権利に関し、市民を支援する ため、科学情報に対するオープンアクセスは重要である…。オープンアクセスの素晴らし さは、それが誰に対してのものでもない、という点だ。それは、情報流通の自由といえる …。」 *米下院と上院はアメリカ COMPETES Reauthorization Act を通し、署名を求めそれをオ バマ大統領に送付した。法案は新たな研究資金を一部の機関に提供し、Interagency Public Access Committee(省庁間パブリックアクセス委員会)を設立した。新委員会は良好な政 策を押し出してゆけるか、もしくは出版社のロビィ活動を受け、FRPAA を出し抜くか。 *デイビッド Vitter 上院議員(R-LA)と John Barrasso(R-WY)は Access to Historical Records(歴史記録に対するアクセスに関する法:S. 4015)を取り入れた。NASA や全米 気候データセンターによるの過去の気候データなど過去に遡る OA を提供している。 * The White House Office of Science & Technology Policy(ホワイトハウス科学技術政策 室)は、待望久しい Memorandum on Scientific Integrity(科学的公正性に関する科学技 術政策室長の覚書:政府系化学者を政治的圧力から保護する目的で起案)を公表した。1 つ の方向性としては“オープンガバメントイニシアチブ(Open Government Initiative)と 一貫して、機関はオープンフォーマットで、オンラインを用いて科学的・技術的情報への アクセスを拡大・促進する必要がある…” *ドイツ Forschungsgemeinschaft(DFG)は、有料ベースの OA のジャーナルで料金を支 払う際、大学をサポートする新計画を開始した。 *DFG からの資金提供で、ドイツの Hohenheim 大学は、OA ジャーナル基金を開始した。 *ドイツの弁護士 Till Kreutzer は、出版社が著作権解除可能な作品を支配する新準著作権 防護に反対する目的で、Related Right(Initiative gegen ein Leistungsschutzrecht、IGEL) に対してイニシアチブ立ち上げた。 *Opening Australia’s Airchiv は、オーストラリアの収集機関に対し、オープンアクセス原 則のバージョン 1.0 を計画している。 *International Society for Computational Biology (情報生命科学国際学会)は OA 政策 を採用した。これは“自由とオープン性、公共性、オンラインを強く推進している。(i)公的 資金によるアーカイブにおける科学・技術論文への人・機械によるアクセスそして、(ii)高 次な知識要素へ向けた論文の統合・抽出、計算での再利用”。 *ICSU Committee on Freedom and Responsibility in the conduct of Science Freedom (CFRS:科学行為における自由と責任委員会)は、Science Communication に、Advisory Note(助言的意見)を公表した。ガイドライン#9 では、科学コミュニケーションが“可能 な限り、公的にアクセス可能であるべき”と述べている。 *James Boyle(Creative Commons の共同創設者であり、パブリックドメイン研究のデュ ーク法学校センターの創設者の一人)は、英国著作権法を調査する調査委員に任命された。 *オランダ科学研究機構(Nederlandse Organisatie voor Wetenschappelijk Onderzoek: NWO)は、OA の重要性に関するセッションなど、科学会議に最高 2,500 ユーロを提供す る、新資金提供プログラムを開始した。 *オランダ科学研究機構(Nederlandse Organisatie voor Wetenschappelijk Onderzoek、 NWO)の議長である Jos Engelen は、研究者に OA ジャーナルで公表するよう訴える公開 状を発表した。リンをヒ素に置換するバクテリアに関する科学雑誌の記事を読もうとした と際に支払いという壁にぶつかり、公開状に至った。 *リチャード・M・ストールマンは“ネットユーザーから長期渡って召集したお金と引き換 えに、出版されたものを共有する自由”を認めるブラジルの著作権法における“重大な進 歩”を支持する公開状を公開した。 +ジャーナル *Open Research Computation(オープンリサーチ計算)は、BioMed Central の査読チェ ック付き OA ジャーナルである。 *Herpesviridae(ヘルペス・ウイルス)は、BioMed Central の新しい査読チェック付き OA ジャーナルである。 *Vulnerable Groups & Inclusion(社会的弱者および一体性)は、Co-Action Publishing(共 同出版)の新しい査読チェック付き OA ジャーナルである。 *European Journal of Psychotraumatology(心的外傷欧州ジャーナル)は、Traumatic Stress Studies(心的外傷研究)と Co-Action Publishing(共同出版)ヨーロッパ協会の、 新しい査読チェック付き OA ジャーナルである。 *Pharmaceutical Negative Results ジャーナルは、MedKnow Publications の新しい査読 チェック付き OA ジャーナルである。 *初期の Modern Culture Online は、Modern Languages and Translation におけるノルウ ェーの Agder 大学の新しい査読チェック付き OA ジャーナルである。 *Veterinary Research(VR)は OA に切り替え(OA ジャーナルとして“再始動”し)、French National Institute for Agricultural Research(フランス国立農業研究所:INRA)に代わ り、BioMed Central から出版される。VR は獣医の科学の分野で最も高い影響因子を有す る。 *National Information Standards Organization(NISO:米国情報標準化機構)が発表し た Information Standards Quarterly(情報標準季刊誌)は、OA に切り替わった。 *Revue belge de Philologie et d’Histoire(ベルギーの歴史哲学ジャーナル)は OA に切り 替え、1922 年の最初の記事へのバックファイルに OA を提供した。 *The Royal Netherlands Institute of Southeast Asian and Caribbean Studies(オランダ 王立東南アジア・カリブ学研究所)は、完全なバックファイルに加えて、TA ジャーナルの うち 2 冊を OA に切り替えた: The Journal of the Humanities and Social Sciences of Southeast Asia and Oceania(東南アジア・オセアニア哲学・社会科学ジャーナル) (1853 年から出版の Bijdragen tot de Taal-、Land-en Volkenkunde)と New West Indian Guide (新西インドガイド) (1919 年から出版の Nieuwe west Indische Gids)である。それぞれ 2 冊のジャーナルは、1853 と 1919 年以来、存在している。 *Editor & Publisher は、OA に切り替わった。 *Nature Publishing Group は、新たに 15 冊の NPG ジャーナルで、ハイブリッド OA オプ ションを発表した。 *英国 PubMed Central と PubMed Central は 1909 年から 1968 年までの Eugenics Review (優生評論)の全バックファイルを開放し、フランシス・ゴルトンやレナード・ダーウィ ンなど著名な優生学者による論文を公開した。 *Anthropological Research(人類学研究)の Wenner-Gren Foundation(ウェンナーグレ ン財団)は、ジャーナルの Current Anthropology で、その年の2回分のシンポジウム記録 を OA で提供すると発表した。 *Open Access Scholarly Publishers Association(OASPA:オープンアクセス学術出版社 協会)は CrossRef と協議し、OASPA メンバーが無料で年に最高 50DOI 登録できる合意を 行った。 *カタール財団とブルームズベリー出版は、QScience.com(OA ジャーナルの新プラットフ ォーム)を開始した。現在 6 冊の OA ジャーナルのホストを担っている。また、そのうち 5 つが CC-BY ライセンス使用し、1 つが CC-BY-NC を使用する。 The Moroccan Centre National Pour la Recherche Scientifique et Technique は、SCOAP3. に加わる最初のアフリカの研究機関になった。 SPARC ヨーロッパは、Compact for Open-Access Publishing Equity(COPE:オープンア クセス出版に関する共同支援組織)の組織支援に加わった。 + リポジトリとデータベース *スペインの Ministry of Science and Innovation(Ministerio de Ciencia e Innovacion、 MICINN:科学イノベーション省)は、政府の公共研究組織(Organismos Publicos de Investigacion)の出版物の OAI 対応の OA リポジトリを開始した。これは現在 40 冊以上 のジャーナル・書籍をホストし、さらに多くを近く受け入れる予定である(筆者はどんな 寄託政策か分からないため、この件に関して支援いただければ助かります。) インドの Kochi の、The Central Marine Fisheries Research Institute(インド中央海洋水 産研究所)は、機関リポジトリを開始した。これは 1953 年以降発表されたスタッフの論文 7,000 本からスタートした。 *米国政府印刷局(GPO)は、公式にその Federal Digital System(Fdsys:連邦デジタル システム)リポジトリを採用し、以前のもの(GPO Access)を段階的に削除し始めた。 *米国国立公文書館は、Online Public Access(OPA) (オープンガバメント計画の“旗艦的 イニシアチブ”)の試案を示した。OPA は、デジタル化した政府記録や写真、またオフライ ンの所蔵の説明を OA で提供するパブリックポータルである。 *1000 機関が、F1000 Posters(生命科学と医療からの会議ポスターの OA リポジトリ)を 開始した。 *まだ仮着手ではあるが、インドの Legal Information Institute(インドの法情報機関)は 現在オンラインであり、OA である。 +データ *Wiley journal、Evolution(進化)、また進化関連のジャーナルにおいて、2010 年の春に 採用されたオープンデータ・アーカイブ政策は、昨日(2011 年 1 月 1 日)発効した。 Nature は、Heather Piwowar と Peter Murray-Rust の IsItOpenData の質問に回答した。 要約すると、“はい。-補足情報は、Nature 認証のジャーナルすべて、包括的ライセンス の下で公開されます…。 ” *BioMed Central は、BMC ジャーナルで発表される論文への、オープンデータに対するそ のサポートをあらためて表明した。 *Science3.0 は、パブリックドメイン(CC0)において、データセットの無料 RDF データ・ ホスティングサービスを開始した。RDF の大多数のデータセットがアップロードされた後、 “SPARQL に寄せられるリクエストをマッピングするため、データのリンクを検討する。” と述べている JISC は EDINA に OpenURL ルーターデータを再利用向けに開放可能かどうかを調査する よう依頼した。 Internet Archive(インターネットアーカイブ)は、1930 年に実施の最初のアメリカ合衆 国国勢調査 OA 版を全て公開した。 *米国環境保護局(EPA)は、OA Discharge Monitoring Report Pollutant Loading Tool(排 出管理報告汚染物質負荷ツール OA 版)を開始した。これは誰がどこで、どの汚染物質を 排出しているかを表示する。ウェブサイトでは、汚染物質量と毒性に基づき、業種、汚染 者、流域を評価できる。 *米国環境保護局(EPA)は Reg Stat website を開始した。これは 2005~2009 年に政府機 関が発表する文書・規則へのアクセスを提供する。環境保護庁は、1 年におよそ 1,800 文書 を公開する。 *米国環境法研究所は、メキシコ湾における昨春の石油流出に関連した進行中の訴訟をトラ ッキングする Deepwater Horizon Oil Spill Litigation Database(ディープウォーターホラ イズン石油流出訴訟データベース)を開始した。 *クリス・タガートとロブ・マキノンは、世界中の企業の OA データベース(Open Data License の様な共有下)である、OpenCorporates のアルファ・バージョンを開始した。 *ロシアの Federal Space Agency(Roscosmos:ロシア連邦宇宙局)は、地表の衛星画像の OA での提供を開始した。 *Kevin Folta らは、複相イチゴのゲノム配列を調べ、結果を OA 化した。 *キューバの 18 機関の研究者は、国の生物学的多様性データを OA Global Biodiversity Information Facility(地球規模生物多様性情報機構)に加えることに同意した。 *The European Medicines Agency(EMA:欧州医薬品庁)は、臨床試験や他のビジネス文 書のデータに関し“より大きな開放性と透明性を約束する”政策を発表した。今のところ、 EMA は文書による要請に応じてデータを公表するだけだが、今後 5 年で OA 電子登録を開 始する予定である。 ケンブリッジ大学の World Oral Literature Project(世界の口承文学収集プロジェクト)の 研究者は、絶滅危惧言語の OA データベースを開始した。ウェブサイトは 3,524 の世界言 語の記録が含まれ、ユーザーは話者、危機レベル、地域などで検索することが出来る。 日本の国立国会図書館は 400 万の記録を WorldCat に加え、WorldCat における中国語・日 本語・韓国語のスクリプト記録の数を、ほぼ 33%増やした。 + Books とデジタル化 *Google は Google Books Ngram Viewer(520 万冊におよぶ Google でデジタル化された書 籍に関する質問をテキストマイニングするための無料ツール)をリリースした。これは、 5000 億語、すなわちこれまでに出版される全ての書籍のおよそ 4%に至る。ハーバードの 学者(このツールを用いて初めて研究報告を共同執筆)は、それを“人文科学の歴史上、 最大のデータ・リリースと呼んだ。 ”テキストのおよそ 4 分の 3 は、英語である。 *Google は、購買用の ebooks に関し、ついに書籍販売を開始した。書籍は開放され、イン ターネットに接続した装置で読むことも可能となる。パブリックドメインの書籍は OA で あるが、カット&ペーストは不可であり、検索エンジンは OA 書籍に対してフィルターを かけている。出版者の要求に従い、著作権で保護された書籍は、それぞれの DRM と使用規 制を保持する。 *Google は逆に、図書館のブックスキャン契約内には排他条項を施行しないことに決めた。 また、他の検索エンジンでも Google でスキャンされたデジタル・テキストにインデックス を付けられるよう、門戸を開いた。 * Berkman Center for Internet and Society(インターネット・社会バークマン・センター) は、米国デジタル公共図書館の展望、構築、経費、管理の規定に関して、スローン財団か ら補助金を受けた。運営委員会には、ハーバード大学、スタンフォード大学、ミシガン大 学とバージニア大学、メロン・スローン基金、Council on Library Information Resources (CLIR:図書館情報資源振興財団)、Internet Archive(インターネットアーカイブ)、 Library of Congress(米国議会図書館)および Public.Resources.Org の代表などが加わっ ている。 * Robert Darnton は、米国デジタル公共図書館に対するビジョンに関する実情を繰り返し 述べた。 *ペンシルベニア大学図書館は、HathiTrust に加わった。 * German National Library (ドイツ国立図書館) 、オックスフォード大学と Europeana は、 第一次世界大戦における家族の手紙・記録をデジタル化する合意に署名した。すでに大戦 アーカイブで掲載されている英国の兵士・家族のものにドイツの手紙、写真などが加わる。 *Providence College (プ ロヴ ィデン スカ レッジ )は 、Latin American and Spanish Peninsular letters(ラテンアメリカおよびスペイン半島の手紙)に関する研究をデジタル 化し、それを、機関リポジトリを通じて公開した。 *インターネットアーカイブは、アップグレードしたオープンソース BookReader をリリー スした。新バージョンはオープンライブラリと一体化して、新しい共有化オプション(ウ ェブ・ページへの書籍の組み込み、各ページへのリンクを共有)を提供する。 *ペルセウスデジタル図書館はプルターク、アテナイオス、ギリシャ詞集および Lucian に 関して TEI XML 版を発表した。そして、160 万以上のギリシャ語文書をその OA コーパス に加えた。 *Dan Gillmor は CC BY-NC-SA ライセンス下で、新書籍、Mediactive を出版した。彼は OA 版の公開を許可しなかった主要 NY 出版者からの契約を拒否した。 *Grey Literature Repositories(グレー文学リポジトリ)は、Radim Bacuvc 勛(プラハ、 2010)から出版される新書籍である。 *Open Knowledge Foundation (情報公開基金)は、Public Domain Review(どの著作権 が最近期限切れになったかについて作品を再調査する新規のブログ)を開始した。 + 研究調査 * Llu 﨎 Anglada とアーネスト Abadal は、南ヨーロッパに関する OA の報告を、フランス、 ギリシャ、イタリア、ポルトガル、スペイン、トルコのそれぞれ章別で公表した。 *Jelte Wicherts と Marjan Bakker によると、アメリカ心理学会(APA)のジャーナルで 発表した研究者の 73%が、データ共有の APA 規則(倫理・出版マニュアルの規約)に従わ ないとわかった。この問題を解決する代わりに、APA 出版マニュアルの最新版はさらに困 難なものとしており、遵守できそうにない。 *Knowledge Exchange は、OA ジャーナルがいかに購読料金をビジネス・モデルのサポー トに使用するかに関する Mark Ware の研究を公表した。 *購読料金についての新しい Knowledge Exchange 報告に意見し、Wellcome Trust は次の ように述べた。“出版者が Wellcome 対応のオープンアクセス・モデル(すなわち出版時に おける PMC/UKPMC での最終原稿の寄託と、研究成果の再利用を許可するライセンス) を提供する際、出版購読料金は許容可能な出費である。” * William Walters と Anne Linvill は OA ジャーナルの相対的規模に関する研究論文を発表 した。“OA ジャーナルの規模には、大きな差異がある。最大でなもので 1 年につき 2,700 以上の記事を発表するが、半数は 25 以下である。29 パーセントの OA ジャーナルが出版料 金を請求するが、我々の研究では、そういったジャーナルは 50 パーセントしか確認できて いない。生物学と医療の分野の OA ジャーナルは他より大規模で、有料となる傾向があり、 引用への影響も大きい。全体として、OA ジャーナルの状況は、2、3 の重要出版者とジャ ーナルの影響を受けている”。 *Publishing Research Consortium(出版研究コンソーシウム)は、異種の情報の重要性を、 各種情報へのアクセス性と比較する、新しい報告を公表した。1 つの知見としては、「全分 野において、ジャーナル記事が最重要であると評価された。93%がアクセスを『非常に簡単 である』か『かなり簡単である』とした一方、他種の重要情報(データセットなど)が存 在し、それに関してはアクセスが難しかった…。」 *Jason Priem と Kaitlin Light Costello は、アカデミックな“tweet”が時々記事自体より むしろ、記事についてのブログ投稿かもしくは他の二次的なソースにリンクしており、そ して、これらの“二次的ツウィート”の機能が、記事への“課金から逃れる”手立てとな っていると報告した。 *University College Falmouth(ユニバーシティ・カレッジ・ファルマス)の Intellectual Property Rights For Educational Environments(教育環境の知的財産権)(IPR4EE)プ ロジェクトは、教材、特に OA となっているものの著作権への理解に関して調査を開始し た。回答は、2011 年 1 月 31 日が締め切りである。 + ソフトウェアとツール *Springer は、Realtime.springer.com(スプリンガー・ジャーナルの論文と書籍の章に関 するダウンロード・データを収集し、様々な形式で提示する無料ツール)を開始した。 *オーストラリアの Mukurtu プロジェクト(ローカル図書館・アーカイブ・博物館のオー プンソースリポジトリとコンテンツ管理プラットフォーム)は、ウェブサイト、ブログ、 wiki を開始した。リポジトリとプラットフォームの公式なスタートは、次の夏に予定され ている。 *DuraSpace は、共同でコードを開発し、試作品を試験し、要件を決定する DSpace-Fedora の統合に興味がある人々・機関を募集した。 *DuraSpace は Fedora Commons Repository ソースコードの GitHub への切り替えを完了 した。共同開発に使用できる。 *DuraSpace は、DSpace バージョン 1.7.0 をリリースした。 *DuraSpace は、DuraCloud バージョン 0.7 をリリースした。 *Open Library は、ユーザーが著者・タイトル・版またはテーマに基づくリストを作成し、 共有できるツール“Lists”をリリースした。Lists は、JSON、HTML と BibTex でエクス ポート可能である。 *UKPMC は“Zotero enabled(Zotero 使用可能)”となり、ユーザーは UKPMC 論文メタ データを、タグや、検索、書式設定したレファレンスで送信できる Zotero に保存可能とな った。 *データリポジトリ ShareGeo は、空間データのアップロードを簡素化するため、プラグイ ンを開始した。 *Public Knowledge Project(公共情報プロジェクト) (PKP)は、PKP European Network (PKPEN)を立ち上げた。これは、 “Public Knowledge Project のソフトウェア・アプリ ケーションの使用に関心を持つ”諸機関で構成される。 *ノルウェーの Social Science Data Services(NSD)は、その Nesstar データの出版・分 析ソフトウェアをフリーウェアに転換し、バージョン 4.0 をリリースした。 + 受賞・これまでの履歴 The US University Corporation for Atmospheric Research(大気圏研究の全米大学連合) ( UCAR ) は 、 OpenSky 、 UCAR の 機 関 リ ポ ジ ト リ 、 the US National Center for Atmospheric Research(NCAR)、UCAR Community Programs(UCP)を設置したチー ムに、2010 年の Distinguished Achievement Award(功労賞)を与えた。 (PS:NCAR は、 2009 年 10 月に OA 指令を採択した。) *Econtent 誌は、OA 教科書出版社の Flat World Knowledge、を“デジタルコンテンツ産 業で最重要となる 2010 年のトップ 100 社の 1 つ”とした。 *カタール財団は、MIT OpenCourseWare プロジェクトに 2010 の World Innovation Summit (世界イノベーションサミット)の Education(WISE)Award(教育賞)を授与 した。この教育賞を受賞したのは全部で 6 団体である。 *Creative Commons は、8 年目を迎えた。 *China’s national Library(中国国立図書館)次長は国家デジタルライブラリーには現在 460 テラバイトの記録があると発表した。そのおよそ 4 分の 3 は OA である。 *11 月に、RePEc(Economics の研究 Papers)は 12 の新たなアーカイブを加え、1000 万 件のダウンロード、EconPapers のアブストラクト 4000 万件、CitEc からの引用 600 万件 という、記録に達した。 + その他 *Public.Resource.Org と Law.gov の創設者である、Carl Malamud は Administrative Conference of United States(米国行政会議) (ACUS) (行政法と連邦法の手続きにおいて、 公的・超党の、法的助言と専門知識を提供する独立連邦機関)に職を任じられた。 *Public.Resource.Org と Fastcase は、アメリカの州・連邦裁判の判決理由の OA を毎週作 成するという、共同計画を発表した。CC0 パブリックドメインの割当てにおいて、大量ダ ウンロードについても、同様の意見が得られた。新サービスは、Law.gov の一部である。 *ライス大学 Connexions および IEEE Signal Processing(電子情報通信学会)は、エンジ ニアにとって有用な、査読付きのオープンな教育リソースを収集する共同計画を発表した。 *アタバスカ大学は 10 倍ともなった著作権料金を支払うより、Access Copyright のライセ ンスを更新しないことを決定した。その代わりに、大学はオープンな教育リソースや著作 権者との直接交渉を頼みの綱とすることとした。 *Knowledge for All(カナダの学術ジャーナル文献の OA データベース)は、技術・通信開 発や基金調達など、2011 年の事業計画を発表した。 *Library and Archives Canada はコンテンツとサービスにより多くの OA を提供し、2017 年のカナダの建国 150 周年までに、 “完全機能を有するデジタル組織”となる計画を発表し た。 *ハンガリー法務省は、共産主義時代における、50,000 人の州保安員と情報提供者に関する “大部分の”機密扱いのデータを開放し、OA 提供するための法律を起草している。そのよ うな法律がなければ、データは 2060 年まで封印されたままとなる。 *ロシアの Federal Agency for Technical Regulation and Metrology(技術規則・計量機関) は、Open Document Format(ODF)をその内部の標準として採用した。 *グラスゴー大学はイージーアクセス IP を開始した。これは大学研究者の発明や特許を受 けた成果に対し企業 OA を付与するウェブサイトである。大学によると、このように技術 をライセンス可したのは英国で初である。 *現在レイセスター研究アーカイブの学位論文や論文約 700 本にインデックスが付けられ、 英国図書館の EThOS や、DART-Europe から入手可能である。 *Style のシカゴ・マニュアルの第 16 版は、ユーザーが利益を最大化する出版者であるとみ なし、OA の回避・遅延を勧告している。 今月の予定 1 月に開催予定の、主な OA 関連のイベントを若干数ここに列挙する。 2011 年 1 月 18 日。 The US National Science Foundation(全米科学財団)のデータ共有方針が実施される。 NSF 助成金の申込者は、研究結果の共有方法を詳述したデータ管理計画を作成する。 *2011 年 1 月。新しく、さらに強力なオープンデータ政策が、英国 Natural Environment Research Council(自然環境研究委員会:NERC)で実施される。 *2011 年 1 月に開催される OA 関連の会議(原文中にリンク) *他の OA 関連の会議(原文中にリンク) 整理 最近の2、3のメールでのリクエストに応じ、2002 年 4 月 15 日(会報発行)から、この ミニFAQを再記する。 Q: Suber は引用符の使い方を知らないのか? A: 自身の分野(哲学)の著者らと同様、私も正しく引用しています。正しい引用とは、原 文に無い限り、引用符中で囲った文の最後に、コンマやピリオドを打ちません。普通省略 するような個所でも、文法書に従うと句読点が必要となる場合があることは承知していま すが、実際には不合理です。引用符は、引用していることだけを意味するんです! これは SPARC オープンアクセスニューズレター(Open Access Newsletter)(ISSN 1546-7821)である。Peter Suber が執筆し、SPARC で発表する。筆者がこの会報で表す 見解は、筆者自身のものであって、SPARC や他のスポンサーのそれを必ずしも反映するわ けではない。 購 読 を 取 り 消 し た い と き は 、 申 し 込 み い た だ い た ア ド レ ス か ら <[email protected]>へご連絡ください。 ご遠慮なく関係者に記事をお送り下さい。また記事をお読みになっている場合は <[email protected]>に連絡いただき、購読できます。 オープンアクセス会報とオープンアクセス・フォーラムのための SPARC ホームページ SPARC Open Access Newsletter、アーカイブされたバックナンバー(原文中にリンク) オープンアクセスの概要(原文中にリンク) オープンアクセス追跡プロジェクト(原文中にリンク) オープンアクセス・ニュース・ブログ(原文中にリンク) SOAN は、アメリカ合衆国認可の Creative Commons Attribution3.0 下でライセンスを付 与されている。(原文中にリンク)
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