脳血管障害の治療 ●脳血管障害とは? 出血性脳血管障害 虚血性脳血管障害 星光(寝屋川)病院 川上勝弘 頭蓋骨 硬膜外 硬膜 硬膜下 クモ膜 クモ膜下 脳室 脳内 硬膜外出血(硬膜の外) 硬膜下出血(硬膜内でクモ膜の外) クモ膜下出血(クモ膜内で脳の外) 脳内出血(脳実質内) 脳室内出血(脳室中) 1.クモ膜下出血 クモ膜下出血の原因 破裂脳動脈瘤 80% 脳動静脈奇形(AVM) 15% その他 診断 頭部CT 腰椎穿刺 (頭部CTではっきりしない時のみ) SAHの症状 突然の激しい頭痛 ハンマーで殴られたような 今まで経験したことがないような 嘔吐 意識障害 髄膜刺激症状(項部硬直) ●SAH頭蓋外の症状 不整脈 →洞性徐脈、洞性頻脈、心室性期外収縮 心電図の変化 →QTの延長、T波の異常、U波、ST上昇 眼底出血 →Terson syndrome(SAHの3~5%) 消化管出血 神経原性肺水腫 SAHのCT 正常なCT 発症後の経過 入院前に死亡 15% 入院後48時間以内に死亡 21% 破裂脳動脈瘤の再出血率(国際共同研究) 1) 24時間以内 4.1% その後2週間は1日あたり1.5% →2週間以内の再出血は23.5% 2) 2週間から6ヶ月 10% それ以降は1年当たり3.5% →1年以内の再出血は35% AVMの再出血 最初の1年が6%、以後1年当たり2% 脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血の特徴 再出血率が高く、死亡率が高い 再出血は早い時期に多い 治療の原則は早急な再出血予防 (出血の除去のためではない) クモ膜下出血の診断がつけば 直ちに動脈瘤の場所の検索を行う 好発年齢 40から59歳が55%を占める。 好発部位 ウイルス輪前半部が多い 前交通動脈 40% 内頸動脈 30% 中大脳動脈 20% 椎骨脳底動脈領域 10% 多発性脳動脈瘤 20% 脳動脈瘤の種類 脳動脈瘤の破裂 破裂脳動脈瘤の治療 1)開頭手術 クリッピング、トラッピング、コーティング 2)血管内手術 瘤内塞栓(embolization)、親動脈閉塞 脳動脈瘤クリッピング術 クリッピング前 クリッピング後 脳動脈瘤塞栓術 脳動脈瘤塞栓術 に用いるコイル SAH後の脳血管攣縮(スパズム) 脳主幹動脈の数日ないし数週間にわたる可逆的、 持続的血管狭窄 4~14日目に起こりやすい 脳血管撮影上は約70%に見られ、うち症候性は 25~30% はっきりした原因はわかっていない 脳血管攣縮(スパズム)の治療 予防 早期手術で脳血管周囲の血腫の除去 循環血液量の維持 塩酸ファスジル(エリル) オザグレルナトリウム(カタクロット、キサンボン) 症状出現時 triple H療法 hypertensive-hypervolemic-hemodilution マイクロカテーテルによる血管拡張剤の投与 (塩酸パパベリンの投与) 2.脳内出血 頭蓋骨 硬膜外 硬膜 硬膜下 クモ膜 クモ膜下 脳 内 脳室 出血 (血腫) 脳内出血の原因 1)高血圧 70~90% 2)アミロイドアンギオパチ- 3)血管奇形 AVM 海綿状血管腫 静脈性血管腫 被殻出血 小脳出血 視床出血 脳幹出血 皮質下出血 ●高血圧性脳内出血の特徴 40~69歳が全体の75% 男性に多い。 ●脳内出血の好発部位 被殻 視床 皮質下 脳幹 小脳 40~50% 20~30% 10~20% 5~10% 5~10% 高血圧性脳内出血は再出血予防のために手術はしない 高血圧性脳内出血の手術は血腫による圧迫された正常 脳を助けるために行う。すなわち血腫除去である。 破裂脳動脈瘤によるクモ膜下出血に対する治療との根 本的な違い 高血圧性脳内出血の治療 1)開頭血腫除去 2)穿頭血腫除去 3)保存的治療 →手術の適応となりにくい →開頭手術の適応となりやすい (もちろん小さければ保存的) →穿頭手術の適応となりやすい (もちろん大きければ開頭 小さければ保存的) 3.脳梗塞 脳梗塞 ( NINDSⅢ, 1990 ) 臨床カテゴリー 1)アテローム血栓性梗塞;20~30% 2)心原性脳塞栓症;15~20% 3)ラクナ梗塞;40~60% 4)その他 機序 1)血栓性 2)塞栓性 3)血行力学的 アテローム血栓性梗塞 頭蓋外や頭蓋内の大血管の 粥状硬化性病変を基盤として生じる脳梗 塞 血栓 血行力学的 血栓 塞栓 塞栓 アテローム血栓性脳梗塞の特徴 1. TIAが先行することが多い(40%) 特にcrescendo TIAの場合は主幹動脈の高度狭窄が疑わ れる 2. 発症様式:緩徐、進行性 突然完成型の塞栓性梗塞が疑われるが、 Af(-) → artery - to - artery embolism 3. ラクナ梗塞ではみられない意識障害、同名半盲、皮質 症状 などを伴う場合 4. 狭窄が血管径の70%以上になると 血流不全 血栓形成→ artery - to - artery embolism 5. 皮質枝領域梗塞または境界領域梗塞の形をとることが 多い ラクナ梗塞 穿通動脈支配に一致した15mm以下の梗塞 → ラクナ梗塞 ・脳深部、脳幹の穿通枝(終末 動 脈 で側副血行なし)の閉塞 に より生ずる 小梗塞 ・3〜4mm ─ 1.5cm ・被殻、橋、視床、尾状核、 内包後脚、放線冠 ラクナ梗塞の特徴 1. 原則として意識は清明 2. TIAの前駆する頻度20% 皮質性梗塞に比して低い 3. 多発する事が多い 4. 発症様式:一般に階段状あるいは緩徐進行 性 5. 夜間睡眠中に発症することが多い 6. ラクナ症候群 心原性脳塞栓 突然太い血管が詰まる → 症状の完成が早く、症状が強い 脳ヘルニアの合併あり Afの合併が多い 約90%が再開通する → 出血性梗塞になりやすい 血栓溶解の適応となりやすい 脳梗塞 出血性脳梗塞 心原性塞栓症の特徴 ●TIAの前駆は少ない (10%未満) ●症状が突発完成 ●日中活動時や起床 直後の発症が多い ●発症時、意識障害や 皮質症状を認める ●閉塞血管の再開通が おこりやすい(70〜90%) ●出血性梗塞がある 血栓溶解療法 プラスミノーゲンをプラスミンに変換する線溶系を活性化し てフィブリン血栓を溶解する。 ・経静脈的投与 t-PAを経静脈的に投与 ・経動脈的投与(局所線溶療法) マイクロカテーテルを誘導、血栓溶解薬の投与 内頸動脈狭窄症に対する外科治療 1)血管内手術(PTA) 2)頸動脈内膜剥離術(CEA) 頚動脈ステント留置術 頸動脈内膜剥離術 ( CEA ) 頸動脈内膜剥離術 ( CEA )・術後 頭蓋外内血管吻合術(バイパス) 代表的なものは中大脳動脈領域の虚血に対して STA-MCA(浅側頭動脈ー中大脳動脈)吻合術 内頸動脈閉塞 頭蓋内血管狭窄 内頸動脈閉塞・バイパス術後 正面 側面
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