妊娠中の感染予防のための注意事項 - 11か条

妊娠中の感染予防のための注意事項 - 11か条
1. 石鹸と流水で、
しっかり手を洗ってください。
特に以下の場合は念入りに洗ってください。石鹸と流水が使えない時は消毒用ハンドジェルの使用をお勧めします。
● おむつを替えた後
● トイレを使用した後
● 生肉、生卵、または洗っていない野菜や果実に触れた後
● ペットと触れ合った後
● 小さな子どもと遊んだり世話をした後 ● 手に唾液
(特に乳幼児の唾液)がついたとき
● 病気の人の近くにいた後
● 調理や食事の用意をする前後
● ガーデニングや農作業をするなど、土に触れた後
2. 小さな子どもとフォークやコップなどの食器を共有したり、食べ残しを食べることはやめましょう。
小さな子どもの唾液や尿にはサイトメガロウイルスが含まれている可能性があります。健康な人には無害なウイルスですが、
妊婦と胎
児には影響を及ぼすことがあります。小さな子どもと関わるときはしっかり手を洗いましょう。
3. 肉は、
しっかりと中心部まで加熱してください。
買ってきた調理済みの肉料理も、本当に充分な加熱調理をされているのか定かではありませんから、自分で中心部の赤みがなくなる
までしっかり加熱したもの以外は食べないでください。加熱が不十分な肉や肉の加工品には有害な細菌や寄生虫
(トキソプラズマやリ
ステリア菌)が含まれている可能性があります。もし混入している場合も、十分な加熱調理で殺してしまうことができます。
その他、生ハム、
ローストビーフ、
レアステーキ、肉のパテ、生サラミ、生ベーコン、ユッケ、馬刺し、鳥刺し、鹿刺し、エゾシカのレアステー
キ、鯨刺し、ヤギ刺し、加熱が不十分なジビエ (野生の鳥獣 )料理、等も妊娠中は食べないようにしましょう。サラダや肉や魚のパテ
からリステリア菌に感染した事例もあります。基本的に、妊娠中には十分に火が通ったものを食べるように心掛けましょう。
4. 殺菌されていないミルクや、それらから作られた乳製品は避けましょう。
殺菌済という確証がない限りはフェタチーズ、ブリーチーズなどの
「ソフトチーズ」は食べないでください。海外で供されるチーズでは
こういった種類のものが珍しくありません。殺菌していないこれらの製品には有害な細菌や寄生虫が含まれている可能性があります。
5. 汚れたネコのトイレに触れたり、掃除をするのはやめましょう。
できるだけトイレの掃除は他の人に代わってもらいましょう。どうしても自分でやる必要がある場合は、手袋やゴーグルを着用し、作
業後には必ず手を洗ってください。また、ネコのトイレは毎日掃除して清潔を保つようにしてください。ネコの糞にはトキソプラズマ
など有害な寄生虫が含まれている可能性があります。
6. げっ歯類(ネズミの仲間たち)
やそれらの排泄物(尿、糞)に触れないようにしましょう。
有害なウイルスを運ぶげっ歯類もいます。まれにそれらがペットのモルモットやハムスターなどにも感染していることがあります。
出産まではそれらペットの世話は他の人に頼みましょう。
7. 妊娠中の性行為の際には、
コンドームを使いましょう。
性行為を通じて、サイトメガロウイルスや単純ヘルペスウイルスなどのウイルスやクラミジアなどに感染することがあり、これらは胎
児・新生児に悪影響を及ぼす恐れがあります。
また、特別な病原体でなくても、膣内の細菌感染の刺激が早産の原因となることもあります。
これを防ぐためにもコンドームの使用が望まれます。また、唾液を介して感染する病原体もいますのでオーラルセックスも危険です。
8. 母子感染症の原因となる感染症について検査しましょう。
胎児・新生児に影響を及ぼす感染症であっても、妊婦には自覚症状が乏しい場合も少なくありません。日本では梅毒検査、B型肝炎
抗原検査、C型肝炎抗体検査、HIV抗体検査、HTLV-1抗体検査は妊婦健診の際に、ほとんどの産科施設で実施されています。
しかし、トキソプラズマ抗体検査やサイトメガロウイルス抗体検査などは、任意であり、また検査を奨める施設も多くはありません。
自分が現在、何か感染症にかかっている可能性はないか、どういった病気にたいして免疫を持っているかを把握して、予防に役立て
るためにも、検査は必要です。トキソプラズマやサイトメガロウイルスの抗体検査も自分から医師に検査を頼むようにしましょう。
9. B群溶血性レンサ球菌の保菌者であるか検査してもらいましょう。
妊婦の10∼30%が感染していると言われていますが妊婦自身には自覚症状がありません。しかし、赤ちゃんの髄膜炎や死亡につな
がる感染症です。妊娠後期で簡単な綿棒テストをすることでわかります。保菌していることが判明すれば、分娩中に赤ちゃんを保護す
る方法があります。
10. 感染症から自分と胎児の身を守るために、妊娠前にワクチンを打ちましょう。
ワクチンが存在する感染症
(たとえば、麻疹、風疹や水痘)は、ワクチンを打つことで防げます。
自分が病気にならないため、健康を保つため、将来の自分の胎児を守るため、また周囲にいる妊婦とその胎児に感染させないため
にも、ワクチンを打ちましょう。現在妊娠している方は、出産後、なるべく早く次の妊娠までの間にワクチンを打ちましょう。
11. 感染している人との接触を避けましょう。
自分が未感染であるか、ワクチンを打っていなかった場合、水痘や風疹などに感染している人には近づかないようにしましょう。
もし接触した人がこれらの病気に罹っていることがわかったら、すぐに病院に連絡して下さい。
水痘や麻疹の場合は、すぐに免疫グロブリンの注射をすることで発症を防ぐことができるかも知れません。
先天性トキソプラズマ&サイトメガロウイルス感染症患者会
「トーチの会」 http://www.toxo-cmv.org
妊娠中の感染予防のための注意事項-11か条 監修:長崎大学大学院教授/長崎大学病院小児科長 森内浩幸先生、三井記念病院産婦人科部長 小島俊行先生