命 令 書 申立人 関西単一労働組合 被申立人 株式会社駸々堂 被申立人 日本出版販売株式会社 被申立人 Y1 被申立人 破産者株式会社駸々堂破産管財人 上 記 当 事 者 間 の 平 成 12年 (不 )第 16号 及 び 同 年 (不 )第 50号 併 合 事 件 に つ い て 、当 委 員 会 は 、平 成 15年 6月 11日 の 公 益 委 員 会 議 に お い て 合 議 を 行った結果、次のとおり命令する。 主 文 1 被 申 立 人 株 式 会 社 駸 々 堂 は 、申 立 人 に 対 し 、下 記 の 文 書 を 速 や か に手交しなければならない。 記 年 月 日 関西単一労働組合 執行委員長 X1 殿 株式会社駸々堂 代表取締役 Y2 当 社 が 、 貴 組 合 か ら 平 成 12年 4月 14日 付 け で 申 入 れ の あ っ た 団 体 交渉に応じなかったことは、大阪府地方労働委員会において、労 働 組 合 法 第 7条 第 2号 に 該 当 す る 不 当 労 働 行 為 で あ る と 認 め ら れ ま した。今後、このような行為はいたしません。 2 被申立人株式会社駸々堂に対するその他の申立てを棄却する。 3 被申立人破産者株式会社駸々堂破産管財人Y3に対する申立て を棄却する。 4 被申立人日本出版販売株式会社及びY1に対する申立てを却下 する。 理 由 第1 事案の概要及び請求する救済内容 1 事案の概要 本件は、①株式会社駸々堂が、破産に伴い申立人組合員を解雇 し た こ と 、 ② 株 式 会 社 駸 々 堂 が 、 同 社 破 産 に 至 る ま で 、 週 40時 間 制実施に際し生じた時間外割増賃金問題を未解決のまま放置した こと、③株式会社駸々堂及び同社の大口債権者で同社破産の契機 -1- となる債権回収を行った日本出版販売株式会社が、株式会社駸々 堂の破産後に申し入れられた団体交渉を拒否したこと、が不当労 働行為であるとして、①及び②については、株式会社駸々堂、破 産者株式会社駸々堂破産管財人、日本出版販売株式会社及び同社 から株式会社駸々堂に取締役として出向していた個人を、また③ については、株式会社駸々堂及び日本出版販売株式会社をそれぞ れ被申立人として申し立てられた事件である。 2 請求する救済の内容 申立人が請求する救済の内容の要旨は、次のとおりである。 (1) 株 式 会 社 駸 々 堂 破 産 に 伴 う 平 成 12年 1月 31日 付 け 解 雇 を 撤 回 し、申立人組合員X2及び同X3を原職復帰又は継続雇用させ ること (2) 申 立 人 組 合 員 X 2 及 び 同 X 3 に 対 す る バ ッ ク ・ ペ イ (3) 申 立 人 組 合 員 X 2 及 び 同 X 3 に 対 す る 平 成 9年 4月 1日 か ら 平 成 12年 1月 31日 ま で の 間 の 時 間 外 割 増 賃 金 未 払 分 の 支 払 (4) 株 式 会 社 駸 々 堂 に よ る 団 体 交 渉 応 諾 (5) 日 本 出 版 販 売 株 式 会 社 に よ る 団 体 交 渉 応 諾 第2 当事者の主張要旨 1 申立人は、次のとおり主張する。 (1) 日 本 出 版 販 売 株 式 会 社 及 び Y 1 の 被 申 立 人 適 格 に つ い て 日 本 出 版 販 売 株 式 会 社 (以 下 「 日 販 」 と い う )は 、 平 成 5年 に 株 式 会 社 駸 々 堂 (以 下 「 駸 々 堂 」 と い う )の 唯 一 の 書 籍 取 次 店 と な り 、 同 11年 に 自 ら の 職 員 で あ る Y 1 を 常 務 取 締 役 と し て (以 下 、 同 人 を 「 Y 1 」 と い う )、 同 じ く Y 4 某 を 経 理 全 般 を 担 当 す る 経 営 本 部 付 き 部 長 と し て (以 下 、 同 人 を 「 Y 4 」 と い う )、 駸 々 堂 に派遣した。これらにより、日販は、駸々堂の商品の仕入れや 出納等の経営をほぼ完全に掌握する立場となった。 ま た 、日 販 は 、同 10年 の 駸 々 堂 再 建 計 画 及 び 同 11年 の 同 経 営 改 善計画の策定に深く関与し、これらの計画には、不採算店舗の 撤収、希望退職の募集、従業員の給与・賞与のカット等の内容 が含まれており、この点においても、日販が駸々堂の従業員の 労働条件に影響を及ぼしていたことが認められる。 さ ら に 、 平 成 11年 末 頃 に は 日 販 の 駸 々 堂 に 対 す る 債 権 は 約 38 億円に達し、この頃から日販は債権回収を至上命題とするよう になっており、駸々堂が破産を決定する直接の契機となったの は 、 同 12年 1月 、 日 販 か ら 、 同 月 末 支 払 予 定 の 債 務 全 額 を 返 済 す ることを求められ、返済されない場合は商品を引き揚げると通 告されたことである。そもそも日販は、駸々堂において活発に 活 動 す る 関 西 単 一 労 働 組 合 (以 下 「 組 合 」 と い う )を 嫌 悪 し 、 同 7 年 に は 組 合 か ら の 団 体 交 渉 (以 下「 団 体 交 渉 」を「 団 交 」と い う ) -2- 申入れを拒否し、その後、組合員を含む駸々堂の全従業員を解 雇することを決定し、駸々堂を破産させるに至った。したがっ て、駸々堂破産及び全従業員解雇に至った責任は日販にあるの であり、また、駸々堂の常務取締役でありながら日販のために 苛烈な債権回収を行ったY1もまた、日販とともにその責任を 負担しなければならない。 (2) 破 産 者 駸 々 堂 破 産 管 財 人 の 被 申 立 人 適 格 に つ い て 駸 々 堂 が 破 産 し て い る 現 在 、駸 々 堂 が 行 っ た 不 当 労 働 行 為 の 責 任 は 破 産 者 駸 々 堂 破 産 管 財 人 (以 下 「 管 財 人 」 と い う )に も 引 き 継 が れ る の で あ り 、 ま た 、 管 財 人 は 、 平 成 13年 12月 、 債 権 確 定 訴 訟 に お い て 組 合 員 X 3 (以 下 「 X 3 」 と い う )と 和 解 を 行 っ て おり、このことから、管財人が破産宣告前の労働債権に関し一 定の範囲で裁量権を有していることは明らかである。 (3) 本 件 解 雇 に つ い て 駸 々 堂 は 、 平 成 12年 1月 31日 、 突 然 、 破 産 申 立 て を 行 う と と も に 全 従 業 員 を 解 雇 し た 。 組 合 は 駸 々 堂 と 駸 々 堂 書 店 労 働 組 合 (以 下 「 書 店 労 組 」 と い う )が 締 結 し た 事 前 協 議 約 款 を 引 き 継 い で い るが、同破産申立て及び解雇は、この事前協議約款を無視し、 組合との協議を経ることなく行われたもので、無効である。ま た、同破産申立て及び解雇は、従前からの組合敵視政策の下、 破産という手段をもって一挙に組合を潰すことを企図した不当 労働行為である。 (4) 時 間 外 割 増 賃 金 に つ い て 駸 々 堂 で は 、 正 社 員 は 隔 週 42時 間 労 働 、 定 時 社 員 (賃 金 は 時 間 給 で 支 払 わ れ 、 退 職 金 が な い )は 毎 週 42時 間 労 働 と い う 労 働 基 準 法 が 定 め る 週 40 時 間 制 に 違 反 す る 勤 務 状 態 で あ っ た と こ ろ 、 駸 々 堂 は 、 こ れ ら を 是 正 す る た め 、 平 成 9年 8月 、 正 社 員 に つ い て 、 組 合 を 無 視 し て 就 業 規 則 を 改 悪 (1か 月 単 位 の 変 形 労 働 時 間 制 を 導 入 )し 、 ま た 、 同 11年 4月 、 定 時 社 員 に つ い て 、 組 合 が 同 意しないことが明らかであるにもかかわらず、賃下げを伴う労 働 時 間 短 縮 (以 下「 時 短 」と い う )を 行 っ た 。組 合 は 抗 議 し た が 、 駸々堂はこれを聞き入れず、結局、組合との間ではこの問題は 未解決のまま放置され、組合員に時間外割増賃金が支払われな いまま破産に至った。駸々堂のこれらの行為は、組合敵視に基 づく不利益取扱いであり、不当労働行為である。 (5) 団 交 拒 否 に つ い て 平 成 12年 4月 、 組 合 は 駸 々 堂 に 対 し 、 組 合 員 の 解 雇 撤 回 等 を 議 題 と す る 団 交 を 申 し 入 れ た が 、駸 々 堂 は こ れ を 拒 否 し た 。ま た 、 同月、組合は日販に対し、駸々堂従業員の雇用継続等を議題と する団交を申し入れたが、日販はこれを拒否した。駸々堂及び -3- 駸々堂と同等の使用者たる地位を有する日販が団交に応ずべき であるにもかかわらずこれを拒否することは、不当労働行為で ある。 2 被申立人駸々堂は、次のとおり主張する。 (1) 本 件 解 雇 に つ い て 駸 々 堂 は 、昭 和 56年 以 降 債 務 超 過 の 状 態 に あ っ た が 、最 大 の 債 権 者 で あ る 日 販 か ら 平 成 12 年 1 月 末 日 支 払 予 定 の 債 務 全 額 が 支 払われない場合は商品を引き揚げるとの実質的な支援打切りを 通 告 さ れ 、 同 月 23日 、 駸 々 堂 及 び 関 連 会 社 の 役 員 等 を 招 集 し て 協議した結果、駸々堂の再建は困難であり、従業員の労働債権 の確保等のために日販が商品を引き揚げる前に破産申立てを行 う 必 要 が あ る と の 結 論 に 達 し 、 同 月 31日 、 破 産 申 立 て を 行 う と ともに全従業員を解雇したものである。 一 般 に 、破 産 申 立 て ひ い て は 企 業 の 廃 止 は 、職 業 選 択 の 自 由 と 表裏一体をなすものであるから企業主が自由になすことができ るのであって、労働組合との事前協議約款の有無にかかわらず 労働組合の同意を必要とするものではなく、労働組合のために 企業を存続させなければならない法的義務はない。さらに、破 産申立て及びこれに伴う解雇については、労働組合の壊滅を唯 一の目的になされたことが明らかである場合を除き、不当労働 行為に該当する余地はない。したがって、駸々堂には事実破産 原因が存在し、申立人組合員であるか否かを問わず全従業員が 解雇されたのであるから、本件申立ては棄却されるべきである。 (2) 時 間 外 割 増 賃 金 に つ い て 週 40時 間 制 に 違 反 す る 勤 務 状 態 を 是 正 す る た め の 方 策 に つ い ては、申立人組合以外の二つの労働組合とは合意に達し、是正 以前の各人の時間外割増賃金についても清算の上支払済みであ る。しかしながら、申立人組合とは合意に達せず、組合員は従 来の勤務時間のまま勤務を続けたため、時間外割増賃金の清算 ができないまま破産に至ったものである。したがって、本件申 立ては棄却されるべきである。 3 被申立人管財人は、次のとおり主張する。 平 成 12年 2月 10日 、 駸 々 堂 に 対 し 破 産 宣 告 が な さ れ 、 同 日 、 被 申 立人管財人は、駸々堂の破産管財人となり、破産管財業務に着手 した。破産手続においては全従業員の解雇が予定されており、こ れが無効とされる理由は存在しない。 また、時間外割増賃金については破産宣告前の原因により生じ た債権であり、破産債権として届出を行うべきであるところ、X 3は本破産手続では破産債権届出を行っていない。また、組合員 X 2 (以 下 「 X 2 」 と い う )は 時 間 外 割 増 賃 金 を 破 産 債 権 と し て 届 -4- 出を行い、管財人が破産債権として認めた範囲については配当金 を支払済みであり、管財人が異議を出した範囲については本件審 問終結時破産債権確定訴訟が係争中である。こうした破産手続を 離れて、管財人が時間外割増賃金を支払うことはできない。した がって、組合が求める解雇の撤回、これに伴うバック・ペイ及び 時間外割増賃金の支払については実現することが不可能であるか ら、本件申立ては却下または棄却されるべきである。 4 被申立人日販及びY1は、次のとおり主張する。 日販は、駸々堂の労働者の基本的な労働条件について雇用主と 同視できる程度に現実的かつ具体的に支配決定できる地位にはな い 。 ま た 、 日 販 は 駸 々 堂 に 対 し 平 成 11年 12月 分 の 商 品 代 金 の 支 払 を求めたにすぎず、当初から駸々堂が所定の支払をしない場合は 取 引 停 止 (つ ま り 商 品 引 揚 げ )さ れ て も 異 議 は な い 旨 の 取 引 約 定 書 を取り交わしていたのであるから、日販が駸々堂を破産に追いや ったなどという事実はない。 日 販 は 、 平 成 11年 に Y 1 を 常 務 取 締 役 と し て 駸 々 堂 に 派 遣 し た が、同人の業務内容は個々の店舗の経営に関しアドバイスを行う ことにとどまり、申立人組合が主張するように同人が日販のため に 苛 烈 な 債 権 回 収 を 行 っ た と い う 事 実 は な い 。ま た 、Y 1 は 、駸 々 堂の役員から「団交には出なくてよい」と言われ、申立人組合と の 団 交 の 場 に 一 度 も 出 席 し た こ と が な く 、平 成 12年 1月 23日 に 行 わ れた駸々堂の破産を決定した取締役会議の場にも出席を求められ なかったのであり、駸々堂の経営を掌握する立場にも団交に応じ る立場にも置かれたことはなかった。 したがって、日販及びY1は、本件申立てについて被申立人と しての適格を欠くものであり、また、日販が申立人組合から申し 入れられた駸々堂の破産及び従業員の雇用問題等を議題とする団 交に応じなければならない理由はない。 第3 認定した事実 1 当事者等 (1) 被 申 立 人 駸 々 堂 は 、 肩 書 地 に 本 社 を 、 大 阪 府 、 京 都 府 、 奈 良 県 等 に 店 舗 を 置 き 、 書 籍 販 売 等 を 業 と し て い た が 、 平 成 12年 1月 31日 に 大 阪 地 方 裁 判 所 (以 下 「 大 阪 地 裁 」 と い う )に 破 産 申 立 て を 行 い 、 同 年 2月 10日 に 大 阪 地 裁 に よ り 破 産 宣 告 を 受 け た 。 破 産 申 立 時 の 従 業 員 数 は 約 500名 で あ る 。 被 申 立 人 日 販 は 、肩 書 地 に 本 社 を 、全 国 に 支 社 及 び 支 店 を 置 き 、 書籍の取次販売等を業としており、その従業員数は本件審問終 結 時 約 2,100名 で あ る 。 被申立人Y1は、被申立人日販から出向した、破産申立時の 駸々堂の常務取締役である。 -5- 被 申 立 人 管 財 人 は 、 駸 々 堂 の 破 産 宣 告 に 伴 い 、 同 年 2月 10日 に 大阪地裁により選任された破産管財人である。 (2) 申 立 人 組 合 は 、雇 用 形 態 の 如 何 を 問 わ ず 関 西 地 方 で 働 く 労 働 者で組織されている労働組合で、その組合員数は本件審問終結 時 約 100名 で あ る 。 駸 々 堂 に は 、 組 合 の 下 部 組 織 と し て 駸 々 堂 書 店 連 帯 分 会 が あ り 、 そ の 分 会 員 数 は 破 産 申 立 時 3名 で あ る 。 なお、駸々堂には、破産申立時、申立人組合の分会のほかに、 北大阪ユニオン駸々堂分会及び関西合同労働組合駸々堂分会が 存在する。 2 駸々堂が破産に至るまでの経緯について (1) 平 成 4年 、 主 要 取 引 銀 行 か ら 融 資 継 続 の 条 件 と し て 、 現 経 営 陣の退陣、資産の売却、不採算店舗の撤収及び人員削減を求め られたことから、経営合理化の一環として、大阪市に本店を置 く 株 式 会 社 駸 々 堂 書 店 (以 下 、 同 社 も 併 せ て 「 駸 々 堂 」 と い う ) が京都市に本店を置く株式会社京都駸々堂を吸収合併すること が 決 定 さ れ 、 同 年 12月 1日 、 新 会 社 と し て 駸 々 堂 が 発 足 し た 。 同 年 9月 19日 、駸 々 堂 と 書 店 労 組 (当 時 、X 2 が 加 入 。同 人 は 執 行 委 員 長 )は 、 会 社 合 併 に 関 し 、 「 経 営 上 の 改 変 は 、 事 前 に 組 合 と十分に協議する」旨の確認書を締結した。 駸 々 堂 に は 、 正 社 員 の ほ か に 約 160名 の 定 時 社 員 が い た が 、 同 年 10月 、 駸 々 堂 は 、 書 店 労 組 ら に 対 し 、 新 会 社 発 足 後 の 定 時 社 員の処遇につき、新たな雇用契約に変更するとともに、同変更 に伴い勤続年数に応じた慰労金を支払うことを提案した。 (2) 平 成 4年 11月 25日 、定 時 社 員 で あ っ た X 3 は 、後 記 (7)記 載 の 組 織 統 一 前 の 関 西 単 一 労 働 組 合 (以 下 「 旧 関 単 労 」 と い う )に 加 入 し た 。 同 年 11月 28日 、 駸 々 堂 と 書 店 労 組 及 び 旧 関 単 労 が 合 同 団交を行った。書店労組らは、定時社員が新たな雇用契約に変 更した場合労働条件が大幅に低下するなどとして駸々堂の提案 に反対し、新会社発足後も従前の労働条件を引き継ぐことなど を 要 求 し た 。 同 年 11月 30日 、 駸 々 堂 と 旧 関 単 労 は 事 務 折 衝 を 行 い、X3について、新会社発足後も当面従前の労働条件で雇用 する旨口頭で確認した。 な お 、新 会 社 発 足 ま で に 、約 40名 の 定 時 社 員 が 新 た な 雇 用 契 約 を締結することなく退職した。 (3) 平 成 4年 12月 5日 、書 店 労 組 執 行 部 は 、臨 時 大 会 に お い て 、駸 々 堂の合理化攻撃と闘うため同労組を解散し新たな労働組合を結 成する旨提案したが、同提案は否決された。X2ら執行部及び 同 提 案 に 賛 同 し た 約 10名 は 、 臨 時 大 会 を 退 席 し 駸 々 堂 書 店 連 帯 労 働 組 合 (以 下 「 連 帯 労 組 」 と い う )を 結 成 し た 。 同 労 組 の 執 行 委員長にはX2が就任した。 -6- ま た 、 同 月 10日 、 旧 関 単 労 に 定 時 社 員 2名 が 新 た に 加 入 し 、 X 3とともに旧関単労駸々堂分会を結成した。 (4) 平 成 5年 2月 1日 、 連 帯 労 組 及 び 旧 関 単 労 は 、 書 店 労 組 の 労 働 協約が連帯労組にも適用されるべきところ、駸々堂はこれを拒 否し、時間内組合活動を欠勤扱いとし賃金カットを行ったなど と し て 、 当 委 員 会 に 不 当 労 働 行 為 救 済 申 立 て を 行 っ た (平 成 5年 (不 )第 4号 及 び 同 年 (不 )第 5号 )。 同 8年 6月 27日 、当 委 員 会 は 同 事 件 に つ い て 、連 帯 労 組 は 書 店 労 組を脱退したX2らにより新たな労働組合として結成されたも のであるから、従前の労働協約を当然に引き継ぐものではなく、 時間内組合活動を有給とする労働協約が締結されていない状況 において賃金カットを行った会社の行為は不当労働行為ではな いなどとして、申立てを棄却した。 (5) 平 成 5年 11月 10日 、 連 帯 労 組 は 、 駸 々 堂 取 締 役 が 組 合 員 に 対 し支配介入発言を行ったとして、当委員会に不当労働行為救済 申 立 て を 行 っ た (平 成 5年 (不 )第 64号 )。 同 7年 12月 4日 、当 委 員 会 は 、同 事 件 に つ い て 、駸 々 堂 取 締 役 の 発言は組合員の組合活動を抑制するもので不当労働行為である として、誓約文の手交を命じた。 (6) 平 成 6年 8月 2日 、 連 帯 労 組 は 、 駸 々 堂 取 締 役 が 組 合 員 に 対 し 支配介入発言を行ったとして、当委員会に不当労働行為救済申 立 て を 行 っ た (平 成 6年 (不 )第 46号 )。 同 8年 12月 26日 、 当 委 員 会 は 、 同 事 件 に つ い て 、 駸 々 堂 取 締 役 の発言は組合員の組合活動を抑制するもので不当労働行為であ るとして、誓約文の手交を命じた。 な お 、同 事 件 並 び に 前 記 (4)及 び (5)記 載 の 各 事 件 は 、本 件 審 問 終結時現在、中央労働委員会に係属中である。 (7) 平 成 7年 3月 12日 、連 帯 労 組 と 旧 関 単 労 は 、統 一 後 の 名 称 を 関 西単一労働組合として組織統一し、申立人組合となり、X2が 分会長に就任した。 な お 、 同 8年 4月 1日 、 書 店 労 組 は 解 散 し た 。 (8) 平 成 9年 3月 10日 、組 合 は 、春 闘 に お い て 、労 働 基 準 法 の 規 定 に よ り 同 年 4月 1日 か ら 実 施 が 義 務 付 け ら れ て い る 週 40時 間 制 の 実 施 を 要 求 し た 。 同 年 5月 9日 、 団 交 が 行 わ れ 、 駸 々 堂 は 、 「 4月 1日 か ら は 指 導 期 間 で あ り 、 (週 40時 間 制 を )直 ち に 実 施 し な け れ ば な ら な い わ け で は な い 」 、 「 (週 40時 間 制 に す る に は )い ろ い ろ な や り 方 が あ る 。い ま 検 討 中 で あ る 」と 述 べ た 。組 合 は 、「 早 く検討してほしい」、「定時社員の場合、時給をそのままにし て時短を行うと賃下げになるので、そうならないようにしてほ しい」と述べた。 -7- な お 、こ の 時 点 で の 駸 々 堂 に お け る 労 働 時 間 は 、正 社 員 に つ い て は 、 隔 週 週 休 二 日 制 が 実 施 さ れ て お り 、 42時 間 労 働 (7時 間 ×6 日 )の 週 と 35時 間 労 働 (7時 間 ×5日 )の 週 が あ り 、 定 時 社 員 に つ い て は 、 隔 週 週 休 二 日 制 が 実 施 さ れ て お ら ず 、 毎 週 42時 間 労 働 (7 時 間 ×6日 )で あ っ た 。 (9) 平 成 9年 6月 16日 、組 合 は 駸 々 堂 に 対 し 、組 合 の 週 40時 間 制 実 施要求に誠実に回答することを申し入れるとともに、労働基準 法 の 規 定 に 基 づ き 同 年 4 月 1 日 か ら 同 年 6 月 16 日 ま で の 間 の 組 合 員 の 週 40時 間 を 超 え る 労 働 時 間 に つ い て 時 間 外 割 増 賃 金 を 支 払 うよう要求した。 (10) 平 成 9年 8月 1日 、駸 々 堂 は 、正 社 員 の 就 業 規 則 を 変 更 し 、正 社 員 に つ い て 、 1週 間 の 労 働 時 間 が 平 均 40時 間 以 内 と な る よ う に 、 1か 月 単 位 の 変 形 労 働 時 間 制 を 導 入 し た 。 な お 、 組 合 は 、 同 年 11 月 10日 、 X 2 が 偶 然 こ の 旨 を 記 載 し た 文 書 を 発 見 し た こ と に よ って、この事実を知った。 (11) 平 成 9年 8月 28日 、 組 合 は 駸 々 堂 に 対 し 、 駸 々 堂 は 、 組 合 の 時間外割増賃金支払要求にまともに回答せず、団交においても 「検討中である」と回答するのみで不誠実な態度に終始してい る と し て 抗 議 す る と と も に 、 同 年 6月 17日 か ら 同 年 8月 18日 ま で の 間 の 組 合 員 の 週 40時 間 を 超 え る 労 働 時 間 に つ い て 時 間 外 割 増 賃金を支払うよう要求した。 (12) 平 成 9年 12月 8日 、 組 合 は 駸 々 堂 に 対 し 、 駸 々 堂 が 組 合 を 無 視して就業規則を変更したとして抗議し、このような変形労働 時 間 制 の 導 入 は 無 効 で あ る 旨 申 し 入 れ る と と も に 、 同 年 8月 19日 か ら 同 年 11月 17日 ま で の 間 の 組 合 員 の 週 40時 間 を 超 え る 労 働 時 間について時間外割増賃金を支払うよう要求した。 (13) 平 成 11年 3月 23日 、駸 々 堂 は 組 合 に 対 し 、週 40時 間 制 の 実 施 に つ い て 、 正 社 員 に つ い て は 、 同 年 4月 1日 か ら 一 日 20分 の 時 短 を 行 う こ と 、 同 9年 4月 1日 か ら 同 年 7月 31日 ま で の 時 間 外 割 増 賃 金 は 同 11年 3月 未 に 支 払 う こ と 、 を 電 話 で 回 答 し 、 ま た 、 「 8月 1 日以降については変形労働時間制を導入しているので、法的に クリアしていると考えている」と述べた。 同 11年 3月 29日 、 組 合 と 駸 々 堂 と の 間 で 団 交 が 行 わ れ 、 駸 々 堂 は 、 定 時 社 員 に つ い て は 、 同 年 4月 1日 か ら 一 日 30分 の 時 短 を 行 う こ と (毎 週 39時 間 労 働 )、 同 9年 4月 1日 か ら 同 11年 3月 31日 ま で の 時 間 外 割 増 賃 金 は 同 11年 3月 末 に 支 払 う こ と 、 を 回 答 し た 。 組 合は時短による賃下げ相当分の時間給引上げを要求したが、 駸々堂はこれを拒否した。 (14) 駸 々 堂 と 北 大 阪 ユ ニ オ ン 及 び 関 西 合 同 労 働 組 合 は 駸 々 堂 の 提 案 ど お り 合 意 し 、 平 成 11年 3月 31日 、 両 組 合 の 組 合 員 に 対 し 提 -8- 案どおり時間外割増賃金が支払われた。駸々堂は申立人組合員 に対しても同様に時間外割増賃金を支払おうとしたが、申立人 組合員は受取を拒否した。 翌 4月 1日 、組 合 は 駸 々 堂 に 対 し 、「 駸 々 堂 の 回 答 に 納 得 で き な い の で 、 組 合 員 は こ の 問 題 が 決 着 す る ま で 4月 1日 以 降 も 従 来 ど おりの勤務時間で就労する」と電話で通告した。 同 月 5日 、 組 合 は 、 駸 々 堂 に 対 し 、 組 合 を 無 視 し て 秘 密 裏 に 行 った変形労働時間制の導入は無効である、定時社員については 時短分が減収となり賃下げとなるので臨時労働者差別であるな ど と し て 抗 議 す る と と も に 、 正 社 員 に つ い て 同 9年 8月 1日 以 降 も 時間外割増賃金を支払うこと及び定時社員について時短による 賃下げ相当分の時給を引き上げることを要求し、ストライキを 行った。 なお、同日以降、この問題に関する団交は開催されていない。 (15) 平 成 11年 12月 1日 か ら 同 12年 1月 31日 に か け て 、 駸 々 堂 は 希 望 退 職 者 を 募 集 し 、 約 20名 の 社 員 が こ れ に 応 じ 退 職 し た 。 3 駸々堂と日販との関係について (1) 駸 々 堂 は 日 販 を 含 め 数 社 を 書 籍 取 次 店 と し て い た が 、経 営 合 理 化 の 一 環 と し て 、 平 成 5年 以 降 、 取 次 店 を 日 販 に 一 本 化 し た 。 (2) 平 成 6年 12月 、駸 々 堂 は 、同 7年 に 神 戸 市 の 三 宮 に 大 型 店 舗 を 出店する旨発表したが、組合は、三宮出店に伴い人事異動や労 働条件切下げが予想されるなどとしてこれに反対した。 同 7年 7月 12日 、 組 合 は 日 販 関 西 支 社 大 阪 支 店 (以 下 「 日 販 大 阪 支 店 」 と い う )を 訪 れ 、 駸 々 堂 の 三 宮 出 店 は 日 販 の 全 面 的 な バ ッ ク・アップによるものであり、地元の商業組合と駸々堂の話合 いにも日販が調整役をしており、日販は駸々堂と一体となって 三宮出店を強行しようとしているなどとして、三宮出店計画の 凍 結 等 を 求 め て 団 交 を 申 し 入 れ た 。 同 月 17日 、 日 販 は 組 合 に 対 し、電話で、「駸々堂の三宮出店は日販とは無関係である」旨 述 べ 、 団 交 を 拒 否 し た 。 同 月 21日 、 組 合 は 再 度 日 販 大 阪 支 店 を 訪 れ 、 同 月 17日 の 対 応 に つ い て 抗 議 す る と と も に 改 め て 団 交 を 申 し 入 れ た が 、対 応 し た 社 員 が「 あ な た 方 と は 雇 用 関 係 が な い 」 などと述べたため、日販大阪支店周辺で抗議行動を行った。 (3) 駸 々 堂 三 宮 店 開 店 日 で あ る 平 成 7年 9月 10日 、X 2 ら 組 合 員 が 同 三 宮 店 周 辺 に お い て 抗 議 行 動 を 行 っ た 。 同 年 10月 4日 、 駸 々 堂 は X 2 に 対 し 、 同 年 7月 21日 及 び 同 年 9月 10日 の 抗 議 行 動 を 理 由 に 、 3日 間 の 出 勤 停 止 処 分 を 行 っ た 。 同 7年 10月 6日 、組 合 は 日 販 大 阪 支 店 を 訪 れ 、駸 々 堂 は X 2 の 処 分 理 由 に つ い て 、 「 日 販 か ら (X 2 ら の 抗 議 行 動 に よ り )業 務 を 妨げられ迷惑を被ったと聞いている」と述べており日販が同処 -9- 分に加担していることは明らかであるとして、日販が駸々堂に 報告した内容を明らかにすることなどを求めて団交を申し入れ た 。 同 月 8日 、 日 販 は 組 合 に 対 し 、 電 話 で 団 交 を 拒 否 し た 。 (4) 平 成 10年 春 頃 、駸 々 堂 は 、再 建 計 画 を 策 定 し た が 、同 計 画 に は、不採算店舗の撤収及びパート化の推進等の人件費の削減、 金融機関支援取付け、資産売却等とともに、日販支援取付けが 挙げられており、日販支援取付けの具体的項目として、駸々堂 の全資産へ日販の抵当権を設定すること、日販から駸々堂へ経 営管理者を派遺することなどが挙げられていた。 (5) 平 成 10年 1月 、 日 販 は 、 当 時 、 取 引 部 部 長 で あ っ た Y 1 を 経 営 本 部 付 き 部 長 と し て 駸 々 堂 に 派 遣 し 、 同 11年 4月 、 同 人 は 駸 々 堂の常務取締役に就任した。また、同月、日販はY4を経営本 部付き部長として駸々堂に派遣した。 駸 々 堂 に お い て 、Y 1 は 、ほ ぼ 毎 日 部 長 以 上 の 幹 部 を 招 集 し て 開催されていた会議に出席したことはなく、また、組合との団 交 に も 出 席 し た こ と は な か っ た 。 た だ し 、 数 か 月 に 1回 程 度 行 わ れていた経営会議には出席していた。 同 11年 10月 、 日 販 は 、 駸 々 堂 が 所 有 す る 不 動 産 数 点 に 対 し 、 7 億円の共同根抵当権を設定した。 (6) 平 成 11年 秋 頃 、駸 々 堂 は 、経 営 改 善 計 画 を 策 定 し 、こ れ に 基 づ き 、 同 11年 か ら 同 12年 初 め に か け て 、 資 産 の 売 却 、 不 採 算 店 舗の撤収及び希望退職者の募集等を行った。 (7) 平 成 11年 末 頃 に は 、駸 々 堂 の 日 販 に 対 す る 累 積 債 務 は 約 38億 円 に 達 し た が 、 同 8年 頃 以 降 、 駸 々 堂 は 数 度 に わ た り 支 払 期 限 が 到来した債務の支払猶予を申し入れ、日販はこれに応じていた。 同 12年 1月 15日 、日 販 は 駸 々 堂 に 対 し 、同 年 1月 末 日 支 払 期 限 の 債 務 約 6億 7,000万 円 を 全 額 支 払 う よ う 要 求 し 、 こ の 支 払 が な い 場 合 は 全 商 品 を 引 き 揚 げ る 旨 通 告 し た 。 同 月 21日 、 駸 々 堂 は 、 今後経営改善計画による合理化の効果が期待できるとして支払 猶予を申し入れたが、日販は、これを拒否し、支払がない場合 は全商品を引き揚げることを承諾する旨の同意書に捺印するよ う要求したため、駸々堂はこれに応じた。 (8) 平 成 12年 1月 当 時 、駸 々 堂 の 役 員 は 、代 表 取 締 役 Y 2 (以 下「 Y 2 社 長 」 と い う )の ほ か 、 代 表 取 締 役 1名 、 取 締 役 4名 及 び 監 査 役 1名 で あ っ た が 、 こ の う ち 5名 が Y 2 社 長 と 縁 故 関 係 を 有 し て お り、日販関係者はY1のみである。また、同月時点で、駸々堂 の 株 主 は 10名 で あ り 、 こ の う ち 9名 が Y 2 社 長 と 縁 故 関 係 を 有 し ており、日販関係者はいない。 4 駸々堂の破産について (1) 平 成 12年 1月 23日 (日 曜 日 )、 駸 々 堂 の 取 締 役 及 び 関 連 会 社 役 - 10 - 員等が招集され会議が開催された。同会議において協議が行わ れた結果、破産申立てを行うことが決定された。なお、この会 議は、Y1及びY4に知らされることなく開催され、同人らの 出席はなかった。 (2) 平 成 12年 1月 31日 、 駸 々 堂 は 大 阪 地 裁 に 、 破 産 宣 告 の 申 立 て を行った。破産宣告申立書には、「取締役であるY1は、駸々 堂の大口債権者である日販から駸々堂の経営実態を把握する目 的をもって派遣されてきた者であり、日販は、現在では駸々堂 からの債権回収を至上命題としており、商品引揚げの姿勢も濃 厚に示しているため、Y1を含めた全役員出席の取締役会を開 催することができなかった」と記載されており、また、主な破 産原因として、以下のとおり記載されていた。 ① 駸々堂の店舗は市街地の小型店舗が多く大規模店舗化の 波に乗り遅れたこと ② 駸 々 堂 で は 労 働 組 合 が 強 く 、パ ー ト・ア ル バ イ ト へ の 切 替 えが遅れ、人件費面での合理化が遅れたこと ③ 関 連 会 社 で あ る 駸 々 堂 出 版 株 式 会 社 が 経 営 不 振 に な り 、こ の支援のため相当の資金を拠出したこと ④ 経 営 危 機 を 打 開 す る た め 、 平 成 4年 に 株 式 会 社 京 都 駸 々 堂 を 吸 収 合 併 し た が 、合 併 に よ る コ ス ト 削 減 が 進 ま な か っ た こ と ⑤ 平成年度に入ってから次々と新規出店を行ったことが資 金 面 で の 負 担 を 大 き く し た こ と (特 に 平 成 7年 の 三 宮 出 店 ) ま た 、破 産 申 立 て に 際 し 、Y 2 社 長 が 大 阪 地 裁 に 提 出 し た 陳 述 書には、「書籍の仕入先を日販に集中させたことにより、日販 が最大の債権者となり、駸々堂の経営に対する発言権も大きく な っ た 」、「 日 販 か ら 駸 々 堂 に 取 締 役 が 派 遣 さ れ 、こ れ 以 降 駸 々 堂 の 経 営 は 日 販 の 監 視 下 に 置 か れ た 」 、 「 日 販 の 姿 勢 は 同 11年 後 半 か ら 特 に 厳 し く な り 、債 権 保 全 を 第 一 と す る よ う に な っ た 」、 「 同 12年 1月 、 日 販 か ら 同 年 1月 末 日 支 払 期 限 の 債 務 を 全 額 支 払 うこと、これがない場合、直ちに商品引揚げにかかることを申 し 渡 さ れ 、こ れ に 対 し 、弁 済 猶 予 を 求 め た が 拒 絶 さ れ 、そ の 上 、 商 品 引 揚 げ の 同 意 書 へ も 捺 印 を 求 め ら れ 、こ れ に 応 じ た 」、 「駸々 堂及び関連会社の取締役等を集め協議したが、もはや再建でき る見込みはなく、早期に破産の申立てをし資産の保全を図るべ きであるとの結論に達した」旨記載されていた。 な お 、 駸 々 堂 の 同 12年 1月 末 現 在 に お け る 資 産 ・ 負 債 の 合 計 残 高 は 、 資 産 約 76億 3,130万 円 、 負 債 約 109億 2,470万 円 、 債 務 超 過 約 32億 9,340万 円 で あ っ た 。 同 12年 1月 31日 、駸 々 堂 は 、各 店 舗 に お い て 、全 従 業 員 に 対 し 、 - 11 - 同日付けで解雇する旨の解雇通知を手交した。同日、X2は、 勤務していた北千里店において、店長から、「駸々堂は破産し た 」 、 「 1月 分 の 日 割 り 賃 金 と 給 与 1か 月 分 の 解 雇 予 告 手 当 が 支 払われる」、「正社員に対しては、規定どおりの退職金も支払 われる」、「詳しいことは駸々堂の代理人弁護士に聞いてほし い」との説明を受けた。また、X3は、勤務していた梅田店が 同 年 1月 末 で 閉 店 と な る た め 同 年 2月 1日 付 け で 尼 崎 店 へ 異 動 と な る 予 定 で あ っ た が 、同 年 1月 31日 、梅 田 店 に お い て 、店 長 か ら 、 「駸々堂は破産した」との説明を受けた。 (3) 平 成 12年 2月 1日 、組 合 員 ら は 、解 雇 通 知 の 撤 回 、組 合 員 に 対 し 労 働 債 権 (賃 金 、 退 職 金 及 び 時 間 外 割 増 賃 金 未 払 分 )の 支 払 を 要求するとともに団交を申し入れる旨の文書を持参し、駸々堂 本社を訪れたが、同本社は施錠され無人であった。同日、組合 員らは、駸々堂の代理人弁護士と面談し、破産に至った経緯に ついて説明を受けた。 翌 2日 、 組 合 員 ら は Y 2 社 長 宅 を 訪 れ た が 、 同 社 長 宅 は 無 人 で あった。 (4) 平 成 12年 2月 10日 、 大 阪 地 裁 は 駸 々 堂 の 破 産 を 宣 告 し た 。 破 産決定書には、破産決定の理由として、「駸々堂が債権者ら約 820名 に 対 し て 合 計 103億 6,000万 円 の 債 務 を 有 し 、 こ れ が 支 払 不 能の状態にある」旨記載されていた。 同 日 、 駸 々 堂 は 全 従 業 員 に 対 し 、 同 年 1月 31日 ま で の 日 割 り 賃 金 及 び 解 雇 予 告 手 当 (30日 分 )を 現 金 書 留 に よ り 支 払 っ た 。 こ れ に 対 し 、 同 年 2月 14日 、 組 合 は 、 解 雇 の 効 力 を 争 う の で 解 雇 予 告 手 当 は 同 年 2月 分 賃 金 と し て 受 け 取 る 旨 通 知 し た 。 (5) 平 成 12年 2月 16日 、 組 合 員 ら は 管 財 人 と 面 談 し 、 管 財 業 務 の 現 状 等 に つ い て 説 明 を 受 け た 。 同 年 3月 6日 、 同 月 10日 、 同 月 16 日 及 び 同 年 4月 24日 、 組 合 は 管 財 人 に 対 し 、 破 産 手 続 の 進 行 状 況 並びに組合員の退職金及び時間外割増賃金未払分等を議題とす る団交を申し入れたが、管財人は、労働債権の存否及び額は債 権者集会で認否すべきものであり団交には馴染まないなどとし て、これらに応じなかった。 (6) 平 成 12年 2月 17日 、 組 合 員 ら は 駸 々 堂 の 取 締 役 で あ っ た Y 5 と 面 談 し 、 「 1月 15日 に 日 販 か ら 書 籍 の 仕 入 代 金 約 6億 7,000万 円 全額の支払を求められ、それができない場合は商品を引き揚げ ると言われた」などと、破産に至った経緯について説明を受け た。 (7) 平 成 12年 3月 3日 、組 合 は 、駸 々 堂 、管 財 人 及 び Y 1 を 被 申 立 人 と し て 、破 産 に 伴 う 解 雇 の 撤 回 、X 2 、X 3 及 び 組 合 員 X 4 (以 下 「 X 4 」 と い う )を 原 職 復 帰 さ せ る こ と 並 び に 同 人 ら に 時 間 外 - 12 - 割増賃金未払分を支払うことなどを求め、当委員会に不当労働 行 為 救 済 申 立 て を 行 っ た (平 成 12年 (不 )第 16号 )。 同 年 9月 13日 、 同 事 件 に つ い て 、 組 合 の 申 立 て に よ り 日 販 が 被 申 立 人 と し て 追 加 さ れ た 。 同 14年 9月 20日 、 組 合 は 、 X 4 に 関 す る部分について申立てを取り下げた。 (8) 平 成 12年 4月 13日 、 組 合 は 日 販 に 対 し 、 駸 々 堂 が 破 産 を 決 意 した契機は日販の債権回収行為にあり、日販の責任は回避でき ないなどとして、駸々堂の破産及び従業員の雇用継続問題等を 議 題 と す る 団 交 を 申 し 入 れ た 。 同 月 14日 、 日 販 は 組 合 に 対 し 、 日販は団交申入書を受け取る立場にない旨回答し、これを返送 した。 (9) 平 成 12年 4月 14日 、 組 合 は 駸 々 堂 代 理 人 弁 護 士 を 通 じ て 駸 々 堂に対し、定時社員であるX3の退職金問題及び時間外割増賃 金問題については未解決のまま現在に至っており、これらを解 決することなく突然破産申立てを行うことは許されないなどと して、①解雇撤回、②X3の退職金並びに③X2、X3及びX 4の時間外割増賃金未払分を議題とする団交を申し入れたが、 駸々堂から回答はなかった。 (10) 平 成 12年 8月 9日 、 組 合 は 、 駸 々 堂 及 び 日 販 を 被 申 立 人 と し て、団交に応じることを求め、当委員会に不当労働行為救済申 立 て を 行 っ た (平 成 12年 (不 )第 50号 )。 5 本件申立後の経過について (1) 平 成 13年 12月 14日 、X 2 及 び X 3 が 退 職 金 等 の 破 産 債 権 を 届 け出たところ管財人がその一部又は全部について異議を述べた ため、X2及びX3が破産債権の確定を求めて提訴した破産債 権 確 定 請 求 事 件 (同 13年 (ワ )第 3297号 )に つ い て 、 X 3 と 管 財 人 の間で和解が成立した。同和解の内容は、①管財人は、X3が 届 け 出 た 破 産 債 権 (退 職 金 )の 全 額 に つ い て な し た 異 議 を (前 記 2(1)記 載 の 定 時 社 員 に 対 す る 慰 労 金 相 当 額 で あ る )280万 円 の 限 度 で 撤 回 す る こ と 、 ② X 3 と 管 財 人 は 、 破 産 債 権 280万 円 の ほ か はX3の破産債権が存在しないことを相互に確認すること、③ X3は、その余の請求を放棄することなどであった。 (2) 平 成 14年 4月 26日 、前 記 (1)記 載 の 破 産 債 権 確 定 請 求 事 件 に つ いて、大阪地裁はX2の請求を棄却した。その理由は、①X2 は駸々堂と書店労組が締結した労働協約に基づいて退職金額を 算 出 し て い る が 、 X 2 は 平 成 4年 に 書 店 労 組 を 脱 退 し て お り 、 脱 退以降は、同労働協約は書店労組組合員でなくなったX2に効 力が及ぶものではないから、管財人が就業規則に基づいて算出 した退職金額等を除く部分について異議を述べたことは不当で はないこと、②変形労働時間制の導入及びそれに伴う就業規則 - 13 - の変更は合理性を有し有効であり、X2にも適用されるから、 管 財 人 が 変 形 労 働 時 間 制 が 導 入 さ れ た 同 9年 8月 1日 以 降 の 時 間 外割増賃金を求めた部分について異議を述べたことは不当では ないことなどであった。 X 2 は 大 阪 高 等 裁 判 所 に 控 訴 し た が 、同 14年 10月 25日 、同 裁 判 所はX2の控訴を棄却し、その後、X2は最高裁判所に上告し た。 第4 判断 1 不当労働行為の成否 (1) 日 販 の 使 用 者 性 に つ い て 組 合 は 、日 販 は 駸 々 堂 の 経 営 を ほ ぼ 完 全 に 掌 握 し 、駸 々 堂 の 従 業 員 の 労 働 条 件 に 影 響 を 及 ぼ し て い た の で あ り 、ま た 、駸 々 堂 が 破 産 に 至 っ た 責 任 は 日 販 に あ る の で あ る か ら 、日 販 は 本 件 の被申立人適格を有する旨主張するので、以下検討する。 前 記 第 3.3(1)、 (4)、 (5)及 び (7)認 定 の と お り 、 ① 日 販 は 平 成 5年 に 駸 々 堂 の 唯 一 の 書 籍 取 次 店 と な り 、 こ れ 以 降 駸 々 堂 の 商 品 の 仕 入 れ は す べ て 日 販 か ら と な っ た こ と 、② 日 販 は 、Y 1 を 同 10年 に 経 営 本 部 付 き 部 長 と し て 駸 々 堂 に 派 遣 し 、 そ の 後 、 同人は駸々堂の常務取締役に就任したこと、さらに、日販は、 Y 4 を 同 11年 に 経 営 本 部 付 き 部 長 と し て 駸 々 堂 に 派 遣 し た こ と 、③ 同 11年 末 、日 販 の 駸 々 堂 に 対 す る 債 権 は 約 38億 円 と な り 、 日販はこれらの債権の支払を一時猶予するなどしていたこと、 ④ 同 10年 に 駸 々 堂 が 策 定 し た 再 建 計 画 に は 、人 件 費 の 削 減 な ど 駸々堂の従業員の労働条件に影響を及ぼし得る内容が含まれ て い る と と も に 、経 営 管 理 者 の 派 遣 、担 保 の 提 供 等 日 販 の 支 援 を 取 り 付 け る こ と が 含 ま れ て お り 、そ の 後 、同 計 画 に 基 づ く 再 建 策 が 実 施 さ れ た こ と 、 ⑤ し か し 、 結 局 、 同 12年 1月 に は 、 日 販が駸々堂に対し同月末日支払期限の債権の全額弁済を強硬 に 迫 り 、支 払 が な い 場 合 は 日 販 が 全 商 品 を 引 き 揚 げ る 旨 の 約 定 が 成 立 し た こ と 、が そ れ ぞ れ 認 め ら れ 、日 販 は 駸 々 堂 の 経 営 に 対 し て 、一 定 の 影 響 力 を 及 ぼ し 得 る 立 場 に あ る と と も に 、駸 々 堂の企業としての存続をも左右する地位にあったとみるのが 相当である。 し か し な が ら 、前 記 第 3.3(5)、(8)、4(1)及 び (2)認 定 の と お り 、① 駸 々 堂 の 株 式 を 所 有 し て い る の は 、主 に Y 2 社 長 と そ の 縁 故 者 で あ り 、日 販 関 係 者 は 同 社 の 株 式 を 一 切 所 有 し て い な い こ と 、 ② 駸 々 堂 の 役 員 は 7名 で あ り 、 そ の う ち 日 販 か ら 派 遣 さ れた役員は常務取締役として派遣されたY1のみであったこ と 、③ 破 産 申 立 て を 行 う こ と を 決 定 し た の は Y 2 社 長 ら 駸 々 堂 の 経 営 陣 で あ り 、日 販 及 び 日 販 か ら 派 遣 さ れ て い た Y 1 は こ れ - 14 - に 関 与 せ ず 、む し ろ こ の 決 定 か ら 排 除 さ れ て い た こ と が 認 め ら れ 、さ ら に 、日 販 が 駸 々 堂 の 組 合 員 の 労 働 条 件 の 決 定 に 直 接 関 与した事実に関する疎明もない。 こ の よ う に 、駸 々 堂 の 経 営 な い し は 従 業 員 の 労 働 条 件 等 に 対 す る 日 販 の 影 響 力 は 、い わ ゆ る 親 子 関 係 に あ る 親 会 社 の そ れ に 比 肩 し う る も の で は な く 、唯 一 の 取 次 店 又 は 大 口 債 権 者 の 立 場 か ら 、駸 々 堂 の 支 援 ひ い て は 債 権 確 保 を 目 的 と し た も の と み る の が 相 当 で あ っ て 、日 販 が 駸 々 堂 の 経 営 を 支 配 下 に 置 き 、そ の 従業員の労働条件について現実かつ具体的な支配力を有して いたとまでいうことはできない。 以 上 、要 す る に 、日 販 が 唯 一 の 取 次 店 又 は 大 口 債 権 者 と し て 、 商品の供給や経営支援等を通じて駸々堂の経営に強い影響を 及ぼしていたとしても、日販が大口債権者等の立場を超えて、 駸 々 堂 の 経 営 を 実 質 的 に 支 配 し 、あ る い は 、労 働 関 係 に お い て 、 組合員の労働条件を現実的かつ具体的に支配決定していたこ と を 証 す る 疎 明 が な い 以 上 、同 社 を 労 働 組 合 法 上 の 使 用 者 で あ る と 認 め る こ と は で き な い か ら 、日 販 に 被 申 立 人 適 格 は 認 め ら れず、組合の日販に対する申立ては却下する。 (2) Y 1 の 使 用 者 性 に つ い て 組 合 は 、Y 1 は 日 販 と と も に 駸 々 堂 の 破 産 及 び 全 従 業 員 解 雇 に 至 っ た 責 任 を 負 担 す べ き で あ る と 主 張 す る が 、同 人 は 日 販 か ら 駸 々 堂 に 派 遣 さ れ た 役 員 で あ る に す ぎ ず 、同 人 を 派 遣 し た 日 販 に つ い て は 、 前 記 (1)判 断 の と お り 既 に 使 用 者 に は 当 た ら な い と 判 断 し て い る と こ ろ で あ る 。ま た 、同 人 が 派 遣 元 の 日 販 を 離れて独自に駸々堂の従業員の労働関係上の諸利益に直接的 な影響力ないし支配力を及ぼす使用者たる地位にあったとも 認 め ら れ な い 。し た が っ て 、組 合 の 同 人 に 対 す る 申 立 て は 却 下 する。 (3) 駸 々 堂 に 対 す る 申 立 て に つ い て ア 駸々堂の破産申立て及び組合員の解雇について 組 合 は 、駸 々 堂 が 、組 合 の 消 滅 を 図 る 意 図 を 持 っ て 破 産 申 立 て を 行 い 、全 従 業 員 を 解 雇 し た 旨 主 張 す る の で 、以 下 検 討 す る 。 前 記 第 3.2(1)、3(4)、(6)、(7)、4(2)及 び (4)認 定 の と お り 、 ① 駸 々 堂 は 、 経 営 建 直 し の た め 、 合 理 化 の 一 環 と し て 平 成 4年 に関連会社を合併して新会社を発足させたこと、②その後も、 駸 々 堂 は 、経 営 建 直 し の た め 、同 10年 に 再 建 計 画 、同 11年 に 経 営 改 善 計 画 を 策 定 し 、こ れ ら に 基 づ き 、不 採 算 店 舗 の 撤 収 、資 産 の 売 却 及 び 希 望 退 職 者 の 募 集 等 を 行 っ た こ と 、③ 同 12年 1月 、 駸 々 堂 は 日 販 か ら 、 同 年 1月 末 日 支 払 期 限 の 債 務 に つ い て 、 債 務の全額が支払われない場合は全商品を引き場げる旨、また、 - 15 - 従来行ってきた債務の繰延べ等は一切行わない旨通告された こ と 、 ④ 同 年 1月 31日 、 駸 々 堂 は 大 阪 地 裁 に 対 し 、 破 産 申 立 て を 行 っ た が 、 同 日 現 在 駸 々 堂 は 約 32億 9,340万 円 の 債 務 超 過 で あ っ た こ と 、⑤ 破 産 申 立 書 に 、破 産 の 原 因 と し て 、大 規 模 店 舗 化 が 遅 れ た こ と 、経 営 不 振 に 陥 っ た 関 連 会 社 へ の 支 援 や 新 規 出 店による資金面の負担が大きかったことなどが記載されてい た こ と 、 ⑥ 同 年 2月 10日 、 大 阪 地 裁 は 、 駸 々 堂 が 103億 6,000万 円 の 債 務 を 有 し こ れ が 支 払 不 能 の 状 態 に あ る と し て 、駸 々 堂 の 破 産 を 宣 告 し た こ と 、が そ れ ぞ れ 認 め ら れ る 。一 方 、駸 々 堂 が 別の形式で同じ事業を再開しているという事実は認められな い。 以 上 の 経 過 か ら す る と 、 駸 々 堂 は 、 同 4年 以 降 、 経 営 不 振 を 脱 す る た め に 様 々 な 方 策 を 講 じ て い た と こ ろ 、経 営 状 態 が 好 転 せ ず 、 同 12年 1月 に 至 っ て 、 唯 一 の 書 籍 取 次 店 で あ り 最 大 の 債 権者である日販から強硬に債務の弁済を求められたことが直 接 の 契 機 と な り 、Y 2 社 長 ら 経 営 陣 が 、経 営 再 建 へ の 展 望 を 見 出 せ な く な り 、事 業 継 続 を 断 念 し た も の と み る の が 相 当 で あ る 。 し た が っ て 、本 件 破 産 申 立 て 及 び こ れ に 伴 う 本 件 解 雇 が 、組 合 の 消 滅 を 意 図 し た も の で あ る と の 組 合 の 主 張 は 採 用 で き ず 、こ の点に関する申立ては棄却する。 な お 、組 合 は 、組 合 が 書 店 労 組 か ら 引 き 継 い だ 事 前 協 議 合 意 約款を無視して破産申立てをなし組合員を解雇したと主張す る 。確 か に 、前 記 第 3.2(1)認 定 の と お り 、駸 々 堂 と 書 店 労 組 の 間 で 、「 経 営 上 の 改 変 は 、事 前 に 組 合 と 十 分 に 協 議 す る 」旨 の 確認書が締結されていることは認められる。しかし、前記第 3.2(3)、(4)及 び (7)認 定 の と お り 、X 2 ら は 書 店 労 組 を 脱 退 し て 新 た に 連 帯 労 組 を 結 成 し 、そ の 後 連 帯 労 組 と 旧 関 単 労 が 組 織 統 一 し 申 立 人 組 合 と な っ た も の で あ り 、組 合 が 駸 々 堂 と 書 店 労 組 と の 間 の 労 働 協 約 を 当 然 に 引 き 継 ぎ 、そ の 適 用 を 受 け る も の で は な い 。ま た 、駸 々 堂 と 組 合 の 間 で 事 前 協 議 合 意 約 款 が 締 結 されたという事実も認められない。 イ 時間外割増賃金問題について 組 合 は 、駸 々 堂 が 、週 40時 間 制 実 施 問 題 に つ い て 不 誠 実 な 対 応 を 行 い 、こ れ を 未 解 決 の ま ま 放 置 し て 組 合 員 に 時 間 外 割 増 賃 金を支払わなかったことは不当労働行為である旨主張するの で、以下検討する。 ま ず 、前 記 第 3.2(8)、(13)及 び (14)認 定 の と お り 、① 駸 々 堂 で は 、 平 成 9年 春 以 降 、 週 40時 間 制 の 実 施 方 法 及 び こ れ が 実 施 されるまでの間の時間外割増賃金の支払が懸案事項となって い た と こ ろ 、同 11年 3月 、駸 々 堂 は 組 合 に 対 し 、同 年 4月 か ら 全 - 16 - 従 業 員 に つ い て 週 40時 間 労 働 と な る よ う 一 日 当 た り の 労 働 時 間 を 短 縮 す る こ と 、正 社 員 に つ い て は 同 9年 4月 か ら 変 形 労 働 時 間 制 が 導 入 さ れ る 前 の 同 年 7月 ま で の 間 の 時 間 外 割 増 賃 金 を 支 払 う こ と 、 定 時 社 員 に つ い て は 同 9年 4月 か ら 同 11年 3月 ま で の 間 の 時 間 外 割 増 賃 金 を 支 払 う こ と を 回 答 し た こ と 、② こ れ に 対 し 、組 合 は 、駸 々 堂 の 回 答 を 受 け 入 れ ず 、変 形 労 働 時 間 制 の 導 入 は 無 効 で あ る か ら 同 9 年 8月 以 降 も 時 間 外 割 増 賃 金 を 支 払 う こ と 、定 時 社 員 に つ い て は 実 質 的 な 賃 下 げ と な る か ら 賃 下 げ 相 当 分 、時 給 を 引 き 上 げ る こ と を 要 求 し 、こ れ ら の 問 題 が 解 決 す る ま で 従 来 ど お り の 勤 務 時 間 で 就 労 す る 旨 通 告 し た こ と 、が 認 められる。 確 か に 、 前 記 第 3.2(10)認 定 の と お り 、 駸 々 堂 が 組 合 に 知 ら せ る こ と な く 就 業 規 則 を 変 更 し 1か 月 単 位 の 変 形 労 働 時 間 制 を 導 入 し た こ と に つ い て は 問 題 な し と は し な い が 、上 記 の 駸 々 堂 の 回 答 は 、組 合 員 の み を 特 に 不 利 益 に 取 り 扱 う も の で あ る と ま で は い え な い 。週 40時 間 制 実 施 に つ き 、会 社 と 組 合 と の 間 で 合 意が形成されなかったのは、むしろ、組合が、自らの意思で、 よ り 好 条 件 で の 週 40時 間 制 実 施 を 求 め て 会 社 回 答 を 拒 否 す る とともに時間外割増賃金未払分の受取を拒否したことによる も の と み る の が 相 当 で あ る 。し た が っ て 、結 果 的 に 、組 合 員 に 対する時間外割増賃金が未清算のまま駸々堂が破産に至った か ら と い っ て 、こ の こ と を 不 当 労 働 行 為 で あ る と い う こ と は で きず、この点に関する申立ては棄却する。 ウ 団交について 一 般 に 、企 業 に 対 す る 破 産 宣 告 が な さ れ た 後 も 、そ れ に よ っ て 当 該 企 業 の 法 人 格 が 直 ち に 消 滅 す る わ け で は な く 、労 使 関 係 上 の 当 事 者 た る 地 位 が 当 然 に な く な る わ け で は な い 。し た が っ て 、駸 々 堂 は 破 産 宣 告 が な さ れ た 後 も な お 労 働 組 合 法 上 の 使 用 者 と し て の 地 位 を 有 し 、組 合 か ら 破 産 申 立 て に 至 っ た 経 緯 及 び 組 合 員 の 処 遇 等 に つ い て 団 交 を 求 め ら れ た 場 合 は 、こ れ に 誠 実 に応じるべき義務がある。しかしながら駸々堂は、前記第 3.4(9)認 定 の と お り 、 平 成 12年 4月 14日 に 組 合 が 申 し 入 れ た 団 交 に つ い て 、特 段 理 由 を 述 べ る こ と な く こ れ に 応 じ な か っ た こ と が 認 め ら れ 、 こ の よ う な 駸 々 堂 の 行 為 は 、 労 働 組 合 法 第 7条 第 2号 に 該 当 す る 不 当 労 働 行 為 で あ る 。 (4) 管 財 人 に 対 す る 申 立 て に つ い て 一 般 に 、破 産 管 財 人 は 、破 産 財 団 の 財 産 管 理 を 行 う 限 度 に お いて労働関係上の諸利益に対して実質的な影響力ないし支配 力 を 及 ぼ す 地 位 に あ る か ら 、破 産 財 団 の 財 産 の 管 理 及 び 処 分 に 係る事項については、使用者の地位にあると解すべきである。 - 17 - し か し な が ら 、 前 記 (3)ア 及 び イ 判 断 の と お り 、 駸 々 堂 の 破 産 申立て及び組合員の解雇は不当労働行為ということはできない こと、時間外割増賃金未払分の問題についても駸々堂に特段不 当労働行為はないことから、これらに関する組合の管財人に対 する申立てには理由がなく、この点に関する組合の申立てを棄 却する。 2 救済方法 組 合 は 駸 々 堂 に 対 し 平 成 12 年 4 月 14 日 付 け で 申 し 入 れ た 団 交 に 応 じ る こ と を 求 め る 。し か し な が ら 、前 記 第 3.4(7)、5(1)及 び (2) 認定のとおり、本件申立てのうちX4に関する部分は取り下げら れ、またX3に係る債権確定訴訟において管財人とX3との間で 和解が成立したことから、同団交の議題として掲げられた事項の うち未解決の事項は、X2に関する解雇の撤回及び時間外割増賃 金 未 払 分 の 支 払 の み で あ る と こ ろ 、 前 記 1(3)ア 及 び イ 判 断 の と お り、これらは不当労働行為には該当せず、また、駸々堂は既に破 産し、現在、破産管財人の権限の下で、破産手続が進行している 状況にあり、この手続を離れて、これらの問題について駸々堂と 組合が独自に交渉する実質的利益はもはや存しないと思料される。 よ っ て 、 主 文 1の 救 済 を も っ て 足 り る と 考 え る 。 以 上 の 事 実 認 定 及 び 判 断 に 基 づ き 、 当 委 員 会 は 、 労 働 組 合 法 第 27 条 及 び 労 働 委 員 会 規 則 第 34条 及 び 第 43条 に よ り 、 主 文 の と お り 命 令 する。 平 成 15年 6月 30日 大阪府地方労働委員会 会長 田中 治 印 - 18 -
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