20110326(Sat) 0928

住民監査請求書
平成 23 年3月 25 日
魚沼市監査委員殿
請求人 大桃 聰ほか 102 名(別紙1請求人目録参照)
請求人代理人 弁護士
鷲見一夫
鷲見国際法律事務所(送達場所)
〒950‐2002 新潟市西区青山 2 丁目 3 番 32 号
プレステージ青山 1411 号
電話
025−231−3569
FAX
同上
請求の要旨
新潟県中越大震災復興事業関連の水源確保支援事業(農業用水・養鯉池用水)に絡む違法公金支出と補助金
不正受給問題に関して、大桃聰はじめ魚沼市民 18 名は、平成 22 年5月 28 日に、魚沼市長大平悦子を相手
取って、新潟地方裁判所に対して、公金違法支出損害賠償・不当利得返還請求訴訟を起した。また、大桃聰
ほか魚沼市民 122 名は、平成 22 年7月2日に、新潟県知事泉田裕彦を相手取って、公金違法支出差止・損害
賠償・不当利得返還請求訴訟を起した。これらの二つの住民訴訟は、併合審理され、平成 23 年3月 17 日に
は第3回口頭弁論を終えた。
この裁判の過程において、驚くべき事実が判明した。つまり、魚沼市の佐藤英重代表監査委員が、補助金
受給者でありながら、それを隠して、素知らぬ顔で監査業務を実施し、住民監査請求を却下していたことで
ある。これは、地方自治法第 199 の2の規定に違反する違法行為である。
地方自治法第 199 条の2では、
「監査委員は、自己若しくは父母、祖父母、配偶者、子、孫若しくは兄弟
姉妹の一身上に関する事件又は自己若しくはこれらの者の従事する業務に直接の利害関係のある事件につい
ては、監査することができない。
」と定められている。
この規定が設けられた趣旨は、監査業務の執行の公正性を確保するためである。監査委員自身またはその
親族が絡むような事件については、公正な判断を下すことが期待し得ないからである。それ故、監査委員が、
このような立場にある場合には、当該監査委員は、監査業務からは除斥されなければならないのであって、
その職務は、他の監査委員によって行われなければならないのである。
この規定に照らしてみるならば、佐藤英重代表監査委員は、前記事案について監査を行う資格を有してい
なかったことは明白である。なぜなら、彼は、当該事案に絡む農業用井戸(横井戸)の補助金の直接の受給者
であったからである。
佐藤英重氏は、復興基金に対して農業用井戸に関する補助金の申請を行ったのであるが、その当時、彼は、
監査委員であるとともに、横根区の区長でもあった。この区長としての地位を利用して、彼は、農業用井戸
の名分で、二つの井戸の補助金交付申請を行った。一つは、申請額 577 万 5,000 円、もう一つは、申請額 598
万 5,000 円である。ともに限度額 600 万円に近い金額で、いずれも申請が認められた。施工業者は、魚沼産
業(株)なる会社である(事実証明書1)。奇妙なことに、この会社には、井戸穿孔の技術はない。
1
この点について、魚沼市職員綱紀粛正委員会のヒアリング調査報告書によれば、農地班係員は、佐藤英重
氏の補助金申請書類を自らに作成したことを認めている。即ち、
「入広瀬地域では、申請者(区長)に頼まれて
全部作成した。
」というのであり、
「業者は作成していない。様式は基金の HP にあるものをダウンロードし
て使った。
」というのであり、
「頼まれたとは言え、申請書類の作成を安易に手伝うべきではなかった。
」と述
べている(事実証明書2)。
これから明らかなように、佐藤英重氏は、監査委員および区長としての地位を利用して、市職員に補助金
申請書類を作成させていたのである。これは、職権濫用行為そのものである。
佐藤英重氏はまた、区長としての地位で、水源枯渇(水量減少)証明書を自分で確認している(事実証明書3)。
これでは、申請対象の井戸が、はたして中越大震災によって水源枯渇(水量減少)に陥ったのかどうかの客観
的証明にはなり得ない。その上、穿孔技術を有しない魚沼産業(株)に見積書を作成させている。しかも、前
記のように、申請書類を魚沼市職員に作成させているのである。
請求書を見る限り、2本の井戸とも横井戸で、水源は湧水である(事実証明書3)。従って、それほど難し
い工事でもない。これに 1,176 万円もの工事費が必要であるとは到底思われない。しかも、実際には、1本
の井戸しか機能していない。もう1本の横井戸も、導水が、チョロチョロと出ているような状態で、田畑を
潤すことができるような水量ではない(事実証明書4)。この事実からは、佐藤英重氏の補助金受給が、不正
なものであったことが裏付けられる。
上記の事実からは、佐藤英重氏が、平成 22 年2月 23 日付で提出された住民監査請求を、なぜに却下した
のかが明らかである。つまり、職員からのヒアリングを実施すれば、自らの不正行為が露見してしまうから
である。
地方自治法第 199 条の2に照らしてみるならば、利害関係者である佐藤英重氏が行った監査業務結果は、
違法・無効である。監査委員自らが利害関係者、つまり補助金受給者でありながら、その事実を隠して住民
監査請求についての監査業務を行い、しかもそれを却下するという措置を講じたのは、恐らく本邦始まって
以来の珍事であり、また醜態事である。
こうしたことから、大桃聰はじめ魚沼市民 14 名は、平成 23 年1月 13 日に、新潟地方裁判所長岡支部に対
して、国家賠償法第1条第1項に基づいて、違法・無効な監査業務のために公正な地方自治行政への信頼を
裏切られたことに対する損害賠償請求訴訟を起した。これに応訴するために、魚沼市は、高橋賢一弁護士と
委任契約書を結んだ。それによると、着手金 60 万円、全部勝訴の場合の報酬金 90 万円であるというのであ
る(事実証明書5)。
これは、一体、どういうことなのであろうか?この応訴は、正当な権利または理由を欠いており、従って
事実的、法律的根拠を欠いており、裁判制度の趣旨、目的そのものに違背している(事実証明書9に掲げる最
高裁昭和 63 年1月 26 日判決参照)。そこには、二つの大きな問題がある。
まず第一に、全部勝訴を目指しての応訴というのであるが、本件の場合には、全部勝訴というのは、佐藤
英重氏の監査業務が、地方自治法第 199 条の2に違反していないという勝訴判決を得ること以外にはない。
地方自治法第 199 条の2の規定違反が歴然としていながら、裁判で勝とうというのであるから、これは、行
政自ら法令違反を隠すために応訴し、
そのために公金を使おうというのであって、
不当応訴そのものである。
第二には、佐藤英重氏の補助金受給が不正・違法であったかどうかは、佐藤英重氏個人の問題で、これを
弁護するために公金を充てることは、違法であるという点である。もしも佐藤英重氏がこの点について争う
のであれば、自らの金で弁護士費用を賄うべきで、これに公金を充てることは筋が通らず、従ってかかる公
2
金支出は、不当、違法である。
なお、これとは、別途に、魚沼市は、前記住民訴訟に関して、高橋信行弁護士と委任契約書を結んでいる。
その内容は、着手金 78 万 7,500 円、報酬金基準額 78 万 7,500 円、出廷日当3万 1,500 円である(事実証明書
6)。この公金で雇われた弁護士は、前記住民訴訟において、佐藤英重代表監査委員の行った違法・無効な監
査結果を楯に取って、原告住民が監査請求を経ていないという奇妙な議論を展開している(事実証明書7)。
しかし、このような詭弁は、新潟地裁によって一顧だにされていない。このような地方自治法第 199 条の2
の違反行為を正当化するために、公金から弁護士費用を支出することは許されない。
大平悦子魚沼市長、佐藤英重代表監査委員、桜井清博監査事務局長らは、市議会において、弁護士費用に
ついて質問があるたびに、
「裁判で係争中であるから答えられない」
との答弁を繰り返してきている。
確かに、
何人も法的に抗争する権利(裁判を受ける権利)を有している(憲法第 32 条)のであって、提訴されれば、それ
に応訴する権利を有するのは、当然のことである。しかし、応訴するには、それなりの法的根拠をもってす
べきである。つまり、正当な権利または理由がなければならないのである。
提訴、応訴、上訴、再審などの訴訟活動が、正当な権利または理由に基づいて行われない場合には、違法
性を帯び、不法行為となることは、判例上も確認されてきている(事実証明書8および9参照)。例えば、不
当応訴の問題について、東京地裁昭和 50 年5月 20 日判決(判例時報 799 号 57 頁)では、以下のように判示
されている。
「民事訴訟において応訴等が不法行為とされるのは、それがその目的その他諸般の事実からみて著しく
反社会的、反倫理的なものと評価され、公序良俗に反し、応訴等それ自体が違法性を有する場合でなけれ
ばならず、例えば権利のないことを十分に知っていながら相手を害するためとか、またはその他紛争解決
以外の目的のために敢て応訴等をした場合とか、権利の存否について深く調査もせず、訴訟という手段に
出る際の態度が誰が見ても軽率に過ぎ、世間の常識上著しく非難されるに値する程の重大な過失によって
権利のないことを知らずに応訴等をしたというような場合でなければならない、と解せられる。
」
この東京地裁判決において提示された判断基準に照らしてみるならば、本件の場合には、
「それがその目的
その他諸般の事実からみて著しく反社会的、反倫理的なものと評価され、公序良俗に反し、応訴等それ自体
が違法性を有する場合」に該当し、
「権利の存否について深く調査もせず、訴訟という手段に出る際の態度が
誰が見ても軽率に過ぎ、世間の常識上著しく非難されるに値する程の重大な過失によって権利のないことを
知らずに応訴等をした」という場合に相当するということができる。
より具体的に言うならば、まず第一に、地方自治法第 199 条の2の規定に違反している事実について、魚
沼市には、応訴して争う実体的権利または実体的理由はない。名古屋高裁昭和 52 年9月 29 日判決(判例時
報 889 号 54 頁)の言葉を借りれば、
「提訴者が、権利のないことを知りながら、相手方に損害を与えるため、
又はその紛争解決以外の目的のためにあえて訴訟の手段に出でたという場合とか、権利のないことを比較的
容易に知り得べき事情にあるのに、軽率、不十分な調査のままあえて訴を提起する場合のように、訴の目的
その他諸般の事情からみて、それが反社会的、反倫理的と評価され、公序良俗に反する」ときには、不当抗
争として、違法性を帯びるのである(事実証明書9参照)。
第二に、本件応訴は、争権の自由の濫用、つまり抗弁権の濫用ないしは防禦権の濫用であるという点であ
る。鳥取地裁米子簡裁昭和 26 年 12 月7日判決の言葉を借りれば、
「権利の所在又はその内容を明確ならし
めんがため争うべくして争うことは固より違法ではないのであるけれども、既に争うべき何物も存在しない
のに拘らず、自ら不当に利益を得んがため或は相手方に損害を与えんがため専ら争わんがための争をなすが
3
如きことは、公序良俗に違反する違法行為であり」
、不法行為を構成するのである(事実証明書8参照)。
第三に、本件応訴は、反社会的、反倫理的である。応訴行為がすべて違法というわけではないが、反社会
性、反倫理性が強度な場合には、違法性を帯び、不法行為となる。高松高裁昭和 43 年 10 月1日判決(高民
集第 21 巻第5号 480 頁)の言葉を借りれば、
「本来の不法行為の違法性が強度であり且つ明瞭な場合、例え
ば文書偽造、詐欺等明らかに刑事上の処罰を受けるような場合にあっては、一般に加害者の帰責事由が明白
であり、その賠償を怠ることは社会的にも倫理的にも非難に価する行為であるから、加害者の抗争行為は特
段の事情のない限り違法性を帯び、新たな不法行為を構成するものと言うことができる。
」ということになる
(事実証明書8参照)
第四に、魚沼市は、本件応訴の公金支出の理由について市民への説明責任を果たさず、市議会において、
係争中であるという答弁を繰返すのみである。市当局は、市民との間で何を争おうとしているのかさえ説明
できないのである。そして、この点での事前調査の注意義務の懈怠は歴然としている。東京地裁昭和 35 年
1月 28 日判決(判例時報 219 号 19 頁)の言葉を借りれば、
「被告が右訴提起に当って尽すべき事前調査の注
意義務を充分尽くさなかったことは、---------明らかであるから、この点に被告の過失が認められる。従って、
被告の右訴提起は、原告に対する不法行為を構成する。
」ということになる(事実証明書9参照)。
第五に、事前調査の注意義務を尽くせば、地方自治法第 199 条の2の規定違反が明らかであること、また
佐藤英重氏の補助金受給問題について公金を支出することが不当、違法であることを容易に知り得たはずで
ある。それにもかかわらず、違法な公金支出を強行するのは、不法行為である。水戸地裁昭和 50 年9月9
日判決(判例時報 810 号 77 頁)の言葉を借りれば、正当な権利または理由がないにもかかわらず、
「これらの
事情を無視し、
『最後はどうなっても、どこまでもやる。
』との意図で」
、訴訟行為を行うのは、不当抗争であ
る(事実証明書9参照)。このような無意味な不当抗争に血税を注ぎ込むのは、市民にとっては、迷惑千万な
話である。
よって、不当応訴のために、つまり佐藤英重氏の補助金不正受給と違法監査の隠蔽の目的だけに多大の公
金を弁護士費用として費消することは違法な公金支出であるので、監査委員は、市長に対して、高橋賢一弁
護士と高橋信行弁護士との間で結んだ委任契約を解除し、違法に支出された公金の回収ないしは支出予定の
公金の差止を図るなど、必要な措置を講じるよう勧告することを求める。
事実証明書目録
1 魚沼市の農業用水、養鯉池水源確保支援事業に係る調査結果一覧
2 魚沼市職員綱紀粛正委員会「農業用水等水源確保支援事業実施担当者ヒアリング調書」
3 佐藤英重氏の補助金申請書類 A および B
4 佐藤英重氏の補助金交付対象横井戸の現地写真
5 魚沼市と高橋賢一弁護士との間の委任契約書
6 魚沼市と高橋信行弁護士との間の委任契約書
7 住民訴訟(平成 22 年(行ウ)第7号)における高橋信行弁護士提出の「答弁書」
8 不当抗争(不当応訴)問題
9 不当訴訟(不当提訴)問題
添付書類
1 監査請求人目録
4