環境中の化学物質の測定方法に関する研究(第5報) --

環境中の化学物質の測定方法に関する研究(第5報)
― 環境水中の有機塩素系農薬類の分析 ―
笠井
信善
中山
将人
的場
義典
ディスク型固相C18 を用いて、河川水中の有機塩素系農薬類 22 物質の GC/MS による一斉分
析方法を検討した。試料を固相に通水し、固相をアセトンで超音波抽出した後、脱水、濃縮を行
い GC/MS による一斉分析を行った。蒸留水と河川水に有機塩素系農薬類 0.1μg を添加した結果、
回収率は3農薬(ヘプタクロル、アルドリン及びオクタクロロスチレン)を除き、蒸留水が約
65%∼約 100%、河川水が約 70%∼約 110%と良好であった。
1
ろ過には、東洋ろ紙製 GB-140ろ紙を用いた。
クリーンアップ には、ウォーターズ社製
Sep-Pak Plus シリカカートリッジカラムを
使用した。
2.2 分析方法
固相はアセトンで超音波洗浄した後、ディス
クホルダーにセットし、メタノールと蒸留水各
10ml を順次通水し、コンディショニングした。
次に、試料1l を通水し、試料容器 をアセトン
10ml で洗浄し、蒸留水40ml を加えて混合後通水
し、5分間通気脱水した。試料容器とガラスフ
ァンネルの内面を洗浄したアセトン10ml で固
相を10分間超音波抽出した(2回)。抽出液をロ
ータリーエバポレータで約5ml まで濃縮した。
さらに、同様に固相をヘキサン30ml で10分間超
音波抽出した後、アセトン濃縮液に合わせ、ロ
ータリーエバポレータで濃縮し、アセトンを留
去した。濃縮液を無水硫酸ナトリウムで脱水、
ろ過後、ロータリーエバポレータで濃縮し、パ
スツールピペットでスピッツ管に移し、さらに、
窒素ガスの吹き付けにより1ml まで濃縮し、内
部標準溶液4μ l を添加して、表1の GC/MS
測定条件で有機塩素系農薬類を測定した。
2.3 装置及び測定条件
GC/MS は H P 製の H P6890型ガスクロマト
グラフに H P5973型質量分析計を装備したもの
を用いた。
有機塩素系農薬類の SIM を測定したときの
TIC クロマトグラムを図1に示す。これらの測
定条件により有機塩素系農薬類の測定は、ヘプ
タクロルエポキシドとオキシクロルデン が分離
はじめに
現在、約70種弱の化学物質が内分泌撹乱作用
をもつ可能性が疑われている物質として指摘さ
れており、環境濃度の把握が急がれている。環
境水中のこれら微量化学物質の分析法として、
有害物質であるジクロロメタンを多量に使用す
る溶媒抽出法が主流である。しかし、近年、分
析者の保護、環境への配慮から、溶媒の使用量
の少ない固相抽出法が用いられるようになって
きている。そこで、昨年度のフタル酸エステル
類に引き続き、α-ヘキサクロロシクロヘキサン
等有機塩素系農薬類22物質を対象として、藤本
等1)の方法を参考にディスク型固 相による抽出
方法を検討した。
2
試験方法
2.1 試薬及び器具等
対象とした 有機塩素系農薬類 の標準液は、和
光純薬工業製と林純薬工業製を用い、これらを
混合して22種混合標準溶液(1mg/l ヘキサン及
びアセトン溶液)を 調整した。内 部標準品( IS)
は和光純薬工業製を用い、フェナントレン-d10
とク リ セ ン-d 1 2 を ヘ キ サ ン に 溶 解 さ せ て 100
mg/l の混合内部標準 溶液を調整した。これをヘ
キサンで希釈して、
0.1mg/l の混合内部標準溶液
を作製した。
その他試薬は 、和光純薬工業製の残留農薬試
験用を用いた。
ディスク型固相 は 3 M 製 エ ム ポ ア デ ィ ス ク
C18、SDB−XD 及び SDB−XC を用い、固相
抽出には3M 製ディスクホルダーとマニホル
ダーを用いた。
1
不十分であった ものの、定量に用いるイオン質
量数が異なるため、定量が十分可能であ った。
又、検量線の直線 性は10∼200pg の範囲で良好
であった。
アバンダンス
4
4500
4000
3500
16
20
15
3000
12
23
21
14
2500
1
9
2000
3
24
8
2
1500
10,11
17
7
22
5
1000
6
19
13
18
500
Time-->
16
1)
2)
3)
4)
5)
6)
7)
8)
9)
10)
11)
12)
17
18
19
20
α-HCH
β-HCH
γ-HCH
フェナントレン-d 10
δ-HCH
ヘプタクロル
アルドリン
ケルセン
オクタクロロスチレン
ヘプタクロルエポキシド
オキシクロルデン
trans-クロルデン
21
13)
14)
15)
16)
17)
18)
19)
20)
21)
22)
23)
24)
22
23
24
エンドサルファンⅠ
cis-クロルデン
trans-ノナクロル
p,p'-DDE
ディルドリン
エンドリン
エンドサルファンⅡ
p,p'-DDD
cis-ノナクロル
p,p'-DDT
クリセン-d12
メトオキシクロル
図 1 有機塩素系農薬類のクロマトグラム
3
結果及び考察
後固相を洗浄し、5分間通気脱水 した後、抽出溶
媒としてヘキサン、アセトン又は酢酸エチル各
20ml(10ml×2回)を用いて、回収率を求めた結
果を表2に示す。固相の種類よる回収率には大
きな違いが見られなかったが、溶媒ではヘキサ
ンが、アセトン、酢酸エチルに比べて、いずれ
の固相においても、回収率がやや低い傾向であ
3.1
抽出条件の検討
混合標準液(0.1μg/ml アセトン溶液)1ml を
蒸留水1l に添加し、ディスク型固相 SDB-XC、
SDB-XD 及び C18にそれぞれ通水し、アセトン
10ml で試料容器とガラスファンネルの内面を
洗い、アセトンに蒸留水40ml を加えて混合した
2
った。
ヘプタクロル、アルドリン及びオクタクロロ
スチレンは、いずれの抽出条件でも、回収率が
低かった。このため、固相を含水アセトンで洗
浄したこと により、目的物質が固相から溶出す
る可能性を 検討したところ、表3のとおり、ア
セトン中の含水量の違いによる顕著な差は認め
られなかった。また、アセトン、酢酸エチル、
ヘキサンの順で目的物質の抽出を行ったが、表
4に示すとおり、アセトン又は酢酸エチルの単
一溶媒で行った結果と顕著な差は認められなか
った。このことから、 回収率の低い3農薬につ
いては、さらに回収率を向上させるための検討
が必要であ ることがわかった。
なお、回収率が100%を大きく超える農薬類が
あったことから 、標準液と試料の抽出液のマト
リックスを近似させるため、先に報告した2 )試
料ブランクの抽出液に 混合標準液を添加して作
成した検量線(マトリックス標準液)を用いて
表2
有機塩素系農薬類
C18
αーHCH
119.6
βーHCH
81.4
γーHCH
106.8
δーHCH
83.8
ヘプタクロル
39.4
アルドリン
28.4
ケルセン
152.1
オクタクロロスチレン
14.5
ヘプタクロルエポキシド
90.4
オキシクロルデン
65.6
trans-クロルデン
68.0
エンドサルファンⅠ
106.6
cis-クロルデン
75.7
trans-ノナクロル
62.0
,
72.7
pp -DDE
ディルドリン
91.7
エンドリン
98.8
エンドサルファンⅡ
110.4
102.6
pp,-DDD
cis-ノナクロル
93.2
,
73.0
pp -DDT
メトオキシクロル
85.4
回収率を算定した値は、
100%を大きく超える回
収率が修正された。
表1
GC/MS 測定条件
G C 条件
カラム : H P-5MS
(30m×0.25mm×0.25μm)
キャリアガス : He 1ml/min(定流量)
恒温槽 : 50℃(1min)-10℃/min-280℃
(5min)
注入口温度 :250 ℃
注入法 : スプリットレス
(パージオフ時間 : 1.5min)、2μl
MS 条件
イオン化方法 : EI
イオン化エネルギー : 70eV
エミッション電流 : 300μA
測定モード : SIM
蒸留水からの有機塩素系農薬類の回収率
回収率(%)
アセトン
C18
SDB-XC SDB-XD
102.4
96.5
98.6
92.6
89.4
88.0
100.1
94.2
92.3
82.0
81.2
78.8
47.9
44.0
58.8
30.1
29.7
43.0
120.5
119.5
110.0
20.0
21.4
31.5
93.8
87.6
85.6
74.0
70.9
71.7
76.1
71.1
70.9
107.7
131.1
106.3
79.9
87.2
83.0
68.7
77.9
74.5
82.4
88.6
85.8
96.4
98.1
91.8
106.2
106.4
96.6
103.9
107.0
104.6
97.7
103.9
94.2
91.7
92.1
84.3
86.2
80.6
87.7
116.9
103.7
103.3
ヘキサン
SDB-XC SDB-XD
108.5
106.8
54.5
60.3
93.6
94.3
60.4
62.5
31.0
33.3
28.5
23.0
122.3
103.8
13.7
13.6
81.3
77.5
60.0
55.9
64.6
58.2
97.0
97.3
71.4
64.2
57.0
52.1
70.8
61.7
85.6
81.3
86.8
87.9
101.9
108.9
87.7
86.9
82.3
83.2
64.6
69.3
74.1
77.2
3
酢酸エチル
C18
SDB-XC SDB-XD
93.8
95.5
89.7
89.6
92.0
87.7
92.9
94.9
88.1
107.9
117.3
109.8
48.1
47.0
45.7
34.3
27.6
29.5
107.2
108.2
103.1
26.5
21.4
21.8
84.9
88.1
82.8
67.8
68.7
67.7
67.1
67.5
62.7
89.7
97.7
93.9
75.0
81.7
75.5
65.9
72.4
67.2
69.5
70.1
66.0
85.3
91.6
86.2
98.5
100.8
95.7
109.1
116.7
114.0
98.2
104.4
99.3
88.0
89.8
85.9
97.5
113.9
108.6
112.5
129.2
125.2
表3
含水アセトン洗浄による回収率(C18)
有機塩素系農薬類
回収率(
%)
酢酸エチル
アセトン
0
40
50
0
40
50
60
70
αーHCH
105.7
117.4
107.8
93.9
102.4
110.3
107.9
108.0
βーHCH
86.8
95.3
92.0
82.3
92.6
92.8
91.2
91.4
γーHCH
99.8
109.9
104.0
90.2
100.1
103.3
100.7
103.1
δーHCH
124.0
152.6
139.0
79.6
82.0
101.2
97.2
99.8
ヘプタクロル
68.9
71.9
66.3
74.9
47.9
69.8
56.2
63.3
アルドリン
37.2
48.0
44.7
49.0
30.1
42.8
28.3
33.4
ケルセン
116.7
118.8
113.4
108.7
120.5
116.2
116.3
122.3
オクタクロロスチレン
27.3
38.1
35.4
39.4
20.0
33.0
18.7
23.5
ヘプタクロルエポキシド
81.0
89.6
84.3
77.7
93.8
83.8
82.5
82.8
オキシクロルデン
69.8
72.9
68.6
66.6
74.0
68.4
61.6
69.5
trans-クロルデン
72.1
71.7
66.5
72.0
76.1
68.2
62.3
66.5
エンドサルファンⅠ
86.1
104.7
95.7
79.2
107.7
95.3
96.7
105.7
cis-クロルデン
72.5
82.5
74.7
69.9
79.9
73.7
70.1
72.8
trans-ノナクロル
65.7
71.9
65.9
64.0
68.7
63.7
58.4
62.0
64.1
68.7
62.5
70.1
82.4
69.1
63.0
66.6
pp,-DDE
ディルドリン
81.2
91.3
85.5
76.9
96.4
86.4
83.9
87.2
エンドリン
135.3
143.4
131.2
112.2
106.2
106.1
99.4
103.5
エンドサルファンⅡ
103.5
121.3
105.7
82.7
103.9
97.1
104.8
109.2
100.6
112.7
100.7
85.0
97.7
96.4
99.4
104.4
pp,-DDD
cis-ノナクロル
85.1
94.7
85.7
78.0
91.7
83.6
82.6
84.9
91.2
105.3
97.6
80.8
86.2
96.0
91.2
91.5
pp,-DDT
メトオキシクロル
140.2
149.8
141.1
125.9
116.9
139.2
136.5
135.7
0:抽出溶媒10ml
のみで試料容器を洗浄。
40、50、60、70:アセトン10ml
に対して蒸留水40、50、60又は70ml
を混合した後、固相洗浄。
表4
アセトン、酢酸エチル、ヘキサンを用いた回収率(C18)
溶媒標準液
回収率 変動係数
(%)
(%)
αーHCH
116.0
1.2
βーHCH
99.0
1.9
γーHCH
109.4
1.4
δーHCH
150.6
6.8
ヘプタクロル
70.7
6.6
アルドリン
36.3
5.3
ケルセン
136.6
5.4
オクタクロロスチレン
33.2
6.6
ヘプタクロルエポキシド
89.3
1.0
オキシクロルデン
70.9
0.7
trans-クロルデン
70.8
3.4
エンドサルファンⅠ
100.2
1.3
cis-クロルデン
75.0
2.0
trans-ノナクロル
63.6
2.6
64.6
3.7
pp,-DDE
ディルドリン
92.7
1.5
エンドリン
142.9
4.6
エンドサルファンⅡ
122.3
2.6
116.9
3.0
pp,-DDD
cis-ノナクロル
90.3
1.0
90.5
7.0
pp,-DDT
メトオキシクロル
148.4
2.7
有機塩素系農薬類
マトリックス標準液
回収率 変動係数
(%)
(%)
87.2
0.9
95.4
1.8
92.7
1.2
103.1
4.7
42.6
4.0
28.5
4.2
103.5
4.1
32.6
6.4
89.4
1.0
70.8
0.7
70.3
3.4
101.0
1.4
79.3
2.1
68.2
2.8
68.1
3.9
98.0
1.6
101.2
3.3
105.7
2.2
105.9
2.8
95.8
1.1
85.8
6.6
94.0
1.7
4
表5
蒸留水及び河川水からの回収率
蒸留水
溶媒標準液
マトリックス標準液
有機塩素系農薬類 回収率 変動係数 回収率 変動係数
(
%) (
%)
(
%) (%)
αーHCH
124.0
4.9
101.9
4.0
βーHCH
94.3
5.6
98.4
5.9
γーHCH
116.2
3.3
102.0
2.9
δーHCH
109.2
6.6
99.1
5.9
ヘプタクロル
62.6
12.1
43.7
8.4
アルドリン
35.9
7.4
27.4
5.7
ケルセン
130.4
8.1
94.7
5.9
オクタクロロスチレン
30.7
8.9
28.5
8.2
ヘプタクロルエポキシド 96.0
4.2
90.3
4.0
オキシクロルデン
73.7
3.2
74.7
3.3
trans-クロルデン
68.0
4.8
70.4
5.0
エンドサルファンⅠ
85.8
4.5
99.1
5.2
cis-クロルデン
66.9
3.5
74.8
3.9
trans-ノナクロル
57.9
4.5
71.2
5.5
,
59.9
2.4
65.5
2.6
pp -DDE
ディルドリン
86.9
3.7
93.3
4.0
エンドリン
107.7
6.3
105.3
6.2
エンドサルファンⅡ
112.8
7.2
99.4
6.3
,
91.4
4.4
95.4
4.6
pp -DDD
cis-ノナクロル
82.5
3.7
87.6
4.0
,
107.0
5.6
100.3
5.2
pp -DDT
メトオキシクロル
150.9
4.8
99.7
3.2
表6
シリカカラムからの溶出パターン
溶出率(%)
有機塩素系農薬類
ヘキサン 5%アセトン
10ml 10ml
αーHCH
73.3
0.6
βーHCH
78.1
2.9
γーHCH
67.8
8.5
δーHCH
0.0
85.9
ヘプタクロル
74.5
0.0
アルドリン
98.3
0.0
ケルセン
4.0
99.0
オクタクロロスチレン
81.1
0.0
ヘプタクロルエポキシド
86.6
0.0
オキシクロルデン
82.5
0.0
trans-クロルデン
93.4
0.0
エンドサルファンⅠ
88.0
0.0
cis-クロルデン
87.0
0.0
trans-ノナクロル
88.1
0.0
,
104.8
0.0
pp -DDE
ディルドリン
43.7
40.7
エンドリン
90.8
4.5
エンドサルファンⅡ
0.0
87.0
,
91.8
4.7
pp -DDD
cis-ノナクロル
86.3
0.0
,
79.8
0.0
pp -DDT
メトオキシクロル
3.6
86.8
注)5%アセトン=アセトン:ヘキサン(5:95)
計
73.9
81.0
76.2
85.9
74.5
98.3
103.0
81.1
86.6
82.5
93.4
88.0
87.0
88.1
104.8
84.4
95.3
87.0
96.5
86.3
79.8
90.4
5
河川水
マトリックス標準液
回収率 変動係数
(
%)
(%)
112.2
0.7
93.2
1.3
108.1
0.7
100.1
0.5
57.8
9.4
32.2
8.2
86.8
2.2
32.5
8.6
89.0
0.7
77.3
3.5
73.3
4.0
92.4
1.2
78.8
2.3
71.3
3.3
70.8
3.8
93.8
1.7
95.4
4.5
86.4
2.0
86.5
1.1
86.4
0.8
95.7
1.4
103.5
2.2
ディスク型固相 C18
超音波洗浄 アセトン
活性化
メタノール 10ml
蒸留水 10ml
通水
試料1l
洗浄
20%アセトンー 蒸留水 50ml
固相
3.2 添加回収試験
ディスク型固相 C18 と抽出溶媒としてアセ
トンを用いて、蒸留水1lと河川水1lにそ
れぞれ混合標準液(0.1μg/ml アセトン溶液)1
ml を添加し、回収試験を行った結果を表5に
示す。回収率の低い3農薬を除き、回収率は
蒸留水が約 65%∼約 100%で、河川水が約 70%
∼約 110%と良好であった。
3.3 シリカカートリッジカラムによるク
リーンアップ
試料の中には、夾雑物の多い場合があるため、
操作が簡単な Sep-Pak Plus シリカカート
リッジカラムを用いて、試料から抽出した目
的物質と共存する妨害物質を分離する方法を
検討した。カラムからの溶出パターンを表6
に示す。ヘキサンのみでは、δ -HCH、ケルセ
ン及びエンドサルファンⅡが溶出しなかった。
目的物質を溶出させるには5%アセトンーヘ
キサン溶媒が適していることがわかった。
3.4 分析方法のまとめ
回収率の低いヘプタクロル、アルドリン及
びオクタクロロスチレンの3農薬に対するデ
ィスク型固相の適用には、さらに検討が必要
であるが、これまでの検討結果を整理すると
有機塩素系農薬類 22 物質一斉分析のための分
析方法は、図2のフローのとおりである。
4
吸引乾燥(5分)
超音波抽出
アセトン 10ml×2
ヘキサン 30ml
濃縮
脱水・ろ過
無水硫酸ナトリウム
濃縮
クリーンアップ(シリカゲル)
5%アセトンーヘキサン 10ml
濃縮・定容 1ml
内標準液添加4μl
GC/MS
図2 分析フロー
まとめ
内 分 泌 撹 乱 物 質 の 疑 い の あ る 有 機塩素系農
薬類 22 物質の分析方法を検討したところ、次の
知見を得た。
・ ディスク型固相としてエムポアディスク
C18、SDB−XC 及び SDB−XD について検
討した結果、回収率は固相による違いは見ら
れなかった。
・ 固相からの農薬類の抽出溶媒は、検討し
たヘキサン 、アセトン、酢酸エチルのうち、
ヘキサンは他の溶媒に比べて回収率がやや
低い傾向であった。
・ 回収率の低い3農薬(ヘプタクロル、ア
ルドリン及びオクタクロロスチレン)を除き、
蒸留水からの回収率は、約 65%∼約 100%、
河川水からの回収率は、
約 70%∼約 110%と
良好であった。
参 考 文 献
1)藤本千鶴、吉澤 正:固相抽出法による有機
塩素系農薬類の分析 環境化学 Vol.9、
11-21(1999)
2)笠井信善、佐野 敦、福島紀貢子:環境中の
化学物質の測定方法に関する研究(第1報)
富山県環境科学センター年報第 28-2
26-30(2000)
3)廣田政隆:安定同位体標識標準品(サロゲー
ト)による分析精度保証 HPC NEWS
Vol.3 17-23(1999)
4)田辺顕子、茨木 剛等:ディスク型固相抽出
法による環境水中の農薬類の分析 環境化
学 Vol.9、607-615(1999)
6
Determination of chemical substances in the environment(Ⅴ)
― Determination of orgnochlorine pesticides in environmental water ―
Nobuyoshi KASAI
Masato NAKAYAMA
Yoshinori MATOBA
An analytical method was developed for GC/MS monitoring of 22 endocrine disrupting
orgnochlorine pesticides in river water by solid phase extraction with 47mm C18 bond disks.
The sample was passed through the disk under vacuum. The orgnochlorine pesticides trapped in
the disk was extracted with acetone by ultrasonication. After dehydration of the elute, it was
concentrated and analyzed with GC/MS.
The recoveries of orgnochlorine pesticides (0.1µg) spiked in ultrapure water and river water were 65
to 100% and 70 to 110%, respectively, except 3 pesticides (Heptachlor,Aldrin,Octachlorostyrene).
7