1. 薬剤選択の流れ ➡ p.26 1 ◦患者さんに合った薬物療法を行うためのポイント 1種の薬剤にこだわらず,多剤を併用し,より大きな効果を期待する 病態に最も適した薬剤から使用を開始する 合併症の進行の度合いに応じ治療法を検討し,合併症の進行抑制を目標 とする 薬剤の特性,副作用を考慮して薬剤を選択する まず行うべき 診察と検査 症状・病態 糖尿病の診断 ● 血糖 ● HbA1c ● 75gOGTT 治療方針・ 選択すべき薬剤 ケトアシドーシス 高血糖高浸透圧症候群 (HHS) 1型糖尿病, 妊娠・外傷・周術期 インスリン療法+ 食事療法・運動療法 臨床症状 あり 口渇・多飲・ 多尿・体重 減少 ● ● 臨床症状 なし (健診で異常) 病態・病型の評価 インスリン依存状態 (尿・血中ケトン体) ● ● 自己抗体 抗GAD抗体, 抗IA-2抗体 インスリン分泌能 (尿・血中CPR) ● ● 肥満 ・インスリン 抵抗性 (BMI, HOMA-IR) ● その他 妊娠糖尿病, 肝・膵疾患, 内分泌疾患など 合併症の評価 治療法 補液, 持続インスリン療法 治療の検討 ケトン体の消失 血糖の正常化 ● インスリン分泌能に応じた インスリン療法 薬剤選択の流れ 病型診断を適切に行ったうえで治療方針を決定する 製剤の変更 (p.96) ● 経口薬の併用 (p.121) ● 強化インスリン療法 (p.108) ● CSII (p.135) 2型糖尿病 ● インスリン分泌低下 少量のSU薬 (p.67) , 速効型インスリン分泌 促進薬 (p.48) ● 肥満あり ・インスリン 抵抗性大 ※ ビグアナイド薬 (p.54) , チアゾリジン薬 (p.60) イレウスを除いたいずれ の症例でも 〔αグルコシダーゼ阻害 薬 (p.42) 〕 ● ● 著しいインスリン分泌 低下のない症例 インクレチン製剤 GLP‒1 アナログ (p.139) DPP‒IV阻害薬 (p.73) ※重篤な肝・腎・心不全が ないことが前提 薬剤の増量・変更・併用 (p.39) (例) グリニド系薬→SU薬 ビグアナイド薬→チアゾリジン薬 αグルコシダーゼ阻害薬+グリニ ド系薬 αグルコシダーゼ阻害薬+SU薬 チアゾリジン薬 +SU薬 ビグアナイド薬+SU薬 不十分ならインスリン療法 DPP‒IV阻害薬 各薬剤で併用薬剤を確認. 特にSU薬との併用では 低血糖に注意を 合併症の進行の度合いに 応じて治療法の検討 <反町衣里紗,本多一文> 20 改訂版 糖尿病治療薬ハンドブック フローチャート 21 第2章 注射薬 § 1 インスリン 1. インスリン治療を選択する際のポイント Point 1インスリン治療を選択する際には患者の様々な条件(年齢,合併 4動脈硬化が進行した例では低血糖を回避し,ゆっくりと血糖コン トロールを行う 1 作用機序 超速効型インスリンはヒトインスリン分子の自己会合に関係す るアミノ酸を修飾し,自己会合能を低下させ,皮下投与後,六 量体から速やかに二量体 ,単量体へと解離させることで血中へ の移行が速やかになる.注射後 ,急峻なインスリンピークが得 られ ,生理的なインスリン分泌を再現できるため食後高血糖に 有効である 持効型溶解インスリンはインスリングラルギンとインスリンデ テミルがある.グラルギンは等電点を pH6.7 とし,生理的 pH で は結晶化するよう設計されている.すなわち,皮下の pH7.4 で は結晶化し難溶性となり,血中への移行が緩徐となる.そのた め作用に明らかなピークがなく,作用は 24 時間持続する インスリンデテミルは直鎖飽和脂肪酸であるミリスチン酸を結 合させ,自己会合能を低下させるとともに,アルブミンと結合 することで血中への移行を遅延させ,持効化を図っている 2 適 応 ①絶対的な適応は1型糖尿病が疑われる例 ,妊娠を希望する例 , 急性代謝失調(糖尿病性ケトアシドーシス)などである ②相対的な適応としては SU 薬二次無効例,無治療高血糖放置例, 肝疾患,腎疾患合併例である ③一時的なインスリン療法の適応としては急性感染症などのシッ 92 改訂版 糖尿病治療薬ハンドブック 単位皮下注射で追加する.注射時刻は朝食前,就寝前のいずれ でもよいが,毎日一定とする.単位数は朝食前の血糖をみなが ら,120mg/dL を目標に1~2単位の割合で増量していく.空 腹時高血糖が是正され,目標とする HbA1c が達成できれば,そ のまま経過観察とする §1 1 インスリン治療を選択する際のポイント ンスリンの 1 回注射と経口糖尿病薬との併用を考慮する を例にあげる SU 薬二次無効の場合は SU 薬にグラルギン (ランタス ® )を4 章 高血糖の例には持効型溶解インスリンを選択する 3 高齢者で4回注射などの頻回注射ができない場合は持効型溶解イ 1日1回で開始する場合の 1 例として ,インスリングラルギン 2 2食後高血糖の例では超速効型インスリンの食前3回注射,空腹時 3 処方の実際 第 症,理解度)を考慮して注射回数および,インスリン製剤の種類 を選択する必要がある クデイ,外科手術時,ステロイド治療時などである SU 薬二次無効例で空腹時高血糖は認めないが,食後血糖のみが 高い例があり ,この場合は超速効型インスリンを毎食直前に 2 単位から皮下注射を開始,朝のインスリンは昼前の血糖値,昼 のインスリンは夕前の血糖値をモニターしながら1~2単位の 割合で増量していく Step up! アドバイス インスリン注射の同意を得るにはどうしたらよいか インスリン注射に対して恐怖心 ,一生やめられないなどの誤解がある 患者さんではなかなか同意が得られないことが多い.その際はいきなり 4 回注射の強化療法で開始するよりも ,1日1回からの注射で開始した方 が同意を得やすい .実際に自己注射を始めることによってこれまでのイ ンスリン注射に対する患者さんの不安,誤解が払拭されるケースも多い. 4 注意点・禁忌 禁忌としては ,インスリン製剤に対して過敏症の既往のある患 者である 5 効果が得られない場合の対処法 インスリンを増量しても効果が得られない場合は体重増加の有 無に注意する .食事療法が遵守されていないと体重が増加し , 効果が得られない.その際は再度,食事指導を行う 基礎インスリンの補充で朝食前血糖が良好であっても HbA1c が 改善不十分の場合は食後高血糖が是正されていないことが多い. その場合は超速効型インスリンを段階的に追加し,最終的には 第 2 章 注射薬 93 量の可否を慎重に判断する Evidence リラグルチドとエキセナチドの比較試験 Step up! アドバイス リラグルチドとエキセナチドの比較(表) 章 結果:リラグルチド群では HbA1c 値および空腹時血糖値ともにエキセナ チド群と比較して有意に低下した(HbA1c 値の変化量:リラグル チド群− 1.12 vs エキセナチド群− 0.79.空腹時血糖値の変化 §2 量:− 28.98mg/dL vs − 10.8mg/dL) .体重は,両群ともに 26 2 週間で平均3 kg 減少した.リラグルチド群では,エキセナチド群 と比較して,悪心の持続期間は短く,重大でない低血糖も少なか った .ただし ,日本で用いられている量とは異なるので解釈に注 意を要する エキセナチド ②回しきる 2 ①引く 対象:メトホルミンか SU 薬のいずれか,あるいは両者の併用で血糖コン トロール目標値に到達していない 464 名をリラグルチド群 233 名 (1.8mg を1日1回)またはエキセナチド群 231 名(10 μ g を1日 2回投与)に割り付け,26 週間観察した 第 ①使用開始後の保存温度は,リラグルチドは室温保存(1〜 30 ℃)に 対してエキセナチドは 25 ℃以下の保存となっている ②インスリン製剤同様,リラグルチドは毎回試し打ち2単位が必要.し かし ,エキセナチドは試し打ちが不要であるため ,患者は帰宅後不 安になることがある ③エキセナチドのデバイスは ,一度引いてから回すという2段階の操 作が必要であり ,このため患者が混乱することがある .開始時に操 作の確認をしておくとよい 目的: リラグルチドとエキセナチドの有効性と安全性を無作為非盲検試 験で比較すること 文献:1 チェックリスト エキセナチドの処方にあたって □□ エキセナチドは1日2回,食前の皮下投与である ●●表 リラグルチドとエキセナチドの比較 一般名(商品名) リラグルチド(ビクトーザ ® ) 種類 ヒトGLP-1 アナログ 合成エキセンジン-4 半減期(時間) 14 ~15 時間 1.3 時間 適応・併用薬 144 エキセナチド(バイエッタ ® ) 2 型糖尿病 2 型糖尿病 単剤またはSU 薬併用 SU 薬(ビクアナイド薬,チアゾリ ジン薬を含む)併用 用法・用量 最大 0.9mg,1日1 回朝または 夕に皮下注射.できるだけ同じ時 間に自己注射する.ただし,1日 1 回 0.3mgから開始し,1 週間 以上の間隔で0.3mgずつ増量 通 常 1 回 5μgを1日2 回 朝夕 食前 60 分以内に皮下注射.投 与開始から1カ月以上の経過観 察後 ,1 回 10μg,1日2 回投 与に増量可 注入器 ペン型プレフィルド製剤 腎機能障害者 十分な使用経験がない 保存温度 凍結を避け2 ~ 8 ℃,遮光 .使 凍結を避け2 ~ 8 ℃,遮光 .使 用 開 始 後は室 温(~ 30 ℃), 用開始後は25 ℃以下,30日以 30日以内に使用 内に使用 薬価 9,960 円 改訂版 糖尿病治療薬ハンドブック □□ エキセナチドは2単位の試し打ちが不要である □□ エキセナチドの副作用は胃腸障害,特に吐き気である ◆◆文献 1)Buse JB, et al. : Liraglutide once a day versus exenatide twice a day for type 2 diabetes: a 26-week randomised, parallel-group, multinational, open-label trial(LEAD-6). Lancet, 374 : 39-47, 2009 <岡田 浩,坂根直樹> ペン型プレフィルド製剤 5μg,10μg用の 2 種類 透析患者を含む重度障害で禁忌 9,661 円 第 2 章 注射薬 145 付録 3. 血糖降下薬の後発医薬品一覧 【αグルコシダーゼ阻害薬(つづき)】 一般名 2011 年 11 月現在の血糖降下薬の後発医薬品をまとめた 赤字は先発医薬品を示す ボグリボース 【αグルコシダーゼ阻害薬】 一般名 ボグリボース 商品名 ベイスン® 錠0.2 薬価単位 0.2mg1錠 薬価 ベグリラート®錠0.2mg ベスタミオン®錠0.2 ベルデリール®錠0.2mg ベロム®錠0.2 ボグシール®錠0.2 ボグリボース錠0.2「OME」 ボグリボース錠0.2「タツミ」 ボグリボース錠0.2mg「MED」 19.8 長生堂=田辺販売 ボグリボース錠0.3mg「日医工」 ボグリボース錠 0.3mg「ファイザー」 24.1 キョーリンリメディオ= 杏林 武田 ベグリラート®OD錠0.2mg 20.8 大正薬品=興和テバ ボグリボースODフィルム0.2「QQ」 22.4 大洋 シオノ=ケミファ ボグリボースOD錠0.2mg「サワイ」 0.2mg1錠 24.5 沢井 15.4 ファイザー ボグリボースOD錠0.2mg「マイラ ン」 沢井 26.6 陽新堂=富士製薬= 日本ジェネリック=富 士フィルムファーマ= 第一三共エスファ 27.7 大正薬品=興和テバ 日新:山形=科研 ベルデリール®錠0.3mg 25.9 長生堂=田辺販売 ベロム®錠0.3 33.3 キョーリンリメディオ= 杏林 ボグシール®錠0.3 35.2 日本薬工=ケミファ 20.8 高田 28.5 東和薬品 19.8 マイラン=キョーリンリ メディオ=杏林 21.8 日医工 60 武田 ベグリラート®OD錠0.3mg 27.7 大正薬品=興和テバ ボグリボースODフィルム0.3「QQ」 32.5 救急=持田 ボグリボースOD錠0.3mg「MED」 41.4 メディサ=サンド=日本 ジェネリック 33.3 小林化工 =Me i j i Se i ka 29.2 シオノ=ケミファ 33.3 沢井 ボグリボースOD錠0.2mg 「日医工」 ボグリボース ボグリボース 3 大洋 ベイスン®OD錠0.3 ボグリボースOD錠0.3mg 「MEEK」 ボグリボースOD錠0.3mg 「ケミファ」 ボグリボースOD錠0.3mg「サワイ」 0.3mg1錠 0.3mg1錠 付 録 血糖降下薬の後発医薬品一覧 ボグリボースOD錠0.2mg「トーワ」 武田 小林化工 =Me i j i Se i ka 19.3 マイラン 24.5 救急=持田 メディサ=サンド=日本 ジェネリック ボグリボースOD錠0.2mg「ケミ ファ」 ボグリボースOD錠0.2mg 「タイヨー」 高田 60 26.1 ボグリボースOD錠0.2mg 「MEEK」 小林化工 =Me i j i Se i ka 日医工 ボグリボース錠 0.2mg「ファイザー」 改訂版 糖尿病治療薬ハンドブック 沢井 0.2mg1錠 ボグリボースOD錠0.2mg「MED」 メディサ=沢井 =サンド 日医工 43.5 ベイスン®OD錠0.2 21.8 ボグリボース錠0.2mg「日医工」 0.3mg1錠 ボグリボース 東和薬品 マイラン 33.3 ボグリボース錠 0.3mg「サワイ」 19.8 ボグリボース錠0.2mg「マイラン」 30 高田 ファイザー ボグリボースOD錠0.2mg「タカタ」 28.5 39.7 大洋 21.9 東和薬品 ボグリボース錠0.2mg「トーワ」 30 ボグリボース錠0.3mg「タカタ」 付録 20.8 0.3mg1錠 ボグリボース錠0.3mg「タイヨー」 辰巳=ザイダス 沢井 ボグリボース 334 大原=エルメッドエー ザイ 24.5 ベスタミオン®錠0.3 沢井 ボグリボース錠0.3mg「マイラン」 ボグリボース錠0.2mg「SW」 ベグリラート®錠0.3mg ニプロファーマ 33.3 日新:山形=科研 ニプロファーマ ベイスロース錠0.3mg 24.3 19 17.1 0.3mg1錠 小林化工 =Me i j i Se i ka ボグリボース錠0.3mg「トーワ」 ボグリボース錠0.2mg「NP」 ベイスン®錠0.3 33.3 大正薬品=興和テバ ボグリボース錠0.2mg「MEEK」 ボグリボース錠 0.2mg「サワイ」 ボグリボース錠0.3mg「MEEK」 20.8 26.1 ボグリボース 41.4 19.8 0.2mg 1錠 ボグリボース錠0.2mg「タカタ」 ボグリボース錠0.3mg「MED」 ボグリボース錠0.3mg「SW」 21.8 ボグリボース錠0.2mg「タイヨー」 辰巳=ザイダス メディサ=沢井 =サンド ボグリボース錠0.3mg「NP」 19 会社名 大原=エルメッドエー ザイ 26.6 陽新堂=富士製薬= 日本ジェネリック=富 士フィルムファーマ= 第一三共エスファ ボグリボース 薬価 ボグリボース錠0.3「タツミ」 武田 日本薬工=ケミファ 薬価単位 26.6 43.5 ボグリボース ベイスロース錠0.2 mg 会社名 商品名 ボグリボース錠0.3「OME」 335
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