【症例】 17歳 男性 フレカイニドが有効と考えられた β遮断薬抵抗性カテコラミン感受性 多形性心室頻拍の一例 【主訴】 意識消失 【現病歴】 生来健康であった。2011年4月14日、階段を上っていたところ 突然意識消失し転倒。救急隊到着時、心電図波形は心室細 動で体外式自動除細動器使用し、当院救急部に搬入された。 神経学的回復は良好で、心精査のため4月27日に当科転科。 【既往歴】幼少時に熱性痙攣 【家族歴】突然死の家族歴なし 北海道大学病院 循環器内科 佐藤香菜、阿部早和子、三山博史、浅川直也、 水島航、絹川真太郎、金子壮朗、古本智夫、 横式尚司、筒井裕之 入院時採血 血液系 WBC RBC Hb Ht Plt 生化学 TP Alb T-Bil CK GOT GPT LDH γGTP 7900 457 14.0 44.8 376 7.5 4.5 0.7 75 41 88 199 76 /μl ×10 4 /μl g/dl % 3 × 10 /μl g/dl g/dl mg/dl U/l U/l U/l U/l U/l BUN 14 Cre 0.91 Na 143 K 4.4 Cl 104 Ca 10.0 TG 95 HDL-C 31 LDL-C 108 内分泌系 BNP <7.3 free T3 2.39 free T4 1.72 TSH 2.19 mg/dl mg/dl mEq/l mEq/l mEq/l mEq/l mg/dl /dl mg/dl mg/dl pg/ml pg/ml ng/ml μU/ml イソプロテレノール負荷試験 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 【入院時現症】 意識、呼吸、循環:異常なし 身体所見:身長179.0cm, 体重101.0kg, BMI 31.6kg/m2、頸静 脈怒張(‐)、血管雑音(‐)、心音異常なし、心雑音なし、肝・ 腎・脾触知せず、下腿浮腫(‐) 入院時胸部レントゲン,心電図 CTR 49% HR64bpm、NSR、PQ 0.18s、 QRS 0.08s 、QT 0.36s、 Q波 (+:Ⅲ)、Ⅲ・V1negativeT(+) Ⅰ V1 Ⅱ V2 Ⅲ V3 aVR V4 aVL V5 aVF V6 ※1肋間上でもBrugada様心電図変化なし イソプロテレノール負荷試験 Ⅰ Ⅱ Ⅲ aVR aVR aVL aVF VF aVL aVF VF V1 V2 V3 V1 V2 V3 V4 V5 V6 V4 V5 V6 イソプロテレノール1.0μg/分開始直後、 非持続性心室頻拍(NSVT)出現し負荷中止 イソプロテレノール1.0μg/分開始直後、 非持続性心室頻拍(NSVT)出現し負荷中止 1 運動負荷試験 運動負荷試験 ビソプロロール5㎎ ビソプロロール5㎎ 3分経過時 4分経過時 3分経過時 Ⅰ V1 Ⅰ V1 Ⅱ V2 Ⅱ V2 Ⅲ V3 2段脈Ⅲ V3 4分経過時 2連続 PVC 心室期外収縮 aVR V4 (PVC)aVR V4 aVL V5 aVL V5 aVF V6 aVF V6 運動負荷試験 運動負荷試験 ビソプロロール10㎎ ビソプロロール10㎎ 7分経過時 3,4分経過時 Ⅰ Ⅱ Ⅱ Ⅲ Ⅲ aVR aVR aVL aVL aVF aVF 運動負荷試験 運動負荷試験 ビソプロロール10㎎+フレカイニド200㎎ ビソプロロール10㎎+フレカイニド200㎎ 3分経過時 3分経過時 4分経過時 7分経過時 Ⅰ V1 Ⅰ V1 Ⅱ V2 Ⅱ V2 Ⅲ V3 Ⅲ V3 aVR V4 aVR V4 aVL V5 aVL V5 aVF V6 aVF V6 NSVT 7分経過時 3,4分経過時 Ⅰ 2段脈PVC 4分経過時 7分経過時 2 考察 運動負荷試験の結果 ・calsequestrin2(CASQ2)とリアノジン受容体(RyR2)遺伝子変異が発症 に関与している(Leenhardt,et al.JACC 1995) 不整脈スコア ・カテコラミン感受性多形性心室頻拍(CPVT)の薬物治療の第一選択 はβ遮断薬であるが、不整脈の再発が30%以上に認められる (Christian van Werf et at. Europace 2011) ・ICDは突然死予防に用いられるが、作動そのものがCPVTを誘発し ICDは突然死予防に用いられるが、作動そのものがCPVTを誘発し うる。(Mohamed U et al. Heart Rhythm 2006) ・近年フレカイニドのCPVTに対する有効性が報告された (Hiroshi Watanabe et al. Nature Medicine 2009, Christrian van Werf et al. JACC 2011他)。 ・本症例ではフレカイニドの効果が確認され、CPVTに対する有効な 治療と考えられた。 運動負荷時間 不整脈スコア(1.なし or PVC単独,2.2段脈 PVC,3.2連続,4.NSVT) 結語 ・フレカイニドが効果的であったカテコラミン感受性多形性 心室頻拍の一例を経験した ・治療抵抗性のCPVTは従来の治療(β遮断薬、ICD)に加えて フレカイニドを併用することで致死的不整脈の抑制が期待 できる 3
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