(白浜の現状や課題) 白浜町だけでなく、日本の地方都市の大半にあてはまることですが、少子高齢化や人口 流出の課題を抱えています。必須課題であり、また答えの出ない難問題とも言えます。こ れらの課題について理由を考えるのは難しくはなく、答えを出すのが難しいとも言えます。 和歌山県は県外への進学率が非常に高い県だと言われています。大学や専門学校と行っ た学ぶ場所が少ないため、高校を卒業後は大阪や京都、あるいは東京といった学校の選択 肢も多い場所に進学し、そのまま就職をするからです。進学をしなかったとしても就職先 は非常に少なく、どうしても人口流出や少子高齢化の歯止めがかけにくい状況となってい ます。 都会で就職した人たちは、本音として地元に将来的には戻りたいという思いを持ってい るひとが多いと聞きます。しかし転職先も地元には少なく、簡単に地元に帰れる状況では なくなっています。 町としてこの課題解決に向けなにをし、なにができるのかが長年の課題でありました。 (ITビジネスオフィスについて) 白浜町は平成16年1月に現在セールスフォース・ドットコムが入居しているオフィス を開設しました。ここは元々企業の保養所として活用されていましたが、その建物を和歌 山県と白浜町で改修し「白浜町ITビジネスオフィス」として開設しました。 当時は白浜町と隣町である田辺市がIHS構想の拠点地域ということでこの事業を展開 しました。IHS構想というのは Innovation Hot Spring の略で、「白浜・田辺地域が持つ 豊かな自然環境と人材資源、恵まれた交通アクセスを活用し、情報通信関連産業の集積を 促進、“温泉が湧き出す”かのごとく新技術や新産業が次々と生まれてくる創造的な地域を 作っていこう」ということでした。白良浜を一望できる絶景のロケーションで雇用機会の 創出や町内消費の活性化の契機とするための情報関連占用の賃貸オフィスとして運用が開 始されました。 運用を開始した平成16年には情報通信関連企業2社がこのオフィスに入居し、操業を 開始しましたが長くは続かず、平成19年に1社、平成22年にはもう1社が撤退し、平 成26年まで約5年間に渡り空室が続いていました。 そんな中、平成26年8月に現在ITオフィス2階部分に入居している2社の入居を皮 切りに平成27年には株式会社セールスフォース・ドットコムとそのパートナー企業4社、 そして平成28年5月には映像関連のIT企業の入居も決まっており、平成26年夏~2 8年春にかけて入居企業0から満室へと一気にオフィスが活気づいてきました。 理由はいろいろ考えられるとは思いますが、平成16年当時は「SOHO」という言葉 が流行っており、それが今でいうサテライトオフィスと同じ意味合いに捉えられているこ と。企業にとってそういった地方進出に関心がある周期が10年ぶりに訪れたことやその 間の円高から海外進出が続いていたであろう企業間で円高やアジア圏での物価の高騰、仕 −2− 【達成目標】 ①地方創生の観点から実証事業による移住者 11 名の実現。 ②テレワーク有効性の観点から移住者のワークライフバランスの向上と企業の生産性の向 上 ③サテライトオフィス運営ノウハウの観点から企業の運営ノウハウの獲得と京丹後市の運 営ノウハウの獲得 【地方進出機関、地方へ移管される業務】 京丹後市では、独自に行った企業のテレワークニーズ調査により「開発物のフィールド トライアル」 (京丹後市の環境を利用し京丹後市も積極的にトライアル試験に参加するもの) や「開発のプロモーション」 (他地域などへ web や広報活動を通して開発企業と共に積極的 に開発成果物のプロモーション活動に取り組むこと)等の地域サポートを企業が望んでい る事がわかりました。テレワークを活用した「働きやすく生産性の高い開発環境」と「充 実したフィールドトライアル環境」を合わせて提供できる価値を京丹後の強みとして、都 市部の企業・仕事・ワーカーの誘致を通じた地域づくりのプロセス及びサイクルを確立す るモデル実証を行います。 【具体的な内容等】 A.構築するシステム 都市部企業のテレワーカーが働く環境として「グループウェア」「コミュニケーションツ ール」「在籍管理」「ファイル共有」などの機能が必要とされます。本事業では上記機能を クラウド環境で連携する利便性の高いシステムを構築しました。 (a)生活直結サービス テレワーカー健康管理サービス 都市部からの移住者(テレワーカー)の健康管理をクラウドサービスの活用で、日々 チェックを行い地元の健康管理士による定期的なアドバイスを受けることとしました。 (b)センター拠点整備 地方のテレワーカーが都市部と同様の環境で働く為には、セキュリティ、コミュニ ケーション、勤怠管理、ファイル共有、オフィス機材の面など、都市部と同等レベル の機能を有したオフィス環境が必要となります。 そのため、本事業では、長年丹後地域の地場産業振興の中核として利用されてきた 「アミティ丹後」をテレワークの中核施設として位置づけ、サテライトオフィスとし て有効活用し下記機能を付加し整備していくこととしました。 [整備内容] ・アミティ丹後内の1F スペースの一部をオフィス化。オフィスエリア内には、セキュ −8− リティ対策として監視カメラを設置。 ・オフィスエリアは企業専用オフィスを 3 部屋と共用スペースに分け、 -企業専用オフィス:パーティション、電源/LAN 工事、パソコンを整備。 -共用スペース:進出企業のコミュニケーションを図る場や交流会などのイベントな どでも活用できる場としての役割を持たせています。 (c)テレワークシステム概要 都市部企業のテレワーカーが働く環境として『グループウェア』『コミュニケーショ ンツール』『在籍管理』『ファイル共有』などの機能が必要とされます。本事業では上 記機能をクラウド環境下で連携する利便性の高いシステムを構築しました。 [テレワークシステムの各サービス] a 在籍管理サービス テレワークする上で重要な要素となるのが、離れていても『きちんと仕事をして いる』という証明が出来ることです。本事業では、証明機能(PC の画面を一定時間 で自動保存)を有している(株)テレワークマネージメントが提供する勤怠管理サービ ス「Fチェア」(ASP)を利用しています。(一部カスタマイズ) b グループウェアサービス 企業と進出企業の本社・支社間等との「スケジュール管理」を主としています。 また、グループウェアが持つ掲示板機能を活用して、施設運営者や市職員にも運用 してもらい、地域活動の案内などを掲載しテレワーカーに対して地域との交流を働 きかける等の活動を推進しています。 c コミュニケーションサービス 企業にとって遠隔地にいる社員とコミュニケーションを図る際には電話会議や TV 会議などを利用します。本事業においてもこの機能は必須となりますが、TV 会 議機能だけでなく複数のコミュニケーション機能を持つ(株)テレワークマネージメ ントのバーチャルオフィスサービス「SOCOCO」(ASP)を利用しています。 d ファイル共有サービス 離れた場所で業務を遂行する上で、ファイル共有機能は必須となります。本事業 ではオンプレミス型のファイル共有サービスを利用しています。 e 健康管理サービス サテライトオフィスの共用スペース内に健康測定機器を設置し、それらの数値推 移がセンター利用者のスマートフォンのアプリで管理できるようにすることで健康 意識と体重・体脂肪率・血圧などの健康指標の変化について検証を行います。また京 丹後市の健康管理士による定期的なアドバイスなども付加し合わせて検証を行いま す。本事業では(株)タニタの健康情報ポータル「からだカルテ」と同社の測定装置 による検証を行います。 −9− B.実証内容 ア 実証するテレワーク機能とその特性 実証項目1 テレワークの有効性 ①使用するシステム 『グループウェア』『コミュニケーションツール』『在籍管理』『ファイル共有』システ ム ②実証内容 移住者(ワーカー)のワークライフバランスの向上について、移住者(ワーカー)やワ ーカーの家族が本システムを一定期間利用した後、下記項目に関する内容を評価す るため、アンケートまたはインタビューを数回実施します。≪移住者(ワーカー)やワ ーカーの家族を対象としたアンケートまたはインタビューにより把握(複数回)≫ ・ワーカーのワークライフバランスの向上 ・ワーカーのワークライフバランスへの意識の変化 ・ワーカーの家事育児参画の変化 ・ワーカーの生活時間の変化 ・ワーカーのコミュニケーションの変化 ・ワーカーの労働時間の変化 実証項目2 進出企業の生産性の向上 ①使用するシステム 『グループウェア』『コミュニケーションツール』『在籍管理』『ファイル共有』システ ム ②実証内容 進出企業を対象としたインタビューにより把握(複数回)、テレワークシステムのロ グの分析により把握(継時的) ・ワーカーの生産性の向上、進出企業の生産性の向上 ・ワーカーの業務成果の量・質の変化、進出企業の業務成果の量・質の変化 ・進出企業の業務コストの変化 ・進出企業のテレワークツールの利用(在籍管理、グループウェア、コミュニケ ーションツール、プロジェクト管理ツールなどのテレワークツールの評価を含 む) ・フィールドトライアルの実施、環境への評価 ・テレワークを利用した BCP の策定 実証項目3 サテライトオフィス運営ノウハウの観点 − 10 − ①使用するシステム 『グループウェア』『コミュニケーションツール』『在籍管理』システム ②実証内容 進出企業の運営ノウハウの蓄積について実証する。≪進出企業を対象としたイン タビューにより把握(複数回)≫ ・進出企業のサテライトオフィス運営のノウハウの蓄積など(機能、立地、セキュリ ティ、プライバシー、通信ネットワーク、アプリケーション、併設施設、コスト、 利用状況、改善点等の観点からの評価を含む) 二次的な成果(地域にとっての直接効果)・三次的な成果(地域への波及効果) [地方創生の観点] ■実証参加による移住者数の増加 ≪統計データなどにより把握(複数回)≫ ・移住者数(ワーカー自身+家族) ・移住者の満足度、理由 など ■地元経済への寄与(地元雇用者数等) ≪統計データなどにより把握(複数回)≫ ・地域経済への寄与(購買・雇用等) など [サテライトオフィス運営ノウハウの観点] ■京丹後市による運営ノウハウの蓄積 ≪京丹後市関係者(市・運営財団等)を対象 としたインタビューにより把握(複数回)≫ ・京丹後市のサテライトオフィス運営のノウハウの蓄積 など (機能、立地、セキュリティ、プライバシー、通信ネットワーク、アプリケーシ ョン、併設施設、コスト、利用状況、改善点等の観点からの評価を含む) ■京丹後市によるテレワークへの取り組みの認知度の向上、メディアへの露出度 ≪京丹後市民・京丹後市出身者等を対象としたアンケートまたはインタビュー により把握(複数回)≫ ・京丹後市のテレワークへの取り組みやテレワーク環境についての認知 など ・新たな起業や在宅ワークによる雇用の創出 地域へのテレワーク導入についての課題、可能性を検証・実証するため上記の 取り組みを実施しています。 イ 実証する生活直結サービス機能とその特性 実証項目1 都市部からの移住については、知らない土地への不安、知人等が存在し ないことによる孤立感、単身赴任の場合の健康管理の問題が存在します。 ①使用するシステム − 11 − 『グループウェア』『コミュニケーションツール』『在籍管理』システム ②実証内容 企業とそれぞれの本社・支社間及び進出企業内の移住者(テレワーカー)同士の「ス ケジュール管理」を主とした掲示板機能を施設運営を担う担当者や市の職員などにも 運用することで、地域活動の案内などの情報をテレワーカーに対して提供し、地域と の交流を働きかけるなどの活動を推進していきます。 都市部のテレワーカーの悩みの一つで『週末など空いた時間の過ごし方に戸惑う』 が挙げられるが、テレワーカーが孤立しないよう京丹後市ならではの農業、漁業、林 業、丹後ちりめんなど、地場産業への理解を深めるための体験企画も合わせて仕掛け ていくことで、生活直結サービス機能とその特性について検証を行います。 また、テレワーカーの健康管理をクラウドサービスを活用して日々チェックを行い、 地元の健康管理士による定期的なアドバイスサービスを実証します。都市部からテレ ワーカーが進出した際にテレワーカーの健康管理(食生活のアドバイスサービス)の みならず、市としてテレワーカーの満足度向上に向けて専任担当をつけるなどテレワ ーカーケアサービスなども開発していきます。 【進出企業による事業】 現在、進出企業は、「都市と地方を結ぶマッチングサイト構築と実証」「児童及び高齢者 の見守り隊対策」「ICT活用による観光誘致とインバウンド実証」などの開発を行ってお り、その成果が期待されるところです。 【今後の取り組み】 本実証事業で得た、各地域や企業との繋がり、テレワークセンター運営ノウハウを活用 し、さらなるテレワークの推進を行い、テレワークセンターの運営拡大、人口流入、進出 企業の増加、サテライトオフィスの増加を目指します。 また、京丹後市の市民や企業とのマッチングやコラボレーションをする場を設け、新た な事業展開に繋がる可能性を創出します。 京丹後市役所 商工観光部商工振興課長 − 12 − 高橋 尚義 より実現した。また、KCN及びこまどりのコミュニティチャンネルのデータ放送、スマ ートテレビによる情報配信、奈良県内のコミュニティFM局(ならどっとFM、FMハイ ホー)によるラジオ放送、スマートフォン端末による情報表示を活用して、地域住民と旅 行者(外国人旅行者を含む)に情報伝達をした。本事業で作成したシステムは、表1の通 りである。 表1.本事業で作成したシステム № システム名称 概要 1 テンプレート選択型入力システム テンプレートを選択するだけで、発令文を作成 ▸ PC 版 ▸ スマートフォン版 することができる。キーボード入力をほとんど しなくて済むため、簡単かつ迅速にLアラート に情報を発信することができる。 2 ホームページ、L アラート連携 通常運用しているホームページの情報をLアラ ートに連携する。通常の業務を変えることなく Lアラートに情報を発信 3 多言語変換 日本語で入力された情報を、英語、中国語、韓 国語に変換。外国人旅行者にもLアラート情報 を伝えることができる。 4 CATVデータ放送連携 災害発生時に、本線放送にポップアップして情 報を伝える。 「d」ボタンを押さなくても、情報 が表示されるため、迅速な行動を住民に促すこ とができる。 5 6 割込み放送システム 災害情報発生時に、ラジオの通常放送に割込ん (ラジオ) で、災害情報を放送するシステム。 スマートフォン版 Lアラートの情報をスマートフォン端末で閲覧 Lアラート閲覧サイト することができる。端末の言語設定により、対 応する言語を表示する。また、GPS 機能で、 最寄りの避難所を地図上で参照することができ る。 (1)テンプレート選択型入力システム 奈良県には小規模な自治体が多く災害時にLアラートに情報を発信するために必要な人 員を配置できないことが予想される。そのため、あらかじめ用意した文を選択するだけ で、発令文を生成することができる「テンプレート入力方式」の画面を開発した。また、 庁舎外からでも情報発信ができるように、PC用の入力システムだけでなく、スマートフ ォン端末からも情報発信できる入力システムも開発した。さらに、電源やネットワークが − 15 − 過去5カ年の近畿管内における地域 ICT 振興型研究開発の採択案件 研 究 課 題 終了 H23 H24 脳性麻痺障がい者のマルチモーダルコミュニケーション支援 技術の研究開発 滝口 哲也 (神戸大学) H23 H24 地域のストーリーの生成を通じて知識の伝達を促進する多階 層連携システムの研究開発 星野 敏 (京都大学) H24 H25 運動中のスポーツ選手からのリアルタイム・バイタルデータ収 集システムの研究開発 奥畑 宏之 ((株)シンセシス) H24 H25 在宅高齢者の“こころ”を支える ICT システムの開発 H24 H25 災害時に活躍する見守り・監視に重点を置く情報インフラに関 する研究開発 H25 H26 動物園におけるセンサー情報・飼育情報の統合管理・分析技 法に基づく種の保存および環境教育活動支援プログラムの 研究開発 H25 H26 「うめきた」における Wi-Fi パケット・アノニマス人流解析システ ムの研究開発 H25 H26 広域限界集落における超高齢者の見守り・自立支援に関す る研究 神原 誠之 (奈良先端科学技術大学院大学) H26 実施中 学校健診データベース構築による地域健康増進と新規ヘル スケアニーズの探索 川上 浩司 (京都大学) H26 実施中 循環器疾患患者を対象とした在宅ヘルスケア・システムの研 究開発 小林 浩 (奈良県立医科大学) H27 実施中 高齢者見守りのための生活支援対話システムの研究開発 中村 哲 (奈良先端科学技術大学院大学) H27 実施中 精神障害の疾患特性がある人でも継続学習できる、無料 IT 技能学習サイトの開発・運営(就労準備支援プログラム MELSS) 森本 かえで (神戸大学) − 21 − 名 研究代表者 (所属機関) 採択 桑原 教彰 (京都工芸繊維大学) 鳥生 隆 (大阪市立大学) 吉田 信明 ((公財)京都高度技術研究所) 西尾 信彦 (立命館大学) 効性を検証してきた.これまで,ワイヤレスバイタルセンサノードを22人の選手全員に装 着し,彼らのバイタル情報をリアルタイム,定期的かつ高信頼に一か所に収集できること を実証してきた [1]. 2.研究開発内容及び成果 2.1 バイタルセンシング法 心電位あるいは脈波をセンスすることにより,心拍は計算できる.また,3軸加速度をセン スすれば,エネルギ消費量は計算できる.体表温度は,人体のどの部位でもセンスできる が,心電位は心臓の近くで,一方,3軸加速度は下半身でそれぞれセンスすることが好まし い.我々は,人間の腰部一箇所に装着するだけで,光電容積脈波(PPG:PhotoPlethysmoGraphy) により心拍を取得・計算し,3軸加速度からエネルギ消費を計算し,そして体表温度をセン スできるバイタルセンシング法を研究開発した.心電位法による運動中の心拍センシング で問題となるのが発汗である.心電位法では,電極を用いて心電位を直接センスするため, 発汗により電極間に電流が流れると心電位は正確にセンスできなくなる.対策としては, 電極間距離を大きくする他にはない.一方,PPGの原理は,LED/光検出器を用いて拍動に よる体組織厚の変化等をセンスすることである.運動中には,運動に伴い体組織も変化す るため,センスした脈波の中に体動が含まれる.特に,走行や跳躍といった激しい運動時 には,脈波の周波数成分と体動の周波数成分が重なることから,非線形処理を用いないと, 脈波から体動をキャンセルできない.キャンセルするには体動だけをセンスする必要があ り,それが鍵となる.我々は,LED/光検出器を工夫することにより,体動だけをセンスで きることを発見し,激しい運動時であっても正確に心拍をセンスできる方法を研究開発し た [2]. 2.2 無線伝送法 2.4GHz ISM帯では,通信方式やそのモジュール等,多種多様なデバイスが安価に入手でき るが,この周波数帯の無線信号は,伝送距離が短く,人体等により容易にブロックされる という特徴を持つ.一方,920MHz帯の通信方式の伝送速度は比較的低速であるが,その無 線信号は,伝送距離が長く,ブロッキングに強いという特徴を持つ.このように,これら2 つの周波数帯の通信方式には一長一短があるため,フィールド実験により,我々はそれら の伝送特性を比較することにした.フィールド実験では,サッカー選手22名の後腰部にバ イタルセンサノードを装着し,90分間の試合中に彼らのバイタルデータを10秒に1回1台の ノートPCに収集するものであった.バイタルセンサノードは2.4GHz ISM帯と920MHz帯の両 方で同時に信号を送信できる.フィールド実験の結果,2.4GHz ISM帯の無線通信方式では, フィールドの周りに6台のデータ収集ノードを設置しても,パケット受信成功率が約80%に しかならないが,920MHz帯の無線通信方式では,2台のデータ収集ノードを設置すれば, パケット受信成功率がほぼ100%になることが判明した [3]. − 23 − [4] T. Shimazaki, S. Hara, H. Okuhata, H. Nakamura, and T. Kawabata, “Motion Artifact Cancellation and Outlier Rejection for Clip-type PPG-Based Heart Rate Sensor,” accepted for The 37th Annual International IEEE EMBS Conference (EMBC’15), Milan, Italy, 25-29 Aug. 2015. [5] S. Hara, H. Okuhata, T. Kawabata, H. Nakamura, and H. Yomo, “Real-Time Vital Monitoring for Persons during Exercises -Solutions and Challenges-,” IEICE Trans. Commun., to appear, Mar. 2016. [6] http://resemom.jp/article/2014/05/27/18673.html. [7] A Teachers' Guide to TALIS (Teaching and Learning International Survey), − 27 − OECD, 2013. るという知見が得られた。そのため、研究項目①のための生活行動モデル化に、センサ情 報とロボット対話を併用することで、行動の目的や内容、行動を共にした人、さらには食 事内容など、当初の想定を超えるより高次な意味を持った生活行動記録が可能となった。 研究項目②では、 「正常・異常」や「歩行・転倒」のようなクラス分類ではなく、動作状態の連 続的な得点化や、具体的に衰えが生じている身体箇所・動きの教示やそれを矯正するための動作 の指示の実現を試みた。さらに、通常の映像と距離が計測可能なカメラ(RGB+Dカメラ)を 利用して、高齢者の歩行や段差の昇降の動作情報の収集を進めながら、生活動作の中での、 体の異常を検出するために、故障部位を人為的に発生させた歩行動作データに基づいた動 作モデルを用いて、歩行動作における故障部位を推定する手法を開発した。 研究項目③では、独居による発話機会の減少による脳機能低下や認知症の重症化の予防 や、最終目的である習慣的な生活行動の改善を意味する行動変容を実現するために、高齢 者が継続的にロボットと対話をしたくなるような雑談環境の構築を試みた。まず、テレビ の視聴時を想定してソーシャルメディアを利用することで飽きずに魅力的な対話内容を生 成する手法を確立した。しかし、ソーシャルメディアでは、現在放送されているテレビ内 容に適した面白い対話内容が生成可能であったが、その対話内容生成過程の特性上、人間 の発話に対するロボットの反応に遅延が生じ対話をしている感覚が低下するという知見が 得られた。そのため、本年度はソーシャルメディアと、相槌や復唱を含めた機械応答を併 用すること、対話内容の面白さと対話の応答性を両立するロボット対話を開発した。実験 から、発話回数が優位に増加することが確認され、アンケートから継続的な対話を望む結 果が得られた。さらに、継続的なロボット対話を行った高齢者へのアンケートを通じて、 システム(対話ロボット)との親しみ、信頼関係、ロボットによる説得に対する前向きな 姿勢が生まれたことが確認された。 本プロジェクトでは、研究項目①、③において日常的なロボット対話を想定したシステムを開 発することで、高齢者を単に見守るだけでなく、ロボットとの信頼関係の構築が可能であること が実験より示唆された。これまで認知症の高齢者の利用を想定した簡単なシナリオベースまたは、 対話をしない癒しロボットなどは開発されてきているが、前期高齢者(アクティブシニア)が利 用するとすぐ飽きてしまい継続的な利用に至らなかった。本研究の最大の成果は、アクティブシ ニアの対話の意欲を増加させる魅力的な雑談と、生活行動記録のための対話を実施することで、 継続的な対話ロボットの使用の意欲を見いだせた点である。さらに、継続的なロボット対話を行 った高齢者へのアンケートを通じて、システム(対話ロボット)との親しみ、信頼関係、ロボッ トによる説得に対する前向きな姿勢が生まれたことが確認された点が大きな成果であると考え られる。今後は、下図 2 に示す通り人間の生活習慣改善や高齢者の社会参加を目的とした行動変 容を、対話ロボットで実現することが可能となり、ライフイノベーションを生む一助になること が期待できる。 − 29 − 平成27年度 総会及びセミナー等実施状況 ○H27.4.14 第 24 回定期総会記念講演会 ・「ロボットバリアフリー社会を目指して」 国立情報学研究所 情報社会相関研究系 教授 新井 ○H27.5.28 防災情報通信講演会・展示会 ・ 「『伝える』ことの大切さ」 株式会社神戸新聞社 報道部次長兼編集委員 紀子 氏 長沼 隆之 氏 ○H27.6.29 平成 27 年度 近畿情報通信講座 ICT 教育推進セミナー ~ICT が支える教育現場の実態と将来展望~ ・「使えるシームレスな学修支援環境のもたらすもの」 広島市立大学大学院 情報科学研究科 教授/附属図書館長 総務省情報通信審議会委員 前田 香織 氏 ・「教育の情報化に関する総務省の取組について」 総務省 情報流通行政局 情報通信利用促進課 課長補佐 柳迫 泰宏 ・「教育の情報化の動向について」 文部科学省 生涯学習政策局 情報教育課 課長補佐 降籏 友宏 氏 ・「今後の教育の情報化に向けて― APPLIC 教育 WG の活動 ―」 一般財団法人全国地域情報化推進協会テクニカルアドバイザー 富士通株式会社 小中高ビジネス推進部エキスパート 奥田 聡 氏 ・パネルディスカッション「ICT が支える教育現場の将来」 コーディネーター: 広島市立大学大学院情報科学研究科教授/附属図書館長 前田 香織 氏 パネリスト: 大阪市教育センター 教育振興担当 首席指導主事 玄藤 一則 氏 和歌山市立東中学校 教頭 /Microsoft Expert Educator Education Leader 角田 佳隆 氏 総務省 情報流通行政局 情報通信利用促進課 課長補佐 柳迫 泰宏 文部科学省 生涯学習政策局 情報教育課 課長補佐 降籏 友宏 氏 一般財団法人全国地域情報化推進協会テクニカルアドバイザー /富士通株式会社 小中高ビジネス推進部エキスパート 奥田 聡 氏 ○H27.10.15 電波利用促進セミナー ~情報通信技術が支える次世代 ITS~ ・「次世代 ITS の実現に向けた総務省の取組みと最新の動向」 総務省 総合通信基盤局 移動通信課 新世代移動通信システム推進室長 中村 − 32 − 裕治 ・「インフラレーダーシステム技術の開発」 パナソニックシステムネットワークス株式会社 インフラシステム事業部 主幹 中川 洋一 氏 ・「日産の高度運転支援と自動運転の取組み」 日産自動車株式会社 R&D エンジニアリング・マネージメント本部 グローバル技術渉外部 技術顧問 福島 正夫 氏 ・「ITS に対するトヨタの取組みと将来展望」 トヨタ自動車株式会社 ITS 企画部 ITS 開発室 第 1 開発グループ長 渉外グループ担当課長 菅沼 英明 氏 ○H27.10.24 OIH スタートアップ ピッチ 2015 ・報告 起業家甲子園・起業家万博卒業生 未来電子テクノロジー株式会社 代表取締役 福本 真士 氏 ・ピッチコンテスト結果:出場全8チーム OIH 賞:「Recty」 奈良先端科学技術大学院大学 玉田 眸 氏 近畿総合通信局長賞: (社会人部門)リアルタイム介護タクシー検索サービス「みおつくし」 奥野 健史 氏 (学生部門)「おなかのげんじつ」 奈良先端科学技術大学院大学 中村 優吾 氏、松田 裕貴 氏 NICT 賞:ボーダレス求人・求職オンラインプラットフォーム 株式会社 HRDatabank 丁 世蛍 氏 ○H27.10.26 関西 ICT イノベーションセミナー2015 ・SCOPE(戦略的情報通信研究開発推進事業)研究成果発表: 「動物園におけるセンサー情報・飼育情報の統合管理・分析技法に基づく種の保存およ び環境教育活動支援プログラムの研究開発」 公益財団法人京都高度技術研究所 ICT 研究開発部 副主任研究員 吉田 信明 氏 「『うめきた』における Wi-Fi パケット・アノニマス人流解析システムの研究開発」 立命館大学 情報理工学部 情報システム学科 教授 西尾 信彦 氏 「広域限界集落における超高齢者の見守り・自立支援に関する研究」 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 准教授 神原 誠之 氏 ・「IoT 時代に向けた新たな情報通信技術政策」 総務省 情報通信国際戦略局 技術政策課長 野崎 雅稔 ・「JGN-X の活用事例と NICT の各種取り組み」 国立研究開発法人情報通信研究機構 テストベッド研究開発推進センター テストベッド研究開発室 マネージャー 渡邉 正喜 氏 ○H27.11.26 防災情報通信セミナー ~情報伝達で命を守るこれからの防災対策~ ・「G空間シティ構築事業の成果と展開について」 徳島県 危機管理部 危機管理政策課 課長補佐 戎 弘人 氏 − 33 − ・プレゼンテーション: 総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 電気通信技術システム課 主査 中村 俊佑 パイオニアVC株式会社 営業部 ビジネス開発担当マネージャー 武井 祐一 氏 ファーストメディア株式会社 代表取締役(CEO) 山崎 佳一 氏 株式会社つくし巧芸 代表取締役 松尾 尚 氏 ○H28.1.14 平成 27 年度近畿 ICT 利活用普及促進セミナー ~地方創生に資する ICT 利活用の現状と今後の展開~ ・「ICT を活用した地域活性化」 総務省情報通信国際戦略局 情報通信政策課 課長補佐 白壁 角崇 ・ 「ICT を活用したかつらぎモデルの推進」~ローコストコミュニティとシティセールス~ 奈良県葛城市長 山下 和弥 氏 ・「結ぶチカラで実現する ICT まちづくり」 凸版印刷株式会社 情報コミュニケーション事業本部 ビジネスイノベーションセンターヘルスケア事業推進部 部長 矢尾 雅義 氏 ・「ICT を活用した女性が子供のそばで働ける新しいビジネスモデル」 ~ママスクエアの取組について~ 株式会社ママスクエア 代表取締役 藤代 聡 氏 ・「L アラート情報による防災減災の試みとまちづくり活用の可能性」 近鉄ケーブルネットワーク株式会社 IT 事業推進部 部長 後藤 浩司 氏 ○H28.2.2 平成 27 年度情報セキュリティ&危機管理セミナー ・「総務省における情報セキュリティ政策の最新動向」 総務省 情報流通行政局 情報セキュリティ対策室 係長 棚田 祐司 ・「サイバー犯罪の現状及び傾向について」 大阪府警察本部 生活安全部 サイバー犯罪対策課 管理官 客野 嘉宏 氏 ・「マイナンバーと個人情報保護について」 電気通信個人情報保護推進センター 諮問委員 桑子 博行 氏 ○H28.2.9 放送コンテンツ海外展開セミナーin 関西 2016 ~地元の魅力を海外へ発信し、関西を元気に!~ ・「放送コンテンツ海外展開促進に向けた政策について」 総務省 情報流通行政局 コンテンツ振興課(情報通信作品振興課) 主査 目賀田 克之 ・「海外共同制作の実施から得られた経験」 一般社団法人 放送コンテンツ海外展開促進機構(BEAJ) 事務局次長 渡辺 圭史 氏 ・「海外で成功している放送コンテンツのビジネス事情」 住友商事株式会社 放送・映画事業部 米田 勝紀 氏 − 34 − ○H28.3.9 地方創生に資する ICT 利活用導入事例発表会 ~近畿地方の ICT 関係団体会員企業・団体の導入事例~ ・近畿地方 ICT 関係団体の会員企業・団体による ICT 利活用に関する導入事例の紹介 ○H28.3.17 電波利用促進セミナー ~関西における新しい技術開発の動向~ ・「電波政策の最新動向と主な取組について」 総務省 総合通信基盤局 電波部電波政策課 統括補佐 山野 哲也 ・「無線ネットワーク資源の極限利用」 大阪大学 大学院情報科学研究科 教授 渡辺 尚 氏 ・「局地気象観測に適した高性能Xバンド小型気象レーダーの開発」 古野電気株式会社 舶用機器事業部 システムソリューション部 ソリューション開発課 主任 廣瀬 孝睦 氏 ・「無線式列車制御システムの実現に向けて」 西日本旅客鉄道株式会社 鉄道本部 技術開発部 担当課長 列車制御システム PT(信号通信) 森 崇 氏 ○Facebook、運用中です htt s // facebook com/kicc.ict − 35 −
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