FEM を用いたソーラーカー用フレームの構造設計

FEM を用いたソーラーカー用フレームの構造設計
○山部 昌 (正 金沢工業大学)
○小森 昌宏(学 金沢工業大学大学院)
1.緒言
ソーラーカーの消費電力は,搭載する太陽電池やモー
ターなど電気部品の効率と,「転がり抵抗,空気抵抗,勾配
抵抗,加速抵抗」の4つの走行抵抗が走行時に影響してい
る.車体質量低減は「転がり」「勾配」「加速」抵抗の係
数であり,走行抵抗低減に大きく寄与する.そこでソー
ラーカーを構成する部品の中で,カウルに次いで質量が
大きいフレームの軽量化を考えた.
ソーラーカーで使用されるフレームに,「パイプフレ
ーム構造」と「モノコック構造」がある.昨年度,夢考房
ソーラーカープロジェクトが製作したソーラーカーは
前者で,アルミニウム合金(7N01)の角管を溶接し組み
上げた構造となっており,質量は14k[kg]である.後者の
「モノコック構造」は競技用車両に採用例が多く軽量
で高い剛性が得られる事から,主構造材にCFRPハニカ
ムサンドイッチ板を用いたものが多い.パイプフレーム
構造と比較した場合,モノコック構造は複設計が難しく
材料費も高いが,パイプフレーム以上の軽量化や剛性が
期待できる.そこで構造解析ソフトを用いて,モノコッ
クフレームをモデル化し,軽量化と走行に影響のでない
剛性を保持できるか検討を行う.
2.解析
2.1. 解析要素
本研究では「CFRP(炭素繊維強化プラスチック)」
で「ノーメックスハニカムコア」を挟んだ構造(図 1)
を持つパネルを用い,このパネルをバスタブ状に成形
した「モノコック」構造を想定した.このパネルは板形
状などの場合,アルミ材料に対して同質量の場合,曲げ
剛性が高く,面全体で荷重が分布するモノコック構造
に適していると考えられる.
今回用いた有限要素解析ソフト ANSYS 用では,節点
あたり 6 自由度を持つ,3 次元 8 節点シェル要素で,板厚
と 板 幅 の比が 10 以 上の 板 構 造をモ デ ル 化でき る
SHELL99 要素を用いた.この要素は 積層材料の層ご
とに異なる材料特性 を設定でき CFRP ハニカムコア
のモデル化に適切であると考えられる.
日本設計工学会 2007 年度春季研究発表講演会(2007 年 6 月 30 日)
CFRP
0.25mm
ハニカム
19.05mm
図 1. CFRP ハニカムコアパネルの構成
2.2. 材料定義
CFRP とハニカムの材料特性は共に直交異方性であ
る.表面材である CFRP は,平織り材(表面に直交する
ように炭素繊維が織り込んである)であるため,表 1 に
示すような,各方向にヤング率とポアソン比が異なる.
データは宇宙航空研究開発機構が保有するデータベー
スから「T300/EP#3631」の引張り試験結果を入力し
た.
ハニカム層は板厚方向(X,Y 方向)に対して,ハニカ
ムのみを圧縮試験した結果を使用した (2).また,板厚方
向と直交する方向(Z 方向)に対しては,表面材を用い
た圧縮試験の結果を用いた.
解析に用いた材料特性を表1に示す.
表 1. 材料特性
CFRP
ハニカムコア
EXX
MPa
65300
20
縦弾性係数
EYY
MPa
65300
20
MPa
16000
50
EZZ
γXX
0.34
0.33
ポアソン比
γYY
0.34
0.33
0.1
0.33
γZZ
GXY
MPa
49470
15
せん断弾性率*
GXZ
MPa
12121
15
MPa
12121
37
GYZ
*せん断弾性率 G は以下の式から算出した.
G
=
E
2 (1 − γ )
ここで E:ヤング率(MPa)
(1)
γ:ポアソン比(-)
2.3. 曲げ解析
3 点曲げ試験を再現した解析を行った結果,有限要素
法と計算で算出した.たわみ量は大差がなく,この要素
を用いてモノコックフレームの解析を行った.
たわみ量ωは以下式で求めた.
表 5. フレームの解析結果
相当応力
MPa
66
変位量
mm
4
P・ l 3
(2)
48・EI
ここで P:曲げ荷重(N) l:標点間距離(m)
ω=
ここで,曲げ剛性 EI は,コア材が曲げ荷重を受けないも
のとする,サンドイッチ材の断面二次モーメントを用
いた.
EI =
{ (
b
E f h 3 − t c3
12
)}
(3)
Ef:炭素繊維のヤング率
h:パネルの幅 tc:ハニカム層の幅
図 5.フレームの解析結果
図5から応力・変位は前輪の拘束点で最大を示した.
応力は CFRP の破壊強さの 536MPa(3)の 8 分の 1 であ
った.
3.まとめ
図 2.曲げ試験の結果
2.4. フレームの解析
曲げ解析で得た材料特性を用いてバスタブ状のモノコ
ックフレームのモデルを作製した.
条件として,ソーラーカーが旋回に入る時の解析を
行った.
最大荷重値を求めるため,タイヤと路面の摩擦係数を 1
とし,旋回時の重心遠心力に,釣り合うタイヤの摩擦力
を,前輪左側のサスペンション取付点に加えた(表 2).
前輪右側と後輪のサスペンション取付点は,サスペン
ション形式に見合った,拘束条件とした.
1,積層板専用の解析要素を用いて,CFRP ハニカムサン
ドイッチ板のモデルを作成し,バスタブ形状のモノ
コックフレームをモデル化し解析を行った.
2,複合材料を使用したモノコックフレームはアルミニ
ウム合金を使用したパイプフレームより軽量である
ことが分かった.
3,解析結果から変位量 4mm が他部品に与える影響と
ハニカムの変形による破壊予測が必要である.
以上の事から,構造材に複合材料を利用すると大き
な効果が得られる事がわかった.今後は
・ 複合材料の試験を行い,破壊の様子を観察する
・ 実走行に近い解析条件を求める
表 2.前輪左側サスペンション取付点に加えた荷重
アッパー
ブラケット
ロアーブ
ラケット
ショックア
ブソーバ
1
2
3
4
5
6
X(N)
-131.6
119.7
-179.2
179.2
0
0
Y(N)
-115.0
-207.4
-402.5
-452.9
-187.0
-252.4
Z(N)
0
0
0
0
613.1
0
この条件で解析を行った.結果を図 5 と表5に示す.
4.参考文献
1) 中西 伸行「ソーラーカーの車両運動性能に関
する研究」 自動車技術会秋季大会前刷集 2005
2) 佐藤 孝 「ハニカム構造材料の応用技術(上
巻)-設計と製造-」 株式会社シズク 1985 年
p278
3) 宇宙航空研究開発機構:http://www.jaxa-acdb.
com/Index.php?t=1162450138&JAXASS=tng9c07
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