長い冬の間憧れ夢見ていた南の島に行く

長い冬の間憧れ夢見ていた南の島に行く
福島 資剛
2013年4月3日(水)旅行準備
聴診器を耳から外しながら、じゃあ、次の予約は5月1日、11時半で良い
ですか?ハイ、よろしくお願いいたします。次は血液検査もやりますからね、
おだいじに!ありがとうございます、ああ、先生、このところちょっと風邪気
味でしてね、風邪薬を処方してもらえませんかね?どんな具合なんですか?咳
が止らなく痰が切れなくて微熱も続いているんですけれど・・・。
再び胸に聴診器を当てながら、じゃあ、3日分も処方しておきますか?ありが
とうございます、えぇと実は先生、土曜日から外国の方に行かなければならな
くて・・。どちらにお出かけですか?ちょっとインドネシアの方に・・・。そ
りゃ大変だ、で、長いんですか?ええ、まあ、ちょっと。じゃあ、2週間分も
出しときましょうかね、向こうじゃ大変だろうから。開業してからの先生は患
者のいうことを何でも聞いてくれる、営業成績を上げるためなのか?ありがと
うございます、抗生物質も入っていますか?勿論!
ちょっとお待ち下さいね、今、
「たけなか医院」のほうに確認を取っていますからね、と「大
沢薬局」の薬剤師。どうしてですか?なにしろ抗生物質が2週間分も処方されていますの
でね、何かの間違いじゃぁないかと思いましてね。ああ、それはそれでいいんです、実は
この週末から外国の方へ出かけることになっていますのでね・・どうも後ろめたかったり
都合の悪い問い合わせには、○○の方へとか○○の方にとかが言葉尻に混じってしまうよ
うだ。
どちらの方へおでかけですか?あなたは○○の方へは言わなくてもいいんです
よと言いたい気持ちを抑えながら、ええ、ちょっとインドネシアの方へ・・・・。
そりゃ大変だ、直ぐに処方しますからね、ちょっとお待ち下さい、で、インド
ネシアの方へは長いんですか?ええ、ちょっとね!
9日間のインドネシア旅行が長いのか短いのかは人の感じ方によりけりだ、も
っとも私にとってはもう少し長いほうがよく、これじゃ少し短いと思う気持ち
が○○の方へとかの曖昧な言葉にあらわれているのかもしれないのだが・・。
それにしてもこの辺の田舎では循環器の名医様でも処方薬局の大将でもインド
ネシアと聞けば即座に未開のジャングルを想像してしまうらしく、そりゃ大変
だ、で、長いんですか?ということになってしまうようだ、バリ島に遊びに行
くと言わなかったのは大正解なのかもしれない。
とにかく抗生物質は計画通り手に入ることになった、これでひと安心だ、泳
ぎ過ぎたり歩きすぎたり飲みすぎたりで発熱したとしても何とか対処できる。
-1-
外国に旅行中に医者に罹るとなるとなにかと厄介だ、そこで「出かける前に必
要と思われる薬を医師に処方してもらい調達しなさい」とカミさんに申し付け
られている、昨年などは抗菌目薬を3本も処方してもらっている、それがまだ
2本半も冷蔵庫の中で眠っていてインドネシアの方への出発を待っている。
薬品の準備は整った、泳ぎの不得意なカミさんのための「浮く水着も」ネッ
ト通販で仕込み済みだし、現地の安くて旨いと評判のWarung(食堂)や
レストランのリストアップもネットからプリントアウトして終わっている、心
はもはやバリ島の青空にある。後は出発日を待つばかりなのだが、好事魔多し、
何の因果かこの週末は台風並みの低気圧が関東近辺に接近するようで果たして
当日にフライトがあるのかどうなのかそれだけが気がかりだ。
それに加えて頭の痛くなるようなことがもうひとつある、アベノミクスの悪
影響でこのところ急激な円安が進んでいて、2月初めに今回の旅行を予約した
時点でのレートより1ドルが20円近く安くなってしまっている、なけなしの
小遣いを叩いての節約旅行、まったく迷惑なことだ。なにしろTAKSIの初
乗りが5000Rp(五千ルピア=50円)という安い島なのだ、そこで20
円の差額は安年金の懐にかなりの打撃を与えることになってしまう、まった
く!頼むよ安倍君!!
4月6日(土)成田
今回は袖山君夫妻と話し合いの結果、シンガポールで余分なトランジットの
ある名古屋からではなく直行便のある成田から出発しようということになって
いる。
日航とか全日空ホテルには宿泊したことがあるのだが「東横イン成田」は初
めてだ。名古屋は信州から近いこともあって最近では海外に出かけるとき袖山
君同様セントレアを利用することが多く四人ともそこでの東横インの会員にな
っていることもあって迷わず東横イン成田に前泊の予約を入れてある。
エントランスでトランクなどを降ろしてから駐車場に車を回したのだが、成
田の平野からホテルのビルを回りこみ吹き込む風は激しく吹き荒れ、夢が一杯
に詰まった重いトランクが手を離すと移動してしまうほどで低気圧接近の予兆
を見せている。駐車場は建物を回りこんだ裏に広々としてあり面倒くさいカー
ド式ではなく昔懐かしい宿泊証明書を車のフロントグラスにただ置くだけの仕
掛けになっていてカードの保管などの面倒がなく助かる。ホテルフロントで年
数が経っている会員証を新しくしてもらい二年くらいの間に溜まっていたポイ
ントを合わせ宿泊料金を支払う、支払いは二人分でなんとわずか千円ポッキリ、
駐車料金も10日間240時間まで無料だ、儲け儲け!
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とりあえず部屋に落ち着く、新築のセントレアのホテルと異なり少しくたび
れかけてきているのだが想像してた以上に部屋が広くエコノミーダブルも悪く
ない。画一的な建て方の多い東横インにしては珍しく、伊豆の伊東園方式で何
処かのホテルを接収したのではないかと思われるくらいの広い間取りでこれな
らばまずまずだ。タバコを2本立て続けに吸ってから成田在住の「渡辺氏」に
電話する、時間は午後3時15分、待ちかねていたように2回の呼び出し音で
彼の声。
今晩の夕食は渡辺氏のお奨めの店で摂ることになっている。
渡辺氏は20年来の姫木平別荘地での飲み仲間、40代初頭の昨年春、成田
に開業した新進気鋭の小児科医、私と渡辺ドクターとの間には、一昨年、姫木
平にある渡辺家の別荘を処分する際に、
「解体してさら地にするならば、欲しい
方がおりますのでその方に権利を委譲したら如何ですか」と私が仲立ちをして
処分者と新入居者との双方に得があるように知恵を絞ったいきさつがある。買
い手のない別荘を解体して処分するには数百万単位の費用がかかる、また、新
たに土地を購入する側にも数百万単位の費用がかかる、それならばまだまだ使
える建物駐車場などが残り、間に不動産屋などの介在がなく司法書士代金など
権利の委譲費用のみ新入居者負担で双方が得をしたらいかがかと・・
叩きつけるような雨の中タクシーを呼んでもらい指定された成田駅近くの小
洒落たフランス料理のレストランバーに到着、袖山君夫妻とカミさん私4人で
生ビールを飲みながら渡辺ドクターの到着を待つ、やがて彼が到着、ワインの
栓が次々と切られ料理が運ばれ夜が深まっていく・・
次の店は私に仕切らせて下さいとドクターご推奨の「時代に取り残されたよう
な小さなバー」に。このカウンターに独り座り、グラスを傾けていると心が落
ち着くんです、私のシークレットスポットなんです・・・病院勤務時代の苦労
話がホロリとこぼれ落ちる・・・そして 5 人のカクテルのグラスが次々と代り
成田の夜は更けていく・・・
しかし、どうにも許せない!10日も休んで南の島へ行くなんて、絶対許せな
い!10日も!10 日もですよ!酔いの回ってきたドクター、テンションが高く
なる、10日じゃないよたったの9日だよ、キミにはまだ30年早いよ!まあ
せいぜい働いて世のため人のためになったら良いジャンとこれまた酔いの回っ
たバッカスどもの応酬。
店の外では風雨が荒れ狂っている、果たして明日は飛ぶのかなあ?頼むぜ、
天空の神ガルーダ!
-3-
4月7日(日)旅立ち
夜来の激しい雨は止んだようなのだが風は一向に治まる気配を見せず窓から
見える並木の木立ちを踊らせている。飲み過ぎの重い頭で考える、今日飛ばな
いで明日の出発になってしまったらどうしよう、もう一晩成田で飲まなきゃな
らないな。それにしても昨日は散財したようだねママ、タクシー代だけでも7
千円近くも払ったようだよ、マア、良いじゃん!楽しかったんだから、もう既
にヴァカンスのスイッチが入ってしまったような普段はしまり屋のカミさん。
とりあえず出発の準備をしてから、1階フロント脇にしつらえられた朝食会場
に行く。袖山君夫妻はもう朝食を食べ終わったようでお茶を飲みながら我々の
到着を待っていてくれた。セントレアのオニギリと異なってここではちゃんと
ご飯茶碗が用意されていておかずの品揃えもまあまあだ。ちゃんとした朝御飯
じゃんと満足げなカミさん。
9時、第1出発ロビーでチェックイン、今回依頼した旅行社HISのカウンタ
ーなどは特に用意されていなく直接ガルーダインドネシア航空のカウンターで
Eチケットを見せ搭乗手続きをし、インドネシア入国ビザを購入する、25ド
ル。
手荷物検査ボディチェックが済み出国手続きが終わるとカミさん早速ビールを
買い込んで飲んでいる、元気元気!この元気一杯のカミさんを眺めるのが私に
とっての日頃の罪滅ぼし。袖山君の搭乗券と合わせて4カートンのタバコを免
税店で購入し機内に持ち込む、1箱あたり150円で購入、普段は260円の
税金を払っていることになる、私は国家にとっての貴重な高額納税者なのだ。
カミさんも袖奥の搭乗券を使用してタバコを買い求めていたようだ。帰りもま
たお願いしよう!
10時半機内に乗り込んだのだがそこからが長かった、定刻の11時はおろ
か12時を過ぎても動き出す気配がない、やはり低気圧の影響か?停まってい
るのに風にあおられ機体が揺れる、果たして飛ぶだろうか?待たされている間
に心配の種が徐々に芽をふいてくる、たとえ飛んだにしてもこの低気圧を無事
切り抜けられるだろうか?なにしろ以前は世界ワースト10航空会社に名を連
ねていたガルーダである、幸にして今回の飛行機は以前の引退間際のジャンボ
と異なって20数年と比較的製造年度が新しいA-300だ、運を天の神ガル
ーダに任すしかなさそうだ。
いい加減座り過ぎて尻が痛くなった12時30分頃機体が動き始めた、どうや
ら離陸許可がおりたようだ、加速していく機体が風にあおられ上下に揺れる、
離陸!それ行け!やれ行け!舞い上がれ!水平飛行になるまでの不安定さ、生
きた心地がしない、やがて・・・水平飛行で安定・・ゆとりが出来て・・それ
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までの心配はどこに・・時計の針を1時間遅らせる。この分だとデンパサール
到着は現地時間19時、ホテル到着は20時、夕食は21時頃になってしまう
なあ、ワインでも飲んで時間が経つのを待つしかないか?
機内で配られた昼食前に飲んだワインが昨晩の酔いを掘り起こしてしまった
ようでうとうとしてしまった。時計を見るとまだ16時、通路を行き来する客
室乗務員のサロンケバヤスタイルのバティックに包まれた腰の線が妙に艶めか
しい、いかん、いかん、まだ酔いが醒めていないようだ、しかしどうして南の
島の女性たちの腰の線はあんなにも艶めかしいのだろう、やっぱりあの衣装の
せいだろうか?あの長い髪の毛はどうやってまとめてあのヘアスタイルにする
のだろうか?ゴーギャンがタヒチに求めていた楽園がなんとなく分かるような
気がする、彼も長い旅の間中、タヒチにいる間中飲み続けていたのかなあ?そ
れにひきかえ通路を闊歩する短パン姿の我が日本女性の腰の線脚の線の貧弱さ、
和服を着れば変わるのだろうか?艶かしい柳腰が浮かんでくる、いかん、こり
ゃまだ酔いがさめてないな、などと思いながらまた眠りに落ちる。
20時トランクをカートに積み込んで現地ガイドと合流、予定より2時間半
近くも遅れている。三年前から始まっている空港改修工事はまだまだ終わって
いなく、これはいつになったら完成するのだろう?さすがインドネシア、さす
が南の楽園、ああ、また今年もここに帰ってこれたなあと変な安堵感が沸いて
くる。ホテル「Bali Hyatt」に向かう車には我々4人と20代後半
の日本人女性が二人、彼女等は3泊5日の強行軍、ホテルに到着するのを待つ
間に彼女等のスケジュールを漏れ聞いてびっくり、滞在中の毎日が予定でびっ
しり詰まってしまっている、早朝からシュノーケリング体験をして、午後は観
光ツアー、夜はエステツアー、翌日朝からサーフィン体験をしてまた観光ツア
ーをして、夜はまたエステツアー・・・
叔父様たち明日は?さあ、朝ご飯が終わったらプールで本でも読んでどこかに
昼飯に出かけ、ビーチでマッサージ、夜はまた何処かのレストランで飲んで・・・
いつまで滞在するんですか?8日間かなあ、何回目のバリなんですか?さあ、
9回目か10回目か・・カジノはありますか?エッ!このスケジュールでまだ
博打?あきれてしまった。早朝から深夜までの過密スケジュールのせいかその
後彼女等が帰国するまで遂に一度もホテル内で顔を合わせることがなかった。
忙しい!忙しい!日本人は忙しい。
昨年の残りのRp(ルピア)が100万ほどあるのだが念のために両替をす
ることにしてとりあえず3万円をRpと交換する。ホテルの今日のレートは2
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85万Rpで昨年より15万Rp(千五百円)ほど低い、まったく!安倍晋三
め!昨年は袖山君300万Rpを持ってこんな多額紙幣持ったことがないと興
奮していたのだが・・・
とりあえず部屋にトランクを置いたらそのまま夕食に出かけようということに
なった。部屋は事前にHISのお嬢さんに連絡をして足腰の不自由な人間が2
人もいると大袈裟に騒ぎ立てロビーにほど近い部屋を用意してもらってある筈
だ。なにしろ馬鹿っ広いホテルの敷地、昨年はエントランスまでの距離3~4
00メートルの部屋で何かと難儀をした、駄目だったら車椅子でも借りようか、
話が現地と通じているかどうかが心配だったのだが、案ずることなく一番近い
棟の部屋に案内され、やったぜ!話がちゃんと通じていたぜ!トランクを運搬
してきたベルボーイに5千RP(50円)のチップ、彼、にこやかにテレマカ
シーとバリスマイル。と、ここまでは良かったのだが、次の瞬間にゴロゴロゴ
ロ、ピカッ!!広いホテルのオープン回廊に吹き込むほどの猛烈なスコール、
こりゃいかんと部屋に用意されている大振りな傘を持参のお出かけとなる。
段々良くなる法華の太鼓、台風並みの低気圧、大幅な到着時間の遅れ、突然
のスコール、しかし何とかバリには着いたのだ、運の悪いのもここまでだろう、
そう多寡をくくってTAKSIに乗り込んだのだが悪運はまだまだ続く、数年
前から行こう行こうと考えていたWARUNG WAPO KKN、イカンバ
カール(焼き魚・海鮮)で旅行者に有名なこのお店、到着時間が遅かったこと
もあって冷えたビールはおろかぬるいビールまでもが売り切れ、ジュースとテ
ィーでの惨めな初日の晩餐、3人の悲嘆の声非難の眼がきつい。おまけに一年
ぶりのバリ語と英語のチャンプル、言葉の疎通が欠け出てきた料理のすべてが
チリソース、惨めで申し訳なさが先に立ち部屋に帰って飲む酒もそこそこに布
団を頭から被り大鼾、長い長い初日の夜が更けて・・
4月8日(月)~12(金)
*食料計画
今回の旅の間中の食事に関しては朝食を除きすべてが私に一任されている。
つまりはこの私が食料計画の責任者ということだ。食料計画を立てるというこ
とは行動計画をも含むということになり責任重大なのだ。例えば到着二日目の
昼飯は多分現地で必要な酒・ビール・水・Tシャツ・水着など買い物などがあ
るだろうからスーパーマーケット近くの旨くて安いと評判のWARUNG(食
堂)でというように。夕食に関していえば、二日目の晩4月8日は我が夫婦の
結婚記念日でもあるのでちょっと張り込んで、着替えをして出かけるような洒
落たイタリアンレストラン。四日目あたりではナイトマーケット見物を積年の
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念願としている袖奥の意を汲んでデンパサールのナイトマーケット近くの韓国
焼肉のお店で、その他は日替わりで和洋中韓印取り混ぜて・・
総じて言えば昼食にはそれほど金をかけないで旨くて安くて評判の良いWA
RUNG(食堂)が中心で、夕食はバティックや更紗に着替えちょっと気取っ
て南国ムード漂うレストランでということになる。ありがたいことに脊柱間狭
窄症に苦しんでいる袖山君がいるおかげで全てのお出かけがTAKSIになっ
ても良いとのお墨付きをいただいていることだ、なにしろここは南緯10度の
熱帯の島、少し歩いただけでも汗が噴出す島、それに我らが滞在するサヌール
近辺のWARUNG・レストランへのタクシー代がこれまた信じられないほど
安く大体の行動範囲がデンパサール遠征など遠出を除けば70円から150円
の支払いで済んでしまう、つまり一人当たり20円から40円ということだ。
7000Rp,15000Rpなどとメーターを見るとびっくりしてしまうの
だが冷静に0を二つとって判断すれば、なぁんだ!ということになる。また、
腰の悪い袖山君には狭くて乗り降りが無理なのだがもうひとつ便利な交通手段
がある、
「ベモ」と称する乗り合い軽自動車だ、このオープンワンボックス、サ
ヌールの街の端から端までの間目抜き通りをひっきりなしに走っていて横向き
(縦置き?)のベンチシートなのだが客席のドアがなくどこでも乗り降り自由
で乗車賃が一律3000Rp(30円)、実際に袖山君と別行動でマッサージに
行く時などには何度か利用させてもらったのだがローカル風情があってこれが
また楽しい。
*朝食
バリ島の一流ホテルのエントランス・レストランなどはどんなに大きな建物
でもほとんどが屋根が架かっているだけで窓や扉がなく吹き抜けの天井の物凄
く高いリゾート風の建物だ。高い天井のあちこちに大きなファンが回っていて
ほとんど外の暑さを感じさせない。早起きの袖山家とは大体20分から40分
遅れでレストランに行く、客室から庭園から何箇所かある入り口にはサロンケ
バヤスタイルのバティックを纏った可愛いお嬢さんが胸に両手を合わせサラ
マ・パギ(おはようございます)と我々を迎えいれてくれテーブルに案内をし
てくれる、我々がテーブルに着くころには他の日本人客はもう既に観光やゴル
フに出発しているか食事が終わり帰っていくところでのんびり休暇を楽しんで
いる欧米人が主体だ。
コーヒー紅茶のサービスを楽しんでからおもむろにエッグサービスのコーナ
ーにおもむきオムレツを注文する、中身はチーズ・オニオン・パプリカ・トマ
ト・ハム・マッシュルーム・唐辛子などを指差し指定、温められた皿にベーコ
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ン・ソーセージ・焼きポテト・焼きトマトなどを盛り付けてから戻ってくると
オムレツの完成だ。フレッシュジュースを飲みながらゆっくりとオムレツの皿
を空にする、パンのコーナーに行きその日の気分でパンケーキを焼いてもらう
かワッフルを焼いてもらう、バターを塗りメープルシロップをかけイチゴのジ
ャムをのせる、大体そこでお腹が一杯になってくるのだが、それからが私のバ
リ島における健康管理のメインイベント、西瓜・パパイヤ・マンゴー・バナナ・
メロン・パインなど果物を家にいるときの白米の代りにと時間を掛け大量に食
べる、これが大体決まった毎日の朝食だ、ミーゴレン(インドネシア風焼きそ
ば)やナシゴレン(チャーハン)もあるのだが、これは昼食・夕食の楽しみの
ために食べずに我慢をする。
ここで今回利用したサヌール近辺のWARUNG・レストランを披露するこ
とにしよう。尚、もっと詳しく知りたい方はネットでどうぞ!
* 昼食
4/8:Warung NASI
サヌールの目抜き通りの中心、スーパーマーケットHardysからHyat
tに戻る途中一本目の右路地奥にある。一見すると何でもないような普通の民
家なのだがかまわず門の中に入るとオープンの屋根の下に3~4卓のテーブル
があり食堂だということが分かる。
「ナシチャンプル」、フウユンハイその他料理を腹一杯食べて四人で10%のタ
ックス込みで1800円。TAKSI片道50円。
冷えたビンタンビール大瓶4本をマイナスすると一人当たり170円くらい。
味もまずまずで足元にバリでは神の使いである猫が擦り寄ってくるのがローカ
ル風情、買い物のついでに寄ってみよう。★★★
4/9:Warung CUMI
チュミはバリ語でイカ、つまりイカ食堂。
Hyattの2キロ西方にあるのだが去年歩いて汗はかくわ足は痛くなるわで
大失敗、袖山君脊柱間狭窄症発症の地。ケチらずTAKSIを使おう、と言っ
てもわずか120円くらい。旅行者に人気のあるWarung Kurisy
na前で下車しその店には入らずその一軒手前の三つ角にあるのが目的の店。
雑貨屋のようなたたずまいで注意してみないと食堂であることが判らないくら
いなのだが味は抜群で袖山家お気に入りの店。
「ラワールナシチャンプル」これ一品でもう充分、お母ちゃんが作る家庭料理
なのだが、盛り付けられてるイカ・海老・たらこ・小魚などはその日の朝お父
-8-
ちゃんが漁をしてくる、ラワールは他では味わえないイカ墨で真っ黒で美味。
盛り付けられたものすべてが旨いのだが、冬瓜が入り魚の頭の出汁がきいた辛
いスープがこれまた抜群、エッツ!これで110円?!大丈夫なのかよと心配
になってしまうほどの隠れた美味の店、お代わりしたくなるような店、実際に
昨年袖奥はスープだけだがお代わりをしてお母ちゃん大喜び、本物のバリ家庭
料理が味わえる。
但しビールは2本しか冷えていなくて3本目からはお向かいのココナツ屋さん
の冷蔵庫から運んでくる、暑い中の往復が申し訳ないので2本づつ頼もう。
交差点の角に面しているのでひっきりなしに通るバイクの音がうるさいのだが
ビールを飲んでいる間に気にならなくなってしまう。決して綺麗な店とはいえ
ず最初は尻込みしてしまうような店だがとにかく料理は美味。トイレはバリス
タイルなので慣れない方はホテルに戻ってから用を足そう。食卓頭上の天井に
張り付いて暑さのためかじっと動かないでいるヤモリが数匹、これがまたロー
カル風情があってよろしい。★★★★
4/10:Warung Komilfo
ホテルHyattのプライベートビーチの遊歩道を右に行き一本目の角。
ヘミングウエイのような白人のお爺ちゃんが気だるく海を眺めながらビールを
飲んでいるのが似合う店。しかしビーチに面しているので観光値段で他のWA
RUNGの三倍くらいの値段。ナシチャンプル・クラブサンドイッチなどメニ
ュウは多彩。ビンタンビールは300円くらいでやはり他より100円以上高
い。近くて便利なのでプールサイドから水着のまま行けて、袖山家は今回2度
の食事をしたようだ。黒い犬が私になついて足元に寄り添ってくれる毎年通う
店。暑さのためか朝飯を腹一杯食ったせいかそれとも路地の斜め前のマッサー
ジ店が気になるのか何故かここに行くとあまり食欲が進まない。私は★★なの
だが、さて袖山君の評価はいかに・・
4/11:Warung Mie88
最近新しく出来たお店なのでサヌールの観光地図にはまだ載っていない。所番
地しか分からずHyattの西向かいくらいのバイパス沿いにあると思えるの
だが、バイパスに交差点・信号がなくUターンできる所が限られてしまうので
北から回っても南から回っても同じくらいのTAKSI料金がかかってしまう、
といっても130円か140円、歩けば近いと思えるのだが馬鹿な冒険はやめ
たほうが良い、帰りはこのあたりに詳しい運ちゃんがショートカットを選びワ
ンメーターちょっとで帰ってきてしまった。
Mieは麺のこと、クタ周辺を中心としてチェーン展開をする人気ヌードルシ
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ョップ。メニューは多彩で値段も手ごろ、禁煙だが冷房の効いた店内での食事
は味も良く清潔で爽やかで中華料理の好きな袖山家はことのほか気に入ってし
まい最終日出発時間までの待ち時間兼夕食に使おうということにまでなってし
まった。看板メニュー「Mie88 Special」は肉団子とワンタン入
りスープ付きで中々な味、バリ料理に飽きてきた頃に行くのが丁度良いと思わ
れる。これならば高いTAKSI代を使って空港近くのカミさんお気に入りの
これまた料金の高い高級中華料理店Devi Sulliまで出かけなくても
良いなとみんなで納得。デザートに果物など色とりどり山盛りのかき氷を食べ
たのだが腹を壊すこともなかったので安心してお奨めできる店。★★★★
4/12:「ごん太」
この日は袖山家は買い物、我が軍はマッサージとそれぞれの思惑が異なるので
別行動、私たちは午前中サヌールの北のはずれにあるマッサージ店に行きその
帰りにベモに乗りスーパーマーケットHardys前で降り、ひょっとして袖
山家がいたりしてなどと言いながらラーメンショップ「ごん太」の暖簾をくぐ
ると案にたがわず丁度麺を一口啜る袖山君、やっぱりねとお互いに大笑い。昨
年熱い麺で大汗をかき懲りていたので今回はつけ麺、これが大正解あまりコシ
のない麺でも洗い冷やせば少しはコシも強くなる。以後はここでの注文はこれ
に限ると決めた。カミさんはここでの好物の冷やし中華。
ここの経営者の親父さん、勿論日本の方で、定年退職後バリ島に移住して7年
目、大体我々と同じ年代と推察できる、今では「ごん太2号店」を同じサヌー
ルに出店するまでになっている。良いですねえ、南の島に一年中いられて、と
羨ましがると、なあに良かったのは最初の2年、夏ばかりで乾季と雨季、乾季
と雨季の繰り返し、四季の移り変わりがなくて寂しいという自嘲めいたお返事、
今では年に数回日本に帰ると言う。いたずらっ子、やんちゃ坊主などを連想さ
せる店の名前から推察するに出身は関西とお見受けした、そんな「ごん太」を
してまで開いたお店でもやはり常夏続きでは飽きてしまうらしい、それにひき
かえ同じごん太をしてまで姫木で24年の歳月を送っている我が身は・・やは
り四季の移り変わりの変化を楽しんでいるということなのか。この日は親父は
不在で数人の従業員任せ、ひょっとして日本に帰っていたりして。ラーメンが
一杯4~500円は日本の値段と比べると少しは安いのだが地元の人たちには
高嶺の花、観光客それも日本人の来店を見越してつけた値段なのか。★★★
4/13:この日は帰り支度などがあるので外食休養日
我福島家はホテルのプールサイドでクラブサンドイッチとビールの出前。サン
ドイッチのバスケットには山盛りのポテトスティック・ピクルスなどが添えら
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れていて味はさすがと思わせるのだが、昨年2人前を注文して食べきれず懲り
てしまったので今回は一人前を二人で分け合ってちょうどの量。料金はビール
も含めて1600円くらいでそれに25%の税金サービス料が上乗せされる、
Hyattにしては安いのだが、缶ビールをそのまま持ってくるのが気に入ら
ない。保冷をする入れ物には入っているのだがジョッキも持ってこなくて缶か
ら直接飲まなければならない、街で買えば90円くらいの缶ビールをそのまま
6倍の値段で売っている、もう少し気を使ったらどうかと思ってしまう。以前
泊まっていたMelia Baliでは冷えたジョッキでドラフトビールを持
って来てくれている。サヌールとヌサドゥアの違いか?★★★
袖山家は一昨日食べたビーチサイドのKomilfoに行ったと聞いた。
食べ物の話ばかりが続いて申し訳ないので、ここでちょっと中休み。マッサー
ジの話をすることにしよう。若者たちやオバハンたちは洒落てエステなどとノ
タマッテいるのだが、ここはやはりおじん流でマッサージということで。
元来、運動選手でも何でもない私はマッサージなどはあまり好きではない、他
人に身体を摩られるなどあまり気持ちの良いものではないと思っていた。あれ
はゴジラやイチローなど一流どころの運動選手が筋肉をほぐすために必要であ
って、運動や肩こりや脚の痛みなど無縁だった私には関係のない世界の話だと
思っていて、戯れに温泉場で怪しいお嬢さんに身体を摩られても高い料金をと
られモヤモヤした気分になるばかりで一向に気持ち良くならない。しかし、近
頃では日本のお嬢さんオバハンどもがエステと称して韓国やタイやバリ島に飛
来し、それも自分ではお店を探す勇気もないのかガイド付きで4~5000円
の大枚を叩いてエステに通うのだという、それでも彼女等に言わせると日本に
比べれば数分の一の安さで少しは綺麗になったような気分にさせてくれるのだ
という。上海でもツアーガイドが連れて行くと大体の相場が4000円、街を
歩いていると8元(120円)12元(180円)の看板がズラリと並んでい
る、まったく!日本良い国強い国。
以前泊まっていたMelia Baliでも専用のエステハウスが広い庭園に
点在していて中々の繁盛振りを見せていた。それでもあれは私にはまったく無
縁の世界のことだと思っていたのだ。ところがだ昨年の冬、腰を痛めてから少
し弱気になっていてバリ島に来てこれでも何かの足しになると思いビーチのマ
ッサージハウスでオイルマッサージを受けてみた、これがなかなか気持ちが良
く1000円を800円に値切ったこともありそれ以来病み付きになってしま
ったのだ。800円とは日本で外出するときの昼飯1回分の料金だ、これは安
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いじゃん、ということになってしまった。ところがだ、興味を持つということ
は恐ろしいもので冬の間にバリ島サヌール周辺のマッサージ店をネットで検索
してみると、あるわあるわ掃いて捨てるほどの情報が集まってしまった。大体
が全身マッサージ1時間で600円くらい、何だあれは、ビーチのマッサージ
の800円は何なのだ、おのぼりさんの観光客じゃあるまいし相当ぼられてい
たことになるんじゃないか!それもビーチのマッサージは現地のオバハンども
こちらがバリ語が分からないのをいいことに大声で井戸端会議をしながら背中
や脚を撫で回してるだけじゃないか!ということで今回は調べまくった結果一
番評判の良いマッサージ店にカミさん共々出かける計画を立てたのだ。店の名
前はずばり「Good Massage」どうやら在バリの日本人の間でカリ
スマ的な技術を持つという噂のマッサージ師がいるらしい。
袖山家と別行動をとった日に出かけてみた、そのお店はサヌールの目抜き通り
の北のはずれにあるらしい、住所を書いた紙をTAKSIの運転手に渡すとO
K!OK!とうなずいた、しめしめこれは幸先が良い、すべてが順調と思った
のが大間違いでTAKSIは北のはずれを通り越しバイパスを渡って更に西の
方へと進もうとする、明らかに間違っている、間違えたフリをしている、こう
見えても俺は往年の山男、方向感覚だけには自信がある、NO!NO!バック!
バック!後ろを指差してあっちだあっちだと指示をする。バイパスを渡るため
にどんどん大回りをして結局北のはずれの広場に戻る、こりゃあ暇でインチキ
な運転手にいつまでも付き合っていられないとばかりにそこで車を捨てること
にした。
ネット載っていた道順を書いた書き手が悪かったのか、はたまた私の文章読解
力がないせいかそれからが大変だった。海に向かって歩くと書いてあるので海
岸まで500メートルの道を炎天下歩いたのだが目的のお店が見つからない、
飲み物を並べて売っているお店の親父さんに尋ねる、そんな店は知らない、だ
けどマッサージ屋はいっぱいあって全部がGood Massageだと笑う。
海岸から北の広場に戻る途中疲れてしまいもうどこでもイイヤとばかりにその
辺のお店に入ってマッサージを受ける、ミネラルウォーターが付いてやはり値
段は6万Rp(600円)。
一時間たっぷり揉んでもらっているうちに汗も収まり身体も楽になった。二人
分12万Rpを支払い何か冷たいものでも飲んでからTAKSIに乗ろうと思
い北の広場をHyatt方面に曲がった途端目の前にあった!写真で見た目的
の「Good Massage」の看板が!何のことはない、目の前をTAK
SIで2回も通っていたのだ。ヨシッ分かった!明後日は間違いなくここにこ
よう!
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最終日の午後「Good Massage」を訪れたのだが生憎とカリスママ
ッサージ師は留守、その代わりに力の強そうなお姐さんにノンオイルでたっぷ
り一時間揉みほぐして貰い身体をすっきりさせ帰国の途についた。4度のマッ
サージのせいかそれともすべてがTAKSIでの移動であったせいか、今回の
旅では足腰が痛くなることもなく腫れることもなく快適な旅をさせていただい
た、来年もまたよろしく!
さて、また本筋の食べ物の話に戻ろう。とにかく私にとっての旅の楽しみは食
べることにある。
* 夕食
4/7:Warung Wapo KKN
サヌールの繁華街の北はずれバイパスのマクドナルドの交差点をデンパサール
方面に進む左側にある。
到着した晩のことは前に述べているのでここでは省くことにする。IKAN
BAKARの看板が示すように魚料理がジンバランなどのビーチにある観光客
相手のレストランの四分の一ほどの値段で食べられるバリ在住者の間でも評判
の食堂。生簀の魚・海老・イカ・貝などを自分で選び調理の仕方を指示する、
値段はその魚などの重量によって決まる。塩焼き・チリソースなど調理の仕方
を選べるのだが大勢いる従業員たちは日本語も英語もあまり得意でないらしく、
こちらの意思が通じないと前述のようなチリソースばかりとなり失敗をする。
Ikan(魚)Garam(塩)Bakar(直火焼き)この三つの単語を覚
えていれば前述のようなミスを犯さないで済む。レジに「ヘジャーブ」を被っ
た女性が座っていたのでイスラムのお店であることが分かる。どうりで酒に対
してはまったく冷淡でビールも売切れてしまうと無くなってしまうようなのだ、
えっ!ビールがない?!?と4人で訊き直しても当たり前だというような態度
顔つきで無いと首を振る。次回訪れるときにはもう少し早い時間帯に行くこと
にしてGaramとBakarをメモにでもして持っていこう。★★★
4/8:Restaurant Kayu Manis
北のはずれマクドナルドの交差点に出る手前左側にある。評判の良い店のよう
でHyattからの利用客も多くTAKSIは道順の説明無しで直行してくれ
た。
本場イタリアで修行をしてきたシェフの作る創作イタリア料理が美味しくて近
頃とみに評判が高くなっているようだ。店内は清潔でセンスの良い内装とイン
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テリア、従業員の態度も笑顔は絶やさないのだがきびきびとしていて爽やか。
日替わりで出るらしい前菜も凝っていて見た目も味も美しく、スープ・サラダ・
パスタ・メイン・デザートどれを食べても美味しい。値段はHyattの三分
の二くらい一品が大体4~500円程度プラス10%のタックスで一人頭20
00円程度。人気があるので予約をしたほうが良いらしいのだが、この夜は丁
度激しいスコールの最中だったので客席の埋まり具合は6割程度、在住者らし
い欧米人の家族、日本人のカップルなどが車で乗り付けていた。最後にシェフ
が挨拶に来るところなども気がきいている。結婚記念日などを祝うのにお似合
いのお店、私は来年もまた訪れたいと思っている。★★★★★
4/9:Restaurant Telaga Naga
Hyatt直営の中華料理レストランなのだがホテルの敷地外道路を挟んで向
かい側にあり、正面エントランスから行くよりも部屋のある棟から星空を眺め
庭園を散歩しながら通用口の方へ歩くほうが早い。遊歩道の足元にはローソク
が置かれところどころに篝火が焚かれ道しるべとなり暗い夜でも安心して歩い
ていける。
この晩は火曜日、中華料理のディスカウントナイトで通常の二割引、一人16
万RP(1600円)で各種料理が食べ放題この謳い文句につられて決めてし
まったのだが、なんのことはない単に中華のバイキング、並べられている料理
は品数も少なく中身も薄くビールは小瓶、おまけに従業員の数のほうが料理の
数より多いくらいで料金が高く四人共口を揃え来年は絶対にやめよう!
池の上に浮かぶ見た目の良いあずまやに席を決めたので、私は無事だったのだ
が三人とも蚊に刺されたようで不平不満たらたら。翌々日の昼に行ったMie
88での食後、ここの方がTelaga Nagaより安くて美味しい!あれ
は雰囲気代だけだよね!!昨年もイタリアンレストラン2割引につられて失敗
している、チェックアウトのときに支払った金額が1万6千円で★★
4/10:居酒屋Kokoya
困ったときの和食頼み。この夜は本来ならデンパサールのクレネン市場の夜市
で遊び、安くて旨い韓国料理Milu Miluで夕食をとる予定でいたのだ
が、袖山君の腰の調子が悪く夜市歩きを断念。さて、どこにしようか?バリ料
理にも飽きてきた頃だし、いっぺんデンパサールまでの遠征を諦めてしまった
のでTAKSIに乗ってわざわざバイパス沿いの焼肉屋に行くのも億劫だし、
昨年食べてみんなの評判の良かったWarung Parahyanganも
イスラム系のバリ料理だし、困ってしまった。腰が悪く散歩も儘ならず運動不
足からかどうも袖山君食欲が落ちてきているようだ。
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Kokoyaはどうかね?冷奴で一杯ってのは!いいね!いいね!
Kokoyaはホテルの斜め向かい昨夜の中華レストランのすぐ北隣、昨年も
買い物の帰り道お新香でビールを飲んだり夕食を食べに行ったりしている。冷
奴につられて、あそこまでなら歩けると袖山君。
昨年の夕方、店の外に立って幼いが可愛い顔で客引きをしていたお嬢さんが今
年は立派に店内を仕切っている、日本語もかなり上達したようだ、これは別に
もう一人フロアーにいるオバサンのお腹が大きく膨らんでいるせいか?注文を
とりに来た可愛い彼女に口々に「冷奴!!」ところが生憎この日は豆腐が売り
切れで冷奴はおろか豆腐料理のすべてが駄目、それでも他に焼き鳥・おでん・
寿司など日本の居酒屋並みのメニュウはほとんどが揃っている、在バリの邦人
家族に混じってヘルシー嗜好の欧米人の姿も多い、豆腐が売切れてしまうのは
そのせいかもしれない。それでもイカ納豆マグロ納豆焼き鳥お新香など日本の
味でビールがどんどん進む、最後にざるうどんやカツ丼で締め、という頃に5
人の日本人の若者が冷房の効いた店内に大声で話しながら入ってきた、どうや
ら外のテーブルで飲みながら涼しい席が空くのを待っていたようだ。彼らの話
の内容を聞かなくても一目でサーファーと分かる、とにかく5人が5人とも真
っ黒に日焼けをしている、その黒さといったらアフリカ系の中でも一番黒いと
いわれている人々も脱帽するくらいに芯まで焦げている。どうやったらあんな
に黒くなれるのだろうか?あそこまで焼けたら痒みも痛みも無いだろうなと感
心してしまった。しかし5人とも顔立ちは間違いなく日本人でアフリカ系の
人々とはまったく異なり、なにか異様な感じがしてならない。将来、皮膚癌に
ならなければ良いのだが・・
カツ丼で袖山君食欲が少しながら回復してきたようだ。★★★
★をひとつ少なく評価したのはやはり冷奴売り切れのせいだ。
4/11:Gate Way Of India
バリ料理和洋中と食べてここまで来たらやはりお次はインド料理か?カレーな
らば食欲の落ちている袖山君でも大丈夫だろう。ウブドやヌサドゥアなどにチ
ェーン店があるこのお店、ここサヌールではホテルのエントランスを出て南に
5分も歩かない左側にある。
7時頃にテーブルに座ったのだがやはり時間が早いせいか店内はガラガラ、ま
たスコールが来たようで傘をさす人走って逃げる人を眺めビンタンビールを飲
みながら料理が並ぶのを待つ。タンドリーチキンと羊・チキン・野菜など各種
のカレーと焼きたてナンが運ばれてくる。味は良いのだが辛さが足りなく日本
人の口に合わせちょっとスパイスをひかえてくれたのだろうか、何か物足りな
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い、カミさんの作るカレーの方がよほど辛い。しかしタンドリーチキンと焼き
たてナンはさすがに旨い。袖山君から安曇野にある「ココ一番」の話が出る。
日本中の各都市はおろか上海にまであると言うのだが、どうせチェーン店だろ
う碌なもんじゃないだろうと一人決め、恥ずかしながら私はまだ一度もそこで
食べたことが無い、帰ったら袖山君お奨めのそこに行ってみよう。先刻Hya
ttの傘をさして店の前を通り過ぎた日本人のカップルがまた戻って店に入っ
てきた、彼らも食べ終わった後やはりココ一番の話しをするのだろうか?来年
はこの店はもういいやと言うことで★★
4/12:Warung Mama Putu
Putuおばちゃんが、海岸沿いでやっていた小さなお店が区画整理の対象に
なり現在の場所に移り規模を大きくして営業しているらしい。目抜き通りの南
のはずれ、石像のあるロータリーの裏道の奥まったあたりにある。
私としては去年からマークしていたお店なのだが、袖山君夫妻もカミさんもW
arungと聞いて最後の晩を過ごす店としてあまり乗り気ではない模様。し
かし私の意を汲んでくれるかのようにこの店を本当に知らないらしいTAKS
Iの運転手もグルグル無駄に回ることも無くバックバックの繰り返し、真剣に
店を探してくれる、最後に近くのホテルの従業員に尋ねてくれてやっと辿りつ
けた。ところが店の前に着いた途端みんなの表情が変わる、Warungとい
うのは名前だけで、おばちゃん相当な移転費をせしめたようで、これはもう立
派なレストラン。一流ホテルのレストランの小型版といったたたずまい。小綺
麗な雰囲気で7~8卓あるテーブルや椅子も立派でほとんどを欧米人の客が占
めている。従業員も5~6人いてコロコロと肥ったPutuおばちゃんは店の
一番奥我々のテーブル近くの椅子にどっかりと腰掛け客寄せパンダ状態。おば
ちゃん私のお腹を見て親しみを感じているらしくニコニコと我々を眺めている。
それぞれがメニューと首っ引きで注文した料理の味もまずまずでみんな満足そ
う。今回初めてここでカンクン(空芯菜)にありつけた。豚肉のサテ(串焼き)
は炭火の上に乗せられて運ばれ熱々を食べることができおばちゃんの細やかな
心遣いを感じさせお代わりの注文までしてしまうほど。しかも値段はWaru
ng価格で今回のディナーの中で一番安くて一番満足のいけるものとなったよ
うで来年は2~3回来ても良いなと言うことにみんなの意見がまとまった。
こういうときがこういう穴場のチョイスを決めた私が一番得意になるときだ。
目抜き通りから奥まっているので車の往来がまったく無く静かに食事をするこ
とが出来るのだが、それゆえ帰りのTAKSIは電話で呼んでもらわなければ
ならない。さすがにHyattを知らない運転手はいないので帰りはお迎え料
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金を別にしてワンメーターちょっとで帰ることができる。
メニューも多彩なので来年は昼と夜と二三度通い顔馴染みになってしまおう、
そうすれば何かと我侭もきく、それが私の常套手段だ、カミさんの言を借りれ
ば何故か私はお店の人が憶え易い顔をしているらしい。★★★★★
食後いつものように私の部屋で盛り上がり、持参の酒を全て空にする。
袖山君、Mama Putuの豚肉のサテがいたく気に入ったようでバリ島に
来て初めて豚肉を食べたと言う、酔いのせいか一昨日カツ丼を食べたことなど
もう忘れてしまっているようだ。ここバリ島では90%以上の人間がヒンドゥ
教徒で、イスラムがほとんどを占めているジャワ本島とは逆転している。した
がってこの島では豚肉をごく当たり前のように食べる。カミさんが豚肉を苦手
としているので毎回食べ歩きリストからは外しているのだがこの島には立派な
「バビグリン」という子豚の丸焼き料理がありその専門店が何軒もある。市場
などでは豚の肌色の頭の皮がカミさんに向かって薄気味悪く笑いかけている。
さて、毎朝・毎昼・毎夜楽しんだ食事なのだが、我々とオーストラリアなどか
らのリゾート客とは食事の楽しみ方がどうも違うようだ。これは国民性、社会
性からくるリゾートの楽しみ方全体の違いと言っても良いのではないか?
一年間この期間のため休暇を貯めお金を貯め長期の「のんびり滞在」をする彼
ら、片や3泊5日などの限られた短い休暇の期間中精力的に動き回り、一日や
二日で島の観光地のほとんどを見て回る、そのため早朝から慌しく観光に出か
けてしまい、折角のプライベートビーチ、庭園内のプールなどはほとんどが付
け足し程度でしか楽しむことなく帰国してしまう日本人。
滞在期間中毎日プールで顔を見かけるイースター休暇を利用してオーストラリ
アから来たと思える働き盛りの四十がらみの中年の男女の二人連れ、日焼けの
具合から察するに我々と前後してこの島に来たようだ。その彼ら、朝食の時間
も我々よりも長く、我々より少し遅くのんびりとプールサイドに出かけてきて、
我々が昼食に出かける時間にはまだプールやビーチで遊んでいる。
我々が食事から戻ってくると彼らの姿は見えなく、デッキチェアーに本だけが
残されて、やがてしばらくするとまたプールに戻ってきて我々が部屋に戻る頃
にはまだプールで大はしゃぎ。
6時頃にレストランに行くとどこのお店でも我々以外は人影もまばら、まれに
日本人カップルが入ってくる程度で、我々が帰る頃になるとやっと店内が様々
な人種・年代で賑わいを見せてくる。ホテルに戻ってくると夕食に出かけるら
しく、ディナードレスに着替えた件の彼らとすれ違いになる、どうやら日が落
ちるまで日焼けを楽しみ泳ぎを楽しんでいるようなのだ。日焼けの度合いが
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我々と違い毎日増していく。
最終日、ロビーで迎えの車を待っている我々の前を着飾って夕食に出かける彼
等が通り過ぎていく・・・
4月13日(土)帰国
旅行で何がつらいかって、帰国するこの日が一番つらい。トランクに荷物を詰
めながら、ねえ、本当に帰るの~ぉ?帰らなきゃならないの~ぉ?毎度のカミ
さんの悲し気な声。10日も!10日も休むなんて!絶対に許せない!と言っ
ていた渡辺ドクターの顔が浮かぶ。9日なんて短いもんだよ、わずかこんなも
んだよ、もう帰らなきゃならないんだよ!あ~あ「ごん太」の親父さんが羨ま
しい。
明後日のことは忘れるとして今日明日とまだまだ二日も残っている、旅行はま
だ終わってない、せいぜい残された時間を楽しむことにしようよ。
朝食のオムレツコーナーのお兄ちゃんともパンケーキコーナーのおばちゃんと
もテーブルに案内してくれるお嬢ちゃんとも一年間のお別れだ、朝飯はより以
上の時間を掛け楽しむことにしよう。Warungのおばちゃんたちともお別
れだ。元気で健康に注意してまた来年出かけてこよう。
そんな気持ちにさせてくれるHyattに感謝!サヌールの街に感謝!海に感
謝!バリ島に感謝!
チェックアウトは15時、HISのお迎えの車は21時。
名残の泳ぎでプールとも13時まで親しもう。
時間が惜しいので昼食はプールサイドの出前にしよう。
空は碧く晴れている、ビーチの北のはずれにはAGUN山も顔を覗かせている、
昨夜到着したらしいプラチナブロンドの女性の真っ白な肌がビーチに眩しい。
12時半、
「1時半まで部屋に帰ってこないで!」と言い残してカミさんは部屋
に戻ってしまった、トランクを広げるのにデッカイ私が部屋にいると邪魔にな
るのだと言う。いいよ!いいよ!プラチナブロンドでも眺めて楽しむことにし
よう、私好みの彼女の写真もバチバチ写してやろう。今日は週末、昨夜あたり
からオーストラリアからの新しいリゾート客が増えてきているようだ。バリ島
に来て以来毎日顔を合わせていたいつも木陰で読書をしている白人のお爺ちゃ
ん二人組み今日はプールサイドに来ていなくて少し寂しい感がある。毎日会釈
を交わすだけの間柄だったけれどお別れも言えなかったなあ。
14時少し前に部屋に戻りシャワーから出てくるともうトランクは出来ていた。
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ベルキャプテンに電話、
Hello, Ah, Room No1201 Mr Fukushima
speaking, Ah, We are now check out.
Ah,Our baggages carry please.
これで通じてしまう。
All light、 Thank you sir.
因みに今回シャワールームの天井の電球が切れたときには、
Hello, Ah,Ah, Something wrong Ah,
my bathrooms ceiling light.Yes!Yes!
Ceiling light OK?O~K~?
All light Sir.
と、Ah混じりの中学生並のブロークンイングリッシュで呼んで直してもらっ
ている。
14時45分ベルボーイのノックの音、少し前に隣の部屋からトランクを転が
す音がしていた、袖山夫妻はもう自分でトランクを押してロビーに降りていっ
たようだ。
Hyatt直営の中華料理店とプールサイドの出前の料金をカードで支払いチ
ェックアウト完了、Hyatt Gold Cardのポイントはまだ何かが
只になるほどには貯まっていない。Rpは充分に残っているのだが、まだこれ
から飲み食い買い物マッサージなどがある、円安の進み具合が心配なのだが取
敢えずカードで支払ってしまった、失敗したかなあ?
ベルキャプテンからトランク引換券を貰い5時に会おうと袖山夫妻と約束して
一目散にマッサージ屋に。シャワーを被ってしまったのでノンオイルのマッサ
ージを一時間楽しむ。
出発までの時間つぶしは、HIS指定のデューティーフリーの店での食事券が
あったのだが、4人ともTaksiの送迎付きでも遠いし不味いしあそこは
NO!ということで先日行ったバイパスのヌードルショップMie88、ビー
ルと中華料理で間を持たせることにした。
食事が終わりホテルに戻り、ロビーのソファーに腰掛け迎えを待っていると、
毎日プールサイドで顔を合わせていたお爺ちゃん二人組みが夕食から帰ってき
たらしく私に向かってバーイ!とお別れの手を振ってくれた。彼らはいつまで
滞在するのだろう、来年彼らとまた会えると良いのだが。
4月14日(日)
0時30分定刻、後ろ髪を引かれる思いでウグラライ空港離陸、帰国の途につ
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く。成田直行便なのに座席はほぼ満席、離陸したらすかさずあいている4席を
確保して横になり眠っていこうという思惑はみごとに外れてしまった。乗客の
8割方は日本人、あの狭いバリ島のどこにこれだけの日本人が隠れていたのか
と感心してしまう。もっとも今日は日曜日、今日までの休暇をとっている人が
多いのかもしれない、いや、そうに決まっている。
もう一日二日遅らせて平日の帰りにすれば眠って帰れるのだろうが、そうする
と成田信州間の高速料金が倍額になり、しかも渋滞時間帯の東京都心を通らな
ければならない、さてどちらが楽なのか思案のしどころだが、実際に以前はも
う少し滞在期間が長く平日帰りのスケジュールを組んでいたのだが、帰りの便
では横になって眠ってきたのにもかかわらず、都心の渋滞を抜け関越に入った
途端に睡魔に襲われ最初のSAに飛び込み2時間ほど眠ってしまったことが何
度もあった。
AM8時、成田着、また日本時間の世界に戻ってきてしまった。渡辺ドクター、
休暇なんてこんなものなんですよ、9日間なんてまったくあっけなく終わって
しまうものなんですよ!
楽しくてやがて悲しき祭りかな
家に帰ってきてから新聞を読んで知ったのだが、13日、帰国日当日の昼頃、
私たちが飛び立つ半日前の空港でオーバーラン事故があり機体が海に突っ込ん
だようなのだ。空港内では特に騒ぎ立てることも無く送迎の地元の係りも何も
告げてくれなかったのだ、情報収集に長けている日本人の間でも待ち時間に騒
ぎ立てたりする人間が誰もいなかったのだ、まったく知らぬが仏、桑原桑原!
バリ島は私にとっての楽園、これからも体力が続く限り毎年訪れることになる
だろう、しかし、心配事がひとつある、数年前にインド洋スマトラ沖南北ライ
ンで地震があった、そこから長大な地球の割れ目がつながっている、物の順序
からいって今度はインド洋の東西ラインに回ってくるだろう。バリ島、あんな
小さな島にもアグン山という3142メートルの巨大な火山がある、いつ地震
が起きても不思議ではない地帯なのだ。今回私の泊まった2階の部屋の標高は
床レベルで4メートルくらい、景観規制で椰子の木より高い建物はバリ島では
建てられない、屋上に登ってもたかだか10メートルくらいだろう、さて、逃
げ場をどこに求めようか・・・
5月16日(木)
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今日はカミさんの誕生日、今日くらいは楽をさせてあげねば。
13日から泊まっている常連のお客さんを誘って街に下り夕食を一緒にして誕
生日を祝うことにしよう。
円安は更に進み1ドルが103円14銭にまでなっている、Hyattでの飲
み食いがそろそろ口座から落ちる頃だ、やはりカードで支払ったのは失敗だっ
たようだ。
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