スリーブ状胃切除術が躍進 - カワニシホールディングス

10
Oct. 2011
Vol.13
Biomedical Business & Technology
スリーブ状胃切除術が躍進、
肥満治療デバイス開発の最新事情……1
新たなデバイスを評価する FDA のガイドライン作成が望まれる
Case Management Advisor
健康推進のインセンティブは現⾦?
それとも商品券?……6
従業員のやる気を引き出し、⾏動を起こさせる秘訣
Healthcare Benchmarks and Quality Improvement
医療の質の向上を⽬指す TJCの新しいウェブサイト……7
質の⾼い医療を提供する優秀な病院が成功のカギ
メリー・コーベット/本誌 アドバイザリー・スタッフ
アドレナリン⾃⼰注射薬エピペンの
薬価収載に⾒る国内アレルギー事情……9
アナフィラキシーによる死亡数減少への期待
The Academia Highlight[13]
⾮侵襲を⽬指す内視鏡⼿術の進展……10
by うのめ・たかのめ
Medical Device Daily……11
Kawanishi Hotline……19
Oct.2011
Vol.13
スリーブ状胃切除術が躍進、
肥満治療デバイス開発の最新事情
新たなデバイスを評価する FDA のガイドライン作成が望まれる
――DIANA TUCKER/BB&T 寄稿者
米国人の 68%が過体重または肥満であり、世界
行っている肥満患者の 3~5%しか 5 年間減量を維
保健機関は、2015 年までに世界で 7 億人が肥満
持できていないので、それ以外の外科専門領域と
になると予測している。この生命を脅かす慢性疾
同様に、これに対処できるインターベンションツ
患の治療改善や予防に、ぜひとも取り組まなけれ
ールが必要になる」
ばならない。
州)の第 28 回年次会議では、単孔式、スリーブ
遅れる肥満・糖尿病治療デバイスの商品化
中間的治療を提供する革新的なデバイスは、新
状胃切除術のような先進的外科手法の改善に重点
設および大手のさまざまな企業で開発されている
が置かれ、内科的治療と外科手術の隙間を埋める
が、商品化されたものはほとんどない。新設企業
低侵襲性の治療については、ほとんど取り上げら
の多くは FDA から中枢試験の承認を得られない
れなかった。手術を望まない、手術が不可能であ
ようで、商品化にはまだ 3、4 年かかると見られ
る、またはまだその時期ではない患者に対して、
る。多くの企業は試験結果が不調であり、臨床試
内科的治療がうまくいかない場合、多くはインタ
験の現実的な終了基準を FDA が示していないこ
ーベンション治療が行われる。しかし、肥満患者
ともあって、試験を取り止めていると話す業界関
にはそのような中間的治療はほとんど行われてい
係者もいる。
米国代謝・肥満外科学会(ASMBS、フロリダ
ない(第 1 表)。
この領域で多数の企業のアドバイザーを務めて
この治療ギャップを指摘したのは、ブリガム・
いる Thompson 医師は、管腔内肥満治療をさまざ
アンド・ウィメンズ病院(マサチューセッツ州)
まな角度から分類し(第 2 表)、
「外科的手法をま
の 発 展 的 ・ 肥 満 内 視 鏡 科 の 科 長 Christopher
ねた、多くの内視鏡技術が開発中である」と述べ
Thompson 医師である。同氏は、「新たな管腔内
た。また、これらのデバイスは同じものとして捉
肥満治療:胃形成、バルーン、十二指腸スリーブ
えることはできないと主張し、新しいデバイスを
等」と題した発表で、次のように説明した。
評価する際のリスク・リターン特性の階層化を提
「従来の肥満手術は高価で外科医の熟練を必要
唱 し て い る 。 こ の 考 え は 、『 Gastrointestinal
とするため、大部分の患者は恐れも手伝って、手
Endoscopy』に昨年同氏が寄せた論説に詳しい。
術を受けていない。ところが、食事療法と運動を
「内視鏡による肥満治療は、投薬よりも効果を高
第1表
外科専門領域の治療オプション
外科専門領域
内科的治療
インターベンション治療
外科手術
整形外科
あり
関節鏡検査
関節置換術
心臓血管
あり
血管形成術
冠動脈バイパス
肥満
あり
存在せず
胃バイパスまたはバンド
出所:Christopher Thompson 医師、ASMBS 発表
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第2表
内視鏡による肥満治療の分類
治療分類
早期介入
手術までの
ブリッジ
代謝性
一次治療
再手術
治療目的
コメント
まだ手術適応ではない初期肥満患者の減量
安全性が最優先である
または安定化
肥満、非肥満治療に対する肥満関連手術
リスクの低減
耐久性は重要ではない
解剖学的変化をもたらすことはできない
主に、糖尿病などの余病への対処
患者の薬への依存を減らすことが
減量よりも優先される
従来の手術患者に対する内視鏡オプション
外科手術による減量を模倣
現在の手術と同様の結果・リスク
低リスクの必要性
安定した体重リバウンドを認める
失敗に終わった減量手術の修正
出所:Christopher Thompson 医学医師、ASMBS 発表
でソリューションを提供するであろう。これらの
先進的な低侵襲肥満⼿術⽤デバイス
新しいデバイスを持っている企業は FDA への
新しい肥満治療技術は、肥満の流行への対策に非
対応で忙しく、その他の企業は技術を改善し、侵
常に有意義であろう。その潜在的役割を理解する
襲性を最小限にすることに余念がない。
め、従来の外科手術よりもリスクを軽減すること
ことが重要で、規制当局はこれらの技術の評価に
単孔式手術の有用性に関するエビデンスははっ
柔軟でなければならない。新しいデバイスすべて
きりしていないが、特に女性や未成年者は、
「傷跡
を一次治療として扱おうとするのは、それが意図
が残らない」肥満手術を当面希望している。展示
した利用法ではない場合には逆効果である。これ
に参加した 2 つの企業が、単孔式または管腔内手
らのデバイスは、最も有効に利用できる方法にお
術でうまく機能するフレキシブル腹腔鏡製品のデ
いて評価されるべきである」。
モンストレーションを行った。
肥満治療デバイスの評価をめぐっては、10 月に
Apollo Endosurgery 社(テキサス州)のフレキ
FDA がマス・ジェネラル病院(マサチューセッツ
シブル内視鏡デバイスは、当初 NOTES(経管腔
州)とダートマス・ヒッチコック・メディカル・
的内視鏡手術)に使用できるということで関心を
センター(ニューハンプシャー州)の肥満外科医
集めた。現在の Apollo 社は、漏れの修復やろう孔
と会い、新しい適切なガイドラインを話し合う計
の閉鎖など、肥満やその他の治療における術後の
画であるとこの会議でうわさされた。
合併症修復に役立つ内視鏡縫合システムや、内視
このほか、スタンフォード大学医学部(カリフ
鏡用はさみ鉗子に注力している。2008 年に FDA
ォルニア州)のイノベーティブ・サージャリー科
に承認され、米国の 15 センターへの導入を慎重
科長 Homera Rivas 医師が、一次治療としての減
に進めており、第 2 世代に向けた改善点が明らか
量に最も有望な新技術について、
「短時間(15 分)
になってきている。
で行え、手ごろな価格(1,000 ドル)で、2 年ご
とに繰り返すことができなければならない。最終
的には、予防治療としても利用できるものが望ま
しい」との意見を述べた。
開発中の製品はいずれもこの条件を満たしては
いないが、すべてその方向に向かっており、これ
らのパラメータが最終的な目標である。
(http://www.apolloendo.com/)
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Apollo 社は今秋の米国外科学会で、より小さく
ーブでの過体重減少(EWL)は、バンドの場合よ
軽量で使いやすく、費用対効果が高い 599 ドルの
りも多いが、胃バイパスの場合よりも少なく、余
デバイスを発売する予定である。臨床での使用は
病については同様の結果である」。Marema 氏に
まだこれからだが、本会議で初めて展示する企業
よると、SPIDER システムは単孔式スリーブ状胃
として、演者から支持され、展示ブースでは好評
切除術に特に適している。40 人以上の患者におい
であった。同社は、ベンチャー支援による株式非
て、3 カ月の平均 EWL は 40%であり、6 カ月で
公開企業で、その対象は、胃腸病専門医と胃腸手
は 65%になる模様だ。
術を行う外科医が半々である。
肥満の最新外科的治療であるスリーブ状胃切除
TransEnterix 社(ノースカロライナ州)の製品
術は、患者が求めている低侵襲手術となりえる。
も最初は NOTES 用だと考えられていたが、現在
これによって手術を受ける患者が増えることに、
の市場ニーズを満たすために、低侵襲(特に単孔
肥満外科医は大きな期待を寄せている。米国では
式)手術用の使い捨てプラットフォームにうまく
年間の手術件数が約 25 万件にとどまっており、
再編している。この「SPIDER」システムは、1
残りの 2,200 万人の適格患者を手術に向かわせる
カ所から正面・左右に 3 本の処置アームが出てお
新たなツールは、非常に歓迎されるであろう。
り、操作性も高まっている。同社は、強度や運動
スリーブ状胃切除術への関心が高まっているこ
制御をさらに高め、人間工学的にも優れた第 2 世
とを受け、縫合線を補強するかどうかという新た
代システムを本学会で発売した。
な課題が出てきた。これは、縫合線のないラップ
TransEnterix 社は、営業スタッフを抱える資金
バンドや、縫合線が短い胃バイパスでは問題にな
の潤沢な株式非公開の新設企業である。2011 年 3
らない。しかし、スリーブ状胃切除術ではかなり
月に SPIDER システムの CE マークを取得し、
の縫合線ができ、まれではあるが漏れが起こる(1
2011 年末までに欧州での商品化を計画している。
~2%)。そのため、バンドを除く肥満手術の約半
価格は 800~1,000 ドルで、このシステムを使用
数では、何らかの縫合線の補強を行う。
している病院は、今のところその費用を余裕のあ
ステープルラインの補強製品は、3 つの企業が
る DRG(診断群別分類)で負担している。
提供している。Synovis Surgical Innovations 社
(ミネソタ州)は、肥満分野で約 30%の市場シェ
ア を 占 め 、 唯 一 の 100% バ イ オ 材 料 の 補 強 材
「PERI-STRIPS DRY」を販売している。W.L.
ゴア(デラウェア州)は、生体吸収性材料の
「SEAMGUARD」を製造している。また、コヴ
ィディエン(コネチカット州)は、合成補強材料
とステープラーが組み合わされた「デュエット
TRS」システムを最近発売した。
(http://www.transenterix.com/)
極めて少ない新設企業
胃縮小のために縫縮術を使った 2 つの企業が、
スリーブ状胃切除術の件数が増加
Flager 病院(フロリダ州)の肥満外科医 Robert
新たな方向に進んでいる。革新的な管腔内肥満治
Marema 氏は、SPIDER システムで 40 例以上の
療技術を開発している新設企業はほかにもあるが、
スリーブ状胃切除術を行っている。同氏はその経
本会議での製品展示はまだ行っていなかったので、
験から、患者はラップバンドや胃バイパスよりも
その最新状況を第 3 表に示す。
スリーブ状胃切除術のリスク・リターン特性を好
InTailor Surgical 社(ジョージア州)は、出口
むようだと言う。
「患者は、スリーブが中間に位置
が縮小された胃嚢(パウチ)を内視鏡的につくる
するものと捉えている。つまり、バンドよりも侵
デバイスを持っている。このデバイスは、2 つの
襲的で、胃バイパスよりもリスクが少ない。スリ
フープ(リング)を使って胃の周囲全体の組織に
3
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第3表
管腔内肥満治療技術を開発中の企業の現状
かなりのひだを寄せて陥入させ、縫合によって固
定する。拡張した胃の組織が外側、つまり漿膜側
に固定されることは、このデバイスの大きな利点
摂取制限
の 1 つ。胃の漿膜側は、胃の内側(粘膜側)とは
USGI 社
米国事業を閉鎖
欧州でのみ試験継続
Satiety 社
企業閉鎖、資産売却
Safestitch
Medical 社
米国、欧州での試験に
医師を準備中
きを減速させる。このボールは交換可能で、大き
Endogastric
Solutions 社*
新CEOで新たな方向性?
償還不足が販売を抑制
さの調整ができる。妊娠や病気など、栄養分を増
Barosense 社
J&Jが投資。米国の状況が
明確になるまで規模縮小
違って融合するからだ。
新たにつくられた開口部は、フープの強度を持
つ。ワインの木製樽の帯のように、フープは組織
よりもフープそのものを引っ張るので、耐久性は
高まると考えられる。開口部の真下には阻害ボー
ルがぶら下がっており、食べ物が通る際にその動
やす必要がある場合には、ボールを内視鏡で容易
InTailor
Surgical 社
に取り除くこともできる。
InTailor 社は 4 つの特許を保有し、さらに数件
申請中である。同社の胃縮小技術は、管腔内バイ
C.R.Bard 社
パスなど、その他の外科的治療やデバイスととも
に使われることもある。InTailor 手術は経口で、
臨床試験の開始準備済み
本会議で Restore の
12 カ月データを発表
Apollo
管腔内修正のみに
Endosurgery 社 製品を販売
調整可能であり、小動物試験では安全で実行可能
であることが実証されている。12 患者を対象にし
空間充填
たパイロット試験を行うために、同社はシリーズ
Helioscopie 社
欧州のみ
Reshape 社
中断?
Spatz 社
欧州のみ
初期の結果は有力
Tulip 社
データなし
アラガン社
2011 年にバルーン
結果を予定
事完了したところで、2011 年に米国以外で、また
Fulfillium 社
データなし
2014 年初めには米国での発売を考えている。
Gelesis 社
データなし
A 融資で 500 万ドルを調達しようとしている。
Aspire Bariatrics 社(ペンシルベニア州)は、
リバース PEG(胃ろう)チューブといえるものを
開発している。BariAssist は、内視鏡で「G-shunt」
と呼ばれるチューブを設置し、摂取後すぐに食べ
物を患者の胃から吸い出すことで、患者の食事量
の制限、カロリー摂取量の削減、体重の減量を手
助けする。同社は、米国でのパイロット試験を無
十二指腸での吸収阻害
その他の管腔内デバイスの最新情報
GI Dynamics 社(マサチューセッツ州)は、FDA
の承認プロセスにおいて明らかに先頭を走ってい
るようであるが、市販承認はまだである。「FDA
GI
Dynamics 社
MDTが投資。CE マーク
欧州と南米で戦略的販売
Valentx 社
Covidien が投資
24患者、
9カ月の肯定的な
臨床結果を本会議で発表
Endosphere 社
欧州で多施設共同臨床
試験を計画中
Baronova 社
海外でデータを収集
米国では中断
と生産的に話し合いを進めているところである」
と CEO の Stu Randle 氏は言う。少数の中核的な
研究拠点で臨床から商品化へと移行しており、2
型糖尿病と肥満の両方で CE マークを取得してい
る。現在、欧州には 8 つ、南米には 1 つのセンタ
ーが稼働している。
GI 社は、世界中で 500 人以上の患者にそのデ
*現在販売中
4
出所:BB&T、業界情報
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が 5 倍になることである。
バイス「Endobarrier」を植込んでおり、植込み
後の患者を追跡するレジストリーを最近立ち上げ
カリフォルニア大学サンフランシスコ校の外科
た。糖尿病患者の症状がすぐに緩和した最初のパ
教授 Kelvin Higa 医師は、「どの患者にどの手術
イロット試験後に、同社は「第 1 に糖尿病、第 2
が最善であるかのアルゴリズムがないだけに、外
に減量を重視する」という意図的・戦略的なシフ
科手術は寿命が長い。病気の病態生理が分からな
トを行い、全く異なったデータを使って結果を証
ければ、そもそも正しい治療法を選んだかどうか
明し、償還の可能性を最大限にしようとしている。
分からない。肥満は慢性疾患なので、うまくいか
ないこともある」と言う。また、再手術は肥満手
術の下位専門領域で、すべての肥満外科医が再手
術をすべきであるとは思わないと同氏は語り、次
のように付け加えた。
「再手術が医学的な理由によ
る場合、95%の成功率が期待できる。だが、社会
的理由のみによる場合なら、ほとんど成功しない
であろう」。
(http://www.endobarrier.com/)
オハイオ州立大学の外科助教授 Dean Mikami
GI 社は、最初の 12 カ月の植込み期間の後、第
医師は、肥満を癌にたとえた。
「脂肪細胞は癌細胞
2 の Endobarrier を植込む最適なタイミングを決
のように制御できなくなる。癌の場合と同様に、
めるために、現在研究を行っている。幸いにも、
肥満手術後の患者にも、定期的なサーベイランス
体重、HbA1c レベルとも、予想よりリバウンドの
が必要である」。癌患者が定期的に診察を受けに来
進み方は遅かったという。しかし同社は、2 度目
るのに対して、思ったほど体重の減っていない肥
の治療が必要となった場合に備えている。
満患者は診察に来ない。体重のリバウンドには共
Valentx 社(カリフォルニア州)は、バイパス
通のパターンがある(第 4 表)。これらの患者は、
またはスイッチ手術以外で、GI Dynamics 社と直
自分たちを失敗者とみなしたり、手術が失敗した
接競合する唯一の企業であり、糖尿病の寛解と体
のだと考える。肥満外科医は、手術の失敗ではな
重の減量に取り組んでいる。Endobarrier とは異
く、ライフスタイルの変化が原因であると考えて
なり、Valentx 社はその腸管スリーブに制限機能
いるが、「失敗した」患者が診察に来ない場合に、
を追加しており、約 40 人に植込んだと推定され
どのように体重管理プログラムに戻すかに手を焼
ている。
いている。
Safestitch Medical 社(フロリダ州)は、ハン
第4表
体重リバウンドの共通パターン
ガリーの 5 患者に対して、最初の管腔内胃形成術
用デバイスの試験を成功させた。FDA から臨床
試験プロトコールの承認を得て、2012 年前半に米
・ サーベイランスなし
国で臨床試験を開始する予定である。また、年末
・ 間食
までに欧州での臨床試験用書類を提出する準備を
・ 運動不足
進めている。
・ 不十分なモニタリング
・ サポートなし
ちょっとした秘密:再⼿術
肥満手術を受けた患者が毎年新たに 25 万人加
・ 食事記録なし
わるにつれ、再手術の数も増加しているといえる。
「失敗した患者の約 3 分の 1 は、体重管理プロ
肥満手術を受けた患者の 12~50%に、再手術の適
グラムを再開した場合、元の体重に戻ることがで
応となるほどのかなりのリバウンドがあったと報
きる」と、タフツ・メディカルセンター(マサチ
告されている。恐ろしいのは、最初の肥満手術の
ューセッツ州)の Meghan Ariagno 栄養士は言う。
リスクは低いが、再手術の場合、罹患率や死亡率
ほかに、新たな再診患者がほかに健康問題を抱え
5
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ていない場合には、一気にはずみをつけるために、
る。将来のインターベンション技術がこの巨大な
体重管理プログラムに 3 カ月のフェンテルミン
成長市場に対応できるよう、FDA はガイドライン
(食欲抑制作用を持つ向精神薬)を追加すること
を作成することが望まれる。
もあるという話もあった。
肥満治療デバイスの開発企業に共通するのは、
「Biomedical Business & Technology」
肥満患者の「リバウンド」を防ぐという目標であ
(2011 年 9 月号)
健康推進のインセンティブは現⾦?
それとも商品券?
従業員のやる気を引き出し、⾏動を起こさせる秘訣
報奨制度は健康保険料の軽減に寄与
当たり前のように思われるかもしれないが、従
企業の実務が健康に深く関係しているかどうかに
業員に健康的になるように要求することは、そう
さらに、
「一生懸命に働いても報奨が少ない、もし
たやすいことではない。健康になってもらうため
くは報奨が全くない企業の従業員に対しては、健
には何か別のインセンティブが必要だろうと、企
康や安全に関する報奨の影響力は薄い。逆に、業
業や団体向けに健康推進活動を行うコンサルティ
績次第でボーナスを得られるような企業に勤める
ング会社 Weiss Health Group(ウィスコンシン
従業員は、健康維持を重視する傾向にある」と調
州 ) の CEO 兼 地 域 社 会 健 康 推 進 委 員 で あ る
査ディレクターの Nathan Kleinman 氏は語る。
よって、健康への投資には大きな相違が生じる。
Margie Weiss 氏は語る。
Weiss 氏によると、多くの企業が報奨制度を活
用しており、健康的なライフスタイルを奨励する
ことで、健康保険にかかる費用を抑える努力をし
ている。そして実際に、健康推進プログラムに参
加して得られる賞品や賞金などの報奨は、健康保
険料の軽減に役立っているという。
企業はまずたいてい、健康推進プログラムに参
加した者に報奨を与えることから始める。次に、
救急部門を受診する場合と、外来や診療所にかか
用法に直結した金銭的報奨を行う。ひとたび企業
マンネリ化防⽌策が重要
産業衛生の専門職員は、労働者のやる気を引き
が健康リスクの管理を始めると、健康保険料は従
出すために報奨制度を利用することが多い。ただ
業員の参加度合いに左右され、さらには従業員家
し、報奨を提示したあとには創造性が必要だ。
る場合で自己負担に差をつけるというように、利
族の参加度合いにまで影響を及ぼす。最終段階で、
シンシナティ大学看護学部の准教授である
企業は個々の情報を統計化する。この 3 つのステ
Tracey L. Yap 氏は、「同じことは長くは続けられ
ップを踏むことで、企業の健康保険料削減を実現
ないので、マンネリ化しないために事前に計画を
できることが明らかになっている。
練らなくてはならないが、それには相当な努力が
また、医療 IT および臨床サービスを提供する
必要」と注意を促す。Yap 氏の推奨する報奨制度
HCMS Group(ワイオミング州)の調査によると、
のポイントを紹介すると・・・・・・
6
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 対象の意識レベルを知る
いちばん近場のスターバックスまで 45 分もかか
Yap 氏がある製造工場で健康推進プログラムに
ることが分かり、ウォルマートの商品券のほうが
取り組んだとき、変化の「準備段階」にある労働
ありがたかったと言われた。このような苦い経験
者は、報奨には見向きもせず、ゲーム感覚で他工
をしないためにも、常に相手の立場に立って考え
場と競争している程度にしか捉えていなかった。
ることが必要である。
しかし報奨に直結した健康管理に関する教育を行
ったとたん、労働者らは「熟考前段階」、さらに「行
 報奨は 1 時間の時給以上で
報奨の程度はまちまちだが、最低 1 時間の時給
動段階」へと駒を進めた。このように、報奨は人
分を支払うのが妥当といえる。何を要求するかに
に何かを始めさせることはできる。しかし、行動
よるが、報奨があまりに少なければむしろ相手に
を変化させるための持続的な手段ではない。
失礼となる。
 何を必要としているかを知る
労働者のライフスタイルを変化させる画期的な
 アイテムはバラエティ豊かに
報奨としてスポーツバッグ、水筒、T シャツと
きっかけとなる何かを模索しているのなら、必ず
いったアイテムを提供する場合、選択肢は多いほ
初めに、何がモチベーションを高めるのかを直接
うがよい。企業名の入った T シャツは喜ばれない
聞いて把握するべきだ。Yap 氏は過去に、課題を
だろう。休日が近ければ、特に商品券が効果的。
完成させた製造工場の労働者に、スターバックス
「Case Management Advisor」
(2011 年 8 月号)
の商品券を提供したことがある。あとになって、
医療の質の向上を⽬指す
TJC の新しいウェブサイト
質の⾼い医療を提供する優秀な病院が成功のカギ
「Core Measure 指標の大幅な改善に成功した
実で、Core Measure 指標を達成した病院と、そ
病院の経験や知識を共有することは、ほかの病院
うでない病院とをリンクさせる新しい試みを始め
の品質向上に貢献する」
た。この情報交換の場への参加は現段階では全く
このような信念の下に、The Joint Commission
の任意であり、成果の低い病院を特に対象として
(TJC:病院評価機構)は、Core Measure 指標
いるわけではない。「多少なりともこの試みが、
の改善プロセスを促進する情報の、投稿と検索が
Core Measure 指標の達成に向けて奮闘している
行えるウェブサイト「The Joint Commission’s
病院の役に立つ日が来るでしょう」と Williams
Core Measure Solution Exchange」を立ち上げた。 氏は語る。
Core Measure 指標とは TJC が選んだ病院の経
10 分野について、「必要な薬剤の投与」等の指標
参考となる病院が選抜できる
TJC は 2010 年 10 月に、外科治療に関する指
がそれぞれ決められている。病院の評価やベンチ
標限定の Solution Exchange サイトを試験的に立
マークに活用できる。TJC 医療品質評価部門の副
ち上げ、治療の質を向上させ、Core Measure 指
部長 Scott Williams 氏によれば、Core Measure
標を達成した認定病院にデータの投稿を依頼した。
指標は以前から存在しており、実際に過去 6 年ほ
TJC が求めたのは、医療の質があまり芳しくない
どで、全体的な治療の質は高まってきているとい
状況から、国の要求もしくはそれ以上のレベルま
う。しかし遅れをとっている病院があることも事
で飛躍的に治療の質を上げ、最低 6 カ月以上維持
営指標で、
「外来部」
「周産期医療」
「脳卒中」等の
7
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Vol.13
した施設のデータである。その結果、73 のソリュ
ーションが試行期間内に投稿された。また今年 5
月には、Core Measure のすべてではないものの、
外科治療以外の分野についても指標を増やし、指
標達成のための 200 のソリューションについて投
稿を依頼している。
TJC が力説するのは、新しい指標を増やすと、
新たな投稿により有用なソリューションが増える
ということだ。Solution Exchange サイトには、
依頼を受けていなくても、共有するにふさわしい
ソリューションであれば、どの認定施設でも投稿
閲覧でき、その中からさらに評価の高いソリュー
することが可能である。投稿されたソリューショ
ションや、最新のものを検索することもできる。
ンは、TJC の用意したテンプレートにしたがって
また、キーワードを入れて目的とする指標を検索
構成されるが、TJC の校閲なしに直接システムに
する単語検索機能や、検索したいものを登録して
反映される。
「ここはコンテンツを審査する場では
おき、関連する投稿があれば電子メールで通知を
ありません。利用者自身が、投稿されたソリュー
受ける通知機能もある。
ションを評価したり、コメントを投稿したりする
場を提供しているのです」と Williams 氏は言う。
実際に治療の質の向上につながるか?
TJC のこの試みが、現在治療の質の芳しくない
病院は改善プロセスについて、自らの言葉で説
明を求められる。
病院を改善に導くという根拠があるわけではない。
例えば、治療の質向上のために有用な情報を得た
・ 問題点をどのように分析したか
いと思いつつも、実行するのに躊躇している病院
・ どうやって問題点を発見したか
があるとして、その要求に適した情報を提供でき
・ 治療の質を向上させるために、どのような
ているのかという問題がある。公開された文献を
対策を実践したか
あたったとしても、そこから得られる情報は、医
・ 治療の質の改善度合いを測るために、どの
療団体や個人が新しい試みを採用する前の情報だ。
ようなほかの指標を使用したか
病院が実際に知りたいのは、その試みを本当に実
・ 改善するうえでの難題は何で、どのように
践しているかどうかである。
「Solution Exchange サイトは、病院同士のつな
それを克服したか
がりを深めるためのものです。しかも利用者はそ
・ 高めた質をどのようにして維持しているか
こいらの病院ではなく、れっきとした認定病院で
す。彼らから寄せられたソリューションには有用
投稿には、論文やリンク、指示書、パワーポイ
なものが多いでしょう。とはいえ、いざそれを学
ントなどを添付することも可能である。
び、かつ実践することは簡単なことではありませ
んがね」と Williams 氏は強調する。
多彩な検索機能
各ソリューションには、投稿者が用いた主な指
このプログラムの有用性を評価するにはまだ早
標が登録されている。そのため、利用者はさまざ
いが、Williams 氏によると、試行後に行った調査
まな方法で目的のソリューションを検索し、好み
では非常に高い評価を受けており、対象となる指
のものを選択することができる。
標を増やしてほしいという要望がいちばん多かっ
たという。
米国内の膨大な病院情報を備えているので、
「〈地方〉の〈50 床以下〉の〈病院〉から提出さ
れた〈外科治療〉の〈感染予防〉に関する指標」
「Healthcare Benchmarks and Quality
といった検索も可能だ。条件に見合う病院が全て
Improvement」(2011 年 8 月号)
8
Oct.2011
Vol.13
アドレナリン⾃⼰注射薬エピペンの
薬価収載に⾒る国内アレルギー事情
アナフィラキシーによる死亡数減少への期待
――メリー・コーベット/本誌 アドバイザリー・スタッフ
日本ではまだアナフィラキシーは一般によく
る知識が拡大するであろう。
知られていない。しかし、9 月 22 日に厚生労働省
欧米では小学生でもエピペンを気軽に持ち歩き、
が発表した「エピペン注射液」というアナフィラ
症状を起こしたときには自分で注射を打つほど、
キシーの既往、または発症の危険のある人々のた
ごく普通にアレルギーに苦しむ人々の生活に溶け
めのアドレナリン自己注射薬の薬価収載により、
込んでいる。年間およそ 1,500 人がアナフィラキ
医療現場や重度のアレルギーに苦しむ限られた
シーで死亡していると想定されるアメリカでは、
人々から、社会全般へと関心が広がっている。
エピペンは AED(自動体外式除細動器)と同じく
アナフィラキシーとは、食物、虫さされ、医薬
避けられる死を防ぐ「保障」と考えられており、
品、ラテックスなどのアレルゲンによって引き起
各州で幅広く啓蒙活動が行なわれている。アレル
こされる重篤なアレルギー反応で、腫れによる気
ギー人口、特に幼児の発生率が非常に高い日本で
道の閉塞や血圧の急激な低下により、死に至るこ
も、世界アレルギー機構(WAO)がアナフィラキ
ともある。
シー治療の第一選択の薬剤として奨めているアド
1988 年に、北海道札幌市で学校給食のそばを食
レナリンの需要が、今後伸びると予想される。
べて死亡した学生のケースが大きく報道され、当
サッカー元日本代表の松田直樹選手が心筋梗塞
時の国民に衝撃を与えた。食物アレルギーがもた
で倒れた長野県松本市のグラウンドには、AED が
らすリスクに対して認知度が低かったために起き
なかった。AED によって彼の死を防げたかどうか
た悲劇であったが、20 年以上たった今でも、大半
は今となっては分からないが、松本市は AED を
の日本人のアナフィラキシーに対する認知度は高
市内の運動施設に緊急に配備することを決めるな
いとはいえない。
ど、日本各地で AED の重要性が議論されるよう
最近では、美容石鹸に含まれていた小麦由来成
になった。
分が引き金となり、国民生活センターだけで 400
エピペンも同じように理解が進み、尊い命が1
件を超える食物アレルギー反応の相談が寄せられ
つでも救われることを期待する。薬価により買い
ている。重篤な症状となるケースも少なくないよ
やすくなったエピペンが、この先どこまで国内で
うで、8 月 30 日の読売新聞によると、兵庫県の女
普及するかが注目される。
性が重体になるなど、アナフィラキシーを発症し、
意識不明になった人も複数いるという。このよう
な例から窺えるように、アナフィラキシーは意外
と身近にある大きな問題なのである。
アナフィラキシーを発症した場合、1 分 1 秒を
争う時間との勝負になる。急速に進行した場合は
医療機関に搬送してからの処置では間に合わない
場合があるため、初期症状が出た時点でエピペン
を用い、重篤化を予防することが重要とされる。
今後報告される被害の件数が増えるにつれ、日本
でも、アナフィラキシーの症状や応急処置に関す
(写真提供:マイラン製薬株式会社)
9
Oct.2011
Vol.13
The Academia Highlight アカデミア・ハイライト[13]
⾮侵襲を⽬指す内視鏡⼿術の進展
うのめ・たかのめ
by
この 8 月の終わりに、パシフィコ横浜で万
ごく普通の手技として普及し始めた。これま
国外科学会が開催された。日本では 34 年ぶり
での低侵襲手術の概念を覆すような技術の進
とのことで、皇太子殿下のご臨席を賜るほど
歩といってよい。
の晴れ舞台となった。注目すべき点は、1,100
内視鏡手術で忘れてならないのは、手術ロ
余件の研究発表中、内視鏡手術に関する発表
ボットの存在である。現時点では米社が 2000
が全体の 2 割近くを占めたことである。特に、
年に市販を始めた「ダヴィンチ」が全世界で
単孔式内視鏡手術は整容的なメリットを享受
約 2,000 台を設置して独占状態にあり、米国
する形となり、先輩格の NOTES(経管腔的内
では前立腺癌手術の 9 割はこのロボットを介
視鏡手術)の低迷をよそに、内視鏡手術全体
して行われている。執刀医が 3 次元画像を見
の 2 割に達した。
ながら、手元のコントローラでヒトの腕と全
検査手段としてスタートした内視鏡は、各
く同じ動きのできるロボットの腕を思いのま
部位ごとに特化した硬性鏡・軟性鏡の発展と
まに操作できる。唯一の弱点は手指の触感が
相まって、1987 年に腹腔鏡下胆嚢摘出術が成
ないことである。この欠点を克服する技術は、
功して以来、その低侵襲性によって、治療へ
慶應大や東工大ですでに完成域に達してお
の応用が消化器外科領域全般はいうに及ば
り、それを組み込んだ手術ロボットが市場に
ず、泌尿器、産婦人科、小児科などに瞬く間に
出てくることは疑いがない。薬事認可が遅れ
広まったことはよく知られている。
ていたわが国でも 2 年前に承認されて以来、
特に今世紀に入ってからは、細径化や拡大
急速にダヴィンチを導入する医療機関が増
鏡、屈曲鉗子などの補助機器群の改良が進み、
え、この 1 年で 20 台近くが新たに稼動し始め
整形外科分野や脳神経外科分野へも内視鏡手
た。深部の病巣へもより安全にアプローチで
術が拡がった。拡大した明視野下での手術は
きることなどが評価されているのであろう。
開腹・開胸・開頭手術よりも安全性が高く、
非侵襲性へのもう一つの挑戦は、カプセル
また、術後の回復の早さや優れた整容性への
内視鏡である。イスラエルに続いて、わが国
評価が浸透したことが大きい。もっとも、鏡
も製品化に漕ぎ着けた。まだ自走性に難はあ
視下手術は左右反転像の方向感覚に習熟しな
るが、これまで映像化の難しかった小腸内の
いとスムーズな手技が行えないので、その技
撮像が可能になったことは大きい。自走性の
術習得は依然大きな課題ではある。
改善と治療手段の搭載に向けた改良が急ピッ
ここ数年は、革命的ともいえる視認性の改
チで進んでいる。その実用化は意外と早いか
良が内視鏡手術にもたらされた。照射光の波
もしれない。
長選択により、組織とりわけ血管の状況をよ
内科医は血管内手術等を内視鏡治療として
り明確に可視化することが可能になったので
発展させた。外科医の一部は内視鏡手術に果
ある。腫瘍が良性か悪性かも術中に即断でき
敢に挑戦して隆盛に導いた。両者のコラボレ
るため、組織切除を過不足なく迅速に行える。
ーションが、次世代を大きく拓くだろう。
内視鏡的粘膜下層剥離術といった離れ業が
10
Oct.2011
Vol.13
Medical
Device
Daily
―
2011/9/1 2011/9/30
(
)
Diagnostics
リングは、定期的な外来受診の回数を削減すると
して、先進国を中心に急速に普及している。欧州
心臓病学会 ESC2011 では、フランスで行われた
Iris 社が前⽴腺癌の
ICD 遠 隔 モ ニ タ リ ン グ に 関 す る 臨 床 試 験
予後アッセイの
市販前届を完了
EVATEL の結果が発表された。
これまでの臨床試験では、遠隔モニタリングの
2011 年9 ⽉26 ⽇
安全性や通院回数の減少効果などが検証されたが、
EVATEL では遠隔モニタリングによる死亡率の
自動体外診断装置メーカーの Iris International
抑制に焦点を当てた。また、バイオトロニック、
社は、前立腺癌の予後を検査するアッセイ
メドトロニック、セント・ジュード・メディカル、
「NADiA ProsVue」の市販前届 510(k)を完了した。
ボストンサイエンティフィックといった複数メ
リアルタイム PCR と免疫アッセイを組み合わ
ーカーの ICD を使用した。ICD を使用する 1,501
せた同製品は分子診断のプラットフォームで、癌
人を遠隔モニタリング群と外来受診する対象群に
や感染症に関連するタンパク質を、1ml の血液か
分け、フランスの 30 の医療機関にて1年間の試
らフェムト(1/1015)g 単位で検知できる。血液
験が行われた。
中の前立腺特異抗原(PSA)の体外診断を手始め
評価項目は、①「全死亡」、②「冠動脈疾患によ
に、乳癌検査なども手掛けたいとしている。
る入院」、③「ICD インプラントの不成功」、④「不
前立腺摘除を受けた 304 人を対象に、術後 10
適切な ICD 作動」。①~③の項目において 2 群間
カ月間で 3 度、NADiA 検査を行ったところ、陰
の差は認められず、遠隔モニタリングによる死亡
性適中率が 92.7%、陽性適中率が 78%であった。
率の抑制は証明されなかった。一方で、④「不適
米国では年間 85,000 例の前立腺摘除が行われ
切な ICD 作動」の抑制には効果が認められた。研
ており、そのうち 20%が再発し、残りの 80%には
究者は同試験の死亡率に関する解析は途中段階と
再発は認められていない。しかし、再発がなくて
し、これまでの肯定的な臨床試験結果を否定する
も多くの場合、術後に不要な放射線治療を受けて
ものではないとしている。
いる。このアッセイで予後を検査することで、前
立腺摘除を受けた患者の不要な治療を抑制し、放
アボットの BVS、Absorb
末梢動脈疾患への適応を
⽬指す
射線治療などのアジュバント(抗原増強法)によ
る副作用の軽減やコストの削減が期待される。
Cardiology
2011 年9 ⽉12 ⽇
アボット・ラボラトリーズのエベロリムス溶出
ICD の遠隔モニタリング
型の生体吸収性ステント「Absorb」は、冠動脈の
による死亡率の抑制効果、
証明されず
治療用としてすでに CE マークを取得している。
同社は末梢動脈疾患(PAD)の治療でも使用する
2011 年9 ⽉2 ⽇
ため、欧州で臨床試験を開始し、先週ベルギーの
St. Blasius 病院で最初の患者が登録された。
在宅の ICD 患者の状態を監視する遠隔モニタ
欧州とニュージーランドの 10 施設で膝下動脈
11
Oct.2011
Vol.13
の虚血患者 90 人を対象とするこの臨床試験は、
光技術を利⽤した
⼦宮頸癌検査機器 LuViva
市販前承認へ向け 1歩前進
術後 30 日以内での死亡や、術後 1 年での脚部切
断術や再インターベンションなどの有害事象を評
価する。同社は今回の臨床試験が良好であれば、
2011 年9 ⽉6 ⽇
2015 年の前半頃に米国での市販前承認(PMA)
を申請する予定。
Absorb は、本体が生体吸収されるまでの約 2
Guided Therapeutics 社は、子宮頸癌の早期診
年間、血管の狭窄部を拡張して支える。また、半
断に用いる検査装置「LuViva Advanced Cervical
永久的に留置される金属製のステントとは異なり、 Scan」を開発している。市販前承認(PMA)取
生体に吸収されることで自然な血管の機能を回復
得に向け作業は順調に進んでおり、FDA からの第
する効果も見込まれる。
1 回質疑応答を終え、次の段階へ駒を進める。
LuViva は光を利用し、子宮頸癌&前癌を非侵
Oncology
襲かつ無痛で識別する検査装置。細胞レベルでの
生化学的・形態的な変化を検出することで、正常
組織と病組織を区別するバイオフォトニクス技術
植込み型の
センサーチップで
癌の進⾏をモニター
を使用している。従来の子宮頸癌診断法である
Pap テスト等に比べて、組織採取やラボでの分析
を必要とせず、試験結果も即時に得ることができ
2011 年9 ⽉2 ⽇
る。経済性や利便性、簡便性に優れており、操作
法も簡単で診断もつけやすい画期的な製品。
一般的に、癌治療の第一選択肢とされているの
Guided Therapeutics 社は PMA の取得を待た
は手術だが、周囲の神経組織を傷つけるリスクが
ずに、LuViva の国際的な販売へ向けて準備を進
ある脳腫瘍などでは難しい。また、進行が遅い前
めている。
立腺癌は高齢者に多く、手術をしても延命効果が
また、同社はコニカミノルタオプトプロダクト
あまりないばかりか、しばしば患者の QOL を下
と共同で、食道癌の前段階であるバレット食道に
げてしまう。
対応する光ベースの検出技術も開発している。
ミュンヘン工科大学の Bernhard Wolf 教授率
いる研究チームは、癌の近くにインプラントする
IsoRay 社の脳腫瘍治療⽤
センサーチップを開発した。このセンサーは生体
バルーンカテーテル
GliaSite、市販前届完了
組織内に融解する酸素濃度を測定し、癌の進行を
測定する(編集部注:癌の腫瘍周辺部は低酸素状
2011 年9 ⽉13 ⽇
態に陥りやすいことが知られている)。
測定されたデータは、無線で患者の携帯する受
信機へ送信されたあと、主治医へと転送される。
IsoRay 社の脳腫瘍の放射線治療に使用される
医師は癌の進行をモニターし、必要なら手術や化
バルーンカテーテル「GliaSite」が、市販前届
学治療の手配を行う。
510(k)を完了した。この製品は、IsoRay 社が買収
したホロジック社が開発・発売していた製品を安
このデバイスはセンサーチップ、分析器、送信
全に再改良したもの。
機、バッテリーを生体適合性の高いプラスチック
に入れたもので、親指の爪 2 つ分以下とかなり小
GliaSite は脳腫瘍治療としては唯一のバルーン
さいサイズ。すでに培養細胞を使った実験はクリ
を使用した密封小線源療法で、悪性腫瘍の一種で
アしており、今後は pH や温度のセンサー、必要
ある膠芽腫や転移性脳腫瘍の治療も可能。脳腫瘍
時に化学療法薬を溶出する小型投薬ポンプの追加
摘出後、空洞となった癌細胞の残っている可能性
も検討されている。
がある場所に、バルーンカテーテル経由で液体状
12
Oct.2011
Vol.13
の放射線物質セシウム 131 を注入する。バルーン
っている。
カテーテルを使い侵襲を小さくすることで、周囲
しかしホログラムは、データから画像を再構築
の正常な細胞へのダメージが極力抑えられる。
するためにコンピューターが必要。そのため、こ
セシウム 131 は、術中の正常細胞あるいは内臓
の顕微鏡でデータを獲得したあとに、観察者はノ
へのダメージや副作用を最小限に抑えることがで
ートパソコンあるいは携帯電話を用いてデータを
き、かつ完治率が高く効能持続期間も長い。
クラウドサーバーに送る手間がかかる。
GliaSite の FDA 認可を受けて、IsoRay 社は液体
とはいえ、ホログラム顕微鏡は HIV 患者の免疫
状のセシウム 131 の薬事承認を目論んでおり、使
状態やマラリア患者の病理組織の観察など、遠隔
用拡大を図りたい考え。
地域の患者の診断に携わる臨床医のニーズに応え
同社のカプセル状セシウム 131 は、すでに多種
ることができそうだ。
にわたる癌治療に使用されている。在宅で治療で
きること、放射線照射治療等に比べ正常組織への
患者が CO2 ガスを
⾃⼰充填する
ティッシュ・エキスパンダー
ダメージが少ないこともあり、ニーズは高い。
2011 年9 ⽉1 ⽇
AirXpanders 社は、乳房切除術患者に対するテ
ィッシュ・エキスパンダー「AeroForm」につい
て、IDE(治験用医療機器に対する適用免除)を
取得した。
(http://www.isoray.com/)
従来の乳房再建術は、人工乳房を植込む前に、
Other Products
胸筋にティッシュ・エキスパンダーを挿入し、そ
の後通院しながら週 1 回、生理食塩水をシリコン
バッグ内に注射する治療が4カ月にもわたって必
UCLA の研究者らが
要だった。一方 AeroForm は、従来のような注射
ホログラム顕微鏡を開発
が不要で痛みもなく、患者自身が自宅で調整し膨
2011 年9 ⽉1 ⽇
らませることができる。AeroForm 内部には CO2
が圧縮して蓄えられており、患者に植込んだあと
UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)
リモコンを患部にかざしてボタンを押せば、10cc
の研究者らが、レンズの替わりにホログラムを利
の圧縮 CO2 が AeroForm 内に放出され、組織拡張
用したホログラム顕微鏡を開発。
ができる。患者は 3 時間以上の間隔を空けて、1
この顕微鏡は、光学顕微鏡のレンズの替わりに
日 3 回まで膨らませる操作ができる。同社が最近
ホログラムを用いることで軽量化に成功。中くら
オーストラリアで行った治験では、およそ 2 週間
いのバナナ程度の重さで、手のひらに収まる。大
で乳房拡大が終了した。
FDA に市販前届 510(k)を申請するための中枢
量生産されている電気部品を用いており、レーザ
ーポインターから流用した光源が 5 ドル、iPhone
試験には 6~8 カ月かかる見通し。
から流用した集光用のセンサーチップが 15 ドル
以下で、原材料費は 50~100 ドル。2 つのモード
があり、
「トランスミッション」モードは血液など
体積の大きなサンプルに、
「リフレクション」モー
ドは密度が高く透過性の低いサンプルに用いられ
る。両モードとも、空間解像度は 2μm 以下とな
(http://www.airxpanders.com/)
13
Oct.2011
Vol.13
世界中で、体幹・四肢・術後背部の疼痛コントロ
マシモの Pronto-7、
厚労省と
カナダ保健省が認可
ールのための脊髄刺激装置として使用が認められ
ている。今回認められたのは末梢神経刺激(PNS)
用としての使用で、後頭部皮下に植込んだリード
2011 年9 ⽉6 ⽇
から軽い電気刺激を末梢神経(後頭神経)に与え
て治療を行う。
マシモの新型パルスオキシメーター「Pronto-7」
今回の承認はセント・ジュードが行った慢性片
が、日本の厚生労働省およびカナダ保健省による
頭痛の比較試験の結果にもとづくもので、その概
薬事承認をクリアした。
要結果はこの 6 月の国際頭痛学会で発表された。
Pronto-7 は、血液採取なしにトータルヘモグロ
この研究は、1 カ月に平均 26 日以上も頭痛がある
ビン濃度(SpHb)、動脈血酸素飽和度(SpO2)、
難治性片頭痛患者 157 人を対象にして行われた。
灌流指標(PI)、脈拍数を 1 分以内で測定可能。
患者からの回答は「とてもよく/よく痛みが取れ
非観血的かつ持続的な SpHb 測定により、タイミ
た」が 65%、「この治療をほかの患者に薦める」
ングよく輸血を開始したり、不要な輸血を回避し
が 88%、「QOL が向上した」が 68%、「治療結果
たりすることができる。また、潜在出血を早期に
にとても満足/満足」が 67%となっており、従来
検知し、素早い介入が可能となる。
の薬物治療でも効果が上がらず、日常生活に支障
手のひらサイズで 300g を切る軽量化を実現し
をきたしている患者群でも有効性が立証された。
ており、幅広い患者に対応した最大感度モードを
同社は米国での適用拡大に向けて、今年中にも
備え、3 サイズのセンサーが選べる。さらに将来、
FDA との交渉に乗り出す方針である。
電子カルテへの検査結果の無線送信や無線印刷が
できるようにブルートゥース機能も搭載している。
非観血的かつ持続的な SpHb 測定は、2008 年
Vidacare 社の
電動⾻髄吸引システム
に「Radical-7」で市販前届 510(k)をクリアして
OnControl
おり、2010 年にはメディケアの診療報酬対象とな
2011 年9 ⽉15 ⽇
っている。
メディケア・メディケイド・サービスセンター
は期限付き保険給付(pass-through payment)対
象として、電動骨髄吸引システムによる生検を新
たに認可した。Vidacare 社の「OnControl Bone
Marrow System(OnControl System)」のような
電動骨髄吸引システムを外来で用いた場合に、病
(http://www.masimo.com/)
院は医療機器の加算給付を受けられるようになり、
患者に応じた最良の骨髄生検法を選択できるよう
セント・ジュードの
神経刺激システム Genesis、
欧州で適⽤拡⼤
になる。新たな医療機器分類コードは C1830、保
険償還は 10 月 1 日適応開始で、
施行期間は 2 年間。
OnControl System は骨髄穿刺・吸引を電動で
2011 年9 ⽉8 ⽇
行うシステムで、パワーソースを内蔵したハンド
ピースやサンプルチューブ等が同梱されたキット。
セント・ジュード・メディカルは CE マーク取
臨床試験では、従来の方法に比べ生検サンプルを
得済みの神経刺激システム「Genesis」について、
短時間で大量に採取でき、患者の苦痛も軽減され
新たに難治性慢性片頭痛の治療用として、適用拡
たという。同社は、「40 年来の骨髄生検技術にお
大の CE マーク承認を受けた。Genesis はすでに
けるブレークスルーとなる製品だ」としている。
14
Oct.2011
Vol.13
なアプリケーションが含まれる。
S&N の陰圧創傷閉鎖法
システム PICO、
ズながら正確なインスリン投与を 24 時間 365 日
2011 年9 ⽉13 ⽇
の制御を無線で行う。タッチスクリーンのインタ
皮膚に貼り付けるタイプの Pump は、極小サイ
カナダで発売開始
行える。Handset は、医療機関への通信や Pump
ーフェースは、アップルの iPhone に似たスマー
スミス・アンド・ネフュー ウンドマネジメン
トフォンのような操作感で親しみやすい。リアル
トは、使い捨て陰圧創傷閉鎖療法(NPWT)シス
タイムかつワイヤレスでデータを送受信するため、
テム「PICO」をカナダで発売する。この製品は、
患者は日々の詳細な記録をつける負担から解放さ
今年 4 月にカナダ保健省から承認され、5 月に CE
れ、医療機関は遠隔で患者の状態をモニタリング
マークを取得したばかり。
でき、最善の糖尿病治療が可能となる。
ポケットサイズの PICO は急性、慢性の両創傷
に対応し、ハイリスクな外科的切開や皮膚移植に
も使用できる。また、創傷浸出液の優れた管理機
能を備え、創傷浸出液を貯めるキャニスターが不
要で、使用しやすい設計となっている。
加えて、最大 7 日間装着可能で、シリコン製の
パットにより痛みの軽減を実現した。早期回復お
よび合併症の予防も見込めることから、医療コス
トの削減が期待できることも魅力の 1 つ。
(http://www.cellnovo.com/)
従来の NPWT から飛躍的にバージョンアップ
した画期的な製品で、NPWT の主要なデバイスと
肺気腫治療システム
InterVapor が
CE マークを取得
なることが期待される。
2011 年9 ⽉27 ⽇
Uptake Medical 社の、肺気腫治療用の気管支
鏡を用いた肺容量減少術システム「InterVapor」
が CE マークを取得し、欧州での販売にゴーサイ
ンが出た。
(http://global.smith-nephew.com/)
InterVapor は、肺の過膨張した部位に熱蒸気を
あて、自己治癒力を利用し、段階的に呼吸能力を
Cellnovo 社が
向上させるというもの。外科的手術を行ったり機
糖尿病管理デバイスの
CE マークを取得
器を留置する必要がなく、低侵襲に呼吸空間を拡
大する唯一の方法で、合併症のリスクを最小限に
2011 年9 ⽉26 ⽇
抑えることができる。同システムは、CT スキャ
ンによる情報にもとづき患者の状態を解析するコ
Cellnovo 社(英)は、世界初となるモバイル型
ンピューター解析装置「IP3」、正確な温度と圧力
の糖尿病管理デバイスの CE マークを取得した。
で熱蒸気エネルギーを放出するための
このデバイスにはパッチ型のインスリンポンプ
「InterVapor Generator」、気管支鏡で使用でき
「Cellnovo Pump」、血糖モニター内蔵のモバイ
るバルーンカテーテル「InterVapor Catheter」
ル端末「Cellnovo Handset」、端末用の拡張可能
(2.6mm)で構成されている。
15
Oct.2011
Vol.13
Agreement&Contract
肺気腫患者を対象とした 6 カ月間の国際的多施
設共同臨床試験「VAPOR」では、すべての患者で
処置中の合併症もなく治療を成功させている。加
Cardica 社、センチュリーと
MicroCutter の
えて、試験期間中に 83%の被験者で肺活量の増加
や息切れの改善、運動量および QOL の向上を確
販売契約を結ぶ
認した。また、肺の過膨張およびエアトラッピン
2011 年9 ⽉12 ⽇
グ(末梢気道が閉塞してしまい、うまく空気を吐
けない現象)の劇的な減少も実証されている。
腹腔鏡下で使用する自動吻合器を製造する
Cardica 社は、今後発売が予定される自動吻合器
J&J エチコン エンド、
「MicroCutter」について、センチュリーメディ
安定性の向上した
電動エンドカッターを発売
カルと販売契約を結んだ。
両社は以前からパートナー契約を結んでいる。
2011 年9 ⽉29 ⽇
センチュリーはすでに日本で Cardica 社の非吸収
性の血管用自動吻合器「PAS-Port」を販売してお
腹腔鏡手術中の組織外傷リスク軽減のため、
り、日本の自動吻合器市場での豊富な販売実績を
J&J エチコン エンドサージェリーは 9 月末に、
持つ。今回の契約では、センチュリーが日本の厚
業界初の電動エンドカッター(自動縫合器)
生労働省の承認取得を行い、認可され次第日本国
「Echelon Flex Powered Endopath Stapler」を
内で販売を開始する。これにあわせて、Cardica
発売した。
社はセンチュリーから 400 万ドルの貸付を受け、
MicroCutter の開発に充てる。
同製品は、ステープルを打つ前に適した組織厚
をはさみこみ、保持し、リークやステープルライ
MicroCutter はシャフト径が 8mm で、一般的
ンの確認ができる「先行圧縮システム」を備える。
な鏡視下手術、NOTES、SILS で使用でき、術野
また、パワーアシスト機能により、競合製品であ
でポートから引き出すことなく 8 回ステープルを
るコヴィディエンの「Endo GIA」に比べ、切離
補充できる。切除、クランプに加え、バイポーラ
縫合時の機器先端のブレを 63%軽減することに
の凝固機能を備えている。
成功。重金属を使わない使い捨てバッテリーを使
Global Market
用している。
腹腔鏡手術時、術者はエンドカッターをスムー
ズに扱い、ファイヤー時の不注意な動作を軽減す
GE、癌造影技術の開発に
10 億ドルを投資
ることが、組織損傷を最小限にするために求めら
れている。新しい電動エンドカッターはそのニー
2011 年9 ⽉19 ⽇
ズに適した製品となっている。
GE は癌患者の増加に対応し、2009 年から進め
ているヘルスケア部門の「ヘルシーマジネーショ
ン」キャンペーンの一環として、今後 5 年間で 10
億ドルを投資し、下記のような癌関連装置の製品
化や、癌診断技術の開発を行う。
(1) 新しいバイオマーカー
タキサン系抗癌剤の効果がない癌患者を事前
に特定するバイオマーカー「TLE3」の研究を
(http://www.ethiconendosurgery.com/)
16
Oct.2011
Vol.13
行い、不要なタキサン系抗癌剤の治療による
の 2 手法にこだわらず、より侵襲の少ない手
副作用を抑制する。
法の確立を目指す必要があると主張し、安全
2013 年までの市場投入を目指す。
性や結果、コストに焦点をあてるべきだと述
(2) 分子病理学
べた。また、腹腔に開ける穴を減らせば低侵
癌の治療法を決定する診断技術を開発し、よ
襲な手術になるが、患者を危険にさらすより
り効果的な個別化医療の提案を行えるように
は複数の穴を開けたほうがよいと忠告した。
する。開発中の「multiplexing」という技術
これまでのところ、内視鏡手術のうち、SPS
は、単一の組織切片上で 50 種以上の細胞染色
で行われたのは 15%に過ぎない。将来的に、
を行うことができる。
現在は多孔式のみで行われている胆嚢摘出に
(3) 癌研究
SPS が用いられるようになると考えられる。
同社の持つ革新的な技術を、癌の背景にある
NOTES は市販前届 510(k)や保険償還が完了
分子機序の理解、新薬の発見やバイオマーカ
していないこともあり、米国内での普及に苦
ーの研究に役立てる。細胞や細胞内の画像技
戦している。
術「IN Cell 6000」や、GE が買収したアプライ
(2) SPS の学び方
ドプレシジョン社の超高解像顕微鏡を活かす。
(4) 代謝性イメージング剤の開発
Curcillo 氏は、SPS を学ぶ場合には、通常通
り 5 つの穴を開けて手術を行うことから始め、
カリフォルニア大学と提携し、
「C13」ベース
徐々に開ける穴を減らしていき、1 つか 2 つ
の代謝性イメージング剤を開発。
の穴で手術を行うのに慣れるとよいと述べた。
ヒトのリアルタイムの代謝イメージングに成
Curcillo 氏の次に発表した南フロリダ大学の
功しており、腫瘍の境界線や増殖速度の観察
S.Ross 氏は、これとは全く別のアプローチを
につなげ、癌治療に活かす。
主張した。彼女によると、SPS は急速に広ま
(5) IT ソリューション
りつつある手法であり、上達が早い。まず 1
治療効果をモニタリングし、スキャンから治
つの穴を開けることから始め、必要に応じて
療計画までのワークフローを実現し、生産性
開ける穴を増やすべきだと述べた。
を改善するソリューション「MD Connect」を
(3) コストについて
SPS を行うための補助的なデバイスはたくさ
開発。
ん出回っているが、このようなデバイスを使
Conference
用すると、外科医や病院側のコスト負担にな
る。保険会社が1例当たりに支払う金額は、
多孔式だろうと SPS だろうと同じだからであ
内視鏡⼿術の将来展望―
SPS か NOTES か?
テレメンタリングが普及
る。SPS を行う際に、1つだけ補助具を用い
て年間 600 人の胆嚢摘出を行う場合、病院側
に 20 万ドルのコストがかかるとの試算もあ
2011 年9 ⽉22 ⽇
る。逆に、特別な器材を使用せず SPS を行う
場合は、多孔式と比較して1例当たり 190 ド
第 20 回国際ラパロエンドスコピー外科学会議
ルも安くつくとの報告もある。SPS の器材市
(Society of Laparoendoscopic Surgeons:SLS)で、
場は、価格低下と医師の技術向上にともなう
主に以下の 5 点についての将来像が話し合われた。
需要減から、今後縮小すると見込まれる。
(4) 未来のロボット手術
(1) SPS か NOTES か
Ross 氏は、将来的には SPS かロボットを用
SPS(単孔式内視鏡手術)と NOTES(経管腔
いた手術しか行われなくなり、多孔式の手術
的内視鏡手術)は、どちらも低侵襲な手法。
は完全に消えるだろうと予測している。現在、
Fox Chase 癌センターの P.Curcillo 氏は、こ
Intuitive Surgical 社の手術用ロボット「ダヴ
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Oct.2011
Vol.13
ィンチ」は市販前届 510(k)を完了しておらず、
利用できない。また SPS も発展途上である。
代替しようという意図が根底にあるという。
例えば、米軍は毎年 33,000 匹の動物を用いる
しかし、患者の要求の高まりを受けてロボッ
実験を、今後数年で、コンピューターシミュレー
ト手術は広まると予測されており、世界では
ション技術で代替する予定にしている。同様の技
平均価格 200 万ドルの装置が 2,000 台以上使
術を用いて献体や特定の患者のシミュレーション
われている。ロボット手術は、技術のない医
モデルが作成できるようになれば、術前プランを
師でも行えるという利点があるが、ロボット
行ってから本番に臨めるようになるかもしれない。
に頼りすぎると医師の腕が鈍る、開腹手術が
Administration
できなくなるという懸念もある。
(5) テレメンタリングによる指導
ベス・イスラエル・メディカルセンターの
AdvaMed が警鐘、
J.Rosser 氏は、腹腔鏡技術とテレビゲームを
増税がメーカーの
アメリカ離れを加速する
組み合わせ、経験の浅い医師が、遠隔地から
先輩医師の手術指導を受けられるようにした
2011 年9 ⽉8 ⽇
先駆者。同氏によると、遠隔地にいてもその
場の現在の状況を映像で確認できるテレメン
米国先進医療技術工業会(AdvaMed)主催の会
タリング(telementoring)による指導が今後
普及するという。
議 で 、「 患 者 保 護 お よ び 医 療 費 負 担 適 正 化 法 」
このようなシステムは、州を越えるライセン
(PPACA)により課された 2.3%のデバイス税が
スの取得が困難という医療法上の理由で普及
大きな議題となった。
してこなかった。同氏は、医療過誤に対する
AdvaMed は、
「新たなデバイス税により、医療
補償が充実し、すべての州で、州を越えての
機器産業の合計税率は現行の約 2 倍、実効税率は
一時的な医療行為が許可されるようになれば、
世界最高水準となり、米国の競争力を傷つける。
外科医はテレメンタリングによる指導をより
直接雇用者 40 万人のうち、4.3 万人の雇用と 35
利用しやすくなるだろうとの見方を示した。
億ドル相当の人件費が失われるだろう」という声
明を発表。
識者の 1 人 Furchtgott-Roth 氏は、「安価な税
外科医の⼿術練習に
シミュレーション
イメージングの利⽤を
率と労働力を求め、生産ラインの 10%以上が海外
移転する可能性がある」
「海外に拠点を持つ大手メ
ーカーは中小より海外移転を進めやすいが、米国
2011 年9 ⽉29 ⽇
に輸出すれば課税から逃れることはできない」と
述べた。
先端医療技術学会(SMIT)の 2011 年度国際会
AdvaMed はまた、「医療機器メーカーは 2006
議と、イスラエルのコンピューター支援手術・医療
年に、課税所得 137 億ドルに対して 31 億ドルを
ロボ・画像診断シンポジウム(ISRACAS)が、9
納税している。年間のデバイス税 26 億ドル以上
月初旬にテルアビブで同時開催され、画像診断分
がさらに追加されると、技術革新は間違いなく鈍
野の世界のトップが集結した。
る。新製品の研究開発に特化した設立間もない企
ワシントン大学教授の Richard Satava 氏は、
業は、設立当初に赤字が続くにもかかわらず、利
医療訓練にコンピューターシミュレーションを用
益の有無に関係なく納税義務が課せられるため、
いる新たな構想について発表した。同氏によれば
特に大きな影響を受ける」と指摘している。
現在、米国国防総省や大企業はシミュレーション
――――――――――――――――――――――
技術に莫大な投資を行っている。この背景には、
編集室注:本文中、特に国名記載のない会社は、本社所在
地がすべて米国です。
動物や献体をコンピューターシミュレーションで
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Kawanishi Hotline
前号の Medical Device Daily から、カワニシの社員が選んだ注目の記事をご紹介します。
マシモ社、SEDLine 脳波モニターの
CE マークを取得〈8/25〉
カーで普及・研究されるようになるのではないか。
4 つの脳波計を⽤いて⿇酔中の脳の活動をビジ
ュアル化。脳の両側の情報が得られ、不均整な
活動を即座に探知できる。鎮静度を表す同社独
⾃の PSI 指標を始めさまざまなデータがリアル
タイムに得られ、個々に適した滴定が可能。
との見方で、光ファイバーを用いたリード線の強
医療現場では、現実的な話になれば非常に画期的
度や生体適合性がいかほどかが気になるとの声も
聞かれる。(松井)
VeraLight 社の⾮侵襲式糖尿病
検査装置が CE マークを取得〈8/2〉
 日本光電が販売している「BIS モニタ」と、コヴ
ィディエンの「INVOS」やアイ・エム・アイ取り
「Scout DS」は⾎液検査や絶⾷の必要がなく、
すぐ結果が得られる⾮侵襲式糖尿病スクリー
ニング検査装置。累積的な⾎糖への暴露や酸化
ストレスに関する⽪膚内のバイオマーカーを
検出する独⾃技術で、⽪膚蛍光を測定する。
扱いの「NIRO」の機能を兼ね備えているように
思われる。急性期基幹病院において BIS は麻酔科
必須の機器であり、当該機器も麻酔深度モニター
としての需要は見込めるだろう。
「麻酔中の脳の活
動をビジュアル化」できることで、より詳細な患
 糖尿病患者にとって、血糖測定のための穿刺はイ
者監視が可能になるため、服薬指導や麻酔の導入
ンスリンの自己注射と並んでかなりの負担である。
に困難がともなう精神障害患者のケースなどでは
糖尿病患者は若年から老年までと幅広く、今後ま
有望な選択肢となりうる。ただし、すでに BIS は
すます低年齢化することを考えると、限りなく侵
かなり普及しているうえ、生体情報モニターとの
襲を少なくすることによる市場性は大きい。低年
接続などでユーザビリティを高めている。現在
齢や老人は痛みに弱いが、針を刺さなくていいと
BIS の数値のみで満足している麻酔科医に、いか
なれば、疼痛や厚皮化の問題はなくなり、患者の
に「脳の活動のビジュアル化」のメリットを啓発
QOL は確実に高まる。また、医療廃棄物である穿
し、差別化していくかがカギになる。(樋口)
刺後の針も減るので、医療全体の効率化につなが
るかもしれない。比較的大掛かりなこの装置が市
光刺激を利⽤するペースメーカの
研究が進む〈8/15〉
場競争力を持つかどうかは、価格帯によるところ
が大きいのではないか。(岡)
 糖尿病は今後も増えることが予想されており、採
光エネルギーで脈拍を補正するペースメーカ。
光に敏感なタンパク質を発現する細胞と⼼筋
細胞を組み合わせ、光によって刺激を受ける⼼
臓組織を作製、⻘⾊光パルスで⼼臓刺激を⾏う。
リードは光ファイバーで寿命は約 50 年。
血せず測定出来れば患者負担も少なくなるので、
今後成長できるのではないか。酸化ストレスに関
しては、まだこれからと思われる。(問田)
 ペースメーカを植込まれた患者は外来のたびに電
池寿命を気にし、交換オペともなれば大きなスト
レスを感じている。臨床使用までには長い時間が
必要だろうが、寿命 50 年なら多くは生涯一度の
植込みで済むので、患者の期待は大きいだろう。
(http://www.veralight.com/)
技術自体の安全性が保証されれば、すべてのメー
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Misonix 社、創傷デブリードマン
分野に新たに参⼊〈8/11〉
注⽬のデバイス関連記事を
ピックアップ!(未掲載記事より)
超⾳波⾻切除システム「BoneScalpel」と超⾳
波創傷デブリードマンシステム「SonicOne」
を組み合わせ、外科の創傷デブリードマン分野
に参⼊。⽶国は同分野が償還の対象であること
もあり、関連製品の市場展開を⽬指す。
 超音波骨切除装置自体は目新しいものではないが、
創傷デブリードマンに特化していることから、使
いやすさでは他を圧倒するのでは。ただ、日本で
は創傷デブリードマンは日常的に行われており、
特殊な器具を使用しなくても事足りている。劇的
■ MedShape 社の形状記憶技術を使った
整形インプラント〈8/4〉
形状記憶合金デバイスは、従来の骨ねじに比
べ損傷部に持続的に圧縮圧をかけられるた
め、治療成果が良好。損傷部での局所的骨吸
収などの変化にも柔軟に対応できる。同社は
形状記憶合金技術で 7 月 26 日に米国特許を
取得している。(中脇、若江、千羽)
■ J&J デピューの膝置換術計画システム
「Trumatch」が市販前届完了〈8/22〉
現在 100 万人以上が使用する同社の人工膝
関節「Sigma」向けで、術中のスムーズで高
精度なポジショニングをサポート。手術機械
や手術工程を最小限に抑えることができる
ため、使用しない場合と比べ、手術時間を平
均で 35 分短縮できる。(西山、原田)
に手術時間が短縮する、または材料費まで償還対
象になるなどのメリットがなければ、受け入れは
難しいと思われる。(青木)
 化膿性関節炎、術後の感染、開放骨折後の創傷処
置等、整形分野でもデブリードマンは多い。
「脊椎
分野で経皮的にデブリを行いたい」という要望を
聞くことがあるが、腹腔鏡手術の製品も開発中と
のことなので、長いプローブがあれば対応できる
■ BoneSupport 社(スウェーデン)の
〈8/22〉
⾮中毒性⾻代⽤材「Cerament」
骨の再生と骨折治療を行う注入可能な生体
適合性セラミック骨代用材。熱を発するアク
リル樹脂系骨充填材に比べ、非中毒性で組織
にも優しいのが特徴。(二神、千羽)
だろう。国内で発売されれば、KCI 社の V.A.C.
セラピーが競合になる。ネックは保険請求できる
かどうかだろう。(原田)
MannKind 社の超速効型インスリン、
吸⼊器を使った臨床試験が始まる〈8/15〉
■ コンバテック社、KCI 社の TOB に名乗り
〈8/23〉
創傷ケア製品メーカーの Kinetic Concepts
(KCI)社の TOB(株式公開買い付け)に、
コンバテック社が新たに名乗りを上げた。
KCI の買収は、先月 Apax Partners 社(英)
とカナダの 2 つの年金基金団体が 65 億ドル
で合意に至ったばかり。(片桐、原田)
超速攻型インスリン製剤「Afrezza Inhalation
Powder」と専⽤の吸⼊器「Afrezza Inhaler」
の組み合わせ。1 型、2 型糖尿病患者向けで、
⾷事開始時に吸引すると急速に吸収される。有
効性と吸⼊にともなう肺の安全性を試験中。
 以前、
「速効型」のインスリンが開発された際に「吸
入器」もリリースされたが、当時はインスリンコ
ントロールにおいて皮下注射の効果を上回れずに
市場から姿を消したと聞く。
「超速効型」で再挑戦
の模様。効果が実証されれば、インスリン自己注
射につきもののデバイスの準備、消毒、感染性廃
棄物の処理等の手間と疼痛の回避が可能なため、
競争力はあると推測できる。ただし医薬品であり、
新薬としての承認であれば、器材ディーラーの販
■ エースクラップの
再利⽤可能なトロッカーシステム〈8/25〉
「Reusable Trocar System」は、軽量小型で
最適な重量配分を実現した人間工学にもと
づくデザイン。廃棄物が少なくコストパフォ
ーマンスがよい。(中井、竹内)
売機会は少ないか?(片桐)
※〈 〉は MDD の配信日、
( )内は回答社員の名字
20
Oct.2011
Vol.13
[出典紹介]
BB&T (Biomedical Business &Technology)
医療・検査器材を中心に、海外医療の最新情報や将来動向をたんねんに収録。
医療制度、市場動向、保険者や病院団体の動向、学会、新技術、治験、FDA、
新製品、M&A、技術提携、大型契約、VIP インタビュー等。
HBQI (Healthcare Benchmarks and Quality Improvement)
品質や患者満足度向上のための診療や経営管理に関する最新情報、様々な事例紹介。
HRM(Healthcare Risk Management)
医療訴訟や医療機関におけるリスクマネジメントの最新情報。
CMA(Case Management Advisor)
入院から退院、在宅医療までのケース・マネジメントにまつわる様々な問題やその解決方法を収録。
倫理・法的問題、終末期問題、疾病管理、予防、労働衛生、専門能力開発等。
HCM(Hospital Case Management )
病院が抱える多くの問題を病院間で共有・解決するためのアドバイスやテクニック、
成功/失敗事例の紹介。効果的な退院計画、患者ケアの改善、経営戦略等。
MDD(Medical Device Daily)
医療・診断機器等に関する新技術・治験・開発、新製品に関する情報や
医療系学会の情報を掲載したデイリーニュース。
アドバイザリー・スタッフ――メリー・コーベット/宇野恵裕/福⼭健
エディトリアル・スタッフ――前島達也/佐藤崇/岩⽥斐/海野裕美/岡⼭⼤学 MESS/三宅優美/渡辺若菜
デザイン・フォーマット制作――川畑博昭
Oct. 2011 Vol.13
年 12 号発⾏
年間購読料:46,800 円〈税込:49,140 円〉
[発⾏⼈]―――野瀬洋輔
[編集⼈]―――前島達也
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