ジェネリック医薬品市場に関する調査結果 2015

2015 年 6 月 17 日
ジェネリック医薬品市場に関する調査結果 2015
-ジェネリック医薬品使用促進策により、市場は拡大傾向に-
【調査要綱】
矢野経済研究所では、次の調査要綱にて国内のジェネリック医薬品市場の調査を行った。
1.調査期間:2015 年 2 月~5 月
2.調査対象:医薬品メーカー、医薬品卸、医療機関、調剤薬局、関連団体、学識経験者等
3.調査方法:当社専門研究員による直接面談、ならびに文献調査併用
<ジェネリック医薬品市場とは>
本調査におけるジェネリック医薬品市場とは、医薬品卸や医薬品メーカー・販社の販売金額(実売)ベースで算
出した。
【調査結果サマリー】
‹ 2014 年度の国内のジェネリック医薬品市場は前年度比 109.5%の 1 兆 1,130 億円
国が推し進める医療費抑制策の一環として、これまで厚生労働省は価格(薬価)の安いジェネリック医
薬品(後発医薬品)の使用を促進しており、2014 年度には後発医薬品調剤体制加算の評価見直しや診
療報酬改定が行なわれ、ジェネリック医薬品への切り替えが進んだことで、国内のジェネリック医薬品市
場は、医薬品卸、医薬品メーカー・販社の販売金額ベースで 2012 年度が 9,315 億円、2013 年度が 1 兆
165 億円(前年度比 109.1%)、2014 年度が 1 兆 1,130 億円(同 109.5%)と増加傾向にある。
◆ オーソライズドジェネリック医薬品への取り組みが進む
わが国においても、ジェネリック医薬品の発売と同時に、ある程度の数量シェアをジェネリック医薬品が
獲得する傾向にあり、また、ジェネリック医薬品間での価格競争が激化してきていること、オーソライズドジ
ェネリック医薬品は先発医薬品と同一・同等品なのでこれまで未採用の医師が採用しやすいことなどの理
由から、医薬品メーカー各社のオーソライズドジェネリック医薬品への取り組みが進んでいくと考える。
◆ DPC/PDPS 対象病院と調剤薬局が国内のジェネリック医薬品市場を牽引
2014 年度の診療・調剤報酬改定により、DPC/PDPS 対象病院および調剤薬局でのジェネリック医薬品
の採用が活発化している。これは、DPC/PDPS 対象病院を評価する係数の一つである機能評価係数Ⅱ
の中に後発医薬品指数が追加されたことで特定機能病院などの基幹病院で採用が進んでいることや、
後発医薬品調剤体制加算の評価の見直しで算定要件が引き上げられたことで調剤薬局における切り替
えも進んだためである。DPC/PDPS 対象病院および調剤薬局がジェネリック医薬品市場を牽引し、2015
年度の国内ジェネリック医薬品市場は、医薬品卸、医薬品メーカー・販社の販売金額ベースで 1 兆 2,180
億円(前年度比 109.4%)に成長すると予測する。
◆ 資料体裁
資料名:「ジェネリック医薬品の実態と展望 2015 年版」
発刊日:2015 年 5 月 29 日
体 裁:A4 判 372 頁
定 価:120,000 円(税別)
‹ 株式会社 矢野経済研究所
所在地:東京都中野区本町2-46-2 代表取締役社長:水越 孝
設 立:1958年3月 年間レポート発刊:約250タイトル URL: http://www.yano.co.jp/
本件に関するお問合せ先(当社 HP からも承っております http://www.yano.co.jp/)
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2015 年 6 月 17 日
【 調査結果の概要 】
1. 市場背景・概要
ジェネリック医薬品とは、新薬(先発医薬品)の物質特許が切れた後、異なるメーカーにより同じ有効成
分で製造する医薬品で、後発医薬品ともいう。医療保険財政の逼迫により、国が推し進める医療費抑制
策の一環として、2002 年度より厚生労働省が価格(薬価)の安いジェネリック医薬品(後発医薬品)の使用
を促進し始めたことで、わが国におけるジェネリック医薬品を取り巻く環境は大きく変化を遂げている。ま
た、同年度に発表された「医薬品産業ビジョン」の中で医薬品産業の将来像のひとつとして、「ジェネリック
ファーマ」が位置付けられたことで、ジェネリック医薬品業界の活性化につながった。
2007 年度には政府の施策により、厚生労働省が策定した「医療・介護サービスの質向上・効率化プロ
グラム」で、ジェネリック医薬品の数量ベースシェアでの具体的な数値目標が初めて明示され、それを達
成するためのさまざまな施策(処方箋様式の再変更、後発医薬品調剤体制加算の新設及び見直し、一
般名処方の導入等)が、その後に打ち出された。
しかし、結果として目標最終年度である 2012 年度でも目標数値には達せず、2013 年度に厚生労働省
※
は、新たな数値目標 と取り組むべき施策を「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」とし
てまとめた。2014 年度には後発医薬品調剤体制加算の評価見直しや診療報酬改定が行なわれ、ジェネ
リック医薬品への切り替えが進んだことで、国内のジェネリック医薬品市場規模は、医薬品卸、医薬品メー
カー・販社の販売金額ベースで 2012 年度が 9,315 億円、2013 年度が 1 兆 165 億円(前年度比 109.1%)、
2014 年度が 1 兆 1,130 億円(同 109.5%)と増加傾向にある。
※ 新たな数値目標は、新指標(分母から先発医薬品を除き、長期収載品とジェネリック医薬品とする)で計算した、2017 年
度末のジェネリック医薬品の数量ベースシェアを 60%以上とした。
2. 注目すべき動向
2-1.オーソライズドジェネリック医薬品への取り組みが進む
オーソライズドジェネリック医薬品とは、特許を有する先発医薬品メーカーが子会社や提携企業などの
関連企業に対し、特許切れ前に使用権を独占的に与え、販売する医薬品である。ジェネリック医薬品の
発売により、自社の先発医薬品の売上が大幅に減少する米国で活発に行なわれてきたが、日本国内で
の現行の薬価制度ではメリットが得られないことから、これまで余り実施されてこなかった。
しかし、わが国においても、ジェネリック医薬品の発売と同時に、ある程度の数量シェアをジェネリック医
薬品が獲得する傾向にあり、また、ジェネリック医薬品間での価格競争が激化してきていること、オーソラ
イズドジェネリック医薬品は先発医薬品と同一・同等品なのでこれまで未採用の医師が採用しやすいこと
などの理由から、医薬品メーカー各社のオーソライズドジェネリック医薬品への取り組みが進んでいくと考
える。
2-2.海外事業への取り組み動向
低分子医薬品の大型製品特許切れが 2017 年以降は減少し、その後は国内のジェネリック医薬品市場
の成長率も低下していく見通しである。さらに収益面でも、価格競争が激化しており、今後ジェネリック医
薬品メーカーの業績は徐々に厳しさを増すと考える。このようなことから一部のジェネリック医薬品メーカ
ーでは、自社の成長を海外に求め、海外での取り組みを開始している。
東南アジアやインドへの展開が行なわれている中で、一部の大手ジェネリック医薬品専業メーカーでは、
世界最大の医薬品市場である米国市場への参入を果たしており、今後の動向が注目される。
3. 将来予測
2014 年 度 の 診 療 ・ 調 剤 報 酬 改 定 に よ り 、 DPC/PDPS ( Diagnosis Procedure Combination/
Per-DiemPayment System:急性期入院医療の診断群分類に基づく定額報酬算定制度)対象病院および
調剤薬局でのジェネリック医薬品の採用が活発化している。これは、DPC/PDPS 対象病院を評価する係
数の一つである機能評価係数Ⅱの中に後発医薬品指数が追加されたことで特定機能病院などの基幹病
院で採用が進んでいることや、後発医薬品調剤体制加算の評価の見直しで算定要件が引き上げられた
ことで調剤薬局における切り替えも進んだためである。DPC/PDPS 対象病院および調剤薬局が市場を牽
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2015 年 6 月 17 日
引し、2015 年度の国内ジェネリック医薬品市場は、医薬品卸、医薬品メーカー・販社の販売金額ベース
で 1 兆 2,180 億円(前年度比 109.4%)に成長すると予測する。
日本ジェネリック製薬協会によると、2014 年度第 3 四半期(10-12 月)のジェネリック医薬品の数量ベー
スシェアは 50%(速報値、新指標)に達している。さらに現在、財務省の財務制度等審議会財政制度分
科会において新たな数値目標を 80%以上とする議論がなされており、これらが現実のものとなればさらに
加速度は増すこととなる。一方で、TPP(環太平洋戦略的経済提携協定)において、新薬(先発医薬品)
の特許保護期間の延長が議論されており、特許期間が延長となれば、わが国のジェネリック医薬品市場
も大きな影響を受けることになると考える。
図 1.国内ジェネリック医薬品市場規模推移・予測
(単位:億円)
16,000
14,715
13,430
14,000
12,180
12,000
11,130
10,165
10,000
9,315
8,000
6,000
4,000
2,000
0
2012年度
2013年度
2014年度
2015年度(予) 2016年度(予) 2017年度(予)
矢野経済研究所推計
注 1: 医薬品卸や医薬品メーカー・販社の販売金額ベース
注 2: (予)は予測値
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