妊娠糖尿病 - 横浜市立市民病院

妊娠糖尿病
妊娠糖尿病とは?
妊娠糖尿病は、妊娠中にはじめて発見された糖代謝異常です。
妊娠前に診断された糖尿病や、妊娠中に診断された明らかな糖尿病は含めません。
妊娠糖尿病になると何がおこるのですか?
お母さんが高血糖であると、赤ちゃんも高血糖になり、いろんな障害が起こります。
お母さん:妊娠高血圧症候群、羊水量の異常、肩甲難産など
赤ちゃん:流産、奇形、巨大児、心臓の肥大、低血糖、多血症、電解質異常、黄疸、
胎児死亡など
特に妊娠前から糖尿病のわかっている人は、妊娠糖尿病より重度の状態ですので、血糖
を十分管理し計画妊娠することが、健康な赤ちゃんを産むために非常に大切です。
どうやって診断するのですか?
妊娠の早い時期に随時血糖をはかり、これが高いときにはブドウ糖負荷試験をして診断
します。ブドウ糖負荷試験とは、まず空腹時の血糖値をはかり、糖分をとって1時間後と 2
時間後の血糖値をはかる検査で、当院では予約が必要です。妊娠初期に陰性であった人も、
妊娠が進むにつれ血糖を下げるインスリンというホルモンが効きにくくなるため、妊娠中
期(24〜28 週)にもう一度スクリーニングをうける必要があります。
妊婦さんの 7〜9%は妊娠糖尿病と診断されるため、きちんと検査を受けましょう。特に
肥満、糖尿病の家族歴のある人、高齢、巨大児出産既往のある人などはハイリスクですの
で必ず検査をうけてください。
妊娠中に注意することは?
血糖の厳重な管理が最も大切で、当院では、月に 1 回、血糖値の状態を把握するための
採血を行います。血糖のコントロールが難しい場合など、必要に応じて内科を受診して頂
くことがありますので、医師の指示に従って下さい。
治療は、まず食事療法を行います。食事療法では、お母さんと赤ちゃんがともに健全に
妊娠を継続でき、食後の高血糖を起こさず、空腹時のケトン体産生を亢進させないよう配
慮します。当院では、食事療法のための栄養指導を行っています。
食事療法のみでは血糖値のコントロールが難しい場合、インスリン注射を用いて管理し
ます。妊娠が進むにつれ、インスリンの使用量が増えますが、産後には減量あるいは中止
できることが多いので心配しないようにしましょう。
お産の後に気をつけることはありますか?
産後 6-12 週間後に再びぶどう糖負荷試験うけ、妊娠糖尿病が治っているかどうか評価し
ます。治っていても、妊娠糖尿病になった方は妊娠糖尿病のなかった人に比べ、将来 7.43
倍の高頻度で糖尿病になるとされていますので、その後も定期的な検診を受けるように心
がけましょう。
産後に母乳を与えると、お母さんも赤ちゃんも将来、糖尿病になる頻度が減ることが知
られていますので、母乳栄養を心がけましょう。
妊娠糖尿病は、今回の妊娠中にいろんな合併症を起こすだけでなく、お母さんの将来の
糖尿病、メタボリック症候群発症、さらには赤ちゃんの将来の糖尿病、メタボリック症候
群発症にも関係するため、妊娠時に糖尿病に対する正しい知識をもち、ライフスタイルを
変えることが大切です。
2012.4 月 横浜市立市民病院 産婦人科
日本産科婦人科学会 HP より一部改変