11章 発生と分化

★講義ノート訂正
P1 幹細胞⇒×どんな細胞になるかは決まっている
○多くの細胞に分化しうる
11章 発生と分化
はじめに・・ ・
・発生とは:卵が受精して個体ができること
・(細胞)分化とは:胚細胞(または幹細胞)が性質を変え異なった機能の細胞になるこ
と
未分化細胞には 2 種類あります。
・胚細胞:受精卵から発生初期の細胞
・幹細胞:発生初期以降で、各組織のもとになる細胞
→これらの細胞は、さまざまな種類の細胞に分化しうる多能性を持っています。
それで再生医療とかに応用されています。授業で結構言ってました。
ここでは、発生の仕組みを、順を追って見ていきます。
初期の卵細胞
卵細胞には、母性因子という物質が含まれています。
母性因子は
・栄養分になる
・胚の向きの決定
・胚細胞の運命の決定
・細胞の増殖の調節
など、発生初期において重要な役割を果たします。
カエル
図のように、カエルでは母性因子のたくさんあるほうが植物極、無いほうが動物極となり、後の体
の向きが決まります。
また、ショウジョウバエでは、2 種類の母性因子の
濃度勾配により頭と尾の向きが決まります。
ショウジョウバエ
受精
卵細胞に精子が進入して受精。
カエルでは、精子が進入した位置により、将来の体の向きが決まります。(後述)
卵割
卵割とは、卵細胞の細胞分裂です。分割したそれぞれの胚細胞を割球と呼びます。
〈卵割の特徴〉
1. 生物によって様々な方式がある
例えば、カエルは全割で、卵は同じ大きさに分割していきますが、
ショウジョウバエのように、不均等に卵割する部分割もあります。
全割するもの・・ ・等黄卵
部分割するもの・・ ・端黄卵、心黄卵
2. 細胞分裂が速い
・発生初期の卵割には、細胞周期の G1、G2 期にあたる時期が無く、S 期と M 期だけからなっ
ている
・細胞周期のチェックポイント機能が無い
ことが原因(9章参照)。これにより、すぐに一定の細胞数に達することができます。
胚の方向性の決定
前述のように、胚の方向を決める要素で重要なのは母性因子です。また、カエルでは精子も関与
します。
・ショウジョウバエの場合―胚の領域化
前述の 2 種類の母性因子(ビコイドとナノス)の濃度勾配による作用で、卵細胞内に縞模様の
遺伝子が現れます。この遺伝子が、また次の縞模様の遺伝子の発現を引き起こし(これらを分
節遺伝子という)…といった感じで、最終的に胚が14の領域に分かれます。このひとつひと
つがハエの体節になります。
その後、その14の領域のどこに何ができるかを決めるホメオティック遺伝子が発現し、胚の
運命が決まります。
(p141 図 11-4 参照)
・カエルの場合―胚の誘導
カエルは、初めは動物極と植物極しか決まっておらず、受精のときに新たに腹と背の向きが決
まります。精子の入ったほうが腹側、反対側が背側になり、背側に移動した母性因子によりオー
ガナイザー域ができます。(p143 図 11-6 参照)
オーガナイザーがどれくらい重要かは、図 11-7 を見るとわかります。
その後・・ ・
・誘導作用
まわりの細胞に働きかけて、それらの細胞の運命を決めていく作用です。 誘導
プラナリアからヒトまで、多くの動物は三胚葉性生物で、このあと外胚葉・内胚葉・中胚葉の
3つの部分に分かれていきます。
・外胚葉…中枢神経、皮膚になる
・内胚葉…呼吸器官、消化器官になる
・中胚葉…筋組織、結合組織になる
胚を3つに分けるため、中胚葉誘導が起こります。
シグナルとかが作用します(10章参照)。
※ここではあくまで「予定」胚葉域なので注意!
・形態形成運動・神経誘導・器官形成 カエルの中胚葉誘導
三胚葉ができるとともに、原腸(将来腸になるところ)の陥入が起こり、その後神経管の形成、
器官形成が順次起こります。
このとき細胞は湾曲運動、陥入運動、移動運動、伸展運動といった運動をします。
カエルの原腸の陥入
(※図は高校生物の図表を参考にしてます。あまり細かいところを気にしないほうがいいかも。
内胚葉ができたころに、脳や脊髄を誘導する物質が分泌されます。
その後、外胚葉から神経管ができ、脳や脊髄に発達していきます。このころ、体の各器官も形成さ
れていき、一人前の生物ができてきます。
その他
・母性因子の不均等な配分
卵割の際に、母性因子を不均等に配分することで細胞の運命を決める生物もいます。
例えば線虫では、生殖細胞顆粒という母性因子が卵割のたびに一方の細胞だけに分配されます
最終的に、この顆粒を持った細胞が生殖細胞、それ以外が体細胞になります。
(p141 図 11-3 参照)
・細胞系譜
受精後の割球が将来体のどの部分になるかを表す家系図のようなものです。