都市の中の川を眺める - リバーフロント整備センター

浸水するため、パリは洪水で交通が渋滞する
(写真−1・11)
。
サッチャー政権の頃、
「経済の再興」
と
「水系の再生」
を目指し、
この川でも、約百年前には
市民・企業・行政が連携し、水系を再生する活動が始められた。
黒い水が流れていた時代があ
マージ川流域キャンペーンという運動で、
3つの非営利団体
(NPO)
、
った。現在の洗い流し、汚水
約600の多様なボランティア団体
(NGO、年々増加)
が25年間継
を処理するタイプの下水道が
続する活動をしている。世界の勇気の湧く先進的な活動であると
整備され始める前のことであ
思う。
<ライン川
(ケルン、デュッセルドルフ)
>
る。パリはその後、いわゆる現
在の先進国の下水道による汚
水処理の先進地となった。
写真−1・10
風景その3
パリのセーヌ川の
ケルンは、ローマの出先のコロニー
(ケルン)
として発展してきた
都市の一つである。ライン川が洪水のときのケルンの様子である
<テームズ川
(ロンドン)
>
(写真−1・16)
。観光地であり、堤防はなく、洪水期間中には仮設
イギリス・ロンドンのテームズ
式の堤防を立掛ける。ケルン下流のデュッセルドルフもライン河畔
川のいくつかの風景を見てみ
に開けた都市である
(写真−1・17)
。
たい。現在は、良いまちと川の
風景がある
(写真−1・12、
1・
13)
。この川でも、百数十年前
ライン川の風景は多様である。この川の上流には、堤防で守ら
れたストラスブルグ周辺地域
写真−1・11 パリのセーヌ川の
風景その4
(高速道路)
には、黒い水が流れていた。
で知られる地域がある。そして
川の近くに国会があり、川が臭
下流には、日本と同様に堤防
くて国会が開けない日もあっ
で守られたオランダにつながる
た。
地域がある。
3)
アジアの川
イギリスでは川が私有地で
あったことから、市民の川への
アクセスを確保していく運動も
アジア・モンスーン地域の発
写真−1・12 ロンドンのテームズ
川の風景その1
展する国々の川を眺めてみた
あった。万国博覧会、都市計
い。
画などで、当時遅れていたフラ
<漢江
(ソウル)
>
ンスに影響を与えた国である。
韓国のソウルを流れる漢江
現在でも、川沿いの都市整
備では、都市計画で川へのア
クセスの確保や高さの制限な
(はんがん)
の風景である
(写
真−1・18)
。ソウルは一極集中
写真−1・13 ロンドンのテームズ
川の風景その2
のアジアの典型的な大都市と
どが行なわれている。
なった。オリンピックに併せて
<マージ川
(マンチェスター&
道路、都市、そして川の整備
リバプール)
>
が行われた。川で催しがあっ
産業革命の発祥の地、イギ
ールを流れるマージ川のいくつ
ている風景である。
<サチンの川
(香港)
>
写真−1・14 イギリス・マージ川
(河口付近)の風景
香港のサチンの川とまちの
口部の水辺の風景と、水辺に
風景である
(写真−1・19)
。ア
人が憩うようになった風景であ
ジアにも川を活かした都市が
る
(写真−1・14、
1・15)
。
あるという例である。川沿いに
マージ川は、産業革命後、
写真−1・18
江の風景
ソウル(韓国)の漢
緑地帯、歩道があり、その外
約2百年にわたり、ヨーロッパで
最も汚れた川といわれてきた。
写真−1・17 ライン河畔のデュ
ッセルドルフ
た日、川が賑やかに利用され
リスのマンチェスターやリバプ
かの風景を見ておきたい。河
たをケ写
や知ル真
っらン︱
てせ市1
くるの・
る ポ 洪 16
。ス水
なタ ラ
るーのイ
風
よ。
“ ン
うラ景
︵川
にイ市、
なンのド
るが洪イ
ツ
”
︶ま水・
や、山間狭さく部のローレライ
に道路と住宅がある。世界ド
写真−1・15 イギリス・マージ川
の風景その2
ラゴンボート大会が開催される
13
写真−1・19 香港・サチンの川沿
いの風景
所でもある。
経験した。その後、高潮
(千年に一回の規模の高潮)
に対応する
人口の激増してきたアジアの都市計画として、香港モデルとシ
堤防を都市計画と連携して建設した。
ンガポール・モデルが著名である。香港は、今は人口約600万人
上海は、日本でいえば高度成長期の東京のような都市で、そ
であるが、難民の流入の歴史があり、人口増加に対し、住む住宅
の堤防のテラスがお上りさんが集う場所になっている風景である。
は確保する、という都市づくりが特徴。
まちの中を流れる川には、黒や茶色の汚れた水が流れている。そ
<シンガポール川
(シンガポール)
>
の一つ、上海の発祥の川といわれる蘇州川では、上海市長のリ
シンガポールのシンガポール川で、スコールの後の洪水時の風
ードで川を蘇生させる運動が始められている。
上海は、世界銀行の予測では、2010年には約2500万人の都
景である
(写真−1・20)
。
この国は、アジアでもこれほどまでにきれいな道路、住宅などを
市になる可能性があるという。
「アジア的スピード」で、
「中国的規
含めた都市、国がつくれるという勇気の湧く先進例といえる。土地
模」で発展する大都市の一つである。それだけに、水をめぐって
の大半を国有地とし、シンガポール・モデルの都市計画として知ら
も、都市化に伴う問題も顕著である。
れる。彼らは、都市計画は日本に学んだというのだが、それをは
<長江
(武漢、荊江)
>
上海から長江
(ちょうこう)
を遡ると、人口約700万人の中流の大
るかに超えたまちづくり、
くにづくりが実現している。
<チャオプラヤ川
(バンコク)
>
都市・武漢がある。武漢のまちを長江の洪水から守る堤防は、隅
タイ・バンコクのチャオプラヤ
田川以上の高さのパラペット堤防である
(写真−1・24)
。まち中に
川と都市の風景である
(写真−
は、都市全土が建設現場といわれる建設ラッシュの風景がある。
1・21)
。バンコクは人口約800
長江をさらに遡ると、長江の治水の要と云われる荊江
(けいこ
万人、いずれ1千万人に近づ
う)
大堤防がある
(写真−1・25、
1・26)
。対岸には巨大な遊水地
くという大都市である。
がある。この地は、中国の主
この川の流域面積は日本の
国土面積の半分弱ある。この
川に都市から流入する川
(クロ
写真−1・20 シンガポール川の
風景(洪水時)
れた場所である。
中国では、あらゆる個人と組
ンと呼ばれる水路)
には、汚れ
織は水防活動に従事する義務
て黒い水が流れている。地下
がある。1998年には、約50年
水の汲み上げによる地盤沈下
ぶりの大洪水があり、日本の人
も著しく、典型的なアジア・モン
口に相当する1億2千万人が
スーン地域の都市化の風景が
ある。
被害を受けた。洪水への対応
写真−1・21 バンコク、チャオプ
ラヤ川沿いの風景その1
は準備され、整然とした対応
もちろん、上流には豊かな自
がなされたように思われる。
然の川と風景がある
(写真−
この荊江の上流では、首相
1・22)
。
を指揮者として三峡ダムを建
<黄浦江
(上海)
>
設中である。発電と治水(100
中国・上海の黄浦江
(こうほ
こう)
と都市の風景である
(写
真−1・23)
。
年洪水を対象)
、舟運を目的と
したダムで、1997年末に長江
写真−1・22 バンコク、チャオプ
ラヤ川の風景その2
の本流が締め切られた。山峡
上海は人口約1600万人
(出
ダムの上流には、人口約1600
稼ぎ者などの約300万人を含
万人の重慶という大都市があ
む)
の大都市である。対岸の
る。重慶を含め、ダム上流の
浦東の経済開放区には高層ビ
四川省には1億人が住んでい
ルが林立するように建設中。
上海は地盤沈下、高潮災害を
防写
と真
ま︱
ち1
︵・
右 24
側
︶中
国
・
長
江
の
武
漢
市
/
堤
席、首相などの要人が必ず訪
る。まさに中国的規模である。
写真−1・23 中国・上海市の黄浦
江の風景
写真−1・25 中国・長江の荊江大
堤防付近の風景
写真−1・26 荊江大堤防(堤防上
長江の北には黄河(こうが) は道路)
14
という大河が流れている。黄河流域では、人口の増加に伴い、農
(人)
業用水、工業用水、飲み水を含む都市用水の需要が激増し、取
人口(万人)
BC 25000
1
15000
3
2
10000
水がなされている。その結果、約600キロの河川区間で、川に水
1億
が無いという
「黄河の断流」が百日以上も続くことが恒常化してき
6100
2
3200
11
2300
26
1300
16
8
900
ている。これも驚くべき、中国的規模のことといえよう。
AD 100
60
AD 1990
12361
250
300
2000
12638
600
497
2005
12710
750
650
2050
9442
900
644
2090
6159
5千万
駆け足で、日本、西欧、そしてアジア・モンスーン地域の現在の
都市の川を眺め、時代の流れをたどってみた。それぞれの川に都
市的・人工的な表情と歴史、人・文明との係わりがある。そして近
1150
692
1500
1126
1600
1200
1870
3538
1930
6445
人口減少
人口減少停滞
0
年、アジアの国々では
「人口の増加」
と
「都市化」
に伴う問題が発
1000
0
2000
年(西暦)
資料:古田隆彦「人口波動で将来を読む」より作図
生していることが知られる。
図表−2・1 日本の人口の推移(2千年)
(千人)
150,000
2.これからの時代の
「流域圏構想」
アジア・モンスーン地域の国々においては、洪水や渇水対策を
120,000
11,096万人
実施しつつも、
「現実」
としての洪水や渇水との共存が行われてい
10,050万人
る。一方、欧米の国々では、川は広々とした乾燥地帯を流れ、冬
1995(昭和7)年
12,557万人
90,000
9,009万人
9,231万人
に洪水がある。氾濫の危険がある地域に住むのは、個人の責任
高位推計
1967(昭和42)年
10,020万人
[初めて1億人を超える]
というのが基本となっている。干拓で低地を開発したオランダなど
6,737万人
中位推計
60,000
を除き、氾濫原は川沿いに限定されるのが普通である。
5,088万人
実績値← →推計値
→参考推計値
低位推計
1920(大正9)年
5,596万人
洪水についてみると、日本の大河川では、当面の整備目標と
30,000
して30∼40年洪水を対象とし、その約6割が整備されている。長
1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060 2070 2080 2090 2100
(大正9)(昭和45)(15) (25) (35) (45) (55)(平成2)(12) (22) (32) (42) (52) (62) (72) (82) (92) (102)(112)
期的には100∼200年洪水を目標にしている。氾濫原で都市や国
資料:国立社会保障・人口問題研究所
「日本の将来推計人口(1997(平成9)年1月推計)」
が発展している国の整備の水準としてみると、これらの目標は、ア
図表−2・2 日本の総人口の見通し
(万人)
300
ジアを含む諸外国と比較しても、決して高い整備水準と目標であ
るとはいえない。そして、100∼200年洪水の規模で現実に被災し
250
た河川以外では、その長期目標の達成は、経済的(投資能力
200
5
第1次ベビーブーム
209万人
出生数
第2次ベビーブーム
209万人
合計特殊出生率
4
ひのえうま
136万人
的)
、社会的、環境的にみて、困難に近いと思われる。
4.32
1996(平成8)年
121万人
出
生 150
数
これらのことから、ものづくり
(構造物対応)
や既存施設のメンテ
100
ナンスに加えて、氾濫原管理や危機管理その他の非構造物対応
50
2.14
3合
計
特
殊
出
2生
率
1
1.58
1.43
が今後ますます重要である。そして、現実に発生した災害には当
0
然のこととして対応する。このことは、氾濫原で社会が成り立って
1947
(昭和22)
1955
(30)
1965
(40)
1975
(50)
1985
(60)
1990
(平成2)
1995
(7)
0
(年)
資料:厚生省大臣官房統計情報部「人口動態統計」
図表−2・3 出生数および合計特殊出生率の推移
いる場合には、日本のみならず、世界の歴史を通じての洪水対応
%
40
の基本的な原則となっている。
日本
35
このような、アジア・モンスーン地域の国々の、いわゆる”なんぎ
30
な川”であることは認識しておきたい。
イタリア
アメリカ
スウェーデン
フランス
イギリス
ドイツ
韓国
25
日本は、人口が激増し、都市化した時代をほぼ終えつつあり、
中国
20
近い将来において減少局面に転じる
(図表−2・1、
2・2)
。2千年
15
の歴史を今振り返ると、極めて短い期間であった。そして、本格
10
5
的な少子・高齢化の時代に向かう
(図表−2・3、
2・4)
。一方、ア
0
1950年
ジアを含む世界では、人口の激増が予定されている
(図表−2・
1960年
1970年
1980年
1990年
2000年
2010年
2020年
2030年
2040年
(注)
ドイツは統一ドイツベース
資料:日本は、総務庁「国勢調査」及び国立会社保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(中位推計)」、
諸外国は、UN, Wold Population Prospects 1996による。
5)
。
このような状況下で、
1億人を超える人口で、川と地域の関係を
図表−2・4 高齢化の進展(諸外国を含む)
15
2050年
構 築 するとい
12
う、今 日 的な
11
「流域圏構想」
10
9
値するテーマで
8
江戸時代の
人 口は約3千
都市域では、川の占める面積は広大である
(図表−3・1)
。都
市の面積の約1割の面積は
「河川空間」
であり、土地は国有地で
アフリカ
はチャレンジに
ある。
島県や長野県に相当する面積である。
人
口
︵
10
億
人
︶
ある。都市で川や水面が広い面積を占めているのは、アジア・モ
ンスーン地域で氾濫原に発展した都市、国の大きな特徴である。
その他の
アジア
7
河川の土地が国有地であるのは、日本や中国などのアジアの特
徴の一つである。
6
5
万人で、その人
4
口と生産形態
3
の下で、見 事
2
な水系社会が
1
形 成されてい
0
都市の既存市街地において、地域の素材としての
「河川空間」
インド
を景観、環境、子どもの自然体験、文化、防災、健康、福祉、水
中国
辺ウエルネス、癒し等の面でまちづくりに活かすことは重要であり、
また、選択肢の少ない都市にあっては、可能性を秘めた空間で
ラテンアメリカ
あるといえよう。
先進国
川は都市の面積の約1割、国土面積の約3%の連続したオープンスペース
1950
1990
2000
2025
たと言われる。
2050
2075
2100
2125
2150
河川は都市の中の貴重なオープンスペース
年 次
データ出所:United Nations. 1992. 中位置
20世紀に4000
○国土面積に占める河川の面積は3%。
○都市地域*1の面積に占める河川の面積は約2,436km2で、約10%を占める。*2
図表−2・5 世界人口の推移と予測
*1:都市地域とは市街化区域を指す。
*2:平成2年度河川現状調査(建設省調べ:一級水系及び主要な二級水系、計173水系、
約257,232km2をカバーする調査)
○河川・湖沼と都市公園の一人当たり面積
万人、戦後す
ぐの頃に7000万人を超えたが、その頃までは水系社会の面影が
濃厚にあった。今度は、江戸時代の4倍、戦後すぐの頃の約2倍
70
の約1億2000万人の人口で、社会の生産形態なども異なるが、環
m2
65.5
60
一人当たり水辺面積
50
境や健康・福祉などの分野も含め、行政単位を超えた各種の連
一人当たり公園面積
39.1
40
34.1
33.6
携等を思想、信条とした流域圏構想である。
30
20
川あるいは流域は、山、森林、中山間地
(里山、奥山、棚田)
、
10
2.9
水田、都市、海を結ぶ「まとまりのある地域の単位」
、
「地域の素
4.3
3.9
3.5
0
東京圏
材」である。輸送系や情報系のダイナミックな連携に加え、環境、
名古屋圏
大阪圏
三大都市圏
水辺空間までは約300m
○市街地における水辺までの到達距離は約300メートル程度で、身近な所に水辺空間がある。
子どもの自然体験、健康・福祉、ウエルネス、癒し、文化等の面
都市名
で、また、林業、農業、都市の緩やかな交流や連携、アウトドア活
5
水空間面積の割合
10
15
20
25
都市名
秋 田
盛 岡
富 岡
福 井
金 沢
高 岡
東 京
宇都宮
名古屋
津
静 岡
大 阪
彦 根
岡 山
広 島
松 江
徳 島
高 知
福 岡
佐 賀
動、観光、地場産業、地域のコミュニティ等の産業・生活等の各
分野での地域連携における、地域の単位、素材であると思う。
川にものをつくるという、構造物対応で川に働きかけることに加
え、
「河川空間」
「沿川空間」
「流域空間」
を更に活かし、川、流域
を素材とした交流連携を進めたい。
日本は人口の減少する時代を先行的に経験する。日本での
100
水空間までの到達距離(m)
200
300
400
500
600
700
秋 田
盛 岡
富 岡
福 井
金 沢
高 岡
東 京
宇都宮
名古屋
津
静 岡
大 阪
彦 根
岡 山
広 島
松 江
徳 島
高 知
福 岡
佐 賀
平均7.6%
平均10.9%
迅速図(明治時代の図面)
現状図
平均199m
平均314m
迅速図(明治時代の図面)
現状図
(出典:「水辺空間の魅力と創造」松浦茂樹、島谷幸宏)
このようなチャレンジは、アジア・モンスーン地域で堤防河川や深
図表−3・1 川の面積、川までの距離
い掘り込み河道をもち、今まさに
「アジア30億人の爆発」
といわれ、
<川の空間を活かす構想>
発展するアジアの国々に先行する試み、実践となる。
都市における
「河川空間」の活用については、関東大震災後
3.既存市街地の
「空間としての川」
の帝都復興計画等において、防災・避難空間として位置づける
<川の面積>
とともに、川の両側と川の中にそれぞれ「保健道路」
を設けるとい
う構想があった
(図表−3・2)
。この構想は、その後の
「東京緑地
川の面積は国土面積の約3%の約1万3千平方キロであり、全
国の宅地面積の約1万平方キロを上回る。全国の農地面積約5
計画」
「東京防空計画」
、そして、
「戦災復興計画」でも登場する
万2千平方キロの約1/4に相当する広さであり、面積の広い福
が、東京ではその一部を除き、ほとんど実現することがなかった。
16
河川技術者であった関正和さん、ランドスケープを中心とした
○補助河川の都市区間における改修状況
都道府県名
都市計画を専門とする石川幹子さんは、
「帝都復興計画」
などに
秋田県
岩手県
富山県
石川県
福井県
東京都
栃木県
静岡県
愛知県
三重県
滋賀県
大阪府
岡山県
広島県
島根県
徳島県
高知県
福岡県
佐賀県
も触れつつ、都市に水と緑のネットワークの再興と、景観、健康、
水辺ウエルネス、防災等を兼ねた都市の再興を語る
(参考資料−
1)
「
。帝都復興計画」等で構想された石神井川の
「保健道路」
の
思想は、関西の神戸で、ささやかではあるが川の震災復興事業
で実現した。
いわば土地資本主義ともいわれたのこの国のバブルが終わり、
都市の再開発や区画整理が沈静化した。今後は、将来に向け
ての都市の既存市街地再生において、
「河川空間」
「沿川空間」
に着目したこのような構想や計画が全国各地の既存市街地で再
検討され、川が益々重要で、そして魅力的な空間となるとよい。
石神井川の保健道路の断面
河川延長
改修済延長
(km) (km)
6.7
25.8
41.2
72.7
47.5
139.1
90.3
152.7
23.7
79.3
296.7
453.2
222.4
314.1
438.9
884.4
558.5
1,320.9
149.5
323.1
270.0
425.1
416.0
617.0
108.6
288.8
174.3
410.1
25.1
81.8
72.9
101.7
72.0
96.5
295.7
453.8
114.0
175.8
改修率
(%)
26
57
34
59
30
66
71
50
42
46
64
67
38
43
31
72
75
65
65
(建設省河川局治水課調べ)
〈河川管理施設等構造令における
管理用通路について〉
歩
道
○堀込河川(堤防の高さと堤内地盤高との差が0.6m
未満)の場合
歩
道
天端幅
0.6m未満
H.W.L
保
健
道
石
神
井
川
保
健
道
○築堤河川(堤防の高さと堤内地盤高との差が0.6m
以上)の場合
今はコンクリート三面張りの石神井川も、実に魅
力的な緑地空間が構想されていた。
天端幅
0.7m
図表−3・2 川沿い、川の中の歩道、保健道路構想
河川管理用通路
0.25m
4.5m
建築限界
0.25m
<川の現状>
H.W.L
0.25m
幅員は3m以上で
堤防天端幅以下
都市域では、川は都市の面積の1割を占め、約5分歩くと川に
至ると云われる。川の両側には原則として河川管理用通路と呼ば
○堤防天端幅については下表のとおり
れる道がある
(図表−3・3、
3・4)
。その川の空間を、既存市街地
項
計画高水流量(単位m3/s)
天端幅(m)
の生活に日常的に活かすようにする、という視点が重要と思われ
1
500未満
2
500以上
2000未満
4
る。今は決して使い勝手がよいとはいえない川であるとしても、河
3
2000以上
5000未満
5
4
5000以上
10000未満
6
川空間には自然があり、生き物の賑わいもあり、大人も子ども、高
5
10000以上
3
7
図表−3・3 川の通路(堤防、河岸の管理用道路)
齢者、障害者が世代間を超えて交わる場となれば、健康や福祉
という新たな視点でも活かされる。河川空間は都市で極めて魅
〈川沿いの道路について〉
○一級河川:87,279km(うち直轄区間:10,515km)
○二級河川:35,811km
○直轄区間においては、河川総延長のうち約62%で、
5,340kmに及ぶ管理用道路が既にある*。
○補助区間においては、河川総延長のうち約24%で、
31,663kmに及ぶ管理用道路が既にある*。
そして、都市区間(市街化区域又はDID地区)
では要改修延長のうち、約54%で8,220kmに及ぶ管
理用道路が既にある。
*:管理用道路延長は概ねこの2倍
力的な空間素材の一つとなる。
<既存市街地で川を活かす視点>
既存市街地の更新には、時間のスケールを念頭に置く必要が
ある。東京の土地利用の現況を見ると、工業用地は大幅に減少
した
(図表−3・5)
。図表で青色の地区が工業用地で、土地利用
の更新が相対的に早いと考えられる地区である。隅田川を例に
とると、バブルの時代を通じて、下流域の川沿いの工場跡地など
では再開発がほぼ完全に終わった。現在残る工業用地は、上流
の荒川区や北区、そして臨海部などに一部残るのみとなった。工
図表−3・4 既存の河川管理用の道路の延長
17
凡
官公庁施設
公 教育文化施設
共
厚生医療施設
系
例
空 屋外利用地・仮設建物
地 公園、運動場等
系 未利用地等
供給処理施設
道
事務所建築物
鉄道・港湾等
商 専用商業施設
業 住商併用建物
系 宿泊・遊興施設
農林漁業施設
スポーツ・興行施設
住 独 立 住 宅
宅
系 集 合 住 宅
専 用 工 場
工
業 住居併用工場
系 倉庫運輸関係施設
路
農
業
系 樹
田
畑
園
地
採草放牧地
水面・河川・水路
林 森
野
系 原
そ
林
野
の
他
図表−3・5 東京都の土地利用現況(1996年) (出典:東京都土地利用現況図)
18
業用地以外の既存市街地の地区は、その更新に長い年月が必
進的な活動として、都市の既存市街地と川の再生において、健
要であり、これまでの工業用地の再開発や区画整理のような早い
康・福祉の視点は重要であろう。
スピード
(10∼20年程度)
では進まない。
おわりに
今後は、既存市街地と川の再生に向けては、長期的な視点で、
かつ、できることから徐々に改善を図っていくと云う視点が必要と
世界の都市の川には、共通して人口が増加し、都市化した時
されよう。これまでの数年間の河川整備や再開発の時間スケー
代を通じて形成されてきた風景がある。欧米が先行し、日本がそ
ルで限られたエリアを整備すると云うのではなく、川沿いの既存市
の時代を終えた。アジア・モンスーン地域の国々の都市の川は今、
街地全域を視野に、以下のような視点での対応が求められよう。
人口が激増し、都市化する時代を迎えている。
○既存の河川管理用通路や沿川の道路を中心に、川へのアプ
日本では川を巡って活動する鶴見川ネットワーキングなどの市
ローチ、川の中や川沿いの通路
(リバー・ウォーク)
の改善・整
民団体が、専従の事務局を持って非営利団体
(NPO)
として活動
備を進める。隅田川では、バブルの時期に川の中にテラス
(散
する時代となった
(参考資料2)
。そして、地域づくり、都市づくり
策路)
が設けられた。先行的なリバー・ウォークの改善・整備、
の中で川を活かす、多様で実践的な市民活動がなされるようにな
橋の周辺・沿川の公園・公共的建築物などでの水際の整備と
った。
世界に先駆けて人口が減少する時代に向かう日本の川が、都
ともに、まち中と川をダイナミックに結ぶウォーキング・トレイルな
どによるアプローチの整備も期待したい。このような先行的な改
市の中で新たな役割を果たすことを期待しつつ、アジア・モンスー
善・整備を前提として、長期的な視野で都市と川の利用や整
ン地域の発展する国々も視野に、川と地域の関係の再構築に取
備の計画を地域参加で策定し、川沿いで更新される民間の都
り組みたいと思う。
市整備や建築を誘導する。そしてなによりも、ものづくりに先行
して、川と地域の関係を再構築する市民活動・運動や各種の
「参考資料」
社会実験の実践が重要である。
1.関正和:
「大地の川」
、草思社、1994.10
○身近で、日常的な川との係わりを深める活動が重要である。そ
2.吉川勝秀:
「地域づくりにおける川、流域への着目−地域の素材としての川、
のような視点で、従来の散策などに加えて、新たな活動にも注
まとまりのある単位としての流域−」
(
「山国川−新たなる流域連携に向け
目したい。例えば、健康・福祉、ウエルネス、癒し、そして子ど
て−」
)
、豊前の国建設倶楽部、1999.3
もの自然体験は、地域社会での生活そのものに関係したもの
3.吉川勝秀:
「1万年の目で見た日本の川」
、第1回水環境復元全国大会/
である。都市の生活においてコミュニティを再生し、川・流域・
第6回熊本県水環境会議
(併開催)
報告書、1998.10
水系との関係を再構築する上で、地域の健康・福祉、水辺ウ
4.吉川勝秀:
「川、流域と福祉について」
、雑誌「河川」
( 日本河川協会)
、
エルネス、癒しといった面での新たな活動に期待したい。この
1998−4月号
活動は、まち中から川へのアクセスやリバー・ウォークの改善・
5.田中栄治・谷口博昭編著:
「地域連携がまち・くにを変える」
、小学館、1998
整備において福祉の視点を常識化するのみならず、市民参加
6.吉川勝秀:
「イギリスの
「マージ川流域キャンペーン」
について」
、雑誌「河川」
、
の川づくりや川の利用勝手を向上させる上でも重要である。こ
1997−7月号
のような観点での活動は、鶴見川、荒川、太田川など、数多く
7.財)
リバーフロント整備センター:
「川辺のポタリング−River Front Trail−」
、
見受けられるようになった
(参考資料−2,
4)
。愛知県の瀬戸川
1999.3
では、川の整備と川とまち中を結ぶウォーキング・
トレイルの整備
とを連携させる試みも進みつつある。
○長い年月を経て経済の発展・衰退があったイギリスの
「マージ
川流域」
では、
「経済の再興」
と
「水系の再生」
を目指した市民、
企業、行政を含む多様な活動がなされ、世界の先進的な事例
と見なされるようになった。日本を含むアジア・モンスーン地域
の国々では、経済発展や環境悪化のスピードが早く、極めて短
期間で進行している。少子化・高齢化、福祉の問題も短期間
に顕在化すると予測される。この面からも、川、流域をめぐる先
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