偏微分方程式を用いた コールオプション価格の導出

偏微分方程式を用いた
コールオプション価格の導出
東邦大学理学部情報科学科
指導教員 白柳 潔
5511101 矢野 陽介
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はじめに
 コールオプションとは、株価を購入する権利のこ
とである。
 まず、時刻tを考える。満期日をTとする。t=T
のときに株価を購入するときの価格をコールオプ
ション価格という。
 コールオプション価格を求める方法:
 偏微分方程式を使った方法
 2項ツリーモデルを使った方法
 条件付き期待値を使った方法
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研究目的
 本研究では偏微分方程式を用いてコールオプ
ション価格を求める。
 その過程で出てくる「幾何ブラウン運動」と「ファ
イマン・カッツの定理」の仕組みについて考察す
る。
 時間の関係上、本日の発表では「幾何ブラウン
運動」の仕組みについて述べる。
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確率過程とブラウン運動
 花粉のような微粒子や株価のランダムな動きの
ことを「ブラウン運動」という。
 確率過程とは、時間変数を含む確率変数であ
る。
 t=1,2,⋯のように離散的な値をとる場合を離散
型確率過程といい、時間tが、すき間なく連続
的な値をとる場合を連続型確率過程という。
 「ブラウン運動」は、連続型確率過程である。
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標準ブラウン運動
以下の条件を満たす確率過程{𝐵𝑡 }(t∈ℝ)を標準ブラウ
ン運動という。
 (ⅰ)B0=0
 (ⅱ)任意の2つの時間間隔[t1、t2],[t3、t4]に対して、
 𝐵𝑡2 - 𝐵𝑡1 , 𝐵𝑡4 - 𝐵𝑡3 は独立。
 (ⅲ)任意のt>0、S≧0に対して、Bt+s+Bsが平均0、分
散tの正規分布に従う:
b
Pr(Bt+s+Bs≦b)= −∞
5
2
x
1
exp(- )dx
2𝜋𝑡
2t
伊藤の公式
 2変数関数F=F(t,x)(t≥0,x𝜖ℝ)は2回連続微
分可能とする。また、W(t)を標準ブラウン運動
とする。このとき

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𝜕𝐹
1 𝜕2 𝐹
dF(t,W(t))=( (t,W(t))+
)dt
2
𝜕𝑡
2 𝜕𝑥
𝜕𝐹
+ (t,W(t))dW(t)が成り立つ。
𝜕𝑥
確率微分方程式

𝑑
ブラウン運動W(t)は、 W(t)は存在しないの
𝑑𝑡
で、通常の微分方程式を適用することができな
い。そこで、確率微分方程式を定める。
 確率微分方程式とは、
dX(t)=𝜇 𝑡, 𝑋 𝑡 𝑑𝑡 + 𝜎 𝑡, 𝑋 𝑡 𝑑𝑊(𝑡) (t>0)
のような確率過程X(t)に関する方程式である。
 𝜇 𝑡, 𝑋 𝑡 𝑑𝑡は確定的な動きを表す。
𝜎 𝑡, 𝑋 𝑡 𝑑𝑊(𝑡)は確率変動を表す。
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幾何ブラウン運動
・例えば、X(t)を確率過程、𝜇 ∈ℝ,𝜎>0に対して、確率微分方程式
dX(t)=𝜇X(t)dt+𝜎X(t)dW(t) ,X(0)=𝑋0
の解は
X(t)=
1 2
𝑋0 𝑒𝑥𝑝[(𝜇- 𝜎 )t+𝜎W(t)]
2
である。この指数関数が含まれている解を「幾何ブラウン運動」と
いう。
・この解は、株価や為替レートの変動を表している。
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幾何ブラウン運動の考察
・幾何ブラウン運動が確率微分方程式の解になるかどうかを逆
から計算して確かめた。
・例として、幾何ブラウン運動
Y(s)=exp[𝜇t+𝜎W(s)]⋯①
をあげる。この確率微分方程式を調べる。ここで、W(s)は標準
ブラウン運動、𝜇 ∈ℝ,𝜎>0とおく。
①に伊藤の公式を適用して、
1
2
dY(s)=𝜇𝑌 𝑠 ds+𝜎Y(s)dW(s)+ 𝜎 2 Y(s)ds
1 2
=(𝜇+ 𝜎 )Y(s)ds+𝜎Y(s)dW(s)
2
となる。この例により、幾何ブラウン運動は、確率微分方程式
の解であることが分かった。
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今後の目標
・条件付き期待値を使った方法についても、
確率論の復習も兼ねて研究していきたい。
特に、その中で登場する「マルチンゲール」
の性質について理解を深めていきたい。
・「幾何ブラウン運動」が、他にはどのような
場面で扱われているのかを調べていきた
い。
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