2005 年度 基礎数学ワークブック番外編「確率分布」 − 38 − < ブラウン運動 > 1827 年植物学者の Brown は水に浮かぶ花粉の粒子が不思議な動きをしているのを発見 した。花粉の粒子は突然にある一定距離移動し、止まる。これを繰り返し、ジグザグな動 きをする。花粉以外でも、水に浮かぶ微粒子ならば同様の動きをすることがわかった。 この運動する粒子をブラウン粒子と呼び、その運動を「ブラウン運動」と呼ぶ。 1905 年アインシュタイン (Einstein) はブラウン粒子の時刻 t、位置 x に存在する確率密 度 u(t, x) が熱方程式 ∂ ∂2 u(t, x) = D 2 u(t, x) ∂t ∂x (t = 0, x ∈ R) を満たすことを示した。ここで D は拡散係数と呼ばれる正の定数である。なお空間が 3 次元の場合は ∂u ∂2u ∂ 2u ∂ 2u = D( 2 + 2 + 2 ) となる。 ∂t ∂x1 ∂x2 ∂x3 1923 年ウィナー (Wiener) はブラウン運動の数学的モデルを次の 1 , 2 , 3 をみたす確率 過程 {B(t) : t = 0} として提案した。 1 {B(t) : t = 0} は t の関数として連続である。 2 [ 独立増分性 ] Ã 任意の時間分点 0 5 t0 < t1 < t2 < · · · < tn に対して、 B(t1 ) − B(t0 ), B(t2 ) − B(t1 ), · · · , B(tn ) − B(tn−1 ) は独立 3 ! [ Gauss 分布 (正規分布) ] 任意の 0 5 s < t に対して、 P (B(t) ∈ A | B(s) = a) = が成り立つ。 Z A p 1 2π(t − s) (x−a)2 e− 2(t−s) dx (a ∈ R, A ⊂ R) 1 , 2 , 3 を満たす確率過程 {B(t) : t = 0} を「ブラウン運動」または「Wiener 過程」と 言う。なお空間が 3 次元の場合は 3 のかわりに ZZZ |x−a|2 −3 0 2 − 2(t−s) 3 P (B(t) ∈ A | B(s) = a) = (2π(t − s)) e dx1 dx2 dx3 A (x=(x1 , x2 , x3 ) ∈ R3 , a ∈ R3 , A ⊂ R3 ) を用いる。 (注) 1 , 2 , 3 を満たす {B(t)} の存在確率密度 u(t, x) D= 1 の場合の熱方程式の解である。 2 µ P (B(t) ∈ A) = Z u(t, x)dx A ¶ は
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