北九州空港からの旅に参加した方の紀行文です。

「感動スイス旅行」
このタイトルは、旅行から帰宅して3・4日パソコンにへばり
ついて妻が仕上げた18ページのアルバムのタイトルを借用
したものだ。
四十数年の会社生活に一区切りがついたのを機に、自身へ
のご褒美とそれを支え続けてくれた妻への感謝の気持でゆっ
くり海外旅行でもと考えていたところへ、北九州空港発着のJ
ALチャーター便で行く「アルプス三大名峰めぐり」の企画があ
インターラーケンから見たユングフラウ
ることを知り夫婦で参加した。
北九州空港発なので前泊の必要もなく、私の住んでいる折尾からは空港行きのエアポートバ
スがあるので大きな手荷物も苦にならない、しかもチューリッヒまで直行だ。そんな点が大きな
魅力でもあった。
7月11日の昼前に北九州空港を飛び立った飛行機は、シベリア大陸を横断して10数時間
の飛行の後、夕方のチューリッヒ空港に着陸、いよいよ9日間の旅の始まりだ。ホテルに着い
た私達のグループは総勢28人、帰国の日までずっと一緒に過ごすことになるが皆さんどんな
方達なのか、これもまたツアーの楽しみの一つだ。
翌朝は小雨のパラつく生憎の天気、三大名峰も雲
に隠れてしまってはどうしようもないと、これから先の
天候の回復を祈りながらバスに乗り込んだ。しかし昼
前にマイエンフェルトの「ハイジの家」へ着く頃にはす
っかり晴れ上がり、結局スイス滞在中雨の心配を全く
することなく快晴に恵まれたことは又とない幸運だっ
た。
ハイジの村
ヨーロッパ三大名峰といえば、標高4478メートルの雄姿を誇る独立峰マッターホルン、ヨー
ロッパ最高峰でその美しさに定評のあるモンブラン、そしてアイガー、メンヒに連なるユングフラ
ウ、誰もが何時か何処かで その名を聞いた
ことのある名山ばかりだ。
麓の町から登山列車や氷河特急を乗り継い
で、あるいはまた、ロープウェイを何度か乗り
換えて富士山よりも高い展望台へ到着する
と目の前に雪と氷の世界が広がる。気温は
零度近く、酸素も希薄で大声を出すと息が切
れると言われていたがそんな心配は何処へ
やらで、手の届きそうなところに見える美しい
山の頂に暫し息を呑む。
マッターホルンを背に。
興奮、感動、忘我、その時の気持ちをどう表現したらよいのか。360度に広がる雄大な情景を
瞼に焼きつけるのに時の経つのを忘れて下山時刻の到来がいまいましい。
迫力満点の大氷河
山頂から少し目を移すと大氷河が二つ三つ雪と氷
を押し出すように私の足下を下方へと向かってい
る。
ガイドさんによれば1時間に2センチくらいずつ動い
ているという。何万年にわたって私達の感知できな
い微々たる動きで、私達の見ることのできない氷河
の奥底で、岩肌を削り山や谷を形造りこれからもそ
の形を変えて行くのだ。地球の営みとはまさにこうい
うことを言うのだろう。
今度のツアーではメインの名峰めぐりのほかに随所にいろいろの企画が
織り込まれていて、これがまた楽しさを倍加させてくれた。マッターホルン
を展望するクラインマッターホルン山頂から下山の折には、ロープウェイを
途中の駅で下車して麓のツェルマットの町までハイキングを楽しんだ。氷
河から流れ出した水は氷河が岩盤から削り取った細かい砂で白く濁り、そ
の砂混じりの急流が岩を削って険し
い峡谷となるというガイドさんの説明
を聞きながら、鎖につかまっておそる
おそる峡谷を渡ったり、野原を歩いて
高山植物の可憐な花に心を癒やされ
たり、足の疲れを気にしながら4時間
近く歩いたのも楽しい思い出だ。
山村風景
ジュネーブからインターラーケンへ移動する
途中モントルーから世界に名高い高級避暑
地ローザンヌまでレマン湖上をクルージング
した時には、モントルー産の地ワインを片手
に、遠くに霞むアルプス を眺め、湖上を渡る
さ わやかな風に打たれながらほんの少しブ
ルジョア気分を味わった。
レマン湖上 200mの大噴水(ジュネーブ)
旅の途中立ち寄ったいくつかの都会もそれぞれに趣があって忘れ難い。経済・文化の中心
でスイス最大の都市チューリッヒ、国連欧州本部など国際機関が多数ある国際都市ジュネー
ブ、スイスの首都で旧市街地が世界遺産に登録
されているベルン。感心するのはベルンだけでな
くどの都市も17・8世紀の町並みはそれとしてし
っかり維持しながら、現代の都市機能を巧みにマ
ッチングさせている点だ。単に石造文化だからで
きるでは片付けられない何かがある気がした。
ベルン
最後に、感心させられたことをもうひとつ。麓の町、道沿いの小
さな町、山間の村、何処へ行っても家々の窓という窓は草花であ
ふれ私達の気分を和ませてくれる。聞けば洗濯物は道路から見
える所に乾すことを禁じられているとか。また、ガソリン車乗り入
れ禁止の町もある。これらは全て、大事な観光資源を大切にして
世界中からやってくる観光客のために自分たちができることをし
よう、それが世界に誇る観光地スイスに住む自分たちの大事な
役目なのだとの意識が徹底していることを示しているように思え
る。楽しい素晴らしい旅の思い出とともに大事なことをひとつ教え
られた思いがした。
アッペンツェル
八幡西区の日吉丸