ジェーン・バーキンはフランスの女優、歌手、モデルとして活躍しながら、同時に女優のシャルロ ット・ゲンズブールや写真家のケイト・バリーの母親でもある。さまざまな顔をもつジェーン・バー キンではあるが、ひとことでいうと、この時代を颯爽と生きる「いい女」の象徴的な存在、というこ とになる。 「ランデ・ヴー」は、そのジェーン・バーキンが、カエターノ・ヴェローゾ、ブライアン・フェリ ー、フランソワーズ・アルディといった世界各国の、それぞれ個性ゆたかなスーパースターたちと共 演したアルバムである。彼女と共演している人たちのなかにはぼくらの井上陽水もいて、彼の「カナ リア」をとりあげ、ユニークな歌唱に仕上げている。 個人的には、日本での知名度は低いものの、イタリアのだみ声のシンガー・ソングライター、パオ ロ・コンテの参加しているのがうれしかった。さすがに、共演するミュージシャンの選択も粋なら、 アレンジもとことん洒落ていて、きけば、おのずと、ききての感覚を今様なものとするのに有効に機 能しそうに思われた。 今という時代のうちの心地いい部分を、音によって、さりげなくすくいあげるのがポップスといわ れる音楽である。その意味で、この「ランデ・ヴー」は極上のポップスたりえている。ジェーン・バ ーキンの声は特に美声とはいいがたく、ひいでた歌唱力にめぐまれているともいいがたい。しかし、 ジェーン・バーキンはその自分に正直な声と歌唱をいかして、ここで、ききてに今を感じさせる。 まさに、そこがこの「ランデ・ヴー」の賞味部分になる。今の空気をこんな感じでかっこうよく味 わわせてくれるアルバムなんて、めったにない。このCDを少し音量を抑え目にしてかけていたら、 久しぶりに、少しお洒落でもして出かけてみようかと思った。 *サライ
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