「SIA」 99号 [pdf形式2581KB

滋賀県国際交流・協力情報誌
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99
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2015 Spring
LOBALIZATION
❶ 特集 あなたのまちの国際交流協会
~地域の国際化に大貢献!~
Contents
❹ 第11 回びわこ日本語ネットワーク
外国人によるスピーチ大会・受賞スピーチ紹介
❺❻ SIA NEWS
滋賀県国際交流推進協議会全体研修会
平成26 年度国際教育ワークショップ報告
おうみ
〒520-0801 大津市におの浜1 丁目1 番20 号 ピアザ淡海2 階
TEL.077-526-0931 FAX.077-510-0601
E-mail: [email protected] URL: http://www.s-i-a.or.jp
外国にルーツを持つ子どもへの日本語指導者養成講座
❻ボランティア活動報告
❼ 今、この人に Interview
グラフィックデザイナー 弓道家
神利 アレサンドロさん
❽ おしえて世界のこと
「子どものお手伝い」
あなたのまちの国際交流協会
特集
~地域の国際化に大貢献!~
現在、滋賀県には、
(公財)滋賀県国際協会の他に市や町を
単位とした15の国際交流協会があります。各協会では、それ
ぞれの地域が持つ特色を活かしながら、姉妹都市などとの
交流や、地域で暮らす外国人住民との交流、国際理解のため
の各種講座の開催など、住民からのニーズに応じた活動を
行っています。
今回は、県内各地域の国際交流協会の活動をいくつかご
紹介したいと思います。
▲安土信長まつりでブラジル料理を紹介
レンジ
生が坐禅にチャ
▲ミシガンの学
▲民族衣装
で世界を体
験
▲日本語教室
SIA Spring Vol.99
1
特 集
あなたのまちの国際交流協会
~地域の国際化に大貢献!~
誰にでも開かれた地域社会づくりを!
東近江国際交流協会
東近江国際交流協会は、ボランティアが運営主体となっ
ている団体です。市内の各分野での国際交流活動、国際相互
理解及び国際協力を促進するとともに、在住外国人への支
援を推進することにより、誰にでも開かれた地域社会づく
りに取り組んでいます。
■在住の外国籍の方向けの日本語教室・小中学校での学習支援
日本語教室は、マンツーマンの授業で指導しています。日
本語の習得を通じ、地域に親しみ、日々の暮らしが豊かにな
ることを目的としています。小中学校では、児童生徒を教室
から 2 時間取り出し、また放課後にも日本の風習、文化、算
数や国語などを指導、学習理解をサポートしています。毎週
土曜日には、
「アミーゴ教室」と題して、子どもたちに日本語
や日本文化を理解してもらうための教室を開いています。
■市民向け国際理解事業
国際理解の普及のため、世界各国の文化や風習について
のお話を聞く「世界の扉」
「世界の料理教室」を開講。また
イベントでは、
「世界のふれあい音楽祭」
「ハロウィンパー
ティー」
「ひな人形めぐり 国際文化デー」小中高生を対象に
した「英語スピーチコンテスト」を開催しています。
■姉妹都市との交流
東近江市の姉妹都市アメリカ合衆国ミシガン州マーケッ
ト市、カナダのアルバータ州テーバー町、大韓民国場岩面、
中国湖南省常徳市、スウェーデンのダーラナ県レトビック
市との交流を企画・運営しています。
■相談業務
外国籍の方の生活に関する相談や国際交流をしたい市民
の方の相談にのっています。
滋賀県内 国際交流協会一覧
(公財)大津市国際親善協会
大津市浜大津4-1-1 明日都浜大津2F
TEL:077-525-4711 FAX:077-525-4004
■開業日時:火~土 9:00 ~ 17:30
■主な事業・活動:市民向け外国語講座(英・独・中・韓・ベトナム)/日本
語講座・無料個別相談/各種国際交流イベント/姉妹都市交流事業 等
彦根市国際協会
彦根市尾末町1-38 市民・国際交流サロン内
TEL:0749-22-5931 FAX:0749-22-1398
(市役所代表)
■開業日時:月~金 8:30 ~ 17:15
■主な事業・活動:姉妹都市・友好都市交流事業/友好協会交流事業/日
本文化体験/国際教育/各種講座(日本語教室、世界の話を聞く会) 等
(特活)長浜市民国際交流協会
長浜市神照町519 TEL:0749-63-4400 FAX:0749-63-4400
■開業日時:木曜・祝日の翌日以外 10:00 ~ 19:00
■主な事業・活動:市民向け外国語講座(英、中、韓、仏、スペイン、ポルトガル)
/日本語教室/外国人児童向け学習支援教室/国際交流イベント/生活相談 等
(公財)近江八幡市国際協会
近江八幡市桜宮町236 市役所西別館内
TEL:0748-26-7092 FAX:0748-26-7092
■開業日時:月~金 9:00 ~ 16:45
■主な事業・活動:外国人住民向け行政文書翻訳、通訳/多文化共生事業(日本
料理講座など)/市民向け外国語講座/国際交流のつどい/姉妹都市交流 等
2
SIA Spring Vol.99
この他に、今後、東近江国際交流協会が関わる大きな事業
として、
「第 56 回 外国人による日本語弁論大会」
(国際教
育振興会・国際交流基金・東近江市主催)があります。世界、
日本各地から集まってこられる母語が日本語以外の外国籍
の方のスピーチが聞けますので、是非、みなさんお越しくだ
さい。
●第56 回 外国人による日本語弁論大会
◇開催日時:2015 年6 月13 日(土)午後1時~
◇会場:東近江市立八日市文化芸術会館
▲国際ふれあい音楽祭
▲姉妹都市のカナダ・テーバーの使節団
図書館を舞台にした語学教室で
コミュニケーションを展開
湖南市国際協会
湖南市国際協会では、湖南市に多く在住する南米系外国人
市民の母語である、ポルトガル語とスペイン語の基礎と南米
の文化についてネイティブ講師指導のもと、外国人、日本人
児童生徒も一緒に学ぶ教室「湖南市国際文化教室」を開講。ほ
ぼ毎週土曜日の午前中に湖南市立甲西図書館で開催していま
す。
この教室は、日本人児童生徒にとっては外国語と外国の文
化を学ぶ教室ですが、外国にルーツを持つ子どもたちにとっ
ては、自国のルーツに誇りを持ち、親子が家庭で母語による
コミュニケーションを図れることが目的となっています。ま
た、図書館を会場とすることで、親子で利用しながら地域コ
草津市国際交流協会
草津市草津3-13-30 草津市役所 まちづくり協働課内
TEL:077-561-2322 FAX:077-561-2482
■開業日時:月~金 8:30 ~ 17:15
■主な事業・活動:国際交流・国内交流事業/国際理解講座/国際交流イ
ベント/広報誌発行/外国籍住民の支援(通訳業務) 等
守山市国際交流協会 守山市守山2-16-45 守山市民交流センター内
TEL:077-583-4653 FAX:077-583-4653
■開業日時:月~金 9:00 ~ 16:30
■主な事業・活動:姉妹都市交流関連事業/ ポルトガル語通訳による「く
らしの相談」/日本語教室/国際交流イベント/国際理解イベント 等
栗東国際交流協会
栗東市安養寺1-13-33 栗東市役所 自治振興課内
TEL:077-551-0293 FAX:077-554-1123
■開業日時:月~金 9:00 ~ 17:00
■主な事業・活動:市民向け外国語講座(英・中)/日本語教室/各種国際
交流イベント/姉妹都市交流事業
甲賀市国際交流協会
甲賀市水口町水口5676 自主活動センター きずな内
TEL:0748-63-8728 FAX:0748-63-8728
■開業日時:月~金(祝日をのぞく) 10:00 ~ 17:30
■主な事業・活動:フェスタ・サロン等各種国際交流事業/セミナー・語
学講座等国際理解推進事業/子ども向け国際理解推進事業/日本語教室・
日本語指導者養成講座/姉妹都市・友好都市交流事業 等
TOPICS
ミュニティに溶け込んで
いくきっかけとし、将来
活躍できるグローバルな
人材の育成を目指してい
ます。
現在は市内の小中学校
に在籍する児童生徒がポ ▲ポルトガル語教室の風景 ルトガル語、スペイン語
の 各 教 室 に 約 15 名 ず つ
通っています。日本人児
童生徒も通うことで、こ
の教室を通し日本人と外
国人が相互の文化につい
▲オリエンテーション・図書館司書によ
て関心を持ち、また相互
る「多言語絵本読み聞かせ」
のコミュニケーション能
力アップも目指しています。文化を学ぶオリエンテーション
や、図書館の本や図書館司書とふれあうこともカリキュラム
の 1 つであり、子どもたちの楽しみでもあります。受講生の
出席率も高く、保護者もオリエンテーションに積極的に参加
することで、この事業を理解し親子間でのコミュニケーショ
ン不足の解消にも努めています。
図書館でもこの事業をきっかけとして、外国人住民の図書
の貸し出しが徐々に増えてきています。保護者や周りの大人
も含め、さらに国際理解や多文化共生の進展に繋がるように
これからも継続していきたいと思います。
尚、この教室は 5 月より南米語学学習事業「パラブラ(言葉)
教室」として各言語共に午前午後の教室にレベル分けをし、
さらにパワーアップします!
アイデア一杯の
「国際交流の広場」を開催
守山市国際交流協会
しています。これは守山市民と外国籍住民との交流を通して
国際理解を深めようとするもので、元々行政主体で進めてい
ましたが、交流の主役である市民の皆さんの活力とアイデア
を活かしたイベントづくりを目指して、平成 13 年度から、公
募したボランティアの方々のご協力を得て開催しています。
なんと、今年3月8日(日)の開催で 14 回目となりました。
「国際交流の広場」は、色々な国の食が味わえる「食の広場」、
日本の文化などが体験できる「体験の広場」、無料体験や交流
ができる「交流の広場」、そして吹奏楽演奏や外国人による歌
発表、踊りなどを披露する「アトラクションの広場」の 4 つで
構成されています。
中でも、毎年好評な
のが外国の人による歌
発表で、日本語教室に
通う生徒さんを中心に
ご出演いただいており
ます。外国の人が、日
本の歌を日本語で歌う ▲着物姿で日本の歌をうたいましょう♪ というのはやはり大変
で、毎週日曜日に休日
返上で練習されていま
す。また、発表のとき
皆さんに日本の着物を
着ていただくというの
がこのイベントのポイ
ントで、女性 20 人くら
いが着ることができる ▲各国料理の屋台村
数の着物や小物が揃っています。これも無償で提供されたも
のです。
抽選会の豪華な景品も市内の協賛企業から提供されたもの
で、イベントを盛りあげる大きな力となっています。
これからもボランティアの方々と一緒に、趣向を凝らして
企画していきますので是非ご参加ください。来年の「国際交
流の広場」をお楽しみに!
守山市国際交流協会では毎年 3 月に「国際交流の広場」を開催
野洲市国際協会
野洲市小篠原2100-1 野洲市役所 南別館
TEL:077-586-3106 FAX:077-586-3139
■開業日時:月~金 9:00 ~ 17:00
■主な事業・活動:日本語教室/園・小・中学校へのゲストティーチャー
派遣/姉妹都市など海外との交流/交流イベント(ハロウィンパーティー
など)/カルチャー教室/国際理解講演会 等
湖南市国際協会 湖南市中央1-1 中央まちづくりセンター1F
TEL:0748-71-4332 FAX:0748-71-4332
■開業日時:月~金 8:30 ~ 17:00
■主な事業・活動:語学教育事業(日本語教室等)/教育支援事業(日本語初期指導教
室での学習支援等) /国際文化交流事業/地域共生事業(相談窓口・生活オリエン
テーション・各種セミナー・多文化体験事業)/広報誌発行・HP 管理等 等
高島市国際協会
高島市今津町中沼1-4-1 今津東コミュニティセンター内
TEL:0740-20-1180 FAX:0740-20-5757
■開業日時:月~金 9:00 ~ 17:00
■主な事業・活動:外国人受入交流、通訳ボランティア/英語、韓国語サロン開講/在住
外国人向け日本語教室/ゲストティーチャー派遣/「世界の台所」異文化ワークショップ 等
東近江国際交流協会
東近江市八日市緑町1-9 TEL:050-5802-9606 FAX:050-5802-9606
■開業日時:月~金 9:30 ~ 16:00
■主な事業・活動:市民向け外国語講座(英・ポ・伊)/日本語講座、出前教室/各
種国際交流イベント/姉妹都市交流事業/小中高生英語スピーチコンテスト 等
米原市多文化共生協会
米原市下多良3-3 米原市役所 人権政策課内
TEL:0749-52-6629 FAX:0749-52-4539
■開業日時:月~金 8:30 ~ 17:15
■主な事業・活動:市民向け外国語講座(英)/日本語講座/各種国際交流イベント
日野町国際親善協会
蒲生郡日野町河原1-1 日野町役場 企画振興課内
TEL:0748-52-6550 FAX:0748-52-0089
■開業日時:月~金 8:30 ~ 17:15
■主な事業・活動:姉妹都市交流活動/機関紙「友好の輪」/氏郷まつり“楽市楽
座”で姉妹都市物産展実施/韓国語講座/渡来の歴史と文化を訪ねる研修会実施
愛荘町国際交流協会
愛知郡愛荘町愛知川13-2 愛知川公民館内
TEL:070-5593-1769 FAX:0749-42-6390
■開業日時:火~土 13:00 ~ 17:00
■主な事業・活動:外国語教室(中・韓・ポルトガル語・スペイン語)/日
本語教室/国際交流イベント/地域支援団体や行政機関との協賛イベント
(公財)滋賀県国際協会
大津市におの浜1丁目1-20 ピアザ淡海2階
TEL:077-526-0931 FAX:077-510-0601
■開業日時:日〜金(土・祝日以外) 8:30 ~ 17:15
■主な事業・活動:国際交流・国際協力関係事業/国際教育啓発関係事業
(セミナー・教材開発・貸出等) /外国人住民サポート事業(情報誌発行・
相談窓口)/外国籍学生向け奨学金給付/ JCMU 運営支援 等
SIA Spring Vol.99
3
第 11 回びわこ日本語ネットワーク
外国人による日本語スピーチ大会 ―つたえよう 私のおもい―
受賞スピーチのご紹介
「受け入れること」
(公財)滋賀県国際協会会長賞受賞
フレデリカ アルダバさん(フィリピン出身)
私は、フィリピンから来たフレデリカ アルダバ
とだと思います。
と申します。
それで私は困難
年齢は 35 歳で 3 人の子どもの母です。滋賀県に
だと思うかわり
9 年間住んでいて、今では日本を第二のふるさとと
に希望の光を見
考えています。日本に来た時は、こんなに長い間住
始めることにし
み続けられるとは考えてもいませんでした。なぜな
ました。
ら、すべてのことが私の暮らしてきた習慣と大きく
違っていたからです。
手始めに日本
語の勉強を始めました。自分のコミュニケーション
10 年近く経った今も言葉の壁を乗り越えるのは
能力を高めるためにです。また、食事を冷たくした
むずかしいです。また、寒い季節は南国で過ごして
り美味しく食べる方法を考えたりする日本人のやり
きた者にとっては辛いものです。日本の食べ物も口
方のおかげで健康な生活の仕方について考えるよう
に合いませんでした。それが生であろうと、半生で
になりました。
あろうと…。
それで思い出したのですが、フレンドリーなタク
いちばん願っていることは、私の子ども達が、彼
シーの運転手さんがかつて私に「お気に入りの日本
らの前にさしだされる色々ないい文化を吸収しなが
の食べ物は何ですか?」とたずねたことがあります。
ら育って欲しいということです。
私はためらわず「ラーメンとギョーザ」と応えまし
わたくしは大人になってから日本でずっと暮らし
た。すると彼は「それらは日本の食べ物でなく、日本
ていますが、のんきな自分が一人前の責任感のある
人むきにした中華料理です」といいました。知らな
大人へ変わってきたように思います。私は産みの苦
かったので本当に恥ずかしかったです。それからは
しみとともに子育ての大変さを経験しています。あ
「たこ焼き!」とこたえることにしました。いままで
まり楽しくなかったですが、自分の時間とお金のこ
もいっぱい食べてきたし、これからも喜んで食べる
とをやりくりする方法も学びました。環境について
でしょうから。
も気にかけるようになりました。そして車に乗る勇
気ももちました。自動車の免許をとったのです。
一番辛いことは友達やフィリピンの家族と離れて
いることでした。彼らはいつも私を助けてくれ一緒
日本を第二のふるさとにすると決めることは本当
に歩んできたからです。彼らのいない日本でたくさ
に簡単なことでした。いったん自分ができなかった
ん初めての経験をしました。それは、はっきりとし
ことも受け入れると決めたら、前へ進んでいくこと、
た独りぼっちの感覚でした。
ひとつひとつできることをやり遂げることはさらに
簡単でした。私は処理することが難しいとわかって
何が私にそれを乗り越えさせ幸せな気持ちにして
も受け入れるようになりました。私の家族が受けて
くれたのでしょうか。それは家族です!何があって
経験しているいろいろなことは、とても大切なこと
も何が子どもにとって一番いいのかを考えなけれ
だと思いました。
ばなりません。日本は間違いなく世界で一番安全で
清潔な国です。また日本のすべての人の権利が認め
日本が日本人と同じくらい私達をもてなし受け入
られ尊敬されているのをみてきました。すべての子
れてくれるかぎり、私にはもう日本を去る理由があ
供達は自由でふさわしい教育を受けることができま
りません。
す。すべての人がふさわしい住まいを手に入れてい
ます。偏見のない質のいいサービスはすばらしいこ
4
SIA Spring Vol.99
※原文をそのまま掲載しております。
SIA
NEWS
しーあにゅーす
NEWS 1
滋賀県国際交流推進協議会全体研修会
市民活動に活かせる対話型ファシリテーション講座
■日時:2015 年 1 月 15 日(木) 13:30 ~ 15:30
■会場:ピアザ淡海 207 会議室 ■参加者数:44 人
■対象:滋賀県国際交流推進協議会員、県内各市町多文化共生担当課職員
■講師:NPO 法人 ムラのミライ 共同代表 中田 豊一 氏
県内の国際交流・協力・多文化共生に関わる団体で
構成される滋賀県国際交流推進協議会(事務局 滋賀
県国際協会)主催で、研修会を実施しました。今回は、
それぞれの団体が、日頃の活動の推進や直面している
課題の解決に役立てられるようにと、
“対話型ファシリ
テーションの手法”がテーマでした。
講師の中田さんが、海外協力事業での現場交渉など
を通じて身につけてこられたファシリテーションの手
法とは、事実質問をうまく使って「相手に気付きを促す
こと。相手にしっかりした分析をさせるように導くこ
と」であり、そこに至るプロセスを重視した考え方は、
“目からウロコ”の発見ばかりでした。
例えば、一般的に、ある事業や相談が上手く進まない
とき、改善方法を探そうとして、つい、相手に「なぜ?」
「どうして?」と聞いてしまいがちだが、まずは、相手
の心を開き、信頼関係を築くために「話の入り口」を見
つけることが一番重要である。そのために、相手の周辺
で目についたものの中から意味のありそうなものをえ
NEWS 2
平成26 年度 国際教育ワークショップ 報告
地球市民を地域とともに育てよう part 13
水から広がる学び~わたしたちの身近な水環境から
世界の水環境まで一緒に考えてみよう~
第 1 部 で は、琵 琶 湖 の 漁 師
の戸田さんから、古くから受
け継がれる湖とともに暮らす
独自文化をはじめ、湖からの
恩恵を受ける立場だからこそ、
湖を守るために周辺の山へ植
林を行っていることや、フードマイレージの観点から
地産地消に取り組むことが、ひいては地球環境にもや
さしい生活につながることなど、幅広いお話を伺いま
した。第 2 部では、びわ湖での様々な体験学習に取り
組む峯森先生から、子どもたちが、県の環境フェスタ
で学習成果を発表した際、
「びわ湖の自然を守っていく
ために一番大切なことは何ですか」という知事からの
突然の質問に対して、
「それは、びわ湖を好きになるこ
とです」と、迷いなく答えてくれた姿に感動したとい
らんで、
「いつ」
「どこ」
「何」
「誰」
といった単純な疑問詞を使って
質問したり、
「~したことあり
ま す か?」
「~ を 知 っ て い ま す
か?」と経験や知識をたずねた
りすることから始める。その上
で、直面する課題が、本当に問
題なのか整理するため、
「誰がどう困ったか」
「今までど
う対処してきたか」などの事実質問を、時系列に組み立
て、詳しく聞き込んでいくことが、相手に気付きをもた
らす過程となる、とのことでした。
今回学んだ「徹底した事実質問により、
“実のある議
論”へと導くファシリテーション手法」や「提案はせず
“最後のひと言(気付き)”は、相手に言わせる」という
基本姿勢などは、受講者の皆さんが日頃の仕事や市民
活動を行う上ですぐに活かせるものだったと思います。
この研修での学びが、各団体が抱える課題の分析や解
決へのヒントへと繋がっていくことを期待します。
■日時:2015 年1月17 日(土)10:00 ~ 16:45
■会場:ピアザ淡海3 階 305 会議室
■参加者数:31 人
■講師:第1 部 守山市漁業協同組合 漁師 戸田 直弘さん
第2 部 高島市立本庄小学校 教頭 峯森 吉晴さん 第3 部 (特活)開発教育協会 元スタッフ 宮崎 花衣さん ■主催:滋賀県国際協会 ■共催:JICA 関西
う事例の紹介がありました。第 3 部では、教材「水から
広がる学び」の中から、バーチャルウォーター(仮想
水)、世界の水事情についてワークショップ形式で学び
ました。私たちが農産物などの製品を輸入する際には、
生産のために必要な水資源も膨大に消費していること
に気付いたり、アフリカなどの地域では、まだまだ安
全な水へのアクセス
が悪く、特に女の子の
家事負担が大きくな
り、教育を受ける機会
が阻まれていること
についても考えを広
げていきました。
まさにローカルから、グローバルへと目を向ける一
日となりました。
SIA Spring Vol.99
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SIA NEWS
NEWS 3
外国にルーツを持つ子どもへの日本語指導者養成講座 Part Ⅷ
活動中心の『日本語と教科の統合学習』の場をつくる
~子どもたちがもてる力を発揮し、明日を拓くために〜
■日時:2015 年 2 月 22 日(日) 10:00 〜 15:00
■会場:コラボしが 21 中会議室(大津市)
子どもたちが、経験や既有知識を発揮して、教科と
日本語の両方を高めるための学習活動を考え、教科内
容について「比較したり分類し
たり」
「関連付けたり統合した
り」と、子どもたちが活動に参
加しながら思考し、課題を解決
する力を育む学習の場をデザ
インする方法を学びました。
防災マップを使った授業の
作り方や担当している子ども
しーあ
~ 2014 年度 SIA ボランティア活動紹介~
当協会登録ボランティア(SIA ボランティア)は、国際交
流支援、ホームステイ・ホームビジット受け入れ、通訳・
翻訳の分野で活動いただいています。
今年度の主な活動実績をお知らせします。
■講師:東京学芸大学 教授 齋藤 ひろみ 氏
■参加者数:22 名
の教科書を持ってき
ていただき、そこから
教えたい単元を抜き
取り、授業案をデザイ
ンするなどのワーク
ショップも実施して
いただきました。
参加者からは「具体的で実際の指導のイメージが持
てました」
「具体的な授業の進め方が分かった」などの
感想をいただきました。
ボランティアの皆さん
ありがとう
ございました!!
■国際交流支援
○滋賀県技術研修員への茶道教室体験 1 名
○滋賀県技術研修員へのスポーツチャンバラ体験 1 名
○滋賀県技術研修員へのちぎり絵体験 2 名
○当協会主催 外国にルーツを持つ高校生へのキャリア
デザイン研修「職業人と語る会」運営補助 3名
■ホームステイ・ホームビジット受け入れ
○ JICE(一般財団法人 日本国際協力センター)主催
■通訳・翻訳
○連合滋賀(日本労働組合総連合会 滋賀県連合会)
中国湖南省総工会 交流事業 懇親会 中国語通訳 2 名
シンガポール大学生・日本語学習者団ホームステイ 1 家庭
○日野町 三方よし!近江日野田舎体験推進協議会
○ JICE(一般財団法人 日本国際協力センター)主催
歓迎・お別れあいさつ文 英語翻訳 1 名
ベトナム大学生 メディア一般団ホームステイ 6 家庭
○当協会発行 外国人向け情報紙 みみタロウ
○滋賀県日本青年国際交流機構(滋賀 IYEO)主催
スペイン語翻訳(新規) 1 名
ブラジル・バーレーン青年ホームステイ 2 家庭
など
現在、SIA ボランティアとして 170 人を超える方々が登録されています。英語、中国語をはじめ様々な
語学を活かして国際交流活動に協力したいと意欲を持った方たちばかりです。海外からのゲストの観光案内
や、地域で行われるイベントなどへのお手伝いなど、ボランティアが活躍できる機会がありましたら、当協
会へお気軽にご相談ください。
(ただし、営利目的につながるケースなど、一部お引き受けできない場合もございます。)
6
SIA Spring Vol.99
今、この人に
Interview
い ん た び ゅ う
武道の教えは
グラフィックデザイナー 弓道家
「自分に克つこと」。
神利 アレサンドロさん
外国で生活する中でも、
その国の文化を学び、
合わせていく努力が大切ですね。
■弓道とは、いつどのように出会った
のですか。
族を作るかを考えました。そして、家
族を作ることを選んだのです。でも彼
中学生の頃から空手を習い始めた
女は日本語しか話せませんから、ま
のですが、だんだんとスポーツ化し
ず、私が日本語を勉強するところから
ているように感じていました。私は
スタートしました。家族や友達から
武道の中心となっている「自分自身に
は、反対されましたけどね。 克つ」ことに魅力を感じていたので、
もっと武道の精神に触れられるもの
を探していたんです。そんなとき、オ
■日本での暮らしに不自由はありま
せんでしたか?
イゲン ヘイゲルというドイツ人が
滋賀県に日本語学校がないのは残
書いた「弓と禅」という本に出会い、
念ですね。だから最初の 1 年は京都に
弓道をやってみようと思いました。イ
住んで、京都の日本語学校に通ってい
タリアで弓道をしている人は 100 人ぐ
ました。外国で暮らすには、その国の
らいでしたね。
言葉をマスターすることがとても大
事です。日本語でのコミュニケーショ
■日本に来たきっかけは?
ンは不自由なく出来るようになりま
私はもともと、病院へ先進の医療
したが、漢字はとても難しくてハード
技術の導入を進める仕事をしていま
ルが高いですね。漢字の読み書きが今
した。イタリアはもちろんドイツやフ
の課題です。
ランスなど EU 諸国のあちこちの病院
を飛び回っていたんです。そんな中、
2004 年に一旦仕事を辞めて 3 か月の
■弓道の稽古はどのようにされてい
るのですか。
長期休暇を取りました。これを機会
週に 1 ~ 4 回、滋賀県立武道館で稽
に日本に来て日本語を勉強しようと
古をしています。稽古は水のようなも
思ったのです。そして京都に行ったと
ので、コップが一杯にならないと次の
き、私と同じく弓道をしていた今の妻
ステップに進むことができません。で
に出会い、結婚することに決めまし
すから、コンスタントに続けることが
た。そして 2005 年 4 月に再来日し、以
大事です。今年ははじめて、正月に京
来ずっと日本で暮らしています。
都の三十三間堂で行われる弓初めに
参加し、試合もすることができまし
■これまでの仕事のキャリアやイタ
た。
リアでの暮らしよりも、日本に来る
ことを選んだのはなぜですか?
■武道の精神をきわめることは、アレ
とてもやりがいのある仕事でした
サンドロさんにとってどういう意
が、とても忙しくて家族を作ることを
味を持っていますか。
考えるような時間がありませんでし
スポーツは、相手に勝つために努力
た。彼女に出会ったとき、転職してド
します。もし負けてしまったら、相手
イツで働くか、それとも日本に来て家
の方が強かった、と言い訳をすること
も出来ます。でも、武道の教えること
は相手に勝つことではなく、自分に克
つことです。特に弓道の場合は柔道や
空手と違って戦う相手がいないので、
まさに自分の中の努力がすべてです。
失敗したら自分を責めるしかありま
せん。弓道の場合「矢を的に当てたい
と思っていてはだめだ」と指導者から
教えられました。自然な形で正しく行
うと、矢が「当たる」。自分の力で当て
ようと意識すると的を外してしまい
● プロフィール ●
イ タ リ ア・ ロ ー マ 出 身、42 歳。中
学生の頃から空手を始める。20 歳
の頃、
「より深く武道の道を究めた
い」と、弓道を習い始め、大学卒業後
も医療関係の仕事の傍ら弓道を続け
る。2004 年 に 長 期 休 暇 で 初 来 日。
このとき奈津子さんと出会い結婚を
決意。2005 年 4 月から日本に移住
し一年間京都の日本語学校で勉強し
た後、滋賀で暮らし始める。デザイ
ン関係の仕事の傍ら滋賀県立武道館
で弓道の稽古を続け、現在錬士 5 段。
ます。大切なのは、自分の心をコント
ロールすることなのです。
■弓道で学んだことは、日本での生活
にも活かされていますか?
そうですね。日本人はいつも親切で
すが、もし他人が間違ったことをし
ていても、はっきりと指摘はしませ
ん。だから自分自身が意識して、他の
人がどういうふうにしているかを見
たり、自分の振る舞いが間違っていな
いか質問しないと、間違ったままで過
ごしてしまいます。日本人はマナー
や礼儀、スタイルをとても大切にして
います。それが分かっているかどうか
で、日本人か外国人かの壁ができてし
まいます。でも、それは日本人が子ど
もの頃から自然に身につけたものだ
から、外国人でもよく見ていればだん
だんと分かってきます。そのスタイル
を見付け、文化を学んで合わせていけ
ば、壁は超えられると思っています。
外国に行ってそこで暮らすためには、
誰でもそういう努力が必要なんじゃ
ないかな、と思います。
■国を越えて人と付き合うために、大
切なことは何でしょうか。
私には 3 歳になる息子がいます。家
ではイタリア語で話していますが、
「人の心」というベースは、言葉が違っ
てもみな同じです。だから人と人との
違いではなく、同じところを見ること
が大切だと思います。そんなことを、
息子にも教えていきたいですね。
SIA Spring Vol.99
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テーマ:
「子どものお手伝い」
子どもに自然な形で、様々な食や生活文化を伝えていく貴重な機会である「お手伝いタイム」ですが、親も子も仕事や勉強等
で忙しい日本では、子どもが家のお手伝いをする時間数は国際平均値より少ないと言われています。また、日本で「子どものお
手伝い」と聞くと、食事の準備や後かたづけ等が思いうかびますが、世界の国々で子ども達はどんなお手伝いをしているので
しょうか。
■インドネシア 橘 美佳さん(青年海外協力隊)
インドネシアでは欠かせない調味料
に、唐辛子などをすりつぶして作る「サ
ンバル」というものがあります。このサ
ンバル作りをするのが、私がこちらで
友だちになった子のお手伝い。でも、毎
食使うものなのでお手伝いと言うより
は、すでに役割になっているようです。
手伝いをさせるのはとても普通です。
普段は自分の部屋を片付けさせたり、
近所のパン屋さんへパンを買いに行か
せたりして、子どもが簡単にできるこ
とを任せます。店などで親の手伝いを
していた子どもたちもたくさんいまし
たが、今それは児童労働とみなされ、
法律で禁止されています。
■エクアドル 田中 愛子さん(青年海外協力隊)
南米エクアドルでは、幼い兄弟の面
倒をみる子どもたちの姿をよく見かけ
ます。日本のようなおんぶ紐を使うこ
とはなく、写真のように大きな布を使っ
て器用におんぶし、泣かないようにあ
や し た り、そ の
まま市場におつ
かいに行ったり
しています。
■中国 小久保 信義さん(元滋賀県湖南省経済交流駐在員)
中国では、子どもが一人っ子である場
合、両親や祖父母が大切に育てるので、
一般的にあまりお手伝いをさせません。
子どもには、何より勉強を優先させま
す。ある調査によると、中国で子どもが
家事を手伝う時間は一日平均 12 分。5
割程度の人が、
「小学生は家事の手伝い
をするべきである」と考えていますが、
実際には、6割くらいの子どもが“たま
に手伝う”程度であるようです。
■タイ
ピサチャー スリサクンさん(びわこ奨学生)
タイでの子ども達の一般的なお手伝
いとしては、簡単な家事をするという
ことが挙げられます。例えば、ベッドを
整えたり、親にマッサージをしたり、庭
木に水をあげたり、ペットに餌をやっ
たりします。私が子どもの頃は、母親が
料理するのをよく手伝っていました。
■ペルー 谷崎 千紘さん(青年海外協力隊)
地元は農家が多いので、子ども達は
学校が終わると畑仕事を手伝います。親
の言う事を聞かないとムチで叩くふり
をされるので、厳しくしつけられていま
す。子ども達も働き手の一人として見な
されているように感じます。炊事・洗濯
等家事も手伝う子どもが多いです。
■ブラジル ホドリーゴ ブリンカさん(滋賀県国際交流員)
ブラジルでは両親が子どもたちにお
■マラウイ 谷口 香津郎さん(青年海外協力隊)
マラウイでは子ども達は水汲みや赤
ちゃんの世話、火おこし等家事全般を手
伝います。また路上で物の販売や畑仕事
等、児童労働ともとれる光景にも遭遇し
ます。お手伝いや仕事は重要なことです
が、しっかりと
教育を受ける時
間の確保との両
立が大切だと言
えそうです。
▲物を運ぶ村の子ども達
■アメリカ合衆国 上山 輝幸さん(滋賀県ミシガン州経済交流駐在員)
ミシガン州は、アメリカ合衆国の中西
部に位置し、どちらかというと保守的な
地域です。知人に子どもの頃のお手伝い
について尋ねてみたところ、男性は、夕
食後のテーブル拭きや洗車、女性は、母
親が行う家事の手伝い等をしていたと
のことでした。各家庭の家族構成や経済
事情等によって、子どものお手伝い状況
も多様であるようです。
■モンゴル ロブサン ムングンチメグさん(びわこ奨学生)
モンゴルでは、子どもは家の手伝いを
よくします。料理の手伝い ( 小麦粉をこ
ねたり、ジャガイモの皮をむいたり ) や
妹や弟の世話は、殆ど女の子の手伝いに
なります。男の子の手伝いとしては、遊
牧民であれば、家畜の乳搾りの時に子牛
や子馬が親牛や親馬に近づかないよう
に引っ張って離したり、競馬に乗った
り、水を汲んだりする等があります。
外国人向け情報紙「みみタロウ」を以下の店舗に設置いただいております。ご利用ください。
●イオン長浜(専門店側入口を入って左) ●イオン近江八幡(1F セントラルコート内) ●イオン草津(イオン北入口(琵琶湖岸・守山側)を入って左)
●会員募集のご案内
県民の皆様の当協会の活動に対する理解と幅
広い参加をいただくために会員を募集しており
ます。国際交流や多文化共生地域づくりに関心
をお持ちの方、新しい出会いを求めておられる
方のご入会をお待ちしております。
【会員特典】
・ 当協会主催イベント参加費の割引
・県内外国料理レストラン、琵琶湖汽船、旅行
会社等の利用割引、優待等
・ 当協会情報誌のお届け
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・国際情報サロン図書等や国旗の貸出サービスあり
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SIA Spring Vol.99
【会費】
・学生会員 1 口 年額 1,000 円
・個人会員 1 口 年額 2,000 円
・団体会員 1 口 年額 10,000 円
<現在の会員数>
・ 個人会員 337 人
・ 団体会員 90 団体
(ともに平成27 年2 月28 日現在)
・ 新規入会
個人7 人
(平成26年12月1日〜平成27年2月28日現在)
ご入会ありがとうございました。
●編集後記
今回、特集でとりあげた国際交流協
会は、各地域が、国際化や多文化共生を
推進していく上で、重要な役割を担っ
て頂いています。P2 ~ 3 の一覧でご紹
介しましたように各協会では、国際交
流や多文化共生に関する様々な事業を
行っておられます。語学教室等の継続
的なものだけでなく、1 日限りのイベン
ト等、気軽に参加して頂けるものもた
くさんありますので、一度、足を運んで
みて頂けたら幸いです。
(H)