日本における税関への評価申告について

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日本における税関への評価申告について
上海華鐘投資
コンサルティング有限会社
Q しています。先般、日本の所管税関調査が入り、事前評価申告をしていないという
中国の出資先現地企業に生産設備や金型を無償貸与して、その製品を日本に輸入
ことで関税・消費税の追徴処分を受けました。税関の評価申告について教えてください。
A
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日本では、輸入取引に関連して
た材料、工具、設備、金型、消耗品等の
要素の有無やその金額の計算方法 ) につい
加算要素がある場合などは、輸
物品の費用
てその適否について確認することができる
(4) 買い手が無償あるいは値引きで提供し
ように、
「関税評価に係る事前教示制度」
た技術、設計等の役務の費用
を設けています。事前教示の方法は、文書
(5) 現地へ赴任している本社人員で本社が
で照会し税関より文書で回答を得る方法
負担している給料コスト
(6) 特許権等の使用に伴うロイヤリティー費
と、口頭で照会し税関より口頭で回答を得
る方法とがあります。前者には専用の照会
用、その他本社が負担している費用
用紙があり、これに必要事項を書き入れて
入に先立ってこれらの要素を評価加算
した「評価申告書」を税関に提出しなけ
ればなりません。
1.
税関での評価申告制度について
貨物の関税納税申告時に、その申告書に
添付される仕入書、運賃や保険の明細書だ
けでは実際の課税価格が明確にならない場
合は、実際の輸入製品価値となるように課
税価格の修正計算を行い、これを申告しな
ければなりません。これを関税の評価申告
といいます。
例えば、製造委託先に設備や金型、技術
を無償貸与して製造させた製品、部品など
を無償供与して組み立てた製品などの CIF
価格をもって、通関時の課税価格として申
告したとしても、この価格には本来発生し
ているはずの設備や金型、技術のコスト(こ
れらの実費や償却分の費用)が含まれませ
んので、CIF 価格は実質的な製品価値を表
したものとはなりません。
これでは「輸入貨物の取引価格による課
税価格の決定」「製造原価に基づく価格に
よる課税価格の決定」という原則によるこ
とになりませんので、INVOICE 価格に含ま
れないこれら設備や金型の費用を評価し追
加して申告し、これらを含む実際の価格に
対して関税と消費税を納税するというもの
です。
2.
どのような場合に評価申告が必要か
輸入貨物について、買い手が売り手に対
して実際に支払ったあるいは支払われるべ
き価格に含まれていない費用、すなわち加
算要素となる費用がある場合は、これを申
告し、実際の支払い価格+加算要素金額を
合わせて取引価格 ( 課税価格 ) として申告す
ることになります。具体的には次のものが
つまり、これらを輸入の買い手が負担し、 税関に提出し文書による回答を得ます。原
その費用を含まない金額を課税価格として 則 90 日以内に回答書が得られることになっ
申告することはできず、評価申告の加算要
素分として加算した金額を課税価格として
申告することになります。
ています。
回答書の内容はその後に行われる実際の
評価申告時に、一定の条件下で税関により
して加算するかについて、最終的にはその
尊重されますが、後者の口頭による回答の
場合は文書回答のような取り扱いがされま
加算方法と金額の適否は税関の判断により
せんので、できる限り文書回答を得る方法
ます。
により事前教示制度を利用することが望ま
しいでしょう。
前記の (1) ~ (5) の費用をどのように計算
3.個別申告と包括申告
税関への評価申告は、個別申告と包括
5.
事後調査について
申告があります。前者の場合は輸入通関の
輸入貨物の通関後における税務調査のこ
都度行います。後者については、同一内容
とを「事後調査」といいますが、これは管
の輸入を継続して行うことを予定している
轄の税関により通常3年ごとに行われます。
場合、はじめに輸入予定地管轄の税関に対
税関の担当者が各事業所を訪問し、輸入貨
して包括的に申告しておきます。この場合
物に関する資料、書類や会計上の帳簿を調
は、最長2年間個別の評価申告を省略でき
査し、実際の通関と課税が正しく行われた
ます。
かどうかを事後に確認するものです。
これについて注意すべき点としては、申
申告内容に誤りが発見されれば事業者に
告書を税関に提出してもそのまま税関とし
指導を行い、納税額に不足があれば修正申
ての見解を得たことになりませんので、申
告をさせ、追納をさせます。評価申告を行
告内容や加算要素の計算方法について正確
うべきところが行われていなかったり、誤っ
を期するためには、次に説明する事前教示
制度によって税関に対して照会し、税関の
た内容で評価申告が行われていたことが事
見解を得ておくことによってその評価方法
後調査の結果判明した場合も同様です。
中国を含む海外の企業に設備、消耗品、
の適否を事前に確認しておくことが望まし
技術等を無償で提供して製造を委託し、そ
いといえます。
の製品を輸入する際にこれらの費用を加算
しないで通関納税し、その後の税関による
4.評価申告に関する事前教示
税関では、輸入しようとする者がそれに
先がけて評価申告の内容や方法 ( 特に加算
事後調査で指導を受けて多額の申告漏れ課
税額と追徴税額の納付に至るケースもよく
見られますので注意が必要です。
あります。
(1) 輸入港までの運賃、保険料その他運送
関係費用( INVOICE 価格が FOB 価格の
場合)
(2) 買い手が負担する手数料、容器、包装
の費用
(3) 買い手が無償あるいは値引きで提供し
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2008 年 12 月号 Whenever BizCHINA 28